池谷香子さん2011年1月分奨学生レポート

JICの皆さま、こんにちは。2010年度奨学生の池谷香子です。

一面真っ白だったQuadから鮮やかな緑が顔を出し、シャンぺーンもようやく春の様相です。暖かさに気持ちが緩むと同時に、留学生活も残り少なくなってきたことに焦りや寂しさも感じはじめています。まだまだ先は長いと思っていた先学期や冬休みを思い出しながら、今回のレポートをお届けします。

まずは先学期の授業でとてもアメリカらしいな、と思ったことがあったのでお伝えします。

SAME133 Introduction to the World of Islamという授業での話です。この授業では、中世のイスラム国家建設から、現代のアメリカにおけるムスリム移民までの世界的規模でのムスリムの拡大がテーマであり、週2回のレクチャーと週1回のディスカッションによって構成されていました。毎回の課題図書の量も多く、内容の非常に細かいアカデミックな授業でした。ところが、シラバスではペーパーとされていた期末課題が、直前になって教場試験に変更されたことにより、一部の学生の反感を買ってしまいました。これは受講生の出席率の悪さに対する教授の対抗策だったようですが、期末試験前日になって受講生のメーリングリストが、シラバスの変更は許されるべきではないと学部長に抗議をするという話でもちきりになりました。試験前日にもかかわらず、署名を集める方法、抗議する内容などについてのメールがひっきりなしに流れ、こんなことをする時間があるなら勉強すればいいのに…と思いながらもアメリカの学生の行動力に感心し、私もメールを確認せずにはいられませんでした。そして、抗議に反対し教授を擁護する学生がいることにも驚きました。日本では、急なシラバスの変更があっても学生は多少文句を言うくらいだと思います。ましてや、多くの学生が教授を批判するなか、反対の意見を述べることはなかなかできないでしょう。結局は試験がそこまで難しくなかったこともあり、ごく一部の学生が陳情を述べただけで終わったのですが、さすが自分の意見を主張することが当たり前の国だ、と感じた面白い経験でした。

また、JICの先輩方も多数受講されている、CMN101 Public Speakingも記憶に残る授業となりました。スピーチの原稿の書き方、スピーチ中の振る舞いを学び、実際にクラスメートを前にしていくつもスピーチをこなす授業です。アメリカ人の学生ばかりの中に一人入ってしまい、最初の頃は他の学生の話す内容が全く理解できず、自分のスピーチの前日は緊張のあまり、突然高熱が出て授業を休めないだろうかと毎回考えるほどでした。話すスピードが明らかに遅く、その分内容も少なくなってしまうため評価が下がるのではないかと心配でしたが、スピーチのフォーマットの指示がとても細かく、指示通りに内容を埋め、しっかりと暗記して授業に臨めば評価されるという採点システムに救われました。そして他の学生がフィードバックを紙一面にぎっしりと書き、励ましてくれることも助けになりました。学期末には、学生が投票で決めるMost Improved Personにも選ばれ、今となっては受講してよかったと思っています。

サンクスギビングと冬休みは、アメリカを西へ東へと大満喫しました。

サンクスギビングはカリフォルニアへ行ったのですが、シャンぺーンから乗り換えのためダラスへと向かう飛行機でアクシデントに見舞われました。離陸後30分ほど経ってから機長によるアナウンスで、機器の故障により高度を上げられないので、シャンぺーン空港に戻ると言われたのです。万が一に備えて着陸前に燃料を使い切らないといけない、ということでシャンぺーン上空を猛スピードで旋回したうえ、後部座席の赤ちゃんが大声で泣き叫ぶので、このまま帰れなくなるのではないかと狼狽してしまいました。そんな状況でも、いつものことのように平然としており、寝ている人までいるのに驚きました。後でわかったことによると、原因は整備不良だったようです。着陸は成功し、今こうしてレポートを書くことができているわけですが、それ以来アメリカの国内線に対する不信感・恐怖感が消えることはありません。

