柳潤子さんの2010年4月分奨学生レポート

JICの皆様、いかがお過ごしでしょうか。2009年度JIC生の柳 潤子です。イリノイでは少しずつ暖かくなり、日によってはTシャツでも大丈夫なほどです。昨年の8月からイリノイ大学に留学させていただきましたが、早いもので、あと少しで春学期が終わろうとしています。今回は春学期の始まりからスプリング・ブレイク、授業のまとめまで書かせていただきたいと思います。たくさん書くことになってしまいましたが、楽しんで読んでいただければ幸いです。

1.    授業について
今学期は
PS 322 Law and Public Policy
PS 357 Ethnic Conflict
PSYC 238 Abnormal Psychology
GLBL 296 Ethics & The Debate Over Immigration Reform
CHIN 409 Social Science Readings Chinese
SPAN 103 Intermediate Spanish
の6つの授業を受講しております。2つのPolitical Scienceのクラスが非常に課題も多く内容も難しく大変ですが、今までとったことのなかったPsychologyのクラスやGlobal Studyの移民問題についてのディベートのクラスもありとても充実しております。

*PS 322 Law and Public Policy
アメリカの法律にかかわる授業をとりたいという思いからこちらの授業を受講しました。毎回非常に充実したReading Assignmentsに、Reading Assignments を基としたエッセイを3つ、Term Paper としてこれまでの授業で学んだアメリカのLegal Systemの知識を応用して実際の判例について分析するという課題と期末テストで構成された授業でした。大変良くない学生の例の如く、毎回の授業に課されるReading Assignmentsをきちんとやらずに、エッセイを書くときになって大慌てでReading Assignmentsを読み始めるということを3回繰り返しました。課題が多い分、得られるものも多い授業にもかかわらず、課題について行くことが必至で最低限度のことしかこなせなかったことが残念でした。この授業を受講するまではアメリカのPublic Policyがアメリカに住む人々の意見や要望をかなえるようなイメージを抱いており、それに関わる弁護士の仕事に対しても大きな憧れを持っていました。実際に学んでみると、当然ながらその問題点を学ぶことになり、訴訟社会と呼ばれるアメリカの今までは、知らなかった面を知ることになったことがこの授業での大きな収穫だったように思います。

*PS 357 Ethnic Conflict
冬休みにさせていただいたイスラエル留学の影響から、民族や宗教の問題を学んでみたいと思い授業しました。中間テストと期末テストの2つのテストに、3つのエッセイと計4回オンライン上で出されたディスカッションと、教授の情熱を感じる授業でした。授業では、まず、学生が教授の選んだ民族紛争の可能性のある世界の国名リストの中から他の学生とかぶらないように1つの国を選びます。授業の中でethnic identityはどのように作られるのか?どのようなconflictsがあるのか?どういった解決策があるのか?などについて学び、その知識を応用する形で自分の選んだ国をリサーチしてエッセイを書きあげていくというものです。教授の選んだ国名リストはアフリカや旧社会主義国、ラテンアメリカなどが中心で私にとってはほとんど馴染みがなく、アウン・サー・スー・チーさんを知っているというそれだけの理由でミャンマー(Burma)を選びました。ミャンマー(Burma)についての基礎となるような知識を持っていなかったために、テーマに沿ったことを1から英語の文献を当たってリサーチするのには非常に手間がかかりました。この授業が大変であった理由として分析してみると1.Political Science の授業そのものの基礎を受けたことがなかったため、エッセイやディスカッションで求められるようなPoliticizeするという視点がなかなか理解できず、鋭い分析や意見を言うことが難しかったこと。2.英語力の問題として、リサーチを行う際に筆者の明白には述べられてはいないが暗示しているような意見を拾い読むことが難しく、また自分自身も説得力のあるような論理的な文章を書くことができず、結果としてエッセイの課題を通して学習を深めることができなかったこと。3.これまで民族問題を身近に感じたこともなく、普通にアメリカに住んでいれば、当然に感じたり、知っているような民族・宗教問題の知識がなかったこと。があげられるような気がします。しかし、授業で学んだことは自分にとっては非常に興味深く、これからこの分野に関わることを広げていけたらいいと思うようになりました。

