鈴木博達さんの2009年度10月分奨学生レポート

 JICの皆様、ご無沙汰しております。シャンペーンに到着して2カ月が経ち、最初のころは欠かせなかったクーラーが、今ではすっかりヒーターに置き換わっています。日本でもそろそろ寒くなってくるころかと存じますが、いかがお過ごしでしょうか? 第一回の奨学生レポートとして、こちらでの生活に関することをお送りさせていただきます。

出国とオリエンテーションラッシュ
私はアメリカの前にトロントに立ち寄る予定だったため、出国は奇しくも終戦記念日の8月15日でした。成田空港第一ターミナルの保安検査場。今まで何度も通ったゲートなのに、1年先までここを通ることはないと思うと、ゲートをくぐる時になぜか緊張したことを覚えています。トロントまでの14時間、日本で1週間にわたる送別会ラッシュを開いてくれた友人たちを懐かしむ気持ちと、新しい生活へ期待する気持ちが一緒になって、頭の中はなんだかもやもやとしていました。そんな気分もナイアガラの絶景の前に洗い流され、17日にはミルウォーキーからAmtrakを乗り継いでシャンペーンへ到着。ベッドリネンがないので同日にTargetへ買い物に行く、というなかなかのハードスケジュールでしたが、なんとかこなすことができました。

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(到着したWisconsinの風景)

到着した翌日以降は、休む間もなく各種登録に追われることになりました。土地勘がない状態でISSS、SAO、McKinleyなどの建物を探すのはなかなか大変でしたが、オリエンテーションで友人を作れたのは大きな収穫でした。特に留学生同士は同じような状態で来ているため、簡単に打ち解けあうことができました。

授業
シャンペーンに到着した4日後、8月21日に授業は始まりました。最初の1週間は建物の場所もわからなかったり、本屋で買う本を間違えたりとなかなか物事がスムーズに進みませんでしたが、周囲の友人と情報交換しながらなんとか乗り切ることができました。特にElementary Spanishのクラスはオンラインの教材も使うもので、E-Bookの仕組みを理解するまでに時間がかかってしまいました。ただその過程でクラスメートが気を利かせて課題の期限の前に電話してくれ、アメリカ人のフレンドリーさに触れることができたことに感謝しています。最終的に、他にPublic Speaking、Intro to Advertisement、Intro to Academic Writingの授業を受講することに決め、今学期の授業は4つになりました。

Intro to Advertisementを除いた他の3つのクラスは20人程度の小規模なものです。私が受講している授業に限らず、UIUCの授業の多くは小規模で、教師と生徒の距離は非常に近いものが多いです。特に語学にかかわる授業では、積極的にアクティビティに参加することができる少人数のクラスは非常に効率的だと思います。

また、授業の双方向性という点にもアメリカの大学の素晴らしさを感じました。100人程度の比較的大規模な授業であっても、教授が学生に積極的に質問を投げかけ、それに学生も積極的に応じる、というスタイルは、日本の大学のそれとは大きく異なっています。私を含むアジア圏から来た留学生は、最初はそのスタイルに慣れずに圧倒されてしまいましたが、2カ月ほどが経過した最近では徐々にそれに慣れてきて積極的に授業に参加できるようになり、自分の成長を実感しています。

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(イリノイ大学の風景)

キャンパスライフ
アメリカにある大学の多くはResidentialで、留学生だけでなくほぼすべての学生がキャンパスの中に暮らしています。UIUCもキャンパスが1つの街を構成していて、娯楽も含めほとんどの用事がその中で完結してしまいます。(そのためキャンパスは「キャンパスタウン」と呼ばれています)

ボーリング、ビリヤード、アイススケート、エクササイズジムなどはすべて大学が運営しているため、学生はいつでも気軽にそれらを利用することができます。また大学が運営するIllini Unionの中にはフードコートまであり、Jamba JuiceやChick-fil-Aといったアメリカの代表的なファーストフードを利用することができます。昼時には混み合うIllini Unionですが、友人と一緒に食事に行ったり、ジュースを買いに行ったりと、常時お世話になっています。

