こんにちは。そしてあけましておめでとうございます。
2003年度奨学生の篠原史温です。東京も寒いですが、さらに寒いイリノイの地から、奨学生の白水さんからレポートが届いたのでみなさまにお送りします。イリノイでの限られた時間をより有意義に、より有意義にすべく挑戦を続ける白水さんの前向きなレポートをお楽しみください。
前回のレポートからおよそ3ヶ月半が過ぎました。皆様いかがお過ごしですか。そのころTシャツでも大丈夫だったのがうその様に突然寒くなり、突然雪が降り つもり、そうこうしているうちにもう1月。聞くところでは1月末から2月が一年で一番寒い時期ということで、もう一枚分厚いジャケットでも買おうかとして いる一方、それが過ぎれば春に向かうのかと思うと、本当に早いものです。
先学期のことでまずご報告したいのは、前回のレポート直後の10 月中旬から、Food ScienceのSensory Evaluationの研究室でUndergraduate Research Assistantをさせていただけたことです。私は日本(東京大学)では化学科の専攻なのですが、食品科学の分野に大いに興味があって、秋学期に Sensory Evaluation of Foods という授業を履修していました。大学院や進路のことなどでその授業の教官(Dr. Soo Yeun Lee) に相談をした際、もしスポットがあればResearch Assistant(RA)をさせていただけないかと折からお願いしていたのですが、ちょうどLee教授のラボのvisiting scholarであるPark教授が豆乳の風味感知について10月末に新しいSensory testをはじめようとしていたため、そこで機会を得ることが出来ました。(Park教授のテストの終了後11月末~12月には大学院生の Catherineさんのbreakfast cerealに関する同様の消費者テストをお手伝いさせていただきました。)
RAといっても各仕事自体は地道なものです。例えば、Park教授はどの味覚成分が豆乳の味を左右しているのかなどについてテストしていたので、カップの ラベリングからベースとなる味覚の溶液(甘味成分のベースはスクロース溶液など)作り、パネリスト一人一人のトレーに順番をランダマイズしたカップをセッ トすること、それから実際のテストでパネリストに手順の説明・サービング・後片付け、等々。しかし実際にやってみて初めて気をつけなければならないことが わかることも多く、また授業で学んでいる知識を実際のパネルに対していかす事も出来ました。(e.g. どうやったら最も効率的にラベリングできるか、パネリストの心理的なレスポンスバイアスを抑える工夫、など)1日2~3時間 / ほぼ毎日働いていたため時間的にかなりスケジュールがタイトになったのは事実ですが、Lee教授はこのラボワークをFood Science individual studyとして三単位分のクレジットを認めてくれたため、記録として残せたこともうれしいことでした。また、こうしたRAの制度はアメリカではポピュ ラーなようで、どこの研究室も数人程度学部生のRAを持っていたのですが、James Scholar(イリノイ大学独自の奨学金制度)などのhonored students、特別なプログラムの学生、あるいは少なくとも大学院進学を考えている学生などモチベーションとポテンシャルの高い学生が多く、それもよ い刺激となりました。普通では見られない”生の”研究現場で過ごせたこと、教授と直接知り合えいろいろな話が聞けたことなども含め、このような経験が出来 て本当によかったと思っています。
11月末のThanksgivingの一週間の休暇(私はUIUCの友達と大勢で東海岸を旅行して楽し んできました)があけると大学は一気にfinal(期末試験)モードに包まれました。普段からこちらの学生は一般的に言ってよく勉強するのですが、特にこ のシーズンはみんなとにかくストレスフルな様子でした。図書館などに行くと深夜までどのテーブルも満席、ダイニングホールでも教科書を片手に食事する姿が ちらほら。日本の学生も見習わなければなあと思います。私も自分なりにベストをつくし、宿題や中間試験でナビゲートしてくれる授業形態と、またわかりやす い教官にも恵まれたおかげで、GPA 4.0の好成績で秋学期を終えることが出来ました。
