CTさんの2017年9月分奨学生レポート

初めまして。東京大学教養学部3年のCTです。今年度、JIC奨学生としてイリノイ大学に留学させて頂いております。先輩方の奨学生レポートを熟読していたので、今回初めての奨学生レポートを書いているのが感慨深いです。

 

8月末にキャンパスに到着し、早くも9月が終わろうとしています。こちらのキャンパスは非常に美しいです。クワッドの芝生と樹々の緑、レンガ造りの校舎、そして大きく青い空が広がっています。ビルに覆われて空がなくなりそうな東京とは違い、ここでは季節と時間の移り変わりが、自分の体で感じられます。既に一ヶ月を過ごしましたが、樹々と空の色があっという間に変わっていきます。授業と課題に追われつつも、そんな自然を感じては、ほっとするような日々です。

 

写真1

晴れの日のメインクワッド

  1. 授業の履修

 

◆ITAL103 Intermediate Italian 1

◆GEOG204 Cities of the World

◆GLBL220 Governance

◆ECON303 Intermediate Macroeconomics

 

今学期は上記4科目を履修することにしました。最終的な履修に絞るまでかなり悩んだので、履修を組むだけでも一苦労という感じですが、試行錯誤した結果今の形に落ち着き、満足しています。

◆ITAL103 Intermediate Italian 1

 

 大学一年生の頃から第二外国語としてイタリア語を勉強しているので、こちらでもイタリア語を履修することにしました。授業は週4コマで、8人の少人数クラスなので、自然と先生との距離も近くなり、クラスに愛着が芽生えてきたところです。毎日オンラインテストの課題があり大変な部分もありますが、1日に一定時間は必ずイタリア語に触れることになるので、生活のリズムを作る上で良い要素になっています。また、私は軽やかなイタリア語の音が好きで、イタリア語を毎日聞けることはちょっとした癒しなので、趣味としてゆっくり続けていこうと思います。

◆GEOG204 Cities of the World

 

 この授業はかなり前から履修することを決めていて、一番楽しみにしていた授業です。世界中の都市の構造や歴史、地形や文化に至るまで、それぞれの都市に特徴的な地理を講義形式で学んでいきます。私は日本で地理学を副専攻にしており、その中でも都市地理学は特に興味のある分野です。東大の授業は日本の都市にフォーカスした内容になっていたのですが、こちらは世界中の都市を扱っているので、授業に出るたびに新たな知識を得られ、とても刺激的です。これまでの一ヶ月間は、北米、中米、南米の都市について学んだのですが、これから中東、アフリカ、ヨーローッパと進んでいくのが待ち遠しいです。

◆GLBL220 Governance

 

 私が履修している授業の中で、唯一のディスカッションの授業です。グローバルガバナンスの意義、歴史、問題について議論していきます。日本で国際関係論を勉強する中で国際社会のガバナンスに興味が湧いてきたこと、また留学前にワシントンDCの国際機関を訪問したこともあって、授業の扱うテーマに惹かれ履修を決めました。しかしながら、この授業は課題文献が多いので、リーディングが苦手な私にとってはかなりハードです。加えて先生や学生の英語もぼんやりしていて聞き取りづらいので、ディスカッションの流れを追うだけでも大変です。次の奨学生レポートまでに少しは成長できるよう、力を入れて臨んでいきたいと思います。

◆ECON303 Intermediate Macroeconomics

 

 中級マクロ経済学の授業です。私は経済学初心者で、以前に少し触れたことがある程度だったのですが、専門が国際関係論だと何かと経済学の知識が必要になるので、思い切って挑戦してみることにしました。授業自体は講義ですが、授業中にクイズがあったり問題が与えられたりと慌ただしい印象です。週課題やオンラインクイズもあり、当初はその盛りだくさんの内容に圧倒されました。今は授業開始から一ヶ月が経ち、少しは課題をこなしていくペースが掴めてきたかなという感じですが、授業ペースが早いので、置いていかれないように注意したいです。

 

写真2

フレッシュマンと一緒に参加した入学式の様子

  1. 日本館と「Matsuri」

 

 日本にいる頃から日本館については伺っていたのですが、実際に日本館を目にした時には、その施設の充実ぶりに感動しました。大きな池とその周りに広がる芝生と柳、また砂利や灯籠が美しく並べられた日本庭園まで整備されているのです。館内に入ってみても、床の間と障子を完備した和室や、日本にいるときすら目にしないようなお茶室などが設えられています。世界中から何千人もの学生が集まっているこのイリノイ大学において、日本という一つの国とその文化のために、ここまで広い土地と綺麗な施設が準備されていることが、私にとって大きな驚きでした。

 

 「Matsuri」は8月末に行われた日本文化を発信するイベントで、今年は日本館の20周年ということで、例年よりも盛大な催しとなったようです。日本館の敷地の至るところで屋台やパフォーマンスが繰り広げられ、小さな子供からお年寄りまで多くの人々が来場しました。既に日本文化に対する知識を持っている人、高いお金を払ってでも日本の品々を買い求める人、毎年「Matsuri」に参加している人も多く、みんな尊敬の気持ちを持って日本文化に向き合い、理解している印象です。現在の日本では、日本文化が海外の人々に喜ばれるということは周知され、当たり前のようにクールジャパンと唱えられていますが、それが単なる物珍しさやブームではなく、私が思っている以上に日本文化が海外に浸透していることを知りました。

 

 また、「Matsuri」では、書道家の千葉清藍さんの通訳者を担当させていただきました。日本とは何の関係もない地で、突然そこに日本文化を体現することは、とても不思議です。自分が発信することが、それを見た現地の人々にとっての「日本」として認知されることになるからです。そこには一定の責任とプレッシャーを伴うと思いますが、日本文化に誇りを持ち、日本と地元・福島のために書道を仕事にする清藍さんにはパワーがありました。その力強い書と筆使いには本当に圧倒されます。一方で、出会った人々とのご縁を大切にする、清藍さんの温かな優しさにもまた虜になりました。拙い英語で通訳を十分に出来たとは言えませんが、清藍さんの近くで半日過ごせたことは幸運でした。私もこの出会いに感謝し、「一期一会」大切にしたいと感じます。

 

写真3

清藍さんと書の前で

本当は、他にも書きたいことがたくさんあるのですが、自分の中で整理することもできず、もう少し時間が必要なようです。今ぼんやりと考えていることについては、もっと明確に磨いてから、次回の奨学生レポートに書かせて頂こうと思います。それでは、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

2017年9月30日 

第42期小山八郎記念奨学生 CT

南部俊人さんの2017年9月分奨学生レポート

皆様こんにちは。第42期小山八郎記念奨学生として現在留学中の、国際基督教大学教養学部3年の南部俊人と申します。心理学を専攻しており、こちらでも心理学を中心に勉強しています。

 

     到着までのいきさつ

     授業について

     その他課外活動や生活について

という三つの内容について書いていきたいと思います。

① 到着までのいきさつ

 8月16日の朝にシカゴに到着しました。入国というと、過去に初めての海外でロストバゲージしたり、前回の訪米で長時間並んだ上に入国審査官と一悶着あったりと、あまり良いイメージがなくて初の一人海外で不安で仕方なかったのですが、今回はちょうど国際線の到着便が少ない時間帯だったため空いており、見た目の恐い入国審査官にイジワルな質問をされることもなく、荷物の受け取りもスムーズで、税関も良い加減で、過去最速でゲートを抜けることができました。

 私は昨年、所属する団体の中高生対象の一ヶ月ホームステイプログラムの引率でイリノイ州を訪れており、滞在中私自身も二軒にホームステイをしておりました。学期が始まる前に少しでもアメリカの生活に慣れるために、去年のホストファミリー宅でお世話になります。一軒目のホストファミリーの住んでいるBloomingtonという街までは、オヘア空港から国内線を乗り継ぎます。過去最速で入国したものの、かなり余裕を持って国内線を予約していたので、五時間近く暇を潰さなければいけませんでした。睡魔で待ちぼうけて乗った国内線は、小さなオンボロ飛行機、座席の足元から蒸気(?)のようなものが出てきます。「まさか外気が入って来ている?」と思いましたが、それはどうやら冷たすぎるエアコンの風だったようです。それにしても小さな飛行機は風に舞う木の葉のように揺れて、目的地に着くまでの一時間はドキドキの体験でした。

 去年の1軒目のホストファミリー宅では二泊しました。一人異国の地ですが、知り合いに温かいハグで迎え入れられるとホッとします。私が泊まった時はちょうど家の内装を丸ごと自分で直している最中で、さすがアメリカ、DIYの本場なだけあるなと感じました。私はここ一年、大学の劇団で大道具をやっていたので負けるわけにはいかんと、本場のDIYを体験するべく、早速戦力となりました。二泊はあっという間に過ぎ、続いて二軒目のホストファミリー宅に移動します。二軒目のホストファミリー宅では四泊しましたが、そのうち一泊は隣の州の州都、インディアナポリスにあるホストファミリーの友人の家に泊まりました。二軒目のお宅はキャンパスから三十分ほどのところにあり、コーン畑に囲まれた田舎町です。田舎町でたっぷりくつろいだ後、キャンパスに入りました。

② 授業について

 アメリカの大学は日本の大学に比べ(私の大学の規模が小さいため特になのかもしれません)授業の種類がとてつもなく多いです。また、授業を追加したり落としたりできる変更期間も長いため、どの授業を取ろうかかなり迷うのが正直な所です。オンラインで履修変更を行うのですが、定員に達している授業を取るのはなかなか大変です。数分毎にパソコンを見て、空きがでていないかをチェックします。空きが出た瞬間に履修登録して滑り込みます。私はこの方法で3クラスほど登録しましたが、なかなかスリリングで楽しいです。アドバイザーにも履修科目を相談し、追加したり落としたりというプロセスを経て、最終的に今学期履修することになったのは以下の四つのクラスです。

PSY336 Stress and Resilience in Childhood

 授業のタイトルの通り、子供のストレスについて、そしてそれに伴う心理的症状について学んでいます。ストレスの原因として今までの授業で取り上げられているのは、虐待、貧困、トラウマ体験などです。貧困については、かなり細かい定義から学び、アメリカ国内での貧困状況と貧困で育った子供の心理的問題について学んでいます。今まで日本ではここまでしっかりと貧困にフォーカスしたことがなかったため、いかに自分が恵まれているのかに気付かされます。また、授業でも出てきたのですが、日本と比べてアメリカの方が貧富の格差が大きいということもあり、国内では深刻な問題であるため、こういった授業が積極的に行われているのかなと感じました。

PSY324 Developmental Psychopathology

 最初にこの授業の名前を知った時は「ん?サイコパス?」と思いましたが、Psychopathologyは日本語にすると精神病理学、すなわち精神疾患のメカニズムを理解し、経過を調べる学問です。この授業も主に子供に焦点を当て、発達の観点から学びます。最初の約一ヶ月は、精神疾患が起こるメカニズムの概要や、それについて調べるための研究方法について学び、その後の期間は、自閉スペクトラム症、不安障害、ADHDといったそれぞれの症状をさらに深めていきます。PSY336の授業内容とは多少重複する部分があるのでが、精神疾患のメカニズムのところで、物事の因果関係について深く考えるように教えられました。例えばA:「貧困家庭で育つこと」とB:「子供のうつ病になる」に因果関係がある場合、その二つの要素の間には、どんな力学が働いているのかを深く考えます。どのような要素がAからBへの流れを加速させ、または食い止めようとするのか、また、どういった細かい理由でAはBに向かっていくのかを意識します。

