田中洋子さんの2015年4月分奨学生レポート

【奨学生レポート第3回】

田中洋子

 

皆さんこんにちは。早いものでもう3月も終わりに差し掛かり、長いと思っていた留学生活も残すところ1か月半ほどとなりました。今回のレポートでは春学期の授業の様子や課外活動、春休み旅行について書いていきたいと思います。

 

【春学期授業】

まず授業全般についてですが、先学期は教育学部の授業を中心に履修していたものの、今学期はメディア系の授業、より具体的には映画に関する授業を主に取っています。元々映画鑑賞が趣味だったのですが、作られ方なども把握せずただ漫然と娯楽として接しているよりも、一度学問の対象として捉えてみた方がより深く作品のことも理解出来面白いのではないかと思い、せっかくならば独学するのではなく大学の授業を通して勉強しようと考えたことが理由です。また、後ほど詳しく書きますが、一鑑賞者としてではなく、ほかの人と作品とをつなぐという立場から映画に関わることにも興味がわき、作品の解釈などを学ぶ授業に加え、学生映画祭運営の授業も履修しています。

 

○CMN 368 Sexual Communication

今学期取っている授業の中で唯一メディア系ではない授業です。2学期目、私にとってはイリノイ大学で最後の学期。自分の関心に近い学部の授業だけ調べていて後から実は面白そうな授業を知って後悔するのは嫌だったので、新学期が始まる前に一通り授業の一覧に目を通していたのですが、「へぇ、こんな授業があるんだ」と一際目を引いたのがこの授業でした。私が知らないだけかもしれませんが、日本では性についてオープンに学ぶ機会がなかなか少ないような気がしたので、貴重な経験になりそうだと思い履修を決めました。ちなみに、コミュニケーション専攻の学生の間ではこの授業はなかなか有名らしく、私が履修登録をした時にはどのクラスもほぼ満席で、ぎりぎり残っていた枠に滑り込んだという感じでした。

内容としては、授業名の通り人々が性に関する事柄にどのような形で関わっているかを様々な角度から学ぶというものです。性に対する態度の男女間・人種間・世代間・国家/地域間の違い、性に関する知識の伝達における家族の影響、インターネットが性的なコミュニケーションに与えてきた影響、広告という媒体を通した性的メッセージの伝達、などテーマは多岐に渡ります。

授業の形式は、毎週2,3本ほど指定される論文に基づいて講義が行われ、そこで説明された内容についてディスカッションのクラスでより詳しく掘り下げて学ぶというものです。シラバスを読むと相当の負担があることを覚悟するようにといったことが書いてあり少々不安になるのですが、扱う内容は確かに多いものの、論文の要点がつかみやすいよう教授が要点に関する問いを載せた質問用紙を作成してくださっている上、穴埋め出来るようになっている授業ノートも配布されるため、それらをきちんとこなしていれば授業についていけなくなることはなく、とても親切なシステムになっていると思います。また、教授の講義はテンポがよく、ディスカッションクラスも私のTAさんは時間を最大限使えるようメリハリのある内容の濃い授業をしてくださるので、退屈に感じる時間がありません。

現在は、春休み直後に行われる試験に向けて勉強すると共に(と言っても、現在春休み真っ最中でこの文章も旅行から帰る列車の中で書いているので、どこまで時間が取れるかは分かりません。一応論文はスーツケースの中に入れてきました)4月下旬に提出のレポート執筆の準備をしているところです。このレポートは、一人ひとり違う問いを与えられ、性に関するエキスパートになりきって、資料に基づきその問い(ある人からの性に関する相談内容という形になっています)に答えるというもので、大量に論文を読まないとまともな内容が書けなさそうなので負担は大きいものの、このようなユニークなレポートを課されたことがないのでわくわくしています。

 

○MACS100 Intro to Popular TV and Movies

アメリカの映画・テレビ(今後テレビについても扱うようですが、今のところ主に映画について学んでいます)についてジェンダーやエスニシティ等の観点から分析を加えるという内容です。100番台の授業であるためそこまで高度な内容は扱われず、また履修人数が非常に多いこともありディスカッションクラスもないためそこまでの負担はないのですが、特に各エスニシティの表象に関しては、様々なバックグラウンドを持った人々が織りなすアメリカ社会のありようを垣間見ることが出来、外国人である私にとっては非常に興味深いです。映画の授業というよりはむしろ、映画そのものではなく、それを媒体にアメリカ社会の歴史やその内包する問題について学ぶ授業と言った方が正確な気がします。また、ジェンダー、特に女性の表象についてはCMN368 Sexual Communication で学んだ広告における女性の表象と重なる部分があり、相互に知識が深まります。気にしだすと切りがないというか、深読みしすぎてしまうのも逆によくないのではないかとも思うのですが、授業を受ければ受けるほど今まで何も気を留めてこなかったものの背後にある言外の意味に敏感になり、まだまだ浅い解釈しか出来ませんが観察者としての目が育つ感覚を面白く感じます。今まで観たことのある作品をもう一度観直して以前の自分と今の自分の解釈の差を確かめてみるのも楽しそうです。

授業の形式についてもう少し詳しく書くと、週2回の講義に加え、火曜の夜は出席が義務付けられた映画上映会があります。その週のテーマに沿った課題が毎週出されるのですが、基本的には授業で習った概念を上映会で観た映画と関連付けて自分で改めて説明し直すということが求められます。授業内で毎回選択式の小テストがあり、またオンライン上で提出する試験もあります(実質的には課題とそれほど変わりません)。これらに加え、学生がランダムに5,6人の班に振り分けられ3分間の映画を撮影するというグループ課題も用意されています。春学期の直前にようやく動き出したので、詳細については次回のレポートに書きたいと思います。

写真1_田中

宿題のため映画を観に行ったダウンタウンの映画館です。ハリウッドの大作だけでなくインディペンデント映画や昔の名作も上映しており、度々足を運んでいます。

 

○MACS262 Survey of World Cinema

毎週違うジャンルの映画を扱い、そのジャンルの時代背景や著名な監督、有名な作品、表現方法の特徴、ほかの映画に与えた影響などを学ぶ授業です。今のところ扱ったジャンルは、イタリアネオリアリズム、日本のサムライ映画、ヌーヴェルバーグ、ドイツ戦後映画、ヒンドゥー映画など、本当に様々です。毎週全く異なるジャンルを扱うので、一つのことを深く追求するというよりは、幅広くいろいろな知識を身に着けるという感じで少々せわしない感じはしますが、限られた時間で濃縮された講義をしようという教授の努力が伝わってくる授業です。私はこのジャンルを特に詳しく知りたいというものがそれほどなく、むしろ今まであまり目を向けてこなかったジャンルを含め様々なものに触れてみたいという思いがあったのでこの授業を取ったのですが、同じMACSの授業でフランス映画、ドイツ映画、またネイティブアメリカン映画に特化した授業もあり、専門性が高くなるがゆえに難易度も少々上がるようですが、これらの授業を履修することも選択肢としてありえると思います。

週2回授業があり、前半は丸々映画の鑑賞に使われ、後半は前半で鑑賞し切れなかった分の映画を観た後に教授による講義を受け、最後に教授の立てた問いに沿ってクラス全体で議論するという形で、ディスカッションのクラスはありません。クラス全体で出席者は50人程度いるので、前の方の席に座っていないと発言が難しい上、少数ですが映画マニアのような人もいて段々議論の内容が高度になっていってしまうことがしばしばなので、なかなか毎回は発言できず、もう少し頑張らねばと思っています。

