西村崇さんの2006年11月奨学生レポート

西村さんから11月分レポートが届きました。Global Crossroadsでの賑やかな寮生活と、ドミニカ共和国へのフィールド調査など、興味深いレポートをぜひお楽しみください。

2006-11-report-nishimura-001.JPG

JICの皆様、お久しぶりです。皆様、いかがお過ごしでしょうか。シャンペーンでは綺麗に色づいていた紅葉も既に散ってしまい、日本より一足先に冬の訪れ を感じています。ここ2,3年は暖冬が続いていたため、これまでの奨学生の方々からも地元のアメリカ人の友達からも「今年の冬は普段以上に寒くなるだろ う」と忠告を頂きましたが、時折気温が10度以下になる日々が2,3日続くぐらいで、幸いにして今のところは快適な気候の中で過ごしています。シャンペー ンに到着してから既に3ヶ月が経過しましたが、私の中ではいまだに「もう」3ヶ月と言うべきなのか、「まだ」3ヶ月というべきなのか悩んでいます。なぜな らこれまでの3ヶ月は、「まだ」3ヶ月と言えるほどに勉強面でも日常生活の面でも密度の濃い日々を送ってきたからです。今回のレポートでは、日々の生活に 焦点を絞って奨学生生活を報告していきたいと思います。

(日常生活)

私は、学部生の寮であるPARの中にある Global Crossroads(GC)というコミュニティに住んでいます。このコミュニティはLiving Learning Communityというイリノイ大学の学部寮のプログラムのひとつで、勉強面での関心が似通った学生に共同生活の場やコミュニティ専用の授業を提供する ことで、文字通り生活しながら各コミュニティに沿ったテーマを学んでいくための場です。GCは国際交流の場を提供するためのコミュニティで、異文化に関心 をもつアメリカ人学生と留学生が半数ずつ、男女に分かれて二つのフロアに住んでいます。オープンラウンジを設けてあるなど通常の寮のフロアより開放的な造 りになっているために、部屋を出て少し歩いただけでも必ずフロアメイトの誰かと出会わないことはなく、毎月開かれるBirthday PartyやChicago へのOne day tripなど寮生間の交流を深めるプログラムも盛りだくさんで、フロアメイトとは「同じフロアの住人の顔を全員知っているフロアなんてGCぐらいじゃな い?」とよく言い合っています。留学生活のスタートを切る場をGCにするか院生用のSherman Hallにするかで、渡米前に散々悩んだのですが、GCでの住人間の交流の活発さと、友人を訪ねた際に入ったSherman Hallの閉鎖的な感じ(住んでないので実際にどうなのかは分かりませんが)と比較して、心からGCに住んでよかったと思いました。

普段 の生活は、今のところ良くも悪くも勉強中心にしています。私の留学生活での目標の一つは、ネイティブの学生や各国からの留学生と十分に議論できるだけの能 力を身につけることです。日本人の中ではいくらか英語ができるほうだとはみなされていても、ネイティブや英語圏での生活が長い留学生達に十分に対抗しうる にはまだ力不足であることを、こちらに来てから残念ながら実感いたしました。そこで、今学期は来学期に飛躍するための準備期間と位置づけて、日々懸命に勉 強に励んでいます。留学生活最初の1~2ヶ月ほどは、課題の多さに慣れるのが大変で生活のサイクルを確立するのが大変でしたが、最近では生活に慣れたこと もあって順調に過ごしています。

ただ、勉強に励んでいるだけでは学部生の身分で来ているのにもったいないと思い、課外活動も充実させるよ うにしています。1つの学生組織に専念して活動しているわけではありませんが、掲示板のフライヤーなり、友人に教えてもらうなり、あるいはQuad Dayで登録したメーリングリストから流れてきたメールなりで知ったイベントの中で興味があるものには積極的に出かけていき、例えばPumpkin Patchなど日本ではなかなか経験できないような活動を楽しんでいます。奨学生選考の際に留学への意気込みを問われて、「睡眠時間以外は1分1秒たりと も無駄にせずに活動したい!」と言ったのですが、実際は睡眠時間を削ってまで何事にも精を出しているというのが現状です(笑)

2006-11-report-nishimura-002.JPG

(授業)

今 学期は、Public Speaking, Intro to International Relationshipと自分の専門である社会学からIntro to Social StatisticsとTechnology and Society、またESLの発音クラスを履修しました。最近では冬休み中に参加するドミニカ共和国での短期留学プログラムのミーティングも始まり、日々 課題との格闘の日々が続いています。

