勝田梨聖さんの2015年7月分奨学生レポート

JICの皆さま、本レポートを読んでくださっている方々、ご無沙汰しています。小山八郎記念奨学制度第39期の勝田梨聖です。

後ろ髪を引かれる思いでシャンペーンを後にし、日本に帰国してから早一か月が経過しましたが、今回は(1)春学期の授業、(2)課外活動・休暇、(3)留学全体を通しての振り返りについてお話ししたいと思います。

 

(1)春学期の授業

 

繰り返しになりますが、春学期には以下の授業を受講しました。

GLBL350  Poverty in a Global Context (Prof. Brian Dill)

MACS (/PS)389  International Communications (Prof. Luzhou Li)

PS 282  Governing Globalization (Prof. Konstantinos Kourtikakis)

PS 280  Intro to International Relations (Prof. Ryan Hendrickson)

EPY199  Leadership in Global Engagement (Prof. Jenn Raskauskas)

 

GLBL350  Poverty in a Global Context (Prof. Brian Dill)

このコースでは貧困や国際開発について学んでいますが、後半部ではとりわけ資源の呪いや食料安全保障、エネルギー貧困を扱いました。受講人数が25人ほどの比較的小さなクラスで、毎授業リーディングを基にディスカッションを繰り広げますが、教授もお手上げの白熱した議論を交わすこともあります。全コースを通して様々な側面から一つの国の貧困状況を考察するproject paperが4回課されましたが、立てていた仮定が立証されなかったときなどは思わず大きな溜息をついて立ち止まるなど、ひどく根気が必要な作業でした。しかし適切かつ詳細にデータを用いて分析して考察に導くスキルが体得でき、その集大成であるfinal paperではその国の貧困プロファイルと生活水準向上のための提案をまとめて、満点を取ることができました。またもう一つの期末課題として、スライド一枚につき20秒×全20枚がルールのPechakucha Presentationがありました。日本でも名が知れたプレゼン方式で、特に非ネイティブ話者にとっては20秒で詳細に、またシンプルに纏めるには随分と策を練る必要がありましたが、それぞれクラスメートがピックアップした国々のPechakuchaプレゼンはどれも観点が多様で非常に興味深かったです。

 

MACS (/PS)389  International Communications (Prof. Luzhou Li)

この講義では、メディアが国際社会や政治において果たす役割について学びました。毎週金曜日は映画やドキュメンタリーを鑑賞し、翌週それを基にディスカッションを進めます。なかでも面白かったテーマは、ドラマや映画での人種・ジェンダーの描写や、第三世界から情報を発信するAl JazeeraとBBCやCNNとの比較、そして政治権力者によるメディア検閲です。特にジェンダーや検閲については、アジアとりわけ日本人としての意見を求められることも多くありました。期末課題はFinal PaperとGroup Video Projectで、Final Paperは’mobile Health’という携帯電話機能を利用した保健サービスがアフリカのAID/HIDSに与える影響について、Group Video Projectでは各国のメディアへの検閲状況をテーマに作成しました。比較的一方向のレクチャー、平均ベースの成績評価という所謂アジアスタイルの授業のため戸惑っている学生が多くいましたが、個人的には教授へのアクセスが一番良く、授業後の話し合いも楽しめました。

 

PS 282  Governing Globalization (Prof. Konstantinos Kourtikakis)

このコースでは、国家、国際機関、市民社会、多国籍企業などのアクターの役割に焦点を置いてグローバル化を分析しています。トピックは人権、環境保護、開発、貿易など多岐にわたっていましたが、特に米国・EUなどの大国と途上国グループの利害対立構造のなかでどのような公式・非公式のルールが成り立っているのかという観点で講義が繰り広げられていました。Advanced Writing ClassのためFinal Research Paperの量も今期のクラスの中で最も多かったものの、草稿段階でのフィードバックも細かいため最終目的地までは辿り着きやすかったです。

 

PS 280  Intro to International Relations (Prof. Ryan Hendrickson)

この講義では、PS282よりも米国を基軸にして安全保障政策や貧困、感染病に対する海外援助、人権保護などのテーマを解説しています。テロ対策や軍事政策、核兵器についても扱っていますが、米国と中国、EUとの政治経済・軍事関係も詳細な数字のデータを用いながら教授が解説します。毎週金曜日は講義内容に関連したトピックのリーディングを基にTAとディスカッションをしますが、ただ著者の主張を理解するだけでなく自分自身はそれに賛成か反対か、またその理由までも明確にしないと議論に参加できなかったので、ある物事の背景知識をまず正しく理解するところから始めなければいけない点に苦労しました。

 

EPY199  Leadership in Global Engagement (Prof. Jenn Raskauskas)

このコースでは、澳門大学からの交換留学生11人と異文化間コミュニケーションを学んでいます。同じ寮の建物にある教室で、お菓子をつまみながらプレゼンを聴いたりアクティビティをしたりと、とてもリラックスした雰囲気の授業です。4月にはUndergraduate Research Symposiumがあり、私のグループはアメリカとアジアでの礼儀や対人関係に対する異なる観念から生じる挨拶の違いについて発表しました。グループのメンバーは全員同じ寮に住んでいたので、おしゃべりも交えながら晩遅くまで一緒に作業したのは良い思い出です。シンポジアム当日はリサーチ内容について多くの質問を受け、終了する頃には皆ぐったりとしていましたが、このような場で発表できる機会はめったにないので貴重な経験をすることができました。

 

 

(2)課外活動・休暇

 

<春休み>

3月下旬に一週間ほどの春休みがあったので、在籍大学の友達が複数人留学しているシアトルへ旅行に行きました。シアトルは海と湖と森に囲まれた自然豊かな土地で、全米で最も住みやすい都市にも選ばれているそうです。誕生日に友人との数か月ぶりの再会ができ、留学の思い出や苦労話をしながら、(ちょうど合法になったばかりの)お酒片手に美味しい魚介類を堪能しました。ワシントン大学やチョコレート工場見学、市場、スターバックス第一号店など、シアトルには見どころがたくさんあり、わずか数日間でしたが非常に有意義な時間を過ごすことが出来ました。

 

勝田写真1

(写真1. シアトルでは天気にも恵まれました。)

 

<アジア系イベント>

アジア人の人口が多いからか、イリノイ大学にはアジア系団体が主催するイベントがたくさんあります。例えばインドやネパールで有名なヒンドゥー教の春祭である「ホーリー」というイベントがあり、キャンパスの芝生グラウンドに集まった学生が誰彼構わず ’’Happy Holi!!” と色粉を塗り付けます。おかげで顔や髪の毛は赤、青、ピンク、紫、黄色に見事に染まり、完全に落とすには5回程洗わなければなりませんでした…笑

 

またアジア系の学生団体の多くが出展するAsia Festival というお祭りもあり、自国の文化を紹介したり、ステージで踊りや音楽を披露したりもしていました。(個人的にはインド舞踏が大好きなため、このフェスティバルや他のイベントでも数回目にすることができ満足です。)

