Japan Illini Clubのみなさま、ご無沙汰しております。2008年度奨学生の本間奈菜です。イリノイ大学での初めての学期はあっという間に過ぎ、冬休みを挟んで早くも春学期が始まりました。10月に初雪が降って以来(今年は例年より早いそうです)、シャンペーンは常に雪に包まれ、日中での氷点下の日が珍しくありません。実は、春学期が始まる直前まで中米コスタリカという国に行っていたため、シャンペーンに帰ってきた際に余りの気温差で風邪を引いてしまいました。そのため提出が遅れてしまって申し訳ありませんでしたが、第二回目の奨学生レポートをお送りします。今回は、主に秋学期の振り返りと、秋休み・冬休みの様子、また始まったばかりの春学期についても少しだけお伝えします。

【Fall Semesterの授業】
学期初めは、アメリカ人学生に交じっての授業についていけるか不安なうえに、膨大な量のリーディングと毎回の授業中のディスカッションに圧倒されていました。しかし、教授方のサポートもあり、慣れていくうちに、授業中はなかなか難しくとも、プレゼンテーションやレポート課題の中で自分の意見を展開することができ、いくらか自信もつきました。
Sociology160 Global Inequalities and Social Changesという授業では、「グローバリゼーションが私たちの身近な生活にどう関係しているか」をテーマに、各々が実際にBest Buyなどの量販店におもむいて、生産国や企業情報を集めて集計・分析するという変わった課題が出されたのですが、このように自分でリサーチを行い、自分の言葉でまとめるというのは、アメリカの授業らしいなあと感じました。また、この学期で一番印象深いのは、Political Science240 Introduction to Comparative Politicsという授業です。主に途上国を研究対象にして、民主主義や独裁体制などの国家体制の違いがどのような効果を国家にもたらすのかについて一連の講義が行われたのですが、学生向けの教科書ではなく、学術誌に掲載されている論文を毎回読むのでかなり苦戦させられました。しかし、トピックとして大変興味深く、以前からの研究関心にも接点がある分野なので、春学期には比較政治学をもうすこし掘り下げてみようと考えています。
【Fall Semesterの課外活動など】
日本ではこじんまりした大学に通っていたため、イリノイ大学の学生活動の幅広さには、学期初めのQuad Dayで本当に圧倒されました。せっかくの機会ですので、秋学期は授業だけでなく、そのような学生活動を含め交流の場を広げることにも心がけました。また、第一回のレポートにも書いたように、私の住む寮は国際理解がコンセプトであるせいか、住人はとてもフレンドリーな人ばかりなので、授業から疲れて帰ってきても、みんなとおしゃべりして過ごすことがうまく息抜きになっています。
多くの先輩方も行かれたBoston Career Forumに参加したため、残念ながら秋の楽しいイベント、ハロウィーンは逃すことになってしまいました。しかし、BCFでは企業からも、一橋・イリノイの友人やボストンで作った友人からも多くのことを学びました。単純に、一人で旅行をする度胸も付きました。実は、シカゴに向かう際ボストン空港で、普段から持ち歩いており、ボストンにも何気なく持ってきてしまった護身用のペッパースプレイが安全検査に引っ掛かり、警備員に尋問に近い対応をされてしまいました。全く知らなかったのですが、マサチューセッツ州法ではペッパースプレイは所持が禁止されているそうです。。。スーパーでライセンスも何もなしに購入したと説明しても警備員さんは半信半疑で、IDを見せ、留学生だと説明しやっと罰金は免除してもらえました(結局没収はされてしまいましたが…)。予想もしないところでアメリカの連邦制度を体感することになりました。

11月頭には、アメリカ大統領選の本選挙が行われ、この日はキャンパス全体が選挙に話題で持ちきりでした。残念ながら投票に参加することはできませんでしたが(苦笑)、テレビのある寮のラウンジで友人たちと開票速報に張り付いていました。夜遅くにオバマ氏の当選確実が報道されると、PARと、向かい合っているFARからはものすごい歓声が聞こえてきました。マケイン氏の敗北宣言とオバマ氏の勝利宣言を見たあと、Quadに出かけたのですが、QuadとGreen Streetには興奮した学生が詰めかけ、皆で“Yes We Can!!”と叫んで盛り上がりました。大統領を直接投票で選び、その結果に熱狂して外で大騒ぎするなど、日本では考えられないことですので、この日にアメリカに居合わせられたことを思うと、この年に留学できて本当によかったなぁと思います。しかも今回の選挙は、アメリカ人にとって4年に一度という以上の意味を持つものでしたし、何よりイリノイ州はオバマ氏の地盤であることもあって、皆の喜びようは特に大きかったのだと思います。しかし一方で、やはり最近は日本と同様、アメリカでも若者の政治・選挙離れが進んでいるそうです。大変注目されていた今回の選挙でも、この傾向が完全に覆されたわけではありませんでした。それを題材にESLの授業でレポートを書いたのですが、政治学専攻として、熱狂から一歩引いた冷静な視点からの、アメリカ社会の検討の面白さを感じました。
Fall Breakには、Alternative Spring BreakというプログラムでNew Orleansに行き、ハリケーン被害からのコミュニティの復興のためのボランティア活動を行いました。ASBはイリノイ大学のUniversity YMCAが主催するプログラムで、New Orleansグループは14人でした。旅行前はほとんど面識のなかった他の学生とも、片道12時間のドライブでうちとけるようになり、5日間はあっという間に過ぎてしまいました。ボランティアは具体的には、ハリケーン以降放置された空き家の清掃や、中古の家具を安く提供しているNGOの倉庫整理、被災された方のお宅のペンキ塗りをしたのですが、ペンキ塗りの後に、家の方からハリケーンの直後や現在の苦労を実際に聞けたことが印象に残っています。また、私にとっては、同行したアメリカ人学生のボランティアに対する見方、アメリカ社会に対する見方を身近で観察することができたことも、大きな収穫でした。