*PSYC 238 Abnormal Psychology
私の在籍する日本の大学には教育学部がないために、心理学の授業があまり多くは開講されていません。日本では学べない、新しい分野の勉強を始めてみるのも面白いだろうと思い受講をすることにしました。Eating disorderやPersonality Disorderなどもともと知識として知っているものも多く、楽しく授業を受けることができました。新しいacademic term(病気の名前など)を覚えるのもやはりネイティブの人たちと比べると不利な部分があることや、テストでの英文をきちんと読みとって答える部分が苦手であること、エッセイの課題にしても、文章力を他のネイティブの人たちと同じ水準で評価されることから、課題やテストについては思ったようにスコアをとることができず、悔しい思いもしました。ただし、JIC生の特典のようなものでGPAが将来にわたって自分の成績に影響を与えないということから、興味の赴くままに授業に参加させていただきました。MajorとしてPsychologyの授業に挑んでいる学生の気迫や情熱にかなわないと思う一方で、高いGPAを維持するために中間テスト後に多くの学生が授業をとることをやめてしまう姿をみると私のような交換留学生にはわからないアメリカの大学生の苦労もあるのだと感じました。

*GLBL 296 Ethics & The Debate Over Immigration Reform
もともとアメリカの移民問題に興味があったため、知識を広げられたらという思いで受講したのですが、いかに自分の意見を論理的に組み立て、ディベートを行うかということがメインになり、その議論のトピックとしてアメリカではhotな話題であるImmigration Reformが使われているという印象の受ける授業でした。私の所属している団体(La Colectiva)ではDream Actというundocumentedの学生にU.S.citizenshipを認めるための法律の制定のために活動する団体のため、当然Immigration Reformについては移民側に立った考えを基に活動をしています。私自身も日本でも移民の子どもにかかわる活動をし、アメリカでもラテンアメリカ系の学生が中心の政治団体に所属していることから当然にそうなっていましたが、授業では様々なバックグラウンドを持つ人がいるため、自分の考えとは対立する意見や考え方を知るとてもいいきっかけとなりました。

*CHIN 409 Social Science Readings Chinese
先学期に引き続き中国語の授業を受講しました。他の授業の課題が割と大変だったため、週5回(言語の授業は毎日行われるものが多いです)ではなく週2回のものを選びました。私を含めて4人の学生でクラスが構成されたため、中国語を話す機会は増えたように思いますが、やはり自分の意見を自由に発言できるようになるのは、なかなか難しい課題のようです。これまでの中国語の授業では中国語の学習用のテキストを使っていたのですが、この授業では中国の清代の探偵小説や中国政府文書を利用した授業であったため、中国語を使用して、中国の法社会の在り方について学ぶという新鮮なものでした。毎週中国語で、それぞれの学生がNewsを発表するという課題も出され、日常的とまではいかないまでも定期的に生の中国語に触れる習慣ができたように思います。私以外の3人の学生は家族の中では中国語を話して育ってきた人たちであったため、レベルの差もあり、先生には別の課題を出してもらって補う部分もありましたが、新しい興味が広がった授業でした。中国語はまだまだ学習を深めていきたいと思っています。

*SPAN 103 Intermediate Spanish
スペイン語は先学期に引き続き受講しました。先学期はどちらかというと新しいボキャブラリーが多く単語の面で苦労する部分があったのですが、今学期は新しいボキャブラリーに加えて文法事項が増え、授業についていけてないと感じるときも多くありました。インストラクターが楽しく授業を進める方で、先学期と同様オンラインでの課題も非常に良いものだっただけに十分に言語習得に向けて時間やエネルギーを割いたとは言えないのが残念でした。テキストの内容は大変良いものなので、日本に持ち帰って復習をしたいと思っています。

先学期とは比べものにならないほど授業で忙しく、課題に追われる毎日だったのですが、自分の興味のあることが思う存分に勉強できました。インストラクターには丁寧にご指導いただいて最後まで授業を続けることもでき満足しております。ただ、それぞれの授業の課題が非常に多いため、じっくりと与えられたものに挑み、授業で求められるレベルに達したかという面は非常に怪しい気がします。英語力が足りないために悔しい思いをすることも多かったのですが、そのことも含めて、新しい興味や自分にとっての課題を見つけることのできた学期になったと思っています。

