奥谷聡子さんの最終レポート

日本は梅雨も明け、紫陽花が大輪の花を咲かせる季節となりました。
5月21日に無事、約一年間の留学生活を終え、 シャンペーンから日本に帰国して参りました。

帰国直後は、まるで竜宮城から戻った浦島太郎になったかのような不思議な感覚で、この一年は本当に起きたのかと自分を疑ってしまうほどでした。確かめるかのように、ふと下を見るとイリノイ大学で打ち込んだアイスホッケー部のスウェットに背番号の8番が刻まれているのを見て、少し安心感と切なさを覚えたのは今でも忘れません。あれから数週間が経った今、ようやくこうして最終回となる奨学生レポートに正面から向き合う心の準備ができました。

帰国日のウィラード空港。はじめてAlmaMaterに会えました。笑

長年親しみのあった東横線渋谷駅も、新たな首相への政権交代も、留学中は好都合だった円高経済も、卒業して4月から社会人となった同期も、帰国してみたら多くのことが変化していました。その一方で見慣れた環境や集団の中に戻ってみても、なんだか腑に落ちず 、その理由をじっくり考えたら、この一年で変わったのは周囲の環境だけでなく、自分自身だからだと気付きました。
最終レポートでは、出発前、留学中、帰国を通して感じてきた偏見や疑問に自分なりの考えをまとめ、帰国間際の数週間について、自由に書き散らしたいと思います。

⒈.留学の3つのウソ
2.期末試験と引っ越し
3.困難と挑戦

1.留学 〜3つのウソ〜
其の一【留学をすれば英語が自然と上手くなる】
海外へ行き、異国の地に身を置けば、語学力は自然と身に付くとのことをしばし耳にしますが、その考えは誤りだと思います。海外へ行っても、日本人同士で常に固まっていたら英語力は上達しませんし、極端な話、最低限の英語だけで生活していくことは容易にできます。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校は全米大学では2位、州立大学では1位の留学生数を誇り、国際的なキャンパスとして有名ですが、私が目にした実態は想像と少し異なり、この矛盾に悩むことが多々ありました。確かに、学生の20%は留学生で、中でもアジアからの留学生は多く、人種構成も多様です。しかし、キャンパスは人種のるつぼというより、綺麗に詰められたお弁当箱のような感じで、現地の学生と留学生、人種間には見えない壁がありました。 例えば、アジア人はアジア人同士で固まり、白人は白人同士、黒人は黒人同士、ヒスパニック同士などとそれぞれの集団間の混ざり合いや交流を見かけることは残念ながら少なかったです。キャンパスは世界中の学生が融合された縮図というよりも、人種がグループを成して分散していました。 同じアメリカ人同士であっても白人と黒人がそれぞれのコミュニティと文化があるように、同じ国籍や人種の空間を心地よく感じるのはごく自然なことだと思います。だからこそ、敢えて居心地の良い領域から一歩踏み出し、自ら外部へ働きかける行動力がなければ内部のコミュニティに入って行くことは難しく感じました。そういう意味で、体育会アイスホッケー部に入部し、 敢えて自らを現地の学生と協力しなければならない環境に置いたことが、その見えない壁を乗り越えるための最善の決断だったと思います。

:Illini Women’s Hockey Farewell Banquet 卒業生に素敵なプレゼントが贈呈されました

其の二【海外の学生は優秀である】
出発前は一般的に聞いていた噂から、海外の学生はレベルが高く、優秀であるとのイメージを漠然と抱いていました。ですが、実際には学生や教育内容のレベルという意味では、日本と変わらない、むしろ日本の方が高度だと感じることもしばしありました。しかし、決定的に違うのは大学の教育システムと卒業後の進路システムです。確かに海外の学生は日本の大学生と比べて圧倒的に勉強量が多いです。College Life Triangleとはアメリカの大学生活を表す三角形で、そのうち二つしか頂点を選ぶことができないのが実によくその様子を物語っています。イリノイ大での ドロップアウト率は50%と卒業までの道のりは険しく、競争も激しいです。しかし、なぜアメリカの大学生はこれほど勉強するのかと言えば、第一に卒業後の就職や進学にはGPAが重要視されているということ、第二に大学教育の密度が高く、職員や教授が学生の指導に熱心であるということが挙げられます。こうしたシステムが教育を変え、大学を変え、そして学生の意欲を高めているのだと思います。競争の激しい環境の中で一年間学び、日本の大学教育との密度の格差に危機感を覚えられずにはいられませんでした。

