勝田梨聖さんの2015年4月分奨学生レポート

JICの皆さま、そして本レポートを読んでくださっている方々、こんにちは。いよいよ4月を迎えようとするシャンペーンでは、数週間前の天気とは一変して雪もすっかり溶け、暖かい日差しのもと駆け回るリスの姿も再びよく見かけるようになりました。早いもので、留学生活も残すところ2か月を切りましたが、今回のレポートでは、(1) 春学期の授業, (2) 冬休み, (3) 寮生活、課外活動についてご報告いたします。

 

 

(1) 春学期の授業

今学期は、以下の授業を受講しています。

GLBL350  Poverty in a Global Context (Prof. Brian Dill)

MACS (/PS)389  International Communications (Prof. Luzhou Li)

PS 282  Governing Globalization (Prof. Konstantinos Kourtikakis)

PS 280  Intro to International Relations (Prof. Ryan Hendrickson)

EPY199  Leadership in Global Engagement (Prof. Jenn Raskauskas)

 

 

GLBL350: Poverty in a Global Context (Prof. Brian Dill)

この授業は秋学期に受講したGLBL250の発展編で、国際開発について学んでいます。貧困の測定方法や定義を学習した後、貧困を生み出すとされる原因、例えば地理、植民地主義、政策や機関、汚職などのトピックを週ごとに扱い、80分間ディスカッションをベースに授業が進みます。今学期最も楽しんでいる授業ですが、同時に、読み物や課題の複雑さ故に最も苦しんでいるコースとも言えます(笑)しかし、いつか時間のある時に読もうと思いつつ、なかなか手を伸ばせずにいた開発学界の著名人であるJeffrey Sachs, William Easterly, Acemoglu, Daron and James A. Robinson等の書物がリーディング課題で出され、それらを基に教授やクラスメートと議論することで、新たな考え方や発見にふれることができます。また読み物の他には、4回にわたるproject paperが特徴的です。世界銀行やその他の機関が公表する国別データを用いて、自分が選択した国の貧困を分析する課題で、マラリアの蔓延率、経済インフラの普及度、耕作地面積など細かなデータを引っ張り出し、立てた仮説を立証していくのは骨の折れる作業ですが、貧困について多方面的に考えられる良い機会となっています。

 

MACS (/PS)389: International Communications (Prof. Luzhou Li)

この授業はメディアをグローバル化や政治と絡めて考察するコースです。履修に迷うなか興味本位で授業に参加してみたところ、その回では当時世間を席巻していたフランスの風刺週刊誌Charlie Hebdo襲撃事件と表現の自由を扱っており、メディアの観点から世界を読み取るのはおもしろそうだと思い受講を決めました。トピックは文化帝国主義や途上国開発、冷戦、テロ、またジェンダーなど多岐にわたっています。毎週金曜日はドキュメンタリーを鑑賞しますが、中でもアメリカの有名なアイドルオーディション番組”American Idol”のアフガニスタン版”Afghan Star”での女性の描かれ方を記録したドキュメンタリーでは、グローバル化を推し進める米系多国籍企業が(「女性は人前で踊るべきではない」などの)アフガニスタンの伝統的慣習と衝突している様子が描かれており、非常に印象に残りました。またこの授業では、個人的に授業後やオフィスアワーに教授と話しに行くことが多く、昨今の日本や中国のニュースメディアについて議論したりもしています。

 

PS 282: Governing Globalization (Prof. Konstantinos Kourtikakis)

このクラスでは主に、グローバル化が国家主権や政策、人権に及ぼす影響や、国家以外のアクターのガバナンスについて学んでいます。Advanced Writing Classと呼ばれるペーパー課題が重い履修科目ですが、その分書き方の指導もきめ細かいです。

授業ではJoseph StiglitzやSaskia Sassen などの名の知れた学者の書物を講義のベースとしています。特に、移民問題を社会全般に敷衍して考察する授業では、都市開発や自治体政策について新たに深く考えるきっかけにもなりました。(ちょうど講義が、移民政策についてのある新聞コラムが論議を交わしていた時期とぴったりと重なったのは少し不思議な偶然です。)

 

PS 280: Intro to International Relations (Prof. Ryan Hendrickson)

