江崎歩さんの2004年5月分レポート

JICメンバー各位、

大田(’01-02 LAS)です。

JIC奨学生としてUIUCへ留学中の江崎歩さんからのレポートが届きましたので、皆様にフォワード致します。

早いもので、最後のレポートとなりました。最後に書かれている「この留学に点数をつけるなら」というところ、さて江崎さんは何点をつけられたのでしょうか?!それでは、お楽しみ下さい。

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 2004年 5月分レポート
江崎歩
筑波大学医学専門学群6年
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JICのみなさま、ご無沙汰させていただいております。ここ数日はついにシャ
ンペーンにも夏のような暑さがやってきており、いよいよ最終レポートをお届
けするときが来てしまいました。5月分レポートの締め切りは5月末まで猶予を
いただいたのですが、私の場合、帰国してしまうと今の感情をうまく表現でき
なくなってしまうのではないかと考え前もって書かせていただいている次第で
す。

1月に前回のレポートをお届けしてから4ヶ月弱になるとは信じられない思いです。

書きたいことは山のようにあるのですが、このレポートでは、春休みのこと、
教会のことについてご報告し、最後にこの9ヶ月間について評価したいと思い
ます。そして、それだけではあまりにみなさまに対して恥ずかしいので(?)
授業のことについて最初に少しご報告できればと思います。

<授業のこと>

秋学期は10ページに渡るペーパー2つ(それから、スピーチ)を同時に抱えて
いたことなどもありよく生き延びることができたものだ、と今さらながら自分
で感心してしまいますが、今学期は授業の課題自体は秋学期よりは結果的に楽
なものとなりました。Health Statistics, Interpersonal Communication,
Health Education Evaluation, Macroeconomicsをとっていたのですが、どれ
も別の意味で意義深かった中で、特にInterpersonal Communicationのクラス
からはこれから自分の日常生活と仕事両方の場面で伸ばして行きたい大切な
Skillについてたくさん学ぶことができました。Emotional Support、Initianl
Interaction、Conflict、Criticism、Self DisclosureのSkillについて実際に
実践してみてジャーナルを書き、学期前と後でどう変わったかを評価するとい
う課題があったのですが、面白かったのは、多くのSkillについて学期終了時
の方が自己評価の点数が低くなっていたことです。これは自分のコミュニケー
ション能力についての意識が高まって自分に足りない部分に気づくようになっ
たためですが、長い目で見れば、足りないと思っている部分が実践できるよう
になればいいなと思います。

<春休みにクリニックで実習をしたこと>

JICの交換留学とは直接は関係がないのですが、シャンペーンで勉強させてい
ただいたことがきっかけになり、Springfield,ILにあるSouthern Illinios
University のFamily Practice Clinicで5日間の見学実習をさせていただきま
した。私は現在医学部の6年生を休学中で、同級生の中には大学から与えられ
る機会を利用して海外で病院実習をした友人もいましたが、交換留学生として
ここに来るまでは、特にアメリカで臨床をやりたいと考えたことはありません
でした。患者さんとのinterpersonal communicationが重要になってくる臨床
の場で、私がアメリカ人の医者以上に患者さんのために役に立てるはずなどな
いと考えたからです。その気持ちは、今でも変わっていません。ただし、今は、
将来日本の患者さんにもっと役に立てるように自分の医者としての力を磨くた
め、アメリカ人の患者さんの役に立つというよりもむしろ自分が学ばせていた
だくという目的のためであれば、アメリカは非常に素晴らしい訓練の場所だな
と感じるようになっています。そんな風に感じるようになったのは、秋学期の
授業で、わからないことをつっこめばどこまでも一生懸命教えてくれるこちら
の教育の姿勢を経験したからでした。この機会を与えられたことに改めて感謝
します。

実習では、短い間(春休みが1週間だったので、月から金まで5日間お世話になりまし
た)だったことと私が英語に自信を持ちきれずあまり積極的になりきれなかったこと
から患者さんから病歴をうかがって診察をして診断と治療を考えて先生にプレゼン
テーションしてカルテに記入して、、という一連の流れをやらせていただけたのは1
日だけでしたが、とてもいい経験になりました。私の問診や診察に文句も言わず、最
後には”Nice to meet you! Good luck!!”と笑ってくださった(笑うどころではない
患者さんもいらっしゃいましたが)患者さんたちの優しさに心から感謝します。