一般的な話として、私は学んだことが教室の外で生かせると勉強する楽しさを感じるのですが、この授業はまさにその典型で、授業で扱ったジャンルの有名な作品のDVDを図書館から借りてきて授業で習ったことをその作品の中に見つけると、今までは素通りしてしまっていたかもしれない場面をこの授業を受けたことで立ち止まって考えることが出来ている、と嬉しくなります。今までは脚本や俳優の演技に専ら注目してしまっていたのですが、それらにも客観的な分析を加えられるようになってきたことに加え、照明の使い方やショットの使い分け、小道具の意味などにも気が回るようになり、映画を観るという行為が何倍も面白いものになりました。あれこれとアンテナを張ってしまい、あまりのんびりと観られなくなるという側面もあるのですが・・・。

評価は授業で扱ったジャンルが全般的に問われるノート持ち込み可の記述試験2回とレポートでなされます。レポートでは好きな作品を各自選び、その作品の一場面に分析を加えるというもので、私は「イヴの総て」という1950年のハリウッド映画を題材にレポートを書き進めています。個人的に映画の感想を作品全体について書く機会は以前からあったのですが、時間にして数分に過ぎないある一場面について詳細に分析を加えるということはしたことがないので苦戦していますが、教授のサポートも手厚いので、その助けを最大限生かして納得出来るものを仕上げられたらと思っています。

 

○MACS464 Film Festivals

映画祭をテーマにした授業です。今まで映画自体には関心があったものの映画祭についてはあまり注意を払ってこず、映画祭に焦点を絞った授業というのも映画理論を学んだりする授業に比べあまり耳にしないので履修を決めました。400番台の授業なのでついていけるか不安もあったのですが、教授の面倒見がよく、学生が全部で15人程度しかおらずアットホームな雰囲気ということもあり、確かに負担はそれなりにあるものの何とか楽しく授業に出ています。

前半は映画祭の歴史的変遷や今日の世界に大小合わせて何千とあると言われる様々な映画祭のうち特にほかへの影響が大きいものについて書籍や論文を通して学んでいきました。よく考えてみれば当たり前なのですが、どんなに良い映画でもお金が生み出せなければ多くの観客に観てもらうことは出来ない、評価の高さも純粋に作品の質のみが反映されているわけではない、そして映画祭(特にカンヌやベルリンなど大規模なもの)は芸術としての映画を楽しむ場というよりはむしろビジネスの場としての側面が強い、それらを知ったことで映画を産業の観点からも捉えるようになったことがこの授業を通しての自分の中での一番大きな変化であるように思います。

外部の方を招いての講演も多く、地域の小中高生対象の映画脚本コンテストの主催者、サンダンス映画祭のスタッフ経験者、シャンペーンの映画協会の方々など、実際に映画の世界で働かれている方の生の声を直接聞くことが出来るのもこの授業の魅力です。

後半は、座学の授業と並行して私たち自身が学生映画祭を運営するというプロジェクトに時間が割かれています。この授業が開講されるのは今年が初めてではないので、一応の方向性やイベントの大枠のようなものは予め決まっているのですが、基本的には私たちが好きなように一から映画祭を作り上げていきます。クラス全体が会場、広報、プログラム、ウェブなどの小さな班に分かれて活動しているのですが、私はプログラム班の一員として、映画祭に作品を出展したい人との連絡や、審査をお願いする方々とのやり取りなどを担当しています。活動が本格化するのは春休みが終わってからになるので、これからが忙しくなりますが、少しでも貢献出来ることを探して良い映画祭にしていければと思っています。

 

【課外活動】

○Epsilon Delta

先学期から参加している教育学部公認の学生団体です。もう一つ顔を出していた同じく教育学部公認の団体があったのですが、こちらの方が知り合いが多く団体の雰囲気も好きなので、今学期からはこちらにだけ行くことにしました。

基本的には2週間に1回ミーティングがあり、これには出席が義務付けられているのですが、そのほかにもメンバーでボーリングやスケートをしに行ったり、ごはんを食べに行ったりと交流の機会が用意されていてなかなか楽しいです。ミーティングでは地域の小中学校の先生や教育関係のNGOの代表の方をお招きしてお話を伺ったり、教育に関連する映画を観てそれに基づき議論をしたりしており、毎回充実した時間を過ごしています。ほかの授業ではなかなか教育に関心のある人に知り合う機会がないので、ここで出来たつながりを今後も大切にしていきたいと思います。

 

○日本映画上映会

先学期からすでに細々と寮で日本映画の上映会を行っていたのですが、今学期になってから同じく日本映画上映会を開きたいと考えている日本人学生の人と知り合い、より多くの人に来てもらえるよう場所を移して新たな日本映画上映会シリーズを始めました。映画を通して日本文化の発信をしたいというのは留学以前から考えていたことだったので、このような出会いに恵まれたことに感謝しています。

先学期の上映会では専らアニメ映画を観ており、私自身アニメは好きですし、それはそれで楽しかったのですが、「日本映画=アニメ」という凝り固まったイメージを壊したいという思いがあり、今回は少しアニメも挟みつつ(来てくれている人の希望でジブリの「かぐや姫野物語」を鑑賞しました)基本的には実写映画を中心に観ることにしました。今まで鑑賞したのは、上記の「かぐや姫野物語」に加え、「用心棒」「東京物語」「HANA-BI」「二十四の瞳」などです。日本映画にそもそもあまりなじみがない人、アニメは好きだけれどほかのジャンルはほとんど見ない人に、日本映画はもっと幅広く魅力ある作品があるということを伝えたいという思いで始めたものですが、私自身名作をあらためて鑑賞することを楽しんでいます。

あくまで趣味の延長でやっていることなのであまり堅苦しくならず出来る時に上映会を開ければいいかなという姿勢なのですが、今のところ毎週のように上映会を開いており人数もそれなりに集まってくれているので、学期が終わるまで楽しく続けて行けたらと思っています。

写真2_田中

イリノイ大学の図書館のDVDコレクションはかなりラインナップがよく、借りたい作品は大抵置いてあります。「二十四の瞳」は置いてなかったのですが、購入希望を送ったところすぐに購入してくれました。

 

【春休み旅行】

春休みの予定をそろそろ立てようかと考えていたところに丁度高校の同級生から東海岸旅行の誘いを受け、二つ返事で彼女と一緒に旅行に行くことにしました。行先はニューヨーク、ボストン、ニューヘイブン。かなり盛りだくさんの旅だったので全ては書けませんが、特に印象的だったことを抜粋して書いていきたいと思います。

○飛行機の大幅遅延!

