JIC Newsletterの新企画として,様々な分野で活躍されているJIC会員の方へのインタビューをニューズレターとして行う事となりました.第1段とし て取り上げさせていただいたのは,JICの年次総会にいつも参加されている方ならご存じの,日本を代表するドラマセラピスト,尾上明代さんです.
昨 年の10月13日(水)には,NHKのラジオ第一「いきいきホットライン」に出演される事をjicml(JIC会員のためのメーリングリスト)でアナウン スさせていただいたので,番組をお聞きになった方も多数いらっしゃることでしょう.また,NHKの英語会話番組や,テレビ朝日のニュース番組等,テレビで お目にかかった記憶のある方もいらっしゃるでしょう.今回のインタビューでは,尾上明代さんがドラマセラピストとなるきっかけとイリノイ大学との関係等を 中心に,お話しを聞かせていただきました.
ドラマセラピスト 尾上明代さん
1998年~1999年:UIUC芸術学部演劇学科・客員講師,
現在:NHK学園講師,東京家政大学講師
<記者>
まず,ドラマセラピーとはどのようなものか,簡単に説明していただけますか?
<尾上>
ドラマセラピーとは,悩みを抱えている人が,自分とは全く別の人物になってドラマを演じることによって,ストレス解消や心の癒しを得る事を目的とした,芸術療法の一手法です.私が属する全米ドラマセラピー学会(The National Association for Drama Therapy) では,「ドラマ・演劇のプロセスと結果を系統的,また意図的に用いて,症状を緩和する治療を行ったり,感情的・身体的な統合をすすめたり,また個人の成長 を発達させようというもの」と定義し,医療,福祉,教育など様々な分野への応用が研究・実践されています.私はこれを日本で一般の方々への自己啓発や教育 現場へ応用することを目的とし,大学,企業,生涯学習の場などへの実践を行ってます.実践方法等の詳細は,関連URL等で詳しく紹介されているので,そち らをご覧下さい.
<記者>
尾上明代さんとドラマセラピーとの出会いのきっかけを教えて下さい.
<尾上>
私 は元々アナウンサーとしてTV番組の仕事をするかたわら,市民劇団の指導を行って来ました.国際基督教大学では米文学を専攻しましたが,もっと演劇に関し て勉強したいと思い,文化庁芸術家在外派遣研修員に応募しました.幸い受かることができ,「一般市民に演劇を普及するための研究」という目的でイリノイ大 学の 演劇学部の客員講師となりました.
イリノイ大学へ行った当初はまだドラマセラピーの存在を知りませんでした.そもそも,イリノイ大 学ではドラマセラピーという科目はないのです.しかし演劇というものが持つ,素晴らしい「癒し」の力を感じていた私は,そのことについて,学科長の奥さん (私のアドバイザーでもあったNancy Hovasse先生)に話したのです.滞在中,私は演劇学部で講師として演技を教えるかたわら,大学院の一年生として授業も取りました.この時の演技につ いての学びが,後にドラマセラピストとなる上でどれだけ役に立ったかわかりません.
さて,ドラマセラピーとの出会いは,偶然の出来事の重 なりでした.ある時Nancyが,夫のもとにくるたくさんのダイレクトメールを整理していて,思わずゴミ箱に捨てようとしたものの一つに「ドラマセラ ピー」ということばが書いてあるのを見て,ふっと私の話しを思い出したそうです.Akeyoはこれに興味ある? と言って持ってきてくれたのが,そもそものきっかけでNancyにとても感謝しています.
そのパンフレットは,シカゴのITA (Institute for Therapy through the Arts) のもので,早速シカゴに行こうと,電話をしました.偶然電話を受けてくれたDebra は,日本に住んでいたことのある親切な女性で,ドラマセラピストの卵でした.シカゴ滞在中は,彼女のアパートに泊まらせてもらい,以来仲の良い友達になり ました.そしてさっそくセッションの現場へ助手として入らせてもらったのですが,そこで初めて出会ったドラマセラピストTedに,Nancyとパンフレッ トのいきさつを話すと,何と彼とNancyは大学時代の同級生だったことが偶然わかりました.
現場で体験したのは,ドラマの持つ療法的効 果に対する身震いするような感動でした.これが,私のドラマセラピーとの出会いです. その後,日本に広く普及させるべく,Kansas State Universityの大学院でドラマセラピーを学び,現在は講演やセミナーを通じて日本で実践しています.
<記者>
イリノイ大学滞在中はどのようなところにお住まいでしたか?
<尾上>
演 劇学部のスタジオがあるクラナートセンターから歩いて約10 分のお宅へ下宿してました.ちなみに,クラナートセンターは,ニューヨークのリンカーンセンターとワシントンDCにあるケネディーセンターと並ぶ全米3大 劇場として有名ですので,是非とも一度は行く事をおすすめします.
<記者>
今後の活動予定等ご紹介いただけますか?
<尾上>
8 月にオレゴン州のポートランドで開催される全米ドラマセラピー学会で,私が日本で行っているドラマセラピーの実践法に関して発表します.学会発表といって も,パワーポイントを使って論文の内容を紹介するような形式ではなく,実践法を学会の会場で実践し,その効果を体感する事により評価してもらいます.
<記者>
ドラマセラピーの国内での普及活動,学会発表の成功など今後のご活躍を期待してます.どうもあ りがとうございました.

<尾上パピ>
愛犬パピは尾上明代さんを癒す能力を備えているのでセラピスト犬と呼ばれています:-)
<関連URL>
1.尾上明代さんのホームページ
2.DEN(Drama Education Network)での紹介記事1
3.DEN(Drama Education Network)での紹介記事2