中川貴史さんの帰国後奨学生レポート

JICの皆様、いかがお過ごしでしょうか。2009年奨学生の中川です。6月に帰国して早4か月、就職活動・期末試験・引っ越し・ベンチャー事業立ち上げ等々と慌しい日々を送ってきました。ちょうど素敵な夢から醒め突如現実に引き戻されたかのような感覚で、ゆっくりと勉強や友達付き合いに集中できたイリノイでの生活が益々懐かしく感じられます。来年3月に卒業を控え、イリノイでの経験を経てどことなく成長した自分自身と共に、「日本での自分の人生に新たなスタートを切るんだ」、そういう期待感やプレッシャーを日々感じつつ毎日充実した生活を送っています。
頻繁にイリノイの友人とスカイプ上で話をするのですが、今年の奨学生の皆さんがイリノイで楽しく留学生活を送っている様子を聞くにつけ、大変嬉しく思うと同時に、ワクワクしてイリノイで学生生活を始めた頃の自分自身を思い出し懐かしい気持ちになります。振り返ってみると、イリノイでの一年間は、日々驚き・学び・成長に溢れ、数えきれない程沢山の楽しい思い出に彩られ、沢山の大切な仲間達との出会いがあった一年間でした。こんなにも素敵な経験をする機会を頂けたことへの感謝の気持ちと共に、ここにイリノイでの最後の1月程と留学生活の総括をご報告させて頂きます。

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(写真1)

*ファイナル
4月の後半に入るといよいよファイナルの時期が近づき、大量のレポートと差し迫ってくる期末試験に慌しい日々を送ることになりました。総計30頁以上にもなるレポート群を仕上げた後は、安堵する暇もなく期末試験対策に追われました。law and communicationのクラスでは、自らの不勉強が原因で溜りに溜まった未読判例が、試験前日の時点で1000頁を超えるという大ピンチを招き、30時間不眠不休で勉強するという強硬策で何とか試験を乗り越えることになりました。
思い起こしてみると、英語の文章やウェブサイトを見ると身構えてしまっていた一年前からは信じられない程、今では自然に英語を書き・話していることに気付きます。こう思うと大量のレポートをこなし、大量の教科書・判例を読み通したことも、最終的には自分の力になっているのだと実感します。もちろん言語として英語を捉えるとき、英語はそういう意味においてはコミュニケーションの媒体でしかないのですが、さらに一歩進んで、英語で意思疎通を試みることからは、より深い学びがあったように思います。というのは、自分の拙い英語で相手を説得し心を動かすには、第一に究極的な意味で相手が何を言いたいのか理解し相手の気持ちを汲み取ることが必要で、第二に自分の言いたいことを論理的に構成し相手が納得するような形でうまく伝える必要があります。こうして日本語では何となく誤魔化していたものに真っ直ぐ向き合うことで、本当の意味でのコミュニケーション能力や論理的思考力を培うことができたように思えます。
大ピンチの期末試験を何とか終えると、すぐに大事な仲間達との別れが待っていました。その後のニューヨーク行きの予定を調整して4日程シャンペーンで時間を取り、時間を惜しんで友人達とシャンペーン最後のひと時を過ごしました。いつものように友人と会うと、今から帰国するのだという事実が信じられず、そしてまた、また来学期からも同じようなシャンペーンの生活が待っているような気がしてなりませんでした。
多くの掛け替えのない友人に助けられ、楽しみ、鼓舞し合い、切磋琢磨できた私の留学生活は本当に幸せなものでした。思い起こしてみると、JICの奨学制度の面接の際、「人との出会いは人の人生を変える、お互いに影響し合い切磋琢磨する関係を築きたい」と語った記憶があります。今は、シャンペーンで沢山のものをくれた友人達に感謝の気持ちでいっぱいです。願わくは、私自身も彼らの中に何か重要なものを残すことができていたら本当に素敵なことだと思います。
夏にはイリノイから多くの友人が日本へと遊びに来てくれ、今月には台湾・香港で多くの友人に温かく迎えられ、イリノイでの築いた友好関係は私にとって掛け替えのない財産となっています。

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(写真2)

*NY&帰国後
シャンペーンを離れてからは、以前の私の大学で交換留学生であった友人とニューヨークで待ち合わせ、楽しいひと時を過ごしました。ニューヨークは、シカゴとやや趣を異にし、またドラマでみるような高層ビル街というイメージとも違って、汚い雑居ビルと荘厳な高層ビルが入り乱れる、まさにアメリカという国を貫いてきた主義・価値観を体現する場所のように感じられました。
1週間ほどニューヨークで過ごした後、日本に帰国し、アメリカでは先送りしてきた進路の選択という大きな決断を迫られることになりました。弁護士資格を取得するか、就職を選ぶか、さらには起業で生きていくか…、どれを選んでも上手くいく保証などなく、何が自分の将来にとって最善の選択かを判断することは不可能で、文字通り苦渋の決断となりました。起業家として「社会を大きく変える存在になる」という自分の夢に真っ直ぐに向き合おう、そう思い切って決断を下した結果、特別に配慮を頂いて大手外資系コンサルティング会社から合格を頂き、現在は自分の本来の目的だったベンチャー事業立ち上げに集中できています。日米の優秀なチームを統率し、スピーディに決断を下しながらビジネス展開させていくのは、決して他では味わえないエキサイティングなものです。

*一年間を振り返って
「逆カルチャーショックはあったか?」とか「イリノイで学んだものは何か?」などとよく聞かれることがあります。もちろん、「多様なバックグラウンドを持った友人との付き合いから自分の視野や価値観を広げられた」とか、「リベラルな考えに触れることで日本的な既成概念を客観的に眺められるようになった」とか、それなりに語ることはできますが、そう語ってしまうとイリノイでの経験が急に陳腐なものに成り下がってしまう気がします。イリノイ留学を決断した最大の理由は、「自分自身を人間的にひと回り成長させたい」ということでした。帰国して、突然世界が違う色で見えるということはありませんが、イリノイでの日々の経験を通して、少しばかりではあっても確実に人間的に成長できたという感触があります。詩的な表現を逃れませんが、イリノイでの経験は私の一部となって、言語化し得ない学び・成長になったように思えます。
この一年間は、毎日楽しくて仕方がなく、活気に満ち、充実した日々で、驚き・学びの連続でした。この一年間は私の今後の人生を形創る上で、間違いなく掛け替えのない経験になりました。この本当に貴重な機会を頂けたことに誠に感謝しております。また、私達奨学生の留学を色んな方面から支え・助けて頂いたJICの皆様には本当に感謝の意を表し切れません。本当にありがとうございました。
微力ではありますが、私にできますことがありましたら、JICのさらなる発展のため少しでもお手伝いできたらと思っております。また今後ともJICの皆様にご支援頂くこともあるかと存じますので、今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

写真1.日本での友人との再会
写真2.台湾にて友人との再会

2009年奨学生中川貴史