こちらでの授業の全体的な印象を一言で言えば、学生を一定の水準に育てようという意志を教官達から強 く感じます。資料の調べ方や文献の読み方を教えるといった方法論から初めて、大量の文献課題や何度も課される大小のレポート、あるいは数度にわたるテスト やスピーチを乗り越えさせることで、どんな生徒でも必ず何らかの知識やスキルを身につけられるようにカリキュラムが組まれているように思われます。一言で 言えば、「生徒を手取り足取り教えている」といった感じで、その反面ある授業の中で何を勉強するかの自由度は低いように感じます。よく「アメリカの大学の 授業ではディスカッション形式が多くて積極性が求められるが、日本の大学の授業は講義が中心だから受身のままでも何とかなる」といいます。しかし課題の量 の多さゆえに、むしろ授業の内容に対して積極性を発揮しにくいアメリカの大学の授業のほうなのではないかと思います。典型的なアメリカ人への見方に「アメ リカ人は個人の自由を最大限に重んじる」というのもありますが、日本の大学、少なくとも東京大学のほうが何を勉強するかに関して個人の自由度が各段に大き いというところに妙なおかしさを感じます(もっとも、自由というよりも放任といったほうが正しいですが・・・)。

もっとも、教育機関とし ての責任を果たしているのがどちらなのかは言うまでもありません。更に言えば、イリノイ大学は勉強へのサポート体制も非常に充実していて、生徒に意思さえ あればいくらでも勉強を深めることができる点はとても魅力的です。教官はオフィスアワーを設けているばかりだけでなく、事前にメールを出せば大抵の日時で アポイントが取れますので、ほぼいつでも勉強内容に関して質問が出来ます。また、全米3位と自慢する図書館も素晴らしく、今年出版された本ですら大量に見 つかるほどの蔵書の充実振りには溜息すら出ます。単に蔵書の充実振りだけではなく、文献調査の都合でこれまでいくつかまわった分野別図書館では、各分野の 趣向を反映しているのかそれぞれの図書館の装飾などに独自の「色」があって面白いです。文献調査に関しては、図書館のHP上にある各種オンラインジャーナ ルから学問分野を問わずあらゆる種類の論文をダウンロードすることも可能で、方向性をしっかり定めて課題の下調べをしないと、逆に文献情報の渦に飲み込ま れてしまいそうになる程です。要求水準が高い授業が多いだけに、それぞれの課題に対してきちんと準備をするのが大変ですが、それだけにやり遂げた時の充実 感もまた大きいです。勉強していて充実感を味わうのは大学に入って以来久々なのではないかと思います。

今 学期の授業で出席していて一番楽しいのは、ドミニカ共和国での短期留学プログラムです。この短期留学プログラムは去年度の奨学生であった白水さんが発見し たもので、各国ごとに設定されたテーマに沿いながら、文献調査や現地でのフィールドワークを通してGlobalizationが社会に与えている影響を集 中的に学んでいくというものです。(余談ながら、今年は私や川島さん、佐藤さんと奨学生4人中3人も参加する人気振りです)。私の参加するドミニカ共和国 でのプログラムでは、Globalizationがドミニカ共和国へ与えた影響を、政治・経済・社会の面から分析していきます。既に事前ミーティングが二 度開かれ、専攻も学年も多様な約20人が交じり合って、活発に議論を戦わせました。前回のミーティングは、アメリカとメキシコの国境地帯にある多国籍企業 の工場での過酷な労働がテーマでしたが、議論の内容がアメリカの現ブッシュ政権の正当性にまで及び、教官が仲裁に入るほどでした(笑)この授業に限らず、 アメリカ人学生の議論はしばしば方向性がずれていくのが玉に瑕ですが、自分の意見をとにかく発していく積極性は見習わなければならないなぁと思います。白 熱した議論に割り込んでいくのはまだ難しいのですが、このプログラムが終わるまでには堂々と意見を表明できるだけのレベルに自分を高めていきたいと思いま す。

2006-11-report-nishimura-003.JPG

今回のレポートでは生活面での話題に絞って報告させていただきました。新たに出来た友人たちとの交流や、こちらで接した日本観あるいは日本文化への視線な ど書きたいことは山ほどありますが、まだまだ考えを整理するのに時間がかかりますので、次回以降のレポートで報告していきたいと思います。

冒 頭では、「まだ」3ヶ月というべきか「もう」3ヶ月というべきかについて悩んでいると書きましたが、正直なところを申しますと「まだ」3ヶ月という感覚が 若干強いです。日々の生活が決して楽しいことばかりではなく、着いた当初はむしろ大変に感じることのほうが多かったからというのもありますが、今はむし ろ、来学期は今学期よりも更に活動の範囲を広げられるという予感がするからです。この予感を予感のまま終わらせないよう、来学期はこれまで以上に頑張って いきたいと思います。

最後になりましたが、渡米以前から私達奨学生のサポートをしてくださっているJICの皆様方、UIUCと東京大学の関係者の方々、昔からの日本の友人達、イリノイで新たに出来た友人達、そして両親と家族にこの場を借りて心から感謝いたします。

2006年11月30日
西村崇
東京大学文学部4年
行動文化学科社会学専修課程