JICの皆様、こんにちは。2007年 度イリノイ大学小山八郎記念奨学生の八尾泰洋です。
前回の奨学生レポートで自己紹介をできていませんでしたので、まず簡単に自己紹介をさせていただきたい と思います。僕は昨年の春東京大学薬学部を卒業後、東京大学工学系研究科システム量子工学の修士課程に入学し、大学院ではScientific Computation分 野の研究に携わっています。イリノイ大学では、学部時代に学ぶことができなかった、そして大学院での専攻に直結するコンピューターサイエンスの授業を中心 に履修をしています。前回の奨学生レポートの時期から早くも三か月がたち、留学生活ももう半分以上が過ぎてしまったことになります。今こうして先 学期の出来事を思い出しながらレポートを書いていると、すっかり遠い昔のことのような気がしてしまい、懐かしさを感じずにはいられません。三か月の間に、 二つの大きな休暇、ファイナル、友人との別れ、そして新学期の開始など様々なことがありました。簡単にではありますが、このめまぐるしかった日々について お伝え致し たいと思います。
サンクスギビング休暇
10月の奨学生レポート後、まず迎えた大きなイベントは11月中旬のサンクスギビング休暇です。サンクスギビング休暇は前回も少しお伝えしたUniversity YMCAのプログラムの一つであるASB(Alternative Spring Break)に参加し、OHIOにあるLake Metroparkという公園を訪れ、環境保護に関するボランティア活動に参加しました。学生12人で小さな家に泊まりながら、昼はボランティア活動、夜はみんなでゲームなどをして過ごし、充実した5日間となりました。
初日と二日目は、沼地に生えている植物の種を集めるという作業を、皆で泥だらけになりながら行いました。この種は、水の浄化作用を持ち、多くの生物の生活 の場となる沼地を作るために使われるということでした。二日目はペアを作って皆でどれだけ種を集められるか競争をしたのですが、その時は一日目よ りもはるかに効率が上がったとスタッフの方が驚いていました。三日目と四日目は環境保護に関する仕事ではなかったのですが、Lake Metroparkの子供達用のワークショップのクリスマスデコレーションをしました。クリスマスの飾りつけなど、小学生以来だったでしょうか、それに比べたら大がかりなものではありましたが、味気ない部屋が徐々にクリスマス色に染まっていくのはなかなか達成感のあるものでした。
そして、何よりもこの旅行で楽しかったのはメンバーと過ごした夜でした。ゲーム、ダンス、バーベキュー、ショートフィルムの作成など、様々なことをして楽 しみました。最後の夜はメンバーたちがサンクスギビングディナーを用意してくれて、皆でサンクスギビングを祝いました。ターキーがローストターキ ーであるなど、典型的なサンクスギビングディナーとはかなり違ったものであったのかもしれませんが、良いメンバーに恵まれ、最高のサンクスギビングを過ご すことができました。一緒に旅行したメンバーとは旅行後も集まってパーティーやBar crawlを するなど、本当に仲良くなることができました。こちらの学生は流動的で、メンバーの半数近くが交換留学やインターンシップへ行ってしまい、今学期はイリノ イ大学にはいないのが残念ですが、それも影響してファイナル試験期間中でのパーティーも多くのメンバーが集まり、短い期間ながらも親密なつきあい をすることができました。

(写真1:グループのメンバーと)
ファイナル
サンクスギビングが終わると、ファイナルまでもう2週間となっていました。僕はこの時期にファイナルに向けての勉強だけでなく、Honors Courseのプロジェクトが始まり、一気に忙しくなっていきました。この授業は1単位の授業で、教官の指導を受けながらプロジェクトを進めるという授業です。成績は通常の成績ではなくHonors Creditという特別のものがつくという少し特殊なものでした。僕は教官とのコミュニケーションがうまくいかず、テーマをもらうのが遅れてしまい、プロジェクトを始めたのは締め切りの2週 間くらい前になってしまいました。サンクスギビングの前から教官とコンタクトを取り始めたのですが、教官にプロジェクトの題材をメールで送るのを忘れられ たり、伝言を残しても反応がなかったりなどのトラブルがあり、結局サンクスギビングが終わってからテーマが決まりました。それからほぼ毎日このプ ロジェクトに関して文献を読んだりプログラミングをしたりしていたのですが、頑張った結果、最後には教官にも「時間があまりなかったのによくやったね。」 とほめていただくことができました。ファイナルの時期に余計忙しくさせられましたが、この授業を履修した結果こちらの教官ともつながりができて、最終的に は履修して よかったと感じています。
この時期はまた別れの時期でもあり、一学期だけ の交換留学生たちや、前述したボランティアグループのメンバーとの別れがありました。しかし、別れを迎えた友人のうちの大多数は韓国、中国、シンガポール などのアジアからの半期の留学生でした。「また会おう」という言葉をかけるとともに、本当にそのう ち会えるだろうなと感じていました。韓国や中国などは飛行機で数時間、当然ですがアメリカよりも日本にずっと近いところにありま。別れはさみしいものでし たが、様々な国に旅行をするような口実ができたというようにとらえることもできます。

