川崎藍さんの最終奨学生レポート

1年間の留学生活を終え、無事帰国された川崎藍さんから最終の奨学生レポートが届きましたので紹介します。

2006-07-report-kawasaki-001.JPG

JICの皆様、お久しぶりです。日本に帰り、早一ヶ月が経ちました。
帰ってきた直後は、人ごみの中で飛び交う日本語がとても不思議に感じましたが、何も考えずに電車に乗ったり、買い物が出来ることの素晴らしさを実感する毎日です。
私は四年生を休学して留学していたのですが、来年の卒業後は日本で大学院に行こうと決め、最近は専ら研究室訪問や試験勉強などをしています。

さて、今回は学期後の旅行について少しと、一年間を通して考えたことをお伝えし、最終レポートとさせていただきます。

2006-07-report-kawasaki-002.JPG

*旅行*
ナイアガラの滝~トロント、シカゴの旅

学期後は、イリノイで一番仲のよかった韓国人の友達と、女二人旅をしてきました。行き先は、トロント、ナイアガラの滝、そしてシカゴです。
連日雨という天気予報にもかかわらず、ほぼ晴天に恵まれ、留学生活をしめくくる最高の旅行となりました。そして感じたのは「この一年間で随分たくましくなった。」ということです。
トロントのユースホステルでは、予約時の3倍(!)の値段を請求されたり(結局払わずにすみましたが)、飛行機出発の30分前に空港に着いたり(バスが何時間も遅れ)もしましたが、もうそんなハプニングでは動じなくなりました(笑)。
そ して最後にシカゴに戻り、去年の八月Chicago Weekendで来たのと同じ場所にもいくつか立ち寄ると、「あぁ、留学生活が終わったんだな」と、とても感慨深くなりました。まだまだ観光気分で歩いた 一年前。英語も、この先何が起こるかも、ほとんどわからなかったあの頃。一年間で本当にいろんなことを経験し、成長できたことの幸せを実感したひと時でし た。
ちなみに、今回もChicago Weekendのときと同じHi Chicagoというホステルに泊まったのですが、そのときと同じ部屋に割り当てられたときは(数十部屋あるにもかかわらず!)、なにか運命のようなものを感じてしまいました。

2006-07-report-kawasaki-003.JPG

*一年間を振り返り、自分が学んできたこと*

日本人であるということ

甲田さんが前回のレポートで書いたのと少し似ますが、他の国に来て自分が日本人だということを意識するようになるというのは、多くの方が経験することだと思います。
私 の場合、Champaignに多くいた韓国人たちとの出会いが、自分のNationalityについて考えるきっかけとなりました。両親よりも年上の世代 の方々と仲良くなると、「教科書問題、竹島問題、靖国参拝」についてどう思うか、と聞かれることがしばしばあったのです。たとえば、「日本の歴史の授業で は、韓国に対してしたことを隠しているというのは本当か」など。中には意見を聞くだけでなく、日本に対する憎悪をあからさまにぶつけてくる人もいました。 韓国産のお菓子の袋にまで「竹島は韓国のものだ!」と書かれていたのには正直びっくりです。そしてなによりもショックだったのは、むこうで一番仲良くして いた韓国人の友達に、”I like you, but I hate Japan.” と言われたこと。専攻Political Scienceである彼女は日韓問題に対してもとても強い主張を持っていて、「二ュースで見てなんとなく知っていた」くらいの私には、その場できちんと返 答できず、とても悔しい思いをしました。
そんなことが何度かあって、自分でもネットでこの問題について調べるなどして、少しはまともに意見を返せ るようになりました。また、それからというもののニュースを見ていても、あぁこの問題は他人事ではない、自分の国の問題であり、自分も考えなくてはいけな い、と意識するようになりました。
日本人だからといって、日本がしていること、してきたこと責任をとらなくてはいけないとは思いません。しかし、 自分の国がどのようなことをしてきたのか、どんな対応をしているのかを把握し、それに対しての自分なりの意見を持つことは、国民としての義務ではないかと 感じています。

