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Japan Illini Club (JIC)

中村真理さんの2011年10月分奨学生レポート

Japan Illini Clubの皆様、大変お世話になっております。2011年度奨学生、東京外国語大学外国語学部4年の中村真理と申します。奨学生に選んで頂いてから出発までの間、そしてここイリノイに来てからも、様々な形で皆様から温かい励ましのお言葉やサポートを頂き、本当にありがとうございます。早いもので、昨年の今頃は夢であったUIUCでの留学生活も2ヵ月半が過ぎ、”stranger”の意識で外から溶け込もうと必死だったキャンパスにも、随分親しみを感じながら過ごすようになりました。第1回レポートでは、この2ヵ月半の経験と、それらを通して考えたことなどをご報告させて頂きたいと思います。

◇Fall Semesterの授業について
アメリカ留学の動機の一つは、人種や民族、地域などの点で「多様性」が強調されるアメリカにおいて、人々に影響を与える一つ一つの法や政策は、どの集団のどの様な意図を反映して、どの様に形成されていくのかという過程を詳しく学んでいくと共に、自分自身も生活者となってその「多様な」社会を肌で感じたいというものでした。今学期は、アメリカ国内の政治に対する理解を深めることを目標として、Political ScienceやLatina/o Studiesで開講されている授業を主に履修しています。とりわけ印象的な授業をいくつかご紹介させて頂きたいと思います。

・PS101 Intro to U.S. Government and Politics
2学期間という限られた期間と単位数の中で、この基礎クラスを受講すべきか、それともアメリカ政治における具体的な組織やテーマを掘り下げる授業(”The US Congress”や”Religion & Politics in the US”など)にどんどん挑戦していくべきか迷いましたが、今後具体的な事柄をより正確に理解していくために必要である、基礎的な知識や用語、考え方をしっかり身に付けたいと思い、履修を決めました。私が受講している枠は週3回の講義形式ですが、Introのクラスとしては珍しく15人程の少人数で、学生の発言数が多い活発な雰囲気です。Preziというプレゼンテーション作成用のソフトで、教科書には載っていないデータや映像も取り入れながら作り込まれた講義内容のまとめが、毎回授業専用のWebsiteにアップロードされたり、定期試験やペーパーに加えてShort Assignmentも頻繁に課されたりと、学生に基本を教え込もうという熱意も伝わってきます。講義は、Unit1: Foundations of American Politics, 2: Individuals and Politics, 3: Linking Citizens and Government, 4: Institutions and Policy-Makingで構成されていますが、個人と政治との関わり方をPublic Opinion及びThe Mediaという二つのキーワードから説明をしていったUnit2には、リーディング課題として教科書とは別にいくつか論文も指定されるなど、特に重点が置かれている印象を受けました。具体的には、連邦議会によって創設された機関によるメディア規制の例として、Federal Communications Commission(FCC:連邦通信委員会)が、「公的に重要な争点に適切な放送時間を割き、争点を扱う際には、一つの見解に偏らずそれと対抗する意見も公平に報道しなければならない」ということを定めたFairness Doctrine(公平原則)などが取り上げられ、これが1987年に廃止されてメディア側の自由裁量部分が大きくなったことにより、ラジオ放送(特に聴取者参加型の「トーク・ラジオ」)は保守色の強い番組で占められるようになったという議論が紹介されました。また、メディアの報道が、政治家に対する世論に変化を起こしたPriming(プライミング効果)の例として、湾岸戦争への対処をめぐる一連の報道を境に、ブッシュ大統領(41代)の大統領としての評価が、湾岸戦争への対処という一点に基づく傾向が強くなったために、他の外交政策や国内の経済政策への不満を差し置いて支持率が上昇した、というデータを示した論文を扱いました。Unit1でアメリカ政治の仕組みの基礎を学んだ後に、その仕組みがつくった制度によって、メディアが映し出す政治や、世論の在り様が規定される面があるということと、その一方で、メディアと、メディアに影響された/されなかった個人は仕組みに対してどの様に変化を与え得るのかということを、様々な興味深い具体例を通して学んだことが印象に残りました。

・PS300 Politics of Racial and Ethnic Diversity
「人々は多様性にどう反応するのか」「国家は多様性をどう扱うのか」「国家による多様性を扱った政策に、国民はどう反応するのか」「多様性と社会福祉政策との関わりはどの様なものか」という四つの問いを軸に、毎週、”Diversity & the Creation of Identities”や”Diversity and Social Capitol”といったテーマが設けられ、週2回の授業では、課題論文に基づいたディスカッションを行います。論文の量が多く、他の学生の意見を聞き取り理解することや、議論の流れを汲んでその場で意見を述べることに大変な難しさを感じてかなり苦戦していますが、20人程のクラスの中にもアフリカン・アメリカンやラティーノ、白人、アジア系など非常にdiversityがあり、彼らの発言から、その背景や考え方をもっと知りたいという気持ちが強まります。学期の最後まで、諦めずに頑張りたいと思います。

・GLBL298 International Development and Community Service in Nicaragua
他の授業に比べて形式や内容の毛色が少し違いますが、UIUCのStudy Abroad OfficeとJICの奨学生が所属するCollege of Liberal Arts and Sciencesが共催している海外研修のコースです。10月半ばから開講される教室での授業(計6回)と、冬休み中の2週間の現地研修、そしてレポート提出によって3単位を受けることができます。このGLBL298のコースは、”Immigration and Cultural Diversity in Israel(イスラエル)”や”Globalization and Inequality in Post-apartheid Cape Town(南アフリカ共和国)”など計10程用意されている中から希望を出すことができ、9月の半ばにApplication Essayを提出して、第一希望であったニカラグアのコースに参加させて頂けることとなりました。冬休み中の現地研修では、首都マナグアでホームステイをしながら、ヘルスケアやフードエイドに関わるNGOや学校を訪れる予定です。参加者は14名ですが、留学生は私一人で、アメリカ人の正規の学生と一緒にニカラグアで2週間を過ごすことになります。その前にはUIUCでのLectureも組まれており、先日行われた授業は、各々がニカラグアにおける貧困を示すと考えられる統計データを持ち寄って議論をするというものでした。教授がかなり速いテンポで、各統計データと国連のミレニアム開発目標(MDGs)とを、また米国のODA実施機関でありニカラグアもその対象国であるMillennium Challenge Corporation(MCC:ミレニアム挑戦公社)の指針とを結びつけて話したり、「なぜ国民の活動の自由度が高いほどその国が発展していると言えるのか。中国は国民が自由を享受しきれているとは言い難いが、目覚ましい発展を遂げているよ。」「携帯電話の普及率が途上国において必ずしも低くない(アメリカは09年に197ヵ国77位であり、ランキングには先進国も途上国も入り乱れている)のはなぜだと思う?」などと常に学生に問いかけを行って意見を求めたりと、他のクラスと比べても双方向であり議論の色が強いと感じました。この中で、ネイティブスピーカーのみの発言に乗っていくということには、気持ちの面でも英語のスピーキング能力の面でも難しさを感じますが、自分の立場を生かして面白い視点を持ちこめるようになることを目標に、このプログラムを学び多い機会にしたいと思っています。
◇課外活動などについて
授業外では、特に苦手意識が強い会話力を伸ばしたいと思い、Quad Day(UIUCの学生団体やサークルが、キャンパスの中心にある広場Quadに集まり、新入生を勧誘する一大イベント)にて見つけた、2つの国際交流系の団体を通して、”International Buddy”や”Conversation Partner”と呼ばれるアメリカ人の会話相手を紹介してもらいました。彼らには、キャンパスから少し離れたカフェやショッピングモールに連れて行ってもらったり、Bible Studyや映画に誘ってもらったりと、日々の生活の中で助けられています。このうち地元の教会を基盤としているInternational Student Connectionsという団体は、留学生へ向けてAmerican Culture Classを開いており、私も度々参加してアメリカのTV番組や祝祭日について話を聞いたり、地元の農園へのフィールドトリップに出掛けたりしています。先日は、彼らが通う教会が年に一度開催する”Revival”というイベントがあり、クラスを主催しているJessicaと一緒に参加してきました。アメリカに居るうちに、一度教会が開くイベントというものを体験してみようという少しの好奇心から足を運んだのですが、結果として、この”Revival”は私にとって非常に考えさせられる、印象深い出来事となりました。
Jessicaの説明によると、”Revival”は、「同じ地域の教会に通う人達が一堂に会してお祈りをすることで、仲間とのつながりを強めながら、”God”をより近くに感じ、敬意を表する」という趣旨のようでした。このイベントはキャンパス内にあるAuditoriumで行われたのですが、私が会場に足を踏み入れた時には既に100人以上の人が集まっており、独特の雰囲気と熱気を感じました。最初の2時間程は、舞台上の生のバンド演奏と歌い手に合わせて、会場にいる全員でChurch Songを大合唱しました。Jessicaをはじめ多くの人が知っているポピュラーな歌ばかりのようでしたが、正面の大きなスクリーンに歌詞が映し出され、飛び入り参加をした私も、映画の様な光景に圧倒されながらも一緒に歌い楽しみました。その後、Columbia International Universityというクリスチャンの大学の総長をゲストスピーカーに招いたレクチャーを経て、お祈りの時間(Prayer time)となりました。Singing timeの間から、周りの人達が手を高く上げたり肩を組んだりする様子などから、彼らの感情の高まりが感じられて印象的だったのですが、Prayer timeでは、長い間涙を流したり、目を瞑って叫んだりしながらお祈りをしている人も多く、初めてそういった場面を目の当たりにした私には衝撃的な程に、大部分の人がその場に感情をぶつけている様子を感じました。また、一人で祈るだけではなく、周りの人達とそれらを共有している人が多かったのも印象に残りました。
帰り際に、Jessicaに何をお祈りしたのかと聞いてみると、「障がいのある人達をサポートする仕事がしたいけれども今すぐには難しいので、その資格につながる学校が上手く見つかって、奨学金なども得ながら勉強をして、将来職を得られるように。」ということと、「Christの精神を広めていきたい。以前中国でクリスチャンの教会に立ち寄った時に、異国の地で言葉が通じなかったけれども、教会の人達とはつながっていると感じて安心した思い出があるから。」と教えてくれ、「Mariは何をお祈りしたの?」と尋ねてくれました。Prayer timeに周りの人達の様子に圧倒されていた私は、Jessicaのような具体的なお願い事をするには至りませんでしたが、常日頃から「この留学を自分自身が納得できるものにしたい」と思っていること、そして、「一つ一つの課題に真摯に取り組むことを一年間続けることで、自信や余裕を身に付けて、今後社会の中で周りの人の役に立てるようになりたい」と思っていることなどを伝えました。非日常的な雰囲気に影響されたのか、また慣れない環境で2ヵ月を過ごし疲れていたのか分かりませんが、今までに非常に辛いと感じた経験や将来への不安なども織り交ぜながら、彼女と色々なことを話しました。聞き終えたJessicaは、”Can I pray God for you? “と言って座り直すと、「Mariがアメリカでの生活を通して、彼女自身に自信を持てるように。彼女と彼女の家族が皆幸せになれるように。」と随分長い間目を閉じて、私のために祈っていてくれました。
考えてみると、日本では、「神の助けを願い求める」という意味の「神頼み」がなされる際には、こちらの人達が教会で「必ず道が拓ける」と信じてお祈りをする(ように見える)のに比べ、「もうどうしようもないので何とかしてほしい」と、願いが実現するかどうかという点には不確実性が多分に含まれているように思います。また、Jessicaが祈っていたような具体的な進路や職業に関する迷いや悩みは、「神に祈るよりも自分で行動し解決すべき」という考えが、少なくとも私の周りでは一般的でした。私自身も、悩みや辛さを他人と共有するということに関して、誰かに相談して励ましてもらったとしても状況自体は変わらないのであり、ましてや不確実なものに向けて上手くいくよう祈ることは甘えに過ぎず、最終的には自分で考え決断し、行動し、結果にも自らが責任を持てるようになるべきなのだろうと考えてきました。しかしその結果、状況が上手くいかない時には自分が100%悪いのだろうと感じて萎縮したり、その一方であまりにも辛い時には誰かや何かのせいにしてしまったりと、上手くいかないことも多かった気がします。留学以前からそんな状況に苦しんでいた中で、Jessicaが、まだ数回しか会ったことのない私の悩みや不安を感じて涙ぐみ、自分が信じているものに向かって一生懸命祈ってくれたということは、驚きと温かさを感じたある意味でカルチャーショックの様なものでもありました。彼女が別れ際に、”Mari, thank you for being so honest. It always needs courage to talk about yourself.”と言葉を掛けてくれた時には、何とも言えない気持ちになりました。Auditoriumの荘厳な雰囲気も相まって、何か心を動かされるものがありました。
また、宗教という共通項によって、日本人の想像を越えた強固なつながりを持ち、歌と祈りを通して、100人以上もの人達にあれだけの一体感を生み出してしまうところに、(私自身はここアーバナにある教会のうちの一つで体験しただけですが、Jessicaが話してくれたように、こういった絆が場所を問わずクリスチャンの人達の間で共有されることも多いのであれば)アメリカという国の力強さを見た思いがしました。あの独特の一体感は、私が今までにした体験を持ち出してくるとすれば、(適切な例か分かりませんが個人的な感覚では)何かしらのスポーツなどの国際大会で、全く知らない人同士が日本を応援する中で一つにまとまっていく、というものに最も近かった気がします。帰属意識や連帯感を感じる対象や、そういった意識が顕著な形で現れる場面というのは、国や文化によって大きく違うものだとも思いました。しかし一方で、その表現の仕方や、同じ仲間意識を持つ人達に囲まれて普段よりも気持ちを解放することで払拭する日々のストレスや不安、悩みなどといったものは、国に関係なく似通ったものなのかもしれないとも思いました。ともあれこのイベントは、色々なことを考えさせられたと同時に、思い切って新しい場に飛び込んでいくことの良さを改めて実感させてくれました。