<新しい命>

非常に個人的なことであること、別の宗教をお持ちの方がどのように受け止め
られるかがわからないことからレポートに含めるかどうかを迷ったのですが、
このことを抜きにして自分の9ヶ月間は語れないと考えご報告させていただく
ことに決めました。もしも、JICのレポートとして不適切な部分がありました
らご指摘願えれば幸いです。

2004年5月2日、クリスチャンとして洗礼を受けて、新しい命をいただきました。

こちらに来て9ヶ月間、international studentsのために開かれたBible Study
に参加させていただいてきたのですが、最初のうちは少しでもよくキリスト教
を理解できれば、というくらいの気持ちでおり、「人間の力を超える何か大き
な存在に対する畏敬の念は抱くけれど、それは何か特定の宗教が説く神様でな
くてもいい。むしろ、特定の宗教に属することは避けたい。」という自分の根
本的な姿勢自体を変えるつもりなどほとんどありませんでした。

しかし、教会の友人たちの、決して言葉でキリスト教の正しさを説き伏せよう
などとせず、ひたすら行いと、長い間Visitorだった私に対する深い愛だけに
よって、イエスに従うということはどういうことなのかを教えてくれた姿が私
の心に神様を真剣に求める情熱を注いでくれました。そして、自分なりに行う
ことができたリサーチなどに基づいてイエスを真実の私の救い主として受け入
れ、恐らく私の人生にとって最も重要な決断、イエスに一生従うということを
決めるにいたりました。

神様が、今の教会に私を導いてくださったことに深く感謝します。それは、今
までの日本での経験などから考えて、別の教会に出会っていてもこの決断にい
たったかと聞かれればそれは何とも答えがたいからです。先週の日曜日は学生
が夏休み前に全員集まる最後の礼拝で、卒業する学生に記念品を贈って送り出
してくださったのですが、たった9ヶ月しかシャンペーンにおらず、最初のう
ちはむしろ反発するような発言や行動ばかりしていた私のことも同じようにし
て送り出してくださったことに涙が出そうになりました。この友人たちと一緒
にお祈りした時間を、一生忘れることはないと思います。

そして、1年半前の面接のとき、私をここに送ることを決めてくださったJICの
みなさまに心から感謝いたします。

<この留学に点数をつけるなら>

たった9ヶ月しかいなかったシャンペーンなのに、ここ数日はどこに行っても
「もうここに来るのは最後かもしれない」と思って胸がいっぱいになったりし
ます。あらゆるところに、友達と一緒に過ごした忘れがたい思い出が詰まって
います。マーケットプレイスに向かうバスの中から眺める景色にも、Downtown
まで歩いた道の中にも、友達と一緒に走ったArmoryのTrackの中にも、中村さ
ん(寿美子ちゃん)が住んでいるコスモポリタンクラブハウスのキッチンにも、
Green Streetのひとつひとつのレストランの中にも、たくさんたくさんつまっ
ています。

この9ヶ月を採点するなら、ということを考えていました。自分の授業などに
対する態度を評価するなら、もっともっと積極になれたかもしれないところで
声をあげるのをためらってしまったりということが何度もあり、もう少しここ
に滞在できたら今度こそ頑張ろうと言ってみたところでもう授業はすべて終わっ
てしまったので、85点くらいしかあげられないなあと思います。一方で、9ヶ
月の私の人生における意義は、ということを考えると、それは今後私がどんな
風に生きていくか、ここで出会った友人たちと、離れ離れになってしまった後
でどんな関係を築いていけるかということに多くを左右されると思いますが、
今の気持ちとしては、100点満点をあげたいです。これだけのすばらしい友人、
出来事、チャンスをいただいたことに対して、自分がこれからの人生を持って
答えていく順番だと思っています。

JICのみなさま、本当にありがとうございました。これから、今後JICから派遣
される留学生の方たちのお手伝いが少しでも出来ればと思っています。今後と
もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

中村寿美子さんの2004年5月分レポート

JICメンバー各位、

大田(’01-02 LAS)です。

JIC奨学生、中村寿美子さんからのレポートが届きましたので、皆様にフォワード致します。

中村さんは、夏まで引き続きシャンペーンに滞在し、ボランティア活動に関するインタヴューをされるんだとか。「私が夏までシャンペーンに残ろうと決めたのその理由」という部分に書かれています。

残りの留学生活、充実したものとなりますように!