2006-07-report-kawasaki-004.JPG

そしてこれから

留学をすると、自分の国の外の世界を見ると同時に、自分の国を外から見ることもできます。その結果、自分の国に対する見方 が変わることもあると思います。私の場合、留学前は漠然と、日本ではなく海外で働きたいと考えていました。でもそこには大して特別な理由があったわけでは なく、日本という狭いところに留まっているより、アメリカみたいに、いろんな人の集まるところのほうが面白そうだ、といったぐらいのものでした。しかし、 中国やフィリピンからきた留学生との会話の中で、彼らは国の政治を変えるため、科学を発展させるために、母国では学べないことをアメリカで学んでいる、と いうのを聞いて、私は「はっ」とさせられました。
いままでは「日本のこんなところがよくない」と考えるばかりで、「自分がそこを変えたい!」と思 うことはなかったと、気づいたのです。いま、まさに発展期にある国からきた学生には、「自分たちが国を変えるのだ」という意識が日本の学生に比べて非常に 高いという印象をうけましました。
日本もかつて、そういう人たちの力によってここまで発展してきたのでしょう。日本のように、便利で自由な生活が 当たり前になっている中では、「自分たちでよりよい生活に」と考えるのが難しいのもかもしれません。しかし、それが当たり前でないということに気づかず に、この状況に甘んじていては、日本はどんどん他の国に追い抜かれてしまうのではないかなと思います。「そんなのは、とても悔しい!」と思った私は、まず は自国である日本で活躍したい、日本をもっとよくする力になりたい、と考えています。

2006-07-report-kawasaki-005.JPG

結局この一年間で私が学んだのは、学問そのものよりも、人生勉強のようなものの方が大きかったように思います。そしてそれは、なによりこのプログラムがと ても“自由”であったことのおかげです。自分が好きなことを勉強し、面白そうなことに参加し、やろうと思えば何でも挑戦できる、という自由。
この 先も、大学院留学、会社に入ってからの留学など機会はあるかもしれませんが、それには資格取得や研究という目的があり、結果を出すという責任が伴うため、 ここまで自由にというわけには行かないでしょう。最初はその自由さに戸惑いもました。自分が本当にしたいことは何か、もっと英語の勉強をしてから来るべき だったのではないか、などなど。
しかしこうして一年を振り返ってみると、そういうことに悩んだことも含め、今しか出来ない、そして将来へ向けて決断を始める今だからこそ意味のある、たくさんの経験をすることが出来ました。これぞ、JIC奨学金留学の魅力だと思います。
これ見ている、この先留学する皆さんには、「留学とは、こういうことを体験するものだ」といった枠にとらわれず、面白そうなことにはどんどんチャレンジして、自分だけの留学生活を築いてほしいと思います。

2006-07-report-kawasaki-006.JPG

最 後に、このような制度を支えてくださるJIC関係者の皆様、留学中に何度も支えてくれた家族や友達には、一言では表せないほど感謝の気持ちでいっぱいで す。この経験を自分の将来のため最大限活用すると共に、より多くの人にこのような体験味わってもらえるよう、還元していけるよう頑張りますので、今後とも よろしくお願いします。

2006年7月3日
川崎藍

写真

 

1、2:ナイアガラの滝
3:シカゴ(Sears Towerの展望台より)
4:学校にて
5:HousematesとのFarewell Party

6:一緒に頑張った仲間と

川崎藍さんの奨学生レポート

現在イリノイ大学に留学中の川崎藍さんからのレポートです!!

2006-05-report-kawasaki-001.JPG

待ち遠しかったお花の季節はあっという間に終わり、キャンパスは今新緑に包まれています。フリスビーや読書、日光浴をする学生で再び賑やかになった Quadを通り過ぎるたびに(写真1)、昨年八月に来た当初のことが思い出され、つくづく時が経つのは早いと実感させられます。さて、今回のレポートでは 授業、春休みについてお伝えしていきます。

2006-05-report-kawasaki-002.JPG

*授業について*

より具体的で、刺激のある授業

今学期はIntro Food Science & Nutrition (FSHN101), Medicinal Plants and Herbology (HORT180), Statistics (STAT100), Public Speaking (SPCM101), Concert Band II (MUS 272) の計13単位を受講しています。

先学期も含めてこちらの大学の授業について感じたことをお話したいと思います。それはどれも実 社会との結びつきを重視した内容だということです。100番台のintroductionのクラスはもちろんのこと、400番台の生物の授業にも言えるの は、授業で習うのが教科書に書かれている理論だけではなく、それが身近なところではどのように応用されているのかにも深く触れているということ。

た とえば先学期のCell Structure and Function (MCB400)では、前半に基本的な細胞間シグナル伝達の仕組みを学び、後半はそれが実際どのように働いているのか、具体的な症例(sleeping disorderや白血病など)を学びました。週に一回のディスカッションのクラスでは、その週に扱った症例の論文を探してきてgroup presentationをします。私は、日本では理論生物学を中心に学んできたのですが、あまりに漠然としていて自分の興味を絞れずにいました。このよ うな授業がもっと多くなれば、日本でも学生が自分のキャリアをより具体的にイメージできるようになるのではないでしょうか。日本に比 べ、(Undergradを含め)大学で学んだことがより直接的に将来の仕事につながるというのも、このような授業をより活発にしている一因だと思いま す。