そして迎えた冬休み。といっても私は授業に出て いました。…というのは、UIUCの短期留学プログラムで他11人のUIUCの学生とともにメキシコ(Moreliaという中央高原北西部の街に基本的に 滞在していました)に3週間ほど行ってきたからです。これはLAS提供の三単位分のれっきとしたクラス(LAS 199 Winter Course Abroad : Global Studies)という扱いで、主にはGlobalizationとメキシコのmigrationの関係について学んできました。はじめStudy Abroad Officeのウェブサイトでプログラムを概観したときは、正直なところ、もともと旅行が好きで一ヶ月もある冬休みならばどこかに旅行しようと思っていた こともあり、ただの観光客でいるよりはもっと何か経験できる旅がしたいという漠然とした好奇心が大きかったのですが、いざ応募が選考に受かって研修が始 まってみると、午前中クラス→on-site task→午後はreading assignment, journalの提出、on-site taskについてのレポート、afternoon activity(美術館や歴史的建造物の見学など)、スペイン語の会話レッスン、 と予想よりずっとハードな毎日。しかしだからこそ、歴史的にどう globalizationがメキシコの社会に影響を及ぼしてきたか、様々な観点から深く学ぶことが出来ました。化学専攻の理系の学生として、今まで触れ る機会の少なかったこうしたトピックについて考える機会がもててよかったと思います。実際他の学生も工学部などから参加している人も少なくなく、専攻を問 わずこうした世界的問題についてしっかりした独自の見解を持っていることは必要なのだと感じています。
クラス以外にも週末にはField Tripが計画されており、Morelia近郊の町や島の観光地(タラスコ文明の遺跡Las Yacatas、カナダからの渡り蝶の保護区Monarcaなど)を訪ね、また日曜日はday-offだったので長距離バスでメキシコシティに足を伸ば し、そこの大学生であるメキシコ人の友達らに会うこともでき、あるいは平日フリータイムを見つけては他の11人の学生と市場を散策したりカフェでくつろい だり、時には夜中にパーティをしたりと楽しんだことも、全て忘れられない思い出です。滞在は12月26日から1月13日までだったので、新年もメキシコで 迎えることとなりました。まして1月1日は日曜日、day-offを利用してこの日はメンバー全員でMoreliaから車で2時間ほどの小さな小さな村々 を訪ねていました。果てしないほど広がる草原と山と湖をバンの窓から望みつつ、真っ赤な1月1日の夕焼けを見たのがやけに記憶に残っています。昨年の今頃 には、まだこのJIC奨学制度への選考まちの段階でした。初詣でひいたおみくじが大吉で、「大きな転機が訪れるでしょう」とあって、もしかしたらこの留学 にいけることではないだろうかと冗談めかしてしかし期待を抱いて、友達に言ったのを覚えています。一年後に、メキシコの村で新年を迎えていようとは、さす がにそのとき思ってはいませんでした。今までで一番印象的な元日だったと思います。
全く、留学は人をアクティブにしてくれる。―-それが 私の思ったことです。もし私がもともとUIUCの学生だったら、あるいは全く同じようなRAのシステムや短期留学のプログラムが東京大学にあったとした ら。それらがあることにも気づかず、あるいは知っていても応募のプロセスを面倒がったりして、参加していないかもしれません。一年間という限られた時間し かない中で、そこにあるresourceを吸収できるだけ吸収したい。その思いが、私にいろいろな経験をもたらしてくれました。そして、何かしたいと思い 行動を起こせば、実現する道が開けるのがアメリカという国の気風のいいところだ、とも思います。日本で「なせばなる」というと何か精神論的な意味合いが感 じられて好きではないのですが、”When there’s a will, there’s a way”というとき、その”will”には、”自分から動くこと、実現に向けて努力すること”-言い換えればアクティブであること、という意味が含まれて いるのではないかと思います。
昨日アメリカに帰国して今はシカゴの友達の家にお世話になっており、明日にはシャンペーンに戻り、そして明 々後日からは再び大学生活が始まります。今のところの履修予定では300-400番台のクラスが主になる上履修単位自体も多く、気持ちを新たに引き締めて いるところです。また春学期はSensory EvaluationではなくFood Chemistryのラボで、引き続きUndergraduate RAをさせていただくことになりました(そのほうが、やはりFood Scienceのフィールドの中でも化学の知識が最大限に活かせるかと思ったためです。)健康には注意し、課外活動も社交関係も楽しみながら、残り半分の 留学生活を充実させていきたいと思います。
こんな素晴らしい機会を与えられていることを感謝しつつ。2006年が皆様にとりましてよき年となりますよう、お祈りいたします。
謹賀新年