冬休みはまるまる一カ月シャンぺーンを空けてニューヨーク、ワシントンDC、フロリダを回ってきました。ニューヨーク滞在中には、空港や電車が完全にストップする大吹雪に見舞われるなど、またトラブルの絶えない旅でしたが、年越しをディズニーワールドで迎えるなど大いに楽しみ、秋学期の疲れを取ることができました。

そして冬休みは、留学とは切っても切れない「別れ」の季節でもありました。

1学期のみの交換留学生、冬卒業の学生、そしてイリノイ大学から海外へ留学する学生が皆シャンぺーンを離れてしまいました。

私のルームメイトも台湾からの1学期間の留学生だったため、12月末に帰国してしまいました。彼女は電気電子工学科の4年生で、日本のアニメが大好きで日本語を勉強していたため、私とルームメイトになったことをとても喜んでくれたようです。むしろ私の方が知らないことが多く、アメリカで台湾人から日本のアニメについて教わるという面白い寮生活でした。毎日お互いに日本語・中国語を1文ずつ教え合ったり、一緒にカラオケに行ったりと仲良くしていたため、彼女の帰国後部屋がとても寂しくなってしまいました。しかし、帰国後も連絡を取り合っており、日本と台湾で会う計画も立てています。

このように、他の国からの留学生と仲良くなれたことも、留学で得た大きな収穫です。それぞれの国でトップレベルの大学から来ている学生も多く、世界中にネットワークを築くことができるということが留学の意義の1つであると思います。イリノイで過ごした仲間は、帰国後、大学卒業後も大切な宝物になることでしょう。

今学期はHIST472 Immigrant AmericaやLLS281 Construction of Race in Americaなど、アメリカにおける移民や人種問題に関する授業を中心に受けています。未だにディスカッションの授業で発言がなかなか出来ず、もどかしい思いもしますが、先学期に比べて確実に授業の内容の理解や授業への参加が深まっていると感じます。

春学期は休みも少なく大変ですが、残り少ないイリノイ生活を悔いなく過ごせるよう、ますます授業に遊びにと充実した日々を送っていきたいと思います。

田中豪さん2011年1月分奨学生レポート

 JICの皆様、こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。田中豪です。

時が経つのも早く、早くも二回目のレポートの時期になってしまいました。今回は、サンクスギビング、秋学期のまとめ、冬休みの旅行を中心にお届けいたします。

学 期の前半は、気温が高かったこともあり、放課後に友人と外でサッカーをしたり、日本館の周りのクロスカントリーコースを走ったり、学内のトライアスロンの レースに参加したりと、アウトドアな生活を送れていたのですが、11月を過ぎると、一気に冷え込んで、もっぱら屋内での生活が続いています。

そ んな寒いイリノイから離れるために、サンクスギビングはアラバマの友人宅を訪れました。現在は、日本で働いているのですが、休暇を利用して両親に会うため にアメリカに戻っていたところでした。シカゴ大学の卒業生なので、イリノイの寒い気候もよく分かっていて、暖かいところでサンクスギビングの家庭料理を食 べないかと誘ってもらいました。ターキー、マカロニ&チーズ、コールスロー、そしてパイ。はじめて口にする料理ばかりでしたが、おいしかったです。そし て、友人本人しか知らなかったにもかかわらず、家族の輪に入れてもらうことができて、南部のホスピタリティを感じました。

ア ラバマでは、彼の実家だけでなく、ヘレンケラーの生家やHuntsvilleにあるSpace & Rocket Centerに連れていってもらいました。宇宙センターというと、フロリダにあるKennedy Space Centerしか僕は知らなかったのですが、この博物館もアメリカでは有名なようです。周辺には、宇宙に関連する産業の工場が集積していました。
ロケット

