田中豪さん2011年最終レポート

JICの皆様、こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。田中豪です。日本に戻ってきてから4カ月以上が経ちました。一年間の留学生活を振り返りながら、最後のレポートをお届けいたします。

これまでの3回のレポートでは、授業や旅行などについて詳しく書いてきましたが、今回のレポートでは、趣向を変えて、1年間のイリノイでの経験を踏まえて、留学前に聞いた2つの噂とも仮説とも言えるような言説を検証しながら、留学の総括としたいと思います。

仮説1:アメリカの大学生は、日本の大学生よりもよく勉強する。留学すれば勉強できる。

渡米直前、僕は期待に胸を 大きくふくらませていました。というのも、様々な人から、「アメリカの学生はよく勉強する」という話をよく耳にし、留学経験者が口をそろえて、「留学中は よく勉強した」と話していたからです。そんなわけで、アメリカの学生はみんな勉強が大好きで、僕もそんな環境で毎日刺激を受けることができるのだ、と勝手 に思いこんでいました。しかし、結論から言えば、たしかにアメリカの大学生の方が、日本の学生よりも机に座っている時間が長いとは思いますが(日々の課題 の絶対量が多いため)、アメリカのすべての生徒が「学問」に対する高い意識と尊敬を持っているとは限らないですし、留学したからといって勉強できるもので もありませんでした。

日本の学生は、卒業に重きを置いているので、基準が「単位を取るか、落とすか」であるのに対し、アメリカの学生にとっては、成績が重要なので、基準が「Aか、それ以下か」です。つまり、アメリカの学生は、日本の学生より成績上のハードルを高く設定しているだけで、評価のために勉強しているという点で、日本の学生もアメリカの学生と本質的には何も変わらないと思います。前回のレポートでも触れたように、PS310というクラスでは、学生が徒党を組んで教授に抗議し、コミットメントが少なくてすむように、ペーパーから期末テストに変更されました。すべてのアメリカの学生が、知へのあくなき探求心を持っているわけではありません。

また、たしかに、日常的に課題があり、毎週のリーディングアサインメントの負担も軽くありません。それでも、宿題をこなさないと教授に怒られるわけでもないですし、テスト直前に風邪を引いたといってヘルスセンターか病院に駆け込めば、簡単にMake up examの場が用意されます。日本にいたときと同じように、勉強も簡単にさぼることができます。

ですから、アメリカに行っ ただけで学問ができる、というのは幻想であって、その点で、アメリカに行きさえすれば、そこには最高の環境があり、高い意識を持つことなく勉強できるとい う僕の考えは、大きな甘えでありました。結局は、個人がどれだけ自分を追い込んで勉強できるか、によるのだと思います。日本では不真面目だった自分が、留 学すれば大学に通って、日々の課題にも真面目に取り組むようになるだろうと、アメリカ留学という言葉だけに甘えていた自分がいました。勉強するか、しない のか、それは本人の意志の問題で、それ以上でもそれ以下でもなく、留学してもしていなくても同じだと思います。

そんなあたりまえのことに 当初は気付かず、あるいは気付かないふりをしてしまっていたという点で、悔いが残ります。それでも、日本でも、アメリカでも、どんな環境であっても、最後 は自分次第ということを身をもって感じられたのは、僕にとっては大きな収穫でした。これからの人生、環境のせいにするのではなく、どんな場所でも、腐るこ となく精進していこうと思います。

ただ、いくら日本の学生も アメリカの学生も五十歩百歩だと言っても、また、本人の意志の問題だといっても、大学側の学生へのサポート、アクセスには違いがあると思います。アメリカ では、オフィスアワーも制度化されていますし、少人数の授業も多いです。また、(どの程度の実効的な影響力があるかは不明ですが)学生が教授を評価するシ ステムが少なくとも存在し、教授が好き放題に、自分の研究を話すというよりは、学生のニーズにあった授業を心がけ、学生が興味を持ちやすいような課題を目 指している、という学生に対する温かい姿はあると思います。あえて二分論をとれば、日本の大学は、意識の高い学生しか活躍できないけれど、アメリカの大学 は、やる気のない学生にやる気を出させるようなシステムがより制度化されている、ということは言えると思います。

仮説2:留学すれば、英語が上達する

現地で1年間生活するわけですから、当然、英語が上達するだろうと思うわけですが、振り返ってみれば、その場に滞在するだけに甘んじていれば、語学もたいして上達しないという反省があります。

たとえば、授業ですが、日本に比べれば、授業は双方向的かもしれません。それでも、自分が話す時間は、1時間当たり数分。授業が1日に3時間程度であるとすれば、授業では、トータルで1日あたり10分話すかどうかです。課題が忙しいから、睡眠不足が続いたから、と理由をつけ、サークルにも参加せず、友達と出かける誘いも断っていると、スピーキングが上達する機会はほとんどなかったと思います。

ライティングについても、 ペーパーの提出がない授業だけをとれば、長い文章を書かずにすみます。また、たとえペーパーを提出しても、そのペーパーが添削してもらえるかは採点者次第 であって、ライティングの授業でなければ、細かい文法や表現は訂正されずに、内容面だけが評価されることがほとんどだと思います。つまり、間違った表現を 間違ったまま使い続けるわけで、正しい英語を身につけるには、自分で添削をネイティブスピーカーに頼む必要があります。

語彙力についても同様です。現地で漫然と生活しているだけでも、たしかに英会話能力は多少上達するかもしれませんが、New York TimesやThe Economistに出てくるような表現は、机に座って、難しい単語を紙に書いて覚えるような作業をしない限り、身に付かなさそうです。上でも書きましたが、「留学」というかっこいい響きに甘えて、地道な努力を留学中に積み重ねていくことができなかったと思います。

