榊原侑利さんの2013年11月分奨学生レポート

JICの皆様、そしてブログを読んで下さっている皆様、こんにちは。現在第38期小山八郎記念奨学生として、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校に留学中の榊原侑利と申します。留学前は東京大学工学部の4年生で、メタンハイドレートの資源探査について研究していました。

こちらに来て早くも2ヶ月半が経ち、留学生活も4分の1が過ぎてしまいました。本レポートでは、
1.授業
2.アメリカと日本の大学の違い
3.寮事情
の3点についてご報告させて頂き、この2ヶ月半の振り返りとしたいと思います。

<秋の紅葉が美しいキャンパス>
<秋の紅葉が美しいキャンパス>

1.授業について

私は現在、イリノイ大学工学部のCivil and Environmental Engineering (CEE)という、いわゆる土木・環境工学科の学生として勉強に励んでいます。授業で出る課題の量は予想以上で、平日は常に課題に追われ、金曜の夜は友人とパーティーを楽しみ、土曜は半分休憩半分課題という生活を送っています。今学期は工学系の授業を3つしか履修していないため余裕を保てていますが、工学部生の中にはあまりの大変さに学部に変えた人までいるそうです。私も、もし今以上に履修していたら睡眠時間さえ削られていたでしょう。

<CEEの学生はこのNewmarkと呼ばれる建物で授業を受けます>
<CEEの学生はこのNewmarkと呼ばれる建物で授業を受けます>
<Newmark内部の様子>
<Newmark内部の様子>

授業は100番台から500番台まで数字でレベル分けされており、目安としては100 – 200番台:学部1〜2年、300番台:学部3年、400番台:学部4年〜院生レベル、500番台以降:院生のみ、といったイメージです。
今学期は以下の4科目、計12単位を履修しています。

・GEOL 118 Natural Hazards
地学の初歩的な知識から始まり、地震・火山・土砂崩れなど様々な自然災害について俯瞰的に学ぶ講義です。大学から300番台以降の講義を4つ以上履修しないよう勧められたため、1つくらいは100番台のものにしようと思い履修を決めました。講義内容は易しいですが、試験3回、Web Exercise 6 回、加えて抜き打ちテストやエッセイもあり、なかなか手間がかかります。100番台や400番台といった番号は授業の専門性に応じて振られているので、単純に「100番台=楽」ではないようです。
ですが、センター試験が化学選択でこれまで地学を勉強した経験がなかったため、ここで一通り学ぶ機会が得られ良かったと感じています。

・ENG 315 Learning in Community – IDOT
イリノイ州の政府機関であるIDOT (Illinois Department of Transportation) は現在、道路脇の土地を利用してバイオマスエネルギー用の作物を育てるプロジェクトを進めています。未活用だった土地を有効利用することで維持費を削減することと、バイオマスエネルギーの利用促進によりサステナブルな印象を高めることを目的としています。
本授業はIDOTとパートナーを組み、このプロジェクトにまつわる課題についてグループでテーマを決めて研究するというものです。履修人数は2人のProject Managerを含め5人と少ないですが、その分一人当たりの発言機会が多く、意見も通りやすい環境です。私の提案で、バイオマスエネルギー導入の費用便益分析を研究テーマとすることに決まりました。
授業ではプロジェクトのschedulingの方法や、英語でのAcademic Reportの書き方を学ぶこともでき、アメリカで学問をするための基礎力が最も身に付く授業だったと思います。私たちの書いたProject Proposalを見て新たに10人以上グループに加わることが決まり、達成感もひとしおです。

・CEE 398 Special Topics – Engineering in Global Environment
熱力学や大気汚染物質、仮想水や環境経済など環境について様々な側面から学んでいく授業です。幅広い知識を身に付けることができる反面、専門性には物足りなさを感じます。
ただしプロジェクト2回、試験5回、宿題9回、それに毎回授業前にReading Assignmentをこなさなければならず、なかなかヘビーな講義です。試験は5回合わせて30%とウェイトは少ないのですが、試験時間が30分しかないのに問題数が非常に多く、毎回壊滅的な結果になって宿題やレポートで点数を補うという感じになっています。交換留学生は英語の授業にも慣れていないため、始めのうちは一発勝負の試験で評価する科目よりも、レポート課題など普段の努力を重視する授業を履修した方が良いのではないかと思いました。

