中村真理さんの2011年10月分奨学生レポート

Japan Illini Clubの皆様、大変お世話になっております。2011年度奨学生、東京外国語大学外国語学部4年の中村真理と申します。奨学生に選んで頂いてから出発までの間、そしてここイリノイに来てからも、様々な形で皆様から温かい励ましのお言葉やサポートを頂き、本当にありがとうございます。早いもので、昨年の今頃は夢であったUIUCでの留学生活も2ヵ月半が過ぎ、”stranger”の意識で外から溶け込もうと必死だったキャンパスにも、随分親しみを感じながら過ごすようになりました。第1回レポートでは、この2ヵ月半の経験と、それらを通して考えたことなどをご報告させて頂きたいと思います。

◇Fall Semesterの授業について
アメリカ留学の動機の一つは、人種や民族、地域などの点で「多様性」が強調されるアメリカにおいて、人々に影響を与える一つ一つの法や政策は、どの集団のどの様な意図を反映して、どの様に形成されていくのかという過程を詳しく学んでいくと共に、自分自身も生活者となってその「多様な」社会を肌で感じたいというものでした。今学期は、アメリカ国内の政治に対する理解を深めることを目標として、Political ScienceやLatina/o Studiesで開講されている授業を主に履修しています。とりわけ印象的な授業をいくつかご紹介させて頂きたいと思います。

・PS101 Intro to U.S. Government and Politics
2学期間という限られた期間と単位数の中で、この基礎クラスを受講すべきか、それともアメリカ政治における具体的な組織やテーマを掘り下げる授業(“The US Congress”や”Religion & Politics in the US”など)にどんどん挑戦していくべきか迷いましたが、今後具体的な事柄をより正確に理解していくために必要である、基礎的な知識や用語、考え方をしっかり身に付けたいと思い、履修を決めました。私が受講している枠は週3回の講義形式ですが、Introのクラスとしては珍しく15人程の少人数で、学生の発言数が多い活発な雰囲気です。Preziというプレゼンテーション作成用のソフトで、教科書には載っていないデータや映像も取り入れながら作り込まれた講義内容のまとめが、毎回授業専用のWebsiteにアップロードされたり、定期試験やペーパーに加えてShort Assignmentも頻繁に課されたりと、学生に基本を教え込もうという熱意も伝わってきます。講義は、Unit1: Foundations of American Politics, 2: Individuals and Politics, 3: Linking Citizens and Government, 4: Institutions and Policy-Makingで構成されていますが、個人と政治との関わり方をPublic Opinion及びThe Mediaという二つのキーワードから説明をしていったUnit2には、リーディング課題として教科書とは別にいくつか論文も指定されるなど、特に重点が置かれている印象を受けました。具体的には、連邦議会によって創設された機関によるメディア規制の例として、Federal Communications Commission(FCC:連邦通信委員会)が、「公的に重要な争点に適切な放送時間を割き、争点を扱う際には、一つの見解に偏らずそれと対抗する意見も公平に報道しなければならない」ということを定めたFairness Doctrine(公平原則)などが取り上げられ、これが1987年に廃止されてメディア側の自由裁量部分が大きくなったことにより、ラジオ放送(特に聴取者参加型の「トーク・ラジオ」)は保守色の強い番組で占められるようになったという議論が紹介されました。また、メディアの報道が、政治家に対する世論に変化を起こしたPriming(プライミング効果)の例として、湾岸戦争への対処をめぐる一連の報道を境に、ブッシュ大統領(41代)の大統領としての評価が、湾岸戦争への対処という一点に基づく傾向が強くなったために、他の外交政策や国内の経済政策への不満を差し置いて支持率が上昇した、というデータを示した論文を扱いました。Unit1でアメリカ政治の仕組みの基礎を学んだ後に、その仕組みがつくった制度によって、メディアが映し出す政治や、世論の在り様が規定される面があるということと、その一方で、メディアと、メディアに影響された/されなかった個人は仕組みに対してどの様に変化を与え得るのかということを、様々な興味深い具体例を通して学んだことが印象に残りました。

・PS300 Politics of Racial and Ethnic Diversity
「人々は多様性にどう反応するのか」「国家は多様性をどう扱うのか」「国家による多様性を扱った政策に、国民はどう反応するのか」「多様性と社会福祉政策との関わりはどの様なものか」という四つの問いを軸に、毎週、”Diversity & the Creation of Identities”や”Diversity and Social Capitol”といったテーマが設けられ、週2回の授業では、課題論文に基づいたディスカッションを行います。論文の量が多く、他の学生の意見を聞き取り理解することや、議論の流れを汲んでその場で意見を述べることに大変な難しさを感じてかなり苦戦していますが、20人程のクラスの中にもアフリカン・アメリカンやラティーノ、白人、アジア系など非常にdiversityがあり、彼らの発言から、その背景や考え方をもっと知りたいという気持ちが強まります。学期の最後まで、諦めずに頑張りたいと思います。