また今学期受講しているクラスでは、Public Speakingがいい例でしょう。他にも多くの奨学生がこのクラスの魅力を十分に語ってくれているので、内容についてはそちらをご覧ください。
さ て、このクラスでインストラクターが毎回強調しているのは、”What you are learning in this class is not only for in the class. You can apply those skills in many situations in your real life.”とい
ことです。この言葉は私がUIUCで受講してきた他の授業にもよくあてはまることで、それが授業をより刺激的な、面白いものにしてくれているのだと思います。

私 の場合、“the situation in the real life”とは、二月にCosmopolitan Clubで行われたJapanese Coffee Hourでの日本を紹介するプレゼンテーションのことでした。(Coffee Hour はおかげさまで大成功を収めることが出来ました。詳しくは甲田さんがお話してくれるはずです!)このイベントでは各国の料理とプレゼンテーションがメイン なのですが、これまで数々の国のCoffee Hourに参加した結果、このプレゼンの良し悪しがイベントの成功を大きく左右するという分析に至りました。そのためプレゼンが始まる直前まで、日本代表 (少し大袈裟?)という大役を私が引き受けていいものだろうかと、不安な気持ちでいっぱいでした。ところが始まってみると、意外にも観客の反応を楽しみな がらスピーチをしている自分がいました。日本語でもあんな大勢を前に話したことなどなかったのですが、今ではスピーチ中の程よい緊張感、笑いをとれた時の なんともいえない気分、そして話し終わったときの爽快感など、人前でスピーチをすることにある種の快感を覚えています。Public speakingのクラスがどれだけ偉大だったかがおわかりいただけたのではないでしょうか。

ちなみに肝心のプレゼン内容ですが、あるお客さんから「これまでも日本に興味があったけど、今日のプレゼンは今まで知らなかった日本の一面に触れていてとてもよかったよ。」というコメントをいただき、この役を引き受けて本当によかったなと感じています。(写真2)

2006-05-report-kawasaki-003.JPG

“Don’t be afraid of making a mistake”

Concert Band IIは、音楽が専攻じゃなくても受講できると聞いて先学期から楽しみにしていたクラスです。オーディションがなく、各自が希望の楽器を演奏できるというま さに”class for fun”。そのおかげで私のパートであるAlto Saxが異例の10人(通常2~4人)というアンバランスなバンドが出来上がりました。しかし”for fun”といっても、週に三回練習し、学期の最後にはKrannertの一番大きなホールでコンサートをさせてもらえたのですから、けっこう本格的です。

私 は中学時代吹奏楽部に所属していたのですが、当時は指揮者が恐くてびくびくしながら演奏していたのを覚えています。そんな私に、音楽はまず楽しいものなの だ、ということを教えたのがこのクラスでした。勉強の気分転換にととったのですが、素晴らしい指揮者に恵まれ、彼らからいろいろなことを学ぶことができま した。特に印象的だったのが、コンサート直前のリハーサルで指揮者のTimが全員に向けて言った言葉。「バッターボックスで見逃し三振するのでは、野球を 本当に楽しむことができない。空振りでもいいから、思いっきり振り切ったほうが数倍気持ちいい、“don’t be afraid of making a mistake, there is nothing wrong about making a mistake. Rather have fun!”」この考え方は、音楽だけじゃなくこれからいろんなことに挑戦するに当たって、心にとめておきたいと思いました。コンサート当日はたくさんの友 達が観にきてくれ、楽しく演奏をすることができ、とても満足しています。

*春休み ~Alternative Spring Break~*

Native American Issues

3 月の下旬には一週間の春休みがあり、私はYMCAが企画するAlternative Spring Breakという泊りがけのボランティアプログラムに参加しました。後から知ったのですが、これはアメリカの学生の間ではかなり有名なプログラムで、全米 では1000校が参加しています(なんとあのMTVもプロモーションに参加しているようです)。簡単に説明すると、春や秋などの短期休暇を利用して、ボラ ンティア活動をしようという学生によるプログラムです。内容はNYでのホームレス体験といったユニークなものから、ハリケーンKatrinaの被災地救済 までバラエティーに富んでいて、学生によるプログラムといえどもよく計画されているなという印象を受けました。

15個以上あるプログラム の中で私が選んだのはNative American Issues in South Dakotaです。前回のレポートでお伝えしたアムトラックの旅での経験があったため、これだ!と思い選考に通って喜んでいたのですが・・・”I’m going to go to South Dakota for the spring break.” というたびに返ってくる反応は決まって「そんなところにわざわざ何しにいくの?」といったものでした。そうなんです、行き先を気にせずに応募したものの、 South Dakotaには何もないんです・・・とうもろこし畑しかないと散々言われているChampaignが、何倍にぎやかだと感じたことか。しかもイリノイよ りも北に位置するため、その時期でもまだ雪が降っているというのです。