語学についてのこれらの点は、もう留学は終わってしまいましたが、日本でこれからこつこつと頑張っていこうと思います。

自分のこうした反省を踏まえて、もし、僕がもう1回交換留学できるとしたら、心がけることを、次回以降の留学生の参考になれば、と書くことにします。

  1. 学問が好きな学生が集まる授業(General Educationの該当授業はおすすめしない)をなるべく選択する。少人数授業の方がベター。授業やオフィスアワーで教授やTAと積極的にコミュニケーションを取り、できるだけ刺激を受ける。
  2. 個別のLanguage Tutorを学内で見つけて、ペーパーのフィードバックを必ずもらい、書きっぱなしにしない。また、細かい発音のクセや間違った口語表現などを直してもらう。お互いにResponsibilityが発生する、Language Exchangeかお金を払うTutorialの方がより真剣に勉強できるのでいい。
  3. 授業外のアクティビティに積極的に参加する。とくに、定期的にあつまる組織に所属する。趣味のサークルでも、まじめな勉強系のサークルでも、毎週同じ人と顔を合わせて、存在感をアピールできるようになることが重要。

1年間を振り返ってみる と、辛いこともありましたし、それなりには努力できたとは思います。少なくとも、日本にいたときよりは、はるかにまじめに勉強に取り組んだはずです。一方 で、ルーティーンをこなすのに精いっぱいで、自分の努力が、自分の目標に本当に結びついているのか、一番効率的な方法なのか、と振り返る余裕もなく、現状 に満足することなく、よりよい方法を探すような一歩引いた視点が足りなかったと思います。

私事になりますが、5年前後で海外留学する職場に決まりました。今のところは、アメリカの大学院修士課程に留学することを考えています。実際に仕事を始めてみると志望する留学先も変わるかもしれませんが、今回の経験を次回の留学に必ずつなげていこうと思います。

こうして、留学生活を振り 返ってみると、迷える子羊状態であった留学前の自分が信じられません。現在も将来に対する不安はありますが、この留学は、自分に自信をつけてくれました。 最後に頼りになるのも、決断するのも自分。その責任も自分。その他のあらゆることは言い訳にすぎないと分かったのは、この奨学金プログラムのおかげです。 本当にありがとうございます。

そんなJICにいろいろな形で恩返しをしていけるように、今後もお手伝いしていこうと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

2011年10月7日
東京大学 法学部 4年
田中 豪

田中豪君の2011年6月分レポート

JICの皆様、こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。田中豪です。現在は既に学期も終わっているのですが、学期中のことを思い出しながら、第3回レポートをお届けいたします。

今学期は、この奨学生レポートに書けるほどの面白い課外活動を経験していないこと、また、僕自身も、奨学金の応募の際だけでなく、アメリカに来て授業の選択を考える際に、過去の奨学生のレポートを参考にしたという理由から、未来の奨学生の参考になればという思いをこめて、先学期のレポート以上に、授業について具体的に書いていこうと思います。

春学期は、以下の7つの授業を受講しました。アメリカでの授業に慣れてきたこともあり、夏学期よりも授業の数を増やし、かつレベルも少し上げてみました。その分、大変なことも多かったですが、間違いなく勉強は先学期よりも充実していたと思います。

1. PS 230: Introduction to Statistics for Political Science Majors
2. PS 318: Interest Groups & Social Movements
3. PS 410: Neighborhoods & Politics
4. LLS 238: Latina/o Social Movements
5. GLBL 296: Critical Human Rights in Global Perspective
6. LAS 490: Translation in European Union
7. LAS 490: UN Terminology and Procedures (3-day Seminar)

1. PS 230: Introduction to Statistics for Political Science Majors

Rという統計ソフトを使って、政治のデータを分析する授業です。New York Timesがこのソフトウェアを特集した記事(2009年1月6日)の中でも書いているように、アメリカでも使用する人が徐々に増えているようです(参考:http://www.nytimes.com/2009/01/07/technology/business-computing/07program.html)。

せっかくなので、ここで、日本とアメリカの政治学科で学部生が勉強できる内容での違いについて、僕が感じたことを2点触れようと思います。僕が日本で所属している東京大学法学部は、法律学科に加えて政治学科を含んでいるのですが、政治の授業としては、国際政治や比較政治(地域研究)、政治哲学が一般的です。日本政治、ヨーロッパ政治史、アジア政治外交史、発展途上国の政治、政治学史などが授業の名前になり、歴史をベースにした、地域研究、あるいは西洋政治哲学の授業がメインになっていると思います。

一方で、イリノイでのPolitical Scienceの授業は、日本で開講されているような比較政治や哲学的な議論に加えて、CongressだったりInterest Groupだったりと、(民主)政治現象を国境に関係なくNeutralに観察して、その政治の主体や現象面を中心に扱う授業も少なくありません。先学期に僕が受講したReligion and Politicsや、今学期のInterest Groups &Social movementsもその一例だと思います。