このフェスティバルの日は、日本館もこどもの日のイベントを開催しており、夜にはマレーシアや台湾の団体もそれぞれ屋台を出していたので、(迫っている試験や課題をひとまず寝かせて)友人と声が枯れるほど一日中遊んでいました。

 

<寮生活>

私は一年間、Living Learning Community(LLC)に属していたので、寮内でのイベントはたくさんあり、同階に住む友人と関わる機会も多かったように思います。春学期はイベントの勢いこそ衰えていきましたが、それでも部屋に帰る途中に出会った友達とラウンジでお喋りしたのは、授業の疲れが吹っ飛ぶように楽しい時間でした。帰国後も特に仲の良かった友人とは連絡を取り合っています。大きなベッドマットをわざわざ部屋からひっぱり出し、ラウンジでオールナイトの映画鑑賞パーティー(withフロア中のポップコーンの匂い)を開催する友人にはさすがに若さを感じましたが、秋学期のオハイオ州・インディアナ州への旅行をはじめ、このLLCで出会った友人と多くの貴重な経験できてよかったと思っています。

 

フロアメイトの多くはシカゴ周辺に家があるため、期末試験終了後に延泊届を出して残ったのはなんと私とルームメイトだけでした。寮内は普段ではあり得ないほど閑散としていましたが、最後に彼女と一年間の思い出話をしてイリノイ大学での生活に幕を閉じました。学業に非常に熱心に取り組むルームメイトは私の刺激にもなり、くだらない話から少し真面目な話までよく盛り上がったのを思い出します。一年で一番腕を磨いたのは、部屋に出現した虫を二人で退治する連携プレーでしょうか。

勝田写真2

(写真2. スタジアムでのCommencement (卒業式)の様子)

 

<帰国前日のシカゴ観光>

早朝にキャンパスを離れ、友人とシカゴで一日観光することが出来ました。11月下旬に一度シカゴを訪れていましたが、酷寒だったその頃と比較するとはるかに心地よい天気で、子ども達も元気よく公園を駆け回っていました。かの有名なMillennium ParkのBeanや噴水、ユニークな建築スタイルのビル街などを散策したほかに、高さ10cmはあるようなチーズケーキや、名物のDeep Dish Pizzaに舌鼓を打ち、(久しぶりに)食も楽しむことができました。

勝田写真3

(写真3. シカゴ大火に端を発したシカゴ派建築)

 

(3) 留学全体を通しての振り返り

 

帰国後に再会した友人たちに必ず聞かれるのは、「…で、どうだった?」という質問です。しかしこの九か月間を一言で表す言葉はなかなか思い浮かびません。色々思いめぐらせて話しているうちに、なんだか雰囲気を湿っぽくしてしまうなんてこともあります。というのも、このイリノイ大学への留学は、自分がいかに「井の中の蛙」であったかを思い知った挫折だったからです。

 

① 自分の立ち位置、力量を知るものさしを手に入れて

留学前は、自分が一回り大きくなって帰ってくると思っていましたが、結果的には「小さく」なってしまいました。例えるならば、ズーム機能で拡大されていた自分が縮小されて小さくなった、といった感じでしょうか。それは、イリノイ大学で同分野や全く異なる学問を勉強する学生に出会い、私よりも明らかにはるか上を進んで行っているのを目の当たりにしたからです。生半可ではなくしっかりと腰を据えて勉学と向き合える教育環境下で、身近なものを次々と成長のチャンスに変えていく友人たちの話を聞いていると、「私も負けていられない」と思うと同時に、このようにして同年代の学生が今後あらゆる分野の最先端でどんどん世界を変えていくのだということを身に染みて感じました。世界での私の立ち位置に気が付いたことは一つの収穫ですが、それだけで終わらず、自分の立ち位置や力量を測るものさしを手にした今は、いかにして私の今後目指すポジションを築きあげていくかが取り組むべき課題です。

 

②薄れる、快適な環境から飛び出した「私」の存在感

もう一つの挫折として、自分が心地よいと感じる場所から全く新しい環境へ飛び出した時に「私」が消えてしまいそうになったことでした。「こいつは誰だ」と思われるにはまず、相手に興味を持ってもらわないと始まりません。しかし、自分から進んで主張していかないことには「不在」とみなされ、居場所を見出すことはできません。全員が私を全く知らない状況で、英語という言語を使いながら表現していくには勇気も必要で、特に秋学期前半の授業ではそれに苦労しました。全く未知の環境での自己表現は徐々に慣れていきましたが、それでももう少し努力すべきだったというのが本音です。

 

 

これら二つが私の直面した「挫折」であり、私の弱さでした。もちろん言語面で苦労したこともありましたが、それ以上にじわじわと苦しめるような壁でした。…と、やはり湿っぽい話を展開してしまいましたが、一つお伝えしたいのはこの人生最大の挫折の経験が、私のみる世界を豊かにしてくれたということです。この挫折なしでは、いつまでたっても狭い世界に生きていることすら気づかずに暮らしていたでしょうし、今の自分に必要なものを知ることもなかったと思います。イリノイ大学で9か月間ひたすら興味のある学問を追求し、「私」について考え悩んだからこそ、帰国した今はまた新たにスタート地点に立つことができました。そしてこれからは学んだことを生かして、目指す先へまた一歩ずつ歩んでまいりたいと思います。

 

最後になりましたが、イリノイ大学への留学という貴重な機会を与えてくださったJICの皆さまには深く感謝申し上げます。また私を支え、励ましてくれた両親や友人にも感謝の想いでいっぱいです。本当にありがとうございました。

勝田写真4

(写真4. 桜も綺麗に咲き、私を送り出してくれました。)

勝田梨聖さんの2015年4月分奨学生レポート

JICの皆さま、そして本レポートを読んでくださっている方々、こんにちは。いよいよ4月を迎えようとするシャンペーンでは、数週間前の天気とは一変して雪もすっかり溶け、暖かい日差しのもと駆け回るリスの姿も再びよく見かけるようになりました。早いもので、留学生活も残すところ2か月を切りましたが、今回のレポートでは、(1) 春学期の授業, (2) 冬休み, (3) 寮生活、課外活動についてご報告いたします。

 

 

(1) 春学期の授業

今学期は、以下の授業を受講しています。

GLBL350  Poverty in a Global Context (Prof. Brian Dill)

MACS (/PS)389  International Communications (Prof. Luzhou Li)

PS 282  Governing Globalization (Prof. Konstantinos Kourtikakis)

PS 280  Intro to International Relations (Prof. Ryan Hendrickson)

EPY199  Leadership in Global Engagement (Prof. Jenn Raskauskas)

 

 

GLBL350: Poverty in a Global Context (Prof. Brian Dill)