【コスタリカ旅行】
12月のあわただしいfinal weekをなんとか乗り切り、クリスマスはシャンペーンに滞在した後、年末にはコスタリカに旅立ちました。Quad Dayで見つけた、Registered Student Organizationの一つであるInternational Impactという団体に申込み、コスタリカチームの一員としてボランティア旅行に参加することになりました。チームは私を含め9人です。合計で3週間滞在したのですが、コスタリカは比較的小さな国なので、コスタリカ中をめぐることができました。

最初の一週間は、ウミガメの保護プロジェクトに参加するため、首都から5時間の太平洋側の町に行きました。私たちが滞在したキャンプは、さらに町からも離れており(橋がかかっていない川を自力で渡らないと着きません)、個室も熱いシャワーも、電気もインターネットもありませんでしたが、その分自然の美しさは格別でした。夕日やたくさんの流れ星、波の音など、一生の記憶に残る場所でした。プロジェクトの仕事は、毎夜孵化する赤ちゃんガメを観察し、海に返しに行くことなのですが、これも、自然と命の偉大さを感じ、本当に感動しました。その後、首都を起点に活火山の噴火の様子を見に行ったり、熱帯雨林の中でジップライニングやラフティングをやったり、太平洋と反対側のカリブ海側を訪れたりしました。ジャングルに分け入って、先住民族Bri Briの家を訪ねたのは、ものすごい量の蚊に刺された甲斐がありました。最後の一週間は、首都の貧しい地域にある幼稚園で半日子供の遊び相手をし、午後はスペイン語のレッスンを受けたり首都を散策したりしました。幼稚園では、スペイン語が話せなかったためなかなかコミュニケーションがとれませんでしたが、それでもかわいい子供たちと一緒に園内を走り回ったり、折り紙を教えたりして、楽しく過ごすことができました。
しかし、このコスタリカ旅行では、改めてカルチャーショックに直面したり、英語の通じない悔しさに泣いたり、一緒に笑って踊ったり…と、アメリカ人と大半の時間を過ごしたことで、タフさと文化の違うことへの寛容さが身に付いたことが何より私にとって大きなことでした。理不尽だと思ったことには、自分が少数派であっても、意見を声に出して伝えることが大切なのだと学びましたし、逆に、小さなことにこだわりすぎて、楽しく過ごせないのはもったいないとも思えるようになりました。実は、旅行前は3週間という長さに怖気づいて、行くかどうか迷っていたのですが、英語力の面でも、精神面でもすごく鍛えられたコスタリカ旅行は、行ってみて本当によかったと思います。他のメンバーとも後半は打ち解けられ、O’Hare空港で解散するのは、大学でまた会うとわかっていても寂しかったです。

【春学期の予定など】
さて、今学期はアメリカでの最後の学期となります。欲張りな私は心残りの無いよう、できるだけいろいろな授業を取りたいと思っているため、今学期は先学期よりも挑戦的な時間割になっています。また、日常生活では苦労することが減ってきた反面、授業を受ける上ではまだまだ英語力が足りないと感じているため、授業中の発言やプレゼンなど、それぞれの授業でもっと存在感を出すことが目標です。
軽く先述したように、政治学の中でも、一橋大学では学べない比較政治学やそれに必要な実際的なスキルを学ぶため、Political Science 241 Comparative Politics of Developing Countries, PS 356 Comparative Political Behavior, PS 358 Comparative Political Economy, PS 230 Introduction to Political Researchを履修します。また、GLBL 296 Global Seminarでは、グローバル化社会における特定の問題を多面的に扱う姿勢が興味深いと思い、Understanding Global Water IssueとCitizens and Citizenship in the Era of Globalization の二つを履修します。特にcitizenshipに関するコースは、アメリカで様々なバックグラウンドを持つ人々に出会ったことで興味を引かれた分野です。日本の比較的閉ざされた社会の中では気付かなかった、移民という、グローバリゼーションの重要な議論の一つへの視点を養うことが目的です。
最近、Nanaはいつ日本に帰るの?と友人や周りの人によく聞かれるのですが、まだまだやりたいことはたくさんあるし、もっと伸ばしたいものもたくさんあるのに、これが最後の学期だと思うと必要以上に焦ってしまいます。しかし、コスタリカに行って感じたことなのですが、人との出会いも、チャンスとのめぐり会いも、結局は一期一会です。あと○か月、○日、など後ろ向きに数えるよりも、今を新しいスタートと捉えて自然体ですべてに取り組んでいきたいと思います。
最後になりましたが、このような貴重な機会を与えてくださり、そしていつも温かく応援してくださっているJICの皆様には本当に感謝してもしきれません。JIC奨学生として、数少ない日本人留学生として、私がもらっているものの大きさには敵いませんが、イリノイ大学にもプラスのインパクトを残せたら、と考えております。
一橋大学法学部4年 本間奈菜
≪写真解説≫
①部屋の外から見える景色です。雪まみれ…
②ハロウィン当日はシャンペーンを離れていましたが、ハロウィン前のPumpkin Curvingは参加しました!意外と簡単でしたー
③ニューオーリンズでは、みんなで自炊しました
④ウミガメ保護のキャンプからすぐのビーチにて
⑤幼稚園の子供たちに折り紙を教えました!