そして、もうひとつの違いが、定量分析です。授業で読む論文の中には、経済の論文ほどではありませんが、数式が書かれていたりします。統計データを解析するようなものもあります。アメリカのPolitical Scienceの流れとして、とくにAcademicな領域では、数学的な、統計的な分野の開拓が進んでいるようです。ただ、アメリカでも、学部レベルでこうした定量分析を教える授業は少ないようで、UIUCでもこの授業だけです(もちろん、統計学科には、統計の授業はたくさんあります)。ということで、この授業を受講しています。ちなみに、政治学科のある教授は、Political Scienceの学部生教育と大学院教育の断絶を嘆いていました。アメリカの大多数のPolitical Scienceの学生にとっては、目標とする大学院は、政治学のPh. D ではなく、Law school (J.D.)であるようで、Lawを目指す学生の多い学部レベルでは、定量分析のニーズは小さいことが、その背景にあるようです。
さて、このPS 230という授業では、SyllabusにComputer Scienceの知識を持っていることが好ましいと書かれてあっただけに、データをソフトに読み込んだ後は、自分でCodeを入力してCommandを指定しながら、データを加工していきます。そして、最終的には一つを独立変数に、もう一を従属変数として、二つの変数をy=ax+bの形で表すことで、両者の関係を説明します(回帰分析)。

日本では、統計の基礎すら勉強したことがなかったので、はじめはMeanやMedianの違いを学ぶことからスタートし、統計という考え方自体に戸惑い、係数の大小で関係性の強さを評価するという定量分析的な手法に違和感がありました。それでも、自分が高校までそれなりに数学を勉強していたこともあって、そんなに苦労することなく授業にはついていける一方で、クラスメートのアメリカ人たちが苦労していたので、これこそが僕の生き残る道だと思って、授業にはまじめに取り組みました。笑 個人的には、大学入試のために勉強した微分や積分といった関数の問題のほうが数学的には、ずっと難しいような気がします。クラスメートのアメリカ人による教授やTAへの質問を聞いていると、一次関数の基本すら分かっていないのではないかと思うことも多く、日本の普通の学生であれば、大きなアドバンテージがあると、一般的に言えるのかもしれません。

週2回の授業と週1回のTAによる補講で構成され、授業では、毎回自分のPCを持ち込み、与えられた課題をこなします。TAと教授が教室の中を歩き回るので、分からないことがあれば、その場で質問できることになっています。毎回、新たなデータセットが与えられ、教授が作った質問に答えていきます。1学期の間に、アメリカの大統領選挙のデータ、1945年以降の全世界の紛争・戦争のデータ、アメリカの貧富の格差のデータ、世界の民主化度合を比較したデータ、など様々なデータセットに触れ合うことができ、定量分析を切り口に、政治学の様々なトピックをかじることができたのはラッキーでした。金曜日に行われていた、TAによる補講では、その週の復習がメインになります。

評価は、毎回の出席と課題の提出、学期末のFinal Paperによる合算です。教科書は結構難しく、予習には苦労しましたが、授業の課題は、教授やTAによる丁寧な誘導に何度となく助かりました。余談ですが、TAの方は、日本人のPh. Dの女性の方で、僕の大学の先輩でもあり、オフィスアワーでは、授業のことだけでなく、アメリカでの生活や、日本人としてアメリカの大学院に出願することの苦労など、色々なことを学ぶことができました。

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2. PS 318: Interest Groups & Social Movements

GPAとこれまでの取得単位数が一定以上でないと選択できないクラスだったのですが、Political ScienceのDepartment Officeに行って、留学生である旨を伝えたところ、履修することができました。成績によって足切りを行っている理由の一つは、クラスの目的の一つが、研究であることです。毎学期、Political Scienceのうちの二つの授業がこのカテゴリに入れられ、学生と教授が細かく相談できる環境が用意されています。人数は15人以下で(実際は10人程度)、かなり面倒見のいいクラスになっています。教授の丁寧なアドバイスを受けながら論文を書いてみたいという人にとっては、おすすめなので、各学期、どの授業がこのシステムの指定を受けているか探してみるとよいと思います。

評価は、2回のテストと学期末のPaperのはずでしたが、2回の中間テストが非常に簡単だったため、アメリカ人の学生が徒党を組んで、学生はテストを希望すると教授に直訴し、無記名のクラス投票を行ったところ1人を除いて全員が、テストを選んだので、最終的にPaperとテストの選択になりました。ちなみに、その1人は僕でした。笑 研究すること(Paperを書くこと)が主目的の授業でありながら、学生の抗議によってその主目的が曲げられてしまうことに驚きましたが、Final Projectに取り組んだ学生が僕一人だったこともあり、教授もすごく目をかけてくれ、文字通り、マンツーマンで指導を受けることができました。リサーチに行き詰ってメールすると、その日のうちに返信があり、オフィスアワーに関係なく、次の授業までに必ず面談の時間をもらうことができました。先学期は、オフィスアワーに顔を出した経験も数えるほどしかなかったのですが、この授業では、教授とのInteractionがすごく有意義だったので、恥ずかしがっているだけでは何も得るものはなく、教授に自分のやる気を見せつけて、かわいがってもらうことが重要なのだと痛感しました。

3. PS 410: Neighborhoods & Politics

大学周辺のNeighborhoodを調査対象にした授業で、大学院生との合同になっています。教室では、都市計画、政治学、社会学などのJournalや本を学際的に読んでいきます。回帰分析を用いて書かれた論文を授業内で数多く読まされたのですが、PS230で学んだ知識が役に立ちました。アメリカで政治学を勉強したいのであれば、自分でモデルを作って数値を出すことはできずとも、論文を理解するくらいの統計の知識はあったほうがよさそうです。