この授業は秋学期に受講したGLBL250の発展編で、国際開発について学んでいます。貧困の測定方法や定義を学習した後、貧困を生み出すとされる原因、例えば地理、植民地主義、政策や機関、汚職などのトピックを週ごとに扱い、80分間ディスカッションをベースに授業が進みます。今学期最も楽しんでいる授業ですが、同時に、読み物や課題の複雑さ故に最も苦しんでいるコースとも言えます(笑)しかし、いつか時間のある時に読もうと思いつつ、なかなか手を伸ばせずにいた開発学界の著名人であるJeffrey Sachs, William Easterly, Acemoglu, Daron and James A. Robinson等の書物がリーディング課題で出され、それらを基に教授やクラスメートと議論することで、新たな考え方や発見にふれることができます。また読み物の他には、4回にわたるproject paperが特徴的です。世界銀行やその他の機関が公表する国別データを用いて、自分が選択した国の貧困を分析する課題で、マラリアの蔓延率、経済インフラの普及度、耕作地面積など細かなデータを引っ張り出し、立てた仮説を立証していくのは骨の折れる作業ですが、貧困について多方面的に考えられる良い機会となっています。

 

MACS (/PS)389: International Communications (Prof. Luzhou Li)

この授業はメディアをグローバル化や政治と絡めて考察するコースです。履修に迷うなか興味本位で授業に参加してみたところ、その回では当時世間を席巻していたフランスの風刺週刊誌Charlie Hebdo襲撃事件と表現の自由を扱っており、メディアの観点から世界を読み取るのはおもしろそうだと思い受講を決めました。トピックは文化帝国主義や途上国開発、冷戦、テロ、またジェンダーなど多岐にわたっています。毎週金曜日はドキュメンタリーを鑑賞しますが、中でもアメリカの有名なアイドルオーディション番組”American Idol”のアフガニスタン版”Afghan Star”での女性の描かれ方を記録したドキュメンタリーでは、グローバル化を推し進める米系多国籍企業が(「女性は人前で踊るべきではない」などの)アフガニスタンの伝統的慣習と衝突している様子が描かれており、非常に印象に残りました。またこの授業では、個人的に授業後やオフィスアワーに教授と話しに行くことが多く、昨今の日本や中国のニュースメディアについて議論したりもしています。

 

PS 282: Governing Globalization (Prof. Konstantinos Kourtikakis)

このクラスでは主に、グローバル化が国家主権や政策、人権に及ぼす影響や、国家以外のアクターのガバナンスについて学んでいます。Advanced Writing Classと呼ばれるペーパー課題が重い履修科目ですが、その分書き方の指導もきめ細かいです。

授業ではJoseph StiglitzやSaskia Sassen などの名の知れた学者の書物を講義のベースとしています。特に、移民問題を社会全般に敷衍して考察する授業では、都市開発や自治体政策について新たに深く考えるきっかけにもなりました。(ちょうど講義が、移民政策についてのある新聞コラムが論議を交わしていた時期とぴったりと重なったのは少し不思議な偶然です。)

 

PS 280: Intro to International Relations (Prof. Ryan Hendrickson)

国際関係学の入門ということもあって受講を迷っていましたが、教授の研究対象であるNATOや米国の安全保障政策に主眼を置いた国際政治学の講義に興味を持ち、履修することにしました。冷戦やテロ、軍事政策などを特に強調して詳説するのはアメリカの大学ならではだと感じます。またこのコースで特徴的なのは、TAによる毎週金曜日のディスカッションです。Foreign Affairsなどからの引用記事を読み、それについて著者に賛成派、反対派に分かれて議論をします。だいたいは、リアリズム、リベラリズム、コンストラクティビズムなどの学派の立場に沿って意見を述べますが、TA(Teaching Assistant)を筆頭にクラスメートの多くがリアリズムに傾倒した考えが多い印象を受けます。そのなかで、説得力があり論理性に基づいた新しい観点をオファーするために、新聞、ラジオをより積極的に活用するようになりました。しかし、テロリスト掃討作戦に使われる米国の無人偵察機が話題に上がった時は、賛成派23対反対派2のマイノリティ側に立ちましたが上手く効果的に立場を説明できず、授業後に「ああ言えばよかった」「こうも考えられたのに」と猛省した記憶があります。残り4回での改善に期待です…。

 

EPY199: Leadership in Global Engagement (Prof. Jenn Raskauskas)

この授業は私の住む寮PARで開講され、ゲストスピーカーやクラスメートの30分プレゼンを通じて、グローバルリーダーシップについて考えを深めるコースです。澳門大学からの交換留学生と受講しますが、他の授業とは違いお菓子を食べながらの和気あいあいとディスカッションをするといった、非常に打ち解けた雰囲気です。グループワークでは、私たちのグループは、アメリカとアジアでの礼儀や対人関係に対する異なる観念から生じる挨拶の違いについて、4月末のUndergraduate Research Symposiumにてプレゼンテーションをすることになりました。現在はクラス外で集まってリサーチを進めている最中です。

 

 

今期の授業は上記の通りですが、先学期と比べてディスカッションも増え、以前よりも積極的に発言するようになったのは一つの成長ではないかと感じています。しかし、まだまだ授業後は反省の日々です。”Better than the last time” を目標に今後も邁進したいと思います。

蜀咏悄1

(写真1: 春の訪れとともに、Main Quadでも学生がくつろぐようになりました。)

 

(2) 冬休み

冬休みの一か月間は寮からkick outされるため、どこへ行こうか思案した結果、中米のグアテマラへ旅行することにしました。「なぜ、グアテマラ?」と会う友人皆に聞かれましたが、本来は開発についてフィールドワークをするためでした。しかし(!)、グアテマラ人の友人とゴム農園のリサーチをする予定が、私の期末試験の関係でどうしても日程が合わず。また、グアテマラ事務所のJICA職員の方とお話できるとのことで楽しみにグアテマラへ渡ったものの、年末年始ということもあって先方様がお忙しくされていたため訪問も叶わず。結局、「26日間グアテマラを旅しながら暮らす」ことになりました。首都は(噂によると)世界で12番目に危険な都市、言語は(ほとんど喋れない)スペイン語で英語は通じないということもあり、女1人で動き回るのには不安もありましたが、今までに訪れた国のなかで最も刺激的で言葉に表現しがたい愛着が湧いたのが素直な感想です。

初めて足を踏み入れるラテンアメリカのグアテマラ。街では陽気な音楽にあふれており、農村部では色彩豊かな野菜がずらっと並んでいました。毎日外食というわけもいかないので、市場で値引き交渉をして生鮮食品を買って、宿泊先に住む世界一周中の方たちと自炊生活を楽しみ、旅行というよりは「暮らす」という感覚に近かったように思います。

アメリカから輸入した中古スクールバスを改良した「チキンバス」が地元民の足で、早朝のバスに乗って都市部へ物を売りに大量の農村民が移動します。バスの治安はあまり良くなく、強盗が多発し、また道路自体もきれいに整備されている状態とは言えません。小売店が連なる都市部は、排気ガスで曇っており、環境への配慮というよりは経済発展を優先している印象でした。市場では同じようなものが似たような値段で売られています。地元民がどのように選んで買い物をしているのかは分かりませんでしたが、開発プロジェクトの一環としてマーケットの差別化がすすめられているそうです。さて数年後また訪れた時にはどれほど変容しているだろうなどを考えながら、毎日ぶらぶらと歩きまわっていました。

 