・GLBL298 International Development and Community Service in Nicaragua
他の授業に比べて形式や内容の毛色が少し違いますが、UIUCのStudy Abroad OfficeとJICの奨学生が所属するCollege of Liberal Arts and Sciencesが共催している海外研修のコースです。10月半ばから開講される教室での授業(計6回)と、冬休み中の2週間の現地研修、そしてレポート提出によって3単位を受けることができます。このGLBL298のコースは、”Immigration and Cultural Diversity in Israel(イスラエル)”や”Globalization and Inequality in Post-apartheid Cape Town(南アフリカ共和国)”など計10程用意されている中から希望を出すことができ、9月の半ばにApplication Essayを提出して、第一希望であったニカラグアのコースに参加させて頂けることとなりました。冬休み中の現地研修では、首都マナグアでホームステイをしながら、ヘルスケアやフードエイドに関わるNGOや学校を訪れる予定です。参加者は14名ですが、留学生は私一人で、アメリカ人の正規の学生と一緒にニカラグアで2週間を過ごすことになります。その前にはUIUCでのLectureも組まれており、先日行われた授業は、各々がニカラグアにおける貧困を示すと考えられる統計データを持ち寄って議論をするというものでした。教授がかなり速いテンポで、各統計データと国連のミレニアム開発目標(MDGs)とを、また米国のODA実施機関でありニカラグアもその対象国であるMillennium Challenge Corporation(MCC:ミレニアム挑戦公社)の指針とを結びつけて話したり、「なぜ国民の活動の自由度が高いほどその国が発展していると言えるのか。中国は国民が自由を享受しきれているとは言い難いが、目覚ましい発展を遂げているよ。」「携帯電話の普及率が途上国において必ずしも低くない(アメリカは09年に197ヵ国77位であり、ランキングには先進国も途上国も入り乱れている)のはなぜだと思う?」などと常に学生に問いかけを行って意見を求めたりと、他のクラスと比べても双方向であり議論の色が強いと感じました。この中で、ネイティブスピーカーのみの発言に乗っていくということには、気持ちの面でも英語のスピーキング能力の面でも難しさを感じますが、自分の立場を生かして面白い視点を持ちこめるようになることを目標に、このプログラムを学び多い機会にしたいと思っています。
◇課外活動などについて
授業外では、特に苦手意識が強い会話力を伸ばしたいと思い、Quad Day(UIUCの学生団体やサークルが、キャンパスの中心にある広場Quadに集まり、新入生を勧誘する一大イベント)にて見つけた、2つの国際交流系の団体を通して、”International Buddy”や”Conversation Partner”と呼ばれるアメリカ人の会話相手を紹介してもらいました。彼らには、キャンパスから少し離れたカフェやショッピングモールに連れて行ってもらったり、Bible Studyや映画に誘ってもらったりと、日々の生活の中で助けられています。このうち地元の教会を基盤としているInternational Student Connectionsという団体は、留学生へ向けてAmerican Culture Classを開いており、私も度々参加してアメリカのTV番組や祝祭日について話を聞いたり、地元の農園へのフィールドトリップに出掛けたりしています。先日は、彼らが通う教会が年に一度開催する”Revival”というイベントがあり、クラスを主催しているJessicaと一緒に参加してきました。アメリカに居るうちに、一度教会が開くイベントというものを体験してみようという少しの好奇心から足を運んだのですが、結果として、この”Revival”は私にとって非常に考えさせられる、印象深い出来事となりました。
Jessicaの説明によると、”Revival”は、「同じ地域の教会に通う人達が一堂に会してお祈りをすることで、仲間とのつながりを強めながら、”God”をより近くに感じ、敬意を表する」という趣旨のようでした。このイベントはキャンパス内にあるAuditoriumで行われたのですが、私が会場に足を踏み入れた時には既に100人以上の人が集まっており、独特の雰囲気と熱気を感じました。最初の2時間程は、舞台上の生のバンド演奏と歌い手に合わせて、会場にいる全員でChurch Songを大合唱しました。Jessicaをはじめ多くの人が知っているポピュラーな歌ばかりのようでしたが、正面の大きなスクリーンに歌詞が映し出され、飛び入り参加をした私も、映画の様な光景に圧倒されながらも一緒に歌い楽しみました。その後、Columbia International Universityというクリスチャンの大学の総長をゲストスピーカーに招いたレクチャーを経て、お祈りの時間(Prayer time)となりました。Singing timeの間から、周りの人達が手を高く上げたり肩を組んだりする様子などから、彼らの感情の高まりが感じられて印象的だったのですが、Prayer timeでは、長い間涙を流したり、目を瞑って叫んだりしながらお祈りをしている人も多く、初めてそういった場面を目の当たりにした私には衝撃的な程に、大部分の人がその場に感情をぶつけている様子を感じました。また、一人で祈るだけではなく、周りの人達とそれらを共有している人が多かったのも印象に残りました。
帰り際に、Jessicaに何をお祈りしたのかと聞いてみると、「障がいのある人達をサポートする仕事がしたいけれども今すぐには難しいので、その資格につながる学校が上手く見つかって、奨学金なども得ながら勉強をして、将来職を得られるように。」ということと、「Christの精神を広めていきたい。以前中国でクリスチャンの教会に立ち寄った時に、異国の地で言葉が通じなかったけれども、教会の人達とはつながっていると感じて安心した思い出があるから。」と教えてくれ、「Mariは何をお祈りしたの?」と尋ねてくれました。Prayer timeに周りの人達の様子に圧倒されていた私は、Jessicaのような具体的なお願い事をするには至りませんでしたが、常日頃から「この留学を自分自身が納得できるものにしたい」と思っていること、そして、「一つ一つの課題に真摯に取り組むことを一年間続けることで、自信や余裕を身に付けて、今後社会の中で周りの人の役に立てるようになりたい」と思っていることなどを伝えました。非日常的な雰囲気に影響されたのか、また慣れない環境で2ヵ月を過ごし疲れていたのか分かりませんが、今までに非常に辛いと感じた経験や将来への不安なども織り交ぜながら、彼女と色々なことを話しました。聞き終えたJessicaは、”Can I pray God for you? “と言って座り直すと、「Mariがアメリカでの生活を通して、彼女自身に自信を持てるように。彼女と彼女の家族が皆幸せになれるように。」と随分長い間目を閉じて、私のために祈っていてくれました。
考えてみると、日本では、「神の助けを願い求める」という意味の「神頼み」がなされる際には、こちらの人達が教会で「必ず道が拓ける」と信じてお祈りをする(ように見える)のに比べ、「もうどうしようもないので何とかしてほしい」と、願いが実現するかどうかという点には不確実性が多分に含まれているように思います。また、Jessicaが祈っていたような具体的な進路や職業に関する迷いや悩みは、「神に祈るよりも自分で行動し解決すべき」という考えが、少なくとも私の周りでは一般的でした。私自身も、悩みや辛さを他人と共有するということに関して、誰かに相談して励ましてもらったとしても状況自体は変わらないのであり、ましてや不確実なものに向けて上手くいくよう祈ることは甘えに過ぎず、最終的には自分で考え決断し、行動し、結果にも自らが責任を持てるようになるべきなのだろうと考えてきました。しかしその結果、状況が上手くいかない時には自分が100%悪いのだろうと感じて萎縮したり、その一方であまりにも辛い時には誰かや何かのせいにしてしまったりと、上手くいかないことも多かった気がします。留学以前からそんな状況に苦しんでいた中で、Jessicaが、まだ数回しか会ったことのない私の悩みや不安を感じて涙ぐみ、自分が信じているものに向かって一生懸命祈ってくれたということは、驚きと温かさを感じたある意味でカルチャーショックの様なものでもありました。彼女が別れ際に、”Mari, thank you for being so honest. It always needs courage to talk about yourself.”と言葉を掛けてくれた時には、何とも言えない気持ちになりました。Auditoriumの荘厳な雰囲気も相まって、何か心を動かされるものがありました。
また、宗教という共通項によって、日本人の想像を越えた強固なつながりを持ち、歌と祈りを通して、100人以上もの人達にあれだけの一体感を生み出してしまうところに、(私自身はここアーバナにある教会のうちの一つで体験しただけですが、Jessicaが話してくれたように、こういった絆が場所を問わずクリスチャンの人達の間で共有されることも多いのであれば)アメリカという国の力強さを見た思いがしました。あの独特の一体感は、私が今までにした体験を持ち出してくるとすれば、(適切な例か分かりませんが個人的な感覚では)何かしらのスポーツなどの国際大会で、全く知らない人同士が日本を応援する中で一つにまとまっていく、というものに最も近かった気がします。帰属意識や連帯感を感じる対象や、そういった意識が顕著な形で現れる場面というのは、国や文化によって大きく違うものだとも思いました。しかし一方で、その表現の仕方や、同じ仲間意識を持つ人達に囲まれて普段よりも気持ちを解放することで払拭する日々のストレスや不安、悩みなどといったものは、国に関係なく似通ったものなのかもしれないとも思いました。ともあれこのイベントは、色々なことを考えさせられたと同時に、思い切って新しい場に飛び込んでいくことの良さを改めて実感させてくれました。