写真1:カフェでテスト勉強

GRM101 Beginning German

 こちらに来てから新たにドイツ語を始めました。日本の大学では、フランス語を少しだけやっていたのですが、こちらで上のレベルに行くほどでもないし、同じレベルをやっても日本で単位認定されない可能性もあるので、フランス語は履修しませんでした。卒業後に自動車産業に関わりたいと考えているため、多くの企業の開発拠点であるドイツについて少しでも理解できたらという思いがあり、寮の友達数人が、「ドイツ語はもっと英語に近くて似ている単語もあるし、フランス語や他の言語よりずっと簡単」と言われたことで背中を押され、ドイツ語を履修するに至りました。授業が始まって約一ヶ月経った現状では、フランス語より手応えがいいです。発音は少し難しく、他のヨーロッパの言語と同様に男性名詞女性名詞などを考えるのは厄介ですが、地道に頑張っています。

ART151 Black and White Film Photography

 アート系の授業も履修しています。七人の小さいクラスで、デジタルではなくフィルムカメラ、それもカラーではなくモノクロフィルムを使う授業です。今の時代、スマホを取り出してボタンを押すだけで綺麗な写真をいくらでも撮れますが、フィルムであるが故の限られた枚数で何を撮るか、シャッターの速さとレンズの開き具合を調節していかに適切な明るさで撮るか、手動のピントをいかにぴったり合わせるかなど様々なことを考えながら写真を撮っていくのはとても複雑です。しかしその分、綺麗に撮れた時の喜びが大きいです。撮影を終えたフィルムは薬品につけて現像し、ネガの状態にします。次に印画紙にネガを通した光を当てて、印画紙を薬品につけることで、いわゆる「写真」の状態がやっと出来上がります。今は家庭でも簡単に写真プリントができますが、かつてはこの手法で写真屋さんがひたすら焼いていたのかと思うと、その手間は計り知れません。

写真2:現像した写真と使っているフィルムカメラ

 アメリカの授業は、日本と比べると学生がどんどん発言しています。教授が話している英語は理解できるのですが、発言する学生が早口だったり、もごもごしゃべったりするので聞き取るのが大変です。最近はだいぶ慣れてきましたが、先週は多くの授業で中間試験や課題提出があり、ハードな週でした。

  その他課外活動や生活について

Japan House Matsuri

 キャンパスに到着してから数日で、Japan Houseの最大のイベントであるMatsuriがありました。一日で数千人が訪れる大規模なイベントで、茶道、着物、折り紙、鎧兜などの体験や、書道や太鼓のパフォーマンス、そして日本食の露店が立ち並びます。私たち小山八郎奨学生も浴衣を着てお手伝いさせていただいたきました。主に折り紙のコーナーを担当し、子供達に大人気でしたが大人にも人気で、五時間以上折り紙をひたすら折っていました。用意していたのは、紙風船、兜、鶴、蝶などで六種類ほどだったのですが、子供達みんな一番難しい鶴に挑戦したがるので教えるのが大変でした。最初に角を揃えるのが肝心なのに、最初から折り目がずれていて、言っても直してくれません…ですから完成したものは必然的にぐちゃぐちゃになってしまいます。そんな状況でしたが、たくさんの人と折り紙を通じて交流でき、とても充実した一日となりました。一緒に折り紙を折ったボランティアの方々や、飛び入りで手伝ってくれた他の交換留学生たち、運営してくださるJapan Houseの方々、そしてなにより当日来場してくれた方々に感謝しています。

写真3:Matsuri終了後、第42期奨学生集合

Tea Ceremony Class

 Japan Houseで毎週木曜に開講されている、茶道の授業を受けています。私がどのように本留学制度を知ったかという話をすると、昨年、前述したホームステイプログラムの引率中に、日本館の郡司先生と知り合いだったホストファミリーが私を日本館に連れいってくれたことが始まりです。そこで先生がお茶を点てくださり、本留学制度を紹介してくださいました。日本館を訪れた際、イリノイ大学にはこんな施設があるのか!と心を動かされ、日本館の活動に積極的に関わりたいと思い、こちらでお茶を習うにも至りました。週に一度、畳に座ってキャンパスの喧騒から離れて過ごすのはとても心地の良い時間です。こちらに到着して数週間は、様々な団体が主催するイベントが盛りだくさんでしたが、最初の日本館での茶道のクラスでいただいたお茶ほど、心がこもってwelcomeされているなと感じるものはありませんでした。私は、中学高校時代に少し茶道を習っていましたが、こちらは裏千家なのに対して表千家だったことと、一からあらためて学びたいということでビギーナーとしてお稽古に参加させていただいています。大学生になってから再び習ってみると、かつては気づかなかった自分の作法の癖や新たな発見が多くあります。また、クラスの時には美味しいお菓子が食べられるというのも私にとっての大きな魅力です。私は和菓子、餡子の類が大好きなのですが、アメリカで美味しい和菓子が食べられるとは予想していなかったので、とても幸せです。

写真4:茶道の授業

写真5:茶道の授業後に友達とインドカレー

サークルなど

 勉強がかなり忙しいのでサークル活動には少ししか関わっていませんが、Illini Automotive Clubというサークルに顔を出しています。クルマ好きが集まるサークルで、週に一回学内の駐車場にクルマを持ち寄ってクルマ談義に花を咲かせたり、ドライブに行ったりと、割とゆるゆるとしたサークルです。まだ私はドライブについて行ったことはないのですが、クルマを持っている人が多いため、持っていなくても乗せて行ってくれます。また、今まであまりしたことがないのですが、クルマいじりをするチャンスもあるかもしれないので、それに期待しています。

 Japanese Conversation Tableという団体にも少し顔を出しています。日本語を学んでいる人たちが集まるサークルで、よく一緒にご飯に行ったり、アイススケートに行ったりしています。日本語が堪能な人が多く驚き、私も英語で負けていられないなと感じました。時には日本語のレポート課題の添削を頼まれ、原発の功罪について英語と日本語混ぜこぜで二時間近く議論を交わし、その後は頭の中が二つの言語で混乱してしまうなんていうこともありました。やはり日本に興味がある人が集まっているので、私たち日本からの留学生にとても親切にしてくれます。

その他生活のこと

 私たち42期奨学生は二つの寮に分かれているのですが、なんと私の住んでいる寮はエアコンがついていないのです。そのことを知り入寮前には少し憂鬱になったり、寮に着いた初日は、入った瞬間にモワッとした空気に体を包み込まれて、これでやっていけるのか?と心配になったりしましたが、人間意外と環境に適応するようで、すぐに慣れました。アメリカの室内は、エアコンがガンガン効いていて凍えるような部屋も多いため、窓を開ければ風が入ってくるこの寮はかえって居心地がよく、体にも負担がかからない気がします。ひとたび他のエアコンの効いた建物に入ると逆に寒さに嫌気がさし、「これだから地球温暖化が進むんだ…」とエアコンを心の中で悪者扱いすることもしばしばです。エアコンはないですが私の寮は食事がおいしいと評判です。「アメリカに来たら肉とピザしかないのかな…」という私の予想に反し、料理のバリエーションが多く、野菜も毎日食べられます。しかし、だんだんと日本食が恋しくなるもの。そんな時は持ち前のアイデアを使い、ダイニングで即席日本食を生み出して乗り切っています。タコスの具と白米でタコライスを作ったり、ポン酢があったのでオリーブオイルと和えて和風ドレシングを作ったり、麺と具材を炒めてくれるコーナーがあるのですが、醤油とうどんで焼うどんを作ってもらったりと、日本食らしきものを食べて生き延びています。

 私のルームメイトのMoonは韓国人で日本語も少し話せます。年上で面倒見が良く、面白いことに巻き込んでくれます。私たちの部屋は当初、ベッドが両側の壁に並んでいて狭い印象だったのですが、「ベッドを動かしてもっと広くしよう!」との彼のアイデアでベッドを部屋の隅に移動したところ、部屋に広いスペースができ、テレビも置くことができました。彼は今後、ソファを置くことも考えているようです。彼のような行動力が欲しいです。

番外編、ツッコミどころの多さ

 アメリカにきて思うことは、別に私は関西出身ではないのですが、ツッコミどころがかなり多いなということです。効率を重視するアメリカ、という印象でしたが、混雑時の飲食店などは非効率そのものです。また、中まで人が立って満員になる学内を走るバスは、車両中央のドアが満員の車内の内側に向かって開きます。運が悪いと挟まれそうになります。「なんでそれを考えないのかな…」と感じることが多いです。バスはかなりツッコミどころが多いです。人が降りる前に我先に乗り込む人々、毎日のように曲がり角で後輪を乗り上げる運転手などなど、日本と違うことを発見するのは楽しいです。講義中に私の後ろで、ご飯をむしゃむしゃと食べているくせに、突然賢そうな質問を教授にする奴、金曜夜に路上でクスリをやっている奴、いろいろな人間がいます。少し汚い話で申し訳ないのですが、トイレの使い方も適当な人が多いと感じます。流れていない確率が日本より高く、一番困ったのは、no.1用の便器が二つあるのに、一つしかない個室でno.1を足す男…それもドアを全開にした状態です。これにはさすがに困りましたが笑いそうになり、アメリカに来てから一番のツッコミどころでした。これからまたどんなツッコミどころのあるシーンが私を待ち受けているのかと思うと、さらに今後の生活が楽しみになります。

最後になりましたが、私たちを支援してくださる皆様、この場をお借りしてお礼申し上げます。今後とも全力でこの留学を充実させて参りますので、よろしくお願いいたします。

2017年9月30日

第42期小山八郎記念奨学生 南部 俊人

福田健太さんの2017年9月分奨学生レポート

Japan Illinois Clubの皆様、ご無沙汰しております。42期奨学生の福田健太と申します。イリノイ大学では、Liberal Arts and Sciences学部の、Economics Departmentに所属し、経済の勉強を中心にしています。9月に入り授業が始まってから、目の前の授業や課題に追われるうちに、あっという間に1か月が過ぎてしまいました。先日大半のMidtermが終了し、ひと段落したところで、この一ヶ月を振り返ってみようと思います。

 

大きく分けて、オリエンテーション期間、授業、授業外の生活について書こうと思います。

 

オリエンテーション期間

 8月下旬にイリノイ大学へ到着してから、9月に入り授業が始まるまでの一週間ほどは、オリエンテーション期間であり、新しく入学する学生同士の交流イベントや、学生生活に必要な情報に関する講義に参加しました。

この時期に、キャンパスからバスに乗って20分ほどのところにある、アーバナダウンタウンで行われたUrbana Sweetcorn Festival (いわゆるトウモロコシ祭り) に友達と参加しました。

イリノイ州はコーンベルトという、アメリカ有数のコーン産地の一部であり、シカゴからバスでキャンパスへ向かう道の両側に延々とコーン畑が地平線まで続くような場所であり、美味しいトウモロコシが安く食べれたら良いなと思って遊びに行ったのですが、予想していたより楽しいものでした。

アーバナダウンタウンの一部に、多くの出店が出店されており、日本のお祭りと似たような雰囲気のものでしたが、チームで取り組む謎解きゲームのようなものがあり、お祭り会場にのあちこちに仕掛けられた様々な問題に答えることで得られるキーワードを伝えると景品がもらえるというので、ルームメイトたちと参加することにしました。

この謎解きゲームが意外と難易度が高く、お祭り会場を早足で回りながら、問題の前で解き方をみんなで議論し、なんとか終了時間ギリギリで全ての問題を解き終えると「君たちで最後だよ!」滑り込みで景品をもらうことができました。景品は小さなトロフィーとオリジナルTシャツとそんなに豪華なものではありませんが、思い出の品となりました。

写真1

全ての問題を解き終えてルームメイトたちととった記念写真。(トウモロコシを食べているのが筆者)