(写真2:友人たちと)
そして授業に関しては、理系の科目を中心に履修をしたので、英語というよりも数学やコンピューター言語がわかる方がずっと重要であったこともあり、あまり現地の学生に対してハンデがなかったのだと思います。最終的に秋学期はGPA 4.0という成績で終えることができました。
冬休み
冬休みはまずカナダを一週間一人で旅行したのち、ニューヨークで年を越しました。ニューヨークでは同じ時期にニューヨークを訪れていたイリノイ大学の友人 と観光したり、有名なタイムズスクエアのニューイヤーカウントダウンを見たりするなど、すっかりアメリカ最大の都市を満喫しました。
そして冬休みの最後の一週間は再びASBに 参加し、テキサスでボランティアワークを行いました。今回のボランティア活動はアメリカが抱えている問題の一つであるメキシコからの移民問題について学ぶ よい機会となりました。ボランティア先の団体はメキシコからの移民に対して様々なサービス(銀行、教育業務等)を提供するNPO法 人で、その団体の宣伝や、移民のための家の建設などの仕事に携わりました。滞在した都市もメキシコとの国境のすぐ近くにあり、アメリカではあるのですが、 ほとんどの人々がスペイン語を使っており、英語を話すことができない人も多い地域でした。それだけでなく、気温も日中は30℃近くまで上がり、ヤシの並木が広がっているなど、気候も含めて、同じ国とはいってもシャンペーンとは全く違うアメリカの姿を見ることができました。本当に暖かくて、さすがに少しは寒かったですが、ビーチで泳ぐこともできました。
近年アメリカの移民対策が厳格になってきており、現在はアメリカとメキシコとの国境の壁の建設も始まっています。このような問題には正直なところ、このプ ログラムに参加するまでは自分とは何の接点もないものでした。しかし、スペイン語しか話さない人とともに働き、プランテーション農場で働く移民の 方々を目の当たりにし、またグループのメンバーとのディスカッションを通して、このプログラムではメキシコからの移民問題について真剣に考えさせられまし た。
この旅行でもう一つ良かった点は、ウィスコンシン大学の学生たちも同じようなプログラムで働きに来ており、彼らと交流ができたことです。中には日本で短期 留学をしていたという学生もいて、まさかテキサスまで来てそのような人に会うとも思っておらず、大変驚かされました。夜には彼らも交えてゲームを するなどし、他の大学にも友人を作ることができたこともこの旅行の思い出の一つです。

(写真3:メンバーと)
三か月の間に2度もASBというプログラムでボランティアをさせていただきましたが、このプログラムを通して、アメリカという国をより知ることができたと感じています。
新学期
テキサスから帰ってきたら、僕はこれまで住んでいたUndergraduate dormitory のISRから、院生寮のSherman Hallに引っ越しました。引っ越しをした最大の理由は、ISRよりも交換留学生たちが多く住むSherman Hallのほうに友人が多かったことです。Shermanに移ってからは、友人と映画を見たり、地下でビリヤードや卓球をするなど、寮生活も楽しんでいます。
それにしても、先学期の開始の時期と比べたら、今学期は二週間がたつのが早かったように感じます。右も左もわからなかった先学期の開始の時期とは違って、やはり今学期は授業にも英語にもある程度なれていたのでしょう。残すところあと4か月、このままあっという間に過ぎて帰る時が来るのかもしれませんが、思い残すことのないように、興味あることには積極的に参加して過ごしていきたいと思います。
2007 年度イリノイ大学小山八郎記念奨学生
東京大学工学系研究科システム量子工学専攻
八尾泰洋