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 2004年5月分レポート
中村寿美子
大阪大学人間科学部ボランティア人間科学講座4年
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JICの皆様、ご無沙汰しております。

気がつけば、あっという間に五月も下旬となり、春学期の終わったシャンペー
ンは人もまばらで、少し寂しげですがのんびりと時間が流れています。先に帰っ
てしまった砂子さん、江崎さん、篠原君とは少し行動が別になってしまいまし
たが、学生の身勝手な身分をいいことにひとりシャンペーンに残らさせていた
だいております。

 前回のレポートは「体調を壊しました~」という悲惨なメールになってしま
い、ご心配をおかけ致しました。あのときは一時の風邪で、それからは元気に
過ごしています。そのレポートでは冬休みのことを書きましたが、それから春
学期、春休み、ファイナル、夏休みと、時間は経つのが本当に早いものだなぁ
と改めて思っています。

春休は、冬休みのアイオワ農場体験を忘れられず、今度は、ご存知の方も多い
と思いますが、シャンペーンから車で20分ほどのMonticelloという街にあるイ
リノイ大学付属のAllerton Parkというとろで一週間泊り込みのボランティア
プロジェクトに参加しました。

またもFarmで働いたり、木屑を拾って森を整備したり、と(とっても重労働で
したが)自然の中で思い切り楽しんできました。夜のナイトハイクやキャンプ
ファイヤーはすごくいい思い出です。

 前置きが長くなってしまいましたが、今回は、私が夏までシャンペーンに残
ろうと決めたのその理由について簡単にまとめたいと思います。

 第一の理由は、この留学期間で学んだことを、いちどここアメリカでじっく
り振り返りたいと思ったことです。何かにつけてストレスの多かった秋学期、
がんばろうがんばろうと思ってなんだかちょっとしんどくなってしまった感も
ありました。そして前回のレポートでも書いたように、アイオワのゆっくり時
間の流れるファームで過ごした冬休みの一週間。その間に、「春学期はもっと
余裕を持ってすごそう!」と心に決め、単純な私は勉強のストレスをいかに少
なくして楽しく過ごすかを念頭において、春学期の授業をミニマムにおさえ履
修しました。ですが、なんとなく「もう少し頑張れたかもしれないなぁ・・」
という気持ちが無きにしもあらずなのです。授業はもちろんとても充実してい
ました。特に、先学期は仲間の3人は履修したのに私だけ履修していなかった
スピーチコミュニケーションの授業は、ほんとうに勉強になりましたし、スピー
チをすることで度胸も少しついたような気がしています。

またレジャー・スタディの授業も取ったのですが、これは私の興味関心をさら
に深めてくれることになりました。現在は人間科学部ボランティア人間科学講
座というところに在籍しているのですが、このレジャー・スタディがいくつか
の点で私がボランティア人間科学講座で学んだことに似ていたこと、そしてそ
れにプラスして新たな学問的視点を与えてくれたということでは、この春学期
最高の授業と言っていいかもしれません。

それからコミュニケーション・スタディの授業では、この分野で基礎となる文
献などを読み、勉強することができました。しかし、「もう少しがんばれたの
になぁ」と思ったのは、自分自身の授業への取り組みが少し甘くなっていたこ
とや、やっぱり授業中になかなか発言できなかったことなどがあると思います。
秋学期と春学期での違いを考えたとき、反省すること多々、またちょっと自分
を褒めてあげたいこと少々(?)、などなど思い出すことはいっぱいあります。
時間はかかりそうですが、この夏にそれらをじっくり見つめていけたらいい
なぁ、と思っています。

 第二の理由は、私の研究分野であるボランティアについて、この夏休みを利
用してシャンペーンで聞き取り調査を行いたいと思ったからです。先ほども書
きましたが、私は大阪大学のボランティア人間科学講座というところに属して
いて、そこでボランティア・福祉などをキーワードに勉強してきました。私自
身は、ボランティアとメディアの関わりに興味があるのですが、今回は私自身
の卒論に向けて、少し思考を変えて、ボランティアがコミュニティーでどのよ
うに組織されマネージメントされているのかを日本とアメリカで比較できたら
いいなぁと思っています。