国際関係学の入門ということもあって受講を迷っていましたが、教授の研究対象であるNATOや米国の安全保障政策に主眼を置いた国際政治学の講義に興味を持ち、履修することにしました。冷戦やテロ、軍事政策などを特に強調して詳説するのはアメリカの大学ならではだと感じます。またこのコースで特徴的なのは、TAによる毎週金曜日のディスカッションです。Foreign Affairsなどからの引用記事を読み、それについて著者に賛成派、反対派に分かれて議論をします。だいたいは、リアリズム、リベラリズム、コンストラクティビズムなどの学派の立場に沿って意見を述べますが、TA(Teaching Assistant)を筆頭にクラスメートの多くがリアリズムに傾倒した考えが多い印象を受けます。そのなかで、説得力があり論理性に基づいた新しい観点をオファーするために、新聞、ラジオをより積極的に活用するようになりました。しかし、テロリスト掃討作戦に使われる米国の無人偵察機が話題に上がった時は、賛成派23対反対派2のマイノリティ側に立ちましたが上手く効果的に立場を説明できず、授業後に「ああ言えばよかった」「こうも考えられたのに」と猛省した記憶があります。残り4回での改善に期待です…。

 

EPY199: Leadership in Global Engagement (Prof. Jenn Raskauskas)

この授業は私の住む寮PARで開講され、ゲストスピーカーやクラスメートの30分プレゼンを通じて、グローバルリーダーシップについて考えを深めるコースです。澳門大学からの交換留学生と受講しますが、他の授業とは違いお菓子を食べながらの和気あいあいとディスカッションをするといった、非常に打ち解けた雰囲気です。グループワークでは、私たちのグループは、アメリカとアジアでの礼儀や対人関係に対する異なる観念から生じる挨拶の違いについて、4月末のUndergraduate Research Symposiumにてプレゼンテーションをすることになりました。現在はクラス外で集まってリサーチを進めている最中です。

 

 

今期の授業は上記の通りですが、先学期と比べてディスカッションも増え、以前よりも積極的に発言するようになったのは一つの成長ではないかと感じています。しかし、まだまだ授業後は反省の日々です。”Better than the last time” を目標に今後も邁進したいと思います。

蜀咏悄1

(写真1: 春の訪れとともに、Main Quadでも学生がくつろぐようになりました。)

 

(2) 冬休み

冬休みの一か月間は寮からkick outされるため、どこへ行こうか思案した結果、中米のグアテマラへ旅行することにしました。「なぜ、グアテマラ?」と会う友人皆に聞かれましたが、本来は開発についてフィールドワークをするためでした。しかし(!)、グアテマラ人の友人とゴム農園のリサーチをする予定が、私の期末試験の関係でどうしても日程が合わず。また、グアテマラ事務所のJICA職員の方とお話できるとのことで楽しみにグアテマラへ渡ったものの、年末年始ということもあって先方様がお忙しくされていたため訪問も叶わず。結局、「26日間グアテマラを旅しながら暮らす」ことになりました。首都は(噂によると)世界で12番目に危険な都市、言語は(ほとんど喋れない)スペイン語で英語は通じないということもあり、女1人で動き回るのには不安もありましたが、今までに訪れた国のなかで最も刺激的で言葉に表現しがたい愛着が湧いたのが素直な感想です。

初めて足を踏み入れるラテンアメリカのグアテマラ。街では陽気な音楽にあふれており、農村部では色彩豊かな野菜がずらっと並んでいました。毎日外食というわけもいかないので、市場で値引き交渉をして生鮮食品を買って、宿泊先に住む世界一周中の方たちと自炊生活を楽しみ、旅行というよりは「暮らす」という感覚に近かったように思います。

アメリカから輸入した中古スクールバスを改良した「チキンバス」が地元民の足で、早朝のバスに乗って都市部へ物を売りに大量の農村民が移動します。バスの治安はあまり良くなく、強盗が多発し、また道路自体もきれいに整備されている状態とは言えません。小売店が連なる都市部は、排気ガスで曇っており、環境への配慮というよりは経済発展を優先している印象でした。市場では同じようなものが似たような値段で売られています。地元民がどのように選んで買い物をしているのかは分かりませんでしたが、開発プロジェクトの一環としてマーケットの差別化がすすめられているそうです。さて数年後また訪れた時にはどれほど変容しているだろうなどを考えながら、毎日ぶらぶらと歩きまわっていました。

 

片言のスペイン語でホステルスタッフに話しかけても何を言われたか分からず、近くにいた男性を連れてきてヘルプを求めたり、満員のバス(40人容量のはずが70人は既にいました)で、運転中のドライバーをまたいで運転席と窓の間の小さな隙間に入れられたりと、貴重な経験と冒険の一か月間でした。

蜀咏悄2

(写真2: 世界で一番綺麗な景色が味わえると言われているグアテマラのアティトラン湖)

 

 

(3)寮生活、課外活動

朝一番の「今日の気温何度?」の会話(とそれに伴う落胆または喜び)をルームメイトと交わしてから、支度をして教室までの道を歩くのが習慣となっています。豪雪、または道が凍っている日もありましたが、最近は毎朝とてもいい天気で気持ちが良いです。狭い部屋での共同生活、(自分だけの空間が欲しい…)と切実に思う時もありますが(笑)、ルームメイトや同フロアの友達と他愛もない話で盛り上がれる時間はそれ以上に貴重なひと時でしょう。