其の三【外国人は日本に関心がある】
留学生の数が全米2位に入るイリノイ大学へ行き、驚いたのがキャンパスでの日本人の存在感の薄さでした。大学が公表している2013年春統計によるところ、留学生の数では1位が中国(3,693名)、2位韓国(1,303名)、三位インド(874名)。。。下ること15位に日本がわずか61名でした。世界第三位の経済大国とはいえ、今や世界の関心は中国、文化面では特に韓国へ移り、キャンパスにいる留学生の数の上でも日本の存在感は非常に薄かったです。特に、中国や韓国からはエンジニアとして将来アメリカで働くチャンスを求めて留学する学生が増える一方で、日本人留学生は大幅に減少傾向にあり、グローバル化と叫ばれる反面、就職システムが学生の考え方を内向的にさせ、世界の波から日本は遠ざかっているように感じました。逆に、アメリカ人学生は外向的なのかと言えば、そうでもなく、むしろ世界中の人がアメリカに流入してくるので、彼らは海外へ行く必要性をあまり感じていませんでした。内陸部の大学だから尚更、イリノイ大のStudy Abroad Officeは内向的な国内の学生の目を海外へ向けることに苦労しているようでした。しかし、日本のアニメや文化が好きで、日本に興味を持ってくれる学生もいました。中でも中国人や韓国人などアジア人に多かったです。日本国内にいた時は、あくまでも私のアイデンティティは日本人でしたが、海外では私はアジア人であり、その中の日本人として見られることが多く、いつの間にかそんな二重アイデンティティが自分の中で芽生えていました。だからこそ、とりわけ日本の文化や日本の歴史に興味を持ってもらえるということは有り難く、この一年間、日本にもともと関心を持っている学生とそうで無かった学生に対しても自ら働きかけることに努めてきました。寮の日本語教室でカルタ大会をやったり、アイスホッケーの友人と日本館のティーセレモニーに行ったり、ポットラックパーティーで特訓した巻き寿司を振る舞って盛り上がったり。ちっぽけな一学生ではありますが、私の日本の伝え方や行動一つで日本に対する印象は大きく変わりますし、この一年で私が出会った周囲の人たちの印象を少しでも変えられたなら幸いです。

寮の日本語教室の模様

2.期末試験と引っ越し
今学期は期末ペーパーが3つと期末試験が3つ有り、試験期間初日から最終日までと嫌らしいスケジュールでした。なぜ嫌らしいかと言えば、期末期間終盤までには大多数の学生は試験を終え、続々と引っ越して出て行き、残された学生は打ち上げパーティーに行くか、ガラーンとしたキャンパスでひたむきに試験勉強に取り組み続けなければならないためです。(笑;)最終日の期末試験は2時間半の長丁場で、試験を終え、鉛筆を下に置いたときには拳の裏が真っ黒でした。試験をようやく終えた夕方4時には、嬉しいと感じるどころか、急いで寮に戻って夕方6時までに引っ越す準備を始めねばなりませんでした。少しずつパッキングはしていたものの、期末期間中はほとんどできず、寮での最後の二時間は忘れもしないパッキング作業との激闘でした。引っ越し間際まで試験勉強やパッキングに忙殺され、一年間お世話になった友人一人一人、特にルームメイトとじっくりお別れもする時間がない状況に悲しくなり、パッキングを必死にしながら涙が出てきました。すると、ルームメイトをはじめ、残った寮のフロアメイトたちが全員私の部屋まで集まってくれて、「私も手伝うよ!」と総動員でパッキング作業を開始しました。どこの引っ越し業者かと思うような光景でしたが(笑)、友人たちが手伝ってくれたおかげで、お世話になった友人たち一人一人と涙の別れを惜しむことができました。ルームメイトのアレックスをはじめ、寮の友人はこの一年間で私の家族となり、最後まで本当に彼らに助けられました。ありがとう。

引っ越し〜寮の友人たちとの別れ〜 中央はルームメイト

 

 

Global Crossroads寮のお別れパーティーでの集合写真

3.困難と挑戦
この一年を振り返ると、様々なハプニングや危機に直面し、海外ではその都度自分で考え、自分でなんとかしなければならない場面が多々ありました。その一方で、時に人の優しさや親切に救われることもありました。

冬期南米ペルーの海外研修を終え、リマからアメリカに戻る時のことでした。アメリカ人の教授とクラスメイトたちはスムーズに入国審査を通過できたのですが、日本人の私は入国審査に2時間かかったため、クラスメイトとの団体飛行機に乗り遅れ、ただ一人フロリダに取り残されたことがありました。どうしたらいいのかも分からず、取り残されてしまったのでまずは航空会社のカウンターで事情を説明し、キャンセル待ちの振替便でようやく四時間後に飛行機に乗れました。あの時は、さすがに心細かったですが、まずは冷静に考え、自分でなんとかしなければとの気持ち一心でその危機を乗り越えることができました。

またある時は、ボストンからシャンペーンまでの飛行機が途中で急にキャンセルになり、シカゴで塞き止められてしまったことがありました。航空会社のカウンターで他の乗客と共に抗議をしましたが、天候が理由で振替便の手配も無く、残された手段はLEXバスという悪名高いバス会社だけでした。飛行機のキャンセルで流れてくる乗客をいいことに、普段より割高の値段でシャンペーンまでの席を販売していました。翌日は中間試験もあり、絶対に帰らなければならない状況でしたが、バス会社は現金しか受け付けないとのことで、中には私を含め、現金が手元に無い学生が多く、バスに乗れずに困っていました。「これだと中間試験までに帰れない」と途方にくれていたところ、その場にいた人たちが幸いにもとても親切で、「あなたたち現金が手元にないなら、私が立て替えるわよ!払うのは着いてからで良いから。」といって数人のおばさんたちと学生が力を合わせて助け合い、なんとか全員バスに乗れました。シャンペーンという中西部出身の人たちだからなのでしょうか、あの時は彼らの親切に救われました。

こうして直面した様々な困難も、留学中の素晴らしい経験も、日本イリノイ同窓会をはじめ、両親の支援があってこそ可能だったのであり、その多大なご支援と温かいサポートを常に実感しました。留学の閉幕が切なく感じるのは、留学先で出会った友人や教授が私を変えるかけがえのない一部となったからなのだと思います。JICへの応募がイリノイ大学への留学という新たな扉を開けてくれたように、今後はUIUCでの留学経験を新たな挑戦へのステップにしていきたいと思います。
留学を通して大変お世話になりました日本イリノイ同窓会の皆様と両親にこの場を借りて感謝申し上げ、最終レポートの報告とさせていただきます。

