皆さま、ご無沙汰しております。2012年度奨学生の佐藤香織です。留学を終えて日本に帰国してから早1カ月が経ち、帰国当初は久しぶりの日本での生活に違和感を感じていましたが、今ではまた、もとの日本での生活に落ち着いています。
今回のレポートでは、前回のレポートに引き続き、①春学期の期末試験、②ボランティア旅行・シカゴ観光について最初に触れてから、最後にこの1年の留学を振り返りたいと思います。
(1)期末期間
前回のレポートを書いてからおよそ1週間後の5月1日に、春学期最後の授業がありました。周りの正規の学生たちは、期末テストが近づいていることを嘆いたり、また、その後に待っている夏休みを楽しみにしていました。しかし、私にとってはイリノイ生活最後の授業であり、終わった後は、「ここでもう授業を受けることはないのか」、と思って無性に寂しさがこみ上げてきたほどでした。夏が近づくのを感じさせる、からっと晴れた日だったので、賑やかなQuadの周りを歩きながら、渡米当初にSpeechの授業や小テスト等に悪戦苦闘していたときの出来事を思い出して懐かしくなりました。また、今ではこうしてイリノイの学生として学業や課外活動等に自然に溶け込めている自分を見て、この一年で少しは成長できたのかな、と感じたりもしました。

期末期間の課題・試験としては、期末試験が3つ、期末レポートが3つありました。期末試験は、定期的な中間試験と同じような内容であったため、文献を読み、Review sessionに参加することで対応しました。一方で苦戦したのが期末レポートでした。ひとつあたり10ページ程度のレポートが課され、ライティングの授業で教わった論文テーマのリサーチをしたり、決まった書き方を細かく実践するのにとても時間・労力がかかり、どれも締め切り間際の提出となってしまいました。しかし、どれも様々な文献を参照できたこと、構成の整った、首尾一貫した論理展開ができたことなど、様々な点でライティング能力の向上がみられ、満足しています。特に、ライティングのクラスで書いた「学生の妊娠問題」について扱ったエッセイは、クラスの優秀作品として、来期以降の授業で模範エッセイとして参照されることになり、嬉しく感じています。

(2)ボランティア旅行
5月10日にすべての試験を終えた後は、急いでパッキングを済ませ、12日から1週間、Alternative Spring Breakと呼ばれる学生ボランティア団体の主催するボランティア旅行に参加しました。旅行先がいくつかあった中で、私はワシントン州オリンピアに行き、“GRuB”という現地のボランティア団体の活動(農業を通じたコミュニティ支援、貧しい学生の支援)に加わる旅行に参加することにしました。

Alternative Spring Breakのボランティア旅行のユニークな点は、旅行先まで車でドライブして行き、現地では、シェアハウスや借り家で生活し、グループメンバーで分担して自炊をすることです。私の行ったワシントン州は数あるAlternative Spring Breakの旅行先の中でも最も遠い場所のひとつで、片道2199マイル(3500km以上)の道のりを車で約40時間かけて向かいました。正直、現地でのボランティア作業よりも、行き帰りのドライブの方が体力的に辛かったです。(笑)
現地では、先ほど説明したGRuBという団体のもとで、花壇の種まきや簡単な花壇づくり、畑のメンテナンス等を、現地の低所得の家庭の学生たちと一緒に行いました。彼らは夏休みを利用して、このようなGRuBの主催する農業プログラムに参加し、学校で取得できなかった代わりの単位取得を目指しています。どの学生もとても意欲的で、花壇づくりなどについて何も分からない私たちに親切にやり方を教えてくれたり、一緒にゲームをしながら作業をするなかで、様々な交流ができました。
また、Kitchen Garden Projectと呼ばれるGRuBが主催する、地元の家庭を訪れて、庭