春学期も始まり、シャンペーンでの生活にはすっかり慣れましたが、この二カ月たくさんのイベントがありました。

 

<日本館 懐石・利き酒イベント>

イリノイ大学日本館にて2月20日に懐石料理を、21日には利き酒イベントを開催しました。はるばる日本からお越しくださったのは、東京でCAFÉ OHZANを経営する榎本鈴子さん。シェフが腕を振るった近畿大学養殖マグロの懐石料理は、食材や調理方法のみならず、色彩や配置、お皿にも細かく気が配られた、まさに芸術品でした。私と田中さん女子組はサーブが中心でしたが、お運びした時のお客さんの驚嘆した顔は忘れられません。そして、(少しつまむことができたのですが)頬の筋肉が一瞬にして緩むほど美味しかったです。ここイリノイ大学に来て以来、毎日ほぼ同じ寮食のため「食べる」ことを疎かにしていましたが、繊細に盛られた懐石料理を前に和気あいあいと談笑するお客さんの顔を見ていると、「食」がもたらす力の偉大さに改めて気づかされました。

 

そして翌日午後からは同じく日本館にて利き酒イベントが行われます。チケットは売り切れ、会場は大盛況でした。私はお酒にさほど詳しくないのですが、驚いたのは、なんと小料理の種類の多いこと。「おつまみで、ここまでのクオリティー?!」と驚きましたが、日本料理をあまり知らない外国人にとって、様々な日本酒を嗜みながら、彩り豊かで綺麗に盛られた小料理一品一品を見て食べて楽しむのは最高のひと時だったのではないでしょうか。

 

この二日間を通して、日本語を知らない友人でも大抵知っている”Kawaii”以外に、これからは”Oishii”という言葉もより広がるようになればと、ふと感じました。そのためにも、イリノイの友達が日本へ訪れた時は、是非日本の食についても伝えたいと思います。

蜀咏悄3

(写真3: 利き酒イベントでの小料理の一部)

 

<Power Africa>

ACES Libraryの会議室で催された、アフリカのエネルギー開発のパネルディスカッションに参加しました。Power Africaとは、2013年6月にオバマ大統領が打ち出した、より多くのサブサハラアフリカの人々がエネルギーにアクセスできることを目標にした政策です。このイニシアティブに65億ドルが投入されたほか、エネルギー部門の企業も90億ドルを投資し、安定した電気供給の他、より効率的なエネルギー創出を目指しています。Power Africaアドバイザーやエネルギー開発を専門とする教授、モザンビーク出身の社会活動家など、世界各地から集まり、Power Africaの行方や欠点などを議論しました。興味深かったのは、プロジェクトのもと建設されたあるダムが環境を破壊し、そのエネルギー約80%が、地元民ではなく関係する外国企業へ輸出されているという事実です。パネラーの”Think about WHO is benefited from this project.”という言葉が強く胸に響きました。

 

 

<Illinois Leadership Program>

EPS199で参加必須だったという理由もありますが、ルームメイトからのお勧めで、私もこのプログラムに参加してみました。いわば、リーダーシップ育成プログラムで、朝9時からの8時間、ひたすらグループでのワークショップとディスカッションを続けます。幸いなことに、私のグループは出身国のバランスが取れており、個人的にはワークショップ自体よりも、その休憩時間に出身国の文化や政治、問題点について話し合ったことが一番刺激的でした。現政権のもとでの各国のfreedom of speechについて議論したり、地元の価値観や慣習と関連させながら女性の地位について話し合ったりは、Political Science専攻でもなかなかない機会です。学生の問題意識の高さに驚き、同時にもう少し上手な英語で日本の現状を伝えることができなければという焦燥感にかられました。あまりにリーダーシップに関係ない話をしていたので、最終的には、「その各国の問題に、自分がどういうアプローチをとるか」で話をまとめました。

 

 

…と、春学期2か月間、おかげさまでとても元気に過ごしています。皆がSt. Patrick Dayで酔い狂う姿を横目に、友達と5時間カフェで喋り続けたり、YMCAのイベントにて伝統舞踊を鑑賞しながら多国籍の料理を味わったりと、なんとも私らしい生活を確立できるようになったのは先学期との違いでしょうか。さて春休みが終わればまた試験と課題の波が押し寄せてきますが、残された日々をマイペースに楽しんでまいりたいと思います。

 

蜀咏悄4

(写真4: バスケットボールの試合。試合終了わずか4秒前のゴールで見事イリノイ大の勝利!!)

 

最後になりましたが、いつも温かくご支援くださっているJICの皆さまをはじめ、家族と友人にこの場をお借りして感謝申し上げます。そして今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。