榊原侑利さんの2014年7月分奨学生レポート

JICの皆様、そしてレポートを読んで下さっている皆様、ご無沙汰しております。早いもので留学を終えてから3ヶ月が経とうとしており、現在は8月末の大学院入試に向け準備を進めているところです。この最終レポートでは、2月の奨学生レポートの続きとして留学生活の報告と総括をさせて頂ければと思います。

私にとって今回の留学でのメインはやはり授業だったと思います。東大では国際交流サークルやピアノサークルなど様々な課外活動に手を出してきたので、イリノイでは勉強に専念しようと授業主体の生活を送ってきました。 留学の目的の一つに全米でもトップクラスの専攻で専門性を高めるということがあり、春学期はCivil Engineering(土木工学)の授業を中心に履修しました。中でも大学院生向けの講義(500番台)を中心に履修してきましたが、そのことで①その分野の先端技術に触れることができた、②レベルの高い院生と議論し切磋琢磨する機会を得られた、③数学やプログラミングなどの基礎能力を向上できた、④トップクラスの大学院の授業でそれなりの成績が取れたことが自信につながった、といった成果がありました。将来海外の大学院へ留学することも視野に入れていますが、その時には今回の経験が大きく活きるのではないかと思います。

2月のレポートでも春学期の授業について書かせて頂きましたが、その後の経過について簡単にご報告させて頂きたいと思います。

・CEE491 Decision and Risk Analysis 確率・統計の授業です。統計の授業とは言ってもCivil engineeringへの応用を目的としたもので、課題や試験でも実例に基づく問題が多かったです。毎週の課題がかなり重く、毎週水曜の夜は睡眠時間を削って宿題と戦っていました。ですがその分力も付きましたし、統計学はかねてからしっかり勉強したいと考えていたので履修して良かったと感じています。

・CEE 498  High-Speed Rail Planning 交通工学というと私の専攻とはあまり関係のない分野ではありますが、以前から鉄道分野に興味があったため履修してみました。Final Projectはシカゴからデトロイト間に高速鉄道を建設する時のルートを、地形や人口データを用いて選定するというものでした。また最後のIndividual presentationでは、日本の新幹線技術とその特徴や経済効果について45分間プレゼンをし、その後のQ&Aでは、新幹線建設と国内政治との関係などについて議論しました。1人でここまでの時間プレゼンする機会はなかなかなく、英語の練習という意味でも良い機会だったと思います。

イリノイ大学では、Civil Engineeringに関する様々な学生団体が活動していて、授業とは別にセミナーやフィールドワークなどの機会が用意されています。ちょうど鉄道について学んだところだったので、帰国直前の5月にシャンペーン近郊にあるMonticello Railway Museumへのフィールドワークに参加することにしました。そこで線路の補修作業を体験したのですが、暑い中の土木作業は体力的にもかなりキツく、身の回りにあるインフラの有難さを身を以て実感しました(笑)

フィールドワーク終了後の集合写真。疲れました(笑)
フィールドワーク終了後の集合写真。疲れました(笑)

・CEE 528 Construction Data Modeling 建設マネジメントに関する授業で、BIM(Building Information Modeling)という3Dモデルを用いた建設管理の手法と、関連するCADソフトウェア(Autodesk Revitなど)の使い方を学ぶというものでした。後述するVisual Sensingの授業と併せて、日本の授業ではなかなか扱わないような内容を学べたと思います。

・ENG 571  Theory Energy and Sustainability Engineering 資源・エネルギーや環境問題に関する授業です。最後のTerm Paperで、自分でテーマを決めてresearchできる機会があると聞き履修を決めました。 Term Paperでは”Introduction of Real Options Approach and its Applications for Wind Power Project Evaluation”というテーマでレポートを書きました。具体的には、洋上風力発電の経済性をリアルオプション(金融工学のオプション価格理論を用いたプロジェクト評価の手法)を用いて評価するというものです。Paperを書く過程でFinanceについても勉強することができ、その知識は帰国後参加しているインターンシップにも活かすことができています。

