奨学生最終レポート
今回のレポートは最終レポートということで、留学を振り返って、そして日本に帰ってきてから思うことを綴ろうと思います。
<留学の意義>
留学の意義というたいそうな題名をつけてみましたが、実際どのような意義があるのかという事を書きます。
そもそも「意義」という言葉は人間が勝手に作ったものだと私は思っています。 人生の意義、生きる意味、、、それらは所詮人が後から何かを振り返って、それに意味または意義を後付けしたに過ぎないと思います。(突然哲学みたいなことですみません笑)
ですから「留学の意義」というものは数式の答えのように存在するものでなく、それぞれの留学生がそれぞれ振り返って後付した「感想」だと思います。 ですから私の留学の感想、そして何を学んだかをつらつらと書いていきます。
まず一つは いろいろな人に出会い変われること
私は今までの22年という短い人生において、人との出会い、人との関わりがもっとも大きく自分に影響を与えてきました。もちろん何か素晴らしい「アルジャーノンに花束を」などの本を読んだり、テニスのウィンブルドン決勝を見たりなどさまざまなものが影響をあたえてはきました。 しかしやはり言えるのは、 人との出会いでその人の価値観や考え方を垣間見た時に感じる、何かしら直接訴えるような感覚が一番大きいです。 特に私は理系ですし、何か新しい面白いことを探求する心が幼いころからあったので、この留学の間に会った、私にとって「全く新しい人」に出会えたことは大きなことでした。
二つ目は 何事もやってみる、飛び込んでみる
ということを実体験として学んだことです。 アメリカに行く前は、アメリカは何か桃源郷のようなハリウッドの中の世界のような 自分が理想とするような世界か何かだと思っている節がありました。しかし実際に行ってみると、予想以上に文化の違いがあったり、価値観が違ったり、人種差別のような普段明るみに出ない暗い部分も見たり、と理想と現実のギャップに驚きました。 しかしこれも実際に行ってみて、体験してみたからこそわかったことです。 今まではアメリカが理想郷のようで日本はそうでもないなんて思っていました。実際日本のメディアなどでは何でも欧米が優れているというような書き方をする傾向にある気がします。 でも留学を体験した今では、日本の良さがよりわかるようになりました。アメリカではキャンパス内で人が死んでも、シカゴで毎日人が死んでも大したニュースにならなかったりします。対して、日本では花火大会の場所とりで芝生が傷んでしまった。なんてことをニュースにしていて、なんて平和な国なんだ。と思いました。笑 今では日本でも、アメリカでも、中国でもヨーロッパでもより客観的に見ることができるようになりました。
またアメリカでは日本よりも新しいことを挑戦することに寛容で応援する文化があります。そのような人達を見て、私はよりまずやってみよう!飛び込んでみよう!やらないよりやったほうが得るものは大きいと感じるようになりました。

<日本とアメリカの違い そして学んだこと>
日本とアメリカの違いはアメリカにいた時も感じましたが、日本に帰ってきてからも感じます。 上記で述べたような日本の平和さ。アメリカの新しいチャレンジに対する寛容さ。
それ以外にも日本人の礼儀正しさなどもあります。この礼儀正しさというのは礼儀=マナー=社会のルール という等式が成り立っているとすると評価するのは難しいとは思います。 つまり日本という国の社会的ルールでは礼儀正しいことは何かというのが決められています。それは文化ともいえると思います。 ではそれはほかの国でも適用できるのか?というとそうではありません。 例えば日本では麺類(そばなど)を食べるときは音を立てるのが悪いことではありません。しかしそれはヨーロッパではマナーが悪いことです。 他人の頭をなでる行為も日本では大丈夫ですが、韓国では侮辱をあらわすそうです。
このようにそれぞれの国、コミュニティ、文化で判断基準が違います。そしてそれぞれの文化基準で相手を判断したりします。これはもちろん個人間でも起こりうることですが、同じコミュニティや文化の場合は大きな問題になりません。 しかし国が違ったり、宗教が違ったり、文化が違うと、その判断基準が違うということを忘れてお互いの所属を否定する事につながったりします。
ここで物理学的に、または数学的にお互いの判断基準で評価することの愚かさを考えます。(物理や数学好きな人だけ読んでださい) お互いスカラー量が1のベクトル(判断基準)を持っているとします。スカラー量が1ですから、お互い同等の強さ(良さ)であるはずです。しかしベクトルだと方向性が違います。仮にお互いのベクトルのずれ角度がθだとします。そうするとお互いベクトルの内角(cosθをかけた値)でお互いを判断し、相手が自分より劣っていると判断し否定し合うのです。 はたから見るとばからしい現象ですが、これが原因で世界中で紛争が起こったり、離婚したりなどが起こっていると思います。(本「宇宙を目指して海を渡る」参照)
ときどき私の周りで中国人や韓国人を否定するような会話を聞いたりします。 しかしこれらは非常に愚かで、悲しいことです。それらの人々は自分のものさしでしか相手を測っていなく、その人達ともかかわった事もないのに否定しているのです。 反日運動、反中国運動。それらはアメリカに行っていたものからすると非常に悲しいです。

<今後>
今後は私はこれといった、はっきりとした道筋はありません。全くないのではなくいくつかの選択肢があり、それを模索している段階です。 しかしこの留学を通して学んだ上記のようなことを軸に自らが考える道を進んでいきたいと思います。 グローバル人材と叫ばれる世の中ですが、グローバル人材とは英語が話せる海外経験がある人。というような薄っぺらいものなのではなく、より客観的な視点をもって世の中を見渡せる人、そしてどんな人に対してでも相手の気持ちを考え優しく接することができる人なのかもしれません。私は後者のような人間になっていきたいと思います。そして、日本でも世界でも舞台は関係なく活躍しJICを代表するような人物になりたいです。

最後になりますが、これから留学に行く人には大きな声援を送りたいと思います。 そしてJICの皆様には、このような機会を私に与えてくださったことを深く感謝します。ありがとうございました。
小山八郎記念奨学金第38期生 織田健嗣