ボランティアという考え方は日本では阪神大震災を機に関心が高まったと言わ
れています。その意味では日本にとってはとても新しい分野なのですが、アメ
リカはボランティア大国とも言われ(その中にもいろいろと問題はあると思い
ますが・・・)、私たちがアメリカから学ぶところは大きいと思っています。

そこで、春学期が終わる前のこの4月から少しずつこのコミュニティでのボラ
ンティア団体のボランティア・コーディネータにコンタクトを取ってインタ
ビューを始めました。特に、私自身がボランティアに行っているナーシングホー
ムのコーディネータさんには本当に様々な情報を教えてもらい感謝しています。
そのほかにも、キャンパス内のOVP(Office of Volunteer Program)、United
Wayなどのこのこ出かけていってはお話を聞く日々です。このところを書くと
止まらなくなりそうですが、ボランティアマネジメントひとつにしても、アメ
リカらしさが出ていて面白いなぁと思います。例えば、ボランティアをたくさ
んした人にはAwardを与えて派手に表彰してあげるとか(そのイベントにも参
加しました)、またボランティアだからと言って細かい規則は大目にみるとい
うことは決してなく、その団体に雇われているのと同じようにして
Applicationを書いたりサインをしたり・・・といった具合です。また、何か
の機会にもっと詳しくご報告させていただければうれしいなぁと図々しくも思っ
ております。(もし、どなたか、ご自身が参加されていたボランティア団体や
プログラムについて情報を提供していただける方がいらっしゃいましたら、ご
連絡いただければ幸いです。ぜひよろしくお願いいたします。)

 まだまだ理由は尽きませんが、最後の理由は、シャンペーンで自分の居場所
を見つけてしまったことでしょうか。この“我が家”コスモポリタンクラブも
住んで9ヶ月。思い出がいっぱい詰まっています。今はメンバーも入れ替わり
立ち代りという具合ですが、新しい人たちとも仲良く楽しくやっています。

不思議なのは去年の8月ここにやってきたとき、洗濯機の場所も冷蔵庫の場所
も、ガスコンロのひねり方も(コスモのガスコンロのひねり方は微妙なコツが
必要なのです・・・)分からなかった私が、今は教えてあげる立場にいること
です。時間が経つってこういうことなんだなぁ、としみじみしてしまいます。

それから、“My family”のホストファミリー、ベッキーとジャック。ベッキー
はこの8月で80歳、ジャックはこの3月に86歳になった連れ添って60年のご夫婦
ですが、このお2人との出会いは本当に本当にラッキーでした。もしかして私
がアメリカに来る前からそういうことに決まっていたんじゃないだろうか、と
思うくらい、私の家族として私のここでの生活を精神的にしっかりと支えて下
さっています。このお2人と週一回のナーシングホームで歌を歌う時間、そし
てその後のランチの時間、大切にしていきたいと思っています。

 あと残りのこの夏の時間を大切にして、欲張りながらもっともっといろいろ
と吸収して帰れたらいいなぁと思っています。このような機会を与えてくださっ
たJICの皆様、本当にありがとうございました。残念ながら次の総会には参加
できませんが、最新シャンペーン情報ならお届けできると思いますので、

次の奨学生の方、何か調べてきてほしいこと、知りたいことなどがあれば、
いつでもメールしてください。

 そして、最後に、先に帰ってしまった、ちか、あゆみちゃん、しおんくんへ。
今まで本当にどうもありがとう!一緒にここでたくさんのことを経験し勉強で
きて本当によかったです。いっぱい助けてもらって支えてもらってありがとう。
3人のようなステキな友人ができたことに心から感謝しています!

