篠原史温君の2004年5月分レポート

JICメンバー各位、

大田(’01-02 LAS)です。

JIC奨学生の篠原史温くんからのレポートが届きましたので、皆様にフォワード致します。高度9448メートルの雲の上で書かれたレポート。文章の中に、留学を通して感じたこと・学んだことがぎっしり濃縮されています。人間的にひとまわりもふたまわりも大きくなって、しかもIMPEでの肉体改造もすすんだという?!篠原くんにまたお会いする日が楽しみです。篠原くん、レポートありがとうございました。

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2004年 5月分レポート
篠原史温
東京大学システム量子学科修士課程一年
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ご無沙汰しております。篠原史温です。時が経つのは早いもので、奨学生レポー
トも今回が最後となってしまいました。現在僕は高度9448メートルの雲の上で
このレポートを書いています。今回はこの留学生活の総括として、「僕がイリ
ノイに来た本当の理由」「9ヶ月間で感じた自分の中の変化」「様々な枠を超
えた友情」の3本立てで行きたいと思います。かなり長く書いてしまったので
どうかごゆっくりとお楽しみください。

「僕がイリノイに来た本当の理由」

ほとんどの日本人がそうだと思いますが、僕は小さい頃から映画を通じてしか
アメリカを知りませんでした。「アメリカ→何となくかっこいいイメージ」と
いう何とも具体性に欠けた僕のアメリカ観を決定的に変えたのは2001年3月に
ボストンに1ヶ月間語学留学をしたときです。一言でいってしまえば、あのボ
ストンでの生活はあまり楽しいものではありませんでした。語学留学という性
格上、現地のアメリカ人と知り合う機会はあまりなく、ホストファミリーは僕
に対して「~はしてはいけない」とか言うだけでとても友情を築き上げるどこ
ろではありませんでした。その上、語学学校に行く途中のバスの中で体中にピ
アスをしたアメリカ人にからかわれたり、運賃を不当に請求したと抗議したら
バス運転手に逆切れされたりと、僕の中の「ナイスでフレンドリーなアメリカ
人」像は音を立てて崩れていきました。

帰国してから「なにがいけなかったのか?」を自分なりに考えてみました。その結
果、二つの理由が思い浮かびました。

1. 語学学校の学生はアメリカ人と「対等に」接する機会が少ない。
2. 僕の英語力(コミュニケーション能力)が不十分。

一つ目は僕の接したアメリカ人は、皆「先生」や「ホストマザー」だったりし
て普通の人間関係を築けなかったということです(でも今から考えたらアメリ
カでは先生や少しばかり年の離れた女の人とでもフレンドリーな関係になれま
すが…)。二つ目は、単純に僕のコミュニケーション能力の問題です。自分の
考えていること、言いたいことがしっかりと口に出せないようではアメリカで
はやっていけません。そういう意味での「英語力」に欠けていたと思います。

この二つの原因を解消する方法として思いついたのが、語学留学ではない「普
通の留学」をすることでした。ここでいう普通の留学とは、アメリカ人の大学
生と対等な立場で同じ授業を受ける環境に身を置く留学のことです。その意味
で、JICのプログラムは完璧でした。一年間という非常に限られた期間、アメ
リカの大学生と同じ授業が受けられる。さらに僕は、学部時代、特に一年生と
二年生のときにあまり勉強をしっかりやらずにいたことを後悔していました。
アメリカの大学は入ってからが厳しいらしい。もし1年間みっちりそういう環
境で勉強したら大学1、2年のときの「遅れ」を取り戻せるかも。。。そういっ
た経緯でJICのプログラムに申し込み、非常にありがたいことにこんな僕を選
んでいただきました。本当にほんとうに、感謝の念が絶えません。

「9ヶ月間で感じた自分の中の変化」

1. 性格

この9ヶ月で僕の性格は非常に良い方向に変わりました。主なものとして、積極的、
能動的になったということです。例えば
● ディスカッションの授業中に手を挙げて自分の意見を堂々と言えるようになった
● オフィスアワーに出向いていってTAに徹底的に質問できるようになった
● パーティーなどを企画して実行できるようになった
● 大学や公共のサービスで「これはフェアじゃない」と感じたら質問したり抗議で
きるようになった

