小松尚太さんの2015年4月分奨学生レポート

お世話になっております、小山八郎奨学金奨学生39期の小松です。イリノイの冬もようやく終わりを告げ、暖かな日が続くようになりました。私は、ドアノブに触れるときにバチッとする静電気を除けば冬は大好きな季節なので、冬の終わりについて寂しさを覚えるタイプの人間です。

以下、冬休み、春学期、春休みの模様をご報告いたします。

 

■冬休み

冬休みは丸々ニューヨークでのんびりと過ごしました。ひたすら観光し、各地をめぐり歩きました。秋休み・冬休み・春休みともに現在住んでいる寮からは締め出されてしまうため、それが出不精で観光にあまり行かない私には程よい強制力として働くのでした。

ライフネットの全社長の出口氏曰く、人間は「人から学ぶ、本から学ぶ、旅から学ぶ」以外には学ぶことができない動物だそうです。ニューヨークという時折人と他愛もない話をし、過ごす日々は、今から考えるとなんとも贅沢な日々であったなあと、つくづく思います。

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マンハッタンの新たなシンボル、1 World Trade Center

 

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ニューヨークは美術館も数多く有り、なけなしの感性を刺激してくれました。

 

■今学期の授業

今学期は以下の4つの授業を履修しています。もう一つ院生向けの授業の履修も当初は考えていましたが、自身の専門とかなり違う方向のものであったため、途中でdropしました。

 

ACE261 Applied Statistical Methods

先学期の授業の反省から、統計について今一度復習したいと思っていたため、この授業を履修しています。日本の授業はとにかく数式が先行する授業が多かったのですが、こちらはどちらかと言えば数字を使った具体例をこれでもかと提示し、学生の手を動かすことを大事にしているように思われます。

 

ACE310 Natural Resource Economics

私の専攻が「農業・資源経済学」にも関わらず、資源経済学についてしっかり学んだことがないので履修を決めました。その名の通り、森林・鉱物・漁獲などの資源について、それぞれの特徴およびどのように配分すればよいかを学びます。時間を通じた資源配分を考えるという点で、他の経済分析とは異なるようです。

 

ACE451 Agriculture in International Development

まさに自分の興味関心と合致した授業です。途上国の開発における農業の役割とは何か、というテーマのもと講義とディスカッションを行う授業です。農業経済を学ぶ一方で日本の農業にどこか閉塞感を感じていた頃、農業はどうも途上国開発に関係があるらしいということをたまたま履修したゼミで輪読した論文で学びました。そこから、自身の「農業と開発」というテーマに強い興味と関心を持ち始めたような気がします。

しかしこうした授業で学べば学ぶほど、実際途上国では何が起きているのかをこの目で見たくなってきます。後々にも述べますが、こうした開発に携わりたいという人間にとって、現場体験・現場感覚というものは必須のようです。

 

ECON471 Introduction to Applied Econometrics

先学期、授業にて開発経済の論文を読み込んだのですが、そのときに統計・計量経済のことについて理解が不足していると実感していました。2週に1度、大量のproblem setが宿題として課せられており、統計ソフトの前でにらめっこを続ける日々です。

 

■日本酒イベントの開催

2月20、21日と、現地の方向けの日本酒イベントを開催しました。私は日本にいたときに「学生日本酒協会」(https://www.facebook.com/Student.Sake.Association)という活動を行っていました。

そのため、「海外でもこうしたイベントができるといいなぁ」と留学を考えていたときにおぼろげ考えていました。それが今回このような形で実現し、感慨深いものがあります。日本酒という日本文化を、海外の方に伝え楽しんでもらうことが出来る、またとない機会だからです。

 

今回のイベントは2日間に渡り行われました。1日目は懐石料理と日本酒のコースを振る舞うディナー、2日目は立食形式で日本酒を振る舞いました。マグロをメインとした懐石料理に日本酒という、日本人ですらなかなかありつくことができない大変贅沢な会と相なりました。というのも今回、近畿大学で養殖されているマグロを取り扱う坂上さんと、CAFE OHZANの榎本さんと一緒に開催するご縁に恵まれたからです。JICのネットワーク、恐るべしです。

