田中洋子さんの2014年12月分奨学生レポート

【奨学生レポート12月分】

田中洋子

 

JICの皆様、いつもお世話になっております。つい先日期末試験を終え、秋学期も正式に終了いたしました。今回のレポートでは、今学期の振り返り及び冬季休暇中の予定について書かせていただきたいと思います。具体的には、

 

1.留学中の目標途中経過

2.秋学期授業

3.課外活動

4.感謝祭休暇

5.冬季休暇の予定

 

という順番で書いていきます。

 

【1.留学の目標途中経過】

前回のレポートで、留学中の目標として以下の二つを掲げました。

(1)教育について集中的に学ぶ

(2)迷ったらやってみるの精神でいろいろなことに挑戦する

 

まずは、(1)に関して振り返りたいと思います。

今学期履修している授業4つのうち2つは教育学部の授業ですし、通学時間がほぼなくなったおかげで時間にも多少余裕が持てるようになり自主的に本を読んだり出来る時間も作りやすくなったため、日本にいた頃に比べれば教育に関する勉強に割ける時間は格段に増えたと思います。授業の課題図書を読んでディスカッションに備えたり、宿題をやったりするだけでもかなり時間は取られてしまいましたが、せっかくアメリカの大学にいて洋書へのアクセスも容易になっている上、イリノイ大学の論文データベースも留学生として籍を置いている今ならば使い放題なので、休日などに興味のある書籍や論文を読む作業をよくしていました。特に印象的だった書籍は、教育史家であり、ブッシュ・クリントン政権下で教育長官の補佐を務めていたこともあるDiane Ravitch という人の書いた公教育制度解体の動きに対する批判を展開する内容の“Reign of Error”や反転授業のノウハウを論じた “Flip Your Classroom: Reach Every Student in Every Class Every Day” 、題名の通り高等教育バブルに警鐘を鳴らす“The Higher Education Bubble”などです。1冊目の本はEPS201

の課題図書として指定されていました。

ただし、「集中的」と言えるほどの勉強量であったかどうかというと、決して自分の限界までがむしゃらに勉強を続けたとは言えないように思います。もちろん、勉強は留学の核ではありつつほかにも有意義な時間の使い方はあるはずなので、まるで大学受験期のように勉強中心で全てが回るような生活が最善というわけではないように思いますが、それでも来学期はもう少し真剣に教育の勉強に取り組めればと考えています。勉強に充てる時間量以外にも、今学期は興味のあるものを片っ端から順序関係なく読み進めていたので、もう少し体系立てて勉強することを意識する、後ほど勉強会については触れますが、基本的に一人で勉強する時間が多かったので学び合いの場を作れるように工夫する、といった改善の方法があると考えています。

 

次に、(2)について振り返ります。

これも概ね守れたように思います。何しろ2学期間という限られた時間しかいられないわけですから、「後で」は基本的に永遠にやらないことを意味するということを自覚し、日本にいた頃以上に活発に、ただし別の言い方をすれば熟考せずにあれこれ動き回っていました。所属団体を見てみるだけでも、日本語を勉強している学生が集まるJapanese Conversation Table (JCT)、教育学部所属の学生団体二つ、音楽クラブ、留学生の交流会などに顔を出していました。ただし、それなりにコミットできるコミュニティの数というものには限界があり、人並み外れて社交的な性格というわけでもないので、結局定期的に活動に参加していてメンバーと言って差し支えないのはJCTと教育学部の学生団体のうちの片方だけだと思います・・。音楽クラブに関してはあまり音楽の嗜好の合う人が見つからず、それでも楽器の練習は続けたかったので、ダウンタウンにある楽器屋さんに併設のスタジオで個人的に細々と練習を続けております。ちなみに、この時に交渉の結果スタジオ使用料がだいぶ下がり、アメリカで生活するなら交渉力が大切といういつか誰かから聞いた言葉の意味を実感しました。

「挑戦する」というほどのものではありませんが、迷ったらやるという目標は日々の行動にも少しずつ変化をもたらしたように思います。例えば、授業中の話し合いにしても、最初はやはり気後れしてしまい、毎回のように「なんであの時発言できなかったんだろう。あの時この意見を言えればもっと議論の流れもよくなったはずなのに・・」とくよくよしていたのですが、途中から、「とにかく迷っているくらいなら手を挙げよう。手を挙げてから考えてもいいんだ。英語がすらすら話せないからなんて気にしている場合ではない!」と積極的に参加できるようになりましたし、学期中を通して少なからず起こったルームメイトとの問題に関しても、「変に遠慮して我慢するのはよくない。思い切ってはっきり言おう」と考えるようになり今ではだいぶ風通しの良い関係になっているように思います。