・CEE 598 Visual Sensing for Civil Infrastructure Engineering and Management 先程のConstruction Data Modelingの応用とも言える授業で、画像処理を用いた建設管理の方法について学ぶというものです(例えば、画像認識技術を用いて建設作業が遅れているところを詳しく把握・管理するなど)。正直これまでの人生で受けてきた授業の中で一番難しかったといっても過言ではなく、Matlabを用いて画像を重ね合わせる課題などは最後まで分かりませんでした(笑) ですがテーマは非常に興味深く、プログラミング能力なども鍛えることができた授業でした。

プロジェクトで作成した建物の3Dモデル
プロジェクトで作成した建物の3Dモデル

Spring semesterでは授業の数もレベルも大幅に上げてみましたが、学習環境が良かったこともあり何とか乗り切ることができました。イリノイの授業では、日本のものと比べ教授が学生との対話を重視し、噛み砕いて分かりやすく説明しようとする姿勢があるように思います。またOffice Hourも充実しており、課題などで分からないことがあれば、教授やTAが質問に答えてくれる場がちゃんと用意されています。これらの学習環境に加え、毎週の課題など普段の努力が評価される授業も多いので、難しくても途中で挫折したり期末前になって大変なことになったりすることもなく乗り切れたのではないかと思います。 またイリノイの授業ではclass participationが重視されており、授業中でも質問したり意見を言ったりすることは全く恥ずかしいことではなく、的確な意見を言って議論の流れを作っていくことが歓迎されています。特にdiscussionの時間は何も言わないとまずい位の雰囲気があるので、とにかく何か発言しようと必死になって授業を聞くようになりました。ですので、知識面でも英語力の面でも授業一つ一つで得られるものは非常に大きかったと思います。

最後になりましたが、このような貴重な経験を与えて下さったJICの皆様はじめ、留学生活を支えてくれた家族や同期の奨学生に、この場を借りて感謝申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。

榊原侑利さんの2014年2月分奨学生レポート

JICの皆様、そして奨学生レポートを読んで下さっている皆様、ご無沙汰しております。前回の奨学生レポートの時期から早くも3ヶ月が経ち、留学生活もいよいよ後半戦となりました。残り4ヶ月、最大限実りあるものにしようと意気込んでいるところです。

さて、今回は授業や休暇などについて前回の奨学生レポートから今までの近況報告をさせて頂きたいと思います。

<授業について>

秋学期の授業の総括と、春学期履修している授業の簡単な紹介をしたいと思います。 秋学期は後述する通り少々悔いの残る結果になってしまいましたが、その教訓は今学期の授業選択に活かすことができたと思います。

先学期履修した講義は以下の通りです。 CEEはCivil and Environmental Engineering、ENGはEngineering、GEOLはGeology、 ( )内は単位数を表します。

・GEOL 118 Natural Hazards (3 hours)

「アメリカの授業は厳しい、一つくらいは100番台を取った方がいい」という安易な考えで履修した授業ですが、結局最も苦労し成績も振るわぬ結果となってしまいました。初めの方は地学の基礎知識も学べたものの、後は様々な自然災害の簡単な説明が中心だったため、教養の幅が少し広がった程度で終わってしまいました。所謂マスプロ授業だったため少人数講義と比べて得るものが少なく、試験対策も教科書を数百ページ単位で読んで覚えるものだったのでかなり辛かったのを覚えています。アメリカ人にとっては常識的な知識(アメリカの自然災害にしても、地学の知識にしても…)ばかりの簡単な授業でも、日本でそういった知識に触れることもなく、かつ英語のボキャブラリーで劣る私にとっては単に暗記量が膨大になるだけで、平均点が異様に高い中自分だけ成績が振るわない状況になってしまい辛かったです。ただ悪いことばかりでもなく、大教室でもたまに質問が飛んだり、逆に先生が生徒に質問を投げかけたりする辺りはアメリカらしさを感じられました。取りあえず、100番台の授業を無理して履修する必要はなさそうです。

・ENG 315 Learning in Community – DOT (3 hours)