2006-05-report-kawasaki-004.JPG

し かし、結果的にはこれまでの留学生活で最高の体験となりました。一緒に過ごした10人の仲間、現地で温かく迎えてくれた人たち、そして現地の人が熱く語っ てくれたNative Americanの文化と歴史。どれもすばらしい思い出です。特に20時間以上のドライブを共にし、一緒に子供たちと戦った(といっても雪合戦で)メン バーの結束は強く、プログラムから帰った後も思い出話をしては盛り上がっています(写真3,4)。

具 体的には、Reservationと呼ばれるNative American が生活する地域のYMCAに泊り込み、放課後に遊びに来る子供たちの世話をしたり(なかには親がアルコール中毒だったりと問題を抱えている子供も多く、 YMCAは彼らにとって貴重な場所です)、YMCAに寄付された服の仕分けをしたりしました。このプログラムの優れているところは、単に仕事をするだけで なく、そこで起こっている社会問題についても学ぶことができることです。Native Americanのコミュニティーが抱える問題は、生活水準が低く(基本的に彼らは資源に乏しく気候の厳しい土地に追いやられた形なので)、貧困やそれに 付随する犯罪など、また彼らによる政府はあるものの、アメリカ政府の傘下にあるため事実上はアメリカの法律が適応され、治外法権が認められていないという こと、などです。アメリカ人であるほかのメンバーもこの事実をきちんと知らなかったこと、そしてそれは日本が抱える問題にもあてはまることだと、いろいろ 考えさせられました。

ボランティアの力

ところで、このプログラムをはじめとし、アメリカ社会の大きな魅力のひと つは、地元を基盤にしたボランティアが盛んだということです。留学生向けの活動も、多くがボランティアによって支えられています。例えば、私たちの多くが お世話になった無料の英会話教室も、全て地域の人や学生によって開かれています。また、学生がボランティアのためにQuadで募金活動をしている姿もよく 見受けられます。

日本でも課外活動の一環で何度かボランティア活動をしたことはありましたが、奉仕という訳語も奏してか、どうしても義務 感が伴っていました。ところがこちらでは、ボランティアをする側も、その体験で何か得ることを期待して参加しているのです。退職した年配の方が、楽しみの ためにやっていたり、学生が自分の社会経験を豊かにするために参加していたり。やる側と受ける側の相互利益という理想の形が成り立って、日本でもこのよう なシステムがもっと盛んになったらいいなと思いました。そしてこちらで自分がお世話になった分、帰国後私も何かできたらと今から考えています。

* 終わりに*

先 日JIC理事の堂山先生とキャンパスでお会いする機会がありました。先生が戦後間もない頃にアメリカに留学されたときは、日本からは$20しか持ち出せな かったそうです(物価は今とそんなに変わらないのにもかかわらず)。RAをしつつ、自炊をしながら勉強していたとか。インターネットを使えば無料で日本の 家族と話が出来る時代に、奨学金をいただいて留学しているのにも関わらず、多少の不便に文句を言っていた自分が少し恥ずかしくなりました。残り一ヶ月を切 りましたが、初心を忘れずに、できるかぎりの多くの体験をして帰国したいと思います。

ファイナル後は、卒業式、Farewell party、そしてナイアガラの滝、カナダへの旅行など、まだまだ楽しいことが盛りだくさんですので、次回のレポートもどうぞご期待ください。

このような恵まれた環境での留学をサポートしてくださっているJICの皆様、家族への感謝をこめて。

2006年5月8日
川崎 藍

 

川崎藍さんの奨学生レポート

1月の奨学生レポート第3弾は川崎藍さんです。
体調を崩すなどの不運にもめげず、アメリカ大陸を鉄道で旅行したり、新しい交友関係をどんどん開拓したりと積極的に留学生活に挑む川崎さんのレポートをお楽しみください。

2006-02-report-kawasaki-001.JPG

異例の寒さを記録した日本の冬とは対照的に、今年に入ってからというもののシャンペーンは比較的穏やかな気候が続いています。12月の、寒いを通り越して 痛いという表現がぴったりなあの天気が嘘のようです。寒さが本格的になると聞いていた1月も終わり、このままではせっかく準備したスノーブーツや帽子が活 躍しないまま春になってしまうのかと思うと少し寂しい気もします。
さて、今回のレポートでは、先学期から冬休みにかけて起こった、精神的そしてそれを取り巻く環境の大きな転換を中心にお伝えしたいと思います。