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Alma Materの銅像です。地面に雪が残っているのが見えますが、11月半ばは非常に冷え込みました。

 

【2.秋学期授業】

<Public Speaking (CMN101 –L2)>

教育学部の授業ではありませんが、今学期楽しさという点では一番だったように思います。前回のレポートでも説明しましたが、学期全体で5つのスピーチをこなす少人数の授業です。3分程度の自己紹介から始まりましたが、段々5分、7分とスピーチの持ち時間が増え、内容もinformative speech, persuasive speech といった、少し高度なものになっていきます。Informative speech では自分の専攻分野と関連のある内容について論じるようにとのことだったので、私はアメリカにおける英語学習児童(English Language Learners :ELLs)を扱い、またこのスピーチの次に行われたpersuasive speech ではアメリカにおける高等教育費高騰について話しました。

元々この授業には英語が母語である生徒用のクラスと非母語である留学生向けのクラスの2種類があるのですが、TAの忠告を振り切りネイティブ向けのクラスに登録した私は案の定クラスでただ一人のノンネイティブの学生で英語の即興スピーチなどではやはりほかの人たちに太刀打ちするのはなかなか厳しいものがあったのですが、先ほど触れたスピーチでは評価の重点が内容に置かれていたので、それならば自分も勝負出来るはずだとスピーチ原稿執筆のための調査はかなり頑張りました。そもそもそこまで評価の辛いクラスでもなかったのですが、それでも頑張りが多少は報われたのか良い評価をもらえた時は達成感があり嬉しかったです。

良いクラスメイトにも恵まれました。いつも隣の席で元気に話しかけてくれる子、独特のユーモアの持ち主で毎回クラスを奇妙な笑いに包んでくれる子、クールで皮肉屋でありながら実は面倒見が良い子、ジャイアンのような風格で(あくまで見た目です)クラスをまとめてくれる子。違うクラスに登録している友人の話曰くクラスによってだいぶ雰囲気も異なるようでしたが、私は運良く大変雰囲気の良いクラスに割り当てられ、のびのびとスピーチをすることが出来、それがこのクラスでの成長につながったのだと思っています。

 

<Elementary French 1 (FR101)>

こちらも一体感のある雰囲気の良いクラスに恵まれ、一度も欠席することなく受講しました。

日本で受けていたフランス語の授業が読み・書きに重点を置き、一通り文法事項を学習した後はひたすら仏文和訳という形式であったのとは対照的に、このクラスではとにかく聞く・話すということが重視されており新鮮でした。もちろん文法事項をきっちり勉強した方が効率がよいこともあると思うのですが、実用的なコミュニケーション能力を培うには、このような「習うより慣れろ」形式が有効なのかもしれないと思いました。

ただし、よく耳にする「日本の外国語教育は読み書き偏重でよくない」という批判に与するつもりはありません。先ほども述べた通り、文法事項を一から順序立てて学んだ方が長い目で見れば効率が良く、知識も継ぎはぎにならないという利点があり、一方でそれでは日常会話などの力はつきにくい。結局一長一短ということで、各人の必要に応じて(ビジネスなどで人と会話する場面が多いのか、あるいは研究職などについていて論文執筆のために読み・書きの力の方がより重要になってくるのか)採用すべき形式も変わってくるということにすぎないと思います。ただ、例えば日本における義務教育段階の英語教育といった話になると、基本的に全ての生徒に同じ形式で授業を行うことになると思うので、そういう状況において今の教育形態が適切なのか、どのような改善の方法があるかということに関してはもう少し考えてみたいと思いました。いずれにせよ、日本とはずいぶんと違う語学教育の現場に自分の身を置いたことは良い経験になりました。

 

<Foundation of Education (EPS201)>

アメリカ教育史を軸に公教育の意義や問題点、今後のあり方などを扱った授業です。とにかく教授がエネルギッシュな方で、大半が教育学部所属ということもあり学生のやる気も高く、行く度に刺激をもらえる授業でした(ただし、150人以上いる大講堂での授業で自分から発言することは結局出来ず、私がほかの学生に対し何か貢献することは達成出来ませんでした・・)。