2.    La Colectivaの活動について
先学期に引き続き活動に加わっています。今学期はミーティングに参加する以外の活動にも参加するということが目標でしたが、YMCAでLa Colectivaを代表して2人のメンバーとともにDream Actというundocumentedの学生にU.S.citizenshipを認めるための法律についてプレゼンテーションをさせていただきました。先学期のPublic Speechの授業ではDream Actについて何度かSpeechをしたためそのときに作成したスライドも利用して発表しました。どうしても多くの人の前で話すと私の英語が通じにくいこともあるため自分がこの役を進んで引き受けることには抵抗があったのですが、ラテンアメリカ系の学生が中心となるこういった活動の中で、アジアから来た学生としてLa Colectivaに参加し、Dream Actに賛同していると主張することは重要なことだと感じて引き受けさせていただきました。ランチタイムにYMCAで行われたイベントだったのですが、同じLa Colectivaのメンバーも駆けつけてくれ、和やかなムードの中で温かく見守られながらプレゼンテーションを行うことができました。
そしてまた、La Colectivaの活動として、寄付と人を集めて、ワシントンで行われるImmigration Reformのナショナルラリーに参加しようというものがありました。通常、イリノイからワシントンまでのバスは100ドルなのですが、寄付を集めて少しでも費用を抑え多くの人を呼んで参加するというものでした。最初にミーティングで話が出たときには本当に実現できるのかと思ったのですが、Fundraising Partyを企画したり、教授やLatino Studyに関わる人たちからのdonationを集めたりで、実際には60人近くの人を集めて一人40ドルの予算でワシントンへのラリーに参加することができました。Women’s Resources Centerでの活動なども見ていて思うのですが、日本での活動に比べてアメリカでのイベントの企画は非常に大雑把でありながら新しいこと、ユニークなこと、大きなことをやろうという意思が強いように思います。また、イベントを楽しむ側としても小さな不手際には目をつむり、イベントをやっているそのこと自体を評価するようにも感じました。Fundraising Partyの場合には、食べ物以外に何を売ろうかという話になったときに、オークションをしたらいいのではないか、という話になりました。ところがオークションで売るようなものがたくさんは手に入らないという状況で、La Colectivaのメンバーの中で得意なこと、ダンスのレッスンやDJなどのパフォーマンス、さらには一日デートをオークションでかけようと話が出、実際にオークションにかけられました。うまくいくかを考えることを二の次にして一見冗談に見えことを、堂々とやってしまうところがラテンアメリカ系の団体の強さなのかなとも感じました。私はドームに住んでいるためFundraising Partyで売るための料理も作れず、恥ずかしがって自分のデートのオークションにも参加しなかったのですが、当日スタッフとして会場で少し働かせてもらいました。
実際のワシントンで行われたImmigration Reformのナショナルラリーにはラテンアメリカ系の人が中心にはなっているものの、韓国系の人やアフリカン系の人たちも参加し、今まで見たことがないくらい多くの人が集まって大変な盛り上がりでした。日本でラリーに参加するということはかなり、ハードルの高いことのように感じますが、アメリカでは、家族や友人と参加することもありえるような親しみのあるイベントのようでもありました。

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写真1 Immigration Reformのナショナルラリー

3.    スプリング・ブレイクについて
スプリング・ブレイクの始まりはLa Colectivaでのワシントンでのラリーでした。その後、ワシントンに3日間滞在したのちにニューヨークへ行きました。もともとアメリカに来る前は東京で一人暮らしをしていたためか、ニューヨークの都会が心地よく感じました。ワシントンでもニューヨークでもホステルに泊まっての一人旅行だったため、観光というよりも自分の興味のある、美術館や博物館に行き、普段はできない買い物を楽しんで帰って来ました。ワシントンではUnited States Holocaust Memorial Museumへ行き、ニューヨークではThe Jewish Museum、Tenement Museum、The Metropolitan Museum of Artに行ってきました。それぞれのミュージアムにはそれぞれ個性があって非常に面白く、それぞれのミュージアムショップではガイド本まで買ってくるほど充実したものであったので、紹介を載せておきます。

*United States Holocaust Memorial Museum
http://www.ushmm.org/
イリノイ大学の留学制度を利用して、冬休みに行かせていただいたイスラエルでホロコーストミュージアムに行ったのですが、時間が十分になくもう少し見たかったため、ワシントンのホロコーストミュージアムに行ってみようと思いました。当然と言えば当然なのですが、イスラエルのホロコーストミュージアムが、ユダヤ人側の迫害の歴史を中心に展示がしてあるのに比べ、アメリカのホロコーストミュージアムはアメリカの外交政策と織り交ぜて展示がしてあるのが印象的でした。さらにナチスがいかにユダヤ人迫害をかきたてるようなプロパガンダを行ってきたか、ナチスの迫害からアメリカに亡命してきたユダヤ人の話などもありました。ワシントンにホロコーストミュージアムを設立するときには本当にアメリカにとってこのミュージアムが必要であるのか議論があったようですが、実際には学生も含めて、とても多くの人が訪れ、アメリカ外交の反省点などにも言及してあることから、アメリカにとって非常に意義のあるミュージアムのように思われました。