ここに挙げたどれも、元々こういうことが出来る人から見たら、「何を言って
るんだ。こんなこと出来て当然じゃないか」とお叱りを受けてしまいそうです
が、こっちに来る前の僕はこんな当然のことすらしっかりとできない人間でし
た。でも「声を上げなきゃ、自分から始めなきゃ何も始まらない」というアメ
リカ社会の良き(?)風習のおかげで自分の欠点を改善することができたこと
は非常に嬉しいです。

2. スキル

「英語能力、コンピュータ能力以外で身につけたスキルは何か?」と聞かれた
ら、一つ目はCritical Thinking Skillだと答えると思います。どの授業も「~
は~だ」と教えられるのではなく、「~は~だから~だ」というように教えら
れました。つまりただ単に現象面、事実を追うのではなくその根本にある原因
にまで深く言及していたのです。ペーパーを書くときも、プレゼンをするとき
も、試験の答案を書くときも論理の流れは非常に重要視されていたと思います。

二つ目はプレゼンテーション能力です。秋学期にスピーチのクラスをとり、強
制的に6回もクラスの前でスピーチをさせられたという辛い(?)経験を通し
て得たものはかなり大きいと思います。最初は、「アメリカの大学生は自分の
スピーチを聴いてどう思うんだろう?」とか「本当に伝わっているのだろう
か?」とか迷いはあったのですが、途中から吹っ切れて人前に出て言いたいこ
とを思いっきり言えるようになりました。今学期のコンピュータ倫理の授業で
最終プレゼンテーションがあったのですが、40点中39点をいただきました。
自分でもまだまだ山のように改良の余地があると分かってはいるものの、この
結果にはかなり大きな驚きと喜びを感じました。

三つ目は社交スキルです。こっちの社会の性格上(?)、ほぼ毎日のように”
I’m Shion. Nice to meet you.”を言っていました。おかげで「自己紹介→
スモールトーク」の流れはほぼ完璧になりました(ただしその後会話を面白く
維持できるかはまだまだ改良が必要ですが)。

四つ目は聞き上手になれたことです。もともと人の意見を聞くのは好きなので
すが、イリノイに来てからそれがさらに深まり、友達と夜遅くまで語ることも
しょっちゅうでした。特にルームメートとはありとあらゆる分野にわたり意見
を交換したように思います。この間、彼に「いつもしっかり聞いて、適切なア
ドバイスをくれてありがとう」と言われたときかなり嬉しかったです。

3. 身体

他のJICの奨学生メンバー(江崎さん、中村さん、砂子さん)は知っていると
思いますが、「篠原史温」と「肉体改造」は切っても切れない関係にあります。
学部のときに少林寺拳法を3年間半やってたときから筋肉トレーニングは割と
好きだったのですが、イリノイに来てからそれが見事に「開花」してしまいま
した。始めは多すぎる寮の食事を燃焼させるために何となくIMPE(キャンパス
内のジム)に通っていたのですが、凝りだしてしまいいつの間にかほぼ毎日の
ように通うことになってしまいました。さらに春休み前くらいからは毎日外を
走っていました。結果的に「トレーニング好き」で知られているのアメリカ人
よりよっぽどトレーニング好きになってしまいました。でも僕がトレーニング
に励んでいた理由は実はもう一つあります。それはアメリカ人の「典型的な日
本人像」を壊したかったからです。背が(比較的)低めで、(アメリカ人と比
べれば)やせ気味で、眼鏡をかけている(人もいる)。僕はたまたま普通の日
本人より(またたいていのアメリカ人より)背が高いのであとは筋肉をしっか
りつければ良いだけでした。僕のせいでアメリカ人が「ああ、こんな日本人も
いるんだな」と思ってくれれば良いなと思っていました。「日本人は~だ」
「アメリカ人は~だ」という過剰な一般化は国際社会において百害あって一利
無しだと思います。その点で僕は国際交流に少しばかり貢献したと自負してお
ります(ちょっと言い過ぎです。実はそんなに思っていません)。

