古川愛季子さんの2005年4月分レポート

こんにちは。ここUIUCは三月後半から突然夏のように暖かくなったと思ったら、ま
た冷え込むということを未だに繰り返し、ようやく春(というかいきなり夏)が訪れ
た感じです。前回のレポートから3ヶ月余りの様子についてお伝えします。とはいい
ましても、もうファイナルウィークに入ってしまい、自分の気持ちはもう留学の総括
に向かっていますが、それとは別に、この特定の期間にもいろいろなことを経験した
ので、思い出しつつレポートに取り組んでいる次第です。具体的には、授業のこと
と、それ以外のことに分けてお伝えします。

(授業のこと)

私はコーラスを含め5つの授業をとりましたが、興味の中心は学期を通して前回お
伝えしたものと変わりありませんでした。よって、同じ二つについて、その後どう
なったかをレポートします。

RHET233:Critically Queer
始めたころは、いきなりESLのライティングから200番台のアメリカ人向けのレト
リックに変えて大丈夫か不安でしたが、結果、この留学を通じて一番とって良かった
と思える授業のひとつになりました。基本テーマはsex, sexualityなのですが、特に
queer politicsの考え方を中心に、Michel FoucaultのHistory of Sexualityから、
現在メディアや私たちの日常で起こっている出来事までを、criticalに、そして
academicに考える、というとても斬新で刺激的な授業でした。よって授業に上る話題
はFoucault哲学から、sex education, 宗教、人種問題、テレビドラマのWill and
Grace、ひいてはアイドル歌手Jessica Simpson (!) に至るまで本当に多種多様でし
た。イリノイ大学で最も前衛的(?)な授業のうちの1つに入るのではないかと思い
ます。日本では、口に出すことすら禁忌であるような(この中西部の白人、クリス
チャン中心のミュニティーであるUIUCでももちろん)こと、でももっと語られる必要
があることを敢えて、先生自身、人種、sexualityのダブルマイノリティーの立場で
行う、ということ自体大変意味深い授業でした。わたしがこの授業で一番、技術的に
学んだと思うことは、文章でも、口頭でも常にcritical なargumentをすることの大
切さと、(まだまだできませんが)その仕方の基礎知識だと思います。それから、
「マイノリティーの視点」という、生活面では抑圧された不利な立場でも、批評理論
上は強い武器になる(と私は思う)「ものの見方」に生まれて初めて触れたことも重
要です。更に、人文系にありがちな(と言われることの多い)陥穽として、自分の学
問以外のこと(特に今現在世の中で起こっていること)に疎くなってしまうところが
自分にはあったので、(もちろん学問を追及する人はそれでいいと思うのですが)こ
の授業での、学問的な理論と日常、特にメディアを結びつけるという作業はリベラル
アーツとしての勉強をする私には、これから社会に出る上でとても必要だったと思う
し、その作業自体エキサイティングなものでした。

MUS 261:Black Chorus
前回は始まったばかりで、たしか “It’s just amazing!”と表現したはずです。
今、commencementでのパフォーマンス一回のみを残した状態で思うことは、本当に素
晴らしい経験になったということです。しかし、この素晴らしいクラスが、大きな悩
みの種の一つとなっていたのも事実です。コースカタログには、「black music全
般」を取り扱うと記述されていましたが、実際はspiritual, gospelと言われるジャ
ンルのものが9割以上という状態でした。ということで、もちろん歌詞の内容は全て
Jesus Christに関するものです。更に、おしえ方も、先生が “Feel Jesus”,
“You have to mean what you mean!” というようなことを熱心に言われることが多
く、非キリスト教徒の私には歌詞で歌っていることと、自分自身の矛盾に苦しみまし
た。今振り返ってみると、この授業をとる前の段階では、“Choir”という簡単な単
語の本質的意味さえも分かっていなかったのだと唖然とします。しかし、悩みつつ
も、半年間やめずに続けて本当によかったと今では思っています。全ての曲(数え切
れないほどの曲数を学びました)は素晴らしいとしか言いようが無いし、更に二回の
Krannertでのコンサート(二度目はsold outでした!)や、地元Champaignの教会で
のコンサート、更にシカゴでの会議に招かれて、皆で旅(?)をして歌った経験など
全ていい思い出です。指揮者、そして現役のソプラノ歌手であり、さらにAfrican
Americanの女性として現在の地位を自らの努力で達成した、“self made”という言
葉にぴったりのDr. Davis自身の存在も大変inspiringだし、自らその成功を、特にま
だまだ苦境にあるAfrican Americanの生徒らに示すという点においても意味深い授業
でした。来年は “black music defines MUSIC of Illinois”という大きな目標のも
とに、更にblack chorus自体躍進していく予定です。去るのは悲しいけど、これから
は遠くから応援したいと思います。

