乾 弘哲さんの最終レポート

皆様、お久しぶりです。2012年度奨学生の乾弘哲です。早いものでもう留学が終わって2か月近くが過ぎました。帰国後はすぐに就職活動に突入して留学をじっくり振り返る余裕がなかったのですが、このレポートを機にこの9か月について考えてみたいと思います。

 まず、留学をして学んだことのうち、勉学に関することを一言でまとめるならcritical thinkingだと思います。具体的に言えば、何かの見解に対して、それをそのまま鵜呑みにせず、その見解の持つメリット・デメリットを常に考える癖が身に付きました。イリノイでの授業は、与えられた課題のリーディングに対して批判を加えることが頻繁に求められました。その結果、discussionは揚げ足取りになりがちな部分も否めないのですが、これを繰り返し叩き込まれることで、日々接する情報に対してもその妥当性を常に問うような思考方法が身についたと思います。
また、それに関連することですが、こうした訓練に加えて、異国で生活したことで自分の考え方や価値観も、批判的に再検討するようになりました。自分が大事だと思うこと、考え方は果たして日本を離れても受け入れられるものか、受け入れられないとすればそれはどういう前提を共有しないといけないのかということを、頻繁に考えるようになったのです。日本に暮らしていると、ある程度同じような前提で話が通じるために見落としがちですが、最近よく耳にする「国際化」、「国際人」といった概念を支えているのは、こうした考え方の違いに敏感になることなのではないでしょうか。

日本館の桜と池。日本を思い出させる風景でした。

これまでのレポートでは触れてこなかったのですが、この留学を振り返るにあたって、1年を通してルームメイトだったDwayneについてお話しします。彼はシカゴの郊外出身のfreshmanで、engineerを目指して勉強していました。彼との出会いは、私の住んでいたintersections LLCのオリエンテーションの席で、会って早々の挨拶がハグだったのが驚いた記憶があります。
渡米前からすでにFacebookを通じてメッセージのやり取りはしていたのですが、実際に会ってみるとかなりやんちゃなところもある若者でした。最初のうちはおとなしくしていた彼ですが、やがて大学1年生らしくさまざまな遊びに手をだし、毎晩深夜遅くに帰ってきては、朝の早い私に起こされてかろうじて次の日の授業に出るといった時期もありました。ちなみに、春学期には時間割上私が起きる時間のほうが遅くなり、彼が遅刻する回数が増えていたように思います。
そんな具合で、まるで私が保護者のような関係でしたが、一方で、この太平洋を越えてきた留学生を彼なりに相当気遣ってくれていたのでしょう。一番印象に残っているのが、夜、唐突に彼が話しかけてきて、日本やアメリカの文化、宗教、さらにはお互いの人生観など数時間にわたって話し続けたことです。今から思えば、私の英語の拙さとそれに加えてそもそも知識不足もあり、私の言ったことが彼にどれほど伝わったかは疑問ではありますが、そんな私の言うことに真剣に耳を傾けてくれた彼の姿勢は、感謝するほかありません。さらに、ともすれば課題の忙しさから部屋に引きこもりがちだった私を外に引っ張り出し、友達に紹介してくれたのもいい思い出です。

春学期が終わる直前、フロアメイトとのお別れパーティ。中華のバイキングに連れて行ってくれたのですが、それまで食べたアメリカの食事のなかで一番の味でした。

学期が終わり、私がアーバナ・シャンペーンを発つ前日に、彼も実家へ帰っていきましたが、その帰りの車の中から、最後の長文の別れのメッセージを送ってくれました。さらに、その後のFacebookのやり取りでは、きっと日本に行くよ!とも言ってくれました。こうしたつながりが、イリノイで得た一番の財産として残っていくのでしょう。

 

 

 

5月上旬に期末試験が終わり、京都での就活説明会に参加すべく、その2日後にはあわただしくオヘア空港から旅立ち、長いようで短かったアメリカ暮らしは幕を閉じました。帰国が一週間ほどに迫った期末試験の最中から、これまで見慣れていた、そして何とも感じなかったアーバナ・シャンペーンの風景のすべてが、懐かしく、名残惜しく感じるようになりました。帰国が近づいて、もっとこんなこともしておけばよかったという後悔が山のように押し寄せてきて、1日1日を本当に貴重なものとして過ごしたように思います。

冬休みにも一度帰国はしていましたが、改めて日本に住み始めると、これまで常識と思っていたことがそうでもないのではないかと感じることがしばしばあります。たとえば、これは帰国してからつくづくと感じたことですが、日本におけるサービスの品質は素晴らしいものがあると実感しました。例えば日本で外食に行ったとすると、1000円未満で驚くほどの高品質の食事が出され、またサービスもチップも払っていないのに笑顔で迎えてくれます。こういったもてなしの心というのは世界に誇るべきと思う一方、少なくともアメリカと比べてサービスを供給する側の負担で支えられている部分が大きいように思われます。
このレポートを書いていて思うのですが、日本に帰国してからというもの、日々の生活の中のふとした瞬間に、自分の中の変化に気づくことがしばしばあります。この留学が自分にもたらしてくれたものというのは、率直に言ってまだ把握しきれていない気がするのですが、既に自覚している変化だけでも相当な数に上っています。
留学はどうだったかと人にきかれれば、楽しかったと答える前に、辛いことも多かったという答えが自分にはしっくりくると思います。語学の面では、やはり最後までネイティブスピーカーの言うことは聞き取れないこともままありましたし、文化というか、考え方、生活の仕方の違いに慣れたかと言われればなじめきれないところもありました。しかし、言ってよかったかと聞かれれば、確実に素晴らしかった、多くのことを学んだと答えますし、また機会があればまたチャレンジしたいことはたくさんあります。この、楽しいことばかりではなかったという自覚が、ある意味ではこれからの自分を駆り立てる力になっていくのでしょう。
もし、留学に悩んでいる人がいたら、もし少しでも行きたいという気があるならぜひ行くべきだというと思います。もちろん、実際にネガティブなことはたくさん起こりますし、留学の途中で心が折れそうになることも多々あるでしょう。だからその意味で、日本人の友達や、日本の友達とのつながりなどセーフティーネットを維持することは絶対に重要です。しかし、折れそうになる心を建て直し、留学を終えてみると、確実に一回り大きくなった自分を再発見するのだと思います。