課題もなかなかボリュームがあり、特にグループで取り組んだ中間試験(試験という名前ですが実際は通常の課題と大差ないものです)には苦戦しました。私は基本的に課題には個人で取り組む方が好きなので、そもそもいつ課題をやるかというタイミングがメンバー内でなかなかまとまらなかったり、それほど大きな意見の対立は生じなかったものの細かいところで考えが一致しなかったり、今まで避けてきた人との調整という作業をこなすのには相当の体力を要しましたが、非常に良い経験にはなったと思います。ほかの人と共に課題に取り組んでいると自分にはない視点を得られたり、自分の考えに対するフィードバックをもらうことで自分だけでは気付かなかった論理の穴に気付けたり、反論を展開する中でさらに自分の論理が強化されたりもしくは逆に自らの矛盾に気付いたりと、一人だけで課題に取り組んでいては得られないものがありました。もちろん、どこかしら妥協もしたものに自分の名前を書いて提出するということにはいまだ抵抗が消えないのですが・・。とはいえそれこそ大学を卒業して働き始めればチームとして何か成果を出すことを求められる場面が増えると思うので、限られた時間の中で出来るだけ多くの議論を重ね、協調しつつ自分も納得できるレベルまでものを作り上げるという場が今後もあれば、良い勉強だと捉えていきたいと考えています。

個人で提出するschool desegregation をテーマとする期末レポートでは、Lau vs. Nichols という、1970年代前半にサンフランシスコの公立小学校に通う中国系児童がバイリンガル教育の不備を主な理由として学校区を訴え、その後のバイリンガル教育を巡る議論の基礎を提供した有名な判決を扱いました。この判決に関しては以前英米法の授業でも少し学んだことがあったのですが、全て英文の資料を用い、当時の地方紙の記事なども参照しながらもう一度調べてみると、知らなかったことも数多く学べ、英語の資料へのアクセスが容易になっている現在の環境をあらためてありがたく感じました。

このレポート執筆を通して思ったのは、70年代当時からアメリカにおけるバイリンガル教育の状況は大幅に改善しているとは言い難く、いくら判決が出たところでそれはあくまで判決に過ぎない、司法の要求とそれを受けた制度設計側の真摯な取り組み及び現場の適切な対応、それら全てが揃わないと物事は変わらないということでした。司法の判断が実際社会問題に対しどれだけの実効力を持つのかということについては以前から関心があるので、今後自主的に教育に関わる判決を中心に勉強を続けてみたいと考えています。

この授業のディスカッションのクラスでは、各人が交代で議論の進行役を行います。私は、professionalization of teaching というテーマを設定し、教師の専門性を高めるにはどのような制度・方法が適切なのかということについて議論を行いました。日本でも教員免許取得の上で大学院修了を必須要件にするということが議論されていますが、果たして大学院教育は教員のレベルを上げることに本当に資するのか、リカレント教育の役割は、評価制度は適切か、といったことについて話し合い、教員志望者にとっては非常に身近な問題であるため、思っていた以上に議論が盛り上がり、45分間も場を持たせられるか様々なシナリオを予想しながらはらはらしていた私は胸をなでおろしました。

 

<Educational Psychology (EPSY201)>

「教科書に書いてあることを鵜呑みにせず、自分の目で確かめよう」という最初の授業での教授の言葉通り、学期を通して調査とその報告レポートの提出を続ける授業でした。調査自体は非常に簡単なものが多く、従ってやっていたことのレベルはそれほど高くもないのですが、受け身でひたすら授業で聞いたことを頭に叩き込むといった授業とは正反対で、レポートを書くのもなんだか中学校の時の理科の授業のようで楽しかったですし、実際に自分で確かめて納得するという作業の大切さを学んだ気がします。理論通りの結果が出ないこともしばしばでしたが、誤差の範囲だと乱暴にごまかすのではなく、なぜこのような結果になったのか原因を探るようにすることで、その過程を通しより教育心理というものに対する興味も高まりました。

特に印象に残っているのは、学期の最後に行ったテーマ自由設定での調査レポートです。私はほかの授業との関連もあり語学教育に関心があったため、第一外国語と第二外国語の学習に対するモチベーションの違いを探ることで語学学習の動機付けの方法について考察することを試みました。アンケート作成の方法に一定の制限がありとてもシンプルな設問しか作れなかったこと、また英語が母語か否かで外国語学習に対する姿勢が大きく変わるのではないか(今日では外国語学習≒英語学習のような状況が見られるからです)という予想を立てることなく、回答者の母語を尋ねることをしなかったことなどから、大変稚拙な内容のレポート(というよりは失敗報告書)になってしまいましたが、全て一から自分の手で好きなことを調べるのは思いの外面白いものでした。