「様々な枠を超えた友情」

イリノイに来て何よりよかったと思うことは多くの友人、それもイリノイに来
ない限り絶対に作れなかったであろう友人を作れたことです。僕はもともと友
達作りがそんなに得意ではないのですが、イリノイの空気が僕を開放的にして
くれて本当の意味で良い友達ができました。

まず、JICの奨学生メンバーの江崎さん、中村さん、砂子さんです。イリノイ
に来る前は僕だけ男だということもあり、かなり不安でした。ある意味あきら
めていたようにも思えます。さらに追い討ちをかけるように僕の住んでいる寮
は他の三人が住んでいる場所からはかなり遠かったので、最初の1ヶ月くらい
はかなり「距離」を感じました。でも、9月末に僕の誕生日パーティーを開い
てくれてからちょくちょく会うようになって、夜まで話し込んだり、お互いの
悩みを打ち明け合ったりしているうちにいつの間にか強力な絆が生まれました。
こんな関係は4人でアメリカに留学をしない限り生まれないと思います。さら
にそれぞれのメンバーの「似通っている部分」と「違う部分」がうまく機能し
て化学反応が起こっていたように思います。この3人には本当に感謝していま
す。さらにみんな出身が関西地域ということもあり東京育ちの僕の喋りが関西
訛りになってしまったということにも感謝の意を表したいと思います。

寮の友達は主にアメリカ人学生です。ルームメートを始めとして多くの人と友
達になりました。少し驚いたのはかなり多くの人が日本に興味を持っていると
いうことです。”Kill Bill Vol. 1”、“The Last Samurai”、“Lost in
Translation”の三つの映画が僕たちの滞在期間に公開されていたという事実
からもアメリカにおける密かな日本ブーム(?)を感じました。日本語の授業
をとっている友達も何人かいて、日本語と英語の違いについて議論したことも
何度となくあります。彼らと「対等に」接することで生身の「アメリカ人」の
姿を見れたことは僕の今後の人生に大きな意味を持つと思います。というのは、
日本でしばしば「アメリカが~だから」論理で正当性を主張する議論がよくあ
るからです。アメリカが全て正しいわけじゃない。日本が全て間違っているわ
けでもない。そういった相対的なものの見方が出来るようになったのも彼らの
生き様(?)を生で目撃したからだと思います。そうでなかったら、いつまで
たっても「アメリカコンプレックス」みたいな感情を持ってしまったかもしれ
ません。彼らは非常に多くのことを僕に教えてくれました。でも一番強く感じ
たのは彼らも殆ど僕らと同じであるということです。来る前はアメリカと日本
の考え方は正反対だと思っていたのですが、それは表現方法すなわち表面的な
違いであって中身はそっくりであると気付きました。

留学生の友達も、とくに韓国人の友達がたくさん出来ました。隣の国、韓国の
人とはるばる太平洋を渡ってさらに陸地をかなり行ったところにあるイリノイ
の地で出会い友情を深めるなんてよく考えたらとても凄いことだと思います。
しかもお互い話す言葉は英語という外国語。それでもみんな巧みに自己表現を
してお互いを理解し合えるというのはある種芸術の域に達しているとさえ思い
ます。片方がネイティブスピーカーならもう片方の人が喋ることについて予想
が出来るので比較的簡単ですが、お互いがノンネイティブだとそうもいきませ
ん。ジェスチャー、想像、フィードバックを駆使しながら深める会う友情もな
かなか味のあるものです。こうやって英語を通じて世界中の人と友達になれた
らとても幸せなことだと感じました。その「世界中の人」が英語を話せるとい
う条件付きなのが少し難点ですが。。。

