田中千絵さんの2003年3月分レポート

JICの皆様
奨学生・田中千絵さんのレポートをお届けします。

今回の奨学生のみなさんのレポートも残すところ五月のみ、
となりました。
最後のレポート、楽しみにしています!

それでは。

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2003年 3月分レポート
田中 千絵
東京大学大学院教育学研究科
総合教育科学専攻
比較教育社会学コース 修士課程
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JICの皆様、こんにちは。
イリノイ大学に奨学生として留学させていただいている田中千絵です。

こちらではようやく長い冬を抜け、キャンパス中が一気に息を吹き返したかの
ような様相をみせています。二週間ほど前に突然20度近くになった日には、
春どころか、みんな夏を迎えたかのような薄着になって、MainQuadはここぞと
ばかりにスポーツや読書、昼寝など思い思いにあたたかさを満喫する人々でいっ
ぱいになりました。私もそれに加わってぼんやりとここに来たばかりのころの
夏の強い日差しのことを思い出したりしつつ、それにしてもなんと時間の経つ
のが早いことだろうと、これから来る素晴らしい季節を一日一日大切に過ごさ
なければとしみじみ思いました。

さて、春学期ですが、今回とっている授業は、マーケティング、アカウンティ
ング、コンピューターサイエンス、イタリア語、そしてミュージックの5つで
す。 このような授業のとりかたをしていると専攻はいったい何なんだという
質問をよく受け、そのたびに回答に窮するのですが、実は私のもともとの専攻
は社会学なのでした。が、ここに来た一つの目的は、他の分野のやってみたかっ
た勉強をすることで視野を広げ、これからどのような道に進んでいくかについ
て選択肢を広げてじっくり考えてみたかったということなので、日本ではなか
なか困難な、専攻以外の勉強を一から始めるということがここでできて非常に
満足しています。また、日本とは違い社会学が非常にポピュラーなこの国で、
さまざまな学問が社会学の影響をうけている様をみるのもとても興味深いこと
です。

こちらの授業は非常に体系的で、教科書もよく構成されており、TAのサポート
などもしっかりしていますが、進度が恐ろしく速く、宿題やクイズも毎週のよ
うにこなさなければならないので、今までは一つのテーマを自分のペースでじっ
くり進めるという勉強の仕方になれていた私には、今学期の理論的で、かなり
自分にとって新しい勉強の山に新鮮さを覚えつつなかなか苦労しています。と
いっても二学期目なので、先学期よりはそれほど不安を覚えることなく、何か
あれば誰かに質問すればいいのだ、というスタンスで臨むことができているの
で、気分的には余裕をもって生活できているように思います。

一番気に入っているのは、依然少しだけかじったことのあるイタリア語の授業
で、週4時間、毎日なのですが、アメリカ人ばかりの授業なのに、英語を使う
ことが禁止されているため、全く同じ立場で授業を受ける、ということが非常
に新鮮で面白いです。ラテン系の先生もかなり大らかで楽しい先生なので、毎
日楽しい語学学校に通っている気分になれます。こちらは101番の授業であっ
ても語学はこのようにとにかく無理やりしゃべらせて会話中心に上達させてい
くというスタイルをとっているようで、全く知識なしに日本人が始めるには相
当ハードなようですが、日本での語学の授業を思いうかべるとずっと楽しいで
すし、会話レベルにもっていくという意味では非常に効率的な感じがします。
日本での授業の場合、文法をつめこみすぎてかえって間違えることを恐れるよ
うになったり、発音をきちんと習得しないままだったり、ということが起こり
がちであるように思うので、、。 最もハードかつためになりそうなのはCSの
授業で、これは主にノンメジャー用のビジネス専攻向けの授業なので、最初は
驚くほど初歩的なことから触れてくれるのですが、その後はあっという間にこ
んなことまでやらせるのかというほど高度な内容になってきます。何週か毎に
プログラミングの課題がでるのですが、一回ごとにかかる時間が倍になってい
くような感じで、面白くやりがいもありますが、とても苦労しています。

こちらでは成績が就職時などに非常に重視されるため、学生は成績をとるた
め、先生は、少しでも点をとらせるのに必死です。どの宿題にも課題にもみん
な必死になってとりくんでいちいち答え合わせをして満点に近づくようにしま
すし、テストの一点にものすごいこだわりを見せるので、リグレイディングの
要求もしょっちゅうです。先生のほうもこれをだしたら何点、遅刻したら何点、
などと細かく点数のつけ方を開示したりして、そこまでやるかなあと私はとき
どきのんびり思ってしまったりもします。学生の授業へのモチベーションを保
たせるという意味では非常に効果的で、かつあまり計画的に学習をすすめるの
が得意なほうではない私のような学生にとっては、とにかくついていけば気づ
いたら習得できている、というのはありがたい仕組みですが、こちらの学生の
成績への恐ろしいほどのこだわり様をみて、成績のとりやすい授業をとりたい
がために、本当に面白そうでとりたい授業をとることは難しいなどという話を
聞いたりすると、日本の学生は入ると勉強をしないと悪名高いとはいえ、どち
らがいいのか一概にはいえないのかもしれない、と思います。

さて、春休みですが、私は大学にどうしてもしなければならない用事があり、
10日間ほどの非常に短い期間ですが、日本に一時帰国していました。毎日用
事をこなし、人に会い、とばたばたしているうちにあっというまに終わってし
まいましたが。日本に帰ってきてみて、戦争について明らかにアメリカよりも
みんなが深刻に受け止めているという事実を強く感じました。戦争が始まった
から帰ってきたのか、という質問をうけてこちらが驚いたほどでした。アメリ
カでは周りの人々は関心をよせてはいるものの、どこか遠くの出来事のように
話すことが多く、関心の低さにあきれることもしばしばで、私の印象では、学
生のデモ運動も、どこかベトナム戦争の反戦スタイルをそのままスタイルだけ
真似たかのようだと思ってしまい、いったいどれだけこの人たちは心からこの
戦争の無意味さと残酷さを理解しているのだろうと考えたりもしていました。
けれども日本に帰ってきて、桁違いの深刻さでいろいろ考えている人々に出会
い、さらに友人の「できるものならあの人間の壁に加わりたかった」というまっ
すぐな言葉にも出会い、自分もまた、アメリカの、平和なキャンパス街にぬく
ぬくと住んで、自分の生活に必死になっているうちに、もっと大きな流れに無
関心になっていたのではないかということを考えさせられました。自分の学ん
でいることの一つ一つが、将来、何か少しでも社会に貢献できるものにつなが
ればと考えているのに、今は学んでいる期間だということを言い訳にして、ど
こにいてもきちんと広くまわりのものをまなざして、考えるということを忘れ
る、というのではいけないということを感じました。

ともかく、幸か、不幸かこのような時期にアメリカに滞在している、という
ことはアメリカの様々な面を見られる時でもあると思うので、じっくりいろい
ろな人を見て、話して、自分の考えを深めていけたらいいなと思っています。
私は春学期の後、夏学期も履修して、短期間ながら集中して、じっくりと本
家の社会学を学んで帰ろうかなと考えているところです。とはいってもこの時
間の流れの速さでは、帰国まではあっというまでしょう。一日一日大切に、友
達とともに過ごせる貴重な時間をめいっぱい楽しんで意味のあるものにして帰
りたいと思います。 シャンペーンでも桜がみられるとか。外国での花見はど
のような気分のするものか、たのしみにしているところです。

それではまた次回のレポートでお会いしましょう。
ありがとうございました。