それでは、失礼いたします。

篠原史温君の2004年5月分レポート

JICメンバー各位、

大田(’01-02 LAS)です。

JIC奨学生の篠原史温くんからのレポートが届きましたので、皆様にフォワード致します。高度9448メートルの雲の上で書かれたレポート。文章の中に、留学を通して感じたこと・学んだことがぎっしり濃縮されています。人間的にひとまわりもふたまわりも大きくなって、しかもIMPEでの肉体改造もすすんだという?!篠原くんにまたお会いする日が楽しみです。篠原くん、レポートありがとうございました。

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2004年 5月分レポート
篠原史温
東京大学システム量子学科修士課程一年
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ご無沙汰しております。篠原史温です。時が経つのは早いもので、奨学生レポー
トも今回が最後となってしまいました。現在僕は高度9448メートルの雲の上で
このレポートを書いています。今回はこの留学生活の総括として、「僕がイリ
ノイに来た本当の理由」「9ヶ月間で感じた自分の中の変化」「様々な枠を超
えた友情」の3本立てで行きたいと思います。かなり長く書いてしまったので
どうかごゆっくりとお楽しみください。

「僕がイリノイに来た本当の理由」

ほとんどの日本人がそうだと思いますが、僕は小さい頃から映画を通じてしか
アメリカを知りませんでした。「アメリカ→何となくかっこいいイメージ」と
いう何とも具体性に欠けた僕のアメリカ観を決定的に変えたのは2001年3月に
ボストンに1ヶ月間語学留学をしたときです。一言でいってしまえば、あのボ
ストンでの生活はあまり楽しいものではありませんでした。語学留学という性
格上、現地のアメリカ人と知り合う機会はあまりなく、ホストファミリーは僕
に対して「~はしてはいけない」とか言うだけでとても友情を築き上げるどこ
ろではありませんでした。その上、語学学校に行く途中のバスの中で体中にピ
アスをしたアメリカ人にからかわれたり、運賃を不当に請求したと抗議したら
バス運転手に逆切れされたりと、僕の中の「ナイスでフレンドリーなアメリカ
人」像は音を立てて崩れていきました。

帰国してから「なにがいけなかったのか?」を自分なりに考えてみました。その結
果、二つの理由が思い浮かびました。

1. 語学学校の学生はアメリカ人と「対等に」接する機会が少ない。
2. 僕の英語力(コミュニケーション能力)が不十分。

一つ目は僕の接したアメリカ人は、皆「先生」や「ホストマザー」だったりし
て普通の人間関係を築けなかったということです(でも今から考えたらアメリ
カでは先生や少しばかり年の離れた女の人とでもフレンドリーな関係になれま
すが…)。二つ目は、単純に僕のコミュニケーション能力の問題です。自分の
考えていること、言いたいことがしっかりと口に出せないようではアメリカで
はやっていけません。そういう意味での「英語力」に欠けていたと思います。

この二つの原因を解消する方法として思いついたのが、語学留学ではない「普
通の留学」をすることでした。ここでいう普通の留学とは、アメリカ人の大学
生と対等な立場で同じ授業を受ける環境に身を置く留学のことです。その意味
で、JICのプログラムは完璧でした。一年間という非常に限られた期間、アメ
リカの大学生と同じ授業が受けられる。さらに僕は、学部時代、特に一年生と
二年生のときにあまり勉強をしっかりやらずにいたことを後悔していました。
アメリカの大学は入ってからが厳しいらしい。もし1年間みっちりそういう環
境で勉強したら大学1、2年のときの「遅れ」を取り戻せるかも。。。そういっ
た経緯でJICのプログラムに申し込み、非常にありがたいことにこんな僕を選
んでいただきました。本当にほんとうに、感謝の念が絶えません。

「9ヶ月間で感じた自分の中の変化」

1. 性格

この9ヶ月で僕の性格は非常に良い方向に変わりました。主なものとして、積極的、
能動的になったということです。例えば
● ディスカッションの授業中に手を挙げて自分の意見を堂々と言えるようになった
● オフィスアワーに出向いていってTAに徹底的に質問できるようになった
● パーティーなどを企画して実行できるようになった
● 大学や公共のサービスで「これはフェアじゃない」と感じたら質問したり抗議で
きるようになった

ここに挙げたどれも、元々こういうことが出来る人から見たら、「何を言って
るんだ。こんなこと出来て当然じゃないか」とお叱りを受けてしまいそうです
が、こっちに来る前の僕はこんな当然のことすらしっかりとできない人間でし
た。でも「声を上げなきゃ、自分から始めなきゃ何も始まらない」というアメ
リカ社会の良き(?)風習のおかげで自分の欠点を改善することができたこと
は非常に嬉しいです。

