河手賢太郎さんの2006年11月奨学生レポート

河手君の11月分レポートが届きました!積極的な授業への参加、クリスチャングループやスピーチサークルなど多彩な活動に勤しむ河手君のレポートを存分にお楽しみ下さい。

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JICの皆様
ご無沙汰しております。
JIC奨学生の河手賢太郎です。日本を発ってから早くも3ヶ月が経ちました。 Thanksgiving Holiday も終わり、いよいよファイナル(期末試験・最終レポートの締切)の時期に突入します。学校全体が緊張感につつまれるこの時期、遠く日本へ思いを馳せつつ、 私は第一回のレポートを書きおえました。

以下、学期全体を振り返り、授業や課外活動を通して私が感じたことを表現してみました。

<授業について>

今 学期、私はCriminology(犯罪学)、Leadership Study(リーダーシップ学)、College Writing、International Relations(国際関係) の4つの授業をとりました。はじめの1カ月間は先生の言っていることや生徒の発言がうまく聞き取れず、大変な思いをしました。しかし、mid- term(中間試験)が終わった10月ころからは次第に慣れ、自分から発言できるようになってくるにつれ「授業へ貢獻しているな」と実感できるようになり ました。アドバイザーや担当教授に無理して頼んで履修させてもらっている科目は「途中でドロップアウトなんかしたら恥ずかしい」という思いから、とにかく ついていきました。膨大なreading とwriting のアサインメントや頻繁にあるテストの準備におわれるという、「やらされる」勉強をしたのは、自分の人生のなかで小学校以来はじめての経験でした。自発的 に何かを勉強する(悪く言えば、自分の好きなことを自分のペースですすめていく)ことに慣れていたため、「勉強すること」の意味について考えさせられまし た。

社会学・政治学系の授業や講演を聞いて私が感じるのは、
第一に、現政権あるいは権力保持者に批判的な先生が多いということです。
た とえば現政権の対テロ政策を批判したり、警察・検察・裁判所という刑事司法の各機関が内包する矛盾を説いたり、いまの世の中で引き起こされている人権侵害 を糾弾したり。時には「一方的な意見だなあ」と思わされる時もありますが、学生の批判的な精神を涵養するという点で、いい意味でアカデミズムを体現してい るのかな、とも感じました。また、11月には中間選挙というアメリカ国民にとってのビッグイベントがあり、政治への関心の高まりが先生達を熱くしたのかも しれません。

第二の発見は、授業中に質問をすることに大きな価値が置かれていることです。
どの授業でも共通することですが、質問 が大いに奨励されます。特に、クラスに新しい切り口を提供するような質問は”That’s, actually, a really good question!”と言われ嬉しくなります。creativeな質問をすることがクラス全員にとって有益だし、そういうふとした疑問点から discussionやinteractionが生まれてくるのです。それ故、授業後に個人的に質問しにいくという方法(私が日本でやっていた方法)とい うのは、こちらでは「イケてない」わけです。” Why didn’t you ask that question in the class?”と言われることもありました。授業を聞いて瞬間的に思い浮かべる疑問や矛盾を適格に発言する能力が毎回の授業でためるのを日々感じていま す。質問することは、たとえ成績には反映されずとも、先生に気に入られ、他の学生にも認知され、学習意欲をますます高めてくれます。

<犯罪学について>

特に印象に残った犯罪学の授業についてご紹介します。
犯 罪「取締」大国とも言えるアメリカ。(全世界に約800万人いるとされる刑事施設に収監されている者のうち、4分の1にあたる約200万がアメリカの刑務 所・監獄に収監されているという驚異的な統計に表される。)そのアメリカ社会の深部に横たわる人種や性に基づく偏見がいかに法執行・刑事司法に影響を与え るのか、を主に分析する授業で、もともと法と社会・文化の関係に興味があった自分にとって目を開かれるような内容です。

この犯罪学を教え るAnna-Maria Marshall先生の以下の一言が印象的でした。“The world is very complicated place and if you don’t engage with the people who disagree with you, you have no idea how complicated it is.” どれほどに世の中が利害対立に満ちたフクザツなものであるかを理解するためには、自分とは異なった意見を持つものと日々対峙することが大切なの だ・・・そのためには「ブログなり、授業なり、新聞なりのメディアを通して他者の意見を読み、自分の意見を発信し、ひろく受け入れられるアイディア・価値 観を形成していく。善きCitizenshipとはその絶えざる繰り返しなのよ。」

アメリカという多様な民族・文化が入り混じり、social justiceに関する問題が日夜噴出する国では、よりendurableなアイディアをもとめ、日々アイディアを闘わせることが、不可欠なのだなと痛感させる一言でした。

