乾弘哲さんの2013年2月分奨学生レポート

皆様、お久しぶりです。2012年度奨学生の乾弘哲です。こちらアーバナ・シャンペーンではすっかり木の葉も散り、日中でも氷点下が続く毎日です。もう留学生活も半分以上過ぎてしまったかと思うと、ここまでやってこられたというと満足と、もうそんなに時間が過ぎてしまったのかという焦燥が入り混じった気分になります。

実は、秋学期の中頃に健康を崩し、ときどき病院に通う生活を送っていたのですが、それも今では快復しました。この件に関しては、同期の奨学生の皆やその他いろいろな方に心配とご迷惑をおかけし申し訳なく思うとともに、様々なサポートを頂いたことに心から感謝しております。異国の地で体調を崩すとここまで心細くなるものかと思うほど、一時期はかなりブルーな気分になりましたが、皆さんのおかげで、今では元気に過ごせております。
今回は、そんなこともあってやや停滞気味だった秋学期の反省と、春学期の目標を中心にお届けしたいと思います。

I. 授業 ~課題はきつい、アメリカ人でもきつい~
II. 課外活動と行事 ~安全保障、アメリカ文化、芸術~
III. 英語 ~ETCカフェとドラマ~
IV. 春学期の目標

I. 秋学期の授業を振り返って
まず勉学面について総括すると、やはり言語面による課題が残りました。学期末の課題の山を乗り越えて痛切に感じたことは、やはり、英語のインプット・アウトプットの速度を上げないことには、クラスメイトに追いつくことができないということです。前回のレポートで報告しましたように、秋学期の目標は、表現は乏しくても中身のある発言をすることでした。しかし、日々課される課題はネイティブにとっても大変と感じられる量であり、結局、教科書や論文を読んでも、理解の度合いも理解の速度とも満足のいく結果を残せなかったと思います。
春学期はこの点を改善すべく、予復習に時間をかけられるよう予定を組み、さらにそれを通して英語の向上を図ろうと思っています。(もちろん、こんなことは留学前にやっておくべきだったのでしょうが、一方で、実際にこの環境に入ってみないとここまでの切迫感はわかなかったと思います)

以下では、それぞれの授業を簡単に振り返ってみます。
・PS 280 Introduction to International Relations (Prof. P. Diehl)
・GEOG 110 Geography of International Conflict (Prof. C. Flint)
・PS 300 Human Rights (Mr. Malekafzali, PhD)
・CMN101 Public Speaking (Mr. York)

期末試験前夜に散乱する論文たちとコーラのボトル

まず、PS280とGEOG110は、日々のニュースに敏感になる癖をつけてくれました。授業の内容自体は基本的なことなのですが、discussionなどのアウトプット型の課題で議論についていき、意義ある発言をしようと思うと、日々のニュースや国際情勢に関する基本的なことを知っておく必要があります。例えば、EUと同様の地域統合がNAFTA圏でも可能か、という問いにその場で答えるためには、少なくともカナダ・アメリカ・メキシコについての基本的な知識と、最近の政治・経済・社会の問題を知っておく必要があります。とはいえ、必ずしも学生たちがそうした事情に通じているわけではなく、学年としては彼らより上の私のほうが知識で上回り、意見を出せることもままありました。
ちなみに、このPSの授業の教授は前回紹介したとおりその分野の大家ではあるのですが、大変お茶目な人でした。例えば、Halloweenのときはお菓子の袋を黒猫のぬいぐるみを持ってきて、その日は、優れた発言をした学生はキャンディーをもらえ(200人の大教室なので、前の教壇から投げられる)、いまいちな発言は黒猫のぬいぐるみに「ウニャー?」と鳴かれて終わり、という講義になりました。また、クリスマス直前に行われた期末試験のときは、赤いセーターを着て頭にトナカイの角を付けて試験監督をしており、思わず笑ってしまいました。