片言のスペイン語でホステルスタッフに話しかけても何を言われたか分からず、近くにいた男性を連れてきてヘルプを求めたり、満員のバス(40人容量のはずが70人は既にいました)で、運転中のドライバーをまたいで運転席と窓の間の小さな隙間に入れられたりと、貴重な経験と冒険の一か月間でした。

蜀咏悄2

(写真2: 世界で一番綺麗な景色が味わえると言われているグアテマラのアティトラン湖)

 

 

(3)寮生活、課外活動

朝一番の「今日の気温何度?」の会話(とそれに伴う落胆または喜び)をルームメイトと交わしてから、支度をして教室までの道を歩くのが習慣となっています。豪雪、または道が凍っている日もありましたが、最近は毎朝とてもいい天気で気持ちが良いです。狭い部屋での共同生活、(自分だけの空間が欲しい…)と切実に思う時もありますが(笑)、ルームメイトや同フロアの友達と他愛もない話で盛り上がれる時間はそれ以上に貴重なひと時でしょう。

春学期も始まり、シャンペーンでの生活にはすっかり慣れましたが、この二カ月たくさんのイベントがありました。

 

<日本館 懐石・利き酒イベント>

イリノイ大学日本館にて2月20日に懐石料理を、21日には利き酒イベントを開催しました。はるばる日本からお越しくださったのは、東京でCAFÉ OHZANを経営する榎本鈴子さん。シェフが腕を振るった近畿大学養殖マグロの懐石料理は、食材や調理方法のみならず、色彩や配置、お皿にも細かく気が配られた、まさに芸術品でした。私と田中さん女子組はサーブが中心でしたが、お運びした時のお客さんの驚嘆した顔は忘れられません。そして、(少しつまむことができたのですが)頬の筋肉が一瞬にして緩むほど美味しかったです。ここイリノイ大学に来て以来、毎日ほぼ同じ寮食のため「食べる」ことを疎かにしていましたが、繊細に盛られた懐石料理を前に和気あいあいと談笑するお客さんの顔を見ていると、「食」がもたらす力の偉大さに改めて気づかされました。

 

そして翌日午後からは同じく日本館にて利き酒イベントが行われます。チケットは売り切れ、会場は大盛況でした。私はお酒にさほど詳しくないのですが、驚いたのは、なんと小料理の種類の多いこと。「おつまみで、ここまでのクオリティー?!」と驚きましたが、日本料理をあまり知らない外国人にとって、様々な日本酒を嗜みながら、彩り豊かで綺麗に盛られた小料理一品一品を見て食べて楽しむのは最高のひと時だったのではないでしょうか。

 

この二日間を通して、日本語を知らない友人でも大抵知っている”Kawaii”以外に、これからは”Oishii”という言葉もより広がるようになればと、ふと感じました。そのためにも、イリノイの友達が日本へ訪れた時は、是非日本の食についても伝えたいと思います。

蜀咏悄3

(写真3: 利き酒イベントでの小料理の一部)

 

<Power Africa>

ACES Libraryの会議室で催された、アフリカのエネルギー開発のパネルディスカッションに参加しました。Power Africaとは、2013年6月にオバマ大統領が打ち出した、より多くのサブサハラアフリカの人々がエネルギーにアクセスできることを目標にした政策です。このイニシアティブに65億ドルが投入されたほか、エネルギー部門の企業も90億ドルを投資し、安定した電気供給の他、より効率的なエネルギー創出を目指しています。Power Africaアドバイザーやエネルギー開発を専門とする教授、モザンビーク出身の社会活動家など、世界各地から集まり、Power Africaの行方や欠点などを議論しました。興味深かったのは、プロジェクトのもと建設されたあるダムが環境を破壊し、そのエネルギー約80%が、地元民ではなく関係する外国企業へ輸出されているという事実です。パネラーの”Think about WHO is benefited from this project.”という言葉が強く胸に響きました。

 

 

<Illinois Leadership Program>

EPS199で参加必須だったという理由もありますが、ルームメイトからのお勧めで、私もこのプログラムに参加してみました。いわば、リーダーシップ育成プログラムで、朝9時からの8時間、ひたすらグループでのワークショップとディスカッションを続けます。幸いなことに、私のグループは出身国のバランスが取れており、個人的にはワークショップ自体よりも、その休憩時間に出身国の文化や政治、問題点について話し合ったことが一番刺激的でした。現政権のもとでの各国のfreedom of speechについて議論したり、地元の価値観や慣習と関連させながら女性の地位について話し合ったりは、Political Science専攻でもなかなかない機会です。学生の問題意識の高さに驚き、同時にもう少し上手な英語で日本の現状を伝えることができなければという焦燥感にかられました。あまりにリーダーシップに関係ない話をしていたので、最終的には、「その各国の問題に、自分がどういうアプローチをとるか」で話をまとめました。

 

 

…と、春学期2か月間、おかげさまでとても元気に過ごしています。皆がSt. Patrick Dayで酔い狂う姿を横目に、友達と5時間カフェで喋り続けたり、YMCAのイベントにて伝統舞踊を鑑賞しながら多国籍の料理を味わったりと、なんとも私らしい生活を確立できるようになったのは先学期との違いでしょうか。さて春休みが終わればまた試験と課題の波が押し寄せてきますが、残された日々をマイペースに楽しんでまいりたいと思います。

 

蜀咏悄4

(写真4: バスケットボールの試合。試合終了わずか4秒前のゴールで見事イリノイ大の勝利!!)

 

最後になりましたが、いつも温かくご支援くださっているJICの皆さまをはじめ、家族と友人にこの場をお借りして感謝申し上げます。そして今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

勝田梨聖さんの2014年12月分奨学生レポート

JICの皆さま、そしてレポートを読んでくださっている皆さま、ご無沙汰しています。第39期奨学生の勝田梨聖です。日本では厳しい寒さが続いていると伺っていますが、いかがお過ごしでしょうか。こちらシャンペーンでは、午後5時頃にはすでに日が落ちているものの、気構えしていた程の極寒にはまだ達していないので心なしかほっとしています。

 

さて今回のレポートでは、Fall Semesterの総括として

  1. 授業
  2. 課外活動

III. 全体を通しての所感

に大別して振り返ろうと思います。

 

  1. 秋学期の授業について

早いことに留学生活も4か月が経過し、秋学期も期末試験を締めくくりにあっという間に終了してしまいました。

当初は慣れない授業形式や課題量に狼狽することも多々ありましたが、この半期でその環境にも馴染み、期末試験も大きな問題もなく乗り越えられたのは少しばかりの成長かと感じています。

 

今学期は以下の授業を受講しました。

CMN101: Public Speaking (Prof. Laura Gallant)

PS241: Introduction to Comparative Politics (Prof. José Antonio Cheibub)

PS240: Comparative Politics in Developing Nations (Prof. Matthew S. Winters)

GLBL250: Development (Prof. Kate Grim-Feinberg)

 

CMN101: Public Speaking (Prof. Laura Gallant)