授業内容は前回のレポートで述べた通りなので省略しますが、自分の英語力の課題や、授業の受け方の反省点が浮き彫りになった授業でした。 ENG 315では講義はなく、授業時間は全てディスカッションで構成されています。初めは履修人数が5人程度で、多少ディスカッションについていけなくても後で聞き返すなどして対応できたのですが、後半で新たに10人以上グループに加わってからはそうはいかなくなりました。ディスカッションの流れが把握できず自分が何をすれば良いか分からなくなり、チームに貢献出来なくなってしまったのは残念です。一度ディスカッションについていけなくなると、次からますます分からなくなって泥沼に嵌まってしまうので、授業が終わってからでも何を話していたのか、勇気を出して確認する作業をしておけば良かったと反省しています。今後は特に、ネイティブスピードの英語ディスカッションについていけるだけのリスニング力を身に付けるよう精進したいと思います。

・CEE 398 Engineering in Global Environment (3 hours)

前回のレポートでも述べた通り専門性の面ではやや不足があったものの、秋学期中最も充実した授業ではあったと思います。製造過程を通じて様々な材料の中にどれくらいの水やエネルギーが投入されているか計算したりと、新鮮な視点もありました。 Final Projectでは4人のチームで、ChicagoからSt. Louisまで高速鉄道を開通させるのと在来線をそのまま利用するのとどちらがベターか、費用便益分析により検証しました。私は高速鉄道の建設コストを計算したのですが、環境への影響や使用電力、騒音被害など全ての観点を考慮してコスト計算し、かつ英語でレポートを書くのは大変な作業でした。ですが最後は自分でも満足いくレポートを書くことができ、評価の悪かったテストの結果を補える程の好評価を得ることができました。

・CEE 498 Transportation Safety and Risk (3 hours)

秋学期の授業の中では最も刺激になり、身に付くものも多い授業でした。こちらは主にArcGISを用いたチームプロジェクトと、交通リスクに関して各自リサーチする個人プロジェクトで評価されます。受講している学生はRailTECと呼ばれる、イリノイ大学の鉄道工学の研究室から来た院生が大半を占めていました。 チームプロジェクトでは初めArcGISの使い方が全く理解できず、チームリーダーの院生に呆れられ、単位も落としてしまうのではないかという危機的な状況に陥りました。ですが、締切一日前に徹夜して必死にマニュアルを読みながら作業を続けた結果チームに貢献することができ、人間追いつめられた時に一番成長するのだと実感しました(笑) 一つ驚いたのが、この授業に学生として参加していた一人が実はCivil Engineeringの先生(日本で言う講師くらいのポジションでしょうか)でもあったことです。イリノイに来る前は鉄道会社に11年勤めた経験もあるそうで、そんな先生が生徒として授業を受けることは日本では考えられず、驚きを隠せませんでした。またRailTECの院生の中にはそんな彼に負けず劣らず優秀な院生もいて、そんな院生とチームを組んで課題に取り組んだことは貴重な経験になったと思います。

さて、春学期は以下の5科目、計18単位を履修しています。

・CEE 598 Visual Sensing for Civil Infrastructure Engineering and Management (4 hours)

・ENG 571 Theory Energy and Sustainability Engineering (3 hours)

・CEE 528 Construction Data Modeling (4 hours)

・CEE 498 High-Speed Rail Planning (4 hours)

・CEE 491 Decision and Risk Analysis (3 hours)

