中川貴史さんの2009年10月分の奨学生レポート

  JICの皆様、いかがお過ごしでしょうか。2009年奨学生の中川貴史です。シャンペーンでは木々も色づき、暖かかった気候もすっかりと冷え込んで、コートが手放せない季節となってきました。この時期は日本で言う梅雨の時期に当たるのか雨の日が多く、天気の良い日が余計に嬉しく感じられます。

こちらに来て早いもので2ヶ月、沢山の人との出会いがあり日々充実した生活を送っています。この機会をお借りして、少しばかりこちらでの素敵な経験をお話しさせて頂きたいと思います。

1.はじめに
こ ちらに到着してまず実感したのが、「人の温かさ」でした。到着したオヘア空港は複雑で巨大な為迷子になってしまい、親切な通行人に案内をして貰いながらよ うやくシャンペーン行きのバスに飛び乗るというハプニングからこの留学が幕を開けることとなりました。またシャンペーンに到着してからも、私が到着した時 期が早かったこともあり閑散とした真っ暗のキャンパスで強大なスーツケースを2つ抱え、迷子になり途方に暮れていたところを、またしても親切な通行人に助 けて貰うこととなりました。文化も言語も違う初めての場所で、多くの親切な人に助けられ、日本では感じることのできなかった人の温かさの大切さを痛感し、 ひとつ新たな気づきを得るアメリカ到着となりました。

またこちらで生活を始め最も 驚かされたのは文化の多様性で、様々な背景を持った人が混在する環境は大変興味深いものがあります。バスやスーパーでは、英語だけでなく中国語・韓国語・ スペイン語やポルトガル語が飛び交い、それぞれが自分の文化を維持しながら上手くアメリカに適合している姿には驚かされました。このような多様な文化が混 在する環境の中で、授業や友達付き合いを通して考え方・感じ方の違いを実感し、また同時に文化の壁を超えた共通点を見つけ、人間的に成長する良い機会と なっています。

2.キャンパスについて
ここシャンペーンは、コーン 畑の中心にあると聞いていたのでスキー場があるような日本の田舎町をイメージしていたのですが、想像と違い、緑豊かで安全な住みやすい素敵な街でした。海 外での生活経験がなく東京育ちの私にとっては、こちらでの生活はすべてが新しく、大変貴重な経験となっています。

少 し歩けば無数のコンビニやレストランがあり何でも手に入る東京とは違い、こちらでは最低限必要なものがコンパクトに纏まっている印象があります。私の滞在 しているシャーマンホールには食堂がない為、夕食の時間には友人と誘いあって、グリーンストーリート沿いにあるレストランで、中華料理や韓国料理、インド 料理などを楽しむのが日課となっています。また、週末には20分程自転車を走らせて、巨大なショッピングモールまで足を運び、買い物を楽しんでいます。

また、広大で美しいキャンパスは特にお気に入りです。近代的な高層ビルが立ち並び、生徒が密集している日本のキャンパスとは違い、端から端まで歩くとすると1時 間はかかる巨大なキャンパスには、巨大なスタジアムやジム、図書館、数々の公園や庭園が点在しています。授業の合間にはキャンパスの中心にあるクワッドで 芝生の上に寝転がりながら本を読んだり、ジムでバトミントンを楽しんだりと、美しいキャンパスと充実した施設を満喫しています。

大学生活に関して、とりわけ日本の大学生活との違いを実感する点は、生徒が寮やアパートといったキャンパス上に住んでいる点です。もちろん教室まで近いので 便利ということもありますが、それ以上に、これが日本には無いような密な人間関係や特殊なキャンパススタイルを生んでいる印象があります。みなが近くに住 んで居るため、友人のアパートで主催されるパーティーに足を運んだり、また一緒に誘いあって図書館に出かけたりと濃厚な人間関係が築かれています。また日 本でいうクラブやサークルも当然あるのですが、こちらではその存在感は薄く、フラタニティやソロリティといったコミュニティが人間関係の中核を担っている ようです。特殊な試験を受けなければ入ることができず、それぞれの伝統・規則・歌や踊りを持ち、時には生活を共にするフラタニティやソロリティは、自由で ありながら時に保守的なアメリカの文化をよく表現する興味深い存在だと思います。

3.授業について
授業に関しては、様々な手段 を試みたものの法律系科目の聴講が許可されなかったり中国語の授業が取れなかったりと、自分の興味のある授業を十分には取ることができず、やや心残りな授 業計画となってしまいました。とはいえ、私の専門分野である法律から少し離れ多様な授業を取ることで、別の視点から物事を眺めることができ、思わぬ発見や 学びがあり、結果的には大変充実した授業計画となっています。
EALC 250 Introduction to Japanese Culture
PSYC 245 Industrial Organizational Psychologies
LAW 301  Introduction to Law
CMN 101  Public Speaking