このコースでは計5回のスピーチ、プレゼンテーションを行いました。前回のレポートではRound 1,2の紹介をしましたが、だんだんとハードルも上がり、Round 3ではinformative speech、Round 4ではproblem/solution speechを発表しました。トピックこそ好きなものを選べますが、Sourceであったり、Audience Adaption(大きな数字などを聴衆の身近なものに例示すること)を必ず三度は盛り込まないといけなかったりと課せられる数多のルールには悩まされました。しかし、Round 3ではコンゴの鉱物紛争と米国のドッド=フランク法について、Round 4では人身取引とマイクロファイナンスについてのプレゼンをしましたが、この(正直本当に面倒な)ルールがあったからこそ、よりプロフェッショナルなプレゼンスキルを磨けたのだと感じます。また、最後のクラスで、The Most Exciting Round 4 Awardとして賞をいただけたのは苦労が報われて非常に嬉しかったです。ファイナルのRound 5は昇進、結婚式などのcelebratory speechで、各々録画してきたスピーチを皆でドーナツを食べながらフィードバックし合いました。

Round 5だけでなく、このコース全般を通して、形容詞などの言葉の選択により着目するようになりました。クラスメートのスピーチには、自分では思いつかない英語独特の言い回しなどが多く含まれており、また授業中のジョークや友人同士のやり取りの中の目新しい表現にふれることができたのも、予期せぬ収穫です。

 

PS241: Introduction to Comparative Politics (Prof. José Antonio Cheibub)

民主主義や独裁主義と経済成長の関係などを扱った後、中間試験以降はより手続き的な分野、つまり選挙制度や政治体制そのものを学びました。こちらに関しては、もともと日本でも学んでいたため、特に大きな苦労をすることはありませんでしたが、クラスの友人もこの類の授業は受けたことがあると言っていたので、徐々に出席人数が減っていったのもそこに理由があるのではと感じました。しかし、例えばインドやイタリアなど個別のケースに当てはめて選挙や政権交代についてより具体的に考察したからこそ、もともとの知識を生きたものに変えられたと感じます。そして個人的には、ちょうど授業内容と同時に安倍政権の解散・総選挙が行われていたので、日本の状況と照らし合わせて応用することができたのは良いチャンスでした。

 

PS240: Comparative Politics in Developing Nations (Prof. Matthew S. Winters)

さて、冬の凍えるような夜空のもと夜七時に始まるこの授業は、教室と寮の往来こそ憎いものの、途上国の政治経済システムを多角的に考察し、自分の興味をより深めることができました。この講義の特徴は、一度扱った理論や考え方を、後にまた別の(一見関連のなさそうな)事象に当てはめて応用することで、新たな視点を加え、二つの事柄を繋げられる機会に富んでいることです。例えばコースの初めにcounter-factual(反実仮想)について考えましたが、今期の最後の最後まで幾度もこの考え方で、マイクロファイナンスや海外援助の効果についてアプローチしました。また、教授が海外援助、特に政府の開発援助であるODAが本当にマイクロレベルのdevelopmentに繋がっているという証拠はないし、逆に草の根レベルのマイクロファイナンスがマクロレベルの経済成長に繋がっているかは疑問だという意見は印象的でした。

 

GLBL250: Development (Prof. Kate Grim-Feinberg)

前回のレポートで苦戦ぶりをお伝えしましたが、相変わらずの活発な議論と大量のリーディングノートにも以前より余裕をもって臨めるようになりました。Module 1では経済学の理論や人間開発論をFirst World, Third Worldの両方の観点から考察し、Module 2ではそれをベースに各々、開発アクターを研究し、発表しました。クラスメートはUSAIDやSave the Childrenなどを調べていましたが、私はもともと日本政府の開発援助に興味を持っていたので、政府のODAについて、特に東南アジアの経済成長とインフラ拡充政策とともに発表しました。そしてModule 3では人権や環境など、世界の直面する問題を一つピックアップし、同アクターになりきって、それに対するアプローチを提案するケーススタディを行いました。私は日本政府とASEAN地域における人身取引について扱いましたが、言葉の使い方や、国益も考慮しなければいけなった点には特に苦労しました。

このコースでは、私の興味分野である開発について掘り下げられただけでなく、新たな興味も得られました。新自由主義的なIMF, World Bankや大国の介入政策が途上国の「開発」にどのような影響を与えているのか、何故未だに貧困がなくならないのか、オープンエンドでしたが、それらの大きな疑問について考えるために必要な道具を得ることができたと感じます。そして、新たに女性のエンパワメントについて興味を持つとは当初は予期していませんでした。途上国の女性のエンパワメントがどのようにdevelopmentを促進していくか、また女性と環境問題の繋がりについて、教授、クラスメートと議論しあったのは非常に刺激的でした。

 

  1. 課外活動

・Intersection

LLC(Living Learning Community)のひとつであるIntersectionでは、同じ建物、同じフロアに住みながら、ジェンダー・宗教・人種・貧困に関する問題を考え深める機会を提供してくれます。この四か月間で多くのイベントがありましたが、なかでも最も大きなイベントである10月末の一泊二日旅行についてお話します。

この旅行自体はRacismがテーマで、オハイオ州のNational Underground Railroad Freedom Centerにて、過去の奴隷制度やthe modern day of slaveryと呼ばれる人身取引について学びました。また旅行2日目にはインディアナ州のEiteljorg Museumにて、ネイティブアメリカンの歴史や芸術文化、生活にふれることもできました。

Freedom Centerの名前にあるUnderground Railroadとは、かつて自由を求めて逃げてきた黒人奴隷を北部へと逃がすために作られた通路を表します。そして、奴隷制を支持していたケンタッキー州と、奴隷制を禁止していた自由州であるオハイオとを分けていたのが施設に面するオハイオ川です。Freedom Centerではスタッフの方が常に解説をしてくれたのですが、南北戦争以前、南部からの黒人奴隷にとってこの川を渡って北へ行くことは自由を意味していたと、実際のオハイオ川を目の前にして聞いた時にはその川が当時の奴隷と自由の世界を体現しているように感じました。また、奴隷となった人々の録音された声を聞くことができるブースにて、ある時Freedom Centerを訪問していたあるガーナ人女性が、自分の地方の方言が聞こえたと言って激しく泣き始めたという話も伺いました。今回の訪問やスタッフの解説でアメリカの歴史を身近に感じたとともに、人種という概念とその歴史をより強く意識するようになりました。

写真1(オハイオ川)

(写真1  Freedom Centerから臨むオハイオ川)

・Trip to Chicago

センクスギビング前の金曜日から日曜日にかけて、授業が一緒の友達と隣の寮に住む友人らとでシカゴへ遊びにいきました。実は初めてのシカゴ観光であり、高層ビルやsubwayの複雑さになんせ混乱してしまいましたが、多くのショッピングモールを回ったり、名物のイタリアンビーフバーガーやチャイナタウンの本格中華料理を食べたりと、シカゴを充分満喫することができました。特にディズニーストアにて、あまり詳しくないキャラクターに囲まれて隣のキッズたちと一緒にテンションが上がってしまったのが思いの外、自分でも驚きです。唯一、深さ5センチ以上の「ディープディッシュピザ」を食べそびれたことが心残りなので、また次回の楽しみに置いておこうと思います。

写真2(Chicago)