最後になりますが、このような数えきれない経験を積むきっかけをいただいたすべての方、何かにつけてお世話になったJICの皆様、現地の日本人会の皆様、そしてさまざまな面で支えてくれた同期の奨学生の皆にこの場を借りてお礼を申し上げたいと思います。
ありがとうございました。

ユニオン近くの植え込み。シャンペーんの美しさを思い出す一枚です。

 

 

 

 

2013年7月12日
京都大学法学部4年生
乾 弘哲

乾弘哲さんの2013年4月分奨学生レポート

皆様、お久しぶりです。2012年度奨学生の乾弘哲です。春休み直後に大雪に見舞われたアーバナシャンペーンでしたが、その後は順調に気候も穏やかになってきており、最近では、Tシャツ一枚で登校する学生も多く見かけるようになりました。  今回はあとわずか1カ月となってしまった留学生活についてお知らせします。

I. 授業

II. 春休み ~オーストラリアで模擬国連~                                                                        III. その他課外活動 ~宗教と映画~                                                                              IV. 英語の発信能力

美しい青空とスポーツ施設のCRCE(Campus Recreation Center East)。

I. 授業 前回のレポートで報告しましたように今学期はACDIS(Arms Control, Disarmament, and International Security)科目で時間割を作成したため、文系・理系科目を半分ずつ取ることになっています。

GELG118 Natural Disasters (Prof. S. Altaner)  3・11の大震災を始め、さまざまな自然災害を受ける運命にある日本を、英語の講義を通して振り返ってみたいと思い受講しました。基本的にFreshmen向けGeneral Studiesの授業なので、最初のうちは地震や台風など、日本の中学校の地学で習うような初歩的なことでしたが、講義は豊富な写真とビデオとともに進んでいくので印象深いものです。このヴィジュアルの力は強烈で、普段はそこまで意欲のない学生たちも、例えば東日本大震災で船が2階建ての建物の屋上に打ち上げられた写真がスライドに写されたときは学生たちも「Oh…」と絶句していました。その他にも、インドネシアやトルコの地震、カリフォルニアの地滑り、イタリアの火山噴火など、災害が世界各地で起こっていることを実感する内容です。

PS283 Introduction to International Security (Prof. S. Miller)  先学期に国際政治を勉強して興味を持った、アメリカという国における安全保障概念について知りたいと思ったのが履修のきっかけです。戦争や安全保障を語る上で、日本では第二次大戦という出来事のインパクトが大きい気がしますが、アメリカでは「冷戦」という出来事が予想以上に強い影響を持っていると実感します。先学期の授業で、9/11後のアメリカのテロリストへの対応は、共産主義に代わる新たな敵を見いだし冷戦時代と同じように対処しようとした結果であると言った話を聞きましたが、こうした授業を通して、色々な視点から物事を見られるようになっている気がします。  また、1月から2月にかけて、この授業では「Article Summary」なる課題が課され、文字通り1篇の論文を読んで要約するとともにクラスで扱われた題材とのかかわりを論じるというエッセイを書くことになりました。その論文の正確な理解が問われる分、普段のReading Assignmentよりもずっと時間がかかり、自分の読解力の至らなさを自覚できるいい機会だったと思います。

PHYS280 Nuclear Weapons & Arms Control (Prof. M. Perdekamp)  物理学科が提供している核兵器についての授業です。この授業はPhysics DepartmentのAcademic Advisorに会い、自分が留学生で、日本では4年生であることを伝えたら履修することが出来ました。とはいえ、物理学、しかもFreshmenは履修できないクラスということで内容的についていけるのか少し不安でしたが、physicsやtechnologyについてはそこまで専門的に深めることはせず、どちらかというと一般教養のような話が多くを占めていました。  この授業で面白かったのは、Discussionのクラスにいたクラスメイトの中には国務省や国防省・軍で働きたいといった学生が多く見られたことです。中には海兵隊出身という学生もいて、彼は現代のアメリカ軍の軍事技術について詳しい知識を持っているために授業中も存在感を放っていました。一方、核兵器の根絶を目指す「グローバルゼロ」というNPOに所属する学生も講義に来ており、核をめぐるさまざまな問題を考える機会になっています。

GLBL 397 International Diplomacy and Negotiation (Dr. T. Wedig)  さすがに300番台の授業というだけあって学生もよく勉強していると感じます。担当教授が心理学や教育学などにも造詣のある方で、一般的なPolitical Scienceとは異なったアプローチで過去の国際問題に迫っていきます。  また、この授業の後半ではDiscussionのクラスごとに一国を代表して、オンライン上で他大学のチームと模擬交渉をしており、どのような提案を行うかについてペーパーを核といったグループワークもあります。ところが、この交渉の評価が最終成績にそれほど影響しないこともあって、皆この課題への取り組み方はのんきなものでした。私自身は従来の心配性な性格もあって、各課題の締め切りの1週間前くらいにはそわそわし始め、3日前くらいにはどうやってペーパー書く?とチームメイトにメールを出し始めるのですが、それに皆が返信をして作業に取りかかるのが締め切り前日の夜、ということも珍しくありません。最近では他の授業の課題が一段落したためもあってか、チームメイトも積極的に作業に参加していますが、この経験はどうやってチームで何かを成し遂げるかというリーダーシップに関する関心を深めるきっかけとなりました。