長くなってしまいましたが、色々な体験をさせて頂きながら、2ヵ月半元気に過ごすことが出来ています。常に好奇心を保ちアンテナを張っておくことで、日々の体験に対して色々な感情や疑問を抱くことができ、そこから思考したり調べたりすることで、その体験を、自分のものとしていくらでも広げたり深めたりすることができるのだと実感した2ヵ月半でした。今後の留学生活も、前向きな気持ちで、一日一日を大切に過ごしていきたいと思っています。

最後になりましたが、私達をUIUCに送り出してくださったJICの皆様をはじめ、応援してくれている家族や友人、先輩や後輩に、この場をお借りして感謝申し上げ、第1回レポートを終えさせて頂きます。いつも温かいご支援を頂き、どうもありがとうございます。今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

【写真】Labor dayに出掛けたシカゴの夜景
東京外国語大学外国語学部4年
中村 真理

高田修太さんの2011年10月分奨学生レポート

東京大学工学部4年の高田修太です。10月の奨学生レポートを報告させていただきます。早いもので1学期の半分が過ぎ、既に折り返しとなりました。10月に入ってからは、だんだんと寒くなってきており、冬物のコートが手放せない毎日です。そんな中でも、平気で半袖で歩いているようなアメリカ人を横目に見ながら、体感温度の違いをひしひしと感じております。

東京大学では、社会基盤学を専攻しておりました。社会基盤というと難しく聞こえるかもしれませんが、いわゆる土木工学という分野です。今回、本奨学制度に応募させていただいた理由は、イリノイ大学アーバナシャンペン校が、世界有数の社会基盤(Civil Engineering)における名門校であったから、ということがあります。現在は、Civil Engineeringの講義を中心に工学部の学生として授業を履修しております。講義に関しては、後ほど詳しく述べさせていただきます。

今回の留学が始まる前に、既に何度かアメリカは旅行などで訪れていたこともあり、ある程度勝手は知っているつもりではありましたが、キャンパスライフとなるとわからないことだらけで、現地の人々に助けられながら8月は過ごしておりました。アメリカ行きの飛行機で隣り合った方が偶然イリノイ大学現地の日本人学生で、シカゴのオヘア空港でお話をして、かなり気が楽になったのを覚えております。寮についた当日は、あまりの部屋や寮のエアコンによる気温の低さに辟易し、ベッドのリネンもないまま床に着きました。その日はオヘアからシャンペーンまで乗るはずのバスが1時間ほど遅れて、予想以上の長旅となってしまったために相当疲れていたので、エアコンに凍えながらも熟睡できました。その後、先述の通り様々な人々に助けられながら現在に至ります。

