白水美佳さんの奨学生レポート

現在イリノイ大学に留学中の白水美佳さんからレポートが届きました!!

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JICの皆様:

おかわりありませんでしょうか?第三回目の奨学生レポートを遅ればせながらお届けします。3月末から4月になってからの気 候の変化はあっという間で、写真の風景も今では花の時期が過ぎて新緑の季節というところです。こちらではさすがに梅桜というわけではありませんが、違った 形で春の訪れが感じられるのもなかなかよいものでした。Quadの芝生が日に日に緑濃くなっていく様子、名前がわからないのですがピンクや白の花が咲く植 木、またタンポポの黄色と白が芝生によく映えるのも、そこにリスや(たまにはウサギも)みかけるのもかわいらしく思えました。しかし私のお気に入りは実は 早朝です。8時のクラスにいくときの空気が「春のにおい」がするのです―、この頃はそれも「夏のにおい」にかわってきました。

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今回まずご報告したいことは、イリノイ大学での学期はもうすぐ(5/12)で終わるものの、その後3ヶ月あまり更にアメリカでインターンシップをすること が決まったことです。シカゴ郊外にあるColor Change Corporationという化学会社で、Synthesis Chemistとしてのポジションで、ラボスケールでの有機合成を主にすることになります。日本では大学の夏休み期間がアメリカより短いこともあり、また 制度の導入自体が比較的近年であることもあって、本格的なインターンシップで実社会での経験をつむ機会はなかなかないのが現状です。なので、夏にインター ンを、というのは留学当初からの希望でした。ほぼ一年間を通じてポジション探しをしたのですが、日本での就職活動すら全く経験のない私にとって、 competitiveなアメリカでのインターン探しはスムーズなものでは決してありませんでした。まして中にはUS市民権・永住権を(公式にあるいは非 公式に)要求する企業も多数あり、それは本当にもどかしいものでした。魅力的な仕事に相当の時間を費やして応募しても結局何度となく不採用。レジュメやカ バーレターの書き方からインタビュー、キャリアフェアでの対話、しかし試行錯誤しながら少しずつ身につけていったと自分でも思います。前回のレポートでも 紹介させていただいたように私は食品科学などに興味があるので、第一希望は食品分野での研究開発などではあったのですが、そのような職自体が少ないことも あって、これは見つけることが出来ませんでした。しかしながら、結果として専攻である化学の分野で、直接今までのスキルを活かして働ける道を切り開けたこ とには満足しています。また化学会社といっても食品添加物などを扱うプロジェクトもあるということなので、できればそれらにも携われるよう、今希望を出し ているところです。

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このインターンシップに伴って私の帰国は他の皆さんより遅く8月末になります。その頃はもう今年度の奨学生の方がイリノイにこられるのでしょうか。「夏休 みにインターンシップをする」というと「少し遅れて帰ってくるんだね」という感じがしますが、もともと9ヶ月間だった滞在期間が12ヶ月に延びたと思う と、あるいは1学期が4ヶ月ほどだったことを考えると、まだ今まで過ごしてきた分の1/3もある―、まだまだいろいろなことができるような気がします。ま して同じイリノイとはいえキャンパスとは違う新しい市で、また会社という全く別のコミュニティで、自分のプロジェクトに責任をもつという今までしたことの ないタスクを負い、はじめて(一時的ですが)自活する。新しい環境で、どこまで新しいことが吸収できるか。不安がないわけではありませんが楽しみです。

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インターンをするにあたって、唯一ネックだったのはリロケーションでした。キャンパスから一歩外に出るとアメリカは車社会、特に郊外地域などはどこに行く にも車で行くのが当たり前のように作られています。加えて郊外には普通家族向けの家が多いため、キャンパスのようにそうそう条件のいいアパートがあるかも 疑問でした。実際的にどこに住み、どうやって会社まで行くのか。-これが問題なく解決したのですが、そのストーリーが自身興味深く思えるので、少しご紹介 したいと思います。