 

1日目のイベントは、日本酒の説明を私が担当し、料理の説明を同じ期の奨学生である吉川くんが担当しつつ進行しました。一応日本酒の基本的な部分については英語で説明できるよう準備はしていたのですが、味の表現方法は全くといっていいほど分からず、dryやsweetやfluityぐらいしか知らず苦労しました。事前に渡された日本酒リストの味の表現方法を見て、大変勉強になりました。

 

しかし頭で分かっているとはいえ、それを英語で即座に説明することはなかなか難しいもの。一番考えさせられた質問として、何が日本酒の価格を決めるのか、というものがありました。日本酒の価格は高いものもあれば安いものもある。その違いは何によって生み出されるのか、というものです。吟醸酒・大吟醸酒(日本酒の原料である米をより多く削ることによってより味がクリアに、香り高くなった日本酒のこと)ほど一般的に高くなるということは分かっていましたが、中には十四代や獺祭と言ったプレミアが付いてしまうような高いものも散見されます。これはどう説明できるのでしょうか。勉強不足ゆえ、上手く説明することができませんでした。

 

2日目のイベントは1日目と打って変わって、カジュアルな雰囲気の立食形式で行われました。参加者の数も20名だった前日に比べ60名程度と3倍近い数となり、日本館の中はかなり賑わいを見せていました。事前予約は開催のかなり前で打ち切られていたようです。懐石料理をつまむことができ、その上日本酒も飲むことができる。参加者の心をばっちり掴んでいたようです。

 

今回も私が日本酒の説明を行いつつの進行となりました。日本酒をサーブする間も、多くの質問をいただきました。例えば、前に出した日本酒との違いは何かというもの。これに対し、的確にコメントをするのは非常に難しいです。お酒のリストの中には私が飲んだことがないものもあり、事前に少し試飲をしたものの、それをどう英語で表現すればよいか言葉が浮かんできません。だいたいこんな感じかな~、と説明をするのですが、向こうにはあまり納得をもって受け入れられていない様子。そんなときの魔法の言葉が「感じ方は人によって違うので、あまり気にしないで」というものです。これ、非常に便利な言葉でどんな状況でも使えるのですが、はっきり言うと何も言っていないに近く、敗北同然です。その後、厨房に戻って携帯を開いて辞書を引いたのは内緒です。

 

と、そんなこんなで2日間にわたる日本酒イベントは無事終了しました。以下、イベントを通じて思ったことを。

 

とにかく説明が求められました。これに関しては、今回のイベント、日本酒に限りません。ルームメイトや友人にも、日本について、私の専攻について、そして自分自身の考えについて聞いてきます。それに関して最もショックだったのは、Thanksgiving breakの際ルームメイトのおばさんの家に居候させてもらったとき、その夫から「アベノミクスについてどう思うか」と問われたときです。なんとなーく経済問題については考えていたつもりですが、言葉に詰まります。金融政策がどうのこうの、財政、成長戦略がどうのと拙い英語で説明した後に、さて私の意見を述べるものの、ぐちゃぐちゃ。いや、参りました。己の勉強不足や、日頃からの情報への感度不足をこれほど悔いたことはありません。

 

逆に、同じく居候していたときにお酒について話をする機会があったのですが、そのときはスラスラと話をすることができる。日本酒について、そして日本酒が若者にとって相手を潰すツールとして使われていることについて、そしてそれに憤慨していることについて…。これは、もともと自分がそのトピックについて考えているからこそ話をすることができるのでしょう。

 

もちろん同じ日本人に対しても説明する機会はありますが、どこか文化的な面で暗黙的に了解できている部分もあるように思います。しかし海外の人にはそれが無いから、そこから説明しなければならない。すると口が追いついてこない。こういう状況に何度も陥るわけです。

 

彼らにしてみれば、私という窓口を通じて日本について知ろうとしているのですから、その私がヘロヘロだと日本に対するイメージはどうなってしまうのでしょうか。これは考え過ぎな部分もあるかもしれません。しかし、実際イリノイ大学はおろか、アメリカへ留学している日本人が相対的に少ないことを考えれば、まさに一人ひとり日本の窓口としての役割を担っているといっても過言ではないように思われます。