2006-02-report-kawasaki-002.JPG

*前学期を振り返って*

前回のレポート後、thanksgivingが終わるとファイナルの準備に突入し、相変わらず毎日が慌しく過ぎ ていきました。そしてこの期間は、私にとって勉強に限らず苦しいことの多い時期でもありました。というのも、視野を広げるという目的のもと、こちらに着い てからとにかく手当たり次第手を出してきたのですが、なかなかペースをつかめずに、自分がここで何をしたいのかを見つけるのにとても苦戦しました。今振り 返ってみると、こうして自分自身を見つめなおし、本当にやりたいことは何なのかを真剣に考えるいい機会だったのですが。10月のはじめ頃に体調を崩してし まったのもペースが崩れてしまった原因のひとつです。休んで早く治さなくてはという気持ちと、一方で課題は容赦なくたまっていき焦る気持ち。体が資本とは このことだとまさに身をもって実感しました。ちなみに当初日本から持ってきた風邪薬を飲んでいたのですが、一週間たっても症状は改善しません。おかしいな と思いMcKinley(学校の保健センター)に行ったところウィルス性の風邪とのことで、抗生物質を処方してもらいなんとか回復しました。(この頃キャ ンパス内でも風邪が大流行していて、McKinleyの予約は二日先までいっぱいになるほどでした。ユニオンでは風邪薬キットが配布されるほど!)日本に いるときは安静にしていれば治るような風邪でも、環境も違い、思っている以上に体がストレスを感じていることもあるので(もしかしたらウィルスの種類も違 うかも?)、無理せずに早めに診察してもらうことをお勧めします。アメリカの薬は強すぎるといいますが、服用頻度下げることで私には特に問題はありません でした。

そんな状態でも友達や家族に支えられ、なんとか無事にファイナルを終えることができました。そしてその後迎えた冬休みは、私に とって貴重な期間となりました。ひとつには、旅のほとんどを自分で計画したことがあります。これまで全て友達任せにしていたので、ホテルや交通手段の予約 や交渉などを一人でやることで英語力と行動力に自信がつきました。さらに、その後日本に帰ったことで常にどこか張り詰めていた緊張感から開放されたのも大 きな要因だったのでしょう。冬休みがあけてキャンパスに戻ってみると、確実に英語力がついていることを実感しました。特にリスニング力は驚くほど上がり、 先学期の後半になってもまだ半分しか聞き取れずに焦っていた講義も、今学期にはほぼ理解できるようになりました。

2006-02-report-kawasaki-003.JPG

*冬休み~アムトラックの旅~*

上に述べたようにとても充実した冬休みを過ごすことができました。ファイナルが終了したその日に中根さん とメキシコに発ち(写真1:パレンケ遺跡)、その後はサンフランシスコ(写真2)、シカゴ、とかなり盛りだくさんです。その中でも特にお伝えしたいのはな んといってもアムトラック(長距離列車)での旅。就職を控え学生生活最後の旅行となる友達と、せっかくだから何かしようということになり、サンフランシス コ~シカゴ間はアムトラックの中でも絶景との言葉に惹かれこれしかない!と迷わずに決定しました。地図をお持ちの方はお気づきかと思いますが、サンフラン シスコからシカゴまではその間ロッキー山脈を越えアメリカ国土の三分の二を横断することになります。しかも寝台車ではなく、普通車で二泊三日の旅ですか ら、誰に言っても「そんなのcrazyだ」という反応がかえってきました。が、実際乗ってみると意外と快適で(というのもアメリカサイズの座席は、日本人 の小さな体にとってはファーストクラスのシート並みに大きいのです)、その景色の壮大さは、飛行機では味わえないものがあります。出発地はあいにくの雨で したが、数時間すると雲の隙間から青空がのぞき、小さな丘と緑の平原が広がります。一日に数駅、しかも10分程度しか停車しないため、一日に進む距離も長 く、雪山から乾いた荒野、赤土のいかにもロッキー山脈といった岩の連なりと、景色が次から次へと変化します(写真3)。そのどれをとっても、さえぎるもの が何も無くとにかく果てしなく広いのです。一面の窓から景色を望める展望車には、常に人が集まります。キャンパス内で会うのは何かとアカデミックな分野に 関係のある人ばかりだったので、さまざまなバックグランドを持つ人たちと話すのはとても新鮮でした。なかでも、アムトラックの歴史(ゴールドラッシュ時に 建設されたこの列車にはさまざまな歴史があります)を通して移民やネイティブアメリカンの問題などを話してくれたAllenさんとの出会いによって、この 旅はとても印象深いものになりました。何も知らなければ広大な平野にただ感動していただけですが、そこに追いやられる形で貧しい生活をしている人たちがい ることを知ってからでは、感じるものは全く違ってきます。このように人と出会い交流できるのもアムトラックの旅の魅力のひとつです。冬の景色は雪や枯葉の 色で少し寂しかったですが、春から夏にかけてはもっと素晴らしい景色が望めるそうなので、ぜひお勧めしたいと思います。