<生活について>
寮は Illinois Street Residence(ISR)のトリプルルームに住んでおります。ルームメイトはアメリカ人と中国人の2人で、かなりインターナショナルです。遊びにくる友人たちも当然アメリカ人や中国人で、非常ににぎやかな部屋になっています。来たるサンクスギビングの休暇では、アメリカ人ルームメイトの家にもう一人のルームメイトと遊びにいく予定です。幸い、彼らはとても良い子たちで、いつもたわいもない話をしながら、わいわいと部屋で盛り上がっています。トリプルルームの良いところは、3人の部屋なので会話が盛り上がることでしょうか…(笑)逆に、悪いところは1人の時間があまりない、ということでしょう。そして、やはり狭いです。2人部屋よりも、1人当たりのスペースは小さくなっています。
ISRという寮は、Engineeringの授業が開かれる建物や、大学の中心地とも言えるUnionにも比較的近く、立地が非常に良い寮です。また、地下にもコンビニのような売店や小さなジム、図書館、プレイルームもあり、かなり気に入っています。毎週水曜日のISRのディナーはAsia Nightといってアジアの料理が提供されるため、その日はあらゆる寮からアジア人たちが料理を求めてやってきているため、大変混雑しています。あまり日本食は出されないのですが、大福が出たときは少し感動しました。

<講義について>
現在履修している講義は以下の通りです。
CEE472 Structural DynamicsⅠ
ENG360 Lecture in Engineering Entrepreneurship
ECE410 Digital Signal Processing
SHS120 Children, Communication, & Language Ability
CEE497 Independent Study

今学期履修した講義は、最後のIndependent Study以外、全てレクチャー形式のもので、試験やレポートによって評価されるものがほとんどです。アメリカの大学の講義は予想通りハードで、慣れるまでに相当時間がかかったのは事実です。あり得ない量の課題の量と英語のリーディングに泣きそうにながらも8月、9月とかけてだいぶ自分なりのペースや力の入れ加減を理解し、うまく過ごせていると思います。それでは個別の講義に関して書かせていただきます。
・CEE472 Structural DynamicsⅠ
所謂、動力学というもので相当分厚い教科書を使って勉強しています。評価は中間試験・期末試験・宿題、という至って日本的な評価方法です。この講義、この大学のCivil Engineering and Environment Majorの大学院生の必修科目らしく、ほぼ大半が大学院生で、学部生は10人もいません。そんな中で学部生として奮闘しています。日本で学ぶとすれば、振動工学という分野になると思います。1自由度系から多自由度系における運動方程式をどう解くか、ということが講義の根幹にあたり、構造物の振動解析などを行います。宿題では数値解析ソフトのMatlabを利用する問題が多いのですが、イリノイ大学の学生はMatlabが無料で購入できるという特典があり、その恩恵を受けながら、大学院生の友人たちと協力しながら宿題と戦っております。
・ECE310 Digital Signal Processing
信号解析という分野にあたる講義です。フーリエ変換・Z変換を中心に、離散化された信号の解析やシステム、フィルターの設計について扱います。毎週の宿題に加え2週間に1回の1時間の試験があり、ヘビーな講義です。2人の教授が何週かおきに教えてくれるのですが、中国人の教授の英語が中国語にしか聞こえず、リスニングに大変苦労しています。アメリカ人の友人に聞いたところ、彼にとっても相当聞きづらいらしいのですが…。

・ENG310 Lecture in Engineering Entrepreneurship
こちらの講義はエンジニアリングに関する起業の講義です。履修生のうち半分ほどがビジネス専攻の学生なのが特徴でしょう。いわゆるIT起業をした人がプレゼンテーションをし、それを聞く講義です。あるときは現役のイリノイ大学1年生が来てプレゼンをしていましまた。彼は起業家支援財団から相当の資金を得たらしく、これから新しいサービスをローンチするということで非常にエキサイティングな学生で、本当に映画「ソーシャル・ネットワーク」の一部を垣間みたような気になりました。教授曰く、一応ビルゲイツにも声をかけているらしいのですが、いつ彼が来るかは未定だそうです…。

・SHS120 Children, Communication, & Language Ability
この講義はひとつくらい100番台の授業を履修してみよう、ということ(100番台は1年生が多いので)と、言語系の講義を以前から学んでみたいと思っていたので履修を決めました。教官曰く、この講義のフィールドとしてはPsycho Linguisticだそうです。子供がどうやって言語を学ぶのか、ということを中心に講義は進められます。バイリンガルの子供はどのようにしてバイリンガルになるのか?といったことが大変興味深かったです。また、他の学生は英語のネイティブスピーカーであり、英語の文法や単語は体系的に学んでいない一方で、私たち日本人は英語を体系的に学んでいるため、その違いから生まれる感覚の差も大変面白かったです。具体的には、「この単語はなんで名詞ってわかるの?」と聞かれるとアメリカ人は明確な説明ができないのですが、私ならば「前置詞があるから」だといった理由で答えることができますよね。そのような言語学的な観点の違いが非常に興味深いです。また、この講義が一番英語が大変です。ひたすら80分ほど先生がスライドを使って話し続けるのでキャッチアップするのに苦労しています。