(その他生活について)
上記のような経験を経て、ここイリノイで、自分はマイノリティーだと痛感するこ
とがしばしばでした。さらに他のクラスで勉強したことも含めて、アメリカにおける
構造的な(?)差別に気付き、ショックを受けることもよくありました。元々、私の
無知が原因なのですが、更に私はGlobal Crossroadという学部寮のインターナショナ
ルで、全ての人種が混ざり合って住むという、理想上のアメリカを体現したような場
所に住んでいるため、外とのギャップに苦しんだわけです。例えば、フレッシュマン
で日本人の友人は「レトリックの101、102には白人が一人もいない」という状
況に出くわしました。Diversityを謳う学校における、黒人系とアジア系だけのレト
リックのクラス。いままでの私ならそこで、「へぇ~」としか思わなかったのです
が、更に聞くと、それはそのセクションだけではなく、全体的に言えることだそう
で、そのクラスの先生が「あなたたちがここにいるのは、他の人たちより劣っている
わけではなく、“コミュニティーによる学校のresourceの格差”がある社会のあらわ
れなのです」と、初回の授業で言われたといいます。だから、UIUCのマジョリティー
である、suburbの良いハイスクールを出た白人は初歩クラスに一人もいないという事
態が起こるわけです。更に仲良しのblackのフロアメイトは、「他にもそんなことは
いっぱいある。私は高校で化学を三年間取ったけど、実験が一度もなかった。私たち
の学校(south side Chicagoのblack communityにある高校)は1つの薬品も買うこと
ができなかったんだ」と言います。それでも、ここ中西部はまだ他に比べて、最悪で
はないはずです。そんな状況を「機会の平等」と言ってしまえるアメリカってなんな
んだろう。。。と考え込むことがよくありました。英語の語彙が増えたせいで、その
ような議論をできるようになったのはいいのですが、あまりに悲しい現実です。しか
しそんななかでたくましく生きるマイノリティーと呼ばれる人々に敬意を払わずには
いられません。Black chorusでよくDr.Davisが生徒に「絶対に諦めるな」と励ましの
スピーチを毎回練習後に長い時には30分以上されることがあり、「早くかえりたい
なぁ」と思ったこともありましたが、そうせずにはいられない状況がある、というこ
とを知りました。

更に二・三月にかけては、近隣アジア諸国の日本に対する批判が相次ぎました。そ
の中で、個人の意見は別として、やっぱり溝は深いんだなと悲しくなることがしばし
ばでした。更にここUIUCは少なくとも学部レベルでは日本人が少なく、そして日本を
批判している国の人たちがたくさんいます。そしてCNN headlineでも毎日報道がされ
ていました。その中で、本土から来たと見られる中国人の方々を見るたびになんだか
びくびくしている(これは返って失礼かもしれませんが)自分がいたり、特にデモの
事に関して話している人を見ると聞き耳を立てている自分がいたり、更にたくさん
の、そのような国から来た私の友達は、本当のところそう思っているのだろう、と、
辛い日々でした。そんな中で一緒に来た留学生や、同じ寮の数少ない日本人の友達と
は立場を分かち合い本当に助けられました。今2005年でもこの状況ですから、過去に
ここで学んでいかれた先輩方はどんなに大変だったか想像もつかず、尊敬せずにはい
られません。

(まとめ)
このように冬休み以降の三ヶ月間は、今までのように沢山の友達に励まされつつ
も、イリノイの冬空のように重苦しく悩むことがたくさんあり、辛い時期でした。こ
れまで二回のレポートでとても前向きなことをお伝えしてきたので、レポートを書く
のをためらったのも事実です。先学期とは違って、英語にも困らなくなり、いろいろ
なことが分かるようになったのはよかったのですが、そのせいで、「アメリカの知り
たくなかった部分」にも沢山気付きショックの連続の日々でした。でもそんな中、他
の奨学生や沢山の友達に励まされつつ、いままでここで勉強されてきた先輩もみんな
経験したのかな、と受け入れた感じです。いまとなっては、冷静に振り返って、「こ
れも良い経験だ、留学の醍醐味(?)かもしれない」と思えるので、心配しないでく
ださいね。全体的なことは近いうちに最終レポートでまとめたいと思います。最後に
なりましたが、この留学の機会を与えてくださり、感謝しています。ありがとうござ
います。あとほんとにわずかなので、楽しんで帰ってきます。

古川 愛季子
お茶の水女子大学 文教育学部
言語文化学科 英語圏言語文化コース 3年

梶恭子さんの2005年4月分レポート

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JICの皆様、いかがお過ごしでしょうか。シャンペーンは再び寒気に包まれて、昨日今日と、最低気温1度という冷たい風が吹き荒れています。思えばシャン ペーンには春と秋という気候がないように感じられます。8月から留学される皆さんは、夏のシャンペーンでも服装に気をつけていただきたいと思います。

しかし、一月ほど前には、ようやく春の兆しが見受けられ、色とりどりの花があちこちで咲き誇り、それは見ていて楽しい景色が広がって いました。この時期、わたしはまた、「ああ、わたしはは日本人だなあ。」と感じることがあったのでそれについてお伝えしたいと思います。それは、わたしの 中での「桜」事変といわれるものです。

