2007年度奨学生レポート(田辺夕佳)

JICの皆様、いかがお過ごしでしょうか。東京大学文学部4年の田辺夕佳です。先日、総会にお集まりいただいた方々とは一年ぶりにお会いし、帰国の報告をさせていただきましたが、皆様へのご報告が遅くなってしまったことをお詫び申し上げます。

8月も下旬に差し掛かり、帰国してから3ヶ月も経ってしまったものかと驚いております。今ではすっかり日本の生活に戻り、本当に密度が濃く楽しかったイリノイでの日々を思い返すたびに懐かしさがこみあげてきます。今年度の奨学生はまさに向こうでの生活が始まったばかりと伺いました。1年前初めてイリノイに降り立ったときの感動やこれからの1年間の期待でわくわくしていた自分を思い出しました。

留学生活の中で、今まで自分が身に着けてきた英語力がいかにネイティブにはかなわないものであるかを思い知り、自分とは全く異なった環境で育った人々との文化の壁に悩んだこともありましたが、壁となっていた人々は、同時に多くのことを気づかせてくれた大切な友人でもありました。私がその中でも特に親しくなった友人は、本当にエネルギッシュで、興味の幅が広く、たった1年しかいない留学生である私のことを受け入れ、理解してくれた人たちでした。私もそんな彼らから刺激を受け、彼らには負けられないと思えましたし、一緒に過ごした時間は本当に充実し楽しいものでした。

この1年で大きく成長した、などと大げさなことは申し上げられませんが、楽しかったことも大変だったことも含め、自分にとってかけがえのない経験であり、将来思い返したときにイリノイに行くことができてよかったと自信をもって言えるのではないかと思います。

このようなチャンスを与えてくださり、日本から暖かく見守ってくださっていたJICの皆様に心から感謝しております。

UIUCのシンボルにて

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授業:スピーチ

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先学期に引き続き、力を入れていたSpeech Communicationの授業についてお伝えします。先学期SPCM101を受け、初めはアメリカ人の大胆な話しぶりやスピーチに織り交ぜられるユーモアなどに衝撃を受けましたが、一学期を経てようやく人前で堂々と話せるようになりました。その経験を通し、スピーチにもルールが存在すること、そしてそのルールに従ってスピーチを構成し、話す内容に関してしっかり自信をもって聴衆の前に立つこと、というのが重要な要素であると感じました。もちろん言語能力で若干のハンデがあるということもありますが、何よりも経験の不足が自分の課題であると思い、今学期は少しレベルも上げてSPCM332に挑戦しました。

この授業でとてもよいライバルとなったのは、同じ交換留学生のスウェーデン人でした。スウェーデンでは日常生活に英語が浸透しているらしく、さほど英語に困っているようには見えませんでした。しかし、よくよく話してみるとそれは私の偏見に過ぎず、彼も同様に私が何の苦労もなく授業に参加していたと思っていたそうです。それを機に、仲良くなりました。先学期までの授業で行っていたスピーチとは異なり、発表時間が長くなる上に、ほぼ何も見ずにプレゼンテーションをしなければならないという決まりはアメリカ人のみならず、当然留学生の私達にも適用されたので、彼も頑張っているのだからベストを尽くす上での甘えは許されないな、という気持ちになり、とてもよい刺激になっていたと思います。

また、この授業は生徒の9割がSpeech Communicationの専攻であったということで全体のレベルも高かったように感じられました。元々人前で話すことが好きな人たちが集まった授業だったので、他の人が行ったプレゼンテーションから学べることも多かったです。ロジカルに話を進めることはもちろんですが、同じ内容を伝えるのでも言い回しは人それぞれで、それによって話全体の雰囲気が決まってきます。それが「その人らしい」プレゼンテーションになっていくのだと感じました。今学期は就職活動の関係で度々帰国しなければならず、何度か授業を休んでしまったのですが、それでも非常に良い評価を頂くことができました。この1年間スピーチに取り組んできた達成感を味わうことができたとともに、人前で話す自信もつきました。

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授業:バリダンス

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続いて、最も印象に残ったアクティビティの授業についてお話しいたします。今学期、私は苦手とするダンスに挑戦しました。リズム感が全く無い自分にとって縁遠いものと思っていたのですが、アメリカに来て心構えとして変わってきたのは、「挑戦してみたいという気持ちを大切にし、やる気があるなら積極的になるべきである」というスタンスです。旅の恥は掻き捨て、といいますがイリノイにいる間は躊躇せずに色々とやってみようという気持ちが徐々に明確化してきたように感じ、ダンスの授業もその一つでした。ただ、ダンスといいましても私が挑戦したのはヒップホップでもバレエでもなく、インドネシアの島、バリ島に伝わる伝統舞踊であるバリダンスでした。バリダンスにした理由は簡単で、あまり人気がなく履修できた唯一のダンスクラスだったということなのですが、実はこれが最も力を入れた授業かも知れません。たった8人の生徒がインドネシア人の先生と1単位のために週4時間近く練習し、15分の曲に合わせて踊るだけでなく、バリ語の歌も覚えました。

バリダンスはやってみてから知ったのですが、ステップというよりはむしろ顔で表現する踊りで、表情や目の動き、それに首から上のみを左右に動かす独特の動きをマスターしなければならず、生徒達ははじめ苦戦していました。男役と女役に分かれてカップルの愛を表現している踊りは、先生が考案したオリジナルダンスで、動き自体は難しくないのですが、どうやってもみんなの動きはバラバラで、先生の動きとは似ても似つかず、バリダンスの難しさを感じました。学期末の舞台発表会に向けてひたすら練習に打ち込む毎日でしたが、クラスの雰囲気は絶えず和やかで、学部生以外に院生も多く、一人の院生はなんと1歳の女の子のママでもありました。そんなバラエティに富んだメンバーで一つの作品を作り上げることは難しくもありましたが、互いにアドバイスしながら練習を重ねるうちに、ダンスとして形が出来てきて、無事本番を迎えることができました。