最後のIndividual Studyというのは研究室での研究です。こちらに関しては次回のレポートにて詳しく述べさせていただきます。

<その他について>
アメリカに来てから初めての祝日のLabor Dayは大学が休みだったために、少し足を伸ばしてアイダホ・ワイオミング州に位置するイエローストーン国立公園に行って参りました。イエローストーンは火山地帯で、アメリカ初の国立公園です。とても硫黄の匂いが鼻をつきましたが日本の温泉地帯を少し思い出し、恋しくなったのも事実です。また、アイダホ州のState Fairなるものにも遊びにいきました。体に悪そうなアメリカンフードを食べながら競馬をしました。日本でしたことのない競馬をまさかアメリカでやることになるなど思いませんでしたし、こんなに惨敗するとも思っていませんでした(笑)
この他にも週末は友人にパーティに誘われたり、日本人同士で鍋をやったり、映画館に行ったり…と勉強以外も十分に楽しんでいます。

長々と書かせていただきましたが、すこぶる健康にアメリカでも過ごしております。これに換えてご支援、ご協力いただいている皆様はじめ、我々を送り出してくださったJICの皆様に向けての10月の報告とさせていただきます。今後ともよろしくお願い致します。

内倉潤さんの2011年10月分奨学生レポート

JICの皆様、レポートを読んでくださっている方々、こんにちは。2011年度小山八郎記念奨学生として留学をさせていただいている内倉潤です。
シャンペーンの厳しい冬の訪れを予感させる10月末、留学開始から2か月半ほどが過ぎました。第1回レポートということでⅠ.到着~授業開始前 Ⅱ.授業内容 Ⅲ.寮生活 Ⅳ.課外活動の4点について書かせて頂きます。

Ⅰ.到着~授業開始前
遅延、lost baggageなどどんな災難が降りかかってくるのかと、身を縮めて成田空港を出発したのは8月15日でした。時間があったのでシカゴで1泊してからシャンペーンへ。キャンパスに着いてしまえば、これといったトラブルもなくスムーズな留学生活の始まりだったように思います。ただ、気を張って非常に疲れていたせいかシカゴで楽しみにしていた観光は全くできず、いつのまにか1日中ホテルで寝てしまったのは何とも惜しいことです。(授業開始後、結局シカゴ観光をすることができましたが)キャンパスに着いてからは一緒に来ている奨学生の3人や現地の日本人学生に助けられながら、各種手続き、生活必需品の買い出し、留学生向けのパーティーに参加するなど忙しい1週間を過ごし、いつの間にか授業が始まっていました。こちらに来る前は、1人で何もないシャンペーンで生きていけるのだろうかと、数々の不安が頭をよぎったこともありましたが、JICの皆様による出発前の手厚いフォローやシャンペーンの温かい人々に支えられながら、特にホームシックなどにかかることもなく過ごすことができました。

Ⅱ.授業内容
秋学期は①ACE345:Financial Decision Making for Individuals and small Business
②AGED260:Introduction to Leadership ③ADV300:Introduction to Advertising ④EALC250:Intorduction to Japanese Cultureの4科目計12単位を履修しています。
① ACE345:Financial Decision Making for Individuals and small Business
東京大学での専攻がファイナンスで、特にコーポレートファイナンスに興味があるので履修しました。イリノイ大学での所属はLAS(Liberal Arts and Science)なので基本的にFinance学部の授業は履修できないのですが、ACE(Agricultural and Consumer Economics)などでも十分充実したファイナンスの授業が開講されており、これらは私たち留学生も履修することができます。授業開始から1か月半ほどでFinancial Statement(BS,PL,CF)の構成、分析方法を学び、その後はCapital Budgetingという投資評価手法を勉強しています。100人ほどのクラスで、基本的には教授による講義が中心ですがiclickerというハイテク機械を使って授業中にクイズが行われたり、投資関連の会社で働くゲストスピーカーが来て、実際の案件に関する分析を行ったりと、構成がよく考えられているクラスです。前提知識があることと、ファイナンスの授業ということで数字の勝負であるため、現地の学生とも互角かそれ以上に張り合える、今学期1番モチベーションの上がる授業になっています。週1回のペースで出される宿題と2回の中間テスト、学期末のテスト、さらに投資関連企業に勤める人へのインタビューで評価が決まるとのこと。インタビューは、授業中に学んだことをフルに活用して行われる、この授業の集大成のようなものなので、誰にどのような内容でインタビューを行うか、現在試行錯誤中です。やはり専攻に近い科目ということで興味もあり学ぶことも非常に多い授業なので、来学期はACEのクラスを2つ履修する予定です。
② AGED260:Introduction to Leadership
30人という少人数でリーダーシップを学ぶクラス。日本では学問としてリーダーシップを学ぶ機会はなかなかないので履修しました。今学期唯一の少人数クラスで、ディスカッションや授業内でのアクティビティ、グループワークなど他のクラスでは体験できない困難と苦痛を味わっています。「日本語なら・・・できるのに」と思うことが今までに何度もある授業で、悔しい思いをすることが多いクラスですが、授業内容は非常に興味深く、様々なリーダーシップに関する理論、現実社会への応用を学んでいます。リーダーシップを学ぶ過程で自分を評価し見つめなおす機会が数多く与えられ、成長のヒントを与えてくれる授業であるように思います。来学期もリーダーシップ関連の授業を2つ履修する予定です。
③ ADV300:Introduction to Advertising
「広告学」とでも訳すのでしょうか。大学1,2年生の頃、広告関連の活動をしていたこともあり履修しました。スティーブという、ユーモアあふれる小太りの教授による授業で、さまざまな例を交えながら広告全般に関することを学んでいます。テストは全て択一問題で、直前に出されるテストレビューなるものを勉強すれば比較的容易にこなせます。正直なところ、自分は広告に「興味がない」ということを認識させてくれる授業になっています。ただ、授業中に見せてもらう広告の数々はインパクトの強いものが多く、それを楽しみに授業を受けようと思っています。
④ EALC250:Intorduction to Japanese Culture
留学の目的の一つに「日本を外から客観的に見つめなおすこと」と掲げていたこともあり履修しました。歴史・文化・経済など日本について色々な側面から勉強しています。恥ずかしながら、授業内容は日本人の私でも知らないことが多々あり、アメリカ人の日本を見る視点が学べるということも含めて、「日本」を見つめなおすきっかけを与えてくれる授業です。アメリカに来てから自分が「日本人」であることを認識する機会が増え、ルームメイトの中国人・韓国人を含め、友達と過激な議論を交わすことが幾度となくあります。そんな中でアメリカ人の教授によるこの授業は中立的な視点を与えてくれる、有意義な時間になっています。テストに関しては、日本人ということもあり、もちろん他の学生より豊富な前提知識があるのですが、如何せん問題文や選択肢の英語が理解できないということで、自らの英語力の低さを痛感させられています。日本に帰国するまでに、テストやレポートに困らないだけの英語力を身に付けられるよう精進するつもりです。