奥谷聡子さんの2013年4月分奨学生レポート

シャンペーンは木々が芽吹き始め、うららかな春の日差しが心地よく感じられる季節になりました。 1週間前とは一変して、キャンパスはTシャツ姿で道ゆく学生で溢れています。友人に、”Satoko, there are only two seasons in Illinois. Summer, and Winter” と言われ、なるほどねと笑ってしまいました。 留学生活も残すところ、4週間となったところで4月分のレポートをお送りさせていただきます。 今レポートは、Ⅰ授業、Ⅱ課外活動、Ⅲ寮生活の3点についてご報告いたします。

日本館の桜も芽吹きはじめました。

Ⅰ授業 PS283 International Security [Professor. Steve Miller]  この授業では、国際政治における安全保障とアメリカの外交政策について学んでいます。 講義の他に、国務省の現役外交官によるスペシャルレクチャーなどもあり、大使館での勤務経験や、9.11直後のホワイトハウスと国務省、防衛省の舞台裏について生の声を聞くことができました。毎週金曜日のディスカッションセクションでは、授業で学んだ理論をもとに、中国の安全保障ジレンマ、イランの核開発、テロリズム、人道的介入などについて議論しています。  最近、印象に残ったディスカッションでは、核外交と原爆投下の正当性について議論しました。TA[Teaching Assistant]が「あなたたちが仮に大統領だったら、広島、長崎に原爆を投下しますか?」とクラスに問いかけたところ、多数のアメリカ人学生たちが是と答えました。その理由としては、原爆は地上戦がもたらしていたであろう犠牲者を救い、戦争を早期終結させるための必要悪であったとの見方がアメリカでは一般的だからです。他方で、私は 当時の日本の悲惨な経済状況や軍の劣勢という観点から原爆投下は戦争の結果に影響はなかったと主張しました。感情論だけで話しても相手には伝わらないと感じたので、できるだけ論理的に伝えようと努めた一方で、原爆に対する議論が論理一筋で、そのドライな空気に違和感をも隠せませんでした。アメリカで 原爆の非人道性は誰が伝えるのでしょうか。「安全保障とモラルはそもそも相容れないものなのだ」と力説する米軍幹部候補生を見て、正直、アメリカの、そして世界の将来に懸念を覚えました。

PS199 Undergraduate Open Seminar: U.S. State and Local Politics [Megan Remmel] この授業では アメリカの連邦政府と州政府の憲法や法律、権限の違いについて学んでおり、今学期最も興味深い授業です。なぜかというと、アメリカの政治文化や宗教、人種の多様性は連邦制という政治システムに鍵が隠されているということをこの授業が現実の出来事と繋ぎ合わせてくれたためです。授業では、現在まさに話題沸騰中の銃規制、同性結婚、麻薬の合法化、妊娠中絶などを巡る問題について扱っています。州の政治文化はこれら全ての議題と深く関連しています。例えばイリノイ州は、リンカーン大統領の地として有名である一方で州政府の汚職スキャンダルが全米ランキング11位、C評価と悪名高くもあります。イリノイの政治文化は古くから個人主義的であり、政治はあくまでも功利的観点からプロに委任すればいいと多くの人が考えています。 同性結婚や妊娠中絶に関しても、イリノイは比較的リベラルなのに対して、州を一歩外に出たインディアナ州では対照的な政策が推進されていたりします。アメリカと一言で言えども、カリフォルニアとユタ州は全く異なり、土着の政治文化が地域特有のアイデンティティと価値観を形成しています。本来なら連邦法で違法なことが、州レベルでは合法であったり、ある州で違法なことでも他州に移動すれば合法であるなど、連邦政府と州政府間だけでなく、州政府同士の対立が複雑な問題を生み出しています。 ファイナルペーパーでは、イリノイ州とユタ州の妊娠中絶政策について現在リサーチを進めています。

GLBL250 International Development [Prof. James Kilgore] この授業では、国際開発について学んでおり、教授はジンバブエに20年間滞在経験があるアフリカ開発分野のプロです。授業スタイルも少人数制ディスカッションで、教授に学生一人一人の顔と名前を覚えてもらえる親密な形式になっています。毎週リーディング課題とグループプレゼンテーションをしなければならないので、準備が大変な授業ですが、「グローバリゼーションと開発の矛盾」について執筆した中間ペーパーが、優秀論文に選ばれたのはとても嬉しかったです。現在はファイナルプロジェクトとして、開発に関するドキュメンタリーの制作にパートナーとともに取りかかっています。最後の授業日に教授のご自宅でポットラックをしながら、プロジェクトの最終発表をするのを 今から楽しみにしています。

PS282 Governing Globalization [Prof. Konstantinos Kourtikakis] このコースでは、グローバル化が各国の外交政策や環境保護政策、人権、貿易、国家主権に与える影響について学んでいます。人、モノの国境移動が盛んになるにつれて、世界経済の融合と国家間の連携深化が増々進んでいます。多国籍企業が世界のあらゆる地域に拡大する一方で、インドネシアのNike Sweatshopsでは労働者の人権侵害が、ナイジェリアではShell Oilによる環境破壊が今なお行われています。世界的な富裕層が増大していく一方で、未成熟な発展途上国の経済はグローバル化の波についていけず、先進国でも中流階級が没落し、貧困化する現象が起きています。世界は豊かになっているはずなのに、海の向こう側の市民の人権侵害や環境破壊の犠牲の上で成り立っているという矛盾をこの授業で映像やディスカッションを通して分析しています。Joseph StiglitzやThomas Friedman、Saskia Sassen など大変興味深い文献を授業では取り扱っています。