2006-02-report-kawasaki-004.JPG

*Housing問題と交渉*

先学期にさかのぼりますが、寮を決める際に留学生は他の生徒よりも申し込み開始が遅く、直前までどの寮に入 れるかもめたうえ、結局学部生の寮に入ることは出来ませんでした。そこで今学期は他の寮に移ろうと決めていたのですが、ここにきてまたもやトラブルが。例 のごとく引越しの二週間前になってもなんの音沙汰もなく、連絡してみたところ「Sharman(希望していた寮)には空きがないから」と勝手に他の寮に移 されていたのです。しかも、契約をキャンセルするにはお金($1000!)払えとのこと。ここに着た当初の私なら、あきらめて寮に入っていたでしょう。し かしここは自己主張の国アメリカ。この数ヶ月で、納得いかないこと、困っていることがあればとにかく納得の行くまで交渉する術を身に着けました。いちいち 確認しないと対応がいい加減なことも多いのです。逆に言えば、多くの場合交渉の余地が残されているということ。働きかければその分のサポートが返って来 る、これは授業や留学生へのサポート体制などこちらの生活全般に言えることだと思います。

*Sutton Place*

そ んなわけで、無事に寮のキャンセルもでき、今学期からはSutton Placeというところに住むことになりました。ここは甲田さんの住むコスモの隣に位置し、同じく20人ほどがキッチンやリビングなどはシェアして共同生 活をしています。違うところといえば、教会の運営している家なのでハウスメートのほとんどがクリスチャンということでしょうか。もちろん私の様にクリス チャンでなくても温かく迎えてくれます。正直、アメリカに来るまで、宗教という言葉にあまりいいイメージを抱いていなかったのですが(日本で宗教が取り上 げられるのは何か事件が起きたときが多い、というのも一因です。このことについてはまたの機会にお話したいと思います)、そんな心配も杞憂に終わり快適な 毎日を送っています。先日は大掃除ということで、人生初のペンキ塗りに挑戦しました。いろいろペンキまみれになりながらも、担当である天井を無事仕上げ満 足です。いまどき業者に頼まず自分たちの手で家のメンテナンスをするなんて、素敵だなぁと思います。ハウスディナーでは毎週誰かが夕食を作ってみんなで食 べ、時間があるときは映画をみたり、ケーキを焼いたり、とてもアットホームな環境です。引っ越してまだ二週間ですがすっかり仲良くなれました。前回の寮は ほとんどが一二年生だったのに比べ、こちらは院生や社会人も多く、進路の話を聞くことができたり、勉強を教えてもらえたりというありがたい(!)特典もあ ります。前回お話したChicago Weekendで出会った仲間のうち何人かは先学期で留学を終えてそれぞれ帰ってしまい(写真4:thanksgiving@ Harvard University)、寂しいこともありますが、ハウスメートに恵まれたおかげで楽しくやっています。

このように、授業や生活にも余裕 ができ、いい形でのスタートをきることができました。次回は今学期履修している授業の話などをお伝えしたいと思います。この五ヶ月は、新しい体験と共に、 これまでにないほど自分を見つめなおすことができました。年も改まり、心新たに残りの4ヶ月間を満喫したいと思います。遅くなってはしまいましたが、今年 度もどうぞよろしくお願いいたします。

川崎藍さんの2005年9月レポート

JICのみなさま、
こんにちは。2003年度奨学生の篠原史温です。今回の奨学生レポートの最後を飾るのは川崎藍さんです。

彼 女のレポートを読むと、「Chicago Weekend」という留学生向けの企画があったようで、自分の時にはなかったのでとてもうらやましかったりしました。僕も9月誕生日なので、彼女と同じ くらい盛大に祝われたことを思い出し、心が温まりました。それでは、川崎さんの元気いっぱいのレポートをお楽しみください.

2005-09-report-kawasaki-001.JPG

ICの皆様お久しぶりです。シャンペーンではここ数日の湿度の高い日が続き、日本の残暑を思い出させられましたが、いかがおすごしでしょうか。山のような オリエンテーションを終えた途端に授業が始まり、今度は山のような宿題に追われて気付けばもう十月。地図なしには教室にたどり着けなかった6週間前が遠い 日のように感じられます。多くの先輩方がレポートに書いていらっしゃるように、シャンペーンは自然に囲まれたとても静かな街で(それでも週末はBarに繰 り出す学生でとても賑やかですが)、東京のど真ん中へ毎日通学していた私にとっては、教室への道のりを歩いているだけで心が癒されます。あっという間とい いつつも振り返れば次から次へと様々な出来事が頭に浮かび、何からお伝えしていいか迷ってしまうくらいとても密度の濃い時間を過ごすことができています。 今回は数ある素晴らしい経験の中から三つ、Chicago Weekend 、授業、誕生日について、そして今後の課題を報告させていただきたいと思います。