長くなってしまいましたが、色々な体験をさせて頂きながら、2ヵ月半元気に過ごすことが出来ています。常に好奇心を保ちアンテナを張っておくことで、日々の体験に対して色々な感情や疑問を抱くことができ、そこから思考したり調べたりすることで、その体験を、自分のものとしていくらでも広げたり深めたりすることができるのだと実感した2ヵ月半でした。今後の留学生活も、前向きな気持ちで、一日一日を大切に過ごしていきたいと思っています。

最後になりましたが、私達をUIUCに送り出してくださったJICの皆様をはじめ、応援してくれている家族や友人、先輩や後輩に、この場をお借りして感謝申し上げ、第1回レポートを終えさせて頂きます。いつも温かいご支援を頂き、どうもありがとうございます。今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

【写真】Labor dayに出掛けたシカゴの夜景
東京外国語大学外国語学部4年
中村 真理

高田修太さんの2011年10月分奨学生レポート

東京大学工学部4年の高田修太です。10月の奨学生レポートを報告させていただきます。早いもので1学期の半分が過ぎ、既に折り返しとなりました。10月に入ってからは、だんだんと寒くなってきており、冬物のコートが手放せない毎日です。そんな中でも、平気で半袖で歩いているようなアメリカ人を横目に見ながら、体感温度の違いをひしひしと感じております。

東京大学では、社会基盤学を専攻しておりました。社会基盤というと難しく聞こえるかもしれませんが、いわゆる土木工学という分野です。今回、本奨学制度に応募させていただいた理由は、イリノイ大学アーバナシャンペン校が、世界有数の社会基盤(Civil Engineering)における名門校であったから、ということがあります。現在は、Civil Engineeringの講義を中心に工学部の学生として授業を履修しております。講義に関しては、後ほど詳しく述べさせていただきます。

今回の留学が始まる前に、既に何度かアメリカは旅行などで訪れていたこともあり、ある程度勝手は知っているつもりではありましたが、キャンパスライフとなるとわからないことだらけで、現地の人々に助けられながら8月は過ごしておりました。アメリカ行きの飛行機で隣り合った方が偶然イリノイ大学現地の日本人学生で、シカゴのオヘア空港でお話をして、かなり気が楽になったのを覚えております。寮についた当日は、あまりの部屋や寮のエアコンによる気温の低さに辟易し、ベッドのリネンもないまま床に着きました。その日はオヘアからシャンペーンまで乗るはずのバスが1時間ほど遅れて、予想以上の長旅となってしまったために相当疲れていたので、エアコンに凍えながらも熟睡できました。その後、先述の通り様々な人々に助けられながら現在に至ります。

<生活について>
寮は Illinois Street Residence(ISR)のトリプルルームに住んでおります。ルームメイトはアメリカ人と中国人の2人で、かなりインターナショナルです。遊びにくる友人たちも当然アメリカ人や中国人で、非常ににぎやかな部屋になっています。来たるサンクスギビングの休暇では、アメリカ人ルームメイトの家にもう一人のルームメイトと遊びにいく予定です。幸い、彼らはとても良い子たちで、いつもたわいもない話をしながら、わいわいと部屋で盛り上がっています。トリプルルームの良いところは、3人の部屋なので会話が盛り上がることでしょうか…(笑)逆に、悪いところは1人の時間があまりない、ということでしょう。そして、やはり狭いです。2人部屋よりも、1人当たりのスペースは小さくなっています。
ISRという寮は、Engineeringの授業が開かれる建物や、大学の中心地とも言えるUnionにも比較的近く、立地が非常に良い寮です。また、地下にもコンビニのような売店や小さなジム、図書館、プレイルームもあり、かなり気に入っています。毎週水曜日のISRのディナーはAsia Nightといってアジアの料理が提供されるため、その日はあらゆる寮からアジア人たちが料理を求めてやってきているため、大変混雑しています。あまり日本食は出されないのですが、大福が出たときは少し感動しました。

<講義について>
現在履修している講義は以下の通りです。
CEE472 Structural DynamicsⅠ
ENG360 Lecture in Engineering Entrepreneurship
ECE410 Digital Signal Processing
SHS120 Children, Communication, & Language Ability
CEE497 Independent Study

今学期履修した講義は、最後のIndependent Study以外、全てレクチャー形式のもので、試験やレポートによって評価されるものがほとんどです。アメリカの大学の講義は予想通りハードで、慣れるまでに相当時間がかかったのは事実です。あり得ない量の課題の量と英語のリーディングに泣きそうにながらも8月、9月とかけてだいぶ自分なりのペースや力の入れ加減を理解し、うまく過ごせていると思います。それでは個別の講義に関して書かせていただきます。
・CEE472 Structural DynamicsⅠ
所謂、動力学というもので相当分厚い教科書を使って勉強しています。評価は中間試験・期末試験・宿題、という至って日本的な評価方法です。この講義、この大学のCivil Engineering and Environment Majorの大学院生の必修科目らしく、ほぼ大半が大学院生で、学部生は10人もいません。そんな中で学部生として奮闘しています。日本で学ぶとすれば、振動工学という分野になると思います。1自由度系から多自由度系における運動方程式をどう解くか、ということが講義の根幹にあたり、構造物の振動解析などを行います。宿題では数値解析ソフトのMatlabを利用する問題が多いのですが、イリノイ大学の学生はMatlabが無料で購入できるという特典があり、その恩恵を受けながら、大学院生の友人たちと協力しながら宿題と戦っております。
・ECE310 Digital Signal Processing
信号解析という分野にあたる講義です。フーリエ変換・Z変換を中心に、離散化された信号の解析やシステム、フィルターの設計について扱います。毎週の宿題に加え2週間に1回の1時間の試験があり、ヘビーな講義です。2人の教授が何週かおきに教えてくれるのですが、中国人の教授の英語が中国語にしか聞こえず、リスニングに大変苦労しています。アメリカ人の友人に聞いたところ、彼にとっても相当聞きづらいらしいのですが…。

・ENG310 Lecture in Engineering Entrepreneurship
こちらの講義はエンジニアリングに関する起業の講義です。履修生のうち半分ほどがビジネス専攻の学生なのが特徴でしょう。いわゆるIT起業をした人がプレゼンテーションをし、それを聞く講義です。あるときは現役のイリノイ大学1年生が来てプレゼンをしていましまた。彼は起業家支援財団から相当の資金を得たらしく、これから新しいサービスをローンチするということで非常にエキサイティングな学生で、本当に映画「ソーシャル・ネットワーク」の一部を垣間みたような気になりました。教授曰く、一応ビルゲイツにも声をかけているらしいのですが、いつ彼が来るかは未定だそうです…。