授業内では、人々が集まれる場所の存在が、人々の政治参加促すという理論(Robert Putnam)であったり、小さい犯罪を放置することが、治安悪化を招くという理論(Fixing Broken windows)であったりを学び、そういった一般的な理論が本当に大学周辺でもあてはまるかどうかを確かめることが授業の最終目的になっています。教室の外での活動として、数人のグループを作り、割り当てられた大学周辺のエリアを調査し、学期末のPaperを書く際の素材となりそうなデータ(道の形や住んでいる人の様子、インタビューなど)を集めました。政治学を日本で勉強していましたが、自分の足で実際にデータを集めながら調査を進めていく社会調査のようなことはしたことがなかったので、とても興味深く取り組むことができました。

4. LLS 238: Latina/o Social Movements

LLSはLatino Latina Studiesの略で、この授業では、アメリカにおけるラテン系移民の社会運動の歴史を学びました。先生はもちろん、学生もほとんどがLatino/Latinaだったのが最大の特徴だったと思います。African American Studiesの授業に顔を出せば、黒人の学生が多く、こうしたEthnicな授業は、自分のIdentityを見つけるために勉強している人も多いのではないかというのが僕の推測です。

そして、もう一つの理由は、こうした学部が、Main streamから抑圧された自分たちの歴史を学びながら、差別をいかに是正し、社会を変革するかを真剣に考える環境となっていることが挙げられると思います。たとえば、この授業ではSocial Movementが授業のTitleに入っているように、Latino/Latinaの中でも、組織を作り、実際に活動している人がほとんどでした。おそらく、大学で最大の問題となっているのは、Undocumentedと呼ばれる、市民権を持たない移民の学生です。イリノイ州は伝統的に移民に寛容であるため、市民権を持たなくても州民としての学費を払うだけで通学することができますが、Undocumentedである限りは、Social Security Numberをもらうことができず、自動車免許を取得したり大企業で働いたりすることは、困難になっています。こうした現状を変えるために、立ち上がっている学生が、僕のクラスには多く、4月には、僕のクラスメートの1人でもあったAndrea Rosales(大学四年生の女の子)が、ジョージア州で座り込みを行ったために拘留され、教室から姿を消しました。その様子は、CNNをはじめとするテレビやニュースメディアにも大きく取り上げられ、自分のクラスメートがJanne Da Arcのように扱われている様子に驚きました(参考:http://www.iyjl.org/?p=2073)。

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5. GLBL 296: Critical Human Rights in Global Perspective

春休みまでの、半学期で1単位の授業でした。政治学では国内的なことばかり勉強していたので、アメリカ人が国際問題をどうとらえているのかも知りたくなって、Global Studiesの授業を受講しました。

教授からのLectureという意味での授業はなく、毎回が個人や各グループの発表会で、学生同士の意見交換に大きな比重が置かれていたと思います。僕がおもしろいと思ったのは、異なるバックグラウンドを持ったアメリカ人同士の鋭い意見の対立です。ボランティアなどにも積極的にかかわり、南米の人権系NPOなどでインターンした経験のある学生も多く、世界各国で起こっている人権侵害に共感する人も多い(ほとんどが女性)一方で、イラクのAbu GhuraybやキューバのGuantanamoの基地での虐待や拷問がトピックになると、ROTCとして軍の訓練を受けながら勉強もしている学生や、大学に行く前には従軍し前線に派遣されたことのある学生(ほとんど男性)からは、アメリカの正義と安全保障を理由に、テロリストとアメリカ国民にまったく同じ人権を保障することへの違和感、すなわち、拷問の一部を正当化する意見も提起され、もはや埋めようのない意見の対立がありました。

この授業からは、アカデミックな意味では、特に深く得るものもありませんでしたが、アメリカ人とプレゼン資料を作るときに、パワーポイントでは、事実の適示にとどめ、それぞれの価値観に触れるような表現を避けようと心がけていましたが、たとえば、アジアでの南京大虐殺をめぐる議論のように、ときには事実を統一することも難しく、この授業の準備でも苦労する場面は多かったです。また、安全保障と人権を比較したときに、安全保障のほうがはるかに大切だと明言するアメリカ人クラスメートが、外交官を目指して勉強しているのを見て、アメリカと世界の将来に少し不安を覚えたことも思い出です。

6. LAS 490: Translation in European Union

以下のLAS 490の二つの授業はTranslation Studiesという学科で開講されている授業です。英語とスペイン語の通訳や翻訳といった、該当する二か国語が流暢でないと履修できなさそうな極めて実践的な授業から、通訳の理論や研究を学ぶアカデミック寄りの授業まで、ある程度の幅を持った講座がこの学科では提供されています。

春学期の最初の半分で、GLBL296が終わってしまい、別の授業を取りたいと思ったので、春休み後から開講され、空席もあったこの授業を受講しました。特別にTranslationへの関心が高かったわけではありませんが、複数言語を話すアメリカ人たちをこのクラスでは発見することができました。一般的に、アメリカ人は英語しか話すことができないと揶揄されることも多く、僕の寮でも、自分のethnicityとは異なる外国語をまじめに勉強している学生を見つけることはほとんどなかったのですが、ここでは、クラスメートのほとんどが、英語以外に2か国語を話すTrilingualやそれを超えたMultilingualばかりで衝撃を受けました。その中でも、Alphabet言語を3つという組み合わせではなく、日本語・アラビア語・中国語といった非ヨーロッパ言語とスペイン語、フランス語、イタリア語などのヨーロッパ言語の組み合わせの人が半分以上で、自分の知らなかったアメリカを見つけることができました。

授業では、EU域内での通訳・翻訳ビジネスの現状や将来予測を学習したり、域内の言語に起因する社会問題を扱ったりしました。授業はあまり練られておらず、場当たり的な講義が多かったですが、学生の多くはプロの通訳や外交官を目指していて、授業にまじめに取り組んでいたのが印象的でした。

