中川貴史さんの2010年4月分奨学生レポート

 JICの皆様、いかがお過ごしでしょうか。2009年 度奨学生の中川貴史です。こちらシャンペーンでは極寒の冬も遂に明け、暖かい心地よい陽気の日が続いています。クワッドでは多くの生徒が芝生の上で寝転が り日光浴をする姿が見受けられます。早いもので帰国まで1月余り、時の経過の早さに驚かされます。期待と不安に満ち溢れてこちらに到着した時がつい昨日の ように感じられ、飛行機のチケットを目の前にしながら1月後には日本にいるということが未だに実感を持てずにいます。これまでの日々を振り返ると、沢山の 掛替えのない思い出が次々と浮かんできます。その中でも、今学期の初めから今に至るまでの3か月程の出来事の幾つかをご報告させて頂きたいと思います。

*授業について
今学期は法律系の授業及び、先学期学習して興味深かった日本に関する授業を軸に授業計画を組み立てることとしました。先学期に比較すると、300番台400番台の授業の数が増えやや負担が多いものの、その分学ぶことも多い充実した授業計画となりました。

JOUR411 Law and Communication
EALC227 Modern Japanese History
EALC306 Japanese Literature Translation Ⅱ
ATMS100 Introduction to Meteorology

今学期は以上のような12単位を履修しています。教授に頼み込み履修制限を外してなんとか履修することができたLaw and Communication のクラスでは、アメリカ憲法修正1条 の言論の自由に関する判例研究を行っています。毎回の授業で二・三の判例を扱い、事前抑制の禁止やプライバシー権との関わりなど一定のテーマについて判例 がどのような時代背景の中でどのような変遷をしてきたか比較研究しています。とりわけ興味深いのは、アメリカ憲法に拠るところが多い日本国憲法においては 判例・学説上もアメリカ判例と多くの共通点があることで、また逆に共通点が多いだけに差異がある点が際立つことです。例えば違憲審査基準という点では多く の共通点が見られ、日本でも学説上は違憲審査基準として確立されつつある「明白かつ現在の基準」についてアメリカ憲法判例の中でいかなる背景の下構築され てきたのか考察した授業は興味深いものがありました。また、メディアへの反論権に関する判例では、日米判例ともに言論の自由に対する間接的な抑止になると いう点を主な理由に挙げ反論権を否定しているものの、多様な学説・要素を考慮に入れながら違憲判決を下しているアメリカの判決文は印象的です。
Modern Japanese History の クラスでは、政治的な側面な側面のみならず、日本の歴史学習ではやや見逃されがちな衣食といった側面も当時の資料を読み解きながら学習しています。日本で は伝統的な学部の区分の中で法学部や文学部などに分かれ個別に研究されている歴史学ですが、歴史学部として独立した学問領域として確立されているこちらで は、学部レベルでも様々なアプローチから歴史研究がなされており興味深いものがあります。また、高校の授業や大学受験などでは鋭い視点から扱われることが 少ない第二次大戦後の歴史についても、アメリカとの関係性の中から日本の位置を捉え直すことで面白い視点を獲得することができました。Japanese Literature のクラスでは、江戸期から現代に至るまでの日本文学を検討・討論しています。生徒それぞれ異なった文化的背景を持っており、日本という文化を共有しない生徒達から出される意見は新鮮で、毎回の授業が楽しみとなっています。

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(写真1)エド&アリスさんのお宅にて

*日本館オープンハウスなど
先日は、郡司先生の方から日本館オープンハウス及び前日のレセプションパーティの方にお招き頂きました。レセプションパーティでは日本館の多くの支援者の方とお話しする機会に恵まれ、JICの 方々をはじめとして多くの人に支えられる日本館の貴重さについて再認識される機会となりました。また同じ週には、こちらで開かれている琴の授業のコンサー トがあり、こちらの学生が琴の演奏を楽しむ姿に心温まる思いがしました。加えて先日には、小野坂先生主催で日本語の授業を履修している学生をはじめとした 学期末のレセプションパーティがあり、今年から日本へと旅立つ大学院生や教授と会話を楽しみ、ぜひ日本で再会しようなどと盛り上がることができました。こ うしてこちらで築いた関係を今後も大切にしていければと思っています。
その後には、故小山先生がイリノイ大学にいらっしゃった頃から懇意にされていた方からディナーにお招き頂きました。美しい池の湖畔に佇むお家で10品 以上もあるフルコースのディナーを頂きながら、小山先生や日本での思い出を語って頂き、素敵なひと時を過ごすことができました。大変温かいおもてなしに言 葉で表せない程感激するとともに、小山先生のお人柄や寛大さを少しばかりか思いを馳せ、改めてこちらに留学生としていられることの貴重さを考えさせられま した。

*セントパトリックデイ&スプリングブレイク
3月 の上旬には毎年アンオフィシャルセントパトリックスデーという名目で学生達が飲みに行くという大規模イベントがあります。良い意味でも悪い意味でも、こち らの学生の勉強と遊びのメリハリにはいつも驚かされますが、アンオフィシャルデーはとりわけ大変面白い経験となりました。前日から24時 間寝ずに飲むぞと気合の入っている友達にお酒の買い出しに付き合わされ、当日のクラスではやや少ない出席者の中にやけに「楽しげ」な学生が混ざっていたり と印象的な光景を目撃することができました。日本では大学生全員が同じ格好をする機会などあり得ないので、学生達はみな緑のTシャツに身を包み、緑のビールを飲むという光景には圧倒されました。普段からイリノイのオレンジTシャ ツは人気がありますが、こういう形で愛校心ないし共同体意識が涵養されているのだと思うと興味深いものがあります。服装という点では日本の大学生は比較的 おしゃれな学生が多いという要因もあるため簡単に結論付けられないものの、日本の大学生よりもずっと誇らしげに自校のことを語る学生達の様子には、こちら の学生の愛校心の強さを感じさせられます。
春休みには、沢山のレポートを何とか仕上げるのとちょっとした休憩を兼ねてシカゴの友人宅にお世話になることとなりました。何度も訪れたことのあるシカゴですが、今回は初めて訪れたMuseum of Contemporary Artの作品の数々には心動かされました。紙や布、瓦礫などを使い創意を尽くして創られた作品はどれも日常性や時空といった深いテーマを表象しており、夢中になるあまり気が付くと丸一日を美術館の中で過ごしてしまいました。

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(写真2)友人宅にて

レポートと期末試験が迫り勉強に追われる日々ですが、残り少ないこちらでの時間を噛み締めながら過ごしていきたいと思っています。
中川貴史