空港に向かうバスの中で元々乗るはずだった飛行機がキャンセルになり、それより1時間遅く離陸するほかの飛行機に振り替えられたとのメール。ほんの少し前に吉川くんがワシントンに向かう飛行機がキャンセルになりホテルに泊まる羽目になった話を聞いていたので、「まさか自分の身にもこんなことが・・・」とため息をつきつつ、1時間程度の遅れなら我慢しようと思いました。しかもその日シカゴは雪がたくさん降っていてバスも1時間近く遅れていたので丁度よかったとさえ感じていました(感謝祭休暇中にサンフランシスコに行った際、空港に着いたのが離陸40分前でパニックに近い状態で空港の中をダッシュしたという経験から時間には余裕を持たせようと心を入れ替えたので、一応1時間程度のバスの遅れなら大丈夫なように予定は組んでいましたが)。

が、最終的には5時間近くの遅延。度々離陸時間変更のアナウンスが流れ、「ああ、一体いつになったら出発できるんだろう、友達はニューヨークで待っているのに・・・」と旅の出鼻をくじかれてしょんぼりしてしまいました。

とはいえ、何とか無事ニューヨークにたどり着き(ホテルに着いたのは夜の9時頃でした)友達と合流を果たせたのでした。一日目はほぼ移動に費やされました。

 

○ニューヨーク

自由の女神を見に行ったり、セントラルパークをお散歩したり、オペラ座の怪人をブロードウェイで観たり、とニューヨーク観光王道という内容でしたが、特に印象に残っているのはある映画・演劇の製作・配給・興行を行っている企業のニューヨーク事務所の方からお話を伺ったことです。OB・OGのつても何もなく問い合わせフォーム経由で面会をお願いしたので当初はダメ元という気持ちだったのですが、実際にお時間を取っていただけることになり、最初からあきらめず動いてみるものだなと思いました。

私はどちらかというと映像方面に興味があるのですが、ニューヨーク事務所は演劇に特化しており、今まで映画に比べるとそれほど関心を払ってこなかった演劇のことについて詳しくお話を伺えたのは新たな選択肢を知るという意味でとても貴重でしたし、そのほかにも仕事全般に通じる姿勢などもお聞きでき、本当に濃い時間となりました。

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オペラ座の怪人の会場の様子です。生のミュージカルは胸に迫ってくるものがあり、感動して泣いてしまいました・・・。

 

○ボストン

ダックツアーという、水陸両用の車に乗ってボストンの主要な建物をガイドさんの説明つきで見て回るというツアーに参加しました。ちなみに、これはアヒルを見に行くツアーではありません。私はこのツアーに関してはすっかり友達任せで下調べをしておらず、ツアーの名前、河に入るということ、またアヒルグッズがあちこちで売られていることからすっかりアヒルを見に行くのだと思い込んで興奮しており、「ずいぶん陸を走る時間が長かったなぁ、あれ、でもようやく河に入ったけれどアヒルがいない??」と混乱してしまいました。

もちろん、アヒルは見られなくてもツアーはとても面白かったです。ボストンは非常に古い都市なのでまさにこの場所がアメリカ独立の歴史の舞台の一つだったのだと世界史の授業も想起され興味深かったことに加え、一緒にいた友達が都市のことを大学で勉強しているので時々建築物について授業で習ったことを教えてくれ、知識が深まりました。

ハーバード大学とMITもせっかくの機会なので訪れました。ハーバードはさすがアメリカ最古の大学というだけあって歴史を感じるアカデミックな雰囲気で、MITは同じく名門ではありますがやはり想像通り理系の空気が漂い、ハーバードと比べるとだいぶ現代的な雰囲気がする場所でした。大学巡りもなかなか楽しいもので、今後また旅行をすることがあればその地の大学を訪問することが一つの楽しみになりそうです。

写真4_田中

名物ロブスターを堪能しました。うっかり写真を撮り忘れてしまったので、お土産に買ったロブスターマグネットの写真を載せておきます。

 

○ニューヘイブン

私の友人と私の共通の先輩をイェール大学に尋ねにニューヘイブンに行きました。なんと、そこで吉川くんとばったり。滞在時間が短かったため予定調整が出来ず会う約束はしていなかったのですが、もし偶然会うことがあったら、と話しており、実際に遭遇出来てラッキーでした。

キャンパスをじっくりと見せていただきながら昔の思い出話、大学生活について、将来の仕事や結婚のことなどいろいろなことをゆっくり3人で話したのですが、旅の最後にじっくりと内省の時間が取れ、これもまた普段の忙しい生活の中では出来ない、春休みならではの時間の使い方だったなと思いました。

 

今回のレポートは以上になります。留学生活もあと残り1か月半。どんな過ごし方をしたとしても、やはり何の悔いも残さないということは難しいように思いますが、それでも残りの時間を最大限生かして、シャンペーンを清々しい気持ちで後に出来るようにしたいです。

吉川慶彦さんの2015年4月分奨学生レポート

3回奨学生レポート(20153月)

 

JICの皆様、レポートを読んでくださっている皆様、いつもご支援くださいましてありがとうございます。39期奨学生の吉川です。一週間の春休みをニューヨークで過ごし、帰路のバスにてこのレポートを書いています。ニューヨーク滞在中はキャンパスでは食べられないような「ちゃんとした」和食を沢山堪能し、そのクオリティと値段の高さにびっくりし続けた一週間でした。

 

さて、春学期も半分以上が過ぎ、留学生活も残すところほんとうにあと少しとなりました。今学期は一言で言うと、かなり順調に進んでいます。以下、そんな春学期の授業とその他の活動について報告させていただきます。

 

1.春学期の授業について

今学期履修している授業は以下の通りです。

GRK 102 Elementary Greek II (4 hours)

CLCV/PHIL 203 Ancient Philosophy (4 hours)

CLCV 222 The Tragic Spirit (3 hours)

CLCV/ARCH 410 Ancient Egyptian and Greek Architecture (3 hours)

GLBL 392 International Diplomacy and Negotiation (3 hours)

GLBL 328 First Person Global (1 hour)

 

先学期は授業のレベルや量を変に抑えてしまったことから、余計にダラダラする時間が増えてしまったのではという反省があったため、今学期は合計18単位、履修上限のギリギリまで授業を取ることにしました。学期の最初には興味のある授業をピックアップし最初の一週間ですべて出席、シラバスと教科書を睨めっこしながら精査しました。以下各授業に関する簡単なコメントです。

 

・GRK 102 Elementary Greek II (4 hours)

先学期の続きとなる古典ギリシャ語の授業です。授業は相変わらず丁寧で、基礎的な文法事項をカバーしていきます。授業中に扱う課題はギリシャ語→英語の訳がメインなので、個人的にその反対、英語→ギリシャ語訳の課題を先生に提出し、さらなる文法・語彙の強化を図っています。先生自身がギリシャ人で、(現代/古典ギリシャ語で差異はあるものの)感覚的なレベルの指摘までもらえることが貴重な機会だと感じます。

また授業とはあまり関係ありませんが、生徒は先学期から引き続いてのメンバーであるため段々仲良くなり、Classics Clubのイベントを主催したり、St. Patrick Dayの日に昼間から遊んだりと、クラス外での交流も増えていることが嬉しいです。

 

・CLCV/PHIL 203 Ancient Philosophy (4 hours)

プラトンやアリストテレスに関する基礎的な知識が抜け落ちていることに危機感を覚えたので、履修を決めました。大教室での講義形式なのですが、頻繁にReaction Paperが課され(1ページくらいの課題図書の理解度を測る短いペーパーのこと)、またオフィスアワーにも行くようにしているため、学びは大きいと思います。

 

・CLCV 222 The Tragic Spirit (3 hours)

ギリシャ悲劇を翻訳で読む授業です。英語で文学作品を読むことを続けたいため履修しました。先学期の叙事詩に比べ悲劇は、一つあたりの分量も少なく圧倒的に読みやすいのですが、その分エッセンスが濃縮されており味わいの深さは叙事詩のそれに勝るとも劣らずです。一学期間に4人の作者を扱い、それぞれについてReaction Paperとグループプロジェクトが課されています(さらに2回のペーパーがあります)。プロジェクトでは実際に自分たちで悲劇を作って演じたり、現代のキャラクターをギリシャ悲劇の文脈に入れてみたりと楽しい課題がありました。

 

・CLCV/ARCH 410 Ancient Egyptian and Greek Architecture (3 hours)

タイトルの通り、古代エジプト・ギリシャの建築の授業です。端的に言って、今学期いちばん楽しい授業です。授業自体は何の変哲もない一方向の講義形式なのですが、教授の建築にかける熱意がすごく、大画面に映し出される数々の美しいモニュメントにこちら側も圧倒されます。建築物・美術品の背景となる歴史や文化を知ることは、少なくとも視点を提供するという点で、その鑑賞に資すると思うのですが、実際にこの目で観てみたいという思いが日に日に強まります(ギリシャ旅行に早く行こうと毎回授業に行くたびに思わされます)。先日もニューヨークのメトロポリタン美術館のエジプト・ギリシャフロアでは濃い時間を過ごすことができました。

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(写真1:ギリシャ風建築のリンカーン記念館@ワシントンD.C.)