9ヶ月を振り返るつもりで徒然なるままに書いていて、気がついたらWordで5
ページ目に突入してしまいました。ここまで辛抱強く読んでくださった方、本
当にありがとうございます。でも本当は僕の5ページの作文なんかではまるで
収まらないくらい日々多くのことを感じて、考えて、行っています。江崎さん
のレポートにもあったようにこの留学を100点満点で採点するなら、僕は9
0点をつけると思います。本当は100点といいたいところですが、「自分が
満点なんか取れるわけがない」と考えているのでちょっと控えめに(?)90
点です。でも普段僕は自分にかなり厳しいので90点は相当満足な点数です。

こんなにまでも満足な留学生活が送れたのも、JICの皆様が僕を選んでくださ
り、いろいろな面で支えてくださったからです。これからは僕が奨学生を支え
る番だと思っています。また、JICの様々な活動に参加したり、JICの組織自体
に貢献したりすることもとても楽しみにしています。

これからは行動を通してこの感謝の気持ちを表現できたらと思います。いまま
で本当にありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いします。

篠原史温君の2004年1月分レポート

JICメンバー各位、

大田(’01-02 LAS)です。

JIC奨学生としてUIUCへ留学中の篠原史温くんからのレポートが届きましたので、皆様にフォワード致します。

篠原くんらしい見事な表現で、クリスマスやキャンパスでの交流の様子が生き生きと伝わってくるレポートです。皆様どうぞお楽しみください。篠原くん、ありがとう!次回も楽しみにしています。

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2004年 1月分レポート
篠原史温
東京大学システム量子学科修士課程一年
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どうもご無沙汰しています。2003年JIC奨学生の篠原史温と申します。今回は
二回目のレポートということで、「クリスマス」「今学期の授業」「友情」に
ついて書こうと思います。

「クリスマス」

僕はAllen Hallという学部生の寮に住んでいるため、大きな休みがくるたびに
一時退寮することになっています。ほかのみんなは実家があるのでそこに帰れ
ばすむだけなのですが、僕の実家は日本にあるのでちょっとした「ホームレス」
になってしまいます。そこでThanksgivingの時と同様に最愛の(?)ルームメ
イト、Andrewの家にクリスマスが終わるまでお邪魔することにしました。

学期が終わってクリスマスまでの間は本当になーんにもしないでダラダラ過ご
しました。学期中、特に期末試験前、は死ぬほど勉強で忙しかったので「(生
産的なことを)何もしない」ことの喜びを生まれて初めて実感できました。

クリスマスパーティーはAndrewのご両親、お姉さんとその旦那さん、Andrewの
最愛の彼女Debbieと僕の7人でしました。TurkeyとCranberryという超アメリ
カンなごちそうを食べたあと、プレゼント交換をしました。プレゼント交換な
んて小学生以来なのでとても新鮮でした。プレゼントをそれぞれの人の性格に
合わせて選ぶ喜び、他の人がプレゼントを開けたときの反応を見る喜び、そし
て自分がもらったプレゼントを開ける喜び。すべてがここ10年間以上忘れて
いた新鮮な喜びでした。こういう良いアメリカの習慣はぜひ日本に持ち帰りた
いなと思っています。

僕は日頃からJet Li(中国系映画俳優)がいかにクールかをAndrewに話してい
たためか、”Romeo Must Die”という映画のDVDを彼からプレゼントされました。
かなり嬉しくて冬休み中に買ったばかりのノートパソコンで何度も観てしまい
ました。この時期に一番感動したことは、Andrewの一家が僕のことをまるで家
族の一員のように温かく迎え入れてくれたことです。僕の実家では親族同士で
集まることはあっても、親族以外の人(この場合、僕やDebbie)をそういう場
に迎え入れたことはありませんでした。僕はこの冬休み中にほかにも二つの家
庭を訪問したのですが、どこでも「熱烈歓迎」されました。