また、授業が始まる前にJapan Houceが主催するMATSURIがあり、JICの学生4人で運営のお手伝いを行いました。私は浴衣をきて、お客さんに折り紙を教える役割につきました。まだ英語にも慣れない中、鶴などの折り方を英語で説明するのは大変でしたが、5時間ほどの間なんども繰り返し折り方を説明するうちに、最後の方は注意すべきポイントに重点を置いて説明するなど、成長を実感することができました。

写真2

MATSURIで折り紙の折り方を確認しているところ

授業について

 こちらで受ける授業は、総じて「教育」を強く意識した設計がなされていることを感じます。日本では、講義形式で知識を伝えられる授業が多いのに比べ、イリノイ大学では、講義に加えてディスカッションや、エッセイ、クイズなど様々な方法を組み合わせて行われる授業が多いように思います。

特に面白いと感じたのが、大学内のBookstoreで購入できる、i Clickerというリモコンのようなものを使い、授業中にリアルタイムでクイズや投票などを行うものです。これにより大教室の授業でも、教授と学生がインタラクティブなやりとりを行うことができます。何人がどの選択肢に投票したのかがわかるため、自分以外の学生がどのようなことを考えているか知ることができます。

写真3

授業で使うi Clicker。オンラインで番号を登録し、授業中にスライドに表示される選択肢に対応したA~Eのボタンを押す。

また授業前のオリエンテーションでも念を押され、多くの教授も行っていたことが、ただ教室にきて黙って座っているだけでは高い参加点を得ることは難しい、というものでした。アメリカの大学といえば、授業内で盛んにディスカッションが行われるようなイメージを抱いていたので、もとより覚悟はしていたつもりでしたが、この点に関して最初の数週間は本当に苦労しました。

みんな次々と発言していき、それを元に次のディスカッションが行われることもよくあるため、一度聞き取れないとその後の流れが全くわからず、今何を話しているかわからないためもっと発言する自信がなくなる、という繰り返しでしたが、1ヶ月授業を受けているうちに少し慣れてきて、だんだんと発言できる機会も増えてきました。

 1学期間に10科目ほど取れる日本の大学とは異なり、こちらでは1学期に最大でも6科目ほどしか履修できません。また一つの授業が週に2~3コマあり、課題や予習の量も膨大なため、はじめは5科目履修しようとしていましたが、一つ一つの授業を中途半端にしないよう途中から一つ削り、計4科目の授業を履修しています。

私は日本では法学部に在籍しているものの、経済学に興味があったため、今回の留学を利用して経済学を勉強しようと考えています。そのため、今学期に履修している4つの授業のうち、半分は経済学に関する授業であり、残りの半分は、関心のある社会政策に関係する別分野の授業をとっています。

またせっかくの留学なので、よりアメリカらしい授業を受けたいと思い、ほぼ全ての科目が、授業内でディスカッションを行うものとなっています。

 

以下に、それぞれの授業の概要を記していこうと思います。

 

◆ECON303 Intermediate Macroeconomics

こちらは、学部生向けの中級マクロ経済学の授業です。どうやら日本の標準的な学部レベルの授業と大学院レベルの授業の中間くらいのテーマを扱っているらしく、経済成長やビジネスサイクルについて、代表的なマクロ経済の理論を学んでいきます。授業で学んだことに関する毎週のオンラインクイズと、計算問題をとくHomework、一つの分野が終わるごとに実施される計3回のMidterm ExamとFinal Examで成績が評価されます。

授業は週に2回の講義と1回のTA Sessionから成ります。理論の説明を行う講義は100人以上が参加し、日本の大学の授業と似たような雰囲気で進められます。対してTA Sessionは、授業で扱った理論を元にした、問題の解き方をPh.Dに在籍するTAから

経済学を初めて勉強する私にとっては、授業の進むペースも早くついていくのが少し大変ですが、数学の問題と実社会の動きが結びつくことがとても楽しく、今学期もっとも力を入れて取り組んでいる授業です。来学期には、マクロ経済に関するさらに発展した授業を履修したいので、この授業はAの評価をもらえるように頑張っていきたいと思います。

 

◆ECON490 History of Modern Economic Thought

こちらも経済学部が開講している授業ですが、数学を使う代表的な経済学の授業とは異なり、過去の経済学者が記した古典を読み、現在当たり前のように使われている考え方や概念の成り立ちを学び、理解を深めることを目的とした授業です。そのため、毎週の授業で課される予習課題が膨大で、今学期もっとも苦労している授業です。

授業は週2回の講義とディスカッションを合わせたようなコマから成り、一つの授業につき50~100ページほどの古典を読んで望みます。重商主義、アダムスミス、ケインズなど、社会科学を勉強したことのある人ならば誰しも一度は耳にしたことのある思想家・経済学者の作品を扱うのですが、なんとなく名前を知っている彼らが、実際にどんな問題意識に基づき、どんなことを主張しているのかを自分が知らなかったことに気付かされます。

 

◆PHIL106 Ethics and Social Policy

この授業は、哲学科により開講されている授業で、実社会で起きている様々な問題を倫理学的に分析するというものです。これまでに、表現の自由からみる大学でのヘイトスピーチ規制や、アファーマティブアクションの是非などをテーマとして扱いました。

特定のテーマに関する、代表的な倫理学者の主張がリーディング課題として課され、授業では、それらの主張を全員で確認した後に、著者への反論をディスカッションします。授業が始まってすぐの頃は特に、教授の話す内容は聞き取れても、ディスカッションで他の学生が話す内容を聞き取ることが難しく、今何について話しているのかわからなくなってしまうこともあり、とても苦労しました。今でも抽象的な哲学の理論について議論することは苦労することも多いですが、なるべく自分で一番最初に発言をして議論の流れを作るなど、授業が追えなくならないような工夫をしながら、少しづつ積極的に参加できるようになってきています。

 

◆PS270 Introduction to Political Theory

一時期日本でも話題になったマイケル・サンデル教授の「ハーバード白熱教室」のような、政治哲学をテーマとした授業です。「あなたが運転手をしているトロッコのブレーキが壊れ、このままだと線路で作業をしてる5人を轢き殺してしまうが、車線を変更すると5人は助かる代わりに別の1人の作業員を殺してしまうことになる」という状況で、どう行動することが正解か?という、有名なトロッコ問題についてのディスカッションも行いました。授業では、政治学の古典を読みながら、「自由」や「平等」、「正義」と行った抽象的な概念について自分なりの考えを作り上げるというものです。

この授業は、教授が特に教育熱心であり、毎授業後のオンラインクイズ、毎週のエッセイ、隔週毎に課される課題と、とにかく取り組むことが多く大変な授業なのですが、アウトプットの機会が多く、自分の考えをまとめることができるため、ただ単に知識を習得するだけではなく、自分なりにそれを消化することのできる良い授業だと感じています。

先日の課題では、「自由」と「平等」の定義と、両者の関係についてワンセンテンスで自分の考えを書く、というもので、たった3行の文章を書くだけの課題にもかかわらず、一週間近くずっと考え続けることになり、とても苦労しました。友達と議論をしたり、提出時間の直前まで粘って考え続けた結果、自分なりに満足のいくものが書けたので、教授からのフィードバックがとても楽しみです。

 

授業外の生活

留学開始前は、何かしらのクラブに参加し、有意義な生活を送ろう!と意気込み、Quad Day (全クラブ・サークルが大学のメイン広場にブースを出店し新歓活動を行う日)では色々な団体の話を聞いたのですが、いざ授業が始まってみると、想像以上に余裕がなく、恒常的に顔を出している団体が特にない状態となってしまいました。

しかし、都合の合う日は、毎週木曜日にJapan Houceで行われる茶道のクラスに参加しています。留学前は、まさかアメリカに行って茶道をやるとは思ってもいなかったのですが、初回のクラスにご招待いただいて参加してみると、出身国の文化であるにも関わらず何も茶道について知識がないため、もっとよく知りたいと思うようになり、参加することに決めました。取ろうと決めた時には想定していませんでしたが、茶道の時間はとても静かで、ゆっくりと過ぎるため、慌ただしい日々の合間に一息ついて自分と向き合う良い機会となっています。

 

所感

留学開始直後の1~2週間は全てが新しく、毎日が刺激に満ちており、毎日がめまぐるしく変化してあっという間に時間が経ってしまうように感じていました。しかしだんだんと日々のサイクルに慣れていく中で、授業で思うように発言できないもどかしさや、膨大なリーディングが上手くこなせずに夜遅くまで眠れない日が続くなど、辛さを感じることもありました。寝不足が続き、日々の気温差で風邪を引いたりもしましたが、先日どうにかこうにか1度目のMidtermラッシュを終えて、どうにか生活のリズムを掴みつつあります。

毎日に少しづつ余裕が生まれてきて、その時間を何に使っていこうか、と考えています。

今までコツコツ地道に勉強する、ということを苦手としていて、また時間が出来次第新たなことに手を伸ばしては色々なことが中途半端になる、ということが多かったため、ひとまずは新しいことを始めるよりも、日々の課題や予習の質を上げていこうと思っています。

RIさんの2017年9月分奨学生レポート

こんにちは。Japan Illini Club 42期生のRIです。慶應義塾大学法学部に4年生として在籍しています。

8月下旬にイリノイ大学に到着し、すでに1ヶ月が経ちました。9月末には寒くなるとJICの先輩方から教えられましたが、今年は珍しく真夏のような気候が続いています。すぐに冷え込むだろうと思い、冬用のコートも持ってきたのですが、あと1ヶ月は使う出番がなさそうです。さて、現地では2週間前にようやく履修登録が完了し、授業を含め現地での生活に大分慣れてきました。イリノイ大学では日本で学んでいた法学・政治学とは全く異なる、工学部の計算幾何学(以下:CS)をこちらでは専攻しています。元々高校2年生までは理系だったのですが、いざ4年生の時点で理転すると、脳が時々止まってしまうような場面にも直面します。そんな新鮮な経験も含め、これから現地での大学生活についてつらつらと書かせていただきます。

①現地での授業について

こちらの大学では主に4つの授業を履修しています。一つ目はCS101: Introduction to Computer Science(3単位)という、CSを最初の基礎から学ぶ授業です。主な内容としては、CSに関する理論やコンピューターの仕組みを学び、後にPythonというプログラミング言語に取り組みます。Pythonという言語は近年話題のデータサイエンスでも活用される機会が多く、数年前にCS101でもカリキュラムに取り入れたとのことです。週に2回の講義、1回のラボに参加する必要があり、且つ毎週2つの小テストと隔週の試験が待ち受けています。主に1・2年生が参加する授業ですが、CSに少し興味を持つ学生が、この授業を受けて急に専攻を変えることも珍しくないと先日担当の教授が話していました。米国の教育メディアで有名なU.S. Newsは、”Best Undergraduate Computer Engineering Programs(Doctorate)”という全米ランキングでイリノイ大学(アーバナシャンペン校)を4位と評価しているだけあり、学生に対する期待値がとても高いと感じます。また、ランキングで高く評価されていることもあり、多くの学生が最初はこの授業を受けることから、この授業は「(途中で挫折する)CSに興味ある学生」と「CSを本気で学びたい学生」を判別する振り子的な役割を担っているそうです。

