2008年度奨学生レポート(椿 晴香)

JICの皆さま、日本では年度変わりのお忙しい頃と存じますがいかがお過ごしでしょうか。研究室の4℃の冷蔵室に入った時に暖かく感じたほど外が寒かった1月からあっという間に花が咲き始め、3月も終わりになってしまいました。帰国後の計画を本格的に考えなくてはならなかったり、春休みはどうするの?に加えて、学期が終わったらどうするの?という会話が出てき始めたりと、残り時間を意識するようになりました。今回は留学期間もまだ半分あると思っていた春学期前半から春休みまでのできごとをご報告致します。

☆授業

春学期の授業も半ばを過ぎました。今学期はGEOL 333 Earth Material and Environment、GER 101 Beginning German 1、GER 199 Undergraduate Open Seminar (German Choir)、CPSC 483 Outreach Education Skills、NRES 487 Soil Chemistry、HIST 142 Western Civilization since 1660を履修しています。週1回2時間しかないクラスも二つあり、科目数の見た目よりはコマの数は少ないのですが、研究室での作業も引き続き続けているためなかなか忙しくなってしまいました。さらに、高学年向けの授業が多くなり、西洋史の講義以外は6~20人程度の少人数クラスになったため、毎週の小テストがマーク式でなく記述になったり、各先生方が名前で学生を覚えて下さったりと、真面目に取り組まざるを得ない環境になったので、ますます大変です。

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復学後は研究に没頭することになると思うと事実上最後の学部の授業になるので、専門の科目やイリノイで深めたいと思った土壌学の他に、日本の大学の教養課程の時に学びきれていなかったものを学びたいと、ドイツ語をやり直し、近現代史を履修することにしました。特に、西洋史の授業は20世紀世界史が面白いという旧友の勧めだけでなく、11月の大統領選の時に研究室の先輩と日本の人はアメリカのことが嫌いなのかしら、という話をしたことがありアメリカ人の歴史観に触れてみたいという意図がありました。中間試験も終わったにも関わらず慣れない科目もありますが、どこか発見があり考えさせられる授業は面白いです。

忙しい中、息抜きになっているのがGerman Choirです。これは正式な科目の一つとして加わったのですが大学生のメンバーは私一人、他は社会人で合唱のベテランの方々ばかりでした。しかし、たった一人の学生でしかもアジア人の私を温かく迎えてくださいました。このメンバーの良いところは、お子さんの就職状況などの話が出てくるなど大学生との会話ではわからない社会情勢が少し見えるところです。高校まで音楽が比較的盛んな学校に通っていたため、ドイツ語だけでなくラテン語の宗教曲が出てきても幸いにしてそう困らず、初めての混声合唱を純粋に楽しんでいます。2時間のまとまった練習も英語での歌の指導も経験がなかったので慣れるまでは少し戸惑いましたが、大きな声でソプラノの高い音を歌うと気分がすっきりします。4月末の発表会を楽しみに練習しています。

☆新学期徒然

春学期が始まり、1月後半はこれもまた体験と思いつつ、どういうわけだか娯楽の多い日々を過ごしました。Super Ball(アメリカンフットボールの年1回の大きな試合)をテレビで見ながらトランプをするパーティーをし、アカデミー賞発表の前だからか今までにないほど友人たちに誘われて1月だけで4回(そのうち冬休み後の2週間で3本)映画を見るなど。この間に見た映画の一つ『Yes Man』には、留学を希望する前から今までの自分の姿勢を振り返させられました。どんな機会も逃さずとりあえず「Yes」と答え、いろいろなことに挑戦することが果たして最もよいことなのか。もちろん、私の場合はそんな主人公とは異なり自分なりに考えた上で選んできたことですが、「挑戦」と「無難な道」との間の選択で、後悔していないかどうか。高校時代に芸術家の岡本太郎さんの言葉を聞きました。「私は、人生の岐路に立った時、いつも困難なほうの道を選んできた。」、そして「危険だ、という道は必ず、自分の行きたい道なのだ」と。結論は留学期間が終わるまで持ち越しかもしれませんが、この冬は改めて今までの選択を振り返る時となりました。

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日本で言うところの四月病(新学期にやる気になりすぎること)、五月病でもないでしょうに、1月末から2月前半は何となく憂鬱な日々になってしまいました。きれいですらあった雪は数日の南風で融け、道は水浸し。雪どけ水は地球をめぐる水循環の大切な一要素とは思えど、実際に体験するとちっとも気持ちのよいものではありません。また、日本の同級生たちは卒業論文を仕上げて春には次の道を歩もうとしているときに私はまだ授業を受けるのみの学部生。それでも精一杯学ぼうと楽しみにしていた時間割なのにどこか日本で聞いた話ばかりで充実感がなく、イリノイに来てもう半年になるのに未だに先生やTAの英語が日によってはさっぱりわからず、やはり日本で勉強をつづけた方がよかったかと思うことさえありました。アメリカ風バレンタインデーについて話していた人たちにはたまたまアメリカ人留学生に関わらず家族と同居している人が目立ち、親族が恋しくもなりました。一時帰国をさえ考えましたが授業や宿題を休まずに帰省するのは難しく断念せざるを得ませんでした。そんな時に構内でばったり同期奨学生の本間さんに会いました。忙しい中、昼食がてら日本語でのおしゃべりにつきあってくれ、それだけで気分が随分変わりました。心からありがたかったです。親しい人との日本語での会話が、こんなにも助けになるとは想像だにしていませんでした。新たに日本人の友人を増やすほど社交的でもない私にとっての数少ない仲間、JICの仲間と一緒に留学していて本当によかったです。