・SHS120 Children, Communication, & Language Ability
この講義はひとつくらい100番台の授業を履修してみよう、ということ(100番台は1年生が多いので)と、言語系の講義を以前から学んでみたいと思っていたので履修を決めました。教官曰く、この講義のフィールドとしてはPsycho Linguisticだそうです。子供がどうやって言語を学ぶのか、ということを中心に講義は進められます。バイリンガルの子供はどのようにしてバイリンガルになるのか?といったことが大変興味深かったです。また、他の学生は英語のネイティブスピーカーであり、英語の文法や単語は体系的に学んでいない一方で、私たち日本人は英語を体系的に学んでいるため、その違いから生まれる感覚の差も大変面白かったです。具体的には、「この単語はなんで名詞ってわかるの?」と聞かれるとアメリカ人は明確な説明ができないのですが、私ならば「前置詞があるから」だといった理由で答えることができますよね。そのような言語学的な観点の違いが非常に興味深いです。また、この講義が一番英語が大変です。ひたすら80分ほど先生がスライドを使って話し続けるのでキャッチアップするのに苦労しています。

最後のIndividual Studyというのは研究室での研究です。こちらに関しては次回のレポートにて詳しく述べさせていただきます。

<その他について>
アメリカに来てから初めての祝日のLabor Dayは大学が休みだったために、少し足を伸ばしてアイダホ・ワイオミング州に位置するイエローストーン国立公園に行って参りました。イエローストーンは火山地帯で、アメリカ初の国立公園です。とても硫黄の匂いが鼻をつきましたが日本の温泉地帯を少し思い出し、恋しくなったのも事実です。また、アイダホ州のState Fairなるものにも遊びにいきました。体に悪そうなアメリカンフードを食べながら競馬をしました。日本でしたことのない競馬をまさかアメリカでやることになるなど思いませんでしたし、こんなに惨敗するとも思っていませんでした(笑)
この他にも週末は友人にパーティに誘われたり、日本人同士で鍋をやったり、映画館に行ったり…と勉強以外も十分に楽しんでいます。

長々と書かせていただきましたが、すこぶる健康にアメリカでも過ごしております。これに換えてご支援、ご協力いただいている皆様はじめ、我々を送り出してくださったJICの皆様に向けての10月の報告とさせていただきます。今後ともよろしくお願い致します。

内倉潤さんの2011年10月分奨学生レポート

JICの皆様、レポートを読んでくださっている方々、こんにちは。2011年度小山八郎記念奨学生として留学をさせていただいている内倉潤です。
シャンペーンの厳しい冬の訪れを予感させる10月末、留学開始から2か月半ほどが過ぎました。第1回レポートということでⅠ.到着~授業開始前 Ⅱ.授業内容 Ⅲ.寮生活 Ⅳ.課外活動の4点について書かせて頂きます。

Ⅰ.到着~授業開始前
遅延、lost baggageなどどんな災難が降りかかってくるのかと、身を縮めて成田空港を出発したのは8月15日でした。時間があったのでシカゴで1泊してからシャンペーンへ。キャンパスに着いてしまえば、これといったトラブルもなくスムーズな留学生活の始まりだったように思います。ただ、気を張って非常に疲れていたせいかシカゴで楽しみにしていた観光は全くできず、いつのまにか1日中ホテルで寝てしまったのは何とも惜しいことです。(授業開始後、結局シカゴ観光をすることができましたが)キャンパスに着いてからは一緒に来ている奨学生の3人や現地の日本人学生に助けられながら、各種手続き、生活必需品の買い出し、留学生向けのパーティーに参加するなど忙しい1週間を過ごし、いつの間にか授業が始まっていました。こちらに来る前は、1人で何もないシャンペーンで生きていけるのだろうかと、数々の不安が頭をよぎったこともありましたが、JICの皆様による出発前の手厚いフォローやシャンペーンの温かい人々に支えられながら、特にホームシックなどにかかることもなく過ごすことができました。

Ⅱ.授業内容
秋学期は①ACE345:Financial Decision Making for Individuals and small Business
②AGED260:Introduction to Leadership ③ADV300:Introduction to Advertising ④EALC250:Intorduction to Japanese Cultureの4科目計12単位を履修しています。
① ACE345:Financial Decision Making for Individuals and small Business
東京大学での専攻がファイナンスで、特にコーポレートファイナンスに興味があるので履修しました。イリノイ大学での所属はLAS(Liberal Arts and Science)なので基本的にFinance学部の授業は履修できないのですが、ACE(Agricultural and Consumer Economics)などでも十分充実したファイナンスの授業が開講されており、これらは私たち留学生も履修することができます。授業開始から1か月半ほどでFinancial Statement(BS,PL,CF)の構成、分析方法を学び、その後はCapital Budgetingという投資評価手法を勉強しています。100人ほどのクラスで、基本的には教授による講義が中心ですがiclickerというハイテク機械を使って授業中にクイズが行われたり、投資関連の会社で働くゲストスピーカーが来て、実際の案件に関する分析を行ったりと、構成がよく考えられているクラスです。前提知識があることと、ファイナンスの授業ということで数字の勝負であるため、現地の学生とも互角かそれ以上に張り合える、今学期1番モチベーションの上がる授業になっています。週1回のペースで出される宿題と2回の中間テスト、学期末のテスト、さらに投資関連企業に勤める人へのインタビューで評価が決まるとのこと。インタビューは、授業中に学んだことをフルに活用して行われる、この授業の集大成のようなものなので、誰にどのような内容でインタビューを行うか、現在試行錯誤中です。やはり専攻に近い科目ということで興味もあり学ぶことも非常に多い授業なので、来学期はACEのクラスを2つ履修する予定です。
② AGED260:Introduction to Leadership
30人という少人数でリーダーシップを学ぶクラス。日本では学問としてリーダーシップを学ぶ機会はなかなかないので履修しました。今学期唯一の少人数クラスで、ディスカッションや授業内でのアクティビティ、グループワークなど他のクラスでは体験できない困難と苦痛を味わっています。「日本語なら・・・できるのに」と思うことが今までに何度もある授業で、悔しい思いをすることが多いクラスですが、授業内容は非常に興味深く、様々なリーダーシップに関する理論、現実社会への応用を学んでいます。リーダーシップを学ぶ過程で自分を評価し見つめなおす機会が数多く与えられ、成長のヒントを与えてくれる授業であるように思います。来学期もリーダーシップ関連の授業を2つ履修する予定です。
③ ADV300:Introduction to Advertising
「広告学」とでも訳すのでしょうか。大学1,2年生の頃、広告関連の活動をしていたこともあり履修しました。スティーブという、ユーモアあふれる小太りの教授による授業で、さまざまな例を交えながら広告全般に関することを学んでいます。テストは全て択一問題で、直前に出されるテストレビューなるものを勉強すれば比較的容易にこなせます。正直なところ、自分は広告に「興味がない」ということを認識させてくれる授業になっています。ただ、授業中に見せてもらう広告の数々はインパクトの強いものが多く、それを楽しみに授業を受けようと思っています。
④ EALC250:Intorduction to Japanese Culture
留学の目的の一つに「日本を外から客観的に見つめなおすこと」と掲げていたこともあり履修しました。歴史・文化・経済など日本について色々な側面から勉強しています。恥ずかしながら、授業内容は日本人の私でも知らないことが多々あり、アメリカ人の日本を見る視点が学べるということも含めて、「日本」を見つめなおすきっかけを与えてくれる授業です。アメリカに来てから自分が「日本人」であることを認識する機会が増え、ルームメイトの中国人・韓国人を含め、友達と過激な議論を交わすことが幾度となくあります。そんな中でアメリカ人の教授によるこの授業は中立的な視点を与えてくれる、有意義な時間になっています。テストに関しては、日本人ということもあり、もちろん他の学生より豊富な前提知識があるのですが、如何せん問題文や選択肢の英語が理解できないということで、自らの英語力の低さを痛感させられています。日本に帰国するまでに、テストやレポートに困らないだけの英語力を身に付けられるよう精進するつもりです。

Ⅲ.寮生活
こちらにきて1週間ほどは、Scott Hallという通称Six-Packsのうちの1つに数えられる「悪名高き」寮に住んでいました。寮の申請が遅くなってしまい、希望は全く通らずTemporary roomであり、なおかつ3人部屋でした。ルームメイトはイタリア人の留学生2人で、どちらも個人的にはすごくいい人だったのですが、やはりイタリア語で四六時中会話をしており、なかなか仲良くなることができませんでした。また、寮自体もFreshmanが多いせいか1日中騒がしく、更に授業のある建物や飲食店から遠く不便であったため、現在は引っ越しをしてIllini Tower(通称IT)という、寮とアパートの中間のような建物に住んでいます。普通の寮に比べて、寮費は少しばかり高いのですが、キッチン・リビング・バスルームつきの部屋を4人でシェアしており、そのクオリティには非常に満足しています。ルームメイトもアメリカ人・中国人・韓国人と多様で、時には文化の違いからかイライラすることもありますが、基本的には仲良く生活しています。寮全体としてはお金持ちの韓国人、中国人、インド人が半分、その他はアメリカ人という感じですが、基本的にみんなフレンドリーで友達が作りやすい環境ではあると思います。設備に関しては、24時間勉強のできるStudy loungeや各階に存在するlounge、更には映画の観れるTheater roomや、ビリヤード・卓球のできる地下室、少し機械が古いですがジムまでついており本当に充実しています。また、ITは飲食店の並ぶGreen St.や学校の中心であるQuadからも近くロケーションも非常にいいので今後の留学生にもお勧めできる住居です。(ただ食堂のクオリティは非常に低いですが)