二つ目の授業はCS125: Intro Computing – Engineering & Science(4単位)という、Javaというプログラミング言語を中心に学ぶ現地の名物授業です。CS101よりさらにパワーアップして、毎週3回の講義と1回のラボ、1つの小テスト、1つのMachine Problems(以下MP)が待ち構えています。このMPというものが非常に厄介で、毎週3つの応用レベルのプログラミング問題が課され、それを毎週他の課題と共にこなしていく必要があります。CS専攻でも案外時間があるんじゃないのか、と最初に来た時は思っていましたが、見事このMPの存在によってその甘い期待は打ち砕かれました。他の課題や授業を受けつつやっていると、睡眠時間を削るという選択肢以外がありません。1つ目のMPはなんとか徹夜せず終わらせることができましたが、先週提出した2つ目のMPでは、徹夜する羽目になってしまい、せっかくのFriday Nightは爆睡する結末に至りました。イリノイ大学ではCSが一番難関な専攻といわれていますが、今それを痛感しています。ただ、この授業時間以外にTeaching Assistant(以下: TA)がたくさんのオフィスアワーを設けているため、わからないことがあれば直ぐにTAに聞ける体制が整っています。「厳しく教えるけど、ちゃんと学習支援は行うよ!」という姿勢がひしひしと伝わってくる授業です。辛い時もありますが、本当にこの大学にきてよかったと思うことができるようになった授業でした。

三つ目の授業はCS196: Freshmen Honours(1単位)です。この授業は毎週講義と分科会が1回ずつ行われます。この授業はたったの1単位しかありませんが、非常に特殊で且つ人気を誇っています。まず、この授業に担当教授はいません。授業は全てCS196で優秀な成績を残した2・3年生が担当します。次に、学生が取りまとめる授業であるため、授業は全て19時以降に開催されます。日中の授業や課題でクタクタな状況でも、この授業のために遠い工学部キャンパスに戻ります。3つ目は分科会です。この分科会も夜に開催されるのですが、こちらでは自分が興味を持つ分野について学ぶことができます。米国では、データサイエンティストが今最も熱い職業といわれているのと、ちょうどデータサイエンスで活用されているPythonを学んでいたこともあったため、私はデータサイエンス分科会に入りました。講師は2つ下の20歳ですが、すでに大学の米国立スーパーコンピュータ応用研究所にリサーチに携わっており、改めてこの世界で年齢は関係ないと実感した次第です。そしてこの授業はプロジェクトベースとなっています。先週は立候補した学生が取り組みたいプロジェクトをピッチし、今週ついに私もそのプロジェクトの一つにアサインされました。まだアイデア段階ではじまったばかりですが、これからどんなものがつくれるのか、とても楽しみです(寝たい)。

写真②:CS196の授業風景

四つ目の授業ではIS590 Data Visualization(4単位)というものを履修しています。こちらは情報科学という専攻の授業になっていますが、内容は非常にCSに近いものとなっています。インターネットで公開されている様々なデータを用い、Pythonでそれを図式化する手法を学んでいます。これは院生の授業なのですが、先生はとても面倒見がよく、非常に取り組みやすい授業です。また、授業ではテクニカルなことについて教えてくれるだけでなく、データとは一体なんなのか、このデータにどう向き合えば良いのかという抽象度が高い議論も行うので、自分がなぜこの領域を学んでいるのかを考えさせてくれるきっかけとなります。こちらの授業はCS125に比べ、課題量は少ないのですが、Pythonに関する事前知識が必要とされるため、独学でさらに学ばないといけません。なんにせよ、自分で選んだ道なので、これからも頑張って取り組んでいきます(寝たい)。

また、正式に履修はしていないのですが、CS 126: Software Design Studio(3単位)という授業を聴講しています。元々この授業は留学生が取れないものとなっているのですが、担当教授と話し、アドミッション担当者に直談判した結果取れることができました。最初は正式に履修登録を行いましたが、CS125の知識を前提とした授業であったため、「このままの状態では十分に学べない」と判断し、聴講という形式に変更しました。この授業では、プログラミング言語を学ぶのではなく、「いかにコードを綺麗にかけるか」ということが求められます。まだ十分なプログラミング知識はないのですが、授業を聴講するのと、課題図書の『The Art of Readable Code』を読んで、コードを書くときにこんな点に注意をおくのか!、とたくさんの気づきを提供してくれます。また、講義のみならず、少人数で開催されるコーディングセッションでは、5人の学生がお互いにつくった課題コードを見せ合い、それぞれのコードの内容や構成について改善点や疑問点を指摘しあいます。このセッションを通じて、コードは第三者に見られるものであり、仮に一人のプロジェクトでも常に構成は気にすべきだと感じました。また、コードはその人の論理的思考が直接反映されるものなので、その人の経験値や論理構成能力が露わになります。日本でエンジニアの方と話したとき、「コードでその人の性格がわかる」と言われたことがありましたが、ようやくイリノイで理解することができました。

②CSを勉強しながら感じたこと

一通り授業について述べましたので、授業や現地での生活についてこちらで話させていただきます。まず、CSを専攻している学生はThomas M. Siebel Center for Computer Science(以下: Siebels)という施設で講義やラボに参加します。私はキャンパス南側のBousfieldというところに住んでいるのですが、Siebelsは北側にあります。バスで十分、歩いて30分ほどの距離です。遠いのが少し難ですが、施設は新しく綺麗で、大学が理系分野に注力していることが露骨に表れています。そして、このSiebelsという施設では理系の学生が溜まっているのですが、8割りがインド人と東アジア人で構成されているといっても過言ではありません。海外から飛び立った留学生も多いですが、2世や3世も多く、この施設の空間はアメリカは移民の国であることを強く立証しているように感じられます。ただ、日系の留学生や2世は一桁台しかおらず、やはり日本は豊かな国であると実感したと同時に、トビタテや留学支援プログラムが他国に比べとても充実しているのにも関わらずこの数は異常だと、ある種の焦燥感も得ました。異国に旅行するのが大好きな日本人は、異国に住み着くことは選びません。それは日本が住みやすい国であることの裏付けでもありますが、米国では日本の存在感は全くありません。複雑な国際社会で、ここまで影が薄いと、日本国籍を持つ自分はこれからどんな生き方を選べばいいのか、などというぼんやりとしたことについても考えてしまいます。

また、CSの勉強を通じて、集団で学ぶ環境の大切さを感じました。CSに関するほとんどの教材やナレッジはすでにインターネット上に無料で載っていて、独学することが可能です。つまり、日本の四国にある小さな町の家の一室に引きこもっていても、インターネットさえあれば専門知識を得ることができます。故にCSはどこでも学べるし、インターネットがあればどこでもソフトウェアエンジニアは作業できるという風に言われています。しかし、一人で一から学ぶのは相当根性がないと難しいと今回の留学で改めて痛感しました。わからない問題に直面したとき、インターネットで解決方法を探すことはしょっちゅうありますが、集団で勉強する方が圧倒的に効率が良く、学びがあります。自分が理解していない点や直面する課題について、隣に誰かがいるだけですぐに質問することができます。Siebelsは、全米最高峰のCSナレッジが密に集中している空間です。この空間にいることが、この留学の醍醐味だと私は思います。そして、人に自分が問題に直面していることを説明するのは、思考の整理に繋がります。「自分は今この課題を解くアルゴリズムをつくる必要があって、このコードの行にはこんな意図がある。ただ、次のコードを書くときにこんな風に書いたらエラーが出てしまう。どうすればこのエラーは無くなるのだろうか。このコードはどのコードと繋がっているけど、このコードにも影響しているかもしれない。」と、言語化して声に出すだけで、少し脳内がスッキリする感覚が得られます。泥臭い作業が殆どですが、「誰かと一緒に」向き合うというだけでモチベーションは保たれますし、コミュニケーションしながら助け合う姿勢は、CSのみならず、生活の様々な面で役立つのではないのでしょうか。

過去に一年間、イギリスのエジンバラ大学に交換留学生として国際政治について学んでいたのですが、こちらでの授業生活とは全く異なるので驚いています。取り組んでいる学問領域が異なるというのもありますが、こちらでCSを学ぶとなると一時的な暗記や「力技」が全く効きません。CSでは論理に対して本質的な理解が常に求められます。国際政治では、論文構成についての議論や学者が提唱する概念についての理解が求められますが、暗記を求められるケースが多いという所感です。異なる学問でも、学ぶ姿勢という観点では多くの共通項がありますが、試験期間でよく垣間見られる一夜漬けはあくまで暗記ベースでしか応用できません。政治学では、「この年度に、この人物が、こんな外交事件を起こした」ということを暗記で覚えられますが、CSは「考え方」を教えます。つまり、その考え方を一度でも理解すれば類似問題はいくらでも解けますが、その考え方を理解しなければ一生解けません。もちろん、一夜漬けで「考え方」を理解できる人もいるとは思いますが、私は毎日地道にコードに触れて理解していこうと思います。先日、教授との面談が行われたのですが、その際「プログラミングは楽器を練習するのと同じ。毎日触れて、毎日勉強する習慣が鍵です。」とアドバイスをいただきました。今はわからないことだらけですが、来年の夏には全く違う学問に頑張って取り組んでよかったと思えるように、精進してまいります。

写真③:ほぼ毎日通う工学部の図書館。24時間運営しています。

元々日本の大学では法学・政治学という非常に定性的な学問に触れ合ってきましたが、イリノイ大学ではCSの学生として、異なる手法で自身の「考え方」を磨いていきます。また、留学期間に自分で一つ何かプログラミングを作ってみたいと思いますので、乞うご期待ください!拙い文章ですが、年末の時期にまた近況報告をさせていただきます。お読みいただきありがとうございました!

喬博軒さんの2015年12月分奨学生レポート

皆様こんにちは、40期奨学生の喬博軒(きょうひろき)です。シャンペーンの爽やかな夏、美しく色めく秋もつかの間でした。前回のレポートに描いた色鮮やかなキャンパスは彩りを変え、冬枯れの景色の中で生き物たちが厳しい季節へ向けて準備を進めているのを感じます。キャンパスを以前よりしっかりとした足取りで歩み、すれ違う友人と慣れてきたあいさつを交わします。響く鐘の音はどこか日本の古い学校舎を思い出させ、好敵手のように思っていたこの場所に愛着を持ちつつあります。雑踏の中でふと顔を上げる瞬間、その移りゆく時間をいとおしく感じるほどです。寒くなってきましたが、Thanksgiving daysからChristmas、New Yearにかけての時期は、人々にとって家族で集まり美味しいものを食べる、心の温まる時節でもあります。来年のこれらの季節には日本にいると思うと名残惜しいですが、一期一会の瞬間を今までどおり大切に過ごしていくつもりです 。

写真1_kyo

(Thanksgivingのご馳走。ターキーとラズベリージャムの組み合わせ)

 

レポートにとりかかり改めてこの4か月を見つめてみると、自分がアメリカの大学生活の真っただ中にいることを強く実感し、その事実を新鮮にさえ感じます。よく言えばここでの生活に必死になり目の前の課題に没頭していたと言えますし、周りがよく見渡せていなかったとも言えます。同時に、毎日やるべきことを継続することの難しさや、いわゆる自分の弱い面に直面する経験はどこにいようと変わりません。慣れていない環境で母国語を使えない分、苦難はよりくっきりと際立ちますが、その分些細なことに喜びや達成感を感じています。

 

<生活について>

ここでの生活について私なりに振り返ってみると、少なくとも日本との差異を知覚し、それをポジティブに捉えられているのではないかと思います。第一に、他人の評価を気にしないでとにかく目の前のことに集中し、自らを表現する機会が与えられている環境をとても気に入っています。実際にはそのように行動すること以外に選択肢がないと言えるのかもしれません。失敗をしたときは良い経験になったと開き直り、誰かに褒められたときは(たとえそれが大げさで社交辞令的な意味合いを含んでいたとしても)本当にそうなのかもしれないなと素直に受けとっています。講義やディスカッションで何も言わないということは、私のいる意味が全く無いことなのだと身を持って学びながら、たどたどしくても何か言葉を発するように自然と強いられています。