Ⅲ.寮生活
こちらにきて1週間ほどは、Scott Hallという通称Six-Packsのうちの1つに数えられる「悪名高き」寮に住んでいました。寮の申請が遅くなってしまい、希望は全く通らずTemporary roomであり、なおかつ3人部屋でした。ルームメイトはイタリア人の留学生2人で、どちらも個人的にはすごくいい人だったのですが、やはりイタリア語で四六時中会話をしており、なかなか仲良くなることができませんでした。また、寮自体もFreshmanが多いせいか1日中騒がしく、更に授業のある建物や飲食店から遠く不便であったため、現在は引っ越しをしてIllini Tower(通称IT)という、寮とアパートの中間のような建物に住んでいます。普通の寮に比べて、寮費は少しばかり高いのですが、キッチン・リビング・バスルームつきの部屋を4人でシェアしており、そのクオリティには非常に満足しています。ルームメイトもアメリカ人・中国人・韓国人と多様で、時には文化の違いからかイライラすることもありますが、基本的には仲良く生活しています。寮全体としてはお金持ちの韓国人、中国人、インド人が半分、その他はアメリカ人という感じですが、基本的にみんなフレンドリーで友達が作りやすい環境ではあると思います。設備に関しては、24時間勉強のできるStudy loungeや各階に存在するlounge、更には映画の観れるTheater roomや、ビリヤード・卓球のできる地下室、少し機械が古いですがジムまでついており本当に充実しています。また、ITは飲食店の並ぶGreen St.や学校の中心であるQuadからも近くロケーションも非常にいいので今後の留学生にもお勧めできる住居です。(ただ食堂のクオリティは非常に低いですが)

Ⅳ.課外活動
こちらに来てからは日曜日~木曜日=宿題とテスト勉強に追われる日々。金曜日・土曜日=遊び。というなんともメリハリのしっかりついた日々を過ごしています。2か月ほど、特に変化のない毎週を過ごしていたのですが、10月中旬からはIllini4000 (http://illini4000.org/)というバイクチームの活動が始まりました。Illini4000は募金活動やインタビューなどを通じてガンの啓発運動を行うNPO団体です。2007年度JIC奨学生の長谷川貴也さんも参加していらっしゃった団体で、私は渡米する前に長谷川さんの奨学生レポートを読ませて頂き興味を持ちました。というのも、自転車でのツーリングが趣味のうちの1つであり、更にガンと闘病中の恩師に何らかの形で恩返しをしたいと思いつつも、何もできていなかったという現状があったからです。活動内容は大きく分けて2つあり、1つ目が1年間通しての募金活動。今年のチームの目標額は1500万円で、集められたお金はガンの研究費用やガンで親を亡くした子供たちを対象としたキャンプの費用に充てられます。2つ目は、2012年夏休みに行われる自転車でのアメリカ横断。6400kmにも及ぶ道のりのなかで、ガンにかかわる様々な人にインタビューを行い、その内容を広く発信することでガンの啓発運動をするというものです。留学生活中は勉強以外の軸として、Illini4000の募金活動やトレーニングが私の主な活動になっていくことと思いますので、次回以降の奨学生レポートでもその内容も含めてお伝えできればと思っています。

最後になってしまいましたが、イリノイ大学への留学という大変貴重な機会を与えて下さったJICの皆様、そして応援してくれている家族、友達やその他の皆様の期待に応えられるよう、残り9か月、実りある日々を送りたいと思っています。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