2005-09-report-kawasaki-002.JPG

1. Chicago Weekend

私の留学生活は文字通りChicago weekendに始まり、これをなくしてこの6週間は語れ
ません。Chicago weekendとは大学の留学生課が今年から始めた企画で、シャンペー
ンに来る前に他の留学生とシカゴに滞在、観光をするというものですした(写真
1)。たった四日間とはいえ他の留学生達はとてもよい関係を築くことができ、こち
らに着いてからも一緒にオリエンテーションを受けたり、ご飯を食べに出かけたり
と、彼らにはあらゆる場面で支えられています。毎日大量の宿題に追われ、ともすれ
ばストレスに潰されてしまいそうな生活ですが、そんな時に遊びに連れ出してくれた
り、一緒に愚痴をいいあったりする仲間ができたことはとても有り難いことです。九
月の半ばには早くもThanks giving(十一月の下旬にある一週間のお休み)に一緒に
旅をしよう!という話題が持ち上がり、既にNYへ行くことが決定しました。初めての
NYを彼らと旅できるなんて、今から楽しみで仕方がありません。このように素敵な友
達に恵まれたおかげで、いまのところホームシックにもならずに楽しく毎日を送って
います。

2. 授業

今学期はESL(英語を母国語としない生徒のためのライティングの授業)のほかに、
Intercultural Communication(異文化コミュニケーション)、Molecular Cell
Biology(分子生物学)、Bioengineering(生物工学)、Jazz Danceを履修しています。
どの授業にも共通して言えるのは、単に知識を詰め込むだけでなく理解を目的とした
教授法であること、さらに教師から生徒への一方通行ではなく、相互で授業を作り上
げていくスタイルであるということです。残念ながら日本の大学ではこのような授業
にめぐりあうことは稀なので、とても貴重な体験をさせていただいています。私が留
学を決めたきっかけは、昨年アメリカの大学を訪れた際に授業中の活発な議論のやり
取りを見て、是非自分もこの環境で勉強したいと思ったことでした。毎回出される
reading assignment やessayをこなすために毎日必死というのが現状ですが、授業中
に発言できた時には自分がまさに夢見ていた環境で勉強しているのだということをと
てもうれしく思います。

なかでも面白いのがIntercultural Communicationです。“国や専門にとらわれない
広い視野を”ということからイリノイ大学では国際関係を専攻しようと考えていまし
たが、このクラスを見つけたときにはまさにこれだ!と思いこちらを履修することに
決めました。授業では、毎回予習したテキストを元にステレオタイプや異文化間の誤
解がどのように起こるのか、それを解消するために何ができるかを議論します。地元
の学生に加え、ドイツ、台湾、メキシコ、韓国そして日本人が教室の中に小さな異文
化空間を形成している様子はまさにアメリカの大学ならではの環境といえます。そし
てこの授業の魅力は、なんといっても実体験を議論に持ち込めるということです。日
本人として、また今まさに異文化を体験している留学生としての視点は毎回興味深く
取り上げてもらえます。最初のころは質問さえも理解できずに発言をためらいもして
いましたが、最近では積極的に発言し議論に貢献できるようになってきました。さら
に、今までだったらステレオタイプに結び付けてしまうような日常生活の中のふとし
た違和感を、この授業で学んだことを通して今までとは違う視点で見られるようにな
り、留学生活ならではの醍醐味といえます。

3.誕生日

九月の半ばに幸運にもここアメリカで誕生日を迎えられ、これまでに無いほど多くの
人に祝ってもらいました。まずは誕生日前夜、ルームメート達が夜中の12時ちょうど
に歌いながらプレゼントを届けてくれました。それまで次の日の宿題に追われ誕生日
のことなどすっかり忘れていたので、驚きと感動で胸が一杯になりました。そして誕
生日当日、授業から帰ってくると寮のスタッフが私の誕生日を祝ってくれたのです。
いくら今住んでいる寮(中根さんや白水さんと同じIllini Towerに住んでいます)の
待遇がいいからとはいえ(実際面倒見がよすぎるくらいなのですが)、まさか全員の
誕生日まで把握しているはずがありません。尋ねてみると、”エレベーターに貼紙が
あったよ”とのこと。なんとルームメート達が私に内緒でポスターを貼っていてくれ
たのです(写真2)。おかげで見ず知らずの人が”Happy Birthday”を言いに部屋ま
で来てくれたりと、イベントを盛り上げるのが大好きなアメリカ人ならではの(?)
祝福を体験することができました。そしてなにより、この出来事は私にとって大きな
意味がありました。というのも、私のルームメートは三人とも地元の一年生なのです
が、当初のつたない私の英語力ではなかなか彼女らの会話の中に入っていくことがで
きず、少し寂しい思いをしていたというのが事実です。しかしこの日をきっかけに一
緒に過ごす時間が長くなり、部屋の居心地がとてもよりよくなりました。