(写真2 イタリアンバーガーのお店にて)

 

・Alternative Spring Break

Fall Break, Winter Breakなどの休暇ごとに寮から無理やりkick outされるので、休暇中のプランは必ず決めておかなければなりません。Fall Breakには、過去の奨学生が数名参加されていたYMCAのAlternative Spring Breakというcommunity developmentを促進するボランティアに応募し、インディアナ州にある家庭内暴力の被害を受けた家族の保護施設と子どものデイケアセンターであるMiddleway Houseを学生13人で4日間訪れました。

初日の研修以外は、3日間正午から夜8時まで子どもとただひたすら遊びます。研修ではDVに関する根本的な知識や、施設概要、またDVによって大切な人やモノを失っていくことをリアルに感じられるようなゲームをしました。一日目に、DVを受けた子どもの心の傷や、それに伴う感情の起伏の激しさなどを聞かされていたので、子ども達にどう接すればいいのかと少し気構えして二日目を迎えましたが、いざ子ども達に会うと、まぁとにかく元気なこと。いきなり始まる強制参加のアメフトゲームでボールを持った男の子が私のお腹に直撃してきたり、かと思えば警察ごっこが始まって手錠をかけられ監禁されたりと、一日中子ども達と遊んだ後の夜は疲れ切って、ただの床でさえも良い睡眠がとれました。また中には、施設内や公園で遊んでいる時、常に私たちにひっついていないと泣き出してしまう子どももいれば、いつも一人で、なかなかこちらに近づこうとしない子どももいます。彼らとの適切な距離感こそ難しかったものの、どの子どもでも「気にかける」という姿勢は常に意識しました。

(余談ですが、一世を風靡したDisney映画のFrozen, “Let it Go”が流れた時は子どもが手をとめて一斉に大声で歌いだし、「アナ雪」の影響力を再び実感せざるを得ませんでした。)

この四日間は学生の完全な自炊生活ですが、施設から宿泊所へ帰った後に晩御飯を一緒に作ったり、映画『ハンガーゲーム』を鑑賞したり、皆で踊ったりと共同生活も楽しめました。彼らとは旅行後も時々集まって一緒にご飯を食べることもあり、施設での貴重な経験だけでなく、UIUCでの大切な仲間に出会えたことにも感謝です。

写真3(YMCA集合写真)

(写真3  最終日の集合写真)

 

III. 全体を通しての所感

つい数日前、ルームメイトとこの半期を振り返っていました。彼女曰く、今期が始まった当初、私があまり元気のなかったのを見抜いていたそうです。(時差ぼけのせいだと思っていたそうですが。)「今は仲のいい新しい友達もできて、授業も生活も楽しんでいるようで良かった」と言ってくれた時、たった四カ月ですが自分の得たものの大きさを改めて実感しました。

ある時、Champaignの住所のはずが、正反対のUrbanaの同じ住所に向かってしまい、ドアベルを鳴らして出てきた家主と子どもにあれほど訝しげな眼で警戒されたことはありませんが、そのあとChampaignの住所まで歩いた計3時間の旅も今では良い思い出です。

 

さて一年ももう終わりに差し掛かっていますが、来年の目標を先日友人とそれぞれ紙に書きました。それをお互いに交換し合って、ちょうど一年後の12月に本人の住んでいる場所へ郵送し、達成できたか確認することになり、一年後の楽しみがまた新たに増えたところです。

写真4(New_Year_Resolution)

(写真4   2015のNew Year’s Resolution作成!)

 

 

最後になりましたが、この四か月間たくさんの学びや気付き、経験の機会を与えてくださったJICの皆さまにこの場をお借りして感謝申し上げます。皆さまも、穏やかな新年を迎えられますようお祈り申し上げます。

勝田梨聖さんの2014年9月分奨学生レポート

JICの皆さま、ご無沙汰しております。そして、レポートを読んでいらっしゃる皆様、はじめまして、神戸市外国語大学 国際関係学科 三年生在籍の勝田梨聖と申します。この度は、第39期奨学生として1年間、イリノイ大学アーバナシャンペーン校で留学する機会を賜り、幸甚に存じます。

こちらイリノイ州へ渡ってから一か月以上経過したことがとにかく信じられませんが、予想以上に早く環境に適応でき(いや、むしろ海外にいるという感覚すらあまりない気がします)、気温の変動にも少しばかりは慣れ、迫りつつあるMid-term examsの準備をしながら本レポートを書いている次第です。

 

今回の9月レポートでは、

  1. 留学までの経緯

II.授業

III. キャンパスでの生活

に分けてご報告したいと思います。

 

I.留学までの経緯

今こうして、アメリカという異国の地で、そして現地の大学で学生と一緒に学んでいるなど、一年前では想像もできないことでした。もっとも、私は大学入学時から漠然と「留学したい」という思いを抱えていたものの、具体的に何を学びたいか、何のために高額を投資してまで留学するのか、などと言った疑問に答えることはできませんでした。

「とにかく留学すれば何か見つかるかもしれない。」むしろ、そんな気持ちにすがっていた節があるように思えます。

 

大学一年生の秋、大学で募集していた交換留学制度(二年生9月からの一年間)に応募してみようと踏み切り、チューターの教授にサインを求めて研究室へ行ったときのことでした。留学の志望理由、将来へどう活かすか、あれやこれやと説明したものの、それを聞いた教授の返ってきた返答は「どうしてそんなに急いでいるの?」でした。どこかで耳にしたことのあるような継ぎ接ぎの言葉での志望理由や、はっきりとしない留学の目標を、どうやらその教授は見抜いていたようで、そんな「とりあえず留学してみよう」という気持ちの公立大の学生が、市民の税金を使わせていただいてまで留学する意義が見えてこない、と言われました。当初は、それでも自分なりによくよく考えて出した結論のつもりであり、反抗期のように「分かってもらえなかった」なんて実は思っていたりもしましたが(笑)、それでもやはり心に引っ掛かる部分もあり、交換留学は断念することにしました。

 

そして自分の中での大きな転機が訪れます。大学二年生に入り、国際協力の活動に取り組むようになりました。もともと国際関係学科に入学したのも、途上国支援に興味があったからでしたが、この活動を始めて、日本での活動以外にも、実際にアジアの途上国や村々を訪問、視察し現地の人々と交流する中で、途上国の開発について考える機会も多くなりました。と同時に、現在在籍する大学では、深く開発について掘り下げる授業が残念ながら少なく、メディアや本、知り合いのNGOの方々や他大学の教授、また同じく国際協力団体を運営する学生同士の関わりのなかで、経験をもとに国際協力について考える機会が多くなったのです。そして、学生団体の弱みや限界、開発に関する自分の知識不足をひどく痛感するとともに、将来もっと本格的に開発に携わっていきたいと考えるようになり、より学術的な分野での「途上国開発」を学ぶため、海外の大学で学ぶという道を再び目指すことになりました。

 