7. LAS 490: UN Terminology and Procedures (3-day Seminar)

上の授業とセットで取るとよいとすすめられた講座でした。金曜夕方、土・日は朝から夕方までの3日間コースで、国連でフランス語とロシア語を英語に通訳していた人のセミナーでした。国連の文書の中でどういう単語や表現が使われているかを学ぶことがセミナーの目的で、30人のクラスが10人×3グループに分けられて、それぞれのグループに異なるポジションを与えられます。そのポジションに基づき、議論を通じて、一つの共同提案にまとめ上げるというのがセミナーでした。今回のセミナーでは、大学の学費を下げるというテーマのもとで、過激なこと(学長の解任など)を主張するチームから穏健派まで、3つのグループが、3日間かけて、一つの合意を作り上げました。議論の中では、合意を作るために、強い単語は弱い単語に、あっきりした表現はあいまいな表現に変わっていきます。

僕自身は、Nativeではなく、表現の強弱や明瞭さという観点でアメリカ人と英語で議論を戦わせることができるほど英語を流暢に話せるわけではないので、細かい表現の違いがよく分からず、蚊帳の外に置かれたような気分を感じたことは何度かありました。と同時に、チームに何らかの形で貢献しないと貴重な3日間が無駄になると思い、2日目に(勇気を振り絞って)隣に座っていたアメリカ人の女の子をランチに誘って友達になり、常に隣の席を確保して、僕の主張を、休憩中であれば口頭で、議論中であれば筆談で伝え、僕の代わりにその子に流暢に説明してもらうことで、僕の意見を最終合意にねじこんでもらったりしました。

全体的な話をすると、春学期は、クラスでの英語での議論にも慣れてきて、言語で苦労する場面は少なくなっていただけに、英語の表現でこの授業で苦労したことはいい薬になったと思います。すこし過激な言い方をすれば、「英語なんてコミュニケーションのツールなのだから通じさえすればいい」というのは、非ネイティブの負け惜しみであって、妥協せずに、英語そのものをまだまだ勉強しないといけないと強く感じています。

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以上が、授業のまとめです。次回で最後となるレポートでは、この1年間を通じて、僕が学んだ内容を、具体例よりも一段階上の視点から振り返ることで、留学全体の総括としたいと考えています。

2011年6月17日
東京大学 法学部 4年
田中 豪

田中豪さん2011年1月分奨学生レポート

 JICの皆様、こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。田中豪です。

時が経つのも早く、早くも二回目のレポートの時期になってしまいました。今回は、サンクスギビング、秋学期のまとめ、冬休みの旅行を中心にお届けいたします。

学 期の前半は、気温が高かったこともあり、放課後に友人と外でサッカーをしたり、日本館の周りのクロスカントリーコースを走ったり、学内のトライアスロンの レースに参加したりと、アウトドアな生活を送れていたのですが、11月を過ぎると、一気に冷え込んで、もっぱら屋内での生活が続いています。

そ んな寒いイリノイから離れるために、サンクスギビングはアラバマの友人宅を訪れました。現在は、日本で働いているのですが、休暇を利用して両親に会うため にアメリカに戻っていたところでした。シカゴ大学の卒業生なので、イリノイの寒い気候もよく分かっていて、暖かいところでサンクスギビングの家庭料理を食 べないかと誘ってもらいました。ターキー、マカロニ&チーズ、コールスロー、そしてパイ。はじめて口にする料理ばかりでしたが、おいしかったです。そし て、友人本人しか知らなかったにもかかわらず、家族の輪に入れてもらうことができて、南部のホスピタリティを感じました。

ア ラバマでは、彼の実家だけでなく、ヘレンケラーの生家やHuntsvilleにあるSpace & Rocket Centerに連れていってもらいました。宇宙センターというと、フロリダにあるKennedy Space Centerしか僕は知らなかったのですが、この博物館もアメリカでは有名なようです。周辺には、宇宙に関連する産業の工場が集積していました。
ロケット

今学期の授業のまとめを書いておきます(各授業の中身に関しては、前回のレポートで詳しく書いたので、今回は割愛します)。

1. CMN111: Oral and Written Communication I
学 期の前半は、毎回のWritingの課題をこなすのが本当に大変で、毎回前日に徹夜をして、なんとか提出するというスタイルが続き、評価も芳しくなかった のですが、後半に入ってからは、提出前に公開されている評価基準を細かくチェックすることで、無駄な減点をなるべく減らすようにしました。
文 法や表現で減点されることが少なくなると、Freshmanであるクラスメートたちは構成自体に苦労している一方で、で、僕は日本では大学4年生にあたる わけで、レポートを書いた経験があり、Organizaingや内容面で高い評価をもらえるようになりました。8月に提出した一番最初の課題では70点 だったのですが、最終的な成績評価では、Aをもらうことができました。表現の流暢さはこちらの学生に遠く及びませんが、構成さえしっかり練られればアメリ カの大学で何とかやっていけそうだと少しの自信になりました。