Ⅳ.課外活動
こちらに来てからは日曜日~木曜日=宿題とテスト勉強に追われる日々。金曜日・土曜日=遊び。というなんともメリハリのしっかりついた日々を過ごしています。2か月ほど、特に変化のない毎週を過ごしていたのですが、10月中旬からはIllini4000 (http://illini4000.org/)というバイクチームの活動が始まりました。Illini4000は募金活動やインタビューなどを通じてガンの啓発運動を行うNPO団体です。2007年度JIC奨学生の長谷川貴也さんも参加していらっしゃった団体で、私は渡米する前に長谷川さんの奨学生レポートを読ませて頂き興味を持ちました。というのも、自転車でのツーリングが趣味のうちの1つであり、更にガンと闘病中の恩師に何らかの形で恩返しをしたいと思いつつも、何もできていなかったという現状があったからです。活動内容は大きく分けて2つあり、1つ目が1年間通しての募金活動。今年のチームの目標額は1500万円で、集められたお金はガンの研究費用やガンで親を亡くした子供たちを対象としたキャンプの費用に充てられます。2つ目は、2012年夏休みに行われる自転車でのアメリカ横断。6400kmにも及ぶ道のりのなかで、ガンにかかわる様々な人にインタビューを行い、その内容を広く発信することでガンの啓発運動をするというものです。留学生活中は勉強以外の軸として、Illini4000の募金活動やトレーニングが私の主な活動になっていくことと思いますので、次回以降の奨学生レポートでもその内容も含めてお伝えできればと思っています。

最後になってしまいましたが、イリノイ大学への留学という大変貴重な機会を与えて下さったJICの皆様、そして応援してくれている家族、友達やその他の皆様の期待に応えられるよう、残り9か月、実りある日々を送りたいと思っています。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

菊池智子さんの2011年10月分奨学生レポート

JICの皆様、ご無沙汰しております。そしてブログを見てくださっている皆様、初めまして。京都大学医学部4回生の菊池智子です。簡単に自己紹介をさせていただきます。日本では情報理工医学講座というゼミに所属し、iPadを用いた在宅医療の研究に携わっています。厳密には、研究が本格化する直前にアメリカへ来てしまったので、帰ってからみっちり取り組んでいこうと思っています。大学3年次までは、特に自分の専攻である医療に特化した活動に重きを置いており、日本国際医療保健学会を通してホンジュラスでHIV/AIDSの社会調査を行ったり、学生部会の運営委員としても活動していました。
もちろん自分の専門性を追求することは非常に良いことですが、そんな中で、私は「もっと広い視野で医療を見ていくことができないか」と考えました。一番の大きな転機はやはりホンジュラスでの調査で、私はただ医療に関する調査をしに行った(と思っていた)わけですが、実際に直面したのは、アメリカという大国の陰で抱えている経済的な問題や政治問題(2009年に起こったクーデターは記憶に新しいと思います)などでした。政治経済の知識は皆無であった私は、ヘルスケア自体が外界から受ける影響がそれほど大きいとは思っておらず、他の事業と比較し日本では特に善意のサービス色が強い医療を改めて別の方面から見直すきっかけになりました。アメリカでは日本の学部ではなかなか経験できなかった幅広い教養と、最も大きなエンタープライズであるヘルスケアシステムについて学べたらいいなぁということで、たくさんの人の協力もあって、いま実際にアメリカに来させていただいています。感謝、感謝です!
前置きが長くなりましたが、約2か月の留学生活を振り返って、以下、自分なりにレポートさせていただきます。
~渡米までの準備~
私はおそらく4人の奨学生の中で一番ばたばたしてしまったと思います。性格的に、比較的前からいろいろと手配しておかないと気が休まらない、実は心配性(!)な私ですが、5月以降は実習やアルバイトで非常にタイトなスケジュールの中、準備を進めていました。京都では一人暮らしをしていたせいもあって、アパートを引き払うための手続きや荷造りに追われてしまいました。そのため、しようしようと思っていた英語の勉強も時間が取れないままの出発となってしまいました。この点は少し反省です。
一番私が手こずったのは、ビザ申請でもなく健康診断証明書でした。ビザはできるだけ早めに予約さえしておけばあとは大使館で面接を受けるだけだったので簡単でしたが、健康診断書に関しては、どういった書類を揃えればいいのか、医師にどのように書いてもらえばいいのかよくわからず、後回しにしていたのでぎりぎりになってしまい、焦ったのを覚えています。今後の奨学生のために書いておきますが、健康診断書はそこまで心配する必要はありません。学校が始まる前、血液検査を受ける際にきちんと記入がされているか確認されるくらいでした。準備段階を経て今思い返してみると、その当時はとても大変だと思っていたことも、何とかなるというのがある意味で非常にアメリカ的だと感じました。
~アメリカ到着~
私はシカゴのオヘア空港に到着後、大学があるシャンペーンに向かう前に空港近くのホテルで2泊し、シカゴを観光しました。着いたときは、8月中旬にしてすでに半袖では肌寒く、曇り空が印象的でした。‘Windy City’ と呼ばれることは以前から知っていましたが、あとで聞くと、8月のシカゴは午前中快晴でも午後には雷雨になる日が多いそうです。
シカゴの街並みは洗練されてクリーンな印象が強いと同時に、アーティスティックでもあります。たまに道路をおしゃれな馬車が横切っていたりして、そのような光景を見ると乙女心がくすぐられました(笑)。「ニューヨークよりも、絶対シカゴの方がいいよ!」と、京都にいたときアメリカ人の友達からよく聞かされていましたが、本当にシカゴはいい街だと思います。まず、人がとても親切です。少し偏見がかっているかもしれませんが、カフェの店員さんは「アメリカなの?」というくらい愛想がよくびっくりしたのを覚えています。そして、上にも少し述べましたが、街がとても綺麗です。シカゴは高層ビルの建築でも有名ですが、典型的な最もアメリカらしい都市ではないかという感じがします。シカゴにいるときはただうきうきして、美術館やミシガン・アベニュー(ショッピングストリート)など、いろいろな所を一人で観光しまくっていました。


~大学の印象~
シカゴからシャンペーンまでバスで移動し、初めて寮に来た時は寮を見て「かわいい!」と思いました。建物はヨーロッパ調の赤レンガでできており、ロビーにはグランドピアノがあります。チェックインをして部屋に入ると、現地出身のアメリカ人のルームメートが‘Hello!’と笑顔で声をかけてくれ、緊張も一気に吹き飛びました。今まで海外に行く機会は多かったですが、実際に住むのは初めてなので、不安はありました。しかし到着した後はなぜかひと安心することができて日本と同じような気持ちにスムーズに入れたことが自分としても驚きです。
キャンパスの第一印象は「広い!」でした。おそらく皆が口をそろえてこう言うと思います。いわゆる「キャンパスタウン」です。気候は比較的穏やかで、晴れた日の透き通るような真っ青な空が大好きで、まだ暑い時期はよくQuadの木陰に寝転んで音楽を聞いていました。10月下旬ともなると、無理です、気温は0℃近くまで下がる日も出てきます、凍えます(笑)。
来る前までは何もないのかなあという印象でしたが、Terminalの近くに行けばおしゃれなカフェやレストランもありますし、学校の近くのGreen Streetにもおいしいお店はいろいろあります。小ぢんまりとしている中で必要なものはすべてそろっているという印象なので、特に不自由はしていません。


~授業開始~
私のスタンスとしては、秋学期はとにかく面白い授業やアクティビティを取り入れながら自分の学びたい勉強そして英語の練習をバランスよくしていこうと考えていました。
日本と違う所はやはりGPAをとても重視するところです。日本の学生の中には卒業のための単位取得に重きを置いて、内容は重視されないことが多い気がしますし、就職活動に関してもGPAの提示を求められないことが多いと思いますが、アメリカではGPAによって就職可能な企業、そうでない企業が出てくるという、いわば「足切り」のようなものが存在するようです(もちろんGPAがすべてというわけでもないとは思いますが)。
12Creditのうち1/4はイリノイ大学という総合大学ならではのAerobicsやFloral Arrangementのコース、残り3/4は統計学、医療システム学、(植物に特化した)栄養学といった自分の分野に比較的近い授業を取っています。
個人的に一番面白いのは医療システム学で、この授業ではアメリカでも最大のエンタープライズのひとつであるヘルスケアに関してgovernment policyやeconomics、人種の違い等の観点から切り込んでいく内容になっています。数週間前には元イリノイ州知事のJim Edgar氏がご登壇され、イリノイ州やアメリカ全体のヘルスケアポリシーのご講演を授業中にお聞きできる機会もありました。こういった内容は私が以前から興味を持っていたことでもあり、実際に学んでみたかったことなので、とても満足しています。ただ、私はアメリカの政治や経済に関する知識が乏しく、医療を考えるにあたって大きな影響を及ぼすこれらがネックになって、レポートを書くのが非常に困難なことがあります。これは、とても悔しいです。もちろん常識として知っておくべきことではあると思うのですが、来学期はPolitical Scienceの授業を取り、今の自分に足りないところを埋めていかなければと思います。もうひとつこの授業の好きな点は、複合的な学術プログラムやinfo sessionのアナウンスをしてくれることです。日本ではなかなか聞くことのないMHP(Master of Public Health)/MBAのdual degree programや、Health Care Consulting Firmのinfo sessionについて情報を得ることができ、先日もヘルスケアや病院経営、医薬品企業へのコンサルティングを行っている会社のinfo sessionに参加してきました。JICのプログラムに応募した当初は大学院進学を希望していましたが、このような話を聞いたり情報を集めることによって、まず社会の第一線で働き経験を積んだ上で、さらに上を目指してMPH/MBAのプログラムに挑戦したいという気持ちも湧いてきました。
Aerobicsではエアロビの他、ヨガをやったりサルサやズンバダンスも踊っています。Flral Arrangementのクラスでは意外と(?)体系的に講義とLab classが開講され、案外テストで覚えることが多く、大変だったりします。
他の3人の奨学生の中には勉強が大変すぎて死にそうな人もいるようですが、私は授業に関してはコンスタントに、特に辛いこともなくこなしているという感じがします。ただ、最初は自分の英語力にも自信がなく、多少敢えて余裕をもった感があるので、来学期はもっとレベルの高い授業に挑戦して勉強漬けになってみたいと思っています。
~midterm exam~
アメリカでは、日本と比べてテストが多いことも印象的でした。日本の大学と違って成績の付け方が非常にはっきりと明示され、日々のquizzなどこつこつと勉強する型が評価されるのがアメリカです。私は9月の下旬にmidterm1、10月下旬にmidterm2があり、遊ぶ時はもちろん遊ぶのですが、なぜかいつも「あ、次のテストいつだっけ・・・」と心のどこかにテストの存在がいたりします。しかし、授業さえきちんと聞いていれば特に問題はありません。英語がネックで解けないということはまずないと思います。
私の中では統計学のテストが2関数変数対応の電卓持ち込み可で午後6時~9時まで3時間のテストが一番焦りました。しかし、それも授業中に理解さえしておけば特にテストのためだけに勉強することもないということに気付きました。期末テスト前に詰め込む日本の形式よりも、私はテストが何回かあったほうがありがたいと最近はつくづく思います。
~学外の活動~
私がアメリカに来て非常に強く感じたのは、キリスト教という宗教の大きさです。日本人全体の傾向としては基本的に無宗教の人が多いと言われると思いますが、アメリカではキリスト教徒が大多数です。人々の実生活に溶け込んでいるので、何かと目にしたり耳にしたりする機会は多くなってきます。例えば、入学してしばらくは様々なBible Studiesのミーティングに誘われたり、キリスト教団体が思っていたより多いことに気がつきました。当初は「私、キリスト教徒じゃないし、バイブルスタディーズなんて行っても、逆に失礼じゃないか」と思ったりもしたのですが、彼らにとってキリスト教は生活の一部なので、裏を返せば、一番友達が作りやすい場でもあります。私はひとつの文化体験として、ミニオリンピックという年一回行われるキリスト教団体全体の運動会や毎週Bible Studiesに参加したり日曜日には教会にも行っています。今まで経験してこなかったことであり、今後こういった機会が実際にあるのかもわかりませんが、出会う人々や彼らの考え方に触れることでもう少し深くアメリカという国を理解できそうな気がします。
その他、週末にはパーティがあったり、連休の際には大学の友人の車でシカゴに遊びに行ったり、学校以外にも楽しいことはたくさんあります。
・・・と、ここまでいろいろ綴ってきましたが、何はともあれ周りの人は皆親切でいい人ばかりで、特に困ることはなく楽しく過ごせています。日本にいる時よりも悩むことは逆に減ったような気さえします。京都では何かと考えたり哲学することが多かった気がするのですが、やはりシャンペーンという土地柄のせいでしょうか・・・(笑)。穏やかな土地ではありますが、ここでは皆、学生のうちから積極的に将来に繋がる活動に取り組んでいて、とても刺激されます。留学生活の1/4が過ぎようとしていますが、残りの生活も新たなことに挑戦しながら、勉強や英語も頑張り、自分の将来についてもっと真剣に向き合う機会を多く持っていければと考えています。