II. 春休み ~オーストラリアでの模擬国連~

Melbourne市内の名物(?)である壁の落書き。

春休みは、日本の大学の友人に誘われてはるばるオーストラリアに飛び、そこで模擬国連の世界大会に参加してみました。これは、世界各国から集まった同世代の学生200人ほどと1週間かけて国際問題について会議を行い、最終日には成果文書を採択するという大会です。複数の会議が同時に開催されるので、合わせると数千人規模の学生が集まることになります。この会議の事前準備の手引きでは、必要な能力としてpublic speakingやresearch、leadershipなど、まさに留学してから学んだような内容の項目が並び、また実際の会議でもこれらのスキルを以下にうまく発揮して会議をリードできるかが問われる場でした。  他の学生が、自分の代表する国の立場を表明するスピーチをするときも「あ、これはCMN101で出てきたAttention Getter(聴衆の注意をひくような言葉やパフォーマンス)だな。なるほど、これはうまい」と思わされる時が何度もありましたし、また自国の立場を成果文書に入れるべく皆が各々主張をし合っているときに、それら適度にコントロールし、すり合わせて形にしていくリーダーシップのスタイルも色々と学ぶことが出来ました。  目標としては、この模擬国連の場で留学の経験を活かそうと思っていたのですが、スピーチにせよリーダーシップにせよ、まだまだ他国の学生を引っ張るだけのものは提示できませんでした。議論の最初のうちは、自分の考えを大勢の前で発表するということもできたのですが、会議が進み、テーマが詳細になっていくと細かい表現やニュアンスまできちんと把握していないと議論についていけず、従って発言も減っていくという状態でした。それでも、これだけの学生を前に英語で発表できたのもそれなりの進歩ですので、道のりは長いながら着実に前進はしていると前向きに考えるようにしています。  また、連日の会議のあとの夕方にはSocial Eventとして飲み会やダンスパーティーがぎっしり詰まっており、留学してから学んだ「楽しむときは全力で楽しむ」という精神を発揮して積極的に参加しました。ちょうど春休み直前は中間テストに加えて各種Paperの締め切りが怒涛のように続いていたので、とてもいい気分転換になりました。  ちなみに、帰りは国際便が遅れ、またシャンペーンに大雪が降ったため飛行機がオヘア空港でストップし、一晩ホテルに閉じ込められることになりました。他の奨学生からこういうときの話を聞いていたこともあり、思わぬ予定変更への対処や航空会社との交渉といったこともそれほど焦らずに済ますことが出来ましたが、この度胸も、米国に来て身に着いたことの一つだと思います。III. その他課外活動  今期はこちらでの生活や英語にも少し慣れてきたこともあって、積極的に各種Eventにも参加してみました。以下ではその中のいくつかをピックアップして取り上げたいと思います。

キリスト教グループのWorship。一見しただけではまるでコンサートのよう。

Campus Worship  まず、今学期に入ってから数回、ルームメイトとその友人たちのグループに誘われて、彼らの Worshipに参加してみました。アメリカに来た目的の一つに、この国の宗教観を知りたいというものがあったのですが、一言でいえばこのWorshipは極めてカジュアル化された宗教経験と言える気がします。初めて参加したときは大学の講堂で開催されたのですが、ステージ上にはバンドのセットが置かれ、最初は全員で現代的なムードの讃美歌を歌い(例えば”Forever Reign”とyoutubeで検索してみてください)、その後ゲストスピーカーによる宗教体験が語られます。キリスト教と言うと、映画などで見る教会をイメージしていたのですが、まるで人気バンドのコンサートか何かのような雰囲気でした。  その後、一通りこれらの式次第がすみ、最後にお祈りをした後は、会場に集まった学生たちが自由におしゃべりを楽しみます。参加している学生の人数は、初回は数百人規模で、中には壮年、高齢の方もちらほら混じっていました。

Film Festival  このキャンパスではあちこちに特定の学問分野を研究する研究センターがあります。先学期は知らなかったのですが、調べてみるとこれらの社会問題や地域研究に取り組んでいるセンターがかなり頻繁にいろいろなイベントを開いていることが分かりました。最近はCenter for South Asian & Middle East Studiesが開催しているMiddle East Film Festivalで「Cairo 678」という映画を鑑賞してきました。この映画は、エジプトでのセクシュアルハラスメントと女性への偏見をテーマにした作品です。エジプトという国やイスラムという宗教の伝統、女性の人権などを絡めた問題を提示しており、考えさせられる内容でした。これらのセンターは他にも講演会などを企画しており、これまで知らなかったことを知る貴重な機会になっています。