2. HIST 274: The United States and the World Since 1917
面 倒見のいいTAにめぐり合うことができて、課題の提出前に毎回フィードバックがもらうようにしていました。Book Reviewでは、課題の本が分厚かったこともあり、数週間前からメモを取りながら読み始めて、Reviewを書き始める前に、内容をほとんど頭に入れる ことができていたのがよかったのだと思います。読むスピードが遅くても、テキストの理解力が悪くても、こつこつやれば、一夜漬けのアメリカ人よりずっと内 容のあるReviewが書けると分かったのは、やっぱり自信につながります。2回のBook Reviewと3回のテストすべてでAをそろえることができました。
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3. PS 202: Religion and Politics in the U.S.
2 回のテストとタームペーパーで評価が決まります。教科書が4冊指定され、リーディングの課題が膨大で、毎回の授業の予習では、ほぼ半分しかこなせていませ んでした。大人数授業で、授業のディスカッションにもなかなかついていけず、クラスの中で友達をいなかったので、テスト勉強は、もっぱらホームページに アップされる簡単なパワーポイントだけが便りでした。タームペーパーも、締め切りに追われ、自室からアクセスできるE journalだけを参照して書いた、なんともお粗末なPaperになりました。結局、評価はB。いくら勉強しても、しっかりした授業ノートで内容を理解 できていないとAは取れないと分かったのは収穫です。
授業では、統計データを頻繁に参照していたのが印象的でした。統計やデータ解析のバックグラウンドがなく、その意味がよく分からなかったので、来学期は統計関連のことも勉強しようと思います。

4. PS 222: Ethics and Public Policy
3 回のShort Essayと期末試験で評価が決まります。授業の内容もよく分からず、英語で書かれた哲学書の理解も不十分で、公開されるPowerpointもシンプル すぎてまったく役に立たないということで、毎回、自分でも意味の分からないEssayを提出し続け、教室に通うこと自体が拷問に思えた授業でした。
難 しいテキストを読み続ければ、そのうち分かるようになるという希望を胸に、Dropはしなかったのですがその日はついにやってきませんでした。笑 ギリシ ア哲学はまだ良かったのですが、Kantなどの近代哲学になると、何回テキストを読んでも、意味が分からず、限界を感じました。こうしたテキストを読める ようになることが、自分の今後の目標です。評価は最終的にB-。なんとか踏みとどまったという感じでしょうか。

5. DANC 120: Tap Dance I
最 終的にB-取ったPS 222以上に落ちこぼれていたのが、この授業です。毎回の授業に欠かさず参加はしていたものの、足が思い通りに動かず、自分のイメージと現実のギャップが 辛いです。日本でダンスをならったことがなかったのでこの授業を取ったわけですが、人前で見せられるようになるには、さらなる練習が必要です。来学期に は、Tap Dance 2を受講するか検討中です。

振り返ってみると、成績については、自分が力を注げた量に相応する評価をもらったというところです。来学期への目標としては、前回でのレポートでも書いたことですが、300-400番台の授業とグループワークのある、あるいは少人数の授業を中心に取ろうと思っています。

冬 休みは、クリスマスイブにColorado Denverに飛び、アメリカ人の友人と二人でDenverとBoulderの二都市を拠点にしながら、Winter sportsを楽しみました。DenverがMile High Cityと呼ばれているように、市内の標高が既に高いので、スキー場では麓であっても少しクロスカントリーをするだけで息が上がってしまいました。リフト で山を登っていくと、目の前の尾根が、富士山よりも高かったりして、晴れた日の景色は最高でした。ちなみに、吹雪の日は、まつ毛が凍ります。車を借りて日 帰りで市内から通ったので、VailやWinter parkと入った山奥にある大箱のスキー場には行けなかったのですが、Arapahoe Basin、Love land、Eldoraなど、毎日違うゲレンデで滑ることができました。合計で、四日ほどスキーを楽しみ、それ以外は付近の山をトレッキングしたり、市内 を観光したりしました。
alapahoe
1 月4日にシャンペーンに戻り、数日をのんびりと過ごしてから、New Orleansに車で向かいました。NOLA Reliefというイリノイ大学の団体のメンバーとして、Operation Helping Hands(OHH)のボランティア活動に参加するためです。

CCANO

OHH は、Hurricane Katrinaで壊されたままの家(おもに障害も持っていたり貧しかったりする人の家)を修復するキリスト教系のボランティア組 織で、僕も、教会に泊まりながら、1週間ほど、家の修復作業を手伝いました。ペンキ塗り、タイル貼り、壁の張替え…など一通りの大工作業は経験しました。 地震がなく、強度を気にしなくていい場所での建築作業では、それなりの戦力になるぐらいのテクニックが身についたのではないか、と勝手に思っています。笑
全 部で15人ほどのグループで、僕以外は全員イリノイ州内の学生でした。僕が唯一の留学生ということで、みんなに興味を持ってもらえて、積極的に話しかけて もらうことができ、コミュニケーションに苦労しなかったのは本当に助かりました。また、夕方に作業が終わってからは、毎夜市内まで車を走らせ、お酒を片手 にJazzを深夜まで聞いていました。早朝から作業が始まるので、朝は辛かったですが、いい思い出になりました。また、ニューオーリンズは、魚介が
おいしく、カキやガンボスープ、ジャンバラヤ、ザリガニなどを食べました。どれもおいしかったです。
秋 学期は、放課後は留学生と外にでかけることが多く、なかなかアメリカ人の友達が出来ずにいました。語学の壁やや文化の違いを勝手に感じて、地元の学生の輪 に入れないことが多かっただけに、New Orleansのボランティアを通じて、アメリカの学生たちに溶け込めたと実感できた瞬間は、すごく嬉しかったです。
ち なみに、NOLA Reliefという団体は、大学から援助をもらっているということで、交通費・宿泊費・食費・参加費はかかりません。今年は、1月にボランティアしました が、年によっては、春や秋の休暇にNew Orleansに行くこともあるようです。アメリカ人の友人に囲まれて1週間を過ごすことができること、実際に体を動かすボランティアができること、費用 がかからないこと、ニューオーリンズの食事と音楽が最高…という理由で、来年度以降の留学生にもぜひおすすめしたい休み期間中の活動です。