Human Rightsの授業は、最後まで密度の高い授業で、第二次大戦後の世界のあり様を人権という観点から眺める内容となりました。先生は、自分の見解をかなり強く主張するタイプの人でしたが、その一方でYou don’t have to agree with what I say in this class.と何度も確認し、学生からの質問には多くの証拠(例えば国連の報告書)を提示して応えていました。とりわけアメリカの中東政策に関する見解では相当批判的な見解も提示しており、人権尊重が謳われる一方での裏の実態について考えるいい機会だったと思います。この授業は、人権の現実について考えることがテーマの一つだったのですが、講義の中ほどで彼が言った”We cannot reach any world where human rights are respected unless we consider political and economic context”という一言は、巷で聞かれる安易な人権擁護の議論とは一線を画した言葉で、強く印象に残っています。
このHuman Rightsの授業は現地の学生の間でもtoughな授業として知られているらしく、reading assignment(しかも、講義とテーマは一緒だが、別内容)を学期中にはこなすことができず、期末試験の2週間前くらいからThanksgiving休暇を使って一気に読みとおすことになってしまいました。もっと前からやっておけばよかったと後悔もしていたのですが、これに関係して、アメリカの学生の実態が垣間見える面白い出来事がありました。この授業では少し話すようになった友人がいて、彼らが主催する試験前のStudy Session(自主勉強会)に誘ってもらったときのことです。課題の本の理解も甘く、授業の内容も100%フォローできているとはいえなかったのでためらいましたが、いざ行ってみるとそこにいた当の主催者の彼は、そもそもReading Assignmentの範囲を知らず、私がたまたま持っていたシラバスを見てその量(約400ページ)に驚き、「これはヤバイ、自分はこれから家に帰って読む」(当時、すでに試験前日の夜6時ごろ)といって、さっさと帰ってしまうということが起こったのです。Study Sessionの企画自体を持ちだしたのが彼だったので、あまりの気楽さにぽかんとしてしまいましたが、結局彼がいなくなってしまったので、集まりも自然解散になりました。彼は中間試験でも成績が上位だったと噂だったのですが、一夜漬けに頼るときもあるんだなぁと日本の大学生と似た面を見つけた気がします。

ある意味で一番苦手だったPublic Speakingのクラスは、学期中頃にあったinformative speechは自分の中で最高の出来でしたが、最後の課題だったビデオに録音して発表するceremonial speechは原稿を覚えきれず、いまいちの出来になってしまいました。なお、その最後の課題をクラスで見て、たがいに評価し合う最後の授業では、クラスのムードメーカーだった女の子の提案で、皆でピザを食べながら鑑賞することになりました。そこでの自分への評価は、改善点も色々指摘される一方、「最初はずっとshyに見えたけど、今では自信を持って喋っていると思う。ずっと良くなった」というコメントをクラスメイトからもらい、素直に嬉しく感じました。
II. 課外活動と行事
年末年始は一度日本に帰り、年明けはChicagoを観光しました。このときは生まれて初めて本格的な時差ボケにかかり寝ていることも多かったのですが、宿泊したHostelでカナダから来た中国人学生と出会い、朝食を一緒にとりながら現在の中国政治について教わるなど面白い経験もすることが出来ました。
秋学期はどちらかというと日々の講義についていくので精一杯でそれといった課外活動はできなかったのですが、いくつか参加した活動、行事を紹介します。

ハロウィーンのアメリカ文化のクラス。Pumpkin Carvingです。

1. ACDIS
これはThe Program in Arms Control, Disarmament, and International Securityの略で、いわゆる「安全保障」の分野に関係する諸学の先生たちが集まった学際プログラムです。せっかくイリノイ大学に来たのだから、何か形に残るものがほしいと思っていたところ、ここが認定した授業を一定数履修すればCertificate(修了証)をもらえるという学部生向けのプログラムを見つけ、メンバーに加わりました(このため、後述の通り春学期の授業は全てこのACDIS認定科目にしました)。なお、秋学期のHuman RightsとGeographyの授業も、ここの認定科目だったことも選んだ理由だったのですが、留学生がCertificateを認めてもらえるかわからないままだったので、本格的に参加したのは11月頃です。
このプログラムでは、ただ授業を認定してくれるだけでなく、Securityに関する資料の揃った資料室を自由に使わせてもらえたり、関連分野のセミナーやインターンシップの情報を頻繁に流してくれたりして重宝しています。少し前には、「Terrorist Threats in/to the Lab」というテーマで、FBIで生物兵器対策に当たっている方を招きGenomic Biology学科が主催したセミナーに参加させてもらいました。アメリカで911直後に発生した、郵便で炭疽菌が送られるという事件は日本でも報道されましたが、そのような生物兵器の入手先として大学の研究室が狙われうるという内容で、非常に興味深く聴くことが出来ました。