 
・愛すべき友人達

私を前向きにさせてくれているのは世界中からきている学生達との出会いです。目標を持ち続けそれを維持するという面においては、この環境は私に合っていると強く感じます。他の奨学生もいうようにイリノイ大学は本当に多様な大学です。中には授業でFacebookやネットショッピングばかりしているクラスメートや、頻繁にパーティに出かけ昼過ぎに起床するピアメートもいることにはいます。(彼らも良いGPA獲得のために必死で勉強はしています。)しかしそれ以上に、出身国を離れアメリカに来てがむしゃらになって道を切り拓こうとしている人間と数多く出会いました。あるインド出身の友人は誰よりも講義中に発言し、頻繁に教授のもとへ行き質問を投げかけます。普段は優しくユーモラスな友人が、ときにあからさまな競争心をその行動や発言に覗かせます。教室全体が彼の発言を待つような雰囲気になるほど彼の存在感は大きくなっています。また、日本で高校を終え今年NYの大学から転入してきた日本人学生は、自分は要領が悪いから誰よりも勉強しなければいけないと言い、驚くほど毎日机に向かっています。実際に彼の成績は聞いたことがない程よく、その謙虚さに隠れた信念を私はとても尊敬しています。その他にも、入学して間もないにもかかわらず既に別の学校へトランスファー(転入)を準備している上海から来ている優しい青年、休み時間も教授にくっついて自らの考えを絶え間なく話し続けるエクアドルからの熱い大学院生など、例を挙げればきりがありません。彼らに出会えたことがここにきて良かったと思える大きな成果だと心から思います。がむしゃらに新たな環境で生きていくということの意味、そして自分の甘さを内省させられます。

写真2_kyo

(Dad’s Dayのフットボールゲーム。国歌斉唱の場面)

 

<講義ついて>

・アメリカの大学生の「蹴落としあい」

これまでこちらの講義に出てきて私が感じたことは、競争が日本よりもはっきりとしていることと、求められている必要要件がはっきりしていて、そこに生徒を到達させるためのシステムがうまく機能しているということです。一概にアメリカの学生が日本の学生よりも勉強するとは言いませんが、日本とは異なる教育評価システムや就職要件などといった社会状況の下、誰もがより良いGPAをとることに尽力せざるを得ない状況にいることは断言できます。(GPAなんてどうなってもいいと言う学生にはあったことがありません。)日本の医学部と比較すると驚くほど勉強しているという程ではありませんが、個々の間で競争しているという感覚はより強く感じます。私はまだ出会ったことはないですが、pre-Medの学生の間で課題に関して誤った情報をわざと与えるなどして友人同士でネガティブな競争をしているとさえ聞いたことがあります。

プラグマティズムに重きをおいた教育システムには関心させられます。やるべきことをやらざるを得ないシステムが出来上がっているのです。教授やTAの教育に対する相互協力、生徒の達成度評価もかなり細かく設定されており、かつ機能していていると実感しています。この教育システムやサポート体制に対して高額な授業料が設定されているのだろうと思うと多少納得もできますが、友人の中には経済的な理由で転校をせざるを得ない子もおり、授業料の高騰が深刻な状況にあることも実感できます。

 

・現在履修している講義

MCB426         Bacterial Pathogenesis

CMLH415     International Health

ART103         Painting for non-major

ESL115         Principle of Academic Writing

 

・MCB426          Bacterial Pathogenesis

この講義の全貌をやっとのことで掴むことができた今、大きな達成感と安堵の気持ちでいっぱいです。(まだ大きな試験を終えていないにもかかわらずです。)正直言ってこの授業を選択して以来、何度も後悔しました。というのも友人の助けが無かったらきっとドロップしていたであろうほど私にとっては今学期の試練でした。前回のレポートで述べたように内容や試験の形式はかなり難易度が高く、暗記という範疇を超えて応用することを常に求められ続けました。特に次世代シークエンス技術や、bacterial genetics(微生物遺伝学)の内容は私が今まで勉強してきたものよりも専門的で難易度が高く、応用する以前に知識をインプットするところからのスタートでした。Geneticsの基礎の教科書を図書館で借り通読し、それに加えて微生物の遺伝的多様性やシークエンス技術についての文献を日本語・英語問わず探すことで対策しました。今だからこそ、微生物に限らず生命科学系の研究をする上で必要な思考過程を学ぶトレーニングとして大変有意義であったということができます。教授は大変教育的で講義に熱意を持っている方で、いつも私の質問に長々と付き合ってくださっていました、大好きな教授の一人です。彼女は以前Medical Schoolで講義をしていたこともあり、かなり臨床的な視点も持っていたこともこの講義を取ってよかった理由のひとつです。抗菌薬や細菌の耐性獲得の講義は大変勉強になりました。彼女の口癖は「我々は微生物学者なのだからまずはmutant(変異株)を作りましょう」です。もう私はこのセリフを忘れることはないでしょう。

 

・CMHL415       International Health

今学期の後半から始まったいわゆる国際保健のクラスです。内容は公衆衛生的な内容を経済、保険制度、文化、女性、倫理などといった様々なテーマから学んでいきます。国連のSustainable Development Goalsを中心に、国際的な保健活動の過去と現在、未来を大きな目でとらえることができます。特に途上国で行われる大規模な臨床比較試験の倫理的な問題や、テクノロジーと医療といった内容は大変興味があった内容でした。講義の中でスモールディスカッションの時間が何度かあり、様々な専攻の学生達と話す機会があります。また、世界の各地域に分かれ4人ほどのグループで1つの国の保健衛生状況などをまとめたプレゼンテーションを行い、私のグループはネパールについての発表をしました。内容以上に発表にとてもやりがいを感じたので、次学期はこのような人前で話す機会を増やしていきたいと考えています。教授以外にNavy Campで栄養学を教えている大学院生など専門家が講義を行うこともあります。教授はブラジル出身で英語がネイティブではありません。そのようなインストラクターの話し方やコミュニケーション方法は参考になります。他のクラスと比較すると、内容の特性上か学生の多様性が豊かなのもこの授業の良いところだと思います。

 

・ART103           Painting for non-major

運よく履修できた油絵の授業は、今期の授業の中で一番楽しく幸福な時間です。授業の時間的な内訳や成績の評価基準もアトリエでの実技がほとんどですが、作品の鑑賞・評価も行います。作品を仕上げるごとに全員で円になり、一人ずつ作品を発表、それを生徒同士で互いに評価し合います。生徒たちは大変積極的で、毎回必ず全員が1回以上感想や意見を発表します。今まで、自分が一生懸命作ったものが友人たちに評価され、次に評価する側に回るという経験があまりなかったので、これが私にとって大変面白く感じられました。ほとんどの意見がとても前向きで作品の良いところを見つけ褒めてくれます。一度に20人近くに褒められるというのは少々こそばゆいものですが、だんだん自分が偉業を成し遂げたのかもしれないと錯覚してくるので不思議なものです。そんな風にみんなが熱心に自分の作品をみてくれるものだから、逆に感想を述べる番が来たときには一生懸命です。色使いやコントラスト、アイディア、構図、筆の使い方、ときに全体の雰囲気などについて様々な角度で対象を見つめる、いわば創造的な訓練でした。芸術を鑑賞しそれを言葉に表すのは日本語でも難しいのですが、それに加えて芸術用語や感性にまつわる英語を知らない私はいつも表現に苦労しました。それでもこのように表現と批評の両方の立場にたって闊達なディスカッションが行われる場というのはとても新鮮でした。この国の教育のエッセンスをより感覚的に体験できたのではないでしょうか。全体を通して、教官と相談しながら創意工夫する中で今までできなかったことができるようになる過程を楽しむことができました。アメリカで描いた7点の油彩画はどんなお土産よりも心に残る思い出の品となりました。

写真3_kyo

(授業風景。)

 

・ESL115           Principle of Academic Writing

前回のレポートに引き続きポートフォリオ・注釈付き目録を作成し、Research paperを作り上げている最中です。将来の論文・CVの作成に活かせればという私の当初の思惑からすると、どちらかというと論文を書くためのルール習得に重きが置かれていると感じます。文法的な正確さや文の構成などなどのチェックもありますが、内容というよりもアメリカ心理学会(APA)のガイドラインに乗っ取って書かれているかというのが評価対象です。Plagiarism(剽窃)の回避についてかなりの時間を割いて教え込まれることに日本との違いを感じました。ネイティブの学生もこのようなacademic writingは必修になっていて、大変な講義の代表として見なされているようです。学生に書く力を教え込もうという大学の熱意を感じます。少し課題の量を多く感じましたがこれはライティングに関しての苦手意識や経験不足からくるものであり、訓練次第でこの部分に費やす労力は減っていくのだと思います。引き続き他の講義の課題等に学んだことを活用していきたいです。

 

<休暇>

・Halloween

普段は学生寮に住んでいる私ですが、シャンペーンにホストファミリーがいます。大学のInternational Hospitality Commiteeという制度を通してお会いできた家族です。季節毎のイベントや、映画館に行くという彼らの大事な家族行事があるたびに私を自宅に招待してくれます。ハロウィンの日にはなんと彼らのコミュニティで行われる子供たちのパレードに参加させていただきました。ご存じの通りSpooky(この日のみんなの合言葉です。)な装飾の施された家々を回り、悪戯(いたずら)をしない代わりにお菓子を貰うといういわゆる典型的なハロウィンの醍醐味を味わうことができました。日本でもハロウィンは盛んになっていますが、この本場のハロウィンのいわゆる肝の部分に参加できたのは本当に喜ばしい経験でした。誰に勧められるでもなく仮装をしていきましたが、基本的に子供たちのための行列なので引率の大人以外は仮装した小学生です。そんな天使のようなちびっ子たちの中に、特別に6フィートのおじさんも混ぜてもらい、玄関先でTrick or Treat! と言うのはまさに快感でした。

写真4_kyo

(「イタズラしちゃうぞ」子供達の写真と並べるのには少しきついものがあります。)

 

<その他・所感>

Thanksgiving Vacationはオハイオ州にある病院と芸術の街、クリーブランドに実習に行ってまいりました。現地の病院で過ごす目まぐるしい速さで流れる時間は、日本とも、また大学とも異なっていて、非常にチャレンジングなものでした。ほんの個人的な出来事から、患者さんの命を預かるのに留学生だからという言い訳は通用しないことを痛感しました。ある患者さんが病棟からICUに移ることになり2人の研修医が別々の業務をあたっているときのことです。私は彼女達の間に入って情報の伝達を行っていました。電子カルテで指示箋を出すことや、人工呼吸器の準備が遅れそうだからまず酸素マスクをあててくれという簡単なやり取りでしたが、どうしたことか今までのように舌がうまく回りません。責任の伴った場での英語というものに大きな恐怖を感じた瞬間でした。自分の伝達によって患者さんの安全がほんの少しでも脅かされてしまったらという底知れない不安でした。周囲には気づかれないほどの内面的な動揺に収まり、その場では問題なく対応できましたが、私にとっては忘れることができない重要な経験となりました。これまで、なんとなく伝わるように話してきた無責任な英会話を深く内省するに至り、迅速で、かつ正確なコミュニケーションの土台を築いていく必要性を感じました。この実習は私の将来を考えるにあたってあらゆる面で示唆的でかけがえのないものとなりました。Dr. Moriという偉大なロールモデルの出会いを通して改めて自分自身を見つめ直しました。本当にやりたいことがあるのであれば、大事なのはそれが実現可能かどうかではなく、やるかやらないかであるということを思い知らされました。

写真5_kyo

(巨大で美しいUniversity Hospital)

 