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(ボーリング場にて)

キャンパスタウンの中心にはGreen Streetと呼ばれる通りがあり、この通りにはさらに多くの飲食店、クラブ、バーがひしめき合っています。幸い私が暮らしているSherman Hallは非常にこの通りに近く、ここにあるStarbucksには、2カ月の間に行かなかった日が10日程度しかなかったほど頻繁に利用しています(笑)

シャーマンホール
「大学に近い一人の空間もある寮」ということを念頭に置き、出国前から住む場所はSherman Hallに すると決めていました。結果的にこの選択は正解で、非常に快適に生活することができています。キッチンは共同のものしかないのですが、週末にはそこで日本 食パーティーを開くなど、施設を有効に利用させていただいています。アメリカに来て以降、日本食は自分で作るしかなくなったため、意図せずとも料理がうま くなった気がします(笑)
Sherman Hallでは部屋を共有するRoommateはいないのですが、トイレ・バスを共有するSuite-mateがいます。私のSuite-mateはスペイン人で、お互いの国の音楽を聞かせあうなどして楽しい時間をすごしています。

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(Sushi Party)

Sherman Hallは基本的に大学院生向けの寮なのですが、留学生は学部生でも暮らすことができるため、非常に国際色豊かな寮になっています。すぐに思い浮かぶ友人だけでも、スペイン、スコットランド、オランダ、インド、中国、韓国など出身国はそれぞればらばらです。

Choosing the Battlefield
最後になりますが、イリノイで今まで過ごした2カ 月から学んだことについて書きたいと思います。留学初期はどうしても「自分が人よりもできないこと」に目が行きがちで「一人前」として見られようと努力し ていました。自分が生まれ育った言語・文化圏の外に出ると、幾度となく小さなトラブルを経験することになります。例えばコーヒーの注文がうまくできなかっ たり、買う予定のものを間違えたりと、その多くは取るに足らないつまらないことなのですが、これらが積み重なることをストレスに感じていました。(アメリ カのカフェでは注文の際にミルクを入れるか、など細かなことを聞かれたりします(笑))

旅行であればその 文化が自分のものと「違う」ことだけを認識すればいい一方、留学ではその違う文化の中で「暮らす」ことになります。だからこそその違う文化のなかで一人前 として認められたい。そんな気負いもあって、「自分の長所を活かすこと」よりも「自分の弱点を補強すること」に気を使っていることに気付きました。

しかし一人前として扱われるためには、「自分が周りよりもできないこと」よりも、「自分が周りよりもできること」に目を向けるべきだと、今は思っています。TOYOTAが世界で認められたのはFordに追いつこうとして大型のSUVを開発したからではないし、Sonyが成功したのはGEに 習って大型家電を開発したからではありません。言語一つをとっても、思春期以降に英語圏に暮らした人間がネイティブ・スピーカーになることは決してないの だから、その文化の中で育った人間に追いつこうとするだけでは、結局のところ、中途半端な二番煎じで終わってしまうと思うのです。

世界で認められる 国際競争力をつけるには、「自分の弱点を補強すること」よりも「自分の長所に磨きをかけ、表現できるようにする」ことのほうが重要である、ということを認 識できた点は大きな収穫でした。何も自分が苦手とする分野で戦おうとすることはなく、自分が育ってきた環境から自分の長所を見つけ、それを表現できる「戦 場」で戦うことが、国際的に「一人前として認められる」上で不可欠なのだと思います。

全てが思い通りに進むわけではないですが、だからこそ異文化の中で暮らすことからは、得られるものがたくさんあります。この貴重な機会を与えてくださったJICの関係者の方と、周囲の家族・友人に感謝しつつ、これからもたくさんのことを学んでいきたいと考えております。今後ともなにとぞよろしくお願いいたします。