西村崇さんの2007年1月奨学生レポート

2007年度1月奨学生レポートの最後を飾るのは西村崇さんです。西村さんは学生ならではのバックパック東海岸旅行や、貴重なドミニカ共和国での体験をし てきたようです。どこか緊張感と楽しみの混じった懐かしい気持ちが沸いてきます。どうぞ西村さんのレポートをお楽しみください。

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寒中お見舞い申し上げます。日本でも厳しい寒さが続いていることと思いますが、JICの皆様はいかがお過ごしでしょうか。ここアーバナ・シャンペーンでは 昼間から連日零下を軽く下回る気温が続いていますが、今のところ予想していたほどの寒さではなく、元気に日々を過ごしております。2週間ほど前に新学期も 始まり、今ではすっかり日常生活を取り戻しています。

今回のレポートでは、サンクスギビング休暇から、学期末試験と友人の家でのクリスマス、そして冬休み最大の目玉であったドミニカ共和国での短期留学プログラムにお話していきたいと思います。

(サンクスギビング休暇)

サ ンクスギビング休暇期間は、寮の友人3人(韓国人2人、中国人1人の混成グループ)とともにボストン・ニューヨークを一週間かけて旅行いたしました。約2 週間にわたって課題の締め切りや中間試験への準備に連日終われる日々から解放された後での旅行は、中間試験期間で荒みきった(?)心を癒す上でも好奇心を 満たす上でも格別なものでした。ボストンではアメリカ独立戦争に関わる史跡を辿りながらの市内散策や、MITやハーバード大学といった名門大学のキャンパ スを巡り、ニューヨークではエンパイアステートビルからの夜景を満喫したのを始めとして、自由の女神の見学ツアーへの参加、ウォールストリートやブロード ウェイといった名所巡り、美術館見学、ジャズコンサートの鑑賞、そしてグラウンド・ゼロ訪問…時間と体力の許す限り歩き回り、両都市とも観光ガイドにのっ ているぐらいの名所ならほぼ制覇しました。

そしてこの旅行では、アメリカの大学生がどのように旅行するかということを体験するうえで も面白い日々でした。どこの国でも大抵の大学生というのは旅行するだけのお金がありません(笑)そのため、余計なところの出費を削って価値のあることに資 金を使うというスタイルで私達は旅行しました。例えば、ホテルではさほど広くもないツインベッドを男4人で共有したり、鉄道や高速バスをなるべく利用した りして節約し、その分のお金でボストンの老舗のシーフード店でロブスターを注文するというようにです。おかげで初めて鉄道の中で一晩過ごすなど、様々な貴 重な経験が出来ました。また、一日の終わりにはその日を振り返って観光名所やレストランの質についてレビューをしたり、旅行プランを変更するさいには考え られる選択肢をできる限り挙げてその場でディスカッションをして決めたりするなど、旅行の際にも何かにつけて議論をしたがる彼らの性格を垣間見た気がしま した。

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(学期末試験とクリスマス)

サンクスギビング休暇が終わると、息をつく暇もなく期末試験期間へと突入していきました。大抵のアメリカ人学 生が自宅でのんびりしている期間を旅行に費やしていたわけですから、疲れと1週間近く何も勉強していなかったことによる精神の緩みで、授業再開後の数日は なかなか勉強に集中しない日々が続きました。しかし調子を取り戻してからは中間試験時よりスムーズに課題や試験をこなしていくことができ、最終的に GPA4.0の成績で秋学期を終えることができました。厳しいことで有名なアメリカの大学の授業で好成績を残せたことを嬉しく思う反面、授業中や中間・期 末試験期間中の寮の雰囲気、イリノイ大学の平均GPAが2点台という事実を鑑みると、一般に言われているほどにはアメリカ人の大学生(少なくともイリノイ 大学の学生は)はGPAを気にしておらず、バランスよく遊んだり勉強したりしているのかなと思いました。もっとも、それでも日本の大学生よりははるかに勉 強していますが。

16日に学期末試験を終えてからは、1週間だけ日本に帰って24日にまたシカゴに舞い戻ってくるという忙しい日々を 過ごしました。それもこれもアメリカの一般家庭でのクリスマスを体験するためです。24日、25日は寮の友人の一人であるCory君の家に泊めてもらい、 アメリカのクリスマスを体験させてもらいました(偶然にも、同じJIC奨学生である佐藤さんも一緒に泊まりました)。シカゴ郊外にある広々とした家では、 彼の家族全員が温かく迎えてくれたばかりか、25日のクリスマスの日には私や佐藤さんの分まで沢山のプレゼントを用意してくれていて、知り合って間もない 友人を丁寧にもてなすアメリカ人の懐の深さを感じました。国際線の運行乗務員である私の父が「アメリカ人は、一人一人は非常に気のいい連中だ」としばしば 語ってくれたのですが、その言葉を実感した2日間でした。

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(ドミニカ共和国での日々)