 

・GLBL 392 International Diplomacy and Negotiation (3 hours)

国際政治における外交・交渉論の授業です。上記4つの授業は自分の専攻である古典学に関連した授業ですが、この授業はGlobal Studiesという専攻で開講されており、授業も生徒の雰囲気もまた違ったものとなっています。週2回の授業では基礎的な知識の確認、週1回のディスカッションのクラスでは交渉のシミュレーションを主に行い、内容・形式ともにいわゆる「アメリカっぽい」気がする授業です。

最初のディスカッションのクラスで、ある国に向けて発射されたミサイルをアメリカが迎撃するべきか、見送るべきかというシミュレーションがあり、自分のグループでは迎撃と決まったと私は思っていたのに、グループの一人がクラス全体にシェアした際に実は見送りに決まっていたことが判明するという「事件」がありました。要するに既に一学期を過ごしていたにも関わらず、まだ議論の方向性すら分からない程の英語力だったということです・・・。この事件はかなり衝撃的でしたが、なぜか当時の自分は逆に奮発し、履修し続けることを決めました。また一方でこの間は、小グループで交渉戦略の中間発表をまとめる機会があったのですが、誰も積極的に進めないので結局私が全て仕切り、戦略のアウトラインと各メンバーの分担をまとめて、長々とメールで送るという、これまた別の事件もありました。終始自分が仕切っていいのか、このやり方がベストなのか、という不安もありましたが、結果的に特に反発も起きずスムーズに議論をまとめることができ、自意識過剰に余計な心配をすることはないのだな、と学びました。この気持ちの切り替えは、ひとつの大きな転換でした。ディスカッションも積極的に参加していれば、上のような大きな勘違いは(あまり)起こりません。

この授業は盛り沢山で、学期末には個人ワークの集大成として30ページのケーススタディをまとめることになっています。今年で終戦70年ということもあり、私は第二次世界大戦の終結に関する交渉過程を調べています。見よう見まねですが、英語文献を図書館で漁り、段階的にまとめていく過程からもまた学ぶところが大きいです。

 

・GLBL 328 First Person Global (1 hour)

学期後半のみ、週1日の授業で、自身の留学体験に関するノンフィクションを書こうというユニークな授業です。そのことから履修要件は「留学経験があること」となっており、10人ほどの様々な専攻の学生が集まっています。まだ始まったばかりですが、このイリノイ大学での留学経験を文章化したいと思っていたため、すごく楽しみにしています。

 

・・・と以上、全6コース・18単位、古代のことから現代のことまで、大変充実した履修状況になっています。実際に課題はなかなか大変で、特に春休み前の一週間はペーパーや中間考査が重なりコーヒーの摂取量が増えました。それでも、学期の最初に時間と労力をかけて選んだことで全てやりたいことが出来ており、ぐんぐんと成長している実感があるので、ある意味で苦ではありません(いや苦しいかな)。改めて、「留学したら(自動的に)沢山勉強する」は幻想です。先学期ダラダラしてしまった分を取り戻す勢いで、残り数ヶ月を突っ走ります。

 

 

2.課外活動について

主に留学生向けのイベントに顔を出していただけの先学期に物足りなさを感じ、今学期は特定の活動にどっぷり浸かってみようと思い、いくつか新しい団体に入りました。中でも一番力を入れている二つを紹介します。

 

・ICDI

Intercultural Community Development Initiative、通称ICDIは昨年出来た新しい団体で、生徒間の文化的相互理解を促進し、より皆が「所属していると感じられる(inclusive)」ようなキャンパスを創り上げようという理念を掲げています。メンバーはアメリカ人・留学生が半々くらいで、大小のワークショップを運営しています。ホームページはこちら

学期の始め頃に参加したあるイベントで、「リーダーシップ」がテーマだったのも関わらず、予想以上にDiversityやInclusivenessという側面が強調されていたことが新鮮で頭に引っかかり、もっと詳しく知りたいと思っていたところ、ちょうど友達がICDIに所属していたことから、このテーマを追求できると思い参加することにしました。

 

今の自分がICDIに出会えたことは特に二つの点からラッキーで、日々多くを学んでいます。ひとつは実務的な側面から。もともと「日本で日本語で日本人相手に出来ていたことを、今度は文化や言語を超えてできるようになりたい」というのが私の留学の目標の一つでした。ICDIでは毎週2回のミーティングがあり、そこでは常に発言が求められます。また、3月のワークショップではファシリテーターを務めるというちょっとした大役もありました。これらの機会を通して、意見の吸い出し方、議論のまとめ方、不足の事態に臨機応変に対応する力などなど様々なスキルを磨いています。もともと自分はこうしたスキルに長けていると思います。それでも英語となると一つレベルが落ちるのが如実に分かります。幸いコツは掴んできているので、場数を踏んで鍛えるしかありません。

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(写真2:ICDIでの活動風景)

 

そして、もうひとつはもっと抽象的な側面から。上述の通り、Diversityつまり多様性についてもっと深く知りたいというのがICDIに参加した理由でした。そして実際に毎回のワークショップから、それ以上に普段のICDIでの活動そのものから、この多様性というテーマの奥深さ・難しさを実感しています。まだまだ答えは出ていないのですが、オープンクエスチョンでたとえば「多様性はなぜ必要か」ということを考えてみましょう。よく無批判に、多様性が大事、これからの時代はダイバーシティだ!(?)などと言われますが、多様性のあるチームで集まるよりももしかしたら同質的な人が集まったグループの方が成果が出るのではないでしょうか。たとえば「英語にハンデのある留学生を交ぜるより、アメリカ人だけでディスカッションをした方が効率的ではないか」、というのは留学生の自分にはグサッとくるクリティカルな問いです。これについてどう答えられるでしょうか。ICDIは、コンピュータサイエンス専攻の学部生からロースクールの学生まで分野・国籍・学年が多様なメンバーで構成されています。活動内容が活動内容なだけに、この団体では多様性はかなり役に立っており、とりわけアイデア出しの段階では多様なバックグラウンドが必要不可欠です。しかし、議論の段階になるとやはり英語がより上手く話せる人がよく話している印象も拭えず、なかなか安易な一般化もできません。