先学期の授業では専門性が足りなかったという反省と、アメリカの大学院の授業を体験したいという思いから今学期は大幅にレベルを上げ、500番台の授業と400番台の中でもほぼ大学院生のみの授業を履修することにしました。CEE 498は本来は3単位ですが、アメリカで高速鉄道を普及させるために各自researchをし、30分のプレゼンをするというIndependent Studyを付けたため4単位となっています。Civil Engineeringでは他専攻と比べ、院生のみに制限されている授業でも教授との交渉次第で履修できるケースが多いです。先学期のTransportation Safety and Riskの授業で特に感じましたが、大学院生は学部生よりも一段とレベルが上がるので、チームプロジェクトやディスカッションなどで彼らと切磋琢磨することは非常に刺激になります。特にCEE 598では博士課程の学生も多いので、遅れを取らないよう精進しなくてはと思っています。詳しい授業内容は次回の奨学生レポートで述べさせて頂きたいと思いますが、今学期は数値解析ソフトのMATLABを使ったり統計学を学んだりと専門性も充実したものとなっています。大学院の授業では何らかのスキルを身に付けられることも多いので、履修した意義が感じられて嬉しいです。また、ENG 571では資源・エネルギー分野に関して各自リサーチをして論文(Paper)を書く機会があります。詳しいテーマは未定ですが、エネルギー収支分析により再生可能エネルギーの経済性や環境性を分析したいと考えています。 こちらは授業ではありませんが、先日ENG 571の教授の紹介を受けクラスメイトの友人と共にArchitecture専攻の教授の研究のお手伝いをさせて頂くことが決まりました。テーマはBuilding Energy Modelingで、ZEROSというソフトを使って建築物のエネルギー収支やLCC(Life Cycle Costing)を計算していきます。これまで資源探査の研究や環境工学の授業などで大きな枠組みでしかエネルギーを考えてきませんでしたが、家や建物一つ一つの中でどうエネルギーが利用されているのか、ミクロな視点で見るのもまた面白いです。先日からSolar Decathlonという、太陽光を利用した住宅を建設し、デザイン性や省エネ性を競う国際大会に使用された建物のエネルギー利用を検討する作業が始まりました。今後どういった形になるのかは未定ですが、上手くいけばresearch paperを書く機会もあるそうなので、もし何か成果があれば次回の奨学生レポートにて触れさせて頂きたいと思います。

秋学期を終え、そして春学期の授業を数週間受けて感じましたが、ある程度要領良くこなしさえすれば、イリノイの授業もさほど大変な訳ではないと思います。課題は確かに多いですが、その分日本の授業よりも普段の努力が重視されるので、日頃からこつこつ勉強すればついて行けなくなったり睡眠時間が削られたりすることもありません。難易度も(英語であることを除けば)日本と比べてさほど高くないので、秋学期からでも学年に応じて、3年生なら300-400番台、4年生なら400-500番台の授業を履修して全く問題ないと考えています。むしろ1、2年生向けの講義の方が専門性が低い分英語力勝負になる側面があるので、手間でも成績面でも不利なのではと思います。400-500番台というと過剰に「難しい」イメージが先行しがちですが、そんなイメージに怯えて興味のある授業を取らなかった後悔は計り知れぬものがあります(現に私が秋学期にやってしまったので。)

<休暇について>

私の住むIllini Towerは学部生向けの寮なので、長期休暇中は原則追い出されてしまいます(追加で175ドル払えば滞在できるのですが)。この留学期間を逃したらアメリカ本土を訪れる機会もなかなかないかも知れませんし、折角なので旅行することにしました。Thanksgiving Breakでは同期の織田君とラスベガスとグランドキャニオンを訪れ、冬休みでは最初の1週間でニューヨークを旅行し、残り3週間は日本に一時帰国しました。日本では、久しぶりに友人と再開して食事をしたり大学院の研究室訪問をしたりと忙しい日々が続きました。一日中家にいた日などなかったと思います(笑) 休暇中ではありませんが、11月初めには有名なボストンキャリアフォーラムに参加しました。日本人留学生が一気に集結するので、別の大学に留学中の友人とも偶然会うことができ、充実した時間を過ごすことができました。

ラスベガスの夜景
ラスベガスの夜景
街中カジノだらけです
街中カジノだらけです
有名なベラージオの噴水
有名なベラージオの噴水
グランドキャニオン。壮大です。
グランドキャニオン。壮大です。
ニューヨーク・タイムズスクエア
ニューヨーク・タイムズスクエア
ウォール街にて
ウォール街にて

簡単ではありますが、以上にて1月分のレポートとさせていただきます。残り4ヶ月、応援して下さっているJICの皆様や友人、そして家族への感謝の気持ちを忘れずにこれからも精進していきたいと考えております。今後ともよろしくお願いいたします。

第38期小山八郎記念奨学生 榊原 侑利

榊原侑利さんの2013年11月分奨学生レポート

JICの皆様、そしてブログを読んで下さっている皆様、こんにちは。現在第38期小山八郎記念奨学生として、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校に留学中の榊原侑利と申します。留学前は東京大学工学部の4年生で、メタンハイドレートの資源探査について研究していました。