「Cairo 678」のポスター。https://en.wikipedia.org/wiki/678_%28film%29より。

IV. 英語の発信能力  最後に、今期の目標に掲げた英語での発信という課題について簡単に触れます。前回のレポートでも申し上げたように、今期はひたすら書くことを課題にしてAdvanced Compositionの単位が認定されるクラスを二つ履修しました。後で何人かの友人にはクレイジーだと言われましたが、たしかに、PS283のArticle Summaryも相まって、2月頃はルームメイトに「お前いつ見てもずっとエッセイ書いてるな」と言われる日々を送ることになりました。  その辛い時期を乗り越えたおかげで、目標としていたライティング能力はある程度向上したと思います。特にPHYS280では、一度提出したエッセイを1週間後にコメント付きで返却され、誤りを修正してその週のうちに再提出するというスタイルで課題が進むため、基本的な作文の条件のようなものはある程度理解することができました。一方、この間は課題に追われて一つ一つの言い回しや文法などがおろそかになっていたので、少し余裕のできた最近は時間を見つけて文法書を読み返すなど、いわゆる日本人の得意分野を補強するよう努めています。とにかく数をこなすことが上達への道であることは間違いないのですが、あまり量を増やし過ぎると個々を振り返る機会が取れずあまり学習効果が得られないのでバランスが大切だと感じます。  このように、自分なりには頑張ったものの、まだネイティブスピーカーに英文を見てもらうとほんの短い文章でも誤りを数か所指摘される状態なので、実際はまだまだ修行が足りないようです。これも、上記で挙げたスピーキングと同様に日々の地道な努力が必要なのだと実感します。

先学期と比べてみると、勉強以外にもいろいろと活動範囲を広げてみた春学期でしたが、それもあと1カ月で終わってしまうかと思うと複雑な気分です。帰国後はすぐに大学に復学しようと思っているため最近は日本とのやり取りが増え、ホームシックではないですが懐かしさを覚えます。ただ同時に、帰国2か月前ほどになってようやく「こちらでの生活にも慣れてきたよ」と自信を持って言える心境になったため、ここにいられるのもあとわずかなのだと思うとさびしい気持ちになります。とはいえ、どれだけさびしがってみてもあと1カ月、その間思う存分こちらでの生活を満喫したいと思っています。

2013年4月15日 京都大学法学部5年  乾 弘哲

乾弘哲さんの2013年2月分奨学生レポート

皆様、お久しぶりです。2012年度奨学生の乾弘哲です。こちらアーバナ・シャンペーンではすっかり木の葉も散り、日中でも氷点下が続く毎日です。もう留学生活も半分以上過ぎてしまったかと思うと、ここまでやってこられたというと満足と、もうそんなに時間が過ぎてしまったのかという焦燥が入り混じった気分になります。

実は、秋学期の中頃に健康を崩し、ときどき病院に通う生活を送っていたのですが、それも今では快復しました。この件に関しては、同期の奨学生の皆やその他いろいろな方に心配とご迷惑をおかけし申し訳なく思うとともに、様々なサポートを頂いたことに心から感謝しております。異国の地で体調を崩すとここまで心細くなるものかと思うほど、一時期はかなりブルーな気分になりましたが、皆さんのおかげで、今では元気に過ごせております。
今回は、そんなこともあってやや停滞気味だった秋学期の反省と、春学期の目標を中心にお届けしたいと思います。

I. 授業 ~課題はきつい、アメリカ人でもきつい~
II. 課外活動と行事 ~安全保障、アメリカ文化、芸術~
III. 英語 ~ETCカフェとドラマ~
IV. 春学期の目標

I. 秋学期の授業を振り返って
まず勉学面について総括すると、やはり言語面による課題が残りました。学期末の課題の山を乗り越えて痛切に感じたことは、やはり、英語のインプット・アウトプットの速度を上げないことには、クラスメイトに追いつくことができないということです。前回のレポートで報告しましたように、秋学期の目標は、表現は乏しくても中身のある発言をすることでした。しかし、日々課される課題はネイティブにとっても大変と感じられる量であり、結局、教科書や論文を読んでも、理解の度合いも理解の速度とも満足のいく結果を残せなかったと思います。
春学期はこの点を改善すべく、予復習に時間をかけられるよう予定を組み、さらにそれを通して英語の向上を図ろうと思っています。(もちろん、こんなことは留学前にやっておくべきだったのでしょうが、一方で、実際にこの環境に入ってみないとここまでの切迫感はわかなかったと思います)

以下では、それぞれの授業を簡単に振り返ってみます。
・PS 280 Introduction to International Relations (Prof. P. Diehl)
・GEOG 110 Geography of International Conflict (Prof. C. Flint)
・PS 300 Human Rights (Mr. Malekafzali, PhD)
・CMN101 Public Speaking (Mr. York)

期末試験前夜に散乱する論文たちとコーラのボトル

まず、PS280とGEOG110は、日々のニュースに敏感になる癖をつけてくれました。授業の内容自体は基本的なことなのですが、discussionなどのアウトプット型の課題で議論についていき、意義ある発言をしようと思うと、日々のニュースや国際情勢に関する基本的なことを知っておく必要があります。例えば、EUと同様の地域統合がNAFTA圏でも可能か、という問いにその場で答えるためには、少なくともカナダ・アメリカ・メキシコについての基本的な知識と、最近の政治・経済・社会の問題を知っておく必要があります。とはいえ、必ずしも学生たちがそうした事情に通じているわけではなく、学年としては彼らより上の私のほうが知識で上回り、意見を出せることもままありました。
ちなみに、このPSの授業の教授は前回紹介したとおりその分野の大家ではあるのですが、大変お茶目な人でした。例えば、Halloweenのときはお菓子の袋を黒猫のぬいぐるみを持ってきて、その日は、優れた発言をした学生はキャンディーをもらえ(200人の大教室なので、前の教壇から投げられる)、いまいちな発言は黒猫のぬいぐるみに「ウニャー?」と鳴かれて終わり、という講義になりました。また、クリスマス直前に行われた期末試験のときは、赤いセーターを着て頭にトナカイの角を付けて試験監督をしており、思わず笑ってしまいました。