NOLA
以上が、秋学期~冬休みの生活のまとめです。

最後に、春学期の履修予定の授業を書いておきます。
1. PS 230: Introduction to Statistics for Political Science Majors
2. PS 318: Interest Groups & Social Movements
3. PS 410: Neighborhoods & Politics
4. LLS 238: Latina/o Social Movements
5. GLBL 296: Critical Human Rights in Global Perspective
6. LAS 490: Translation in European Union
7. LAS 490: UN Terminology and Procedures (3-day Seminar)

次回のレポートで授業の中身や感想を書いていこうと思います。春学期は、秋学期以上に充実した学期にしようと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

2010年3月29日
東京大学 法学部 4年
田中 豪

田中豪さんの2010年10月分レポート

JICの皆様、こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。田中豪です。

こちらアーバナ・シャンペーンでは、紅葉を通り越して、徐々に木々から葉が落ち始めました。朝晩は、氷点下まで冷え込む日もあるので、東京の秋より気温が低いと思います。分厚いコートも買って、寒い冬にむけて覚悟を決めたところです。

時が経つのは早いもので、アメリカに着てから3ヶ月が過ぎました。この3ヶ月の活動報告ということで、キャンパスでの生活を中心に、第一回のレポートをお届けいたします。

7月30日に日本を出発し、ワシントンD.C.での2週間のインターンを経て、8月15日 にキャンパスに到着しました。いざ寮の自分の部屋に入ってみると、家具以外は何もなく、初日はマットレスに直接寝たこともずいぶん前の思い出になりまし た。翌日にバスに乗ってウォルマートまで行き、布団や枕から冷蔵庫、ノートなどの文房具にいたるまで、生活に必要だと思ったものをすべて買い揃えた記憶が あります。

その中でも一番のお買い物は、マウンテンバイクです。税抜き88ドルという安さにひかれ、雪が積もる冬には乗れなくなるという友人の忠告も耳に入れず、躊躇なく購入してしまいました。それでも、広いキャンパス内を、バスのルートや時刻表を気にせず好きに移動できるので、バイクを買って大正解だったかなと思っています。

9月19日には、大学のトライアスロンチームが開催したTri the Illiniというレースに参加し、水泳300メートル→自転車14.5マイル→ランニング3.1マイルをフィニッシュしました。アメリカに来て初めて提出するレポートの締め切りとレースが重なって直前にトレーニングができなかっただけでなく、睡眠不足でレースに臨むことになってしまったため、レースの終盤でスタミナが切れ、満足のいくタイムではありませんでしたが、(特に自転車のセクションで)キャンパスの周りの風景を見ながら走ることができて、気持ちが良かったです。来年の春に、まったく同じコースでレースがあるので、しっかりトレーニングしてタイムをあげたいと思います。今後のトレーニングのいいモチベーションになりそうです。

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………と自転車ライフを楽しんでいた矢先、10月上旬にGreen Streetというキャンパスのメインストリートの歩道のわずかな距離を自転車を漕いでいたことを理由に、警察に反則切符を切られました。不運なことに、ちょうど集中取締期間だったようです。距離にしてわずか20mあまりだったのが、非常に悔しいところ。ただ驚いたのが、その罰金額で、なんと165ドル。大学周辺では、信号無視の歩行者に100ドルの罰金が課されることもあるらしく、日本との取締りの基準や金額の違いを感じました。また、ニューヨークやワシントンD.C.などの大都市では、逆に歩行者信号を守っている人を見かけないくらいだったので、アメリカの地方分権-各自治体に行政の運営が委ねられている姿-を肌で感じているところです。

こちらの大学で受講している授業は、以下の5つです。

1. CMN111: Oral and Written Communication I
2. HIST 274: The United States and the World Since 1917
3. PS 202: Religion and Politics in the U.S.
4. PS 222: Ethics and Public Policy
5. DANC 120: Tap Dance I

1. CMN111: Oral and Written Communication I
Public SpeakingとWritingが組み合わされた授業で、1時間の授業が月・水・金とあります。20人前後のクラスで、留学生は僕1人で、 (もちろんEthnicityは多様ですが)基 本的にはアメリカで生まれ育った学生しか教室にいないので、最初はどうなることかと心配していましたが、スピーチは事前に原稿を準備できるし、発表自体は そこまで苦ではありません。それでも、提出した課題が、文法や表現の点で減点されることが続き、悔しい思いをしています。
この授業を受講してよかったと思ったのは、ネイティブのスピーチを何度も聞くことで、上手なスピーチと下手なスピーチの違いが分かってきて、自分が気に入った彼らの表現を学べることができる点です。逆に不満な点は、生徒のほとんどがネイティブのためか、(ESLの非ネイティブ向け授業を受講している友達の話と比べると)原稿やペーパーをあまり細かく添削してもらえない点です。それでも授業の中でスピーチすることによって、定期的に話す機会が与えられるので、来学期も似たようなコースを受講することを考えています。授業で英語を学ぶにしても、ESLの手厚いサポートと、CMNのネイティブの生きた表現を学べる機会のどちらを選択するか、が今の悩みどころです。