後藤直樹さん2011年最終レポート

JICのみなさま、レポートを読んでくださっているみなさま、こんにちは。

帰国してから5ヶ月が経とうとしています。ちょうど二年前の今頃は、小山八郎記念奨学金への応募を本格的に準備していた頃だと思います。過去の奨学生レポートを何度も何度も読んでいろいろと逡巡していたあの頃を、ふと思い出しました。こんなすごい経験自分に出来るのだろうか。そんな資格自分にあるのだろうか。当時の自分にとっては、応募するということ自体、容易に踏み出せない一歩でした。

二年間経って今、あの頃の自分から、すこしは変われただろうか。強くなれただろうか。たぶん、とは言える気がします。少なくとも二年前の悩んでいたあの時の自分に、やっぱり君の選択は正しかったよ、とそのことを迷わず伝えられるのは確かです。かつての自分と同じように、逡巡しながらも留学に興味を持ってこのHPを読んでいる誰かに何かを伝えられたらいいな、と思いながら、この最後の奨学生レポートを書かせていただいています。

日本に帰ってきて半年、「留学どうだった?よかった?」と、久しぶりな誰かに会うたびに聞かれます。「良かったです。また行きたいです。」迷わず応えています。その言葉に嘘はないし、美化しているわけでもありません。でもふと冷静にこの留学を振り返ると、自分からそういう言葉が出てくるのが不思議に思える時があります。

思えばイリノイに居た9ヶ月間、そんなに楽しい事ばかりではありませんでした。むしろ割合から言えば、しんどい事の方が多かったかもしれません。いつもプレッシャーに追いかけられていました。普通にやったら終わらないようなアサインメント。数日後の課題がちらちらと頭をよぎり、寝れなくなる事もしばしばでした。不眠症になったのは、人生で初めてだったように思います。しょっちゅうおなかを壊していたような気がするし(脂っこい中華のせいですね!)、40度以上の高熱を出して寝込んだのも二度三度ありました。要領という存在に気付いて楽になったのは、ずっとずっと後でした。

ああ、自分はなんてタフじゃないんだ。もっと力を抜いてやれば良いのに、なんでそんなに肩肘張ってるのさ?と、何度も何度も思った気がします。それでも今、こうして確かに大きなものを学び取って帰ってきた、と確信しているのは、こんな情けない自分と向き合いながらも、少しずつそれを乗り越えて行ったからだと思っています。

一つ、本当に大きな転機になったと思っている事があります。Fall Semesterも中頃を過ぎた頃、津波が東北の町を飲み込んで行く俄には受け止め難いニュースが、1万キロ離れたイリノイにも届きました。こんなにも離れているのに、ニュースが届くのは一瞬でした。物理的な被害は一切受けていないのに、家族も無事なのに、大きなショックを受けている自分。授業やアサインメントにも手がつかなくなる。身体は大丈夫なんだから、少なくとも今やるべき事をやらなければならない。頭では分かっていながらも、どうにも動けない。大丈夫なはずの自分が心底、情けなく思えました。

幸いなことにちょうどそのすぐに後、大学は一週間の春休みに入りました。このままじゃ駄目だ、と思いました。どうにか態勢を立て直さないと。悩んでいても仕方ないし身体を動かそうか。そう思い、ARCという大学のジムのCombatルームで一人、ワークアウトを始めました。アメリカでも振ろうと日本から持ってきた木刀で、数ヶ月ぶりに習っていた古武道の練習を始めました。懐かしい感じがしました。汗を流した後、ああこれだ、と思ったのを覚えています。

授業が再開されてからも、毎日ARCに通い続けました。どんなにアサインメントに追われていようと、それを途中でほったらかしてでも、一日一時間は身体を動かすようにしました。好きなことは続くものです。結局、それから帰国までずっと、ほとんど毎日ARCに通いつづけました。不思議な事に、今まで感じていたプレッシャーや、夜寝られなくなるという事が、運動するにつれだんだんなくなって行き、むしろ前よりずっと効率的に勉強に向かえるようになって行きました。

本当に些細なことですし、当たり前と言えばそうかもしれません。けれど、個人的にはとても大きなことだと思っています。自分がタフじゃない、ということは昔から良く分かっていました。でもだからしょうがない、ということでそんな自分をあたりまえとして受け止めたくはありませんでした。そういう自分であるということは認めながらも、どうにか努力でそこを補えたらと思っていたのです。

後から振り返って思うのは、このときに私はその為の小さな可能性を見つけられたのではないか、ということです。自分は自分で立て直すことが出来る。自分に自分から働きかけることが出来る。その気付きは私が一生の中で得たものの中でも有数の、心強い確信として、これからもずっと共にあるような気がします。

留学というoptionが開く可能性のようなものは、ほとんど無限にあります。いま振り返ってみて、もっと出来たのでは、そんな風に思えることはたくさんあります。けれど私は此所で種のようなものを貰ってきたのであって、それはむしろ今から、大切に育てていかなければならない可能性のようなものだと思っています。

二年前の自分へ、もし何かできることがあるのなら、君がしようとしていることは良い選択だと思うよ、とそっと声をかけるだろうと思います。小さなことに悩んでるなぁ、と思うかもしれません。けれど元気に一回り大きくなって帰ってくることを(体重ではなくて)切に願うだろうと思います。

二年前にタイムマシンで帰る訳には行きませんから、代わりにかつての自分のようにいま、悩みながらも留学や何かいろいろな選択を決断しようとしている人に、同じ言葉をかけれたらな、と思います。成長は個人的なものであって、あらかじめその形を予測する必要はないと思います。可能性を限らずにいれば、本当に価値があると思うものに出会えると、信じています。

最後に、この留学はたくさんの人の支えがあってこその物でした。本当にそうでした。何かの可能性にかけて奨学生に選んで頂いたJICの皆様、後押しをしてくれた叔父、支えてくれた家族、お帰りと迎えてくれた研究室のみんな、本当にありがとうございました。嬉しかったです。また、何より他の同期の奨学生の三人、ありがとう。本当にこの三人が同期で良かったな、とつくづく思います。一人一人が僕の中で強烈な印象を残しています。そして最後にもう一人、9ヶ月間いつも助けてくれていた友人に、この上ない感謝を。どれほど助けられたことか。本当にありがとう。

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近藤千鈴さん2011年最終レポート

JICの皆様、こんにちは。2010年度奨学生の近藤千鈴です。日本に帰国し、総会で留学のご報告をしてから、早三か月が経とうとしています。一年ぶりの授業に馴染めるだろうか、と多少不安を覚えながら、先月大学にも復学いたしました。

奨学生レポートも今回で最後になりますので、留学を終えてからの振り返りを書きたいと思います。

Final Week前~学期後

徐々に期末試験に向けて授業が大詰めを迎えた4月は、AAS258 Muslims in Americaの最終課題であるresearch paperの準備に、多くの時間を費やしていました。この課題は大学でのインタビュー調査が前提になっているのですが、私は短い準備期間の中とにかくデータを集めたかったので、ムスリムの学生が、どのように大学で宗教的な食生活(教義上食べることを許されている食事)を保っているのか、また実践の度合い、宗教的な解釈の個人差はどのように生まれるのか、という比較的シンプルなテーマを設定しました。調査期間中は、とにかく毎日色々な所に出向き、参加者を募ってはインタビューを行う、の繰り返しでした。ラッキーだったことは、インタビューと称して国籍もバックグラウンドも様々なムスリムの学生と話す機会が持てたことです。図らずとも、この授業のテーマである「アメリカのムスリム」の多義性を肌で感じることができました。インタビュー調査についても、予想以上に面白いデータがとれ、教授やクラスメートからも非常に好意的な評価をもらうことができました。