もしかしたら問いの立て方そのものが違うのかもしれません。「多様性はなぜ必要か」ではなく、「多様性はどうしようとそこにあるものなのだから、それをどう活かすか」を考える方が生産的なのかもしれません。私は日本ではずっと同質的な環境におり、アメリカに来て色々な人種や国籍をもった人が集まる環境に身を置いて初めて、多様性について考え始めました。アメリカは多様性のある国だなあ、そこでこういう活動ができて嬉しいなあ、と思っていました。しかし、日本でも目立ちづらいかもしれませんが、多様性は確実にあり、それを活かせばもっと創造的なことが出来たり、大きな問題が解決出来たりするかもしれません。また、今後移民や観光客など日本に来る外国人も増える中で、もっと分かりやすい多様性も増えるでしょう。その状況にどう対応していくか、多様性のメリットをどう活用していくかは、一人一人が考えるに値することであると思います。答えが出ていないのでまとまりが悪いのですが、その取っ掛かりを得られているという点で非常にICDIでの活動に意義を感じています。

 

・CU Trickers

ICDIとはうってかわって運動系の活動です。CU Trickersでは、Trickといって、バク転やバク宙といったアクロバットとキックなどを混ぜたものを練習しています。実は全く初心者というわけではないのですが、それでもパフォーマンスを披露できるレベルではないので、私自身はむしろ個人的趣味としてバク転などを綺麗にできるよう、上手い学生に教えてもらっています。この間、夏のように暖かくなったある日にキャンパスのQuadでみんなで芝生の上をくるくると飛び回っていたのは気持ち良さげでした。今後Quadでの練習(というか楽しい集まりですが)も増えると思うので、レパートリーを増やしてもっと参加できるようにしたいと意気込んでいます。

 

 

3.所感

今学期は授業に課外活動にと、ようやく人並みのスタートダッシュを切れた感があり、冒頭にも書いたように、かなり順調に進んでいるように感じます。随所に先学期の反省が見えるように、また前回の奨学生レポートがどことなく暗かったように(読み返すとほんとに暗い!)、先学期はやはりなかなか上手く行っていなかったのだと思います。人生初めての「挫折」は思い描いていたようなポッキリと心が折れるようなものではなく、じわじわとボディブローのようにくるものでした。しかしその経験がバネになり、今学期そしておそらくは帰国後もずっと大事になってくることが見えたとも思います。先学期と今学期の違い、それは自信の有無です。

写真3脳波測定 (1)

(写真3:脳波測定の実験に参加)

 

自信があれば何でもできる。チャンスにも積極的に飛び込めるし、人と話すときにも明るく振る舞えるし、何より毎日を楽しく過ごすことができる。今までは私には無根拠の自信があったと思っていました。それで自分をアピールしなければならない局面でも上手く立ち振舞えていました。自信は主観的なものです。その無根拠の自信のストックはいつの間にか減っており、昨年それはゼロに近付きました。

では、根拠のある自信はどうやったら手に入るのでしょうか。色々なやり方があるでしょうが、ひとつ確実なのは、成功体験を積むことです。特に私の場合、継続的にエネルギーを傾け、何かを成し遂げたという経験に今まで乏しかったため、それが出来れば自信につながるのだと考えました。ここでいう成功体験は、他者からの評価ではだめで、手を抜かなかった、成し遂げたと自分で心から思えなければ自信につながりません。主観的なものですから。一方で成し遂げる経験の種類は何でもよく、一度達成できれば汎用性を伴って他の分野でも再現できるのではないでしょうか。さらに言うと、ここで経験は個性にもつながり、人生における軸にもなります。お得ですね。

 

・・・とまあ、そんなことを学期の初めに考えていました。そして授業も課外活動も(ほとんど)毎日通うジムも、こうした心持ちのもと臨むようにしました。はたして自分の中に変化は?

あと2ヶ月後、すべてが終わってからでないと何とも言えませんが、少なくとも自信は取り戻してきたように思います。そして今回は明確な根拠のある自信ですから、無根拠な過去のそれよりかは幾分心強いかもしれません。一方で自分に向き合うからこそ、至らなさも見えます。ちょうど春休みでリフレッシュできたので、今後も気を抜かず、精進していきたいと思います。

 

 

2015年3月末日

小山八郎記念奨学制度

39期奨学生 吉川慶彦

小松尚太さんの2015年4月分奨学生レポート

お世話になっております、小山八郎奨学金奨学生39期の小松です。イリノイの冬もようやく終わりを告げ、暖かな日が続くようになりました。私は、ドアノブに触れるときにバチッとする静電気を除けば冬は大好きな季節なので、冬の終わりについて寂しさを覚えるタイプの人間です。

以下、冬休み、春学期、春休みの模様をご報告いたします。

 

■冬休み

冬休みは丸々ニューヨークでのんびりと過ごしました。ひたすら観光し、各地をめぐり歩きました。秋休み・冬休み・春休みともに現在住んでいる寮からは締め出されてしまうため、それが出不精で観光にあまり行かない私には程よい強制力として働くのでした。

ライフネットの全社長の出口氏曰く、人間は「人から学ぶ、本から学ぶ、旅から学ぶ」以外には学ぶことができない動物だそうです。ニューヨークという時折人と他愛もない話をし、過ごす日々は、今から考えるとなんとも贅沢な日々であったなあと、つくづく思います。

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マンハッタンの新たなシンボル、1 World Trade Center

 

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ニューヨークは美術館も数多く有り、なけなしの感性を刺激してくれました。

 

■今学期の授業

今学期は以下の4つの授業を履修しています。もう一つ院生向けの授業の履修も当初は考えていましたが、自身の専門とかなり違う方向のものであったため、途中でdropしました。

 

ACE261 Applied Statistical Methods

先学期の授業の反省から、統計について今一度復習したいと思っていたため、この授業を履修しています。日本の授業はとにかく数式が先行する授業が多かったのですが、こちらはどちらかと言えば数字を使った具体例をこれでもかと提示し、学生の手を動かすことを大事にしているように思われます。

 

ACE310 Natural Resource Economics

私の専攻が「農業・資源経済学」にも関わらず、資源経済学についてしっかり学んだことがないので履修を決めました。その名の通り、森林・鉱物・漁獲などの資源について、それぞれの特徴およびどのように配分すればよいかを学びます。時間を通じた資源配分を考えるという点で、他の経済分析とは異なるようです。

 

ACE451 Agriculture in International Development

まさに自分の興味関心と合致した授業です。途上国の開発における農業の役割とは何か、というテーマのもと講義とディスカッションを行う授業です。農業経済を学ぶ一方で日本の農業にどこか閉塞感を感じていた頃、農業はどうも途上国開発に関係があるらしいということをたまたま履修したゼミで輪読した論文で学びました。そこから、自身の「農業と開発」というテーマに強い興味と関心を持ち始めたような気がします。

しかしこうした授業で学べば学ぶほど、実際途上国では何が起きているのかをこの目で見たくなってきます。後々にも述べますが、こうした開発に携わりたいという人間にとって、現場体験・現場感覚というものは必須のようです。

 

ECON471 Introduction to Applied Econometrics

先学期、授業にて開発経済の論文を読み込んだのですが、そのときに統計・計量経済のことについて理解が不足していると実感していました。2週に1度、大量のproblem setが宿題として課せられており、統計ソフトの前でにらめっこを続ける日々です。

 

■日本酒イベントの開催

2月20、21日と、現地の方向けの日本酒イベントを開催しました。私は日本にいたときに「学生日本酒協会」(https://www.facebook.com/Student.Sake.Association)という活動を行っていました。

そのため、「海外でもこうしたイベントができるといいなぁ」と留学を考えていたときにおぼろげ考えていました。それが今回このような形で実現し、感慨深いものがあります。日本酒という日本文化を、海外の方に伝え楽しんでもらうことが出来る、またとない機会だからです。

 

