柳潤子さんの帰国後奨学生レポート

JICの皆様こんにちは。アメリカから帰国して5カ月近くたち、日本の生活にも慣れ、10月からは日本の大学に復学いたしました。帰国後から日本の大学が始まるまでの長い夏休みには、アメリカから友人が遊びに来てくれたり、アメリカで学んで興味を持った活動に飛び込んでみたりとイリノイ大学での経験は日本に戻ってきてもずっとずっと生きているものなのだと感じております。咋年の自分で書いたレポートを読んでみるとそのとき何を自分が考えていたか、どんな活動をしていたのかがわかり、JICの皆様、家族、友人に読んでいただくだけではなく自分の振り返りのためにも非常に大切な機会になっていたように思います。今回でレポートは最終回なのですが、日本での生活に戻って改めてイリノイ大学留学を通じて学んだことやこれからの自分がやってみたいことなのについて書いてみたいと思います。
1.一年間の留学で学んだこと
*人とのコミュニケーションの重要さと大変さ*
今回の留学は、私にとって初めて英語のネイティブスピーカーと英語でたくさん話す機会でした。日本にいるときにはTOEFLの勉強もしており英語にも多少の自信はあり、そして英語の力よりも伝える内容や気持ちがあれば大丈夫とも思っていました。しかし、実際には英語の発音に問題があり、自分の本質的に伝えたいことが通じず、また、相手の細かい話や背景がわからず、周りにうまく馴染めないことや新しく知り合った人と仲良くなれないこともたくさんありました。
アメリカ留学して初めのころ、友人の知り合いと話した後に、友人を通じて、私との英語の会話は論点や質問と応答が少しずれることがあり、わからないことはきちんとその場で確かめて会話をしないと相手は真剣な議論をしてくれなくなるから気をつけたほうがよいのとの指摘を受けました。確かに英語の表現でわからないことをしつこく聞くと面倒くさそうに説明する人もいたので、適当に会話の中でわからないことも流しておいた方がいいのかもしれないと感じたこともありました。しかし、自分が英語の会話の中で相手の発言の意図がわからないときには質問をして、相手の意図をくみ取ろうという姿勢を見せることは相手を尊重する態度にもつながり、最終的には人とよいコミュニケーションがとれるのではないかと考えました。指摘してくれた知人もまた留学生で、英語のコミュニケーションにおいてアメリカで苦労したことがたくさんあり、私がアメリカでの生活でうまく人間関係を築けるようにそういったアドバイスをくれたそうです。
そういった伝えにくいようなアドバイスを伝えてくれた知人に非常に感謝しましたし、その後、英語の意味がわからずに何度も聞き返す私に例を交えながら気長に説明してくれた友人たちや私の伝えようとすることに一生懸命耳を傾けてくれた友人にも感謝でした。最後まで英語の会話については満足することはありませんでしたが、英語を使って多くの人とよい関係が築けたことにはとても嬉しかったです。

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写真1 おなじ寮のフロアに住んでいた仲良しの友人とカフェテリアで

*新しいことに向かっていく情熱*
イリノイ大学ではWomen’s Resources Centerと La Colectivaで主に活動しました。Women’s Resources Centerは非常に新しくできた大学のセンターの一つでジェンダーに関わるイベントや活動を行っていました。ディレクターは私より一つ年上くらいでイリノイ大学を卒業してこの職につき、様々な本などでジェンダーに関わるイベントのアイディアを集めて、常に新しいことイベントの企画していました。また移民法改正を訴えるラテンアメリカ系政治団体のLa Colectivaでは例年のイベント内容にとらわれることなく、常に活動をより多くの人たちに広げていこうと切磋琢磨する姿が見られました。ワシントンで行われる移民法改正を訴えるナショナルラリーに向けて、募金と参加者を集めバスを借りて参加するなど新しい試みに挑戦していました。今学期は地域の人たちとの交流を深めて移民問題への理解を広げる活動をしていくと話していたのでどういった活動になっているのか非常に楽しみです。アメリカでは日本と比較して新しいイベントや試みについては称賛されることや、興味を持たれることは多いとは思うのですが、まだまだ理解されない部分もありました。Women’s Resources Centerのイベントでは「ジェンダーの問題は女性の問題である」という認識から、ゲストの依頼を男性にしたところそれを一笑されたり、La Colectivaの移民法改正については反対意見を持つ学生もおりエスニック・グループの壁を超えて活動を広げていくのは難しい現実もありました。自分の信念を多くの人の前で表示することは非常に勇気がいることですが、信念に向かって多くの人の認識を変えていこうとするイリノイ大学で出会った人たちが印象的でした。

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写真2 Women’s Resources Center ディレクターのRachelがWomen’s Resources Centerの内装だけでなくイベントのポスターなどもすべてデザインしていました。