2. スキル

「英語能力、コンピュータ能力以外で身につけたスキルは何か?」と聞かれた
ら、一つ目はCritical Thinking Skillだと答えると思います。どの授業も「~
は~だ」と教えられるのではなく、「~は~だから~だ」というように教えら
れました。つまりただ単に現象面、事実を追うのではなくその根本にある原因
にまで深く言及していたのです。ペーパーを書くときも、プレゼンをするとき
も、試験の答案を書くときも論理の流れは非常に重要視されていたと思います。

二つ目はプレゼンテーション能力です。秋学期にスピーチのクラスをとり、強
制的に6回もクラスの前でスピーチをさせられたという辛い(?)経験を通し
て得たものはかなり大きいと思います。最初は、「アメリカの大学生は自分の
スピーチを聴いてどう思うんだろう?」とか「本当に伝わっているのだろう
か?」とか迷いはあったのですが、途中から吹っ切れて人前に出て言いたいこ
とを思いっきり言えるようになりました。今学期のコンピュータ倫理の授業で
最終プレゼンテーションがあったのですが、40点中39点をいただきました。
自分でもまだまだ山のように改良の余地があると分かってはいるものの、この
結果にはかなり大きな驚きと喜びを感じました。

三つ目は社交スキルです。こっちの社会の性格上(?)、ほぼ毎日のように”
I’m Shion. Nice to meet you.”を言っていました。おかげで「自己紹介→
スモールトーク」の流れはほぼ完璧になりました(ただしその後会話を面白く
維持できるかはまだまだ改良が必要ですが)。

四つ目は聞き上手になれたことです。もともと人の意見を聞くのは好きなので
すが、イリノイに来てからそれがさらに深まり、友達と夜遅くまで語ることも
しょっちゅうでした。特にルームメートとはありとあらゆる分野にわたり意見
を交換したように思います。この間、彼に「いつもしっかり聞いて、適切なア
ドバイスをくれてありがとう」と言われたときかなり嬉しかったです。

3. 身体

他のJICの奨学生メンバー(江崎さん、中村さん、砂子さん)は知っていると
思いますが、「篠原史温」と「肉体改造」は切っても切れない関係にあります。
学部のときに少林寺拳法を3年間半やってたときから筋肉トレーニングは割と
好きだったのですが、イリノイに来てからそれが見事に「開花」してしまいま
した。始めは多すぎる寮の食事を燃焼させるために何となくIMPE(キャンパス
内のジム)に通っていたのですが、凝りだしてしまいいつの間にかほぼ毎日の
ように通うことになってしまいました。さらに春休み前くらいからは毎日外を
走っていました。結果的に「トレーニング好き」で知られているのアメリカ人
よりよっぽどトレーニング好きになってしまいました。でも僕がトレーニング
に励んでいた理由は実はもう一つあります。それはアメリカ人の「典型的な日
本人像」を壊したかったからです。背が(比較的)低めで、(アメリカ人と比
べれば)やせ気味で、眼鏡をかけている(人もいる)。僕はたまたま普通の日
本人より(またたいていのアメリカ人より)背が高いのであとは筋肉をしっか
りつければ良いだけでした。僕のせいでアメリカ人が「ああ、こんな日本人も
いるんだな」と思ってくれれば良いなと思っていました。「日本人は~だ」
「アメリカ人は~だ」という過剰な一般化は国際社会において百害あって一利
無しだと思います。その点で僕は国際交流に少しばかり貢献したと自負してお
ります(ちょっと言い過ぎです。実はそんなに思っていません)。

「様々な枠を超えた友情」

イリノイに来て何よりよかったと思うことは多くの友人、それもイリノイに来
ない限り絶対に作れなかったであろう友人を作れたことです。僕はもともと友
達作りがそんなに得意ではないのですが、イリノイの空気が僕を開放的にして
くれて本当の意味で良い友達ができました。