さて、アメリカの大学というこれまでとは全く異なったシステムの中で過ごす中で、この環境に慣れてきたとはとても言えませんが、必死にもがくうちに少しだけ視界が晴れてきたように感じます。講義は大きく①手法を学ぶ訓練、②内容をインプットする訓練、③知識を応用し表現する訓練に分類できることがわかってきて、来期はそれらの中でより表現・発信という点に力を入れたいと感じました。同時に、個人的に挑戦したいと考えている勉強にも力を入れ、留学後の自分を以前より鮮明に描いていきながら過ごしたいと考えています。

こちらに来て以来、有り難いことにJIC奨学生として国内外の様々な方々にお会いしお話しする機会がありました。その度毎にこの制度の歴史と成果に気付かされ、多くの方々の努力の上にこの貴重な機会が実現していることを痛感いたします。ご支援・ご協力いただいている皆様やJICの皆様に改めて感謝いたします。これをもちましてご報告とさせていただきます。今後ともよろしくお願いいたします。

写真6_kyo

(地下に埋まった図書館と夕日に染まるSouth Quad)

 

2015年11月30日、シャンペーン

吉川慶彦さんの2015年4月分奨学生レポート

3回奨学生レポート(20153月)

 

JICの皆様、レポートを読んでくださっている皆様、いつもご支援くださいましてありがとうございます。39期奨学生の吉川です。一週間の春休みをニューヨークで過ごし、帰路のバスにてこのレポートを書いています。ニューヨーク滞在中はキャンパスでは食べられないような「ちゃんとした」和食を沢山堪能し、そのクオリティと値段の高さにびっくりし続けた一週間でした。

 

さて、春学期も半分以上が過ぎ、留学生活も残すところほんとうにあと少しとなりました。今学期は一言で言うと、かなり順調に進んでいます。以下、そんな春学期の授業とその他の活動について報告させていただきます。

 

1.春学期の授業について

今学期履修している授業は以下の通りです。

GRK 102 Elementary Greek II (4 hours)

CLCV/PHIL 203 Ancient Philosophy (4 hours)

CLCV 222 The Tragic Spirit (3 hours)

CLCV/ARCH 410 Ancient Egyptian and Greek Architecture (3 hours)

GLBL 392 International Diplomacy and Negotiation (3 hours)

GLBL 328 First Person Global (1 hour)

 

先学期は授業のレベルや量を変に抑えてしまったことから、余計にダラダラする時間が増えてしまったのではという反省があったため、今学期は合計18単位、履修上限のギリギリまで授業を取ることにしました。学期の最初には興味のある授業をピックアップし最初の一週間ですべて出席、シラバスと教科書を睨めっこしながら精査しました。以下各授業に関する簡単なコメントです。

 

・GRK 102 Elementary Greek II (4 hours)

先学期の続きとなる古典ギリシャ語の授業です。授業は相変わらず丁寧で、基礎的な文法事項をカバーしていきます。授業中に扱う課題はギリシャ語→英語の訳がメインなので、個人的にその反対、英語→ギリシャ語訳の課題を先生に提出し、さらなる文法・語彙の強化を図っています。先生自身がギリシャ人で、(現代/古典ギリシャ語で差異はあるものの)感覚的なレベルの指摘までもらえることが貴重な機会だと感じます。

また授業とはあまり関係ありませんが、生徒は先学期から引き続いてのメンバーであるため段々仲良くなり、Classics Clubのイベントを主催したり、St. Patrick Dayの日に昼間から遊んだりと、クラス外での交流も増えていることが嬉しいです。

 

・CLCV/PHIL 203 Ancient Philosophy (4 hours)

プラトンやアリストテレスに関する基礎的な知識が抜け落ちていることに危機感を覚えたので、履修を決めました。大教室での講義形式なのですが、頻繁にReaction Paperが課され(1ページくらいの課題図書の理解度を測る短いペーパーのこと)、またオフィスアワーにも行くようにしているため、学びは大きいと思います。

 

・CLCV 222 The Tragic Spirit (3 hours)

ギリシャ悲劇を翻訳で読む授業です。英語で文学作品を読むことを続けたいため履修しました。先学期の叙事詩に比べ悲劇は、一つあたりの分量も少なく圧倒的に読みやすいのですが、その分エッセンスが濃縮されており味わいの深さは叙事詩のそれに勝るとも劣らずです。一学期間に4人の作者を扱い、それぞれについてReaction Paperとグループプロジェクトが課されています(さらに2回のペーパーがあります)。プロジェクトでは実際に自分たちで悲劇を作って演じたり、現代のキャラクターをギリシャ悲劇の文脈に入れてみたりと楽しい課題がありました。

 

・CLCV/ARCH 410 Ancient Egyptian and Greek Architecture (3 hours)

タイトルの通り、古代エジプト・ギリシャの建築の授業です。端的に言って、今学期いちばん楽しい授業です。授業自体は何の変哲もない一方向の講義形式なのですが、教授の建築にかける熱意がすごく、大画面に映し出される数々の美しいモニュメントにこちら側も圧倒されます。建築物・美術品の背景となる歴史や文化を知ることは、少なくとも視点を提供するという点で、その鑑賞に資すると思うのですが、実際にこの目で観てみたいという思いが日に日に強まります(ギリシャ旅行に早く行こうと毎回授業に行くたびに思わされます)。先日もニューヨークのメトロポリタン美術館のエジプト・ギリシャフロアでは濃い時間を過ごすことができました。

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(写真1:ギリシャ風建築のリンカーン記念館@ワシントンD.C.)

 

・GLBL 392 International Diplomacy and Negotiation (3 hours)

国際政治における外交・交渉論の授業です。上記4つの授業は自分の専攻である古典学に関連した授業ですが、この授業はGlobal Studiesという専攻で開講されており、授業も生徒の雰囲気もまた違ったものとなっています。週2回の授業では基礎的な知識の確認、週1回のディスカッションのクラスでは交渉のシミュレーションを主に行い、内容・形式ともにいわゆる「アメリカっぽい」気がする授業です。

最初のディスカッションのクラスで、ある国に向けて発射されたミサイルをアメリカが迎撃するべきか、見送るべきかというシミュレーションがあり、自分のグループでは迎撃と決まったと私は思っていたのに、グループの一人がクラス全体にシェアした際に実は見送りに決まっていたことが判明するという「事件」がありました。要するに既に一学期を過ごしていたにも関わらず、まだ議論の方向性すら分からない程の英語力だったということです・・・。この事件はかなり衝撃的でしたが、なぜか当時の自分は逆に奮発し、履修し続けることを決めました。また一方でこの間は、小グループで交渉戦略の中間発表をまとめる機会があったのですが、誰も積極的に進めないので結局私が全て仕切り、戦略のアウトラインと各メンバーの分担をまとめて、長々とメールで送るという、これまた別の事件もありました。終始自分が仕切っていいのか、このやり方がベストなのか、という不安もありましたが、結果的に特に反発も起きずスムーズに議論をまとめることができ、自意識過剰に余計な心配をすることはないのだな、と学びました。この気持ちの切り替えは、ひとつの大きな転換でした。ディスカッションも積極的に参加していれば、上のような大きな勘違いは(あまり)起こりません。

この授業は盛り沢山で、学期末には個人ワークの集大成として30ページのケーススタディをまとめることになっています。今年で終戦70年ということもあり、私は第二次世界大戦の終結に関する交渉過程を調べています。見よう見まねですが、英語文献を図書館で漁り、段階的にまとめていく過程からもまた学ぶところが大きいです。

 

・GLBL 328 First Person Global (1 hour)

学期後半のみ、週1日の授業で、自身の留学体験に関するノンフィクションを書こうというユニークな授業です。そのことから履修要件は「留学経験があること」となっており、10人ほどの様々な専攻の学生が集まっています。まだ始まったばかりですが、このイリノイ大学での留学経験を文章化したいと思っていたため、すごく楽しみにしています。

 

・・・と以上、全6コース・18単位、古代のことから現代のことまで、大変充実した履修状況になっています。実際に課題はなかなか大変で、特に春休み前の一週間はペーパーや中間考査が重なりコーヒーの摂取量が増えました。それでも、学期の最初に時間と労力をかけて選んだことで全てやりたいことが出来ており、ぐんぐんと成長している実感があるので、ある意味で苦ではありません(いや苦しいかな)。改めて、「留学したら(自動的に)沢山勉強する」は幻想です。先学期ダラダラしてしまった分を取り戻す勢いで、残り数ヶ月を突っ走ります。

 

 

2.課外活動について

主に留学生向けのイベントに顔を出していただけの先学期に物足りなさを感じ、今学期は特定の活動にどっぷり浸かってみようと思い、いくつか新しい団体に入りました。中でも一番力を入れている二つを紹介します。

 

・ICDI

Intercultural Community Development Initiative、通称ICDIは昨年出来た新しい団体で、生徒間の文化的相互理解を促進し、より皆が「所属していると感じられる(inclusive)」ようなキャンパスを創り上げようという理念を掲げています。メンバーはアメリカ人・留学生が半々くらいで、大小のワークショップを運営しています。ホームページはこちら

学期の始め頃に参加したあるイベントで、「リーダーシップ」がテーマだったのも関わらず、予想以上にDiversityやInclusivenessという側面が強調されていたことが新鮮で頭に引っかかり、もっと詳しく知りたいと思っていたところ、ちょうど友達がICDIに所属していたことから、このテーマを追求できると思い参加することにしました。

 

今の自分がICDIに出会えたことは特に二つの点からラッキーで、日々多くを学んでいます。ひとつは実務的な側面から。もともと「日本で日本語で日本人相手に出来ていたことを、今度は文化や言語を超えてできるようになりたい」というのが私の留学の目標の一つでした。ICDIでは毎週2回のミーティングがあり、そこでは常に発言が求められます。また、3月のワークショップではファシリテーターを務めるというちょっとした大役もありました。これらの機会を通して、意見の吸い出し方、議論のまとめ方、不足の事態に臨機応変に対応する力などなど様々なスキルを磨いています。もともと自分はこうしたスキルに長けていると思います。それでも英語となると一つレベルが落ちるのが如実に分かります。幸いコツは掴んできているので、場数を踏んで鍛えるしかありません。

蜀咏悄・棚CDI

(写真2:ICDIでの活動風景)

 

そして、もうひとつはもっと抽象的な側面から。上述の通り、Diversityつまり多様性についてもっと深く知りたいというのがICDIに参加した理由でした。そして実際に毎回のワークショップから、それ以上に普段のICDIでの活動そのものから、この多様性というテーマの奥深さ・難しさを実感しています。まだまだ答えは出ていないのですが、オープンクエスチョンでたとえば「多様性はなぜ必要か」ということを考えてみましょう。よく無批判に、多様性が大事、これからの時代はダイバーシティだ!(?)などと言われますが、多様性のあるチームで集まるよりももしかしたら同質的な人が集まったグループの方が成果が出るのではないでしょうか。たとえば「英語にハンデのある留学生を交ぜるより、アメリカ人だけでディスカッションをした方が効率的ではないか」、というのは留学生の自分にはグサッとくるクリティカルな問いです。これについてどう答えられるでしょうか。ICDIは、コンピュータサイエンス専攻の学部生からロースクールの学生まで分野・国籍・学年が多様なメンバーで構成されています。活動内容が活動内容なだけに、この団体では多様性はかなり役に立っており、とりわけアイデア出しの段階では多様なバックグラウンドが必要不可欠です。しかし、議論の段階になるとやはり英語がより上手く話せる人がよく話している印象も拭えず、なかなか安易な一般化もできません。