今学期は以上のような12単位を履修しています。とりわけIntro to Japanese Cultureで は、日本の文化・歴史を客観的に眺めることで自国の文化、さらには自分自身をより深く知る貴重な機会となっています。またアメリカの視点から再構成された 日本の文化・歴史を概観し、アメリカの生徒の日本についての意見を聞くことで、アメリカと日本の関係性といった大変興味深い気づきが得られています。日本 の文化に関して特に嬉しい驚きとなったのは、アメリカの生徒達が非常に日本の文化に興味を持っているということです。日本文化に関するこの授業も大変人気 ですし、先日のスタディアブロード説明会では数え切れない程の学生が日本への留学に興味を持ち、目を輝かせながら説明を聞いていました。
また先日には郡司先生にご招待 頂き日本館でのお茶会に出席させて頂きました。恥ずかしながらこれまでお茶を正式に頂いたことがなく、この機会に初めてそれもアメリカでお茶を頂くという かけがえのない経験させて頂くことができました。毎週のお茶会には大勢の生徒が日本館を訪れるということで、その当日も多くの生徒がお茶を楽しむ様子を見 学することができました。アメリカ人にとって日本の文化というと侍・すし・アニメといったイメージが強いようですが、そういった日本の文化の一部分だけで なく、本当の意味で日本とはどういう国なのか興味を持って貰う手助けが自分にできたらと思っています。

またIndustrial Organizational Psychologiesでは、経営学の視点とは少し異なった視点から、ビジネスの現場でのパフォーマンスやモチベーションの向上などに着目し非常に興味深い授業となっています。Public Speakingでは、複数のプレゼンテーションを通して英語力の向上だけでなく、いかに聴衆を引き付け効果的な話をするか効率的に学ぶことができています。

こちらでは、生徒達が日本よ りもずっと真剣に授業に取り組んでいることに気づかされます。第一には良い成績が就職活動・大学院進学に不可欠であるため、就職を真剣に考える学生はみな 必死で勉強に励んでいるようです。しかしより本質的には、授業の質自体が非常に高い点にも気づかされます。クラスは日本に比べ少人数な場合が多く、グルー プを作ってのディスカッションや先生との対話形式でのやり取り等、生徒と教授の双方向のコミュニケーションが行われる工夫がなされており、生徒にとって授 業がより面白いものとなっています。またシラバスや評価基準が明確で、概して授業自体が非常によく組み立てられている印象があります。授業の内容自体が難 解なものでも、ユーモアに溢れた教授の授業は非常に興味深く、生徒が主体的に授業に参加する工夫がなされています。

4.こちらの生活と今後について
こちらの生活を一言で表すと すれば、「よく遊びよく学ぶ」ということに尽きると思います。先日は、友人宅でたこ焼きパーティーやお好み焼きパーティーを主催し、久しぶりの日本の味に 舌鼓を打つと同時に、日本の味を多文化の人に伝える良い機会となりました。どちらも好評で嬉しく思っています。週末には友人とともに、バーに出かけ団欒を 楽しんだり、ビリヤードやボーリングを楽しんだり、フットボールやホッケーの試合を観戦しに行ったりと忙しい日々を送っています。また、こちらではテニス のクラブに入り週に3、4日 テニスを楽しんでいます。クラブでは、運動そのものだけでなく、普段では接点のない多くの人と知り合い、スポーツを通して仲良くなる素敵な機会となってい ます。沢山の人との交流を大切にすることで、日本では決して体験できない文化の違いや共通点を実感し、自分自身の視野を広げ人間的に成長できればと考えて います。

他方、勉学に関しては、前述 の通りとても充実したものとなっています。英語に関してはもちろん、勉強に時間が余計に掛かること等苦労する点はありますが、勉強に際して英語という障壁 を強く意識することはなくなってきました。中間試験前には図書館で朝まで籠りっきりで勉強するなど集中的に勉強し、メリハリの付いた生活を送ることができ ています。

こうして頂いたイリノイでの留学という貴重な機会を最大限に生かして、勉学と遊びを両立しながら、これからの6か月間をより充実した生活にしていきたいと思っています。

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<写真1> アイスホッケーの試合にて
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<写真2> 郡司先生と共に日本館で
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<写真3> お好み焼きパーティーにて

2009年奨学生 東京大学法学部
中川貴史