まず、JICの奨学生メンバーの江崎さん、中村さん、砂子さんです。イリノイ
に来る前は僕だけ男だということもあり、かなり不安でした。ある意味あきら
めていたようにも思えます。さらに追い討ちをかけるように僕の住んでいる寮
は他の三人が住んでいる場所からはかなり遠かったので、最初の1ヶ月くらい
はかなり「距離」を感じました。でも、9月末に僕の誕生日パーティーを開い
てくれてからちょくちょく会うようになって、夜まで話し込んだり、お互いの
悩みを打ち明け合ったりしているうちにいつの間にか強力な絆が生まれました。
こんな関係は4人でアメリカに留学をしない限り生まれないと思います。さら
にそれぞれのメンバーの「似通っている部分」と「違う部分」がうまく機能し
て化学反応が起こっていたように思います。この3人には本当に感謝していま
す。さらにみんな出身が関西地域ということもあり東京育ちの僕の喋りが関西
訛りになってしまったということにも感謝の意を表したいと思います。

寮の友達は主にアメリカ人学生です。ルームメートを始めとして多くの人と友
達になりました。少し驚いたのはかなり多くの人が日本に興味を持っていると
いうことです。”Kill Bill Vol. 1”、“The Last Samurai”、“Lost in
Translation”の三つの映画が僕たちの滞在期間に公開されていたという事実
からもアメリカにおける密かな日本ブーム(?)を感じました。日本語の授業
をとっている友達も何人かいて、日本語と英語の違いについて議論したことも
何度となくあります。彼らと「対等に」接することで生身の「アメリカ人」の
姿を見れたことは僕の今後の人生に大きな意味を持つと思います。というのは、
日本でしばしば「アメリカが~だから」論理で正当性を主張する議論がよくあ
るからです。アメリカが全て正しいわけじゃない。日本が全て間違っているわ
けでもない。そういった相対的なものの見方が出来るようになったのも彼らの
生き様(?)を生で目撃したからだと思います。そうでなかったら、いつまで
たっても「アメリカコンプレックス」みたいな感情を持ってしまったかもしれ
ません。彼らは非常に多くのことを僕に教えてくれました。でも一番強く感じ
たのは彼らも殆ど僕らと同じであるということです。来る前はアメリカと日本
の考え方は正反対だと思っていたのですが、それは表現方法すなわち表面的な
違いであって中身はそっくりであると気付きました。

留学生の友達も、とくに韓国人の友達がたくさん出来ました。隣の国、韓国の
人とはるばる太平洋を渡ってさらに陸地をかなり行ったところにあるイリノイ
の地で出会い友情を深めるなんてよく考えたらとても凄いことだと思います。
しかもお互い話す言葉は英語という外国語。それでもみんな巧みに自己表現を
してお互いを理解し合えるというのはある種芸術の域に達しているとさえ思い
ます。片方がネイティブスピーカーならもう片方の人が喋ることについて予想
が出来るので比較的簡単ですが、お互いがノンネイティブだとそうもいきませ
ん。ジェスチャー、想像、フィードバックを駆使しながら深める会う友情もな
かなか味のあるものです。こうやって英語を通じて世界中の人と友達になれた
らとても幸せなことだと感じました。その「世界中の人」が英語を話せるとい
う条件付きなのが少し難点ですが。。。

9ヶ月を振り返るつもりで徒然なるままに書いていて、気がついたらWordで5
ページ目に突入してしまいました。ここまで辛抱強く読んでくださった方、本
当にありがとうございます。でも本当は僕の5ページの作文なんかではまるで
収まらないくらい日々多くのことを感じて、考えて、行っています。江崎さん
のレポートにもあったようにこの留学を100点満点で採点するなら、僕は9
0点をつけると思います。本当は100点といいたいところですが、「自分が
満点なんか取れるわけがない」と考えているのでちょっと控えめに(?)90
点です。でも普段僕は自分にかなり厳しいので90点は相当満足な点数です。

こんなにまでも満足な留学生活が送れたのも、JICの皆様が僕を選んでくださ
り、いろいろな面で支えてくださったからです。これからは僕が奨学生を支え
る番だと思っています。また、JICの様々な活動に参加したり、JICの組織自体
に貢献したりすることもとても楽しみにしています。

これからは行動を通してこの感謝の気持ちを表現できたらと思います。いまま
で本当にありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いします。