川崎藍さんの奨学生レポート

現在イリノイ大学に留学中の川崎藍さんからのレポートです!!

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待ち遠しかったお花の季節はあっという間に終わり、キャンパスは今新緑に包まれています。フリスビーや読書、日光浴をする学生で再び賑やかになった Quadを通り過ぎるたびに(写真1)、昨年八月に来た当初のことが思い出され、つくづく時が経つのは早いと実感させられます。さて、今回のレポートでは 授業、春休みについてお伝えしていきます。

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*授業について*

より具体的で、刺激のある授業

今学期はIntro Food Science & Nutrition (FSHN101), Medicinal Plants and Herbology (HORT180), Statistics (STAT100), Public Speaking (SPCM101), Concert Band II (MUS 272) の計13単位を受講しています。

先学期も含めてこちらの大学の授業について感じたことをお話したいと思います。それはどれも実 社会との結びつきを重視した内容だということです。100番台のintroductionのクラスはもちろんのこと、400番台の生物の授業にも言えるの は、授業で習うのが教科書に書かれている理論だけではなく、それが身近なところではどのように応用されているのかにも深く触れているということ。

た とえば先学期のCell Structure and Function (MCB400)では、前半に基本的な細胞間シグナル伝達の仕組みを学び、後半はそれが実際どのように働いているのか、具体的な症例(sleeping disorderや白血病など)を学びました。週に一回のディスカッションのクラスでは、その週に扱った症例の論文を探してきてgroup presentationをします。私は、日本では理論生物学を中心に学んできたのですが、あまりに漠然としていて自分の興味を絞れずにいました。このよ うな授業がもっと多くなれば、日本でも学生が自分のキャリアをより具体的にイメージできるようになるのではないでしょうか。日本に比 べ、(Undergradを含め)大学で学んだことがより直接的に将来の仕事につながるというのも、このような授業をより活発にしている一因だと思いま す。

また今学期受講しているクラスでは、Public Speakingがいい例でしょう。他にも多くの奨学生がこのクラスの魅力を十分に語ってくれているので、内容についてはそちらをご覧ください。
さ て、このクラスでインストラクターが毎回強調しているのは、”What you are learning in this class is not only for in the class. You can apply those skills in many situations in your real life.”とい
ことです。この言葉は私がUIUCで受講してきた他の授業にもよくあてはまることで、それが授業をより刺激的な、面白いものにしてくれているのだと思います。

私 の場合、“the situation in the real life”とは、二月にCosmopolitan Clubで行われたJapanese Coffee Hourでの日本を紹介するプレゼンテーションのことでした。(Coffee Hour はおかげさまで大成功を収めることが出来ました。詳しくは甲田さんがお話してくれるはずです!)このイベントでは各国の料理とプレゼンテーションがメイン なのですが、これまで数々の国のCoffee Hourに参加した結果、このプレゼンの良し悪しがイベントの成功を大きく左右するという分析に至りました。そのためプレゼンが始まる直前まで、日本代表 (少し大袈裟?)という大役を私が引き受けていいものだろうかと、不安な気持ちでいっぱいでした。ところが始まってみると、意外にも観客の反応を楽しみな がらスピーチをしている自分がいました。日本語でもあんな大勢を前に話したことなどなかったのですが、今ではスピーチ中の程よい緊張感、笑いをとれた時の なんともいえない気分、そして話し終わったときの爽快感など、人前でスピーチをすることにある種の快感を覚えています。Public speakingのクラスがどれだけ偉大だったかがおわかりいただけたのではないでしょうか。

ちなみに肝心のプレゼン内容ですが、あるお客さんから「これまでも日本に興味があったけど、今日のプレゼンは今まで知らなかった日本の一面に触れていてとてもよかったよ。」というコメントをいただき、この役を引き受けて本当によかったなと感じています。(写真2)

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“Don’t be afraid of making a mistake”

Concert Band IIは、音楽が専攻じゃなくても受講できると聞いて先学期から楽しみにしていたクラスです。オーディションがなく、各自が希望の楽器を演奏できるというま さに”class for fun”。そのおかげで私のパートであるAlto Saxが異例の10人(通常2~4人)というアンバランスなバンドが出来上がりました。しかし”for fun”といっても、週に三回練習し、学期の最後にはKrannertの一番大きなホールでコンサートをさせてもらえたのですから、けっこう本格的です。

私 は中学時代吹奏楽部に所属していたのですが、当時は指揮者が恐くてびくびくしながら演奏していたのを覚えています。そんな私に、音楽はまず楽しいものなの だ、ということを教えたのがこのクラスでした。勉強の気分転換にととったのですが、素晴らしい指揮者に恵まれ、彼らからいろいろなことを学ぶことができま した。特に印象的だったのが、コンサート直前のリハーサルで指揮者のTimが全員に向けて言った言葉。「バッターボックスで見逃し三振するのでは、野球を 本当に楽しむことができない。空振りでもいいから、思いっきり振り切ったほうが数倍気持ちいい、“don’t be afraid of making a mistake, there is nothing wrong about making a mistake. Rather have fun!”」この考え方は、音楽だけじゃなくこれからいろんなことに挑戦するに当たって、心にとめておきたいと思いました。コンサート当日はたくさんの友 達が観にきてくれ、楽しく演奏をすることができ、とても満足しています。