2. American Culture Class (ACC)
これは、キリスト教系の団体が運営している異文化交流団体の活動の一つで、週に一度集まり、文字通りアメリカ文化について海外からの学生に紹介してくれるものです。あまり頻繁に顔を出しているわけではないですが、例えばHalloweenのときはカボチャのデコレーション体験をさせてくれるなど、留学生にとっては面白い企画となっています。なお、同じ団体の活動でBible Study、Conversationなどもあります。

 

3. Krannertセンター

こちらはキャンパス内にある美術館、劇場で、年間を通してさまざまな企画展を開催しています。印象に残っているのは、美術館と日本館とが共催した「藍染」をダンスで紹介する催しや、音楽部の教授が毎週金曜夜にブラームスを演奏してくれる連続演奏会、シャンペーン周辺のバレエ教室の発表会の「くるみ割り人形」などです。どれも学生は無料か数10ドル前後の安い価格で入場できるので、非常にお得です。

Indigo(藍)の展示。幻想的な音楽とダンスとともに。

 

 

 

 

 

 

III. 英語
前回のレポートで苦労していると報告した英語ですが、このままではまずいと思い、秋学期の中頃からいくつか取り組みを始めました。その一つが、ETC Coffeehouseというカフェでの会話教室です。現在では週に一回1時間半あるだけなのでそれ自体ではあまり英語が伸びるわけではないのですが、宿題としてアメリカのドラマを観て、そこで出てきた表現を集めるというものがあり、これが非常にためになります。やはり、日本で教わる英語はフォーマルな場面を想定しているので、くだけた場所での会話に出てくる表現は別に覚えないと分かりません。その点、ドラマは若者の生活を描いている現代のものだと頻繁にそうした口語表現が出てくるうえ、ニュースよりずっと速いスピードの英語に触れられるため自分にとっては良い訓練になっています。ちなみに、アメリカではNetflixという動画サイトがあって、月々8ドル程度払えば、数多くのドラマと映画を無制限に見ることが出来ます。(残念ながら、日本では利用できません)
一方、期末試験の論文を書いていて感じたことですが、口語表現だけを練習していると、表現がくだけた、あるいは幼稚な感じになり、フォーマルな文章が書けなくなってきます。現在では、この友人との会話のためのくだけた表現と、フォーマルな場での正式な表現の二つをバランスよく習得するのが課題です。
というわけで、まだまだネイティブ同士の会話にはついていけないことも多いのですが、それでもこちらに着いたころと比べればだいぶとましになった気がします。

III. 春学期の目標
今学期は、以下の4科目を履修しようと考えています。
GELG118 Natural Disasters (Prof. S. Altaner)
PHYS280 Nuclear Weapons & Arms Control (Prof. M. Perdekamp)
PS283 Introduction to International Security (Prof. S. Miller)
GLBL 397 International Diplomacy and Negotiation (Dr. T. Wedig)

先にもお話しした通り、全てACDIS認定科目で、またCertificateを認定されるためには最低2科目の理系科目も履修しないといけないため自然災害と核軍縮について学ぶことにしました。
また、PHYS280とGLBL397はAdvanced Compositionという単位が認定されるクラスで、Academic Writingに重点を置いた課題がたくさん出ることになっています。特に前者のPhysics280の場合、これまで自分が親しんできた国際法・政治学とは違ったWritingの決まりがあるため少し苦労していますが、一方で扱う内容・考え方ともに新鮮さがあります。さらに、GLBL397は最後の一カ月間は他大学と交渉のシミュレーションをするということで、全体的に「発信」に力を入れる学期になりそうです。というわけで、まず勉強面での春学期の目標は
目標1 今まで親しんでいなかった分野について、英語で吸収する力をつける
目標2 書く・話すという「発信」の訓練をする
の2点です。
また、秋学期は体調がすぐれなかったこともあって、外に出かけて楽しむ機会があまりなかったのですが、せっかくフロアメイトのFreshmenたちとは違って合法的にお酒が飲める年齢なので、ソーシャルライフを楽しむべく、今期はバーなどにも積極的に足を運びたいと思っています。その意味で、
目標3 これまで体験しなかった色々な楽しみを見つける
がもう一つの目標(?)です。

さて、冒頭にも書きましたがもう留学生活も半分以上過ぎてしまいました。ここに来るという機会だけでなく、こちらに来てからも多くの人に助けられていると感じます。こうしたご恩を無駄にしないためにも、あと3カ月余りを大切に過ごしていきたいと思っています。

ボストンキャリアフォーラムの際に訪れたHarvard大学で。

 

 

 

 

 

2013年2月3日
京都大学法学部4年生
乾 弘哲