今回のイベントは2日間に渡り行われました。1日目は懐石料理と日本酒のコースを振る舞うディナー、2日目は立食形式で日本酒を振る舞いました。マグロをメインとした懐石料理に日本酒という、日本人ですらなかなかありつくことができない大変贅沢な会と相なりました。というのも今回、近畿大学で養殖されているマグロを取り扱う坂上さんと、CAFE OHZANの榎本さんと一緒に開催するご縁に恵まれたからです。JICのネットワーク、恐るべしです。

 

1日目のイベントは、日本酒の説明を私が担当し、料理の説明を同じ期の奨学生である吉川くんが担当しつつ進行しました。一応日本酒の基本的な部分については英語で説明できるよう準備はしていたのですが、味の表現方法は全くといっていいほど分からず、dryやsweetやfluityぐらいしか知らず苦労しました。事前に渡された日本酒リストの味の表現方法を見て、大変勉強になりました。

 

しかし頭で分かっているとはいえ、それを英語で即座に説明することはなかなか難しいもの。一番考えさせられた質問として、何が日本酒の価格を決めるのか、というものがありました。日本酒の価格は高いものもあれば安いものもある。その違いは何によって生み出されるのか、というものです。吟醸酒・大吟醸酒(日本酒の原料である米をより多く削ることによってより味がクリアに、香り高くなった日本酒のこと)ほど一般的に高くなるということは分かっていましたが、中には十四代や獺祭と言ったプレミアが付いてしまうような高いものも散見されます。これはどう説明できるのでしょうか。勉強不足ゆえ、上手く説明することができませんでした。

 

2日目のイベントは1日目と打って変わって、カジュアルな雰囲気の立食形式で行われました。参加者の数も20名だった前日に比べ60名程度と3倍近い数となり、日本館の中はかなり賑わいを見せていました。事前予約は開催のかなり前で打ち切られていたようです。懐石料理をつまむことができ、その上日本酒も飲むことができる。参加者の心をばっちり掴んでいたようです。

 

今回も私が日本酒の説明を行いつつの進行となりました。日本酒をサーブする間も、多くの質問をいただきました。例えば、前に出した日本酒との違いは何かというもの。これに対し、的確にコメントをするのは非常に難しいです。お酒のリストの中には私が飲んだことがないものもあり、事前に少し試飲をしたものの、それをどう英語で表現すればよいか言葉が浮かんできません。だいたいこんな感じかな~、と説明をするのですが、向こうにはあまり納得をもって受け入れられていない様子。そんなときの魔法の言葉が「感じ方は人によって違うので、あまり気にしないで」というものです。これ、非常に便利な言葉でどんな状況でも使えるのですが、はっきり言うと何も言っていないに近く、敗北同然です。その後、厨房に戻って携帯を開いて辞書を引いたのは内緒です。

 

と、そんなこんなで2日間にわたる日本酒イベントは無事終了しました。以下、イベントを通じて思ったことを。

 

とにかく説明が求められました。これに関しては、今回のイベント、日本酒に限りません。ルームメイトや友人にも、日本について、私の専攻について、そして自分自身の考えについて聞いてきます。それに関して最もショックだったのは、Thanksgiving breakの際ルームメイトのおばさんの家に居候させてもらったとき、その夫から「アベノミクスについてどう思うか」と問われたときです。なんとなーく経済問題については考えていたつもりですが、言葉に詰まります。金融政策がどうのこうの、財政、成長戦略がどうのと拙い英語で説明した後に、さて私の意見を述べるものの、ぐちゃぐちゃ。いや、参りました。己の勉強不足や、日頃からの情報への感度不足をこれほど悔いたことはありません。

 

逆に、同じく居候していたときにお酒について話をする機会があったのですが、そのときはスラスラと話をすることができる。日本酒について、そして日本酒が若者にとって相手を潰すツールとして使われていることについて、そしてそれに憤慨していることについて…。これは、もともと自分がそのトピックについて考えているからこそ話をすることができるのでしょう。

 

もちろん同じ日本人に対しても説明する機会はありますが、どこか文化的な面で暗黙的に了解できている部分もあるように思います。しかし海外の人にはそれが無いから、そこから説明しなければならない。すると口が追いついてこない。こういう状況に何度も陥るわけです。

 

彼らにしてみれば、私という窓口を通じて日本について知ろうとしているのですから、その私がヘロヘロだと日本に対するイメージはどうなってしまうのでしょうか。これは考え過ぎな部分もあるかもしれません。しかし、実際イリノイ大学はおろか、アメリカへ留学している日本人が相対的に少ないことを考えれば、まさに一人ひとり日本の窓口としての役割を担っているといっても過言ではないように思われます。

 

今回のイベントを通じ、物事について理解を深めようとする姿勢、それを説明できるようにする姿勢が重要であることを再確認しました。これは日本酒といった日本文化に限る話ではないでしょう。冷静に考え、自らの無知を自覚していれば明らかなことなのでしょうが、気づくのが遅いでよね。ああ、もっと勉強しないと。…話が日本酒イベントから少し飛躍してしまいました。

 

最後に、「日本酒のイベントがイリノイで出来るといいなぁ」というぼんやりとした野望がこうして実現できたことは、やはり感慨深いです。せっかくの留学の機会なのですから、学業であれ課外活動であれ何か一つ達成できた、というものがあるといいですよね。

 

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イベント中の様子。みなさんホントよく飲む。

 

 

 

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イベント終了後の記念撮影。

 

 

■春休み

春休みは最初シカゴに数日滞在したのち、首都・ワシントンDCに行っていました。今回ワシントンDCでの滞在は

・出発前にお話することができた、IMFに出向しているの大学の先輩とのお話

・将来国際機関で働きたい学生向けのキャリアフォーラム

という明確な目的があったため、出発前から非常に楽しみにしていました。しかし現地に到着してからは、

・主な博物館が無料

という事実に気づき、限られた日程で全てを堪能することは不可能でした。さらにワシントンDCは日本から桜を寄贈されていることで有名で、3月後半から4月初頭にかけて桜祭りが毎年行われています。アメリカにいながら春の薫りを楽しみたいという思惑は、滞在した一週間が時折雪が舞うほど非常に寒い時期と被ってしまったことにより裏切られました。もう一度いい時期にゆっくりと来ようと、ワシントンDCを去る時心に誓うのでした。

 

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ワシントン記念塔。中もエレベーターで登れるようですが、チケットは朝早くに全て配布が完了してしまっていたようです。

 

今回、IMFの先輩および世界銀行でのキャリアフォーラムのお話でひしひしと必要性を感じたのが「専門性」というものです。今回のフォーラムでは世界銀行の職員の方が主でしたが、世界銀行にかぎらず国際機関での採用は、「こういった人が欲しい!」とピンポイントで当てはまる人材が求められているようです。その要求に対し、自身の能力・専門性がどこまで組織に貢献できるかが問われるわけです。国際機関で働くってカッコイイという願望、働きたいという熱意も重要である一方、自身の専門性を武器に殴りこみにかかる気概がないと、まずやっていけないと。

 

国際機関に限らず、こちらに来て色々な人の話を聞いていると同じような話を耳にします。自分が今どの大学・会社に所属しているというよりかは、自分はこういったことができる、だから今こうしたことに取り組んでいるのだと。Thanksgiving breakでシアトルに居候していたとき、ルームメイトの叔父も同じようなことを言っていました。今まではどこどこに行きたい、やってみたいが先行してきたのだが、これからは世界に向かて勝負していく上では、自分だけが発揮できる価値が必要になってくると。これは、自分の中で考えていたようで、あまり考えていなかったことのように思います。もちろん「ここで働きたい、こういうことを成し遂げたい」という欲求を持ち続けることは大事なのでしょうが、あるときに「これをやりたい」から「これができる」が求められる転換点が訪れるのでしょう。いや、訪れるように力を蓄えなければならないのでしょう。