 

Ⅱ課外活動

St.Louis Blues チームのロゴ

NHL プロアリーナで試合 2月23日にミズーリ州にあるプロNHLチーム、St. Louis Bluesのホームアリーナで(Scottrade Center http://www.scottradecenter.com/ ) アイスホッケー部の遠征試合を行いました。ホッケー選手の誰もが夢見るNHLのプロアリーナで、米国留学一年目の私が、幸運にも人生でおそらく最初で最後にその氷上を滑ってきました。それだけでなく、公式レフェリーのロッカールームを使用させてもらえ、カナダのアイスホッケー連盟本部に直通する有名な赤い電話機にも直に触ってきました。試合は残念ながら負けてしまいましたが、そんなことは気にもせず、人生に一度の経験をさせてもらえただけでチームメイトは皆大満足でシャンペーンに帰ってきました。笑

St.Louis Blues のホーム、Scottrade Centerのリンクでチーム集合写真

決勝プレイオフ 3月8日から10日にかけてRomeoville, ILのCanlan Ice ArenaでWomen’s Central Hockey Leagueの決勝プレイオフが開催されました。この日に至るまでに、毎週2日間の深夜練習を7ヶ月重ね、週末はチームメイトと長時間ドライブをして試合へ遠征し、シーズン計14試合を経て、ようやく決勝プレイオフへの切符を手に入れました。1試合目から私たちは強豪チームにぶつかり、第2ピリオドの終盤でゴールキーパーとの一騎打ちになり、私がゴールを決めました。激戦の末、試合結果は3試合とも同点引き分けになり、僅差で決勝戦には進めませんでした。でも、Illini Women’s Hockey B Teamチーム史上最高の成績をプレイオフで残し、私もその歴史に足跡を刻んできました。最終試合直後のロッカールームは、悔し涙を流すチームメイトたちでしばらく静まり返っていましたが、私の中では悲しいという気持ち以上にチームへの感謝の気持ちが溢れて涙が止まりませんでした。普段は厳しいコーチのAdamが最後に私のところへ来て、「チームに加わってくれて本当にありがとう。君はこのチームに欠かせない一員だった。」と目を真っすぐに見て言ってくれました。イリノイ大学での留学生活を振り返ると、アイスホッケー部に入部して本当に良かったと心から思います。ホッケー部のおかげでたくさんの友人に恵まれ、チームワークの真の意味を学びました。 チームワークとは、仲間意識ではなく、異文化から来た人たちの集まりでも、多様性を活かして同じ目標に向かって連携することなのだと思います。チームに所属しているからといって、チームの一員になれるわけではなく、自分にできることを考え、行動に移して、はじめて周囲のリスペクトを得られるのだと学びました。たくさんの思い出を与えてくれたチームへの感謝の気持ちを込めて、プレイオフ直前にムービーを作成して贈ったら皆涙を流して喜んでくれました。以下のリンクからムービーをご覧になることができます。 http://www.youtube.com/watch?v=ShFf9vVDBI8

プレー中の写真

青春のシーズンは3月10日を以て幕を閉じましたが、隣町のBloomingtonのコミュニティリーグに友人たちとチームを組んで、帰国までの4週間、アイスホッケーを続けることになりました。今月末に学年末のTeam Banquetが企画されているので、次回の最終レポートでご報告できればと思います。

Final Game前の円

Ⅲ寮生活                                                       Global Crossroads Chicago Trip 4月6日から寮(Global Crossroads)企画で1泊2日のシカゴ旅行に出掛けてきました。Global Crossroadsの学生限定でバスを貸し切り、Shedd AquariumやNavy Pierへ行き、ミシガン湖の湖畔を自転車でサイクリングをしました。夜は、Second City Comedy Clubでコメディーショーを楽しみ、シカゴのナイトライフを満喫してきました。Living Learning CommunityはLLC限定の旅行企画やイベントも盛りだくさんあり、特にGCは皆仲が良く、疲れた日も寮に帰ると暖かい仲間に囲まれ、今や皆私の家族です。

Navy Pierにて友人たちとジャンプショット

刻々と近づく4週間後の別れのことを考えると、正直切なさが込み上げてきますが、尊敬できる大切な友人に出会えた奇跡や その人たちとの思い出はこの先消えること無く、 一生私の人生のかけがえのないかけらであり続けるのだと思います。

私の座右の銘に「一期一会」という言葉があります。 千利休の茶道の心得ですが、「誰かと出逢っているこの時間は二度と巡っては来ないたった一度きりのものである。だから、この一瞬を大切に思い、二度とは会えないかもしれないという覚悟で人に接しなさい。」という意味が込められています。

残すところ4週間の留学生活、この言葉を心に留めて過ごしていきたいと思います。 最後になりましたが、いつもご支援いただいている日本イリノイ同窓会の皆様と両親にこの場をお借りして感謝申し上げ、第3回のレポートとさせていただきたいと思います。

奥谷聡子さんの2013年2月分奨学生レポート

JICの皆様、ブログを読んでくださっている皆様、お久しぶりです。
Spring Semesterが始まり、留学生活も折り返し地点をすぎたところで第二回のレポートをお送り致します。

渡米前に先輩方から忠告されたイリノイの冬を逃避すべく、冬休みは南米ペルーに行ったはずなのですが、シャンペーンは先週、外気温13℃の日が続き、1月にTシャツでキャンパスを歩き回るほどでした。今週に入ってからは寒い日が続き、少し雪も積もりましたが、こんな絵がFacebookで出回るほどでした。