もちろん留学をきっかけに新たな興味を持ち、想像していた道とは正反対に進むこともありますし、あまり偏狭に留学前から決めすぎるよりかは、どっしりと広く構えていた方が良いと思います。それでも、留学の基本的な目的を見つけ、それを達成する手段として、恵まれたことに、JICの皆様が私に留学の機会を与えてくださったおかげさまで、望んでいた開発の授業や国際関係学を学びながら、とても充実した日々を過ごしています。(ちなみに、かのチューターの教授はなんと三年次から私のゼミの先生となり、留学することを伝えたところ、「ほら、急がずに待っていてよかったでしょう」とのお言葉をいただきました。)

 

長々と語ってしまいましたが、これからの一年は、日本での環境では経験できないような活動や授業を通して、より一層自分の興味を掘り下げ、またあわよくばもっと足を動かして、新たな面白いことを見つけられればと思っています。

 

II.授業

秋学期は、履修登録期間中にあれやこれやと授業に顔を出しましたが、以下の授業を受講することにしました。

CMN101: Public Speaking (Prof. Laura Gallant)

PS241: Introduction to Comparative Politics (Prof. José Antonio Cheibub)

PS240: Comparative Politics in Developing Nations (Prof. Matthew S. Winters)

GLBL250: Development (Prof. Kate Grim-Feinberg)

 

CMN101: Public Speaking (Prof. Laura Gallant)

この授業は過去の奨学生の方々も多く取っていらっしゃり、おすすめだと伺ったので受講することにしました。私以外全員ネイティブスピーカー、または在米歴の長い生徒で、なんとなく最初は気が引けていましたが、クラス外でも”HEY, RISE!!”なんて声を掛けてくれるので、今はとてもリラックスしながら授業を受けています。ただ最も苦労するのは授業内の即興スピーチであり、脳内で瞬時に構成を考えて喋ろうと思ってもなかなか上手くはいかず、残念な結果に終わって悔しい思いもすることも…。それでもネイティブが(勿論のこと)自由に言語を操り、効果的な言い回しやデリバリー技術を交えながらスピーチする姿には毎回学ぶものが数多あります。最近のスピーチでは6分間のデモンストレーションがテーマで、日本人であることを活かし、風呂敷を使ってバッグを皆の前で作りました。たった一枚の布でカバンを作ることに対し、”Are you kidding?” と訝しげでしたが(笑)、無事成功し良い反応を得られました。そのほかにも、リュックの詰め方、背負い方のデモンストレーションを1人ずつ行いましたが、本を投げ入れる”Throwing Method”や逆に異常なほど丁寧に扱う”Treating with Care”など個性のある即興スピーチを見たり発表したりできる、とてもユニークな授業です。

 

PS241: Introduction to Comparative Politics (Prof. José Antonio Cheibub)

この授業では、先進国、発展途上国、中進国における政治体制、経済の仕組みなどのバリエーションをまず比較し、そして何故その違いが生まれるのか、またその違いによってどのような結果が生まれるかを考察していきます。そのような”Why?”や”How?”の疑問に答えるために仮説を立て、その仮説を立証するために方法論を交えながらデータを分析していきます。基本的にはその国の経済レベルや国民の自由度などを参照しながら、主にProf. Cheibubが論文で発表したD&D (Democracy and Dictatorship)measureを用いてリサーチを進めているのですが、民主主義か独裁主義か判断する前提として、民主主義の最低限必要な要素は何か、選挙にどんな条件が必要か、そしてそれらを基に考えると、例えばボツワナは民主主義か独裁主義か…、こういった疑問をデータを根拠に考えていきます。また、数字を分析するだけでなく、周囲の学生と議論する中でも、自分1人では気付けなかったような新しい考え方を得ることもあります。日本では、GDPやGNIなどのデータをこれほど細かく比較をしながら政権について考える機会があまりなかったので、理論的な根拠を手掛かりにWhy?やHow?について思考するのはとても興味深いです。

 

PS240: Comparative Politics in Developing Nations (Prof. Matthew S. Winters)

昼間のパートが他の授業と重なったため、講義は夜7時からという何とも微妙な時間帯を選択せざるを得ませんでしたが、この授業では途上国と先進国を比較分析しながら、政治と開発の関係について考察を進めています。この授業で一番面白いのは、”counter-factual”(反実仮想)について、つまり、もしこの事実が存在していなかったらどうなっていたかについてディスカッションすることで、ミレニアム開発指標がもし存在していなかったら、果たして平均寿命や就学年数に改善はみられたかどうか等を皆で考えます。経済開発だけが民主化を推進するのか、資源と独裁主義にはどのような因果関係が存在するのか、教授から次から次へと投げかけられる疑問に英語で自分なりの意見を組み立てるのには(時間帯も関係するのでしょうか…)とても苦労しています。また、ベースとして、上述のProf. CheibubのD&Dや、それとは異なる測定方法を用いたデータを使用していますが、そもそもデータの裏付けとなる個々の地域の背景知識が不足しているとひどく痛感します。そこで、毎週の課題に取り組みながら、インターネットという文明の利器を駆使して、民主化の歴史や経済状況を学んでいるところです。

PS241にも当てはまりますが、日本の大学とは違って、これらの授業は週に3回、各1時間ずつ(教授によるレクチャーが2時間、TAが進めるディスカッションが1時間)あり、授業間の間隔が大きく空かないことと、1時間という比較的短時間の中で集中して学べるというメリットがあり、効率的だと感じます。また、TAがレクチャーのカバーとして補足説明をしてくれるので、理解をさらに深めることもできます。

 

GLBL250: Development (Prof. Kate Grim-Feinberg)

さて、今学期ずば抜けて最もしんどく、同時に一番楽しんでいるのがこの(途上国)開発の授業です。現在はまだ第一段階ですが、”Third World”の民主化運動や政治腐敗の歴史のみならず、ケインズ派、古典派、新古典派などの経済学の理論や人間開発論を基に、First WorldとThird World側の考え方の相違について学びます。そもそも「開発」とは?それぞれの主義や理論は開発にどう結びついているか?そして、どういった開発援助方法がもっとも成功しやすいのか?こういった抽象的な疑問を学期末にはケーススタディを通して答えられるようになることがこの授業の目標です。

ところで私がこの授業で非常に苦労している理由は、課題の量と授業形態にあります。火曜日と木曜日の週2回の授業ですが、毎回30~40ページほどの理論と具体的な歴史の描写がぎっしりと書かれているテキストをワードファイルに纏めて、完全に理解しなければいけません。でなければ、次の授業で文字通り取り残されてしまうからです。受講生は10人ほどの少人数ということもあり、こじんまりしている分、議論がとても活発です。教授が概念の整理をするものの、基本的には常に質問や意見が飛び交う80分のディスカッションのようなもので、「今回の課題テキスト、どんな内容だったっけ」ではあっという間に置いて行かれます。当初は、学生の話すスピードに、唯一のノンネイティブである私の英語力がついていかず、明らかに議論にあまり参加できていなかったため、学生の動かす口を眺めながら、ただ「この授業をドロップして次学期に受講するべきか否か」についてひどく悩んでいた程です。しかし教授に相談したところ、「確かに言語面での心配は抱いているとは思うけど、あなたなりの視点をきちんと提供してクラスに貢献している」との言葉をいただき、それ以来は前向きに考えられるようになって、”Better than the last time”を目標にトライしています。それからは、(授業にもきちんと集中し(笑)、)以前よりも積極的にディスカッションに参加できている自分を実感でき、大量の課題にも少しは効率的に取り組めるようになりました。