今学期の授業のまとめを書いておきます(各授業の中身に関しては、前回のレポートで詳しく書いたので、今回は割愛します)。

1. CMN111: Oral and Written Communication I
学 期の前半は、毎回のWritingの課題をこなすのが本当に大変で、毎回前日に徹夜をして、なんとか提出するというスタイルが続き、評価も芳しくなかった のですが、後半に入ってからは、提出前に公開されている評価基準を細かくチェックすることで、無駄な減点をなるべく減らすようにしました。
文 法や表現で減点されることが少なくなると、Freshmanであるクラスメートたちは構成自体に苦労している一方で、で、僕は日本では大学4年生にあたる わけで、レポートを書いた経験があり、Organizaingや内容面で高い評価をもらえるようになりました。8月に提出した一番最初の課題では70点 だったのですが、最終的な成績評価では、Aをもらうことができました。表現の流暢さはこちらの学生に遠く及びませんが、構成さえしっかり練られればアメリ カの大学で何とかやっていけそうだと少しの自信になりました。

2. HIST 274: The United States and the World Since 1917
面 倒見のいいTAにめぐり合うことができて、課題の提出前に毎回フィードバックがもらうようにしていました。Book Reviewでは、課題の本が分厚かったこともあり、数週間前からメモを取りながら読み始めて、Reviewを書き始める前に、内容をほとんど頭に入れる ことができていたのがよかったのだと思います。読むスピードが遅くても、テキストの理解力が悪くても、こつこつやれば、一夜漬けのアメリカ人よりずっと内 容のあるReviewが書けると分かったのは、やっぱり自信につながります。2回のBook Reviewと3回のテストすべてでAをそろえることができました。
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3. PS 202: Religion and Politics in the U.S.
2 回のテストとタームペーパーで評価が決まります。教科書が4冊指定され、リーディングの課題が膨大で、毎回の授業の予習では、ほぼ半分しかこなせていませ んでした。大人数授業で、授業のディスカッションにもなかなかついていけず、クラスの中で友達をいなかったので、テスト勉強は、もっぱらホームページに アップされる簡単なパワーポイントだけが便りでした。タームペーパーも、締め切りに追われ、自室からアクセスできるE journalだけを参照して書いた、なんともお粗末なPaperになりました。結局、評価はB。いくら勉強しても、しっかりした授業ノートで内容を理解 できていないとAは取れないと分かったのは収穫です。
授業では、統計データを頻繁に参照していたのが印象的でした。統計やデータ解析のバックグラウンドがなく、その意味がよく分からなかったので、来学期は統計関連のことも勉強しようと思います。

4. PS 222: Ethics and Public Policy
3 回のShort Essayと期末試験で評価が決まります。授業の内容もよく分からず、英語で書かれた哲学書の理解も不十分で、公開されるPowerpointもシンプル すぎてまったく役に立たないということで、毎回、自分でも意味の分からないEssayを提出し続け、教室に通うこと自体が拷問に思えた授業でした。
難 しいテキストを読み続ければ、そのうち分かるようになるという希望を胸に、Dropはしなかったのですがその日はついにやってきませんでした。笑 ギリシ ア哲学はまだ良かったのですが、Kantなどの近代哲学になると、何回テキストを読んでも、意味が分からず、限界を感じました。こうしたテキストを読める ようになることが、自分の今後の目標です。評価は最終的にB-。なんとか踏みとどまったという感じでしょうか。

5. DANC 120: Tap Dance I
最 終的にB-取ったPS 222以上に落ちこぼれていたのが、この授業です。毎回の授業に欠かさず参加はしていたものの、足が思い通りに動かず、自分のイメージと現実のギャップが 辛いです。日本でダンスをならったことがなかったのでこの授業を取ったわけですが、人前で見せられるようになるには、さらなる練習が必要です。来学期に は、Tap Dance 2を受講するか検討中です。

振り返ってみると、成績については、自分が力を注げた量に相応する評価をもらったというところです。来学期への目標としては、前回でのレポートでも書いたことですが、300-400番台の授業とグループワークのある、あるいは少人数の授業を中心に取ろうと思っています。