 

今回のイベントを通じ、物事について理解を深めようとする姿勢、それを説明できるようにする姿勢が重要であることを再確認しました。これは日本酒といった日本文化に限る話ではないでしょう。冷静に考え、自らの無知を自覚していれば明らかなことなのでしょうが、気づくのが遅いでよね。ああ、もっと勉強しないと。…話が日本酒イベントから少し飛躍してしまいました。

 

最後に、「日本酒のイベントがイリノイで出来るといいなぁ」というぼんやりとした野望がこうして実現できたことは、やはり感慨深いです。せっかくの留学の機会なのですから、学業であれ課外活動であれ何か一つ達成できた、というものがあるといいですよね。

 

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イベント中の様子。みなさんホントよく飲む。

 

 

 

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イベント終了後の記念撮影。

 

 

■春休み

春休みは最初シカゴに数日滞在したのち、首都・ワシントンDCに行っていました。今回ワシントンDCでの滞在は

・出発前にお話することができた、IMFに出向しているの大学の先輩とのお話

・将来国際機関で働きたい学生向けのキャリアフォーラム

という明確な目的があったため、出発前から非常に楽しみにしていました。しかし現地に到着してからは、

・主な博物館が無料

という事実に気づき、限られた日程で全てを堪能することは不可能でした。さらにワシントンDCは日本から桜を寄贈されていることで有名で、3月後半から4月初頭にかけて桜祭りが毎年行われています。アメリカにいながら春の薫りを楽しみたいという思惑は、滞在した一週間が時折雪が舞うほど非常に寒い時期と被ってしまったことにより裏切られました。もう一度いい時期にゆっくりと来ようと、ワシントンDCを去る時心に誓うのでした。

 

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ワシントン記念塔。中もエレベーターで登れるようですが、チケットは朝早くに全て配布が完了してしまっていたようです。

 

今回、IMFの先輩および世界銀行でのキャリアフォーラムのお話でひしひしと必要性を感じたのが「専門性」というものです。今回のフォーラムでは世界銀行の職員の方が主でしたが、世界銀行にかぎらず国際機関での採用は、「こういった人が欲しい!」とピンポイントで当てはまる人材が求められているようです。その要求に対し、自身の能力・専門性がどこまで組織に貢献できるかが問われるわけです。国際機関で働くってカッコイイという願望、働きたいという熱意も重要である一方、自身の専門性を武器に殴りこみにかかる気概がないと、まずやっていけないと。

 

国際機関に限らず、こちらに来て色々な人の話を聞いていると同じような話を耳にします。自分が今どの大学・会社に所属しているというよりかは、自分はこういったことができる、だから今こうしたことに取り組んでいるのだと。Thanksgiving breakでシアトルに居候していたとき、ルームメイトの叔父も同じようなことを言っていました。今まではどこどこに行きたい、やってみたいが先行してきたのだが、これからは世界に向かて勝負していく上では、自分だけが発揮できる価値が必要になってくると。これは、自分の中で考えていたようで、あまり考えていなかったことのように思います。もちろん「ここで働きたい、こういうことを成し遂げたい」という欲求を持ち続けることは大事なのでしょうが、あるときに「これをやりたい」から「これができる」が求められる転換点が訪れるのでしょう。いや、訪れるように力を蓄えなければならないのでしょう。

 

…ということを、職務経験もなく、学業成績もそんな大したことのない人間が言える資格は全くないのですが…。自分にできること・強みは何だろうか、またどういったことを自分のオリジナルの能力としていけばよいのだろうか。そういったことを考える今日このごろのようです。上記の内容は、あまり留学には関係ありませんでしたね。

 

しかし留学とは贅沢ですね。ああでもない、こうでもないとゆっくり物事を考えることができるのですから。そうした時間があとわずかというのは、やはり寂しいものです。残りの留学生活を有意義にするべく、一日一日過ごすのみです。

 

以上をもって、第3回目のレポートとさせていただきます。