5月に入ると、いよいよ学期末試験に向けて忙しくなりました。案の定いくつかのレポートは提出期限ぎりぎりに書き始めることになってしまい、ファイナルを終えた友人が実家に帰った後も、ひたすら一人コンピューター室で課題に取り組み、別れの感傷に浸る暇もありませんでした。時間的に余裕をもって終わらせた課題については、LibraryでのWriter’s Workshopという添削のアドバイスを受けることができたのですが、そうではない課題は一気に書き上げたため、出来上がったペーパーを見てもどこか違和感のある箇所がありました。イリノイにいた9か月間で、今までにない量のwritingをこなしたとは言え、やはり適切な語彙を使い、英語話者の視点で無理のないロジカルな文章を書けるようになるには、まだまだ練習が必要だと感じています。

学期後は残りの海外生活を惜しむように、1か月ほどヨーロッパを旅しました。まともな旅行鞄もなかった私は、リュックと2つの肩掛けバックを持って移動する、という極めて不細工な恰好ではありましたが、大きなトラブルもなく一人旅を満喫しました。ドイツで新型の食中毒が流行っているときに、何も知らず前の晩の残り物を食べてしまい、その後は懲りて、文字通りパンとソーセージのみで過ごしたのもいい思い出です。

旅先では、アメリカ人に出会うこともしばしばあったのですが、彼らとシカゴやイリノイの話を過去形で話していることに、ああ、もう自分の留学も終わったのだな、と強く感じたことを覚えています。思えば、道中でも何かと日本に帰るのだ、ということを意識させられ、日本の生活に戻る心の準備をしているような旅でした。

留学を振り返って

もともと留学への興味はありましたが、私がイリノイ大学への留学を強く希望したのは、日本で所属する大学の講義や、「あれもこれも」といった広く浅く型のカリキュラムの内容に不満を覚えていたことが大きかったと思います。そのため、留学先では自分の大学で学びきれない分野、具体的には文化人類学を一から勉強してみたい、と考えていました。そういった意味で、私は自分の専門分野における知識や経験の蓄積が、他の留学生と比べて少ないところからのスタートだったと思います。イリノイで学生と議論する中でも、彼らと十分に張り合うには自分に絶対的な強みがないということを痛感することが多く、苦い思いをしました。ただ、それで萎縮してしまうのではなく、切り替えて目の前の課題に取り組み続けたことは、私の自信につながっています。

振り返ると、向こうで新たな興味の対象を見つけ、深めることができたことは大きな収穫でした。もちろん、まだまだ学ぶべきことはありますが、大まかな導入を学び、多くのケーススタディを経たことで、日本で勉強を続けていくだけの土台はできたように思います。

それに加え私が留学の目標として考えていたものには、アカデミックな英語に慣れ、学部で通用する程度まで上達させること、単純に海外経験を積むことで、異文化の中でのストレスに対処して生活していけるだけの基礎体力のようなものを身につけたい、ということでした。英語に関しては9か月の留学の間に慣れはしましたが、多くの奨学生が言うように、学期中は目の前の課題をこなすことに時間を追われ、あまり集中的に英語の勉強ができませんでした。帰国後こそ、地道な勉強を続けなければと実感しています。

最後になりましたが、JICの皆様、先輩方には、一年を通してたくさんの励ましを頂きました。出発前から留学を終えるまでの節目には、JICの方からの支えがあったことを思い返します。今後は自分にできることで、JICに恩返しができればと考えています。ありがとうございました。

留学をして


【イリノイ大学体験レポート】 柳 潤子
簡単な自己紹介
一橋大学法学部法律学科 イリノイ大学留学前までは法科大学院志望だったが、帰国後進路変更し現在就職活動中

留学しようと思ったきっかけ
高校一年生の時から、将来は弁護士になると決めていたため、多くの弁護士が社会の様々な分野で活躍しているアメリカへ実際に行って、自分自身がどういった弁護士になれるのかを考えてみようと思ったのが一番大きな理由だと思います。大学一年生の時から学生NGOに所属し、日本に住む外国に背景を持つ子どもたちへの教育支援を行っていたため、アメリカで移民問題やNGO、学生団体の運営について学んでみたいとも思いました。また、この先海外の大学院へ行こうと思ったときや、海外へ仕事の分野を広げたいと感じたときに、学部生時代に一年間海外で学生生活をすることが、将来の可能性や選択肢を広げてくれるのではないかと思い、応募いたしました。

イリノイ大学における学生生活
大学進学のために親元を離れ東京で一人暮らしをしていた私にとって、寮での生活が新鮮でとても楽しかったです。ルームメートと1つの部屋を共有することが最初は不安だったのですが、家族のように心を開いて話ができるようになり、同じフロアには仲のいい友人が何人もでき、夜中に友人の部屋へ行っておしゃべりをしたり、週末には一緒に遊びに出かけたりと毎日本当に人に恵まれた生活を送っていました。アメリカ留学中の冬休みにはイリノイ大学のプログラムを通して、奨学金付きのイスラエル留学をさせていただくなど、一年限りの大学生ではなく、イリノイ大学生としてイリノイ大学の職員の方々にも本当に大切に扱っていただきました。社会問題に触れる機会も多く、移民問題やジェンダー問題に携わるグループにメンバーとして参加させていただき、多くの刺激も受けました。また授業で英語がわからず苦労したことや肌で感じた自分知識不足・見識不足の点については、これからの人生における新しい課題をいただいたと思って学び続けていくつもりです。

これから小山八郎記念奨学制度に応募する方へのメッセージ
将来は弁護士になる!と決意しての留学でしたが、このイリノイ留学が大きなターニング・ポイントとなり私は就職することにしました。それは、アメリカで民族や宗教の違う人々が一緒に暮らす難しさと奥深さ、日本の豊かさが決して当たり前ではないこと、さまざまな角度から社会問題、政治問題に取り組む友人たちの姿を見て、日本で弁護士になるのではなく、もっと国際的に社会に貢献できる人になりたいと思ったからです。留学準備、留学中、帰国後とイリノイ大学同窓会の方々には本当に多くのアドバイスや支援をしていただきました。一年間日本で在籍していた大学を休学してのイリノイ大学留学だったのですがお釣りどころかそれ以上の経験をさせていただいたと思っています。さまざまな留学の形がありますがアメリカ・イリノイ留学は、チャンレンジしてみたいと思ったら、どんなふうにでも充実させることができる機会だと思っています。是非応募してみてください。

田中豪さん2011年最終レポート

JICの皆様、こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。田中豪です。日本に戻ってきてから4カ月以上が経ちました。一年間の留学生活を振り返りながら、最後のレポートをお届けいたします。

これまでの3回のレポートでは、授業や旅行などについて詳しく書いてきましたが、今回のレポートでは、趣向を変えて、1年間のイリノイでの経験を踏まえて、留学前に聞いた2つの噂とも仮説とも言えるような言説を検証しながら、留学の総括としたいと思います。

仮説1:アメリカの大学生は、日本の大学生よりもよく勉強する。留学すれば勉強できる。

渡米直前、僕は期待に胸を 大きくふくらませていました。というのも、様々な人から、「アメリカの学生はよく勉強する」という話をよく耳にし、留学経験者が口をそろえて、「留学中は よく勉強した」と話していたからです。そんなわけで、アメリカの学生はみんな勉強が大好きで、僕もそんな環境で毎日刺激を受けることができるのだ、と勝手 に思いこんでいました。しかし、結論から言えば、たしかにアメリカの大学生の方が、日本の学生よりも机に座っている時間が長いとは思いますが(日々の課題 の絶対量が多いため)、アメリカのすべての生徒が「学問」に対する高い意識と尊敬を持っているとは限らないですし、留学したからといって勉強できるもので もありませんでした。

日本の学生は、卒業に重きを置いているので、基準が「単位を取るか、落とすか」であるのに対し、アメリカの学生にとっては、成績が重要なので、基準が「Aか、それ以下か」です。つまり、アメリカの学生は、日本の学生より成績上のハードルを高く設定しているだけで、評価のために勉強しているという点で、日本の学生もアメリカの学生と本質的には何も変わらないと思います。前回のレポートでも触れたように、PS310というクラスでは、学生が徒党を組んで教授に抗議し、コミットメントが少なくてすむように、ペーパーから期末テストに変更されました。すべてのアメリカの学生が、知へのあくなき探求心を持っているわけではありません。

また、たしかに、日常的に課題があり、毎週のリーディングアサインメントの負担も軽くありません。それでも、宿題をこなさないと教授に怒られるわけでもないですし、テスト直前に風邪を引いたといってヘルスセンターか病院に駆け込めば、簡単にMake up examの場が用意されます。日本にいたときと同じように、勉強も簡単にさぼることができます。

ですから、アメリカに行っ ただけで学問ができる、というのは幻想であって、その点で、アメリカに行きさえすれば、そこには最高の環境があり、高い意識を持つことなく勉強できるとい う僕の考えは、大きな甘えでありました。結局は、個人がどれだけ自分を追い込んで勉強できるか、によるのだと思います。日本では不真面目だった自分が、留 学すれば大学に通って、日々の課題にも真面目に取り組むようになるだろうと、アメリカ留学という言葉だけに甘えていた自分がいました。勉強するか、しない のか、それは本人の意志の問題で、それ以上でもそれ以下でもなく、留学してもしていなくても同じだと思います。

そんなあたりまえのことに 当初は気付かず、あるいは気付かないふりをしてしまっていたという点で、悔いが残ります。それでも、日本でも、アメリカでも、どんな環境であっても、最後 は自分次第ということを身をもって感じられたのは、僕にとっては大きな収穫でした。これからの人生、環境のせいにするのではなく、どんな場所でも、腐るこ となく精進していこうと思います。

ただ、いくら日本の学生も アメリカの学生も五十歩百歩だと言っても、また、本人の意志の問題だといっても、大学側の学生へのサポート、アクセスには違いがあると思います。アメリカ では、オフィスアワーも制度化されていますし、少人数の授業も多いです。また、(どの程度の実効的な影響力があるかは不明ですが)学生が教授を評価するシ ステムが少なくとも存在し、教授が好き放題に、自分の研究を話すというよりは、学生のニーズにあった授業を心がけ、学生が興味を持ちやすいような課題を目 指している、という学生に対する温かい姿はあると思います。あえて二分論をとれば、日本の大学は、意識の高い学生しか活躍できないけれど、アメリカの大学 は、やる気のない学生にやる気を出させるようなシステムがより制度化されている、ということは言えると思います。