・CEE 498 Special Topics – Transportation Safety and Risk
タイトルの通り交通リスクの分析手法を学ぶ講義で、私以外はほぼ大学院生です。今年7月にカナダで鉄道事故が発生し、火災や原油流出による環境汚染など甚大な被害が発生したことをご存知の方も多いと思います。特にアメリカは貨物列車によるHazardous Materials(エネルギーや有毒物質など)の輸送割合が高く、事故が発生した際どのような被害が生じるリスクがあるのか分析することが講義のメインテーマとなっています。2週間ほど前から大学院生とグループを組み、ArcGISと呼ばれる地理情報ソフトを用いて、線路周辺の環境や人口などの情報を活用しながらリスク分析を行うグループプロジェクトが始まりました。
グループプロジェクトと並行して、交通リスク全般に関して各自でテーマを設定し研究する個人プロジェクトもあります。2011年の東日本大震災で「グリッドロック」と呼ばれる渋滞現象が東京都心で同時多発的に発生したことをご存知の方もいらっしゃると思いますが、個人プロジェクトでは、南海トラフで巨大地震が起きた時のグリッドロック発生リスクと、避難行動への影響について分析する予定です。

<ArcGISの教科書。キャンパス内のIllini Union Bookstoreでは90ドルと割高なためAmazonで65ドルで購入しました。>
<ArcGISの教科書。キャンパス内のIllini Union Bookstoreでは90ドルと割高なためAmazonで65ドルで購入しました。>

Civil Engineeringは構造・土壌・交通・環境など分野によって難易度が異なり、交通・環境系では300〜400番台の講義でもさほど難しいとは思いませんでした。今学期はアメリカならではの議論主体の授業を履修しディスカッションの機会は多かったのですが、反面専門性が不足してしまったことには悔いを感じています。来学期は500番台やLaboratory形式の講義を多く履修して、自分の専門性を高めていきたいと思います。

2.アメリカと日本の大学の違い

せっかく学生生活を東京大学とイリノイ大学の2つで過ごすことになったので、日本とアメリカの大学の長所と短所をまとめたいと思います。
アメリカの大学のメリットとしては、教授の教え方が日本より上手く授業で得られるものが大きいこと、またチームワークやディスカッションが多いためコミュニケーション能力が向上することが挙げられます。反面、特に理系生にとって大きなデメリットとして、学部生は研究室に所属して研究できないことが挙げられます。学習歴が長くスキルも身に付いている大学院生に比べ、教える手間のかかる学部生が研究機会を得ることは困難です。その点に関しては、研究室に所属し卒業論文を書くことが必須となっている日本の大学の方に分があるでしょう。
もう一つアメリカの大学の特徴として、GPAが重視されることがあります。日本では取りあえず単位を取ることに重きが置かれますが、イリノイでは成績の付け方が厳しい(80%でもB-)こともあり、真面目に課題に取り組む学生の割合も日本より多く感じられます。
日本とアメリカどちらの大学が優れているかは断言できませんが、基本は日本の大学に軸足を置きつつ、アメリカで一年修行を積むというのが最も成長できる方法なのかも知れません。

3.寮について

現在はIllini Tower (IT)と呼ばれる寮とアパートの中間のような住居に、アメリカ人とブラジル人のルームメイト2人と住んでいます。同じベッドルームに住むブラジル人は同じCivil Engineeringに所属する交換留学生ということで話も合い、楽しく過ごすことが出来ています。

<部屋の様子>
<部屋の様子>

部屋はお世辞にも綺麗とは言えませんが、リビングルームもあって割と広く、地下にはビリヤードや卓球台、ピアノを弾けるMusic Roomもあるため非常に充実しています。
ただ食堂のクオリティが低く、19時までしか空いていないのが残念です。食事プランは増やすことはできても減らすことはできないので、今後ITに住む人には食事プランは最低限(Bronzeプラン)に抑えておくことをお勧めします(笑)

<部屋の窓からの景色>
<部屋の窓からの景色>

最後になりますが、イリノイ大学への留学という素晴らしい機会を下さったJICの皆様、後押ししてくれた両親や友人、研究室の皆様に感謝の気持ちを述べさせて頂き、10月分のレポートとさせて頂きたいと思います。

<Grainger Libraryにて>
<Grainger Libraryにて>

2013年11月3日
東京大学 工学部 システム創成学科 4年
榊原 侑利