リハーサル

本番の日は開始4時間前から、伝統衣装を身にまとい、独特の化粧を施し、エスニックな雰囲気が漂った舞踊集団になることができました。残念ながら、会場はカメラ撮影禁止で本番の写真はないのですが、ガマランというバリの伝統楽器の演奏に合わせて私達8人は無事踊りきることができました。舞台に立ちスポットライトのもとで拍手を浴びる感動、ずっと一緒に頑張ってきた仲間と並んで最後のポーズを決めたときの達成感、そして見に来てくれた友人たちの存在の嬉しさ、このような気持ちを一度に味わえたのは本当に久しぶりだったと思います。

バリダンス

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課外活動

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昨年から参加していたアイススケートのコミュニティの活動を今学期も続けました。学校内のリンクということもあって日本よりも空いていて練習がしやすく、学生は入場料タダという環境は本当に恵まれていたと思います。細かいフットワークに焦点を当てたものとジャンプ・スピンといった大技に焦点を当てたものの2種類のレッスンに加え、平日の昼間にあるPublic Skatingという一般滑走の時間に練習仲間と一緒に自主練を行い、リンクの近くの寮に住んでいて本当によかったと実感しました。実際、これだけの練習を重ねると少しずつ上達するもので、長年できなかったスピンやジャンプができるようになり、筋力もついて滑りに力強さが増したように思います。

発表会

このような練習の積み重ねの集大成となったのは、毎年恒例の発表会です。今年のテーマは映画ということでクラスごとに映画のテーマソングに合わせた演技を行いました。私は大人クラスとアイスダンスクラスの2演目に出演し、それぞれMen in BlackShall We Dance?の音楽で行いました。ともにおそろいのコスチュームを用意し、メンバーの家で陸上練習も行いました。このメンバーの興味深い点としては、ほとんどが大学関係者なのですが、私が最年少で他の人はこの大学の教授であるという点です。脳の神経や航空宇宙、物理など様々な専門家とともに滑ることが出来る経験はなかなか無いのでは、と思います。そのプロ意識は練習態度にも表れていて、60歳近い年齢でも絶えず向上心を持ち続け熱心に練習に取り組んでいました。休み時間にあるとき、「日本の地震」の話になり質問攻めにあった後、そのあとは各々が持論を展開し熱烈な議論となっていました。

Shall We Dance?

発表会本番になり、フィギュアスケートは中学の頃からやっていたスポーツなのですが、大舞台に出るのは初めてだったので、開演前から緊張しているとみんなが私の元へやってきてその緊張を和らげてくれました。普段は意識していなかったのですが、自分の親よりも歳の離れたメンバーの醸し出す優しさに大いに癒されたことはいうまでもありません。演技自体は、普段の70%しか発揮できず納得がいかなかったのですが、他の出演者も常に成功している技を失敗したりする姿を見て、発表会というものの恐さを感じるとともに、本番でプレッシャーがかかった状態での演技が悔しいけれども、今の実力なのだと感じました。とはいえ、大きなリンクを独占し、自分の動きに合わせてスポットライトが動き、多くの友人が観客席にいるという幸せは一生忘れられないと思います。

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まとめ

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上記の本文では今学期印象に残った経験について触れさせていただきました。今学期はUIUCで学びたかった、Speech Communicationや経済の授業もSpring Semesterは思い通りに履修でき、先学期はとれなかったActivity系の授業も運よくとれることになりました。最初の学期はひたすら教科書に向かう毎日だったのですが、今学期はもっと人と触れ合う時間を増やしていきたいと考えた上で決めた時間割だったので、実用的な英語力を磨くのみならず年齢も人種も分野も様々な人と出会い、協力して何かを作り上げるという楽しさに没頭することができたと思います。この1年間で自分が身につけることができたものを一つだけ挙げるとすれば、それは度胸だと思います。人前に出て自分を他人に見せるということは舞台上だけでなく日常茶飯事でした。ほとんど毎日、新しい人と出会うのでその度に繰り返される自己紹介などでも慣れてくると自信がつきました。何事も経験と思い、新しいことに積極的に挑戦することも初めは意識的にやっていたのですが、最後はそれを楽しめるようになりました。

友人と迎えた出発の朝

そして、この1年間でできた友人は私の何よりの宝です。学校の中で生活するUIUCの学生は友人と過ごせる時間が本当に長く、楽しかったです。最後の一週間はお別れパーティーがいくつもあり、わざわざ他の町から集まってくれたパリ留学の友人や最終日のフライト時刻まで徹夜でパーティーしてくれた友人など、本当に温かい人たちに恵まれたと思います。帰国してからもいきなり電話がかかってきたり、日本に遊びに来た友人と再会したりと、イリノイにいた1年で終わらない関係を築くことができたことが本当に幸せだと思います。実際、来週もイリノイの友人と二人で香港へ旅行することになっていて、再会が今からとても楽しみです。パリで知り合った友人と再会

最後になりますが、このイリノイでの2学期間は今までの学生生活の中で最も充実した時間を過ごすことができたことは言うまでもありません。このような貴重なチャンスをくださったJICの皆様に感謝いたしますとともに、留学中にお世話になった方々、そしてそれを陰で支えてくれた家族、大学関係者、そして友人にもこの場を借りてお礼を申し上げたいと思います。

引き続き、どうぞ宜しくお願い致します。