仮説2:留学すれば、英語が上達する

現地で1年間生活するわけですから、当然、英語が上達するだろうと思うわけですが、振り返ってみれば、その場に滞在するだけに甘んじていれば、語学もたいして上達しないという反省があります。

たとえば、授業ですが、日本に比べれば、授業は双方向的かもしれません。それでも、自分が話す時間は、1時間当たり数分。授業が1日に3時間程度であるとすれば、授業では、トータルで1日あたり10分話すかどうかです。課題が忙しいから、睡眠不足が続いたから、と理由をつけ、サークルにも参加せず、友達と出かける誘いも断っていると、スピーキングが上達する機会はほとんどなかったと思います。

ライティングについても、 ペーパーの提出がない授業だけをとれば、長い文章を書かずにすみます。また、たとえペーパーを提出しても、そのペーパーが添削してもらえるかは採点者次第 であって、ライティングの授業でなければ、細かい文法や表現は訂正されずに、内容面だけが評価されることがほとんどだと思います。つまり、間違った表現を 間違ったまま使い続けるわけで、正しい英語を身につけるには、自分で添削をネイティブスピーカーに頼む必要があります。

語彙力についても同様です。現地で漫然と生活しているだけでも、たしかに英会話能力は多少上達するかもしれませんが、New York TimesやThe Economistに出てくるような表現は、机に座って、難しい単語を紙に書いて覚えるような作業をしない限り、身に付かなさそうです。上でも書きましたが、「留学」というかっこいい響きに甘えて、地道な努力を留学中に積み重ねていくことができなかったと思います。

語学についてのこれらの点は、もう留学は終わってしまいましたが、日本でこれからこつこつと頑張っていこうと思います。

自分のこうした反省を踏まえて、もし、僕がもう1回交換留学できるとしたら、心がけることを、次回以降の留学生の参考になれば、と書くことにします。

  1. 学問が好きな学生が集まる授業(General Educationの該当授業はおすすめしない)をなるべく選択する。少人数授業の方がベター。授業やオフィスアワーで教授やTAと積極的にコミュニケーションを取り、できるだけ刺激を受ける。
  2. 個別のLanguage Tutorを学内で見つけて、ペーパーのフィードバックを必ずもらい、書きっぱなしにしない。また、細かい発音のクセや間違った口語表現などを直してもらう。お互いにResponsibilityが発生する、Language Exchangeかお金を払うTutorialの方がより真剣に勉強できるのでいい。
  3. 授業外のアクティビティに積極的に参加する。とくに、定期的にあつまる組織に所属する。趣味のサークルでも、まじめな勉強系のサークルでも、毎週同じ人と顔を合わせて、存在感をアピールできるようになることが重要。

1年間を振り返ってみる と、辛いこともありましたし、それなりには努力できたとは思います。少なくとも、日本にいたときよりは、はるかにまじめに勉強に取り組んだはずです。一方 で、ルーティーンをこなすのに精いっぱいで、自分の努力が、自分の目標に本当に結びついているのか、一番効率的な方法なのか、と振り返る余裕もなく、現状 に満足することなく、よりよい方法を探すような一歩引いた視点が足りなかったと思います。

私事になりますが、5年前後で海外留学する職場に決まりました。今のところは、アメリカの大学院修士課程に留学することを考えています。実際に仕事を始めてみると志望する留学先も変わるかもしれませんが、今回の経験を次回の留学に必ずつなげていこうと思います。

こうして、留学生活を振り 返ってみると、迷える子羊状態であった留学前の自分が信じられません。現在も将来に対する不安はありますが、この留学は、自分に自信をつけてくれました。 最後に頼りになるのも、決断するのも自分。その責任も自分。その他のあらゆることは言い訳にすぎないと分かったのは、この奨学金プログラムのおかげです。 本当にありがとうございます。

そんなJICにいろいろな形で恩返しをしていけるように、今後もお手伝いしていこうと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

2011年10月7日
東京大学 法学部 4年
田中 豪

2011年度奨学生からのビデオレター

2011年8月からイリノイ大学へ留学中の奨学生4名からビデオレターが届きました.


田中豪君の2011年6月分レポート

JICの皆様、こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。田中豪です。現在は既に学期も終わっているのですが、学期中のことを思い出しながら、第3回レポートをお届けいたします。

今学期は、この奨学生レポートに書けるほどの面白い課外活動を経験していないこと、また、僕自身も、奨学金の応募の際だけでなく、アメリカに来て授業の選択を考える際に、過去の奨学生のレポートを参考にしたという理由から、未来の奨学生の参考になればという思いをこめて、先学期のレポート以上に、授業について具体的に書いていこうと思います。

春学期は、以下の7つの授業を受講しました。アメリカでの授業に慣れてきたこともあり、夏学期よりも授業の数を増やし、かつレベルも少し上げてみました。その分、大変なことも多かったですが、間違いなく勉強は先学期よりも充実していたと思います。

1. PS 230: Introduction to Statistics for Political Science Majors
2. PS 318: Interest Groups & Social Movements
3. PS 410: Neighborhoods & Politics
4. LLS 238: Latina/o Social Movements
5. GLBL 296: Critical Human Rights in Global Perspective
6. LAS 490: Translation in European Union
7. LAS 490: UN Terminology and Procedures (3-day Seminar)

1. PS 230: Introduction to Statistics for Political Science Majors

Rという統計ソフトを使って、政治のデータを分析する授業です。New York Timesがこのソフトウェアを特集した記事(2009年1月6日)の中でも書いているように、アメリカでも使用する人が徐々に増えているようです(参考:http://www.nytimes.com/2009/01/07/technology/business-computing/07program.html)。

せっかくなので、ここで、日本とアメリカの政治学科で学部生が勉強できる内容での違いについて、僕が感じたことを2点触れようと思います。僕が日本で所属している東京大学法学部は、法律学科に加えて政治学科を含んでいるのですが、政治の授業としては、国際政治や比較政治(地域研究)、政治哲学が一般的です。日本政治、ヨーロッパ政治史、アジア政治外交史、発展途上国の政治、政治学史などが授業の名前になり、歴史をベースにした、地域研究、あるいは西洋政治哲学の授業がメインになっていると思います。

一方で、イリノイでのPolitical Scienceの授業は、日本で開講されているような比較政治や哲学的な議論に加えて、CongressだったりInterest Groupだったりと、(民主)政治現象を国境に関係なくNeutralに観察して、その政治の主体や現象面を中心に扱う授業も少なくありません。先学期に僕が受講したReligion and Politicsや、今学期のInterest Groups &Social movementsもその一例だと思います。

そして、もうひとつの違いが、定量分析です。授業で読む論文の中には、経済の論文ほどではありませんが、数式が書かれていたりします。統計データを解析するようなものもあります。アメリカのPolitical Scienceの流れとして、とくにAcademicな領域では、数学的な、統計的な分野の開拓が進んでいるようです。ただ、アメリカでも、学部レベルでこうした定量分析を教える授業は少ないようで、UIUCでもこの授業だけです(もちろん、統計学科には、統計の授業はたくさんあります)。ということで、この授業を受講しています。ちなみに、政治学科のある教授は、Political Scienceの学部生教育と大学院教育の断絶を嘆いていました。アメリカの大多数のPolitical Scienceの学生にとっては、目標とする大学院は、政治学のPh. D ではなく、Law school (J.D.)であるようで、Lawを目指す学生の多い学部レベルでは、定量分析のニーズは小さいことが、その背景にあるようです。
さて、このPS 230という授業では、SyllabusにComputer Scienceの知識を持っていることが好ましいと書かれてあっただけに、データをソフトに読み込んだ後は、自分でCodeを入力してCommandを指定しながら、データを加工していきます。そして、最終的には一つを独立変数に、もう一を従属変数として、二つの変数をy=ax+bの形で表すことで、両者の関係を説明します(回帰分析)。

日本では、統計の基礎すら勉強したことがなかったので、はじめはMeanやMedianの違いを学ぶことからスタートし、統計という考え方自体に戸惑い、係数の大小で関係性の強さを評価するという定量分析的な手法に違和感がありました。それでも、自分が高校までそれなりに数学を勉強していたこともあって、そんなに苦労することなく授業にはついていける一方で、クラスメートのアメリカ人たちが苦労していたので、これこそが僕の生き残る道だと思って、授業にはまじめに取り組みました。笑 個人的には、大学入試のために勉強した微分や積分といった関数の問題のほうが数学的には、ずっと難しいような気がします。クラスメートのアメリカ人による教授やTAへの質問を聞いていると、一次関数の基本すら分かっていないのではないかと思うことも多く、日本の普通の学生であれば、大きなアドバンテージがあると、一般的に言えるのかもしれません。

週2回の授業と週1回のTAによる補講で構成され、授業では、毎回自分のPCを持ち込み、与えられた課題をこなします。TAと教授が教室の中を歩き回るので、分からないことがあれば、その場で質問できることになっています。毎回、新たなデータセットが与えられ、教授が作った質問に答えていきます。1学期の間に、アメリカの大統領選挙のデータ、1945年以降の全世界の紛争・戦争のデータ、アメリカの貧富の格差のデータ、世界の民主化度合を比較したデータ、など様々なデータセットに触れ合うことができ、定量分析を切り口に、政治学の様々なトピックをかじることができたのはラッキーでした。金曜日に行われていた、TAによる補講では、その週の復習がメインになります。

評価は、毎回の出席と課題の提出、学期末のFinal Paperによる合算です。教科書は結構難しく、予習には苦労しましたが、授業の課題は、教授やTAによる丁寧な誘導に何度となく助かりました。余談ですが、TAの方は、日本人のPh. Dの女性の方で、僕の大学の先輩でもあり、オフィスアワーでは、授業のことだけでなく、アメリカでの生活や、日本人としてアメリカの大学院に出願することの苦労など、色々なことを学ぶことができました。

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2. PS 318: Interest Groups & Social Movements