菊池智子さんの2011年10月分奨学生レポート

JICの皆様、ご無沙汰しております。そしてブログを見てくださっている皆様、初めまして。京都大学医学部4回生の菊池智子です。簡単に自己紹介をさせていただきます。日本では情報理工医学講座というゼミに所属し、iPadを用いた在宅医療の研究に携わっています。厳密には、研究が本格化する直前にアメリカへ来てしまったので、帰ってからみっちり取り組んでいこうと思っています。大学3年次までは、特に自分の専攻である医療に特化した活動に重きを置いており、日本国際医療保健学会を通してホンジュラスでHIV/AIDSの社会調査を行ったり、学生部会の運営委員としても活動していました。
もちろん自分の専門性を追求することは非常に良いことですが、そんな中で、私は「もっと広い視野で医療を見ていくことができないか」と考えました。一番の大きな転機はやはりホンジュラスでの調査で、私はただ医療に関する調査をしに行った(と思っていた)わけですが、実際に直面したのは、アメリカという大国の陰で抱えている経済的な問題や政治問題(2009年に起こったクーデターは記憶に新しいと思います)などでした。政治経済の知識は皆無であった私は、ヘルスケア自体が外界から受ける影響がそれほど大きいとは思っておらず、他の事業と比較し日本では特に善意のサービス色が強い医療を改めて別の方面から見直すきっかけになりました。アメリカでは日本の学部ではなかなか経験できなかった幅広い教養と、最も大きなエンタープライズであるヘルスケアシステムについて学べたらいいなぁということで、たくさんの人の協力もあって、いま実際にアメリカに来させていただいています。感謝、感謝です!
前置きが長くなりましたが、約2か月の留学生活を振り返って、以下、自分なりにレポートさせていただきます。
~渡米までの準備~
私はおそらく4人の奨学生の中で一番ばたばたしてしまったと思います。性格的に、比較的前からいろいろと手配しておかないと気が休まらない、実は心配性(!)な私ですが、5月以降は実習やアルバイトで非常にタイトなスケジュールの中、準備を進めていました。京都では一人暮らしをしていたせいもあって、アパートを引き払うための手続きや荷造りに追われてしまいました。そのため、しようしようと思っていた英語の勉強も時間が取れないままの出発となってしまいました。この点は少し反省です。
一番私が手こずったのは、ビザ申請でもなく健康診断証明書でした。ビザはできるだけ早めに予約さえしておけばあとは大使館で面接を受けるだけだったので簡単でしたが、健康診断書に関しては、どういった書類を揃えればいいのか、医師にどのように書いてもらえばいいのかよくわからず、後回しにしていたのでぎりぎりになってしまい、焦ったのを覚えています。今後の奨学生のために書いておきますが、健康診断書はそこまで心配する必要はありません。学校が始まる前、血液検査を受ける際にきちんと記入がされているか確認されるくらいでした。準備段階を経て今思い返してみると、その当時はとても大変だと思っていたことも、何とかなるというのがある意味で非常にアメリカ的だと感じました。
~アメリカ到着~
私はシカゴのオヘア空港に到着後、大学があるシャンペーンに向かう前に空港近くのホテルで2泊し、シカゴを観光しました。着いたときは、8月中旬にしてすでに半袖では肌寒く、曇り空が印象的でした。‘Windy City’ と呼ばれることは以前から知っていましたが、あとで聞くと、8月のシカゴは午前中快晴でも午後には雷雨になる日が多いそうです。
シカゴの街並みは洗練されてクリーンな印象が強いと同時に、アーティスティックでもあります。たまに道路をおしゃれな馬車が横切っていたりして、そのような光景を見ると乙女心がくすぐられました(笑)。「ニューヨークよりも、絶対シカゴの方がいいよ!」と、京都にいたときアメリカ人の友達からよく聞かされていましたが、本当にシカゴはいい街だと思います。まず、人がとても親切です。少し偏見がかっているかもしれませんが、カフェの店員さんは「アメリカなの?」というくらい愛想がよくびっくりしたのを覚えています。そして、上にも少し述べましたが、街がとても綺麗です。シカゴは高層ビルの建築でも有名ですが、典型的な最もアメリカらしい都市ではないかという感じがします。シカゴにいるときはただうきうきして、美術館やミシガン・アベニュー(ショッピングストリート)など、いろいろな所を一人で観光しまくっていました。


~大学の印象~
シカゴからシャンペーンまでバスで移動し、初めて寮に来た時は寮を見て「かわいい!」と思いました。建物はヨーロッパ調の赤レンガでできており、ロビーにはグランドピアノがあります。チェックインをして部屋に入ると、現地出身のアメリカ人のルームメートが‘Hello!’と笑顔で声をかけてくれ、緊張も一気に吹き飛びました。今まで海外に行く機会は多かったですが、実際に住むのは初めてなので、不安はありました。しかし到着した後はなぜかひと安心することができて日本と同じような気持ちにスムーズに入れたことが自分としても驚きです。
キャンパスの第一印象は「広い!」でした。おそらく皆が口をそろえてこう言うと思います。いわゆる「キャンパスタウン」です。気候は比較的穏やかで、晴れた日の透き通るような真っ青な空が大好きで、まだ暑い時期はよくQuadの木陰に寝転んで音楽を聞いていました。10月下旬ともなると、無理です、気温は0℃近くまで下がる日も出てきます、凍えます(笑)。
来る前までは何もないのかなあという印象でしたが、Terminalの近くに行けばおしゃれなカフェやレストランもありますし、学校の近くのGreen Streetにもおいしいお店はいろいろあります。小ぢんまりとしている中で必要なものはすべてそろっているという印象なので、特に不自由はしていません。