さらに、もう一つ忘れられない大きなイベントがあります。Chicago Weekendの仲間
が、私を含めた九月生まれのためのBirthday Partyを開いてくれたのです。当日は20
人以上が集まり、テーブルの上は各自が持ち寄った料理で埋め尽くされ、盛大なパー
ティーとなりました。彼らと出会えたことで留学生活が何倍も魅力的なものになって
いることは間違いありません。数々の出来事を通し、こんなに多くの人に祝福しても
らえる自分はとても幸せでということを実感しました。

今後の課題

①時間の有効活用
こちらに来る前から耳にしていた“アメリカの学生はよく学びよく遊ぶ”というのは
事実で、平日は夜中まで驚くほどよく勉強しますが(夜中の二時になっても学校のカ
フェテリアでは多くの学生が勉強しています)、週末には一転してパーティーに課外
活動にいそしんでいます。実際私も日本にいるときの数十倍(といっても過言ではあ
りません…)勉強していますが、それと同じくらい楽しい時間を過ごしています。ON
とOFFの切り替え、そして楽しみを見つけるのが上手いな、というのがこちらの学生
に共通して言えることです。時間を有効活用するスキルは、是非彼らをお手本に身に
つけたいと思います。

②交流
上で述べてきたように友達にはとても恵まれていますが、課題をあげるとすれば地
元、アメリカ人の友達がまだ少ないということです。こちらに来るまでに私が出会っ
てきたアメリカ人は、なにかと日本に関心がある人達だったため、仲良くなるのは比
較的簡単でした。しかし多国籍、さらに留学生がいることがめずらしくないここの環
境では、普通に過ごしているだけでは友達になるのが難しいのは事実です。ネイティ
ブスピーカー同士の会話に入っていくのはとても勇気がいることですが、クラスや課
外活動などにおいて自分から声をかける努力を続け、今後はさらに交流を広げていき
たいと思います。

③課外活動
この六週間を振り返ってみると、とても充実していたとはいえまだ日々目の前のこ
とに精一杯だったという感じをうけます。実際これまでほとんど英語を話したことの
無かった私にとって、英語で日常生活をするというだけでもとても大変なことであ
り、最初のころは授業など到底理解できないのではないかと心配したほどです。しか
し、つたない英語の質問にも丁寧に答えてくれる教授やTA、悩みを相談すれば親身に
なってアドバイスしてくれる留学生課のスタッフ、そしてなにより多くの時間を共有
している友達の支えのおかげで、ようやく心に余裕を持つことができるようになって
来ました。よって今後は目の前に迫ったことをこなすだけでなく、それぞれの活動に
おいて明確な目標を設定し、できる限り多くのことを吸収するということが課題で
す。そのために、勉強だけでなく課外活動にも積極的に参加していきたいと思いま
す。

最後になりましたが、日本では味わえない体験が出来るJICのプログラムに参加でき
たことをとても誇りに思います。このような素晴らしい機会を与えてくださった皆様
には心から感謝しています。自分が特別な立場にいるということを胸に、さらに多く
のことを吸収できるよう頑張りますので、次回のレポートもご期待ください。

2005年度奨学生 川崎藍さんの自己紹介

2005-kawasaki.jpg

川崎藍 東京大学 教養学部基礎科学科

JIC奨学生として留学させていただくことになり,イリノイ大学での生活を想像しては胸を躍らせる毎日です.この留学に期待していることはとてもここには書ききれませんが,その中でも核となる三つの点をお話させていただきます.

一 つ目は,コミュニケーション能力の向上です.ここでは日常会話においてだけではなく,学会など様々な場面で自分を表現する能力を指します.私は現在東京大 学教養学部基礎科学科に所属し,生物学を専攻しています.医療や環境など生活と関わりの深い分野ですが,政治などに比べ社会の関心が低いのが現状です.研 究内容を社会に伝え,科学がもっと身近になるような教育をしながら,世界を活動の場にできる科学者になりたいと考えています.そのためには自分の考えを人 に伝える力が不可欠です.主体的な参加を求められるアメリカの授業を体験し,論理的な思考力とそれを主張できる力を身につけていきたいです.

二つ目は、国や専門にとらわれない広い視野を持つことです.そのため,イリノイ大学では国際関係学を専攻しようと考えています.また,ボランティアなどの課外活動にも参加したいです.

最後は,多くの友達をつくることです.様々な背景や目標をもつ人々に出会い,大きな刺激を受け,私自身も彼らに影響を与えられたらと思います.一年後には,友達を頼りに世界一周旅行するのが目標です.

帰国後にはさらに多くのことを得たとお伝えできるよう,事にも積極的に取り組み,最大限に楽しんできたいと思います.