2. HIST 274: The United States and the World Since 1917
教授による1時間の授業が月・水に、TAによる1時 間のディスカッションセッションが金曜日にあります。授業は、第一次世界大戦からのアメリカの外交史を扱っています。歴史の概要が時代順に説明されている 「教科書」と、さまざまな一次資料がまとめられた「資料集」が、毎回のリーディングアサインメントとして指定されていますが、加えて、学期中に”The Ugly American”と”Fordlandia”という2冊のBook reviewを書くことになっているので、かなりの論文や本を読まされる印象です。
授業で分からなかったり、教授の説明が足りなかっりした点は、TAが少人数のセッションの場で説明してくれるので、かなり助かっています。またBook reviewについては、事前にTAに見せれば、フィードバックがもらうことができるので、課題の方向性の間違いや考えの不足している部分を事前に指摘してもらうことができています。
授 業の内容については、戦争のプロパガンダビデオを見たり、風刺画の解釈をしてみたり、と視覚的な教材を積極的に取り入れているのが印象的でした。また、た とえば第二次世界大戦について、現地の学生のアジアの知識は予想通り浅かった一方で、教科書の中で日本を扱ったページは意外に多かったのが新たな発見でし た。

3. PS 202: Religion and Politics in the U.S.
80分の授業が火・水の週2回です。アメリカにおける政治と宗教の関係に焦点を当て、憲法における政教分離の解釈や判例の変遷など法的な観点から学んだり、宗教団体が果たしている役割を社会学的な観点から捉えなおしてみたりと、さまざまな角度から分析しています。
教科書として4冊が指定され、学期中に分厚い本を4冊 読まないといけないと考えると心が折れそうになりますが、授業の内容や課題が面白いのが救いです。たとえば、学期末の課題は、大学周辺の宗教組織を実際に 訪問して、信者に対してどのように政治参加を促しているを確かめるというリサーチペーパーです。昨日に中間選挙が行われたばかり(11月3日にこの段落をタイプ中)なので、実際にフィールドワークに取り組むのが楽しみです。自転車に乗って、いろんな教会を訪問し、おもしろいペーパーが書けたらと考えています。

4. PS 222: Ethics and Public Policy
80分の授業が火・水の週2回です。内容は政治哲学。Aristotle, John Locke, John Rawls, Immanuel Kant, etc. などの本を読みながら、順に思想を比較していきます。授業のベースは、最近日本でも話題を読んでいる、HarvardのMichael Sandel教授のJusticeと いう授業のようです。およそ週に1人の哲学者を扱うので、かなりの量を読む必要があることに加え、テキストが難しいので、一番苦労している授業と言えるか もしれません。ただ、日本にいると、政治哲学の古典の原著を読むモチベーションが湧きにくいので、いい機会かもしれません。
成績評価はPaperですが、テキストの理解が不十分なので、鋭い論点を提示することができずに苦労しています。歴史の教科書など、Factを拾い読みするスキミングにはだいぶ慣れてきましたが、哲学的なテキストのように熟読が求められたときに、読みの早さを深さを両立させていくことが、今後の課題といえそうです。

5. DANC 120: Tap Dance I
月・水に80分ずつタップダンスを練習しています。大学のダンス学部が、ダンスを専攻していない学生向けに開講したクラスで、定員が20名前後と非常に少なかったものの、運良く受講することができました。シャンペーンのダウンダウンにあるダンスシューズのお店で30ドル程度のタップシューズを購入し、練習に励んでいます。リズム感覚がないうえに、過去にダンスをした経験もないので、授業に早くも落ちこぼれそうですが、必死にくらいついています…。笑

こうして全体を見てみると、今学期だけで10冊以上の教科書を読む計算になるので、結果的にリーディングが多い授業ばかりを選択したようです。どの授業も筆記試験とPaperで成績評価がされるので、今学期はもっぱら、読み書き、が鍛えられている印象です。来学期は、300-400番台の授業、また、グループワークのある授業を取ろうと考えています。

授業以外では、Krannert Center for the Performing and Artsというホールに通っています。
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先週は、Chicago Symphony Orchestraのコンサートが開催されました。学生チケットだと10ドルで、空席であれば)好きな座席を予約できるのでかなり恵まれていると思います。CSOは二年に一度しか来ないようで、わずか10ドルで聞けたのは本当にラッキーでした。1月にはロシアのバレエ団によるロミオとジュリエットの公演があるようです。今から楽しみにしています。

自転車と授業でいっぱいになってしまいましたが、以上が、3ヶ月の大学生活のまとめです。

最後に、今後の目標です。
アメリカのローカルな政治を勉強したいと思ってイリノイに留学しましたが、” PS 202: Religion and Politics in the U.S. ”の 勉強時間以外では、他の授業の課題にも追われて、あまり知識を増やせていないのが実情です。受講した授業の手を抜かないことはもちろんですが、リーディン グやレポートを書くスピードを上げることで、もっと自由な時間を作り、自分が一番関心を持っている分野の勉強にしっかり時間を注げるようにしたいと思いま す。日本でアメリカ政治のゼミに入っていたので、この1年間でのイリノイ大学での勉強を通じて、日本帰国後に書く卒業論文のいい素材を見つけれらたらと思っています。

Thanksgivingの休暇では、アジア人比率0.5%という白人社会アラバマに住む友人を訪れる予定です。ターキー、パイ、クランベリーソースをご馳走になりながら、アメリカの食事が、フライドポテトとハンバーガーだけじゃない、ということを実感してきたいと思います。

秋学期ももう半ばです。留学生活の4分の1が過ぎました。時間を無駄にせず、引き続き、充実した生活を送っていくつもりです。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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シカゴの夜景

2010年11月12日
東京大学 法学部 4年
田中 豪