自分が一番学びたい内容であったからこそ、言語がネックになっていることに悔しさを強く感じますし、教室に入る前には「よし…80分!」と気合注入が必要ですが、それでも根気強く、そして何よりも非常に楽しみながら取り組んでいます。

 

III. キャンパスでの生活

一か月もすればすぐ寒くなるだろうと思い、あまり夏物の衣服を持ってこなかったため、なんとか今まで大学で貰ったfree T-shirtsで毎日を凌いでいます。一時期は息も白くなるくらい冷え込んだものの、またすっかり夏に戻り、かと思えば急に激しい雷雨に襲われ…慌ただしい天気が続き、風邪を引いている学生がちらほら。それはさておき、最後にキャンパスライフについてご報告いたします。

 

*暮らし全般について*

出国の準備、学生団体代表としての最後の運営、大学の試験勉強、アルバイト、友人との別れなどを済ませ、最後の一瞬まで忙殺されながら日本を発ちました。そして到着したシカゴのオヘア空港。イリノイ大学までの直行バスから眺めたあたり一面のコーンフィールドと夕焼けは目に強く焼き付くほどの絶景で、長旅を癒してくれました。(後ほど地元住民にそのことを伝えると、「そんな人初めてだよ(笑)」なんて驚かれましたが…)

右も左も分からない状態で飛び込んだキャンパスですが、到着後一週間は授業がなく、毎日オリエンテーションやパーティーの連続です。インターナショナルの学生向けパーティーに行っては友達を作り、ワイワイ盛り上がっては寮に帰って、翌朝も手続きを済ませてはよく分からないイベントへ…。また、とにかく時間がたくさんあったため、台湾人と日本のカレーを求めて、あてもなくキャンパスからはるか離れた場所をさまよい、ひどく空腹状態の中、案の定帰宅困難に陥ってしまうなんてこともありました(笑)

 

(勝田)写真1

(お喋り中に、マジシャン到来。皆、釘付けです!)

 

…と非常にエンジョイしているように聞こえますが実は、ネイティブスピーカーの言葉の流れるスピードに圧倒され、且つ思うように英語で表現できないなどの精神的な悩みや、wi-fiが繋がらない、大学内のバスで未知の住宅地へ迷い込むなどのトラブルも重なり、最初の数日間はとてもブルーな気分でした。図書館のソファにバタッと倒れこみ、友人らが出国前にプレゼントしてくれた「元気が出るソング集」を聴きながらただ茫然と時間を過ごしていたこともあります。

しかし一か月半が経った今は、授業、勉強、遊びにもリズムが付き、この生活に随分と慣れました。語学に関しては、自分にはまだまだ鍛錬が必要であることを認識し受け入れ、落ち込むだけでなく何が必要か、どうすれば向上するかを模索しています。例えばBCC, CNNなどのラジオを就寝前に聴いたり、TEDで興味のあるプレゼンを観たり、友人の会話で「これ使える!」なんて表現はその場で吸収して自分のものにしたりしています。おしゃべりの後に「あれは、こういう表現の方が良かったなあ…」と、1人でぶつぶつフィードバック(?)をしながら歩いていると、友達にバッタリ。「リセ、何喋っていたの?」と聞かれ、あたふた。とりあえず一通り挨拶を交わした後に、「さっきの挨拶はこう言うべきだったな~」とまたぶつぶつ。そんな繰り返しです。

 

(勝田)写真2

(友人とテニスの様子。写真フォルダを見ると、あまり写真を撮る癖がないことに気が付きました。)

 

*LLCのIntersectionについて

私はこの一年間、Living Learning Communityの一つ、Intersectionというグループに属しています。メンバーは寮の同じ建物に住んでいるので、シャワールームであれ、階の端と端であれ、どこでも挨拶を交わしたり、一緒に遊びに出掛けたり、いわゆる大きな家族のような存在です。Intersectionでは、多様性(diversity)を尊重し、ジェンダーや人種に関する問題を一緒に考え、議論する機会が多くあります。つい最近では、ラウンジで皆が集まり、トランスジェンダーをテーマに白熱したディベートが繰り広げられました。最も沸騰した議題は「身体的には男性だが、精神的には女性である学生を女子寮へ受け入れるべきか」で、一方は当本人側に立った主張を、もう片方のチームはその周囲の人間(女子寮)側の立場から意見を交わしました。もちろんオープンエンドで終わりましたが、アメリカという様々な背景を抱える人々が集まる社会で生活する上で、他人事として避けることのできない問題であることを改めて実感できた非常に刺激的な時間でした。

(勝田)写真3

(ディベートの一幕)

 

*ルームメイトについて*

実はとても心配していたのがルームメイトです。私は外に出ることも好きですが同時に、個人の時間、空間も特に必要とするタイプですので、部屋を一年中シェアするという初めての経験に耐えられるか不安でした。しかし、それも杞憂に終わり、むしろ彼女と一緒に住めて良かったと思っています。私のルームメイトは香港出身、同じく三年生でなんと私と一日違いの誕生日!性格的にも共通点が数多あり、partyも好きだけど、勉強優先という同じスタンスを持つため、日曜日は朝から部屋で静かに勉強、ご飯を食べてひたすら喋って、また勉強、食事の後はリフレッシュにジムで一緒に汗をかき、私は中国語で、彼女は日本語で「おやすみ」と言って就寝するのが習慣となっています。勉強に疲れた時は、電気を消して二人でホラー映画大会、散歩や買い物をしてお互い切磋琢磨、支え合える非常に良いルームメイトを持つことが出来ました。また、お互いの国について、特に現在起こっている香港での学生運動を話し合うことができるのも貴重な経験です。

 

他にも、JCT(Japanese Conversational Table)に参加したり、茶道や浴衣などの日本館でのイベントに顔を出したりと、課題に追われているものの、出来るだけ外に出るように心がけています。

目下、授業の理解はもちろん、アカデミックな内容をきちんとロジカルに伝えられる英語力と、人の名前と顔を一致させること(笑)が目標です。(一度会った友人とfacebook上でテニスをする約束をしたものの、想像していた友人と名前はおろか、性別さえ違うこともありました。さすがに危機感を覚えた一瞬です。)

 

早いもので一か月半が経ちましたが、まだまだもっと有意義にこの機会を活用できるようにも感じているのが正直な心境です。しかし、ここへ来た理由である軸は忘れず、この環境でしか挑戦できない境地をどんどん切り開いていきたい気持ちが日に日に強くなっていますので、今後が自分自身、楽しみです。

最後に、改めてJICの皆さま、この度は留学という私にとって大きなチケットを与えてくださり、ありがとうございます。あと残りの七か月半を思う存分楽しみ、意義のある生活にしていきたいと思っていますので、どうか温かく見守ってくださればと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

 

第39期JIC奨学生

勝田梨聖