 

…ということを、職務経験もなく、学業成績もそんな大したことのない人間が言える資格は全くないのですが…。自分にできること・強みは何だろうか、またどういったことを自分のオリジナルの能力としていけばよいのだろうか。そういったことを考える今日このごろのようです。上記の内容は、あまり留学には関係ありませんでしたね。

 

しかし留学とは贅沢ですね。ああでもない、こうでもないとゆっくり物事を考えることができるのですから。そうした時間があとわずかというのは、やはり寂しいものです。残りの留学生活を有意義にするべく、一日一日過ごすのみです。

 

以上をもって、第3回目のレポートとさせていただきます。

 

勝田梨聖さんの2015年4月分奨学生レポート

JICの皆さま、そして本レポートを読んでくださっている方々、こんにちは。いよいよ4月を迎えようとするシャンペーンでは、数週間前の天気とは一変して雪もすっかり溶け、暖かい日差しのもと駆け回るリスの姿も再びよく見かけるようになりました。早いもので、留学生活も残すところ2か月を切りましたが、今回のレポートでは、(1) 春学期の授業, (2) 冬休み, (3) 寮生活、課外活動についてご報告いたします。

 

 

(1) 春学期の授業

今学期は、以下の授業を受講しています。

GLBL350  Poverty in a Global Context (Prof. Brian Dill)

MACS (/PS)389  International Communications (Prof. Luzhou Li)

PS 282  Governing Globalization (Prof. Konstantinos Kourtikakis)

PS 280  Intro to International Relations (Prof. Ryan Hendrickson)

EPY199  Leadership in Global Engagement (Prof. Jenn Raskauskas)

 

 

GLBL350: Poverty in a Global Context (Prof. Brian Dill)

この授業は秋学期に受講したGLBL250の発展編で、国際開発について学んでいます。貧困の測定方法や定義を学習した後、貧困を生み出すとされる原因、例えば地理、植民地主義、政策や機関、汚職などのトピックを週ごとに扱い、80分間ディスカッションをベースに授業が進みます。今学期最も楽しんでいる授業ですが、同時に、読み物や課題の複雑さ故に最も苦しんでいるコースとも言えます(笑)しかし、いつか時間のある時に読もうと思いつつ、なかなか手を伸ばせずにいた開発学界の著名人であるJeffrey Sachs, William Easterly, Acemoglu, Daron and James A. Robinson等の書物がリーディング課題で出され、それらを基に教授やクラスメートと議論することで、新たな考え方や発見にふれることができます。また読み物の他には、4回にわたるproject paperが特徴的です。世界銀行やその他の機関が公表する国別データを用いて、自分が選択した国の貧困を分析する課題で、マラリアの蔓延率、経済インフラの普及度、耕作地面積など細かなデータを引っ張り出し、立てた仮説を立証していくのは骨の折れる作業ですが、貧困について多方面的に考えられる良い機会となっています。

 

MACS (/PS)389: International Communications (Prof. Luzhou Li)

この授業はメディアをグローバル化や政治と絡めて考察するコースです。履修に迷うなか興味本位で授業に参加してみたところ、その回では当時世間を席巻していたフランスの風刺週刊誌Charlie Hebdo襲撃事件と表現の自由を扱っており、メディアの観点から世界を読み取るのはおもしろそうだと思い受講を決めました。トピックは文化帝国主義や途上国開発、冷戦、テロ、またジェンダーなど多岐にわたっています。毎週金曜日はドキュメンタリーを鑑賞しますが、中でもアメリカの有名なアイドルオーディション番組”American Idol”のアフガニスタン版”Afghan Star”での女性の描かれ方を記録したドキュメンタリーでは、グローバル化を推し進める米系多国籍企業が(「女性は人前で踊るべきではない」などの)アフガニスタンの伝統的慣習と衝突している様子が描かれており、非常に印象に残りました。またこの授業では、個人的に授業後やオフィスアワーに教授と話しに行くことが多く、昨今の日本や中国のニュースメディアについて議論したりもしています。

 

PS 282: Governing Globalization (Prof. Konstantinos Kourtikakis)

このクラスでは主に、グローバル化が国家主権や政策、人権に及ぼす影響や、国家以外のアクターのガバナンスについて学んでいます。Advanced Writing Classと呼ばれるペーパー課題が重い履修科目ですが、その分書き方の指導もきめ細かいです。

授業ではJoseph StiglitzやSaskia Sassen などの名の知れた学者の書物を講義のベースとしています。特に、移民問題を社会全般に敷衍して考察する授業では、都市開発や自治体政策について新たに深く考えるきっかけにもなりました。(ちょうど講義が、移民政策についてのある新聞コラムが論議を交わしていた時期とぴったりと重なったのは少し不思議な偶然です。)

 

PS 280: Intro to International Relations (Prof. Ryan Hendrickson)

国際関係学の入門ということもあって受講を迷っていましたが、教授の研究対象であるNATOや米国の安全保障政策に主眼を置いた国際政治学の講義に興味を持ち、履修することにしました。冷戦やテロ、軍事政策などを特に強調して詳説するのはアメリカの大学ならではだと感じます。またこのコースで特徴的なのは、TAによる毎週金曜日のディスカッションです。Foreign Affairsなどからの引用記事を読み、それについて著者に賛成派、反対派に分かれて議論をします。だいたいは、リアリズム、リベラリズム、コンストラクティビズムなどの学派の立場に沿って意見を述べますが、TA(Teaching Assistant)を筆頭にクラスメートの多くがリアリズムに傾倒した考えが多い印象を受けます。そのなかで、説得力があり論理性に基づいた新しい観点をオファーするために、新聞、ラジオをより積極的に活用するようになりました。しかし、テロリスト掃討作戦に使われる米国の無人偵察機が話題に上がった時は、賛成派23対反対派2のマイノリティ側に立ちましたが上手く効果的に立場を説明できず、授業後に「ああ言えばよかった」「こうも考えられたのに」と猛省した記憶があります。残り4回での改善に期待です…。

 

EPY199: Leadership in Global Engagement (Prof. Jenn Raskauskas)

この授業は私の住む寮PARで開講され、ゲストスピーカーやクラスメートの30分プレゼンを通じて、グローバルリーダーシップについて考えを深めるコースです。澳門大学からの交換留学生と受講しますが、他の授業とは違いお菓子を食べながらの和気あいあいとディスカッションをするといった、非常に打ち解けた雰囲気です。グループワークでは、私たちのグループは、アメリカとアジアでの礼儀や対人関係に対する異なる観念から生じる挨拶の違いについて、4月末のUndergraduate Research Symposiumにてプレゼンテーションをすることになりました。現在はクラス外で集まってリサーチを進めている最中です。

 

 

今期の授業は上記の通りですが、先学期と比べてディスカッションも増え、以前よりも積極的に発言するようになったのは一つの成長ではないかと感じています。しかし、まだまだ授業後は反省の日々です。”Better than the last time” を目標に今後も邁進したいと思います。

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(写真1: 春の訪れとともに、Main Quadでも学生がくつろぐようになりました。)

 