富山の実家の裏の山では、春には何千本という桜がいっせいに咲きみだれ、山全体がピンク色に染まり ました。わたしが通う一橋大学は、駅から大学の門まで続く桜並木知られ、春は桜のアーチの下を歩くだけでもうため息がでます。桜と春、春と桜は一心同体の 間柄。そして、冬は-15度にもなったシャンペーンにもようやく春が訪れ、20度を越す日も増えてきたころ、わたしはあることに気が付きました。 「イリノイには・・・・・・・・・さくらが無い!!!!」 桜を見ない春なんてまるでカレールーのないカレーのようです。桜を見ずに春を実感することができないのです。チューリップもパンジーもマグノリアも素敵で すが、やっぱりわたしは桜で目で愛でたいのです。そんな中ようやくキャンパス内で一本よれよれと咲く桜を見つけ、大はしゃぎしていると友達が、不思議そう な顔をしていたのでわたしは桜の魅力を力説しました。カラオケソングで一番多いタイトルは「さくら」百円玉にも「桜」、日本の国花「桜」、夜に散る桜の花 びらを見て芸術家はいく つもの詩を詠みました。日本人ならとにかく「さくら」「さくら」「さくら」、と。 そこで花見の説明をしたら彼が一言。「Public Spaceでお酒を飲むのは、法律違反じゃないのか!?」8ヶ月間で初めて文化の差というものに打ちのめされそうなった瞬間かもしれません。さくら禁断症 状が出ていたわたしは、アメリカ人の友達にも尋ねてみました。すると、春は桜、とまでは言わなくても、アメリカでも桜で有名なところがあるし、総括してア メリカ人も桜が好きとのこと。ワシントンDCの春は桜で街がピンク色にもなるとのこと。さらに彼が言うには、DCの桜は日本人が友好の印として植えたもの だそうです。日本人ほど桜が好きな民族は希少のようですが、桜はイギリスにも韓国にも名所があるということが後日わかり、シャンペーンにも桜が増えたらす ばらしいな、と思いました。

バスケットボール

皆様ご存知の通り、今学期のUIUCはバスケットボール一色に染ま りました。キャンパス中がオレンジ色になったというのは全くおおげさではありません。どのお店の窓にも「Fighting Illini」(バスケットボールチームの名前)の文字が躍り、バスケットボールフィーバーは5月5日の、NCAA決勝戦(日本で言えば、甲子園の決勝で しょうか)で頂点に達しました。皆様ご存知のAlma Mater像も決勝前にはチームのユニフォームに衣替えし、片手にはバスケットボールを持ってキャンパスの盛り上がりを体現するほどまでになりました。結 果は残念ながら準優勝になりましたが、みな口々に”We are still No.1!!!”と叫び、決勝戦の後のグリーンストリートは、深夜までオレンジ色のTシャツを着た数千人の学生たちで埋め尽くされました。わたしも Illini Unionの大スクリーンで声をからして応援しました。そのときの一体感は今 まで経験したことのないもので、スポーツの力がいかに偉大なものかを実感しました。Fighting Illiniと書かれたオレンジ色のTシャツは、一生の思い出になりそうです。

幼稚園でのアルバイト

今学期は、 少し生活にも余裕がでてきたこともあり、学期初めからキャンパス内の幼稚園でアルバイトを始めました。3歳から5歳までの子どもたちの食事を世話したり、 一緒に遊んだり、授業を手伝ったり、お給料をいただくのが申し訳ないくらい楽しいお仕事で、次の授業に向かうバスを何度か逃してしまうこともありました。 最近ではキャンパス内にある去年できたばかりの新しい美術館で、子どもたちとフィールドトリップに行ってきました。到着するとすぐ、美術館の係員の人が一 言。 「今日はみんなで『ちーぐいーるいーえー』 を作ります。日本のアートです。こうやって薄い紙をちぎって、重ねて糊で貼ってBEAUTIFUL!!!!」 それは「ちぎり絵」でした。 昔幼稚園でわたしも体験したものです。先生たちがHopesと呼ぶ子どもたちも色とりどりの紙と糊を手に必死で格闘していました。糊を使わずに単に重ねて 喜んでいる子もいれば、 一点集中して紙を重ね続ける子や ひたすら紙をちぎっているだけの子や、糊だけ塗っている子など様々。このアルバイトを始める前は、子どもはあまり得意ではなかったのですが、色んな発見が あって毎日新しいことに気づかされたり、忘れていたことを思い出したり。非常に貴重な体験をさせていただき、今学期が終わると同時に子どもたちに会えなく なるのがとても寂しいです。

現在は始まった期末試験の勉強に終われる毎日ですが、これが終わればあとは帰国するのみになりました。 今までやりのこしたこともたくさんありますが、その分予想していなかった新しいことにも挑戦でき、結果としては満足しています。総括は5月中旬になる最終 レポートでお知らせいたします。それまでみなさまお身体にお気をつけください。

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Illini Unionで決勝戦を観戦するUIUC学生

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試合後のグリーンストリートを数千人の学生が練り歩く