~授業開始~
私のスタンスとしては、秋学期はとにかく面白い授業やアクティビティを取り入れながら自分の学びたい勉強そして英語の練習をバランスよくしていこうと考えていました。
日本と違う所はやはりGPAをとても重視するところです。日本の学生の中には卒業のための単位取得に重きを置いて、内容は重視されないことが多い気がしますし、就職活動に関してもGPAの提示を求められないことが多いと思いますが、アメリカではGPAによって就職可能な企業、そうでない企業が出てくるという、いわば「足切り」のようなものが存在するようです(もちろんGPAがすべてというわけでもないとは思いますが)。
12Creditのうち1/4はイリノイ大学という総合大学ならではのAerobicsやFloral Arrangementのコース、残り3/4は統計学、医療システム学、(植物に特化した)栄養学といった自分の分野に比較的近い授業を取っています。
個人的に一番面白いのは医療システム学で、この授業ではアメリカでも最大のエンタープライズのひとつであるヘルスケアに関してgovernment policyやeconomics、人種の違い等の観点から切り込んでいく内容になっています。数週間前には元イリノイ州知事のJim Edgar氏がご登壇され、イリノイ州やアメリカ全体のヘルスケアポリシーのご講演を授業中にお聞きできる機会もありました。こういった内容は私が以前から興味を持っていたことでもあり、実際に学んでみたかったことなので、とても満足しています。ただ、私はアメリカの政治や経済に関する知識が乏しく、医療を考えるにあたって大きな影響を及ぼすこれらがネックになって、レポートを書くのが非常に困難なことがあります。これは、とても悔しいです。もちろん常識として知っておくべきことではあると思うのですが、来学期はPolitical Scienceの授業を取り、今の自分に足りないところを埋めていかなければと思います。もうひとつこの授業の好きな点は、複合的な学術プログラムやinfo sessionのアナウンスをしてくれることです。日本ではなかなか聞くことのないMHP(Master of Public Health)/MBAのdual degree programや、Health Care Consulting Firmのinfo sessionについて情報を得ることができ、先日もヘルスケアや病院経営、医薬品企業へのコンサルティングを行っている会社のinfo sessionに参加してきました。JICのプログラムに応募した当初は大学院進学を希望していましたが、このような話を聞いたり情報を集めることによって、まず社会の第一線で働き経験を積んだ上で、さらに上を目指してMPH/MBAのプログラムに挑戦したいという気持ちも湧いてきました。
Aerobicsではエアロビの他、ヨガをやったりサルサやズンバダンスも踊っています。Flral Arrangementのクラスでは意外と(?)体系的に講義とLab classが開講され、案外テストで覚えることが多く、大変だったりします。
他の3人の奨学生の中には勉強が大変すぎて死にそうな人もいるようですが、私は授業に関してはコンスタントに、特に辛いこともなくこなしているという感じがします。ただ、最初は自分の英語力にも自信がなく、多少敢えて余裕をもった感があるので、来学期はもっとレベルの高い授業に挑戦して勉強漬けになってみたいと思っています。
~midterm exam~
アメリカでは、日本と比べてテストが多いことも印象的でした。日本の大学と違って成績の付け方が非常にはっきりと明示され、日々のquizzなどこつこつと勉強する型が評価されるのがアメリカです。私は9月の下旬にmidterm1、10月下旬にmidterm2があり、遊ぶ時はもちろん遊ぶのですが、なぜかいつも「あ、次のテストいつだっけ・・・」と心のどこかにテストの存在がいたりします。しかし、授業さえきちんと聞いていれば特に問題はありません。英語がネックで解けないということはまずないと思います。
私の中では統計学のテストが2関数変数対応の電卓持ち込み可で午後6時~9時まで3時間のテストが一番焦りました。しかし、それも授業中に理解さえしておけば特にテストのためだけに勉強することもないということに気付きました。期末テスト前に詰め込む日本の形式よりも、私はテストが何回かあったほうがありがたいと最近はつくづく思います。
~学外の活動~
私がアメリカに来て非常に強く感じたのは、キリスト教という宗教の大きさです。日本人全体の傾向としては基本的に無宗教の人が多いと言われると思いますが、アメリカではキリスト教徒が大多数です。人々の実生活に溶け込んでいるので、何かと目にしたり耳にしたりする機会は多くなってきます。例えば、入学してしばらくは様々なBible Studiesのミーティングに誘われたり、キリスト教団体が思っていたより多いことに気がつきました。当初は「私、キリスト教徒じゃないし、バイブルスタディーズなんて行っても、逆に失礼じゃないか」と思ったりもしたのですが、彼らにとってキリスト教は生活の一部なので、裏を返せば、一番友達が作りやすい場でもあります。私はひとつの文化体験として、ミニオリンピックという年一回行われるキリスト教団体全体の運動会や毎週Bible Studiesに参加したり日曜日には教会にも行っています。今まで経験してこなかったことであり、今後こういった機会が実際にあるのかもわかりませんが、出会う人々や彼らの考え方に触れることでもう少し深くアメリカという国を理解できそうな気がします。
その他、週末にはパーティがあったり、連休の際には大学の友人の車でシカゴに遊びに行ったり、学校以外にも楽しいことはたくさんあります。
・・・と、ここまでいろいろ綴ってきましたが、何はともあれ周りの人は皆親切でいい人ばかりで、特に困ることはなく楽しく過ごせています。日本にいる時よりも悩むことは逆に減ったような気さえします。京都では何かと考えたり哲学することが多かった気がするのですが、やはりシャンペーンという土地柄のせいでしょうか・・・(笑)。穏やかな土地ではありますが、ここでは皆、学生のうちから積極的に将来に繋がる活動に取り組んでいて、とても刺激されます。留学生活の1/4が過ぎようとしていますが、残りの生活も新たなことに挑戦しながら、勉強や英語も頑張り、自分の将来についてもっと真剣に向き合う機会を多く持っていければと考えています。