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<課外活動について1>

せっかくアメリカに来て毎日の授業を受けているだけではもったいないし、授業だけではアメリカ人の友 人もあまりできないと感じ、私はInterVarsityというクリスチャン・グループの門を叩きました。そもそも古典としての聖書に興味があり、西洋の 精神の根底に横たわるキリスト教を学びたいと思っており、キリスト教徒がどういう価値観を抱いているのかにも興味がありました。そして彼らは、クリスチャ ンのコミュニティに飛び込み、好奇心の塊のような自分を快く受け入れてくれました。

InterVarsityはLarge Group MeetingとSmall Group Meetingという主に二つの活動によって成り立っています。Large Group Meetingは毎週金曜日に150人程が町のメインストリートに面したLoftにあつまり、牧師が聖書を解説し、人生訓を話すのに耳を傾け、皆で worship song賛美歌を歌う。賛美歌も、pop musicのようで、若者文化とキリスト教がうまく融合しているように感じました。
Large Groupとは別に、Small Group Meetingという毎週一度Bible Studyがありますう。同じ寮に住むInterVarsityのメンバーが文字通り4~5人で集まり、聖書のパッセージを精読します。単に聖書をよむだ けではなく、お互いの日々の経験をシェアする時間もあり、世界観・人生観に話が及ぶこともしばしばありました。
その他にもWork Dayというボランティア活動やRetreatという合宿もありました。

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InterVarsityの活動を通して感じるのは、これまで抱いていたキリスト教観が変わったということです。すなわち「数ある宗教のうちの一つでしか ないんだ」、というイメージしかもっておらず、いわゆる「本のなかの知識」でしかなかったものが、急に生き生きとした知恵になってくるのを感じました。ま た、宗教が映し出す一つの世界の下で生きている人がいるんだということ自体、新鮮でした。

<課外活動について2>

課 外活動の第二の柱はスピーチ・ディベート部です。もともとスピーチのスキルを磨こう思っており、またマンツーマンで指導してもらえる体制が整っていたこと もあり、迷うことなく入りました。授業との両立が難しく、ようやくPersuasionという種目(聴衆を説得するためのスピーチ)で12月中旬に開かれ る大会に出場することができそうです。テーマは「非効率的な性犯罪者規制」というもので、犯罪学の授業で得たインスピレーションを基につくりました。

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<thanks giving holiday>

感謝祭休みは、私の留学生活のハイライトの一つです。アメリカ国民が選ぶ住 みたい町No.2と言われるNapervilleというシカゴ郊外の町にある友人Benの家にステイさせてもらいました。高層ビルが立ち並ぶというより も、閑静な住宅街が広がる小さな町で、治安がよく、教育水準も高いそうです。さて、Thanks Giving Holiday のメインイベントはなんと言っても24日夜のThanks Giving Dinnerです。「ウエストの大きなズボンをはいていきなさい」と多くの人が言っていた通り、Turkeyやマッシュポテトをはじめ様々な家庭料理をお 腹一杯ご馳走になりました。

そこで翌日は、私が日本の家庭料理をつくりました。その日の晩御飯はすべて自分の両肩にかかっていたため、本当に緊張しました(汗)。「Ken,この肉じゃがとお味噌汁、すごくいけるよ」と言われた時には嬉しかったです。
Ben は、昨年の9月から3ヶ月日本の専修大学へ留学していたこともあり、「方丈記や平家物語のあの無常観が好きなんだよ」というくらい大変な日本通でした。連 日連夜、日米の文化についてお互いの疑問点をぶつけ合い、太平洋戦争にまで話しが及ぶこともありました。こうした意見交換ができることこそが留学の意義な のではないかと感じます。

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<留学一般について>

留学をすることの意義について考えみました。一言で留学とは何か。非常に抽象的な言い方ですが、「世界 観・人生観の相対化」だと思います。一人一人との出会いがこれまで自分の拠り所としてきた価値観を相対化し、自分の生き方を考えさせてくれます。また、新 しい生活習慣や規律を身につけるいい時期でもあります。日々感じるのは、自分で幅を決めてしまわずに、自分の価値基準以外のことに積極的に挑戦すれば、ど んどんチャンスが生まれ、人との出会いの場を与えられることです。
また私は留学を通して、いかに自分が周りの人に生かされているかを実感しています。
ノ ンストップアクション映画のような毎日を送り、あまりに忙しさに日本にいるお世話になった人への連絡を怠ってしまい、申し訳ないという思いに駆られます。 この場を以て、いつも私を支えてくれる家族や友人、そして留学という貴重な機会を下さったJICの皆様、留学前に貴重なアドバイスや励ましの声を送って下 さった奨学生の先輩方に心より感謝申し上げます。

留学生という一時の「お客さん」ではなく、近い将来、過去を振り返った際、イリノイ大学が文字通り”Alma Mater”(母校)と感じられるようになるくらい、積極的かつ意識的に残りの留学生活をすごしていきたいと思います。

東京大学法学部4年
河手賢太郎