GPAとこれまでの取得単位数が一定以上でないと選択できないクラスだったのですが、Political ScienceのDepartment Officeに行って、留学生である旨を伝えたところ、履修することができました。成績によって足切りを行っている理由の一つは、クラスの目的の一つが、研究であることです。毎学期、Political Scienceのうちの二つの授業がこのカテゴリに入れられ、学生と教授が細かく相談できる環境が用意されています。人数は15人以下で(実際は10人程度)、かなり面倒見のいいクラスになっています。教授の丁寧なアドバイスを受けながら論文を書いてみたいという人にとっては、おすすめなので、各学期、どの授業がこのシステムの指定を受けているか探してみるとよいと思います。

評価は、2回のテストと学期末のPaperのはずでしたが、2回の中間テストが非常に簡単だったため、アメリカ人の学生が徒党を組んで、学生はテストを希望すると教授に直訴し、無記名のクラス投票を行ったところ1人を除いて全員が、テストを選んだので、最終的にPaperとテストの選択になりました。ちなみに、その1人は僕でした。笑 研究すること(Paperを書くこと)が主目的の授業でありながら、学生の抗議によってその主目的が曲げられてしまうことに驚きましたが、Final Projectに取り組んだ学生が僕一人だったこともあり、教授もすごく目をかけてくれ、文字通り、マンツーマンで指導を受けることができました。リサーチに行き詰ってメールすると、その日のうちに返信があり、オフィスアワーに関係なく、次の授業までに必ず面談の時間をもらうことができました。先学期は、オフィスアワーに顔を出した経験も数えるほどしかなかったのですが、この授業では、教授とのInteractionがすごく有意義だったので、恥ずかしがっているだけでは何も得るものはなく、教授に自分のやる気を見せつけて、かわいがってもらうことが重要なのだと痛感しました。

3. PS 410: Neighborhoods & Politics

大学周辺のNeighborhoodを調査対象にした授業で、大学院生との合同になっています。教室では、都市計画、政治学、社会学などのJournalや本を学際的に読んでいきます。回帰分析を用いて書かれた論文を授業内で数多く読まされたのですが、PS230で学んだ知識が役に立ちました。アメリカで政治学を勉強したいのであれば、自分でモデルを作って数値を出すことはできずとも、論文を理解するくらいの統計の知識はあったほうがよさそうです。

授業内では、人々が集まれる場所の存在が、人々の政治参加促すという理論(Robert Putnam)であったり、小さい犯罪を放置することが、治安悪化を招くという理論(Fixing Broken windows)であったりを学び、そういった一般的な理論が本当に大学周辺でもあてはまるかどうかを確かめることが授業の最終目的になっています。教室の外での活動として、数人のグループを作り、割り当てられた大学周辺のエリアを調査し、学期末のPaperを書く際の素材となりそうなデータ(道の形や住んでいる人の様子、インタビューなど)を集めました。政治学を日本で勉強していましたが、自分の足で実際にデータを集めながら調査を進めていく社会調査のようなことはしたことがなかったので、とても興味深く取り組むことができました。

4. LLS 238: Latina/o Social Movements

LLSはLatino Latina Studiesの略で、この授業では、アメリカにおけるラテン系移民の社会運動の歴史を学びました。先生はもちろん、学生もほとんどがLatino/Latinaだったのが最大の特徴だったと思います。African American Studiesの授業に顔を出せば、黒人の学生が多く、こうしたEthnicな授業は、自分のIdentityを見つけるために勉強している人も多いのではないかというのが僕の推測です。

そして、もう一つの理由は、こうした学部が、Main streamから抑圧された自分たちの歴史を学びながら、差別をいかに是正し、社会を変革するかを真剣に考える環境となっていることが挙げられると思います。たとえば、この授業ではSocial Movementが授業のTitleに入っているように、Latino/Latinaの中でも、組織を作り、実際に活動している人がほとんどでした。おそらく、大学で最大の問題となっているのは、Undocumentedと呼ばれる、市民権を持たない移民の学生です。イリノイ州は伝統的に移民に寛容であるため、市民権を持たなくても州民としての学費を払うだけで通学することができますが、Undocumentedである限りは、Social Security Numberをもらうことができず、自動車免許を取得したり大企業で働いたりすることは、困難になっています。こうした現状を変えるために、立ち上がっている学生が、僕のクラスには多く、4月には、僕のクラスメートの1人でもあったAndrea Rosales(大学四年生の女の子)が、ジョージア州で座り込みを行ったために拘留され、教室から姿を消しました。その様子は、CNNをはじめとするテレビやニュースメディアにも大きく取り上げられ、自分のクラスメートがJanne Da Arcのように扱われている様子に驚きました(参考:http://www.iyjl.org/?p=2073)。

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5. GLBL 296: Critical Human Rights in Global Perspective

春休みまでの、半学期で1単位の授業でした。政治学では国内的なことばかり勉強していたので、アメリカ人が国際問題をどうとらえているのかも知りたくなって、Global Studiesの授業を受講しました。

教授からのLectureという意味での授業はなく、毎回が個人や各グループの発表会で、学生同士の意見交換に大きな比重が置かれていたと思います。僕がおもしろいと思ったのは、異なるバックグラウンドを持ったアメリカ人同士の鋭い意見の対立です。ボランティアなどにも積極的にかかわり、南米の人権系NPOなどでインターンした経験のある学生も多く、世界各国で起こっている人権侵害に共感する人も多い(ほとんどが女性)一方で、イラクのAbu GhuraybやキューバのGuantanamoの基地での虐待や拷問がトピックになると、ROTCとして軍の訓練を受けながら勉強もしている学生や、大学に行く前には従軍し前線に派遣されたことのある学生(ほとんど男性)からは、アメリカの正義と安全保障を理由に、テロリストとアメリカ国民にまったく同じ人権を保障することへの違和感、すなわち、拷問の一部を正当化する意見も提起され、もはや埋めようのない意見の対立がありました。

この授業からは、アカデミックな意味では、特に深く得るものもありませんでしたが、アメリカ人とプレゼン資料を作るときに、パワーポイントでは、事実の適示にとどめ、それぞれの価値観に触れるような表現を避けようと心がけていましたが、たとえば、アジアでの南京大虐殺をめぐる議論のように、ときには事実を統一することも難しく、この授業の準備でも苦労する場面は多かったです。また、安全保障と人権を比較したときに、安全保障のほうがはるかに大切だと明言するアメリカ人クラスメートが、外交官を目指して勉強しているのを見て、アメリカと世界の将来に少し不安を覚えたことも思い出です。

6. LAS 490: Translation in European Union

以下のLAS 490の二つの授業はTranslation Studiesという学科で開講されている授業です。英語とスペイン語の通訳や翻訳といった、該当する二か国語が流暢でないと履修できなさそうな極めて実践的な授業から、通訳の理論や研究を学ぶアカデミック寄りの授業まで、ある程度の幅を持った講座がこの学科では提供されています。

春学期の最初の半分で、GLBL296が終わってしまい、別の授業を取りたいと思ったので、春休み後から開講され、空席もあったこの授業を受講しました。特別にTranslationへの関心が高かったわけではありませんが、複数言語を話すアメリカ人たちをこのクラスでは発見することができました。一般的に、アメリカ人は英語しか話すことができないと揶揄されることも多く、僕の寮でも、自分のethnicityとは異なる外国語をまじめに勉強している学生を見つけることはほとんどなかったのですが、ここでは、クラスメートのほとんどが、英語以外に2か国語を話すTrilingualやそれを超えたMultilingualばかりで衝撃を受けました。その中でも、Alphabet言語を3つという組み合わせではなく、日本語・アラビア語・中国語といった非ヨーロッパ言語とスペイン語、フランス語、イタリア語などのヨーロッパ言語の組み合わせの人が半分以上で、自分の知らなかったアメリカを見つけることができました。

授業では、EU域内での通訳・翻訳ビジネスの現状や将来予測を学習したり、域内の言語に起因する社会問題を扱ったりしました。授業はあまり練られておらず、場当たり的な講義が多かったですが、学生の多くはプロの通訳や外交官を目指していて、授業にまじめに取り組んでいたのが印象的でした。

7. LAS 490: UN Terminology and Procedures (3-day Seminar)

上の授業とセットで取るとよいとすすめられた講座でした。金曜夕方、土・日は朝から夕方までの3日間コースで、国連でフランス語とロシア語を英語に通訳していた人のセミナーでした。国連の文書の中でどういう単語や表現が使われているかを学ぶことがセミナーの目的で、30人のクラスが10人×3グループに分けられて、それぞれのグループに異なるポジションを与えられます。そのポジションに基づき、議論を通じて、一つの共同提案にまとめ上げるというのがセミナーでした。今回のセミナーでは、大学の学費を下げるというテーマのもとで、過激なこと(学長の解任など)を主張するチームから穏健派まで、3つのグループが、3日間かけて、一つの合意を作り上げました。議論の中では、合意を作るために、強い単語は弱い単語に、あっきりした表現はあいまいな表現に変わっていきます。

僕自身は、Nativeではなく、表現の強弱や明瞭さという観点でアメリカ人と英語で議論を戦わせることができるほど英語を流暢に話せるわけではないので、細かい表現の違いがよく分からず、蚊帳の外に置かれたような気分を感じたことは何度かありました。と同時に、チームに何らかの形で貢献しないと貴重な3日間が無駄になると思い、2日目に(勇気を振り絞って)隣に座っていたアメリカ人の女の子をランチに誘って友達になり、常に隣の席を確保して、僕の主張を、休憩中であれば口頭で、議論中であれば筆談で伝え、僕の代わりにその子に流暢に説明してもらうことで、僕の意見を最終合意にねじこんでもらったりしました。

全体的な話をすると、春学期は、クラスでの英語での議論にも慣れてきて、言語で苦労する場面は少なくなっていただけに、英語の表現でこの授業で苦労したことはいい薬になったと思います。すこし過激な言い方をすれば、「英語なんてコミュニケーションのツールなのだから通じさえすればいい」というのは、非ネイティブの負け惜しみであって、妥協せずに、英語そのものをまだまだ勉強しないといけないと強く感じています。

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以上が、授業のまとめです。次回で最後となるレポートでは、この1年間を通じて、僕が学んだ内容を、具体例よりも一段階上の視点から振り返ることで、留学全体の総括としたいと考えています。

2011年6月17日
東京大学 法学部 4年
田中 豪

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