*春休み ~Alternative Spring Break~*

Native American Issues

3 月の下旬には一週間の春休みがあり、私はYMCAが企画するAlternative Spring Breakという泊りがけのボランティアプログラムに参加しました。後から知ったのですが、これはアメリカの学生の間ではかなり有名なプログラムで、全米 では1000校が参加しています(なんとあのMTVもプロモーションに参加しているようです)。簡単に説明すると、春や秋などの短期休暇を利用して、ボラ ンティア活動をしようという学生によるプログラムです。内容はNYでのホームレス体験といったユニークなものから、ハリケーンKatrinaの被災地救済 までバラエティーに富んでいて、学生によるプログラムといえどもよく計画されているなという印象を受けました。

15個以上あるプログラム の中で私が選んだのはNative American Issues in South Dakotaです。前回のレポートでお伝えしたアムトラックの旅での経験があったため、これだ!と思い選考に通って喜んでいたのですが・・・”I’m going to go to South Dakota for the spring break.” というたびに返ってくる反応は決まって「そんなところにわざわざ何しにいくの?」といったものでした。そうなんです、行き先を気にせずに応募したものの、 South Dakotaには何もないんです・・・とうもろこし畑しかないと散々言われているChampaignが、何倍にぎやかだと感じたことか。しかもイリノイよ りも北に位置するため、その時期でもまだ雪が降っているというのです。

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し かし、結果的にはこれまでの留学生活で最高の体験となりました。一緒に過ごした10人の仲間、現地で温かく迎えてくれた人たち、そして現地の人が熱く語っ てくれたNative Americanの文化と歴史。どれもすばらしい思い出です。特に20時間以上のドライブを共にし、一緒に子供たちと戦った(といっても雪合戦で)メン バーの結束は強く、プログラムから帰った後も思い出話をしては盛り上がっています(写真3,4)。

具 体的には、Reservationと呼ばれるNative American が生活する地域のYMCAに泊り込み、放課後に遊びに来る子供たちの世話をしたり(なかには親がアルコール中毒だったりと問題を抱えている子供も多く、 YMCAは彼らにとって貴重な場所です)、YMCAに寄付された服の仕分けをしたりしました。このプログラムの優れているところは、単に仕事をするだけで なく、そこで起こっている社会問題についても学ぶことができることです。Native Americanのコミュニティーが抱える問題は、生活水準が低く(基本的に彼らは資源に乏しく気候の厳しい土地に追いやられた形なので)、貧困やそれに 付随する犯罪など、また彼らによる政府はあるものの、アメリカ政府の傘下にあるため事実上はアメリカの法律が適応され、治外法権が認められていないという こと、などです。アメリカ人であるほかのメンバーもこの事実をきちんと知らなかったこと、そしてそれは日本が抱える問題にもあてはまることだと、いろいろ 考えさせられました。

ボランティアの力

ところで、このプログラムをはじめとし、アメリカ社会の大きな魅力のひと つは、地元を基盤にしたボランティアが盛んだということです。留学生向けの活動も、多くがボランティアによって支えられています。例えば、私たちの多くが お世話になった無料の英会話教室も、全て地域の人や学生によって開かれています。また、学生がボランティアのためにQuadで募金活動をしている姿もよく 見受けられます。

日本でも課外活動の一環で何度かボランティア活動をしたことはありましたが、奉仕という訳語も奏してか、どうしても義務 感が伴っていました。ところがこちらでは、ボランティアをする側も、その体験で何か得ることを期待して参加しているのです。退職した年配の方が、楽しみの ためにやっていたり、学生が自分の社会経験を豊かにするために参加していたり。やる側と受ける側の相互利益という理想の形が成り立って、日本でもこのよう なシステムがもっと盛んになったらいいなと思いました。そしてこちらで自分がお世話になった分、帰国後私も何かできたらと今から考えています。

* 終わりに*

先 日JIC理事の堂山先生とキャンパスでお会いする機会がありました。先生が戦後間もない頃にアメリカに留学されたときは、日本からは$20しか持ち出せな かったそうです(物価は今とそんなに変わらないのにもかかわらず)。RAをしつつ、自炊をしながら勉強していたとか。インターネットを使えば無料で日本の 家族と話が出来る時代に、奨学金をいただいて留学しているのにも関わらず、多少の不便に文句を言っていた自分が少し恥ずかしくなりました。残り一ヶ月を切 りましたが、初心を忘れずに、できるかぎりの多くの体験をして帰国したいと思います。

ファイナル後は、卒業式、Farewell party、そしてナイアガラの滝、カナダへの旅行など、まだまだ楽しいことが盛りだくさんですので、次回のレポートもどうぞご期待ください。

このような恵まれた環境での留学をサポートしてくださっているJICの皆様、家族への感謝をこめて。

2006年5月8日
川崎 藍