Human Rightsの授業は、最後まで密度の高い授業で、第二次大戦後の世界のあり様を人権という観点から眺める内容となりました。先生は、自分の見解をかなり強く主張するタイプの人でしたが、その一方でYou don’t have to agree with what I say in this class.と何度も確認し、学生からの質問には多くの証拠(例えば国連の報告書)を提示して応えていました。とりわけアメリカの中東政策に関する見解では相当批判的な見解も提示しており、人権尊重が謳われる一方での裏の実態について考えるいい機会だったと思います。この授業は、人権の現実について考えることがテーマの一つだったのですが、講義の中ほどで彼が言った”We cannot reach any world where human rights are respected unless we consider political and economic context”という一言は、巷で聞かれる安易な人権擁護の議論とは一線を画した言葉で、強く印象に残っています。
このHuman Rightsの授業は現地の学生の間でもtoughな授業として知られているらしく、reading assignment(しかも、講義とテーマは一緒だが、別内容)を学期中にはこなすことができず、期末試験の2週間前くらいからThanksgiving休暇を使って一気に読みとおすことになってしまいました。もっと前からやっておけばよかったと後悔もしていたのですが、これに関係して、アメリカの学生の実態が垣間見える面白い出来事がありました。この授業では少し話すようになった友人がいて、彼らが主催する試験前のStudy Session(自主勉強会)に誘ってもらったときのことです。課題の本の理解も甘く、授業の内容も100%フォローできているとはいえなかったのでためらいましたが、いざ行ってみるとそこにいた当の主催者の彼は、そもそもReading Assignmentの範囲を知らず、私がたまたま持っていたシラバスを見てその量(約400ページ)に驚き、「これはヤバイ、自分はこれから家に帰って読む」(当時、すでに試験前日の夜6時ごろ)といって、さっさと帰ってしまうということが起こったのです。Study Sessionの企画自体を持ちだしたのが彼だったので、あまりの気楽さにぽかんとしてしまいましたが、結局彼がいなくなってしまったので、集まりも自然解散になりました。彼は中間試験でも成績が上位だったと噂だったのですが、一夜漬けに頼るときもあるんだなぁと日本の大学生と似た面を見つけた気がします。

ある意味で一番苦手だったPublic Speakingのクラスは、学期中頃にあったinformative speechは自分の中で最高の出来でしたが、最後の課題だったビデオに録音して発表するceremonial speechは原稿を覚えきれず、いまいちの出来になってしまいました。なお、その最後の課題をクラスで見て、たがいに評価し合う最後の授業では、クラスのムードメーカーだった女の子の提案で、皆でピザを食べながら鑑賞することになりました。そこでの自分への評価は、改善点も色々指摘される一方、「最初はずっとshyに見えたけど、今では自信を持って喋っていると思う。ずっと良くなった」というコメントをクラスメイトからもらい、素直に嬉しく感じました。
II. 課外活動と行事
年末年始は一度日本に帰り、年明けはChicagoを観光しました。このときは生まれて初めて本格的な時差ボケにかかり寝ていることも多かったのですが、宿泊したHostelでカナダから来た中国人学生と出会い、朝食を一緒にとりながら現在の中国政治について教わるなど面白い経験もすることが出来ました。
秋学期はどちらかというと日々の講義についていくので精一杯でそれといった課外活動はできなかったのですが、いくつか参加した活動、行事を紹介します。

ハロウィーンのアメリカ文化のクラス。Pumpkin Carvingです。

1. ACDIS
これはThe Program in Arms Control, Disarmament, and International Securityの略で、いわゆる「安全保障」の分野に関係する諸学の先生たちが集まった学際プログラムです。せっかくイリノイ大学に来たのだから、何か形に残るものがほしいと思っていたところ、ここが認定した授業を一定数履修すればCertificate(修了証)をもらえるという学部生向けのプログラムを見つけ、メンバーに加わりました(このため、後述の通り春学期の授業は全てこのACDIS認定科目にしました)。なお、秋学期のHuman RightsとGeographyの授業も、ここの認定科目だったことも選んだ理由だったのですが、留学生がCertificateを認めてもらえるかわからないままだったので、本格的に参加したのは11月頃です。
このプログラムでは、ただ授業を認定してくれるだけでなく、Securityに関する資料の揃った資料室を自由に使わせてもらえたり、関連分野のセミナーやインターンシップの情報を頻繁に流してくれたりして重宝しています。少し前には、「Terrorist Threats in/to the Lab」というテーマで、FBIで生物兵器対策に当たっている方を招きGenomic Biology学科が主催したセミナーに参加させてもらいました。アメリカで911直後に発生した、郵便で炭疽菌が送られるという事件は日本でも報道されましたが、そのような生物兵器の入手先として大学の研究室が狙われうるという内容で、非常に興味深く聴くことが出来ました。

2. American Culture Class (ACC)
これは、キリスト教系の団体が運営している異文化交流団体の活動の一つで、週に一度集まり、文字通りアメリカ文化について海外からの学生に紹介してくれるものです。あまり頻繁に顔を出しているわけではないですが、例えばHalloweenのときはカボチャのデコレーション体験をさせてくれるなど、留学生にとっては面白い企画となっています。なお、同じ団体の活動でBible Study、Conversationなどもあります。

 