 

【3.課外活動】

先述のJCTと教育学部学生団体のほかに、不定期ですが教育学部の学生と自主勉強会を作ってたまに一緒に勉強しています。それほどかっちりした集まりでもないので、時によっては教育と全く関係のない話(最近話題の映画のこと、もしくは誰かの恋愛相談など・・笑)をしていることもありますが、面白かった書籍や論文を共有したり、教育学部生向けのボランティアの情報を交換したり、TEDの教育関連の動画を一緒に見たり、授業の課題を相談しつつ進めたりと、私にとっては非常に有意義な場所になっています。正直、寮での人間関係はそれほど広くはなく、また授業にしても授業外でも定期的に会うような友人はそう多くは作れないので、この勉強会を今後も大切にしていきたいと思います。

寮で立ち上げた映画クラブは、今学期は参加者のリクエストに応えてひたすらアニメだったので(「時をかける少女」「風の谷のナウシカ」「借りぐらしのアリエッティ」「AKIRA」など)、もちろんアニメも好きですが、来学期は小津安二郎特集など、もう少し企画のようなものを行って、日本文化⇒アニメ、という多くのアメリカ人の頭の中にある思考回路を少しでも変えられたらと目論んでいます。

 

【4.感謝祭休暇】

感謝祭休暇中は、サンフランシスコを訪れました。当初はアラスカに行くつもりでガイドブックまで買い、オーロラを見るためにロッジの予約もしていたのですが、一緒に行こうと話していた友人の予定が急遽合わなくなり、車も運転できない自分が一人で行っても、しかもオフシーズンだし・・ということで西海岸に切り替えることにしました。

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かの有名なGolden Gate Bridgeです。ダウンタウンから自転車で行きました。

サンフランシスコの第一印象は、とにかく暖かい!!コートなしで歩けるなんて、日中でも氷点下のシャンペーンからしたら夢のようでした。また、アジア系住民の割合が高く日本食レストランも豊富にあったので、毎日何かしら日本食を食べていました。久しぶりに食べた焼き鳥、涙が出そうになるほどおいしかったです。

ゴールデンゲートブリッジまで自転車で行ったり、北米最大級と言われる中華街に行ったりと一通り観光らしいこともしましたが、特に予定を立てずのんびりぶらぶらしている日が多かったように思います。でも、そういうふうに過ごしていると、ガイドブックには載っていない細い路地にある素敵なレストランに行き着いたり、さびれた映画館を発見したり、また違う楽しさがあるのです。

感謝祭の翌日から、一度サンフランシスコを離れてヨセミテ国立公園を訪れました。カリフォルニアということもあり思っていたほど寒くもなく、豊かな大自然の中を一日中頭を空っぽにして歩き回り、良い気分転換になりました。写真は、お土産屋さんで運命の出会いを果たした鹿の女の子です。

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公園内ではあちらこちらでこのような壮大な自然の風景を目にすることが出来ます。

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お土産屋さんで運命の出会いを果たした鹿の女の子です。

【5.冬季休暇の予定】

冬季休暇中は、ニューヨークにある日系の通信社にてインターンをさせていただくことになりました。つい先日開始し、初日から私のパソコンに問題が見つかり皆様にご迷惑をおかけする事態となりましたが、なんとか1か月頑張りたいと思います。

教育に関心があるのに通信社?と思われたかたもいらっしゃるでしょうか。実は高校生の時から報道の道にも関心があり、短い期間ではありますが報道の現場の様子を実際に内部に入って自分の目で見てみたいと考え、今回のインターンに至りました。どの職業でも大変なことはつきものでしょうが、報道の世界は特に仕事が厳しいと聞くので、果たしてこの世界は全力を傾けることを厭わないと思えるものか、またそれとはまた別に自分に向いていそうなものか、といった将来の進路を考える上でのヒントをほんの少しでも得ることが出来ればと思います。

土日は自由時間になり、冬季休暇中にニューヨークを訪れる友人も何人かいるようなので、インターンをまず第一に頑張りつつ、楽しい時間も過ごしたいと思います。

 

今回の報告は以上とさせていただきます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。