「なんでこの人たちはこんなに良い人たちなんだろう?」「どうしたら僕自身、
これくらい良い人間になれるんだろう?」こっちに来てから人々の優しさに触
れる度にそんなことを考えてしまいます。今までは優しさを「受信」するばか
りだったので、今年からは積極的に「発信」できる人間になりたいと強く思う
ようになりました。このようなことに気づけたのも、JICの皆様のが僕たちを
ここに送り出してくれたからだと思うと、皆様に感謝しても仕切れません。

「今学期」

今学期は先学期と同様にComputer ScienceとSpeech Communicationの能力を強
化していこうと思っています。Computer Scienceは前回の続きのような授業を
とっていて実際のプログラミングを通して「コンピューターがいかにして情報
を処理しているか」を学ぼうと思っています。プログラミングの課題がかなり
つらそうなので積極的に先生やTeaching Assistantに質問に行く予定です。

こっちに来てから勉学のことで一番驚いたことは勉強をするためのリソースが
とてもしっかりと整っているということです。先生がオフィスアワーをもうけ
ているのはもちろんのこと、Teaching Assistantが補講を開いて学生の理解を
助けるし、ウェブページは毎回の授業のポイント、授業中に用いたスライド、
テストの過去問を貼付けています。「こんなにしっかりと『教育』を行ってい
る大学は日本にあるのだろうか?」とふと疑問に思いました。

僕はもともとコミュニケーションが専門ではないのですが、先学期たまたまス
ピーチのクラスをとって以来、コミュニケーションに興味を持つようになりま
した。「どのようにしたら様々な人と円満な関係を築き上げられるか」が僕の
個人的な課題です。今学期は実際に討論をするクラスと個人間のコミュニケー
ションを扱うクラスの二つを受講します。どちらも実際に体と頭を使って学ぶ
スタイルの授業なので今からわくわくしています。でもきっと大変です。

「友情」

イリノイに来てから5ヶ月間が経ちましたが、何よりの財産は友達だと思って
います。僕はもともと友達を作るのがそんなに得意ではないのですが、ここで
はなぜかいっぱいできます。僕の友達は大きく、「アメリカ人」「韓国人」
「日本人」の3つのカテゴリーに分けられると思います。

アメリカ人の友達は主に同じ寮の友達か、日本に興味がある(または行ったこ
とがある)友達かに分かれます。本当にはじめのころは彼らが喋る内容を全て
理解するのが大変だったのですが、今ではかなり慣れてジョークを言い合った
りしています。そういうとき、この寮を選んで本当に良かったと思います。も
し僕がほかの場所に住んでいたら彼らには絶対出会えなかったと思うと、運命
を司っている神様に感謝せざるを得ません。日本に行ったことがある友達と話
すのも僕の大きな楽しみの一つです。昨日映画”Lost in Translation”を友達
の部屋で観ました。この映画は日本に滞在している二人のアメリカ人の人生を
描いているのですが、日本に一年間住んだことがある友達とは日本のことにつ
いて結構盛り上がれました(他の二人は超つまらないと言っていましたが)。

留学生の中では韓国人が大多数を占めています。一ブロック歩けば韓国人(ら
しき人)を見かけるほどです。先学期の英語のクラスメイトつながりでいっぱ
い韓国人の友達ができました。先日はお好み焼きと焼きそばを作ってみんなで
食べました。そのあと日本のTV番組「ごきげんよう」でやっているさいころゲー
ムをしました。さいころのそれぞれの面に「お題」が書かれていて(例えば
「初恋の話」といったような)、さいころを振った人はそれらの「超個人的な」
お題について話します。そこで「自分たちについて」という題目でみんなで話
をしたとき、いかに自分たちがいい関係を築き上げていっているかを実感しま
した。まだまだこれからも、一生つきあっていける友情を築くのが目標です。

一緒に来たあゆみちゃん(江崎さん)、すみこちゃん(中村さん)、ちかちゃ
ん(砂子さん)とはあいも変わらずに仲良くつきあっています。それぞれ性格
が違うところがうまく行く秘訣なのかな?と思っています。よく晩ご飯を一緒
に作ったりして食べたりするたび、「この4人で来れてほんとよかったよねー」
とか言っています。彼女たちとも一生かけがえのない友達でいたいと思うし、
いれると思います。日本にいたら結構離れたところに住んでる4人がイリノイ
では近所に住んでいるというのはなんとも不思議です。