3. Krannertセンター

こちらはキャンパス内にある美術館、劇場で、年間を通してさまざまな企画展を開催しています。印象に残っているのは、美術館と日本館とが共催した「藍染」をダンスで紹介する催しや、音楽部の教授が毎週金曜夜にブラームスを演奏してくれる連続演奏会、シャンペーン周辺のバレエ教室の発表会の「くるみ割り人形」などです。どれも学生は無料か数10ドル前後の安い価格で入場できるので、非常にお得です。

Indigo(藍)の展示。幻想的な音楽とダンスとともに。

 

 

 

 

 

 

III. 英語
前回のレポートで苦労していると報告した英語ですが、このままではまずいと思い、秋学期の中頃からいくつか取り組みを始めました。その一つが、ETC Coffeehouseというカフェでの会話教室です。現在では週に一回1時間半あるだけなのでそれ自体ではあまり英語が伸びるわけではないのですが、宿題としてアメリカのドラマを観て、そこで出てきた表現を集めるというものがあり、これが非常にためになります。やはり、日本で教わる英語はフォーマルな場面を想定しているので、くだけた場所での会話に出てくる表現は別に覚えないと分かりません。その点、ドラマは若者の生活を描いている現代のものだと頻繁にそうした口語表現が出てくるうえ、ニュースよりずっと速いスピードの英語に触れられるため自分にとっては良い訓練になっています。ちなみに、アメリカではNetflixという動画サイトがあって、月々8ドル程度払えば、数多くのドラマと映画を無制限に見ることが出来ます。(残念ながら、日本では利用できません)
一方、期末試験の論文を書いていて感じたことですが、口語表現だけを練習していると、表現がくだけた、あるいは幼稚な感じになり、フォーマルな文章が書けなくなってきます。現在では、この友人との会話のためのくだけた表現と、フォーマルな場での正式な表現の二つをバランスよく習得するのが課題です。
というわけで、まだまだネイティブ同士の会話にはついていけないことも多いのですが、それでもこちらに着いたころと比べればだいぶとましになった気がします。

III. 春学期の目標
今学期は、以下の4科目を履修しようと考えています。
GELG118 Natural Disasters (Prof. S. Altaner)
PHYS280 Nuclear Weapons & Arms Control (Prof. M. Perdekamp)
PS283 Introduction to International Security (Prof. S. Miller)
GLBL 397 International Diplomacy and Negotiation (Dr. T. Wedig)

先にもお話しした通り、全てACDIS認定科目で、またCertificateを認定されるためには最低2科目の理系科目も履修しないといけないため自然災害と核軍縮について学ぶことにしました。
また、PHYS280とGLBL397はAdvanced Compositionという単位が認定されるクラスで、Academic Writingに重点を置いた課題がたくさん出ることになっています。特に前者のPhysics280の場合、これまで自分が親しんできた国際法・政治学とは違ったWritingの決まりがあるため少し苦労していますが、一方で扱う内容・考え方ともに新鮮さがあります。さらに、GLBL397は最後の一カ月間は他大学と交渉のシミュレーションをするということで、全体的に「発信」に力を入れる学期になりそうです。というわけで、まず勉強面での春学期の目標は
目標1 今まで親しんでいなかった分野について、英語で吸収する力をつける
目標2 書く・話すという「発信」の訓練をする
の2点です。
また、秋学期は体調がすぐれなかったこともあって、外に出かけて楽しむ機会があまりなかったのですが、せっかくフロアメイトのFreshmenたちとは違って合法的にお酒が飲める年齢なので、ソーシャルライフを楽しむべく、今期はバーなどにも積極的に足を運びたいと思っています。その意味で、
目標3 これまで体験しなかった色々な楽しみを見つける
がもう一つの目標(?)です。

さて、冒頭にも書きましたがもう留学生活も半分以上過ぎてしまいました。ここに来るという機会だけでなく、こちらに来てからも多くの人に助けられていると感じます。こうしたご恩を無駄にしないためにも、あと3カ月余りを大切に過ごしていきたいと思っています。

ボストンキャリアフォーラムの際に訪れたHarvard大学で。

 

 

 

 

 

2013年2月3日
京都大学法学部4年生
乾 弘哲

乾弘哲さんの2012年11月分奨学生レポート

 JICの皆様、お久しぶりです。そして、それ以外にこのレポートを読んでくださっている方、はじめまして。2012年度奨学生の乾 弘哲です。

こちらアーバナ・シャンペーンでは、美しい紅葉の季節も過ぎ、朝夕には氷点下を記録するようになりました。そんな留学生活も早2ヶ月が過ぎたなかで、第1回レポートをお届けします。
渡米後も、過去の先輩方のレポートにはいろいろな意味で助けていただいているので、私のレポートもなるべく詳細に書こうと思います。

I. 渡米と、新生活の始まり
II. 授業の様子(以下は、今期受講しているクラスです)
PS280 Introduction to International Relations
GEOG110 Geography of International Conflict
PS300 Special Topics: Human Rights
CMN101 Public Speaking
III. 寮生活と課外活動
IV. 英語について

I. 渡米と、新生活の始まり

                       Freshmen Convocation(入学式のようなもの)の様子。このあと数名の                            教授による管楽器伴奏で、校歌斉唱、Chancellorによる祝辞などがありました