(2) 冬休み

冬休みの一か月間は寮からkick outされるため、どこへ行こうか思案した結果、中米のグアテマラへ旅行することにしました。「なぜ、グアテマラ?」と会う友人皆に聞かれましたが、本来は開発についてフィールドワークをするためでした。しかし(!)、グアテマラ人の友人とゴム農園のリサーチをする予定が、私の期末試験の関係でどうしても日程が合わず。また、グアテマラ事務所のJICA職員の方とお話できるとのことで楽しみにグアテマラへ渡ったものの、年末年始ということもあって先方様がお忙しくされていたため訪問も叶わず。結局、「26日間グアテマラを旅しながら暮らす」ことになりました。首都は(噂によると)世界で12番目に危険な都市、言語は(ほとんど喋れない)スペイン語で英語は通じないということもあり、女1人で動き回るのには不安もありましたが、今までに訪れた国のなかで最も刺激的で言葉に表現しがたい愛着が湧いたのが素直な感想です。

初めて足を踏み入れるラテンアメリカのグアテマラ。街では陽気な音楽にあふれており、農村部では色彩豊かな野菜がずらっと並んでいました。毎日外食というわけもいかないので、市場で値引き交渉をして生鮮食品を買って、宿泊先に住む世界一周中の方たちと自炊生活を楽しみ、旅行というよりは「暮らす」という感覚に近かったように思います。

アメリカから輸入した中古スクールバスを改良した「チキンバス」が地元民の足で、早朝のバスに乗って都市部へ物を売りに大量の農村民が移動します。バスの治安はあまり良くなく、強盗が多発し、また道路自体もきれいに整備されている状態とは言えません。小売店が連なる都市部は、排気ガスで曇っており、環境への配慮というよりは経済発展を優先している印象でした。市場では同じようなものが似たような値段で売られています。地元民がどのように選んで買い物をしているのかは分かりませんでしたが、開発プロジェクトの一環としてマーケットの差別化がすすめられているそうです。さて数年後また訪れた時にはどれほど変容しているだろうなどを考えながら、毎日ぶらぶらと歩きまわっていました。

 

片言のスペイン語でホステルスタッフに話しかけても何を言われたか分からず、近くにいた男性を連れてきてヘルプを求めたり、満員のバス(40人容量のはずが70人は既にいました)で、運転中のドライバーをまたいで運転席と窓の間の小さな隙間に入れられたりと、貴重な経験と冒険の一か月間でした。

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(写真2: 世界で一番綺麗な景色が味わえると言われているグアテマラのアティトラン湖)

 

 

(3)寮生活、課外活動

朝一番の「今日の気温何度?」の会話(とそれに伴う落胆または喜び)をルームメイトと交わしてから、支度をして教室までの道を歩くのが習慣となっています。豪雪、または道が凍っている日もありましたが、最近は毎朝とてもいい天気で気持ちが良いです。狭い部屋での共同生活、(自分だけの空間が欲しい…)と切実に思う時もありますが(笑)、ルームメイトや同フロアの友達と他愛もない話で盛り上がれる時間はそれ以上に貴重なひと時でしょう。

春学期も始まり、シャンペーンでの生活にはすっかり慣れましたが、この二カ月たくさんのイベントがありました。

 

<日本館 懐石・利き酒イベント>

イリノイ大学日本館にて2月20日に懐石料理を、21日には利き酒イベントを開催しました。はるばる日本からお越しくださったのは、東京でCAFÉ OHZANを経営する榎本鈴子さん。シェフが腕を振るった近畿大学養殖マグロの懐石料理は、食材や調理方法のみならず、色彩や配置、お皿にも細かく気が配られた、まさに芸術品でした。私と田中さん女子組はサーブが中心でしたが、お運びした時のお客さんの驚嘆した顔は忘れられません。そして、(少しつまむことができたのですが)頬の筋肉が一瞬にして緩むほど美味しかったです。ここイリノイ大学に来て以来、毎日ほぼ同じ寮食のため「食べる」ことを疎かにしていましたが、繊細に盛られた懐石料理を前に和気あいあいと談笑するお客さんの顔を見ていると、「食」がもたらす力の偉大さに改めて気づかされました。

 

そして翌日午後からは同じく日本館にて利き酒イベントが行われます。チケットは売り切れ、会場は大盛況でした。私はお酒にさほど詳しくないのですが、驚いたのは、なんと小料理の種類の多いこと。「おつまみで、ここまでのクオリティー?!」と驚きましたが、日本料理をあまり知らない外国人にとって、様々な日本酒を嗜みながら、彩り豊かで綺麗に盛られた小料理一品一品を見て食べて楽しむのは最高のひと時だったのではないでしょうか。

 

この二日間を通して、日本語を知らない友人でも大抵知っている”Kawaii”以外に、これからは”Oishii”という言葉もより広がるようになればと、ふと感じました。そのためにも、イリノイの友達が日本へ訪れた時は、是非日本の食についても伝えたいと思います。

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(写真3: 利き酒イベントでの小料理の一部)

 

<Power Africa>

ACES Libraryの会議室で催された、アフリカのエネルギー開発のパネルディスカッションに参加しました。Power Africaとは、2013年6月にオバマ大統領が打ち出した、より多くのサブサハラアフリカの人々がエネルギーにアクセスできることを目標にした政策です。このイニシアティブに65億ドルが投入されたほか、エネルギー部門の企業も90億ドルを投資し、安定した電気供給の他、より効率的なエネルギー創出を目指しています。Power Africaアドバイザーやエネルギー開発を専門とする教授、モザンビーク出身の社会活動家など、世界各地から集まり、Power Africaの行方や欠点などを議論しました。興味深かったのは、プロジェクトのもと建設されたあるダムが環境を破壊し、そのエネルギー約80%が、地元民ではなく関係する外国企業へ輸出されているという事実です。パネラーの”Think about WHO is benefited from this project.”という言葉が強く胸に響きました。

 

 

<Illinois Leadership Program>

EPS199で参加必須だったという理由もありますが、ルームメイトからのお勧めで、私もこのプログラムに参加してみました。いわば、リーダーシップ育成プログラムで、朝9時からの8時間、ひたすらグループでのワークショップとディスカッションを続けます。幸いなことに、私のグループは出身国のバランスが取れており、個人的にはワークショップ自体よりも、その休憩時間に出身国の文化や政治、問題点について話し合ったことが一番刺激的でした。現政権のもとでの各国のfreedom of speechについて議論したり、地元の価値観や慣習と関連させながら女性の地位について話し合ったりは、Political Science専攻でもなかなかない機会です。学生の問題意識の高さに驚き、同時にもう少し上手な英語で日本の現状を伝えることができなければという焦燥感にかられました。あまりにリーダーシップに関係ない話をしていたので、最終的には、「その各国の問題に、自分がどういうアプローチをとるか」で話をまとめました。

 

 

…と、春学期2か月間、おかげさまでとても元気に過ごしています。皆がSt. Patrick Dayで酔い狂う姿を横目に、友達と5時間カフェで喋り続けたり、YMCAのイベントにて伝統舞踊を鑑賞しながら多国籍の料理を味わったりと、なんとも私らしい生活を確立できるようになったのは先学期との違いでしょうか。さて春休みが終わればまた試験と課題の波が押し寄せてきますが、残された日々をマイペースに楽しんでまいりたいと思います。

 

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(写真4: バスケットボールの試合。試合終了わずか4秒前のゴールで見事イリノイ大の勝利!!)

 

最後になりましたが、いつも温かくご支援くださっているJICの皆さまをはじめ、家族と友人にこの場をお借りして感謝申し上げます。そして今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。