さて、今回のレポートではⅠFall Semesterの総括、ⅡWinter Break、ⅢSpring Semester授業内容 、Ⅳ. 課外活動の4項目についてご報告いたします。

Ⅰ.Fall Semester 総括

•    Homecoming Game
10月27日はイリノイ大学vsインディアナ大学のHomecoming  Gameでした。Homecoming Gameとは大学のアラムナイたちを年に1度母校に迎え、アメフトの試合を学生と一丸となり 応援する伝統的、且つ秋学期最大のイベントです。日本でいう、早慶戦のようなイメージでしょうか。試合前のスタジアム周辺はTailgateといって、バーベキューやお酒、Cornhole(輪投げのようなもの)などのゲームを楽しむ大勢の人で賑わい、試合開始までには6万人のスタジアムが満面オレンジ一色に染まりました。 神宮球場の2倍の大きさのメモリアルスタジアム内はアラムナイと学生一同、大学のプライドと声援で溢れ、もの凄い迫力でした。

Fighting Illini vs Indiana、メモリアルスタジアムにて。

•    期末試験
秋学期の期末試験は筆記試験が1つ、プレゼンテーションが2つ、そしてペーパーが2つありました。期末試験の1週間前からGrainger Libraryに引き籠ってはひたすら試験勉強をしました。期末期間中は朝一に図書館に行かないと満席で座れないほど混みます。”No judgment during finals”とは学生たちがよく口にする言葉ですが、試験前になると窶れた顔とスウェットやパジャマ姿でキャンパスを道行く学生が激増します 。(笑)

期末期間中のGrainger Library内の様子。中央のテーブルに座る筆者。

睡眠不足の学生で陰鬱な雰囲気がキャンパスを漂う中、大学の学長からは学生たちに向けて応援のビデオメッセージが送られたり、FacebookではAlma Materが勉強に勤しむ学生の写真をフィードで流したり、University Housingにより全ての寮とIllini Unionで無料のコーヒーとクッキーが24時間支給されるなどしました。大規模な大学でも、 こうした大学の学生に対する小さな思いやりやサポートに感激しました。前回のレポートでも触れましたが、アメリカの大学では日々の課題や中間試験が多いため、期末試験一つにかかるウエイトとプレッシャーは日本より少なく感じました。

Ⅱ. Winter Break
今年の冬休みは絶え間なく旅をして回りました。
期末直後はリンカーンの地として縁あるSpringfieldに住むクラスメイトの家を訪ね、リンカーン博物館や数フィートの厚さの棺とコンクリートに囲まれたリンカーンの地下墓所なども巡りました。クリスマスにはニューヨークへ友人と行き、27日にオヘア空港へ戻った翌朝からは南米ペルーへ向けて出発しました。以下にペルーの海外研修について詳しく報告します。

•    GLBL298 International Development and Role of NGOs [Urubamba, Peru Prof. Laura Hastings]
12月28日から約2週間、南米ペルーへGlobal Studiesの授業で海外研修へ行ってきました。滞在したのは、Urubambaという標高2870メートル、人口2700とイリノイ大学の14分の1しかない大きさの町でした。ガイドブックの片隅にある日常会話ほどのスペイン語しか話せない私でしたが、現地に到着してから早速スペイン語しか話せないホストファミリーとの2週間の生活が始まりました。
この授業は国際開発と発展におけるNGOの役割を学ぶことが目的であり、2週間ProPeruという国際NGOでボランティアをしました。ペルーでは衛生的な水道が発達しておらず、飲料水も歯を磨く水も購入するか、家でお湯を沸かして使うしかありませんでした。衛生的な水にアクセスがないので、多くの子どもはInka Kolaというソーダばかり毎日飲み、歯が溶けてなくなっていました。また、衛生的なストーブが家庭にないため、呼吸障害や盲目に苦しむ女性と子どもも多くいました。初めて発展途上国へ行き、こうした現実に直面したことは もの凄い衝撃でした。
私たちのクラスはProPeruと共に毎朝山奥にあるTambbococchaという村へ登り、衛生的なストーブや水道フィルター、棚などを造りました。セメントや高度な機械はないので、レンガと泥(Barro)に全身まみれながら建築作業に励みました。

ストーブ完成後の作業チームとの写真

朝8時から夕方5時の仕事が終わった後は、Urubambaへ戻り、ホストファミリーと時間を過ごし、夜の7時からは授業です。作業に取り組む傍らで、私たちのプロジェクトの意義について自分自身の中で葛藤もありました。現地の人たちは開発や経済発展に対して受け身姿勢で、我々のプロジェクトは持続的なのか、西洋の価値観を押し付けているだけなのではないかとも度々悩みました。
この他に、生活面、文化面でも困難が多く待ち受けていました。到着して早々、高山病にかかり、2日ほどフラフラになりながら山を登っては仕事に行き、ようやく体が標高に調節してきたところで今度は水が原因で下痢に見舞われました。(笑)健康面では散々な目に遭いましたが、だからこそ発展途上国が抱える深刻な問題を身を以て実感しました。
ホストファミリーの家では、私の部屋は屋外の小さな小屋にあり、シャワーもトイレも屋外にありました。しかし、お湯が出ないので2週間凍える寒さのシャワーを浴びていました。携帯やインターネットもないため、最初は不便でしたが、次第に時間の流れがゆっくり感じられ、気付けば日本やアメリカにいたときより遥かに多くの時間を誰かと共に過ごし、会話を楽しむようになっていました。ペルーの家庭で昼食を食べるとなると最低2時間は必要だというのはよく言われることなのですが、お昼になると、父親も職場からわざわざ家に戻り、家族団欒食事をするのが文化的習慣です。当初は全くスペイン語が話せない私でしたが、身振り手振りで言いたいことが伝わったときは家族全員テーブルを囲んで「オー!!!」との歓声で大盛り上がりでした。
インターネットも、熱いシャワーも、洗濯機もない生活かもしれないけれど、私のホストファミリーは皆幸せで、ペルーは人を大切にする文化の国だと感じました。彼らとの生活を通して、開発や発展について自身の定義を見直すようになりました。研修最後は涙を流しながら家族と抱き合い、別れを惜しみました。