12月26日からは、この冬休み一番のイベントであるドミニカ共和国での短期留学プログラムがスタートしまし た。早朝にオヘア空港を出発し、プエルトリコを経由して夕方頃に首都サント・ドミンゴに到着しました。出発地のシカゴの気温が零下であったのとは裏腹に、 現地の気温は夕方にもかかわらず25度近くあり、高い湿度も相まって到着時には僕を含め参加者達はみなへとへとになっていました(笑)

以 前のレポートでもお伝えしましたが、私のコースのテーマは「Diversity & Integration in the Dominican Republic」で、グローバリゼーションがドミニカ共和国にどんな影響を与えたのか、具体的なトピックとしては、観光産業、移民問題、経済のグローバ ル化と産業・労働環境の変化、文化と人々の関わりなどを学んでいきました。他の国でのコースと比べて、現地の人々の視点からドミニカ共和国を捉えていける よう実体験に重きをおいた活動が多数取り入れられていたのがこのコースの特徴で、しばらくこの地を訪れる必要がないのではないかと思ってしまうほどに、3 週間でまわれる限りの場所をまわりました。サーファーの間では世界10大名所のひとつとして知られるCabarete Beach、モノカルチャー経済からの脱却を図って山間部での農業振興が計られているJarabacoa、観光者相手のセックス産業で悪名高く、夜のバー には売春夫・売春婦がたむろするSosua、過去の独裁者の威光がいまだに残るドミニカ第2の都市Santiago、そして昼夜を問わず町中に響き渡る音 楽にあわせて暇さえあれば踊り始める人々...この三週間の日々で見たこと・感じたことを詳細に書くにはいったいどれくらいのページ数が必要なのだろうか と思うぐらいに貴重な体験の連続でした。

また、アメリカ人の学生達と3週間も寝食をともにした日々も貴重な経験でした。スペイン出身 の教官に率いられた合計20名の学生達は、人種的にも出身地としても多様性に富んでいてまさにアメリカの人種・国籍の多様性を象徴するようなグループでし た。また一人一人にも癖があるのが面白く、例えば、経済学の原理を応用することで世の中の問題を全て解決できると信じているマリオ、ダンスの達人でみんな に踊り方を教えてくれたバネッサ、そして私の一番の友人で物理学専攻ながら社会科学的な議論においても、鋭い洞察力と批判的思考を兼ね備えたデレックな ど、このような彼らと出会えたことを大変幸運に思います。前回のレポートでお伝えしたように、このメンバーで行うディスカッションは時折 ”I totally disagree with your idea!” という言葉が飛び交うほどに激しいもので、最初は慣れるのが大変でしたが、最後の1週間ほどは普通に発言するようになり、やっと自分も一員になれたのかな という思いがいたしました。(ちなみに新学期が始まりましたが、先学期も今学期もこのプログラムに匹敵するだけでの激しいディスカッションを行う授業には 出会っていません。)

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そして、ドミニカでの日々は、彼らの習慣や考え方の特徴を理解するヒントを得るうえで大変意義深いものでした。例えば、こんな事件がありました。プログラ ムが終わりに近づいた頃、何人かの学生がある日の自由時間に滞在場所から少し離れた海岸でのスキューバダイビングを計画したのですが、別の日に予定されて いた果物プランテーション見学の日時が天候の都合で延期となり、その自由時間に見学に行くことになったのです。スキューバダイビングに参加するつもりだっ た学生の一人がその事を告げられると教官に対して猛然と抗議を始め、最終的にはスキューバダイビング組の別行動を承諾させてしまいました。アメリカでは、 自分の要求を実現するために粘り強い交渉が必要な場面に多々遭遇しましたが、まさか余暇の楽しみのために教官相手に真っ向から反論する学生までいるとは思 いませんでした。改めてアメリカ人の押しの強さを印象付けられた出来事でした。

ドミニカ共和国での最後の夜は、みんなで ダンスバーに繰り出してひとしきり踊った後、バーの近くにあった、この国ではポピュラーな雑貨屋券居酒屋のようなお店にてみんなでテーブルを並べ、お酒を 飲みながら歓談したり、店から流れる音楽にあわせて道端でダンスを踊ったりしました。そして、楽しくダンスを踊る友人達を横目にしながら星空をふと見上げ た時に、あることに気がつきました。いま、自分は何て幸せな時間を過ごしているのだろうと。人生はまだまだ先が長いのでいつがピークになるかは分かりませ んが、少なくとも一年前の自分よりは今の自分は遥かに素晴らしい日々を過ごしている自信はある。そう思わせてくれる程に、このドミニカ共和国のプログラム は、更に言えばUIUCで過ごした数ヶ月は充実したものでした。

まるで最後のニュースレターのように締め方になってしまいましたが(笑)、UIUCでの生活はあと4ヶ月残っています。今学期は先学期よりも更に充実させるべく、頑張っていきたいと思います。

最後になりましたが、私達の留学を支援してくださっているJICの皆様方、東京大学関係者各位、そして日本に戻った時に暖かく迎えてくれた家族や友人達に、この場を借りて心から感謝いたします。

2007年1月31日
西村崇
東京大学文学部
行動文化学科社会学専修課程4年