JICの皆様、そしてレポートを読んで下さっている皆様、ご無沙汰しております。早いもので留学を終えてから3ヶ月が経とうとしており、現在は8月末の大学院入試に向け準備を進めているところです。この最終レポートでは、2月の奨学生レポートの続きとして留学生活の報告と総括をさせて頂ければと思います。
私にとって今回の留学でのメインはやはり授業だったと思います。東大では国際交流サークルやピアノサークルなど様々な課外活動に手を出してきたので、イリノイでは勉強に専念しようと授業主体の生活を送ってきました。 留学の目的の一つに全米でもトップクラスの専攻で専門性を高めるということがあり、春学期はCivil Engineering(土木工学)の授業を中心に履修しました。中でも大学院生向けの講義(500番台)を中心に履修してきましたが、そのことで①その分野の先端技術に触れることができた、②レベルの高い院生と議論し切磋琢磨する機会を得られた、③数学やプログラミングなどの基礎能力を向上できた、④トップクラスの大学院の授業でそれなりの成績が取れたことが自信につながった、といった成果がありました。将来海外の大学院へ留学することも視野に入れていますが、その時には今回の経験が大きく活きるのではないかと思います。
2月のレポートでも春学期の授業について書かせて頂きましたが、その後の経過について簡単にご報告させて頂きたいと思います。
・CEE491 Decision and Risk Analysis 確率・統計の授業です。統計の授業とは言ってもCivil engineeringへの応用を目的としたもので、課題や試験でも実例に基づく問題が多かったです。毎週の課題がかなり重く、毎週水曜の夜は睡眠時間を削って宿題と戦っていました。ですがその分力も付きましたし、統計学はかねてからしっかり勉強したいと考えていたので履修して良かったと感じています。
・CEE 498 High-Speed Rail Planning 交通工学というと私の専攻とはあまり関係のない分野ではありますが、以前から鉄道分野に興味があったため履修してみました。Final Projectはシカゴからデトロイト間に高速鉄道を建設する時のルートを、地形や人口データを用いて選定するというものでした。また最後のIndividual presentationでは、日本の新幹線技術とその特徴や経済効果について45分間プレゼンをし、その後のQ&Aでは、新幹線建設と国内政治との関係などについて議論しました。1人でここまでの時間プレゼンする機会はなかなかなく、英語の練習という意味でも良い機会だったと思います。
イリノイ大学では、Civil Engineeringに関する様々な学生団体が活動していて、授業とは別にセミナーやフィールドワークなどの機会が用意されています。ちょうど鉄道について学んだところだったので、帰国直前の5月にシャンペーン近郊にあるMonticello Railway Museumへのフィールドワークに参加することにしました。そこで線路の補修作業を体験したのですが、暑い中の土木作業は体力的にもかなりキツく、身の回りにあるインフラの有難さを身を以て実感しました(笑)

・CEE 528 Construction Data Modeling 建設マネジメントに関する授業で、BIM(Building Information Modeling)という3Dモデルを用いた建設管理の手法と、関連するCADソフトウェア(Autodesk Revitなど)の使い方を学ぶというものでした。後述するVisual Sensingの授業と併せて、日本の授業ではなかなか扱わないような内容を学べたと思います。
・ENG 571 Theory Energy and Sustainability Engineering 資源・エネルギーや環境問題に関する授業です。最後のTerm Paperで、自分でテーマを決めてresearchできる機会があると聞き履修を決めました。 Term Paperでは”Introduction of Real Options Approach and its Applications for Wind Power Project Evaluation”というテーマでレポートを書きました。具体的には、洋上風力発電の経済性をリアルオプション(金融工学のオプション価格理論を用いたプロジェクト評価の手法)を用いて評価するというものです。Paperを書く過程でFinanceについても勉強することができ、その知識は帰国後参加しているインターンシップにも活かすことができています。
・CEE 598 Visual Sensing for Civil Infrastructure Engineering and Management 先程のConstruction Data Modelingの応用とも言える授業で、画像処理を用いた建設管理の方法について学ぶというものです(例えば、画像認識技術を用いて建設作業が遅れているところを詳しく把握・管理するなど)。正直これまでの人生で受けてきた授業の中で一番難しかったといっても過言ではなく、Matlabを用いて画像を重ね合わせる課題などは最後まで分かりませんでした(笑) ですがテーマは非常に興味深く、プログラミング能力なども鍛えることができた授業でした。

Spring semesterでは授業の数もレベルも大幅に上げてみましたが、学習環境が良かったこともあり何とか乗り切ることができました。イリノイの授業では、日本のものと比べ教授が学生との対話を重視し、噛み砕いて分かりやすく説明しようとする姿勢があるように思います。またOffice Hourも充実しており、課題などで分からないことがあれば、教授やTAが質問に答えてくれる場がちゃんと用意されています。これらの学習環境に加え、毎週の課題など普段の努力が評価される授業も多いので、難しくても途中で挫折したり期末前になって大変なことになったりすることもなく乗り切れたのではないかと思います。 またイリノイの授業ではclass participationが重視されており、授業中でも質問したり意見を言ったりすることは全く恥ずかしいことではなく、的確な意見を言って議論の流れを作っていくことが歓迎されています。特にdiscussionの時間は何も言わないとまずい位の雰囲気があるので、とにかく何か発言しようと必死になって授業を聞くようになりました。ですので、知識面でも英語力の面でも授業一つ一つで得られるものは非常に大きかったと思います。
最後になりましたが、このような貴重な経験を与えて下さったJICの皆様はじめ、留学生活を支えてくれた家族や同期の奨学生に、この場を借りて感謝申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。