最終日、ホストファミリーと家族写真

Ⅲ.Spring Semester 授業
さて、今学期は以下の授業を履修しています。
PS343 Government & Politics of China
PS283 International Security
PS282 Governing Globalization
GLBL250 International Development
PS199 Undergraduate Open Seminar: US State & Local Politics

今学期は専攻分野を中心に、ディズカッションやプレゼンテーションが多い少人数制の授業を履修しています。特に、PS199のState and Local Politics は興味深く、昨年12月にコネチカット州で起きた銃乱射事件を機に再燃している銃規制や、麻薬(マリワナ)の合法化などを巡って、連邦政府と州政府の法律の違いや権限や役割について学んでいます。詳しい科目内容については、試験等と併せて、次回の奨学生レポートにて報告させていただきます。

Ⅳ.課外活動
•    Habitat For Humanity
Habitat For Humanityとは、貧しい家庭や被災した家族の住まいを再建する活動をしているNGOです。私はイリノイ大学の学生チャプターのボランティアとして週末に活動しています。2年前にニューオーリンズでハリケーンカトリーナの復興ボランティアに携わったのが参加のきっかけになりました。このボランティアを通して、アメリカ国内の至る所にも人種格差や貧困問題が存在することを再認識させられました。釘とトンカチを両手に週末は地域の人と協力しながら建築作業に励んでいます。

•    Illini Women’s Ice Hockey
春学期も毎週月木の二日間、夜11時から深夜1時までキャンパスのアイスアリーナでアイスホッケーの練習に励んでいます。練習は厳しく、 コーチに何度も怒られたり、チームメイトとのコミュニケーションに思い悩むことも度々ありましたが、昨年最後のホーム試合で嬉しい出来事がありました。最終ピリオドで私が初ゴールを決め、試合終了後にロッカールームに戻ったらチームメイトたちが勢揃いし、コーチが全員のサイン入りのホッケーパックを私に贈呈してくれました。あの時の気持ちとホッケーパックは一生忘れられない宝物です。私たちのチームは秋学期のリーグを4位で勝ち抜いたため、春学期の決勝プレイオフに進めることがつい先日決まりました。残すところわずかな部活動、悔いのないよう全力で突き進みたいと思います。

シカゴの遠征試合でチーム集合写真

イリノイ大学での留学生活も残すところ3か月半になってしまいましたが、 勉強に運動に遊びに悔いのないよう、全力で臨みたいと思っています。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

奥谷聡子さんの2012年11月分奨学生レポート

イリノイ大学日本同窓会の皆様、ブログを読んでくださっている方、こんにちは。2012年度小山八郎記念奨学生の奥谷聡子です。
こちらに来てから早2ヶ月が経ちました。到着直後の真夏日和から一変して、シャンペーンは日に日に秋が深まり、落ち葉舞う肌寒い季節に入って参りました。
今回のレポートでは、
Ⅰ 到着
Ⅱ 授業
Ⅲ 課外活動

の3点についてご報告いたします。

Ⅰ. 到着
8月21日に日本を出発し、シカゴ経由でシャンペーンへ向かいました。ウィラード空港行きの飛行機は30人乗りくらいの超小型飛行機で、 CAもアメリカンクオリティーこと、まったりしたおばさんで、離陸前の安全確認デモで、ライフジャケットをあちこちの棚を開け閉めしては探し回っているうちに上空にいました。こんな調子で半信半疑にシャンペーン上空を飛んでいると、見渡す限りトウモロコシ畑と平地が続き、 まるで絵に描いたように緑が広がっていました。到着すると、驚いたことに空港は大学の敷地の一部で、学生たちが案内係として待ち構えていてくれていました。到着直後は留学生オリエンテーションや新歓イベントなどが27日の授業開始までぎっしり詰まっていました。初日から昼は中庭でアウトドアゲームやキャンパスツアー、Scavenger Huntなどがあり、夜はMovie NightやIce Cream Social、Catch The Flag, Illinightというパーティーが催されていたり深夜までイベントが盛りだくさんでした。時差ぼけに負けじとふらふらになりながらオリエンに全参したので、体力的に疲れましたが、何より学校の楽しいイベントにたくさん足を運べましたし、寮のメンバーと親しくなるとても良い機会でした。
Quad Day(新入生歓迎イベント)では大学の300を超える団体が1日でクラブやサークルの勧誘活動を行うため、もの凄い人たちでキャンパス中心部は賑わい、無料のシャツやペン、食べ物で学生たちを自分たちのブースに釣っていました。私も寮の友人と無料のものを求めて得体の知れないブースもたくさん回ったので、帰って鞄を開けたら、ペンやサングラス、コップ2つと聖書までまじっていました。オリエン期のキャンパスは一年間で最もイベントで盛り上がる時期と言えるでしょう。