その後は雪のなく汚らしい景色にも授業にも慣れ、落ち着いた日々を過ごすことができました。日本で習得した偏光顕微鏡を使って岩石を鑑定する実習も、またかとつまらなく思うのではなく、ペアの子がわからないと言った瞬間に英語で説明できると快感、私でなく後ろの子に聞き始めると、もっと上手い説明はないかと考えるなど、前向きに考えることができるようにもなりました。ちょうどこの頃から、言語学専攻でドイツ語と日本語ができるかねてからの友だちと3カ国語でおしゃべりをするようになり、他愛もない談笑が何とも楽しかったです。悩みは絶えそうにありませんが、自分で選んだ留学という無難ではない選択肢を楽しんで過ごすことができたらと思います。JICの方々を初め、たくさんの人たちのお世話になっているということも励みにし、日々を大切に生きていきたいです。

☆課外活動

今学期も寮のMA(Multicultural Advocate)さんやRA(Resident Assistant)さんが各種イベントを主催しています。彼女たちの人格によるところも多いのですが、私と年齢が近いこともあり日ごろから親しくしているので、都合がつく限り参加してみました。参加者はあまり多くなかったのですが、小正月のお祝いやダンス教室(写真Busey3)はよい気晴らしになりました。

土曜日には隔週で地元のUrbana Park Districtが自然公園の整備のボランティアを募集しています。もとからそのような活動が好きだったのと11月に参加して楽しかったため、宿題や試験勉強が少ない日には行くことにしました。作業中の気温が華氏10度台(摂氏-10℃ほど)のような寒すぎる日には中止になりましたが、0℃前後の日に外で2時間働くのは楽とは言えません。体を動かすとはいえ、息が切れるほどは動かないので。しかし、地元の自然のことを知り外来種駆除に少しでも加わる機会があるのは、一般の住民にとってもよいことだと思いました。2月に参加したときには草原にもともと生えていない種類の木を公園の係の人が切り、私たちボランティアは切り出した丸太をひたすら運びました。次の整備の時に野焼をするとのことでした。(写真:Weaver Park)

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春休みには、冬休みにも参加したAlternative Spring Breakという団体でオハイオ州のエリー湖の畔にある公園整備のボランティア旅行に参加しました。公園整備ということだったので上記のUrbanaの活動の拡大版かと想像していましたが、実際はスキー場の貸靴の片づけ・ビジターセンターの部屋の模様替え・砂浜の流木を取り除くなどレクリエーション施設の整備が主な仕事でした。その他には農場で果樹園の剪定のお手伝いが私にとってはアメリカでの初の農作業で新鮮でした。イリノイとあまり変わらず外仕事がつらい気温ではありませんでしたが、終日となると大仕事をした気分になりました。しかし、フリスビーのコースを新設するための試行と称して半日は実質遊んでいたり、仕事後に森に連れて行って下さったり、掃除をした湖で貸しカヤックを無料で使わせてくださったり(写真:Lake Erie)、半日の休みには近くのCleveland観光に行ったりと、気候のよいところや実家に遊びの旅行に行った学生たちをうらやましく思わないほど遊ぶ時間もありました。

このボランティアは普段の大学生活では知りあわないような学生に出会えることが大きな魅力です。アメリカ人と寝食を共にする点は、ルームメイトと暮らす日々と大して変わりませんが、一緒に活動をすることで今までのアメリカ人に対するイメージが少し変わりました。女子寮で暮らし、冬休みの旅行も女子ばかりだったのに対し、今回は男子学生も多かったこともあるかもしれません。私にはとても真似のできない人格者なのに身だしなみもお行儀も日本の知り合いと比べてまるでなっていない人がいるかと思えば、普段は愉快なのに公園のベンチに土足で上がってはいけないと思うと真顔で言う人がいるなど。適当な人ばかりではないことがわかりました。

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この2ケ月の活動のどれも、日本で忙しい大学生活をしていた頃にはできなかったことばかりで、授業以外のことにもこれだけ精を出すことができるのは幸せなことだと思います。残りの1ヶ月は、最終発表ラッシュで、学業中心の日々になりそうです。ぼんやりしているとあっという間に過ぎ去ってしまいそうな短い間ですが、やり足りないことに挑戦し有終の美と言えるようなひと月にしていきたいです。JICの方々、また他の関係者の方々、引き続きお世話になりますがよろしくお願いいたします。

東京大学理学部地球惑星環境学科4年 椿晴香

写真解説
1、Quadの小型除雪車です。
2、Busey Hall(寮)の3階の住人たちでダンス教室に行きました。
3、Weaver Parkです。球戯場として開発する計画もありましたが、遊水池にもなる公園として保存することにしたそうです。
4、ASBのメンバーとエリー湖でカヤックに乗りました。私は中央寄りの黄色のボートに乗っています。