*The Jewish Museum
http://www.thejewishmuseum.org/
こちらのミュージアムに行こうと思ったのも、冬休みに行ったイスラエルの影響が非常に大きいと思います。世界の様々な地域に移住することになったユダヤ人がいかに自分たちのアイデンティティを保ちながら、それぞれの国で生きてきたか、差別やホロコーストなどの出来事をいかに乗り越えてきたのかについて語られていました。ミュージアム内の短いツアーにも参加したのですが、ガイドの方が “We”を使いながら説明をしていくなど非常にユダヤ人の結束の強さを感じたミュージアムでもありました。働いていらっしゃる何人かの方にはユダヤ人でない人もいたのですが、来館者の中でユダヤ人でない人はほぼおらず、子ども連れで来てのんびりと時間を過ごしているのを見ると、アメリカに住むユダヤ人にとってのコミュニティのような場所でもあるように思いました。

*Tenement Museum
http://www.tenement.org/
こちらのミュージアムはインターネットでたまたま見つけたのですが、非常にユニークで私の興味とも重なり非常に楽しく過ごすことができました。ミュージアムそのものの建物があるのではなく、ツアー・チケットを買い、Manhattan’s Lower East Sideに1863年に建てられたアパートメントの1室を見学しながら、実際にそこに住んでいた移民の家族の話を、ガイドの方から聞くというものです。Lower East Side は1840年代から政治や経済の理由からドイツやアイルランドから多くの人々が移民し、労働者として過ごしてきた場所です。当時はガスや水道がアパートの部屋まで通っておらず、水を手に入れるために一日に何回も女性が一番下の階までの往復を繰り返しながら家事をしていたことや、衛生状態が非常に悪かったこと、また質の悪いミルクで子どもが死んでしまったことなどが語られました。アイルランドからの移民に対しては宗教的な差別もあり、非常に苦労しながら懸命に家族で助け合いながら生活していた様子が目に浮かびました。

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写真2 Lower East Side

*The Metropolitan Museum of Art
http://www.metmuseum.org/
メトロポリタンミュージアムは非常に大きなミュージアムでニューヨークに旅行を決めたときから非常に楽しみにしていました。期待通りに非常に大きなミュージアムで、普段、日本ではあまり見る機会のなかった、アフリカやオーストラリアの原住民のアートや、中国の絵画、現代アートなども楽しむことができました。なるべく今まで見たことのないような展示品を中心に回っていたのですが、どうしても時間がなく、次にニューヨークに行く機会があったときにはまた行ってみたいと思いました。

4.    最後に
アメリカで過ごした留学生活は、日本での今までの生活を離れ、たくさんの人たちに恵まれ、また充実した授業を受けることができ、これからの自分自身の人生にとってかけがえのないものとなりました。その分、驚くことや考えもつかなかった出来事にも遭遇した期間でもあり、うまくいかなかったり悩んだりしたことも多く、アメリカでの生活はカウンセリングの通いながらのものでもありました。日本を発つときにはこういったことを想像しなかったため、カウンセリングに通っていること自体に対して不安になることや、辛いこともあったのですが、最後までうまくいくようにと努力し続けたことが、アメリカで頑張ったことの1つなのだと今は感じています。信頼のおけるカウンセリングの先生に出会えたことも、その先生との信頼関係をきちんと築くことができたこと、たくさんのアメリカでの出来事をカウンセリングでもシャアすることができたこともアメリカで得たものだと感じています。日本で離れて暮らしている家族や友人たちには大変心配をかけ、アメリカで出会った友人たちにも随分とお世話になりましたが、振り返ってみると、そのときには乗り越えることができるとは思えなかった1つ1つの出来事をちゃんと乗り越えて、素敵な留学生活が送れ、本当にアメリカに来てよかったという気持ちです。

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写真3 カウンセラーの先生と

JICの皆様にも大変お世話になり、感謝の気持ちでいっぱいです。あと少しの帰国までの時間を大切に過ごす毎日ですが、この留学は今までの人生の中で一番充実し、一番成長した期間だと思っております。