Ⅱ授業
今学期は以下の授業を履修しています。
CMN101 Public Speaking
GEOG110 Geography of International Conflicts
PS280 Intro to International Relations
GLBL 298 International Development and Economic Growth

CMN101 Public Speaking
こちらの大学に来て驚いたのが、幅広いコースが専攻分野以外にもオファーされているということです。私は国際政治専攻ですが、このパブリックスピーキングのコース以外にシネマスタディーズ、生け花、ブラックコーラスなど様々な授業を履修することができます。
留学先では日本の大学にはない参加型の授業を履修したかったので今学期はこの授業を選びました。この授業はTA(Teaching Assistant)という大学院生が教えており、20人の小規模クラスです。この二ヶ月の間に既に3つのスピーチを行いましたが、毎回決められた形式にそって、小道具やパワーポイントを用意してクラスで発表します。今のところ 最も面白かったのがDemonstration Speechでした。スピーチの条件は聴衆参加型、6分以内ということで、私は日本文化の紹介を兼ねて巻き寿司(Californian Roll)を作りました。他の学生は、紙飛行機、折り紙、サルサ、ケーキの作り方、ヨガのやり方、椅子の座り方(笑)、などと幅広いトピックについて披露しました。
しかし、やっぱり食べ物系は盛り上がりますね。寿司を作るというと、周りの学生は皆”I’m so excited!”と楽しみにしてくれて、前夜に予め全員分作って当日はスピーチの後で皆にまわしました。
日本でも一人で寿司を作ったことがない私が外国人に食べさせるとなったら、もちろん特訓の日々ですよ。 授業課題や課外活動の傍らで、深夜、寮のキッチンで寿司を作る(創る)私の姿が健気だこと。イリノイの地に来てこんなことにも挑戦してます。
ちなみに巻き簾 は”SUSHI KIT”という胡散臭いのをアマゾンで注文し、どんな変梃な巻き簾が届くのかとドキドキして待っていましたが開けたら意外とちゃんとした巻き簾でした。ということで、当日は調理アシスタントのボランティアを募り、クラスの皆にもスピーチを喜んでもらえました。

PS280 Intro to International Relations(Prof. Laura Hastings)
私は現在Global CrossroadsというLiving-Learning Community(LLC)に住んでいますが、LLCの学生限定にオファーされているPS280のコースを履修しています。このコースは特に将来外交官や国際機関を目指す人や、国際交流に興味を持っている学生たちが集まっています。したがって人数も20名と小規模で、寮の小さい教室で授業を行っています。この授業はもの凄く課題が多く今学期最も大変な授業です。宿題は毎週ペーパー課題2つと毎授業リーディング課題が100ページ相当出ます。この授業のおかげで月々の印刷代が15ドルかかっていたので、ついにプリンターを買いました。ペーパーもリーディング課題のリスポンスで、授業も参加型なのでリーディングをこなさないと授業についていけません。最初はリーディング課題を読むだけでも必死でしたが、今は大分速く読めるようになり、ペーパーもUndergraduate Library(UGL)のWriters Workshopで添削してもらって効率よくこなせるようになってきました。Writers WorkshopとはEnglish Majorの院生が図書館で論文のアドバイスや添削をしてくれて、留学生だけでなくたくさんの学生が活用している便利なコーナーです。
この授業ではMarxism, Realism, Liberalism, Constructivism など国際政治の理論を色々な文献を扱って学び、ディスカッションを通して国連、ルワンダ紛争、尖閣問題、多国籍企業の役割などを様々な理論的視点から分析しています。この他に、グループに別れて模擬国際会議を行うという面白いアクティビティも行っています。リビア紛争において国際政治の主体がどのように行動したか分析すべく、私と一人のクラスメイトはAfrican Union、他はNATO、UN、USA、Libya、EUに別れて、それぞれの立場から会議で交渉を行います。大学のクラスルームでも、交渉のスイッチが入ると、学生たちに熱が入り、実際に国際政治の舞台で起きた交渉過程が見事に再現され、実に面白かったです。課題は大変ですが、国際政治における力関係や国家と国際機関の役割を実践的に学ぶことができ、教授も非常に熱心な方なのでおススメの授業です。

GEOG 110 Geography Of International Conflicts (Prof. Colin Flint)
この授業は週3回あり、うち1回はレシテーションの構成になっています。今日起きている国際紛争を取り上げ、それを個人、国家、グローバルなスケールから分析し、対象地域の位置や歴史、人種、宗教、政治団体、国境形成が地域のアイデンティティと紛争にどう関連するかを学んでいます。この授業のレシテーションも実に面白い授業の一つで、戦争の大義名分というトピックの回では、アメリカが過去に介入した戦争や、一般的にタブーとされている戦争のトピックについて話し合いました。その中にはベトナム戦争やグアンタナモ収容所の人権侵害、第二次世界大戦における日系人の収容、9.11後のイスラム教徒への人種差別、真珠湾攻撃と広島原爆のトピックなどがありました。Pearl Harborの議論になったときは教室内の日本人として少し肩身の狭い気持ちになりました。アメリカでは、真珠湾は本土に仕掛けられた屈辱的な攻撃で原爆投下は戦争を早期終結させるための正当な行為だったという認識が一般的だからです。
しかし、この授業で印象的だったのは、偏った歴史認識だけでなく、アメリカの原爆投下の人道に対する罪としての認識が普段取り上げられないことにも着目したことでした。軍隊の批判を公で議論することがタブーな風土があるなかで、この授業ではアメリカ人を含め世界中の学生と多様な歴史認識について議論できたのが興味深かったです。