私は、8月19日に伊丹空港発の成田経由で、20日にシカゴのO’Hare空港に到着しました。20日の夜はシカゴのホテルで一泊し、観光したいなーと思いつつも、長時間のフライトで疲れていたため夕方から夜まで寝ていました。起きてからは、せっかくシカゴに来て何もしないのももったいないと思い、ホテルの近くのパブで名物のスペアリブを食べて記念にしました。
翌日は、朝からAmtrakという長距離列車に乗り込み、2時間余り列車に揺られながら都市から畑へと移り変わっていく風景を眺めて過ごしました。
大学に到着してから数日は街中を散策したり買い物に出かけたりしていたのですが(ちなみにこの散策の途中で電子辞書をなくすという失態をやらかし、今でもときどき後悔しています)、数日後にさまざまなイベントが始まり授業が始まると、毎日毎日息つく間もなく何かしている状態になりました。フロアメイトに呼ばれ、イベントに行って初めてそれが何のイベントだったか知ることもままあり、それらが落ち着いたのはようやく1か月が過ぎた頃だったと思います。日本の大学に入学したとき以上に、こちらでは新入生向けに実に多くのイベントが企画されていて、たぶん私が参加できたのはその2割程度だったと思います。今でも寮の掲示板などには所狭しと催しの紹介がされているので、時間を見つけて行ってみたいと思っています。

                               寮の中。日本にある青少年センターのような感じです

II. 授業の様子
渡米前に決めた私の留学の最低限の目標は、第一に、国際関係について現実の実例を通してより深い理解を得ること、第二に、英語で自分の考えを発信できるようにすること、でした。その目標に合わせて、今期は国際関係のクラスを3つ、スピーチのクラスを1つ履修しています。以下、履修を決めた順にお話しします。

・PS 280 Introduction to International Relations (Prof. P. Diehl)
Paul Diehlという、国連平和維持活動などの分野で全米的に有名な教授の授業です。講義が始まる2週間前からシラバスがWebサイトにアップされ、最初の授業向けに90ページの予習課題が示されて戦々恐々としていましたが、いざ講義に出てみると、基礎的な概念をいくつかの例を取り上げながら説明していくという基礎的な授業でした。しかし、基礎的ではあるものの、現在進行形で起こっている豊富な事例を取り上げての説明なので、今の国際政治についてリアルタイムで知見が得られます。また、月・水2回の50分講義に加えて、金曜日にはTAによる50分のdiscussionが設けられていて、そちらではin-class writing(後述)が課されたり、group discussionがあったりと学生側の参加が求められます。まだアメリカ人が早口で話す英語は聴きとれないことが多いため、なんとか存在感を保とうとユニークな観点からの発言ができるように努力しているところです。

・GEOG 110 Geography of International Conflict (Prof. C. Flint)
Geographyの学部が提供している、地政学の入門講座です。日本で地政学を学んだことがなかったこと、日本では「conflict」に特化した授業を受けたことがなかったこと、また、 Rate my Professorという学生による授業の評判が書かれたサイトで、「簡単なクラスだが、得られるものが多い」といった記載があったことから履修を決めました。
いざ出席してみると「簡単」という評判通り、授業自体はペースがゆっくりなのですが、教えられる概念が非常に実用的です。課題としては、3週間に一度New York Timesの記事から一つを選び、その期間にクラスで学んだ概念をあてはめて分析するエッセイがあります。授業をわかっていたつもりでも、いざ現実に使おうとすると自分の理解が不明瞭だったことに気づくことがしばしばあり、さらには日々のニュースに敏感になるので効果的な課題だと思います。また、このエッセイは非常に細かな採点基準(10点満点で、0.25点単位の減点基準!)が示されていて、A評価を取ろうとするとかなりの神経を使ってこのrequirementsを満たさねばならず、この点はtoughな印象です。

・PS 300 Human Rights (Mr. Malekafzali, PhD)
今期おそらくもっとも勉強になるとともに、もっとも苦労しそうな授業がこれです。中東政治を専門とする先生が、週2回、人権について1時間半喋り続けます。講義スタイルはどちらかというと日本の大教室での授業に近いかもしれませんが、実は定員24人の少人数クラス、それも時が経つごとに減っていき、今では教室には15人ほどしかいません。先生自身も厳しい人で、最初の授業で言われたことは、
1. 授業開始時間は厳守すること、遅れたのなら出席しないように(「社会に出たら君の雇い主は君を待ってくれない」)、
2. reading assignmentの内容は授業で言及、復習したりしない(「そんなことは君たちが自分でやることで、私の仕事はそれに新しい知識を付け加えることだ」)、
3. make-up exam(試験をやむをえず欠席した場合の代替措置)はいかなる理由があっても認めない(「それが公平性というものだ」)でした。
一方、その厳しさの裏返しで、講義は非常に質の高いものとなっています。最初に人権という概念の歴史的成り立ち、理論的枠組みを話した後は、アルメニアのジェノサイドに始まり、イラン、ニカラグア、ナイジェリアなどでの、先進国の政府や企業が絡んだ人権侵害について実例に沿った話が展開されています。先にお話ししたように、頻繁に質問の時間は与えられるのですが、9割以上、先生が話をするスタイルであるため、一回の授業当たり10ページ近くのノートを取っています。また、ときどき先生からクラス全員にメールが送られてきて、人権関係の動画(主にYouTube)を紹介されます。
授業の後半は戦争犯罪と国際刑事法の成立にあてられる予定で、私の専門分野でもあるため今から楽しみにしています。