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上記のようなことを相談したところ、Color Change Corporationの、私の採用を担当してくれたTimさんの妹さん(Robiさん)家族がたまたま会社の近く(自転車でいける距離)に住んでいて、 そしてRobiさんはたまたま日本にかなり興味があるということで、私に是非一緒に住まないかと言ってくれたのです。(ホストファミリーのような形)聞い てみると、RobiさんはIllinois State Universityで日本語を専攻し、卒業後はアメリカの会社の静岡にある日本支社で2年間ほど働いていたそうです。1,3,5歳になる子供さんたちに はバイリンガル・ジャパニーズを教えているということでもありました。普通のアパート探しが難しそうだった上、一般のアメリカの家庭に3ヶ月間も入れても らえるということはむしろ願ってもないよい経験だと思い、すぐにお願いすることにしました。

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この件を通じて思ったことは、本当に日本に興味を持っている人は多いのだということです。私の寮の友達にも、日本語を勉強している人などはたくさんいます し、アニメや音楽などのポピュラーカルチャーのレベルで日本が好き、という人は更に多いと思います。先日(4/8)には日本館のオープンハウスに参加させ ていただいたのですが、アメリカの学生やコミュニティの人たちによる活花の展示、デモンストレーション、お茶会。当日一緒に行った友達たちも、何らかのク ラスをそこでとったことがあるという人が半数でした。これらは「典型的」な日本文化で、現在の日本の文化がそれだけではないとは思いますが、そこにある精 神を学ぶことには意義がある―、とは日本館館長郡司先生の談で、なるほどと思いました。

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外国にいるほうが日本のことを発見することが多いのかもしれません。そして大学内でもまた社会でも、アメリカではいろいろな文化に特化した Organizationがあるのも(例えばIndian student association, Latino student association, Malaysian student association, 等々)最初は少し驚いたのですが、今ならわかる気がします。多文化社会だからこそ、それぞれのアイデンティティに関する意識が高く、失わないようにしよう としているのではないでしょうか。例えばインドの伝統的な曲をダンスと一緒に現代風にアレンジして披露するというあるキャンパス内のグループは、彼らは全 員「アメリカン」だけれども「ルーツはインド」なのだ、といっていました。また寮の友達がふとしたときに口にしたことも印象に残っています。彼は Jewishだけれども東アジアの文化などが素晴らしいと思って勉強している/武術などを習っている、という哲学科の人です。私が日本から来たというと、 ’you have really unique culture in your country. You MUST NOT SELL it’ ―というような内容のことを言われました。「売っちゃだめだ」―そういわれると、考えさせられます。「文化」とは何で「アイデンティティ」とは何なのか? それは複雑すぎてまだつかめませんが、とりあえず「外」から眺めてみるのはいいアイディアかもしれません。

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まだインターンシップはするものの、9ヶ月のオフィシャルな「留学」期間は終わろうとしています。近頃、大学で新年度が始まったのにあわせて、新しい学科 長の先生や実験担当の先生方に一応秋から戻ってくるということを連絡取らせて頂いたところ、事務的な手続きなど全て引継ぎ済みなので安心して戻ってきてく ださい、とのお返事を頂くことができました。今更ながら急に改めて、この留学がいろいろな人に支えられているのだなあと実感したものでした。ユニークなこ とばかり手をだし、ずっと飛び回っていたような9ヶ月間で、よく言えば活動的ですが悪く言えば半ば突飛な私をそれでも許してくださる周りの方々がいてこ そ、ここまでいろいろなことが出来てきたと思います。JICの皆様、東京大学関係者各位、家族と友人に再度感謝します―、そしてもうしばらくよろしくお願 いします。

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写真1,2,3: キャンパスの様子です。撮影日4/7で、今はもっと暖かくなっています。
4,5,6: 4/8 日本館オープンハウスでの様子です。
7: 一年間続けたKrannert Centerでのボランティアアッシャーも先週で最後となりました。
8,9,10: 三月に春休みが一週間あったので、ドイツとオーストリアに友達を訪ねて旅行してきたときの写真です。ヨーロッパはさすがに町並みが独特で美しいと思いました。

東京大学理学部化学科三年
白水 美佳