冬 休みは、クリスマスイブにColorado Denverに飛び、アメリカ人の友人と二人でDenverとBoulderの二都市を拠点にしながら、Winter sportsを楽しみました。DenverがMile High Cityと呼ばれているように、市内の標高が既に高いので、スキー場では麓であっても少しクロスカントリーをするだけで息が上がってしまいました。リフト で山を登っていくと、目の前の尾根が、富士山よりも高かったりして、晴れた日の景色は最高でした。ちなみに、吹雪の日は、まつ毛が凍ります。車を借りて日 帰りで市内から通ったので、VailやWinter parkと入った山奥にある大箱のスキー場には行けなかったのですが、Arapahoe Basin、Love land、Eldoraなど、毎日違うゲレンデで滑ることができました。合計で、四日ほどスキーを楽しみ、それ以外は付近の山をトレッキングしたり、市内 を観光したりしました。
alapahoe
1 月4日にシャンペーンに戻り、数日をのんびりと過ごしてから、New Orleansに車で向かいました。NOLA Reliefというイリノイ大学の団体のメンバーとして、Operation Helping Hands(OHH)のボランティア活動に参加するためです。

CCANO

OHH は、Hurricane Katrinaで壊されたままの家(おもに障害も持っていたり貧しかったりする人の家)を修復するキリスト教系のボランティア組 織で、僕も、教会に泊まりながら、1週間ほど、家の修復作業を手伝いました。ペンキ塗り、タイル貼り、壁の張替え…など一通りの大工作業は経験しました。 地震がなく、強度を気にしなくていい場所での建築作業では、それなりの戦力になるぐらいのテクニックが身についたのではないか、と勝手に思っています。笑
全 部で15人ほどのグループで、僕以外は全員イリノイ州内の学生でした。僕が唯一の留学生ということで、みんなに興味を持ってもらえて、積極的に話しかけて もらうことができ、コミュニケーションに苦労しなかったのは本当に助かりました。また、夕方に作業が終わってからは、毎夜市内まで車を走らせ、お酒を片手 にJazzを深夜まで聞いていました。早朝から作業が始まるので、朝は辛かったですが、いい思い出になりました。また、ニューオーリンズは、魚介が
おいしく、カキやガンボスープ、ジャンバラヤ、ザリガニなどを食べました。どれもおいしかったです。
秋 学期は、放課後は留学生と外にでかけることが多く、なかなかアメリカ人の友達が出来ずにいました。語学の壁やや文化の違いを勝手に感じて、地元の学生の輪 に入れないことが多かっただけに、New Orleansのボランティアを通じて、アメリカの学生たちに溶け込めたと実感できた瞬間は、すごく嬉しかったです。
ち なみに、NOLA Reliefという団体は、大学から援助をもらっているということで、交通費・宿泊費・食費・参加費はかかりません。今年は、1月にボランティアしました が、年によっては、春や秋の休暇にNew Orleansに行くこともあるようです。アメリカ人の友人に囲まれて1週間を過ごすことができること、実際に体を動かすボランティアができること、費用 がかからないこと、ニューオーリンズの食事と音楽が最高…という理由で、来年度以降の留学生にもぜひおすすめしたい休み期間中の活動です。

NOLA
以上が、秋学期~冬休みの生活のまとめです。

最後に、春学期の履修予定の授業を書いておきます。
1. PS 230: Introduction to Statistics for Political Science Majors
2. PS 318: Interest Groups & Social Movements
3. PS 410: Neighborhoods & Politics
4. LLS 238: Latina/o Social Movements
5. GLBL 296: Critical Human Rights in Global Perspective
6. LAS 490: Translation in European Union
7. LAS 490: UN Terminology and Procedures (3-day Seminar)

次回のレポートで授業の中身や感想を書いていこうと思います。春学期は、秋学期以上に充実した学期にしようと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

2010年3月29日
東京大学 法学部 4年
田中 豪