もしかしたら問いの立て方そのものが違うのかもしれません。「多様性はなぜ必要か」ではなく、「多様性はどうしようとそこにあるものなのだから、それをどう活かすか」を考える方が生産的なのかもしれません。私は日本ではずっと同質的な環境におり、アメリカに来て色々な人種や国籍をもった人が集まる環境に身を置いて初めて、多様性について考え始めました。アメリカは多様性のある国だなあ、そこでこういう活動ができて嬉しいなあ、と思っていました。しかし、日本でも目立ちづらいかもしれませんが、多様性は確実にあり、それを活かせばもっと創造的なことが出来たり、大きな問題が解決出来たりするかもしれません。また、今後移民や観光客など日本に来る外国人も増える中で、もっと分かりやすい多様性も増えるでしょう。その状況にどう対応していくか、多様性のメリットをどう活用していくかは、一人一人が考えるに値することであると思います。答えが出ていないのでまとまりが悪いのですが、その取っ掛かりを得られているという点で非常にICDIでの活動に意義を感じています。

 

・CU Trickers

ICDIとはうってかわって運動系の活動です。CU Trickersでは、Trickといって、バク転やバク宙といったアクロバットとキックなどを混ぜたものを練習しています。実は全く初心者というわけではないのですが、それでもパフォーマンスを披露できるレベルではないので、私自身はむしろ個人的趣味としてバク転などを綺麗にできるよう、上手い学生に教えてもらっています。この間、夏のように暖かくなったある日にキャンパスのQuadでみんなで芝生の上をくるくると飛び回っていたのは気持ち良さげでした。今後Quadでの練習(というか楽しい集まりですが)も増えると思うので、レパートリーを増やしてもっと参加できるようにしたいと意気込んでいます。

 

 

3.所感

今学期は授業に課外活動にと、ようやく人並みのスタートダッシュを切れた感があり、冒頭にも書いたように、かなり順調に進んでいるように感じます。随所に先学期の反省が見えるように、また前回の奨学生レポートがどことなく暗かったように(読み返すとほんとに暗い!)、先学期はやはりなかなか上手く行っていなかったのだと思います。人生初めての「挫折」は思い描いていたようなポッキリと心が折れるようなものではなく、じわじわとボディブローのようにくるものでした。しかしその経験がバネになり、今学期そしておそらくは帰国後もずっと大事になってくることが見えたとも思います。先学期と今学期の違い、それは自信の有無です。

写真3脳波測定 (1)

(写真3:脳波測定の実験に参加)

 

自信があれば何でもできる。チャンスにも積極的に飛び込めるし、人と話すときにも明るく振る舞えるし、何より毎日を楽しく過ごすことができる。今までは私には無根拠の自信があったと思っていました。それで自分をアピールしなければならない局面でも上手く立ち振舞えていました。自信は主観的なものです。その無根拠の自信のストックはいつの間にか減っており、昨年それはゼロに近付きました。

では、根拠のある自信はどうやったら手に入るのでしょうか。色々なやり方があるでしょうが、ひとつ確実なのは、成功体験を積むことです。特に私の場合、継続的にエネルギーを傾け、何かを成し遂げたという経験に今まで乏しかったため、それが出来れば自信につながるのだと考えました。ここでいう成功体験は、他者からの評価ではだめで、手を抜かなかった、成し遂げたと自分で心から思えなければ自信につながりません。主観的なものですから。一方で成し遂げる経験の種類は何でもよく、一度達成できれば汎用性を伴って他の分野でも再現できるのではないでしょうか。さらに言うと、ここで経験は個性にもつながり、人生における軸にもなります。お得ですね。

 

・・・とまあ、そんなことを学期の初めに考えていました。そして授業も課外活動も(ほとんど)毎日通うジムも、こうした心持ちのもと臨むようにしました。はたして自分の中に変化は?

あと2ヶ月後、すべてが終わってからでないと何とも言えませんが、少なくとも自信は取り戻してきたように思います。そして今回は明確な根拠のある自信ですから、無根拠な過去のそれよりかは幾分心強いかもしれません。一方で自分に向き合うからこそ、至らなさも見えます。ちょうど春休みでリフレッシュできたので、今後も気を抜かず、精進していきたいと思います。

 

 

2015年3月末日

小山八郎記念奨学制度

39期奨学生 吉川慶彦

常盤祐貴さんの2014年7月分奨学生レポート

御無沙汰しておりました、2013年8月から2014年5月までUIUCに留学させて頂いていた常盤です。今回は帰国報告という形で、1年間の留学体験を手短にまとめさせて頂きます。
イリノイに着いた当初を思い返すと、人と話すことに対して必要以上に怯えていた気がします。もちろん自分の英語に自信が無かったことも一つの原因ですが、日本では外国人と話す経験が少なかったことも原因でした。一年間過ごした今は、そんな怯えは無くなり、良い意味で大胆かつ楽天的になったように思えます。外国人と話す経験だけでなく、アメリカの文化、アメリカ人の考え方にも触れて、アメリカ人の持つ良い意味での大胆さや楽観を抽出できたのかな、と感じています。もちろんそれらはその環境で過ごしていく中で、気が付かない内に身に付いたものであり、その意味で1年間も留学できなければ得られなかったものだと感じています。また、現在日本でインターンをする機会を獲得できたのも、イリノイに留学させて頂けたからに他なりません。さらに、比較的都会で育ってきた自分にとって、あのイリノイでの一年間はその景色を思い出すと感慨深いものです。
正直、何が身に付いたのか、と難しく考えずに、ふとイリノイでの日々を思い返してみても、ただただ楽しかったなあと思います。つぶさに何が楽しかったを挙げると、週5の筋トレ、金曜のバーなど多くありますが、嫌な事が余り無かったのも大きいでしょう。日本にいた時と違って、通学時間がほぼ無かったですし。
まったく違う環境に飛び込むと、後に振り返って、やはり何らかの違いを感じるのだなあ、と感じています。もちろん、その違いがどの程度その人にとってプラスなのかは個人で異なると思います。しかし、そのような違いを生みうる環境と言うのは、これまでの経験上、えてして飛び込む機会が限られているもので、その意味でこのプログラムは素晴らしい機会提供です。私自身は衝動的に申し込んだのですが、結果イリノイに留学していなければ辿り着けなかったであろう場所に来ていると思います(物理的な場所ではなく、考え方、経験等抽象的な意味で、です)。余りぱっとしない帰国報告ではありますが、留学して本当に良かった、と本心で感じていることが伝われば幸いです。最後に、留学させていただいたことへの感謝を述べて、帰国報告を終了させて頂きたいと思います。ありがとうございました。

榊原侑利さんの2014年7月分奨学生レポート

JICの皆様、そしてレポートを読んで下さっている皆様、ご無沙汰しております。早いもので留学を終えてから3ヶ月が経とうとしており、現在は8月末の大学院入試に向け準備を進めているところです。この最終レポートでは、2月の奨学生レポートの続きとして留学生活の報告と総括をさせて頂ければと思います。

私にとって今回の留学でのメインはやはり授業だったと思います。東大では国際交流サークルやピアノサークルなど様々な課外活動に手を出してきたので、イリノイでは勉強に専念しようと授業主体の生活を送ってきました。 留学の目的の一つに全米でもトップクラスの専攻で専門性を高めるということがあり、春学期はCivil Engineering(土木工学)の授業を中心に履修しました。中でも大学院生向けの講義(500番台)を中心に履修してきましたが、そのことで①その分野の先端技術に触れることができた、②レベルの高い院生と議論し切磋琢磨する機会を得られた、③数学やプログラミングなどの基礎能力を向上できた、④トップクラスの大学院の授業でそれなりの成績が取れたことが自信につながった、といった成果がありました。将来海外の大学院へ留学することも視野に入れていますが、その時には今回の経験が大きく活きるのではないかと思います。

2月のレポートでも春学期の授業について書かせて頂きましたが、その後の経過について簡単にご報告させて頂きたいと思います。

・CEE491 Decision and Risk Analysis 確率・統計の授業です。統計の授業とは言ってもCivil engineeringへの応用を目的としたもので、課題や試験でも実例に基づく問題が多かったです。毎週の課題がかなり重く、毎週水曜の夜は睡眠時間を削って宿題と戦っていました。ですがその分力も付きましたし、統計学はかねてからしっかり勉強したいと考えていたので履修して良かったと感じています。

・CEE 498  High-Speed Rail Planning 交通工学というと私の専攻とはあまり関係のない分野ではありますが、以前から鉄道分野に興味があったため履修してみました。Final Projectはシカゴからデトロイト間に高速鉄道を建設する時のルートを、地形や人口データを用いて選定するというものでした。また最後のIndividual presentationでは、日本の新幹線技術とその特徴や経済効果について45分間プレゼンをし、その後のQ&Aでは、新幹線建設と国内政治との関係などについて議論しました。1人でここまでの時間プレゼンする機会はなかなかなく、英語の練習という意味でも良い機会だったと思います。

イリノイ大学では、Civil Engineeringに関する様々な学生団体が活動していて、授業とは別にセミナーやフィールドワークなどの機会が用意されています。ちょうど鉄道について学んだところだったので、帰国直前の5月にシャンペーン近郊にあるMonticello Railway Museumへのフィールドワークに参加することにしました。そこで線路の補修作業を体験したのですが、暑い中の土木作業は体力的にもかなりキツく、身の回りにあるインフラの有難さを身を以て実感しました(笑)

フィールドワーク終了後の集合写真。疲れました(笑)
フィールドワーク終了後の集合写真。疲れました(笑)

・CEE 528 Construction Data Modeling 建設マネジメントに関する授業で、BIM(Building Information Modeling)という3Dモデルを用いた建設管理の手法と、関連するCADソフトウェア(Autodesk Revitなど)の使い方を学ぶというものでした。後述するVisual Sensingの授業と併せて、日本の授業ではなかなか扱わないような内容を学べたと思います。

・ENG 571  Theory Energy and Sustainability Engineering 資源・エネルギーや環境問題に関する授業です。最後のTerm Paperで、自分でテーマを決めてresearchできる機会があると聞き履修を決めました。 Term Paperでは”Introduction of Real Options Approach and its Applications for Wind Power Project Evaluation”というテーマでレポートを書きました。具体的には、洋上風力発電の経済性をリアルオプション(金融工学のオプション価格理論を用いたプロジェクト評価の手法)を用いて評価するというものです。Paperを書く過程でFinanceについても勉強することができ、その知識は帰国後参加しているインターンシップにも活かすことができています。

・CEE 598 Visual Sensing for Civil Infrastructure Engineering and Management 先程のConstruction Data Modelingの応用とも言える授業で、画像処理を用いた建設管理の方法について学ぶというものです(例えば、画像認識技術を用いて建設作業が遅れているところを詳しく把握・管理するなど)。正直これまでの人生で受けてきた授業の中で一番難しかったといっても過言ではなく、Matlabを用いて画像を重ね合わせる課題などは最後まで分かりませんでした(笑) ですがテーマは非常に興味深く、プログラミング能力なども鍛えることができた授業でした。

プロジェクトで作成した建物の3Dモデル
プロジェクトで作成した建物の3Dモデル

Spring semesterでは授業の数もレベルも大幅に上げてみましたが、学習環境が良かったこともあり何とか乗り切ることができました。イリノイの授業では、日本のものと比べ教授が学生との対話を重視し、噛み砕いて分かりやすく説明しようとする姿勢があるように思います。またOffice Hourも充実しており、課題などで分からないことがあれば、教授やTAが質問に答えてくれる場がちゃんと用意されています。これらの学習環境に加え、毎週の課題など普段の努力が評価される授業も多いので、難しくても途中で挫折したり期末前になって大変なことになったりすることもなく乗り切れたのではないかと思います。 またイリノイの授業ではclass participationが重視されており、授業中でも質問したり意見を言ったりすることは全く恥ずかしいことではなく、的確な意見を言って議論の流れを作っていくことが歓迎されています。特にdiscussionの時間は何も言わないとまずい位の雰囲気があるので、とにかく何か発言しようと必死になって授業を聞くようになりました。ですので、知識面でも英語力の面でも授業一つ一つで得られるものは非常に大きかったと思います。