CMN101 Public Speaking (Mr. York)
JICの先輩方や、同期の奨学生も受講している授業ですが、担当する先生(この授業はTeaching Assistantが担当している)によって授業の進め方に違いがあるようです。基本的にはいかに大勢の聴衆の前で効果的にスピーチをするかを学ぶ授業なのですが、興味深いのは「効果的なスピーチとは何か」を、教科書を使って体系的に学ばせようとしている点です。授業もその体系に従って行われるので、学期中に行うことになる計5回のスピーチも要素別の細かい採点基準に従って作らなければなりません。例えば、聴衆の理解を促すためのAudience Adaptation(スピーチの内容を、聴衆にとって身近な話題と絡めて話すこと)という概念があり、それを最低3回、スピーチに組み込まなければならないといった具合です。
私のクラスはほとんどが英語ネイティブのアメリカ人、そこに数人留学生が混じっている構成なので、先生、学生とも喋るスピードが完全なナチュラルスピードで、ついていくのがなかなか大変です(他の講義、特に大教室での場合は、先生は多少ゆっくり話すことが多い)。また、事前に準備できるスピーチとはまた別に、私のクラスではImpromptu(即興)スピーチが授業中に課されることがあり、これにも頭を悩ませました。一番落ち込んだのは、9月の半ばにあった、クラスメートとペアを組んだ即興スピーチです。そこでは5分ほどの準備時間を与えられ、一見すると繋がりのない二つの単語をうまく関連させる形でスピーチをするというもので、相手の女の子が序論と結論を、私が本論と具体例を喋ることになりました。テーマについては二人で合意できたものの、準備時間の最後まで彼女が述べようとしている序論と結論が完全に理解できず、そのまま本番を迎えてしまい、序論から本論の流れはうまく行ったものの、本論の言わんとするところと、彼女が述べた結論がずれたスピーチになってしまいました。
この経験から学んだことは、わからないことがあれば「君が言いたいのはこういうことか?」という確認をきちんととって、正確な理解に努めることの大切さです(いまだに実行できていないことも多いですが)。今でも即興スピーチは苦手ですが、なんとか他の部分で補えるよう頑張りたいと思います。

III. 寮生活と、課外活動
私はPARという寮で、IntersectionsというLLC(Living Learning Community:一緒に生活するとともに、特定のテーマに関する理解を深めることを目的としたプログラム)に所属しています。Intersectionsのテーマは、人種、信条、性、国籍など様々なカテゴリーに属する人がいかに共存していくかを学ぶことで、それに即した活動が時々開催されます。
その一つとして、9月半ばにはOhio州CincinnatiにあるNational Underground Railroad Freedom Centerへ旅行に行きました。この施設は、かつて黒人奴隷を北部の自由州(奴隷制が禁止された州)へ逃がすために作られた地下通路(Underground Railroad)から名前をとり、過去から現代までの「奴隷」についてさまざまな展示をしているところでした。この博物館の屋上からすぐ近くに川が見えます。この川が、奴隷であったKentucky州との州境で、この川を渡ってOhioまで逃げようとした奴隷が多数いたといった話をガイドさんから聞き、多民族国家アメリカの辿ってきた足跡を垣間見れた気がします。この旅行で受けた印象はなかなか強烈で、特に「現代の奴隷制度」と位置づけられた人身売買などの展示にも思うところがたくさんあったのですが、それに関してはもう少し考えがまとまってから、改めて書きたいと思います。

                       Cincinnatiでの夜。町中で見つけた広場でIntersectionsのメンバーと

IV. 英語
今までの文章からうかがえるかもしれませんが、こちらに来て苦労しているのは、やはり言語です。渡米前には英語に多少の自信があったこともあり、なんとかなるだろうと思っていたのですが、実際になんとかなっている部分もあれば、なんとかなっていない部分もあります。今後の自分の成長を見届けるためにも、この時点で現状を記しておきます。
まず、日々の生活について。私の印象からすると、ほとんど英語がしゃべれなくとも、こちらで生きていくことはできると思います。それこそ「Yes, No, Thank you」さえ知っていれば、あとは適当に単語の羅列をBody Languageで補うことで買い物や簡単な事務手続きなど、生きていくのに最低限必要なことはこなしていくことができます。
一方、講義やdiscussionでは難しめの語彙が使われたり、クラスメートが早口だったりして、彼らが話していることを正確に理解する段階には至っていません。また、課題の中でも、in-class writingには悔しい思いをすることが多いです。PS280のクラスではdiscussionの時間にときどき10分ほどの時間を使ってその場で短いエッセイを書くことが求められます。他の学生は大体ノート1ページ弱のエッセイをすらすら書きあげるのですが、私の場合はまず構成を考え、そのうえで思うように出てこない英語と格闘しながら書きあげるというステップを踏むため、分量としては彼らの半分ほどしか書くことができません。しかし、数をこなすうち、量(より踏み込めば、提示できる論点の多さ)では負けていても、きちんと課題を理解していることを示すようなポイントを押さえた視点を盛り込むことで高得点を取れると気付きました。そうして結局は予習の量とその理解の深さがものを言うのだなと悟ってからは、いかにすれば無駄な部分を省いて凝縮した議論ができるかを考えています。
それ以外に、ネイティブ同士の会話がほとんど聴きとれないなど、英語に関しては課題が多いですが、現在いくつか考えていることも含めて、次回のレポートでご報告させていただくつもりです。

早いもので留学生活もおよそ4分の1が過ぎてしまいました。これまではいろいろな新しいことに慣れようともがき、日々の課題をこなすうちに時間が過ぎていくという受け身の姿勢でしたが、今後の目標としては、積極的に自ら何かを吸収しようと活動する攻めの姿勢に変わりたいと思っています。

最後になりましたが、これほどまでにさまざまな経験をする機会を与えてくださったJICの皆様、また、こちらに来てからの幾つかの私的な相談にも快く応じていただいた方々にこの場を借りて感謝したく思います。ありがとうございます。

                                 夏のSouth Quad。天気のいい日に横になると気持ちいい

2012年11月7日
京都大学法学部4年生
乾 弘哲