長々と書いてしまいましたが、ここに書いたことはこちらで感じたり考えたり
したことのほんの一部です。本当にいい経験を毎日させてもらっています。こ
こにいる一日、一時間、一分、一秒がとても意義深いものであると、一生誇り
に思えるものであると確信しています。イリノイで勉強したり、多くの人に出
会ったりできる機会を与えてくださったJICにとても感謝しています。本当に
ありがとうございます。

篠原史温君の2003年10月分レポート

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2003年 10月分レポート
篠原史温
東京大学工学系研究科システム量子学科
修士課程
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JICの皆様、はじめまして。2003年度JIC奨学生の篠原史温と申します。僕がシャ
ンペンに来てからもう2ヶ月が過ぎました。本当に濃い2ヶ月間でしたが、思え
ばあっという間でした。今回のレポートではこの期間を振り返り、自分が何を
して、何を感じたかを書きたいと思います。

まずここに来てからの最初の思い出といえば授業登録を済ませるまでの不安定
なあわただしさです。こちらに来る前に先輩から「授業登録をする前にやるこ
とリスト」みたいなものをいただいていたのですが、それがとても役に立ちま
した。

連日果てしなく続くオリエンテーション、チェックイン、銀行口座の開設、英
語のテスト、ガンポートさんとの面会、免疫注射、等など。いつまでこれが続
くのだろうと思うくらい「やること」に追われていたのを覚えています。「一
体いつになったら授業が取れるのだろう?ホームページ上のタイムテーブルを
見るたびに”full”(定員いっぱい)の数が増えていく。。。」僕たちは英語
のテストの結果が分かるまで授業登録できなかったので、結果的にかなり登録
が遅れてほとんどの授業が”full”と表示されていました。僕の取りたかった
授業は幸いにもたくさん開講されているかもしくは大教室の授業なので問題は
ありませんでしたが、とりたかった授業が取れなかった人もいたようです。

次に印象深いことといえば寮とそこの人々のすばらしさです。僕はAllen
Hall(Unit One)という学部生の寮に住んでいるのですが、はっきり言ってここ
は最高です。来て間もないころからすぐにフロアメイトとうちとけられました。
ある日、僕がオリエンテーションに疲れきって昼寝をしていたらドアが激しく
ノックされました。「どうしたの?」と僕。「日本の“Yatta”って知ってる?」
とフロアメイト。僕は最初彼が何のことを言っているのかさっぱり分かりませ
んでした。彼がはっぱ隊(日本のコメディアンのグループ)の歌「やった!」
のことを言っているのだと分かるまでにしばらく時間がかかりました。「でも
その歌は2年以上前のだし、そもそもなんでそんなの知ってるの?」と聞くと、
「インターネットで知った」といっていました。本当にこんな時代に生まれて
きてよかったなあと感じました。こういう風に日本の文化(?)が世界に発信
されていく時代なのですね。

後日、寮のCoffee House(一発芸大会みたいなもの)では僕をいれた6人のフ
ロアメイトで「やった」の踊りを披露しました。(参考:
http://www.mit.edu/people/patil/yatta.html 左の段の八行目、yatta.asf
をクリックしてみてください。これが本物です。僕らも同じく「紙おむつ+紙
はっぱ」のみで踊りました。)このパフォーマンスがとても受けて僕は一気に
寮の内外にその名を知られるようになりました。そんなこんなで寮生活の「つ
かみ」はばっちりでした。