最後になりましたが、このような貴重な経験を与えて下さったJICの皆様はじめ、留学生活を支えてくれた家族や同期の奨学生に、この場を借りて感謝申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。

織田健嗣さんの2014年7月分奨学生レポート

奨学生最終レポート

今回のレポートは最終レポートということで、留学を振り返って、そして日本に帰ってきてから思うことを綴ろうと思います。

<留学の意義>

留学の意義というたいそうな題名をつけてみましたが、実際どのような意義があるのかという事を書きます。

そもそも「意義」という言葉は人間が勝手に作ったものだと私は思っています。 人生の意義、生きる意味、、、それらは所詮人が後から何かを振り返って、それに意味または意義を後付けしたに過ぎないと思います。(突然哲学みたいなことですみません笑)

ですから「留学の意義」というものは数式の答えのように存在するものでなく、それぞれの留学生がそれぞれ振り返って後付した「感想」だと思います。 ですから私の留学の感想、そして何を学んだかをつらつらと書いていきます。

 

まず一つは いろいろな人に出会い変われること

私は今までの22年という短い人生において、人との出会い、人との関わりがもっとも大きく自分に影響を与えてきました。もちろん何か素晴らしい「アルジャーノンに花束を」などの本を読んだり、テニスのウィンブルドン決勝を見たりなどさまざまなものが影響をあたえてはきました。 しかしやはり言えるのは、 人との出会いでその人の価値観や考え方を垣間見た時に感じる、何かしら直接訴えるような感覚が一番大きいです。 特に私は理系ですし、何か新しい面白いことを探求する心が幼いころからあったので、この留学の間に会った、私にとって「全く新しい人」に出会えたことは大きなことでした。

二つ目は 何事もやってみる、飛び込んでみる

ということを実体験として学んだことです。 アメリカに行く前は、アメリカは何か桃源郷のようなハリウッドの中の世界のような 自分が理想とするような世界か何かだと思っている節がありました。しかし実際に行ってみると、予想以上に文化の違いがあったり、価値観が違ったり、人種差別のような普段明るみに出ない暗い部分も見たり、と理想と現実のギャップに驚きました。 しかしこれも実際に行ってみて、体験してみたからこそわかったことです。 今まではアメリカが理想郷のようで日本はそうでもないなんて思っていました。実際日本のメディアなどでは何でも欧米が優れているというような書き方をする傾向にある気がします。 でも留学を体験した今では、日本の良さがよりわかるようになりました。アメリカではキャンパス内で人が死んでも、シカゴで毎日人が死んでも大したニュースにならなかったりします。対して、日本では花火大会の場所とりで芝生が傷んでしまった。なんてことをニュースにしていて、なんて平和な国なんだ。と思いました。笑 今では日本でも、アメリカでも、中国でもヨーロッパでもより客観的に見ることができるようになりました。

またアメリカでは日本よりも新しいことを挑戦することに寛容で応援する文化があります。そのような人達を見て、私はよりまずやってみよう!飛び込んでみよう!やらないよりやったほうが得るものは大きいと感じるようになりました。

いろいろな人に出会いました
いろいろな人に出会いました

<日本とアメリカの違い そして学んだこと>

日本とアメリカの違いはアメリカにいた時も感じましたが、日本に帰ってきてからも感じます。 上記で述べたような日本の平和さ。アメリカの新しいチャレンジに対する寛容さ。

それ以外にも日本人の礼儀正しさなどもあります。この礼儀正しさというのは礼儀=マナー=社会のルール という等式が成り立っているとすると評価するのは難しいとは思います。 つまり日本という国の社会的ルールでは礼儀正しいことは何かというのが決められています。それは文化ともいえると思います。 ではそれはほかの国でも適用できるのか?というとそうではありません。 例えば日本では麺類(そばなど)を食べるときは音を立てるのが悪いことではありません。しかしそれはヨーロッパではマナーが悪いことです。 他人の頭をなでる行為も日本では大丈夫ですが、韓国では侮辱をあらわすそうです。

このようにそれぞれの国、コミュニティ、文化で判断基準が違います。そしてそれぞれの文化基準で相手を判断したりします。これはもちろん個人間でも起こりうることですが、同じコミュニティや文化の場合は大きな問題になりません。 しかし国が違ったり、宗教が違ったり、文化が違うと、その判断基準が違うということを忘れてお互いの所属を否定する事につながったりします。

ここで物理学的に、または数学的にお互いの判断基準で評価することの愚かさを考えます。(物理や数学好きな人だけ読んでださい) お互いスカラー量が1のベクトル(判断基準)を持っているとします。スカラー量が1ですから、お互い同等の強さ(良さ)であるはずです。しかしベクトルだと方向性が違います。仮にお互いのベクトルのずれ角度がθだとします。そうするとお互いベクトルの内角(cosθをかけた値)でお互いを判断し、相手が自分より劣っていると判断し否定し合うのです。 はたから見るとばからしい現象ですが、これが原因で世界中で紛争が起こったり、離婚したりなどが起こっていると思います。(本「宇宙を目指して海を渡る」参照)

ときどき私の周りで中国人や韓国人を否定するような会話を聞いたりします。 しかしこれらは非常に愚かで、悲しいことです。それらの人々は自分のものさしでしか相手を測っていなく、その人達ともかかわった事もないのに否定しているのです。 反日運動、反中国運動。それらはアメリカに行っていたものからすると非常に悲しいです。

中国人の女の子は結構かわいいんですよ(笑)
中国人の女の子は結構かわいいんですよ(笑)

<今後>

今後は私はこれといった、はっきりとした道筋はありません。全くないのではなくいくつかの選択肢があり、それを模索している段階です。 しかしこの留学を通して学んだ上記のようなことを軸に自らが考える道を進んでいきたいと思います。 グローバル人材と叫ばれる世の中ですが、グローバル人材とは英語が話せる海外経験がある人。というような薄っぺらいものなのではなく、より客観的な視点をもって世の中を見渡せる人、そしてどんな人に対してでも相手の気持ちを考え優しく接することができる人なのかもしれません。私は後者のような人間になっていきたいと思います。そして、日本でも世界でも舞台は関係なく活躍しJICを代表するような人物になりたいです。

いろんな世界の人と歩んで行きます!
いろんな世界の人と歩んで行きます!

最後になりますが、これから留学に行く人には大きな声援を送りたいと思います。 そしてJICの皆様には、このような機会を私に与えてくださったことを深く感謝します。ありがとうございました。

小山八郎記念奨学金第38期生 織田健嗣

中沢亮太さんの2014年7月分奨学生レポート

最終レポート          小山八郎記念奨学生38期  中沢亮太

JICの皆様、お世話になっております。38期奨学生の中沢亮太です。8月3日現在、気がつくと帰国から2ヶ月が過ぎました。帰国直後から様々な活動に首を突っ込んでおり、なかなか留学生活を振り返ることができておりませんでした。(逆にホームシックになってしまうため、振り返るのを後回しにしていたという理由もあります(笑)) この最終レポートという機会を利用して、「僕にとって留学は何だったのか」を下記3つの観点から考えてみようと思います。来期以降の奨学生や、今後留学を考えている方の参考に少しでもなれば幸いです。

1.度胸・自信がつき、楽観的になった

2.日本人であることを意識するようになった

3.アメリカを中心に世界中に切磋琢磨できる友人ができた

 

1.度胸・自信がつき、楽観的になった

留学中は様々な困難が降りかかってきました。当初はSubwayのサンドイッチを注文するのもままならない程の英語力でしたので、授業はもちろんのこと日常生活を過ごすのにも支障があり、不安を感じていたのを覚えています。特に、初めてのグループワークで自分一人が議論の内容を理解できずに取り残されてしまった時は危機感を覚えました。また、英語以外の面でも、小野坂先生の家を訪問する道中のオフキャンパスでカツアゲに遭遇したり、夜中に馬鹿騒ぎをするアメリカ人に睡眠を妨害されたり、日本に対して偏った考えを持つ中国人・韓国人を目の当たりにしたり、アメリカの食事に飽きてきたり(実はこれが一番堪えました…)、と色々な場面で苦労をしました。日本語が通じれば、もしくは日本国内であれば簡単に解決できるようなことが、シャンペーンでは高いハードルとなることが毎日のようにありました。 しかし、そうした日本では体験することがないような課題を一つ一つ乗り越えていくうちに、いつの間にか何事が起きても冷静に対処できるようになっている自分に気づきました。尊敬する起業家の先輩がおっしゃっていた表現をお借りすると、「ドラゴンクエストなどのロールプレイングゲームで、一つ一つミッションをクリアしてゴールに向かっていく快感」を覚えながら、人生の困難に正面から取り組めるようになりました。留学以前の自分だったら思考や行動がフリーズしてしまっているだろう修羅場に出くわしても、良い意味で「何とかなるだろう」という楽観性を手に入れたので、乗り越えられる確率が高くなりました。乗り越えられなかった場合でも、それほど深く落ち込まないようになりました。 以上の通り、困難に満ちた留学生活は、僕に度胸と自信を与えてくれました。より人生に対しての向き合い方がポジティブになったような気がします。

2.日本人であることを意識するようになった

イリノイ大学は日本人学生数が少なく、シャンペーンで出会う友人の大半は僕が初めての日本人の友人だと言っていた程でした。そのため、日本人の代表として意見を求められる機会に恵まれました。特に留学中は、安倍政権の下、靖国参拝や日本国民の右傾化などセンシティブなニュースが話題になることが多かったため、いかにして日本の考えや姿勢を正しく伝えるべきか、悩みながらも勉強しつつ考えました。他には、震災や原発の対応、日本電機メーカーの失速、オタク・アニメ文化、日本食文化等について聞かれることが多かったです。日本人として意見を出さざるを得ない環境に居れたのは、非常にエキサイティングかつ楽しい経験でした。また同時に、英語力や政治・経済・歴史についての理解不足から、考えを上手くまとめて伝えられず悔しい思いをすることも多々ありました。 留学は終わりましたが、今後も海外の人々と仕事・プライベートで繋がっていくことは必至なので、引き続き日本についての理解を深めていき、堂々と自国について語れるようになりたいです。

3.世界中に切磋琢磨できる友人ができた

留学を通しての一番の収穫は、世界中にいる優秀な友人たちとの繋がりです。現在はFacebookなどインターネットサービス発達のお陰で、距離的には離れている相手とも簡単に日常的な交流をすることが可能になりました。この時代に留学することができ、本当に良かったなと思います(笑) つい先日、香西選手の世界選手権応援ツアーで韓国を訪ねた時も、韓国人の友人にFacebook経由で連絡をとって再会してきました。

友人たちと。中沢は後段の左端。
友人たちと。中沢は後段の左端。

彼ら彼女らと切磋琢磨しつつ、人生のどこかのタイミングで再会をしたり、一緒に仕事をしたりすることが僕の夢の一つです。2020年、多くの友人を東京オリンピックに招待することが、まずは最初の目標です。今からとても楽しみです。

以上3点でした。紙面の都合上書き切ることができませんが他にも色々と得たものはあり(日本人や日本社会の強みや弱みを知ることができた等々)、総じて今回の留学は僕の人生を豊かにしてくれたと実感しています。 第1回レポートで書いた通り、私の夢は「世界に影響を与えるような事業を興す」ことです。今回の留学により将来の大まかな方向性も見えてきたので、その夢の実現に向けての最初の1歩を踏み出すことはできたと自負しています。上記3点の学びを活かして日々精進していきたいと思います。 このような貴重な機会をくださるとともに支援・応援してくださったJICの皆様、本当にありがとうございました。今後ともご指導ご鞭撻の程よろしくお願い致します。