*国際的な人間関係を築く上で必要な感性と知識*
アメリカ留学しはじめのころ、シンガポール出身のルームメートが他のクラスメートにシンガポールは中国の都市の一部であるのかという質問を受け自身の出身国がないがしろにされているように感じて怒っていたこともありました。アメリカではアジアについてあまりよく知らない人もいたのですが、相手の国の状況や背景をきちんと理解せずに発言することは意図的ではなくとも非常に相手を不快にさせることもあるのだと感じました。私はアメリカでPolitical Scienceの授業を受講していたとき、あまりに世界のニュースを知らずに非常に恥ずかしい思いをしたのですが、様々な国の人と関わるときにはある程度の国際的な知識や感覚を持っていないと、決してその意図がなくとも、配慮が足りない人間となってしまうのだと感じました。
また、日本で私が当たり前と感じていた、時間を守ることや食事の仕方など生活習慣に関わることが根底から覆されることもたくさんあり多くの人と関わる中で柔軟に対応する必要がありました。アメリカでは時間についてはきっちり守るときと守らないときの格差が激しく、場合によってはパーティに行くのに2時間くらい待たされることもあったのですが、そういった時間に周りの人と楽しい時間を過ごすことができるのかが楽しく友好関係を深められるのかどうかに関わるのだと感じました。
自分の性格上どうしても柔軟に対応できない場合(酔った16歳の少年の運転する車で家に帰ろうと提案される、買い物をした後2時間くらい平気で歩かされる、中国人の友人とのアメリカ旅行中、中国料理しか食べたくないと言われるなど)にはあらかじめ伝えておくとそれなりの対応はしてくれるので、自分が強いストレスを感じることなく快適に過ごすためにはどうしても受け入れられないことは把握していく必要があることも学びました。

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写真3 ルームメートと毎日おしゃべりをしていた部屋

2.日本での生活について
*日本での国際人権問題NGOでの活動*
イリノイ大学での留学制度を利用して冬休みにイスラエルに行った際、民族問題に非常に興味を持ちました。その後春学期にはEthnic Conflictを受講して世界の民族問題がどういった理由で起きるのか、どういった解決が考えられるのかについて学びました。そのときAmnesty Internationalなど国際NGOの発表している報告書が各国で起きている人権侵害などについて詳しく書かれており自分の書くレポートに多く引用していました。
帰国後そういった報告書を書く側になって多くの世界の情勢について伝えることがしたいとの思いから、東京に事務所がある国際人権NGO ヒューマンライツ・ナウでリサーチインターンをさせていただきました。実際には国際人権法などの知識がないことから報告書の核となるような政府に対する提言や国際法上の問題点などを書くことはほとんどなかったのですがインタビューのまとめや会員向けのイベント報告を作らせていただくなど貴重な経験をさせていただきました。
またイリノイ大学で受講していたEthnic Conflictの授業では特にビルマ(ミャンマー)における少数民族に対する人権侵害について詳しくリサーチをしていたのですが、9月にはこのヒューマンライツ・ナウを通して、タイに位置するビルマから来た少数民族の人たちが法律を学ぶ学校へ行く機会もいただきました。ビルマのいくつかの少数民族から選抜された学生たちが豊かな自然の中でのびのびと学習しており、私はティーチング・アシスタントとして4日間活動しました。休暇があっても安全上の理由から旅行ができず、ビルマに住む家族と連絡を取ると、家族が軍事政権から目をつけられる可能性があるため連絡ができない状況があるのですが、それぞれの民族団体から代表として法律学校で学習できることに誇りと責任を持っていました。特に今回の滞在中はビルマ総選挙が迫る時期であったため、テレビでビルマの民主系のニュース番組(DVB, Democratic Voice of Burma)を真剣にみる姿もあり、彼らが実際にどういったことを考えているかについて学べるいい機会でした。しかし、ビルマ情勢がなかなか好転しない中、自分では何もできずにまた日本に戻って自由な生活をすることしかできないことに、もどかしさも感じました。
大学が始まることもあってしばらくインターンはお休みとなるのですがまたイリノイ大学で広げた視野を生かした新しい活動をしていけたらと思っております。

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写真4 タイにあるビルマ難民の人のための法律学校でケースを説明する。お互いに英語が第二言語のためディスカッションが思うようにいかないこともありました。
イリノイ大学での一年は、私の人生にとって、視野を広げて、新しい環境や考えに触れる本当に大きなチャンスだったように思います。このチャンスを自分だけのものにするのではなく、多くの人に広げられるような人になりたいと思いました。このチャンスを下さり留学中支えてくださったイリノイ大学同窓会の皆様、応援してくれた家族や知り合い、友人たちそしてイリノイ大学で出会った大切な友人たちや指導してくださった教官の方に感謝をこめてレポートを終わりたいと思います。ありがとうございました。
柳 潤子