「ハッピー・バレンタインズ・デイ」
2月14日。アメリカでは男の子も女の子も妙にそわそわワクワクする日。
夕方の授業。場所はリンカーンシアター。生徒は約300人。
授業開始から1時間、教授の指示で皆テキストの記事を読み始めた。
すると一人の男子学生が後ろのドアから入ってきて突然教授の側に近寄った。
何かを教授に耳打ちしている。約300人の生徒は訳がわからず何だ何だとざわついている。
教授がにやっと笑ってマイクを男子学生に手渡した。
「ジェニー、カムアップ!!」
手には赤いバラの花束と熊のぬいぐるみ。
「きゃーーー!!」「ヒューー!!」「オーマイガッド!!」
女子学生達のときめきの目と憧れのため息。
恥ずかしがって出てこないガールフレンドの元に彼は駆け寄った。
「ハッピー・バレンタインズ・デイ! アイ・ラブ・ユー!」
そう言いながらプレゼントを手渡した彼は教室を飛び出した。
驚いた顔で花束を受け取った彼女は去っていく彼の後姿を呆然と見ていた。
そして急に正気に戻り大声で叫んだ。
「ウェイト・アップ!!」
彼女は彼を追いかけてシアターから去って行った。
ほんの1・2分の出来事だった。
ドラマを見ているような夢のような出来事だった。
人の幸せで自分も幸せな気持ちになれた素敵な1日だった。
喜多 亜貴子