GLBL 298 International Development and Economic Growth; Peru, Urubamba
この授業はUIUCのStudy Abroad Officeが開講しているFaculty-Led Programの一つで、冬期休暇中の海外研修プログラムです。10月半ばから授業が始まり、毎週レポートとペルーでの現地研修、帰国後のレポートとプロジェクト提出で3単位受けることができます。このプログラムを選んだ理由は、国際開発に関心があり、南米の発展途上国で現地のNGOと連携し、草の根から開発という問題に取り組みたかったためです。 このコースでは、発展はどのような過程で起きるのか、先進国の援助は現地の発展にどのような影響があるのか、発展の過程における女性の社会的役割などについてコミュニティワークを通して包括的に学びます。今年の冬休み期間を利用して、ペルーでの現地研修では、ローカルなNGOと連携し、衛生的な水道フィルターの製造や、安全な家庭用ストーブの製造に実際に携わり、加えてホストファミリーと共に生活します。授業は15人と小規模で、毎週の授業もキャンパス周辺の喫茶店で夜8時半から集まり、円卓を囲んでディスカッションを行っており、アットホームな雰囲気があります。

Ⅲ課外活動

・Illini Women’s Ice Hockey Team
こちらに来る前から運動系のクラブチームに入ることを決めていましたが、イリノイ州はアイスホッケーが盛んなことで有名なので、アイスホッケー部に入部しました。Quad Dayにスポーツクラブのメーリングリストに登録すると、トライアウトの連絡がくるので、アイスホッケー部のトライアウトに参加し、初心者ですが無事合格しました。練習は毎週2回、夜の11時から大学のアイスアリーナで1時間半やります。どんなに勉強が忙しくても、練習に間に合うように課題を終わらせ、運動するとストレスの発散にもなるのでとてもメリハリのある生活をしています。また、チームメイトの家でApartment Crawlや パーティーなどのTeam bondingもあるので現地の学生と仲良くなれますし、スポーツ特有のチームワークや団結も生まれ、とても楽しんでいます。これまで二回ホーム試合があり、寮のメンバーが横断幕を作って全員で応援に駆けつけてくれたのが非常に嬉しかったです。

           アイスホッケーチーム集合写真(筆者は白側3列目中央から2人目)

・Volunteer at Eastern Illinois Food bank
9月29日にEastern Illinois Food bankの “Food for Families”という募金活動の有志ボランティアに参加しました。U of I vs Penn Stateのフットボール試合の日程に合わせて、メモリアルスタジアムの前で午前8時から12時までイリノイ大の学生たちと募金活動に励みました。募金のコンセプトは、「1ドルで4食分の食事を」ということで、寄付金はイリノイ州に暮らす貧しい子どもや家族に分け与えられます。募金活動では同じチームのメンバーで面白い掛け声を練りだしては、大声で歌いながら試合を観戦しにきたファンたちの募金を募ります。 “1,2,3,4, donate change or donate more, 5,6,7,8 Donate to the food bank!” と道行く人たちに声をかけては、募金してくれた人にはチーム一同で”WOOOOOOO!! Who’s awesome, YOU’RE awesome!!!” とかハイテンションに声援をかけました!日本の募金活動とはテンションが違って、アメリカの募金カルチャーというものに触れたような気がします。ジュースのお釣りでも、20ドル札でも、自分が稼いだお金を他の人のために捧げてくれたのだから、募金してくれたその一時くらい道行く全ての人がわかるようにその人の行為を称え、感謝の気持ちを精一杯見せるという精神でしょう。「ありがとう!最高だよ!」なんて声をかけてもらった人たちも皆嬉しそうな笑顔で、「掛け声頑張ってるね!」なんて言ってくれました。そういうcharityの精神に共感できました。私たちのこの活動は現地のニュース番組にも取り上げられました。

           メモリアルスタジアム前の募金活動の模様、筆者は左から3番目

・日本語教室
毎週火曜日の夕方30分間、寮のメンバーに日本語を教えています。
日本語を教えながら、文化の違いの発見があったりして私も学ぶことが多いです 。たとえば、先日教えた「こんにちは」Konnichiwaでは文化によって時間の感覚の違いがあることを実感じました。外国人は「こんにちは」を英語でいうHi!という感覚だと思っています。なので、朝でも昼でも夜でも全部Konnnichiwa!だと思っています。でも、実はこんにちはを夕方6時くらいに使ったらおかしくて、6時以降は「こんばんは」なんだと言うと”Oooooooooooo!!!”と歓声が(笑)
自分でも言いながら、普段無意識にやっている習慣が文化的なものであって、他の文化からすると驚くようなことなのだと改めて自覚させられました。
こんな調子で楽しくやっています。ちっぽけな日本語教室ですが自分なりに日本を魅力的に、面白く、且つ興味が湧くように世界の学生に伝えたいと日々奮闘しております。

              日本語教室の授業模様、寮の共同ラウンジにて

長文になってしまいましたが、二ヶ月間学業に課外活動にメリハリよく生活しています。航空会社が荷物を紛失し、一週間届かないなど色々なトラブルにも直面していますが、その都度冷静に考え、行動力をもつことの重要性を日々学んでいます。
最後になりましたが、JICの皆様をはじめ、応援してくれている家族や友人、先輩や後輩にこの場をお借りして感謝申し上げ、第1回レポートを終えさせて頂きます。いつも温かいご支援を頂き、本当にありがとうございます。
今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

    イリノイ大の体育会Barn Danceへ向かう満員バスの中。ホッケーのチームメイトたちと

奥谷聡子