こちらに来て早くも2ヶ月半が経ち、留学生活も4分の1が過ぎてしまいました。本レポートでは、
1.授業
2.アメリカと日本の大学の違い
3.寮事情
の3点についてご報告させて頂き、この2ヶ月半の振り返りとしたいと思います。

<秋の紅葉が美しいキャンパス>
<秋の紅葉が美しいキャンパス>

1.授業について

私は現在、イリノイ大学工学部のCivil and Environmental Engineering (CEE)という、いわゆる土木・環境工学科の学生として勉強に励んでいます。授業で出る課題の量は予想以上で、平日は常に課題に追われ、金曜の夜は友人とパーティーを楽しみ、土曜は半分休憩半分課題という生活を送っています。今学期は工学系の授業を3つしか履修していないため余裕を保てていますが、工学部生の中にはあまりの大変さに学部に変えた人までいるそうです。私も、もし今以上に履修していたら睡眠時間さえ削られていたでしょう。

<CEEの学生はこのNewmarkと呼ばれる建物で授業を受けます>
<CEEの学生はこのNewmarkと呼ばれる建物で授業を受けます>
<Newmark内部の様子>
<Newmark内部の様子>

授業は100番台から500番台まで数字でレベル分けされており、目安としては100 – 200番台:学部1〜2年、300番台:学部3年、400番台:学部4年〜院生レベル、500番台以降:院生のみ、といったイメージです。
今学期は以下の4科目、計12単位を履修しています。

・GEOL 118 Natural Hazards
地学の初歩的な知識から始まり、地震・火山・土砂崩れなど様々な自然災害について俯瞰的に学ぶ講義です。大学から300番台以降の講義を4つ以上履修しないよう勧められたため、1つくらいは100番台のものにしようと思い履修を決めました。講義内容は易しいですが、試験3回、Web Exercise 6 回、加えて抜き打ちテストやエッセイもあり、なかなか手間がかかります。100番台や400番台といった番号は授業の専門性に応じて振られているので、単純に「100番台=楽」ではないようです。
ですが、センター試験が化学選択でこれまで地学を勉強した経験がなかったため、ここで一通り学ぶ機会が得られ良かったと感じています。

・ENG 315 Learning in Community – IDOT
イリノイ州の政府機関であるIDOT (Illinois Department of Transportation) は現在、道路脇の土地を利用してバイオマスエネルギー用の作物を育てるプロジェクトを進めています。未活用だった土地を有効利用することで維持費を削減することと、バイオマスエネルギーの利用促進によりサステナブルな印象を高めることを目的としています。
本授業はIDOTとパートナーを組み、このプロジェクトにまつわる課題についてグループでテーマを決めて研究するというものです。履修人数は2人のProject Managerを含め5人と少ないですが、その分一人当たりの発言機会が多く、意見も通りやすい環境です。私の提案で、バイオマスエネルギー導入の費用便益分析を研究テーマとすることに決まりました。
授業ではプロジェクトのschedulingの方法や、英語でのAcademic Reportの書き方を学ぶこともでき、アメリカで学問をするための基礎力が最も身に付く授業だったと思います。私たちの書いたProject Proposalを見て新たに10人以上グループに加わることが決まり、達成感もひとしおです。

・CEE 398 Special Topics – Engineering in Global Environment
熱力学や大気汚染物質、仮想水や環境経済など環境について様々な側面から学んでいく授業です。幅広い知識を身に付けることができる反面、専門性には物足りなさを感じます。
ただしプロジェクト2回、試験5回、宿題9回、それに毎回授業前にReading Assignmentをこなさなければならず、なかなかヘビーな講義です。試験は5回合わせて30%とウェイトは少ないのですが、試験時間が30分しかないのに問題数が非常に多く、毎回壊滅的な結果になって宿題やレポートで点数を補うという感じになっています。交換留学生は英語の授業にも慣れていないため、始めのうちは一発勝負の試験で評価する科目よりも、レポート課題など普段の努力を重視する授業を履修した方が良いのではないかと思いました。