学部生の寮といえば必ずルームメイトを持つことになります。生まれて初めて
のルームメイト。思えば、ルームメイトがどんな人であるかがイリノイに来る
前の最大の関心事かつ悩み事でした。来る前に彼の名前と電話番号は知らされ
ていましたが、何を話したらいいのかもよく分からないので特に連絡も取りま
せんでした。彼はみんなより遅れて、授業開始ぎりぎりに入寮して来ました。
それまでの間、僕は「一人暮らし」状態。「一体いつになったら来るんだろう?」
と毎日どきどきしていました。毎日フロアメイトに「ルームメイトがまだ来な
いんだよ~」と愚痴ってました。でも実際に彼に会ってみたら彼はとんでもな
くナイスガイでした。彼ともすぐに打ち解けて、今ではイリノイで一番仲の良
い友達です。来る前に先輩が「ルームメイトと本当の友達になるのは難しい。
ただの共同生活者になる可能性のほうが高い。」と言っていましたが、僕の場
合は幸運にも本当の友達になれたようです。

今学期にとっている授業の中ではスピーチのクラスが一番面白くてやりがいを
感じます。このクラスでは1セメスターに6回のスピーチをみんなの前でするこ
とになっていて、僕はすでに4回やりました。最初のスピーチは「自己紹介ス
ピーチ」でした。人生初の100%アメリカ人たちの前でのスピーチ。「彼らは
僕のことをどう思うのだろう?」そんなことを考えたらとても緊張してきて話
している間足がガタガタ震えたのを覚えています。

「自己紹介スピーチ」では自分がどういう人間であるのかを色々なエピソード
を入れながら4分間以内で話すことになっています。僕は「小さいころからジャッ
キーチェンにあこがれていてずっと彼のようになりたかった自分」を4分間熱
く語りました。結果はなかなかでした。

僕の目標は「分かりやすく、ユーモアのあるスピーチをする」です。いかにし
て聴衆に理解させるか、そしてかつ笑いを取れるか。毎回が真剣勝負です。原
稿は見ないで話すことになっているので前日と当日の朝は練習の雨嵐です。得
に、ネイティブスピーカーではない僕は人より話すスピードが遅いのでなるべ
く速く話せるように練習、練習、練習です。前日と当日はかなりストレスがた
まるのですが、スピーチが終わったときのあの快感はたまりません。もう病み
付きです。

生活面では、寮のカフェテリアが食べ放題式なので食べる量が日本にいるとき
の2~3倍程度に増えてしまいました。さらにほぼ毎日のようにIMPE(キャン
パス内のジム)に通ってハードにトレーニングしているため、アメリカ人より
も「アメリカ人」をしている感じです。このペースで肉体改造が進むと僕も将
来はカリフォルニア知事になれちゃうんじゃないかとちょっと思ったりもしま
す。

他のJICの奨学生の中村さん、砂子さん、江崎さんとはとても仲良くしていま
す。しょっちゅう4人で集まって料理を作ったり、誕生日を祝ったり、その他
色々楽しんでいます。本当にこの3人とここに来られて幸せだなあと常々感じ
ています。この3人は「同士」または「兄弟」といった感じでしょうか。

他の留学生の中では特に韓国の人と仲が良いです。韓国の人とは英語で喋って
いても不思議と日本語で喋っているときのような安心感を覚えます。きっとこ
れは日本と韓国は文化、考え方などで共通項が多いので「言語以外の」コミュ
ニケーションが作用するからだと思います。僕はまだ韓国に行ったことがない
ので、将来絶対行こうと決めました。このようにアメリカ人以外の人々とも親
交を深められるのがこの留学のすばらしいところだと思います。ここにいる間
に一人でも多くの人と出会い、一人でも多くの人と一生付き合えるような友情
を築きあげられたらどんなにすばらしいことだろうと思います。僕はまだ少し
シャイなところがあるのですが、これからはもっともっと積極的に友達作りに
励みたいと思います。

とまあ長々とつれづれなるままに書いてしまいましたが、本当はここでは書き
きれないくらい沢山、すばらしい経験をさせていただいております。このよう
な機会を僕に与えてくださったJICの皆様に深く感謝するとともに、帰国後は
僕たちの後輩のために、またJICの皆様全員のためになにか恩返しが出来たら
と考えています。本当にありがとうございます。