・CEE 498 Special Topics – Transportation Safety and Risk
タイトルの通り交通リスクの分析手法を学ぶ講義で、私以外はほぼ大学院生です。今年7月にカナダで鉄道事故が発生し、火災や原油流出による環境汚染など甚大な被害が発生したことをご存知の方も多いと思います。特にアメリカは貨物列車によるHazardous Materials(エネルギーや有毒物質など)の輸送割合が高く、事故が発生した際どのような被害が生じるリスクがあるのか分析することが講義のメインテーマとなっています。2週間ほど前から大学院生とグループを組み、ArcGISと呼ばれる地理情報ソフトを用いて、線路周辺の環境や人口などの情報を活用しながらリスク分析を行うグループプロジェクトが始まりました。
グループプロジェクトと並行して、交通リスク全般に関して各自でテーマを設定し研究する個人プロジェクトもあります。2011年の東日本大震災で「グリッドロック」と呼ばれる渋滞現象が東京都心で同時多発的に発生したことをご存知の方もいらっしゃると思いますが、個人プロジェクトでは、南海トラフで巨大地震が起きた時のグリッドロック発生リスクと、避難行動への影響について分析する予定です。

<ArcGISの教科書。キャンパス内のIllini Union Bookstoreでは90ドルと割高なためAmazonで65ドルで購入しました。>
<ArcGISの教科書。キャンパス内のIllini Union Bookstoreでは90ドルと割高なためAmazonで65ドルで購入しました。>

Civil Engineeringは構造・土壌・交通・環境など分野によって難易度が異なり、交通・環境系では300〜400番台の講義でもさほど難しいとは思いませんでした。今学期はアメリカならではの議論主体の授業を履修しディスカッションの機会は多かったのですが、反面専門性が不足してしまったことには悔いを感じています。来学期は500番台やLaboratory形式の講義を多く履修して、自分の専門性を高めていきたいと思います。

2.アメリカと日本の大学の違い

せっかく学生生活を東京大学とイリノイ大学の2つで過ごすことになったので、日本とアメリカの大学の長所と短所をまとめたいと思います。
アメリカの大学のメリットとしては、教授の教え方が日本より上手く授業で得られるものが大きいこと、またチームワークやディスカッションが多いためコミュニケーション能力が向上することが挙げられます。反面、特に理系生にとって大きなデメリットとして、学部生は研究室に所属して研究できないことが挙げられます。学習歴が長くスキルも身に付いている大学院生に比べ、教える手間のかかる学部生が研究機会を得ることは困難です。その点に関しては、研究室に所属し卒業論文を書くことが必須となっている日本の大学の方に分があるでしょう。
もう一つアメリカの大学の特徴として、GPAが重視されることがあります。日本では取りあえず単位を取ることに重きが置かれますが、イリノイでは成績の付け方が厳しい(80%でもB-)こともあり、真面目に課題に取り組む学生の割合も日本より多く感じられます。
日本とアメリカどちらの大学が優れているかは断言できませんが、基本は日本の大学に軸足を置きつつ、アメリカで一年修行を積むというのが最も成長できる方法なのかも知れません。

3.寮について

現在はIllini Tower (IT)と呼ばれる寮とアパートの中間のような住居に、アメリカ人とブラジル人のルームメイト2人と住んでいます。同じベッドルームに住むブラジル人は同じCivil Engineeringに所属する交換留学生ということで話も合い、楽しく過ごすことが出来ています。

<部屋の様子>
<部屋の様子>

部屋はお世辞にも綺麗とは言えませんが、リビングルームもあって割と広く、地下にはビリヤードや卓球台、ピアノを弾けるMusic Roomもあるため非常に充実しています。
ただ食堂のクオリティが低く、19時までしか空いていないのが残念です。食事プランは増やすことはできても減らすことはできないので、今後ITに住む人には食事プランは最低限(Bronzeプラン)に抑えておくことをお勧めします(笑)

<部屋の窓からの景色>
<部屋の窓からの景色>

最後になりますが、イリノイ大学への留学という素晴らしい機会を下さったJICの皆様、後押ししてくれた両親や友人、研究室の皆様に感謝の気持ちを述べさせて頂き、10月分のレポートとさせて頂きたいと思います。

<Grainger Libraryにて>
<Grainger Libraryにて>

2013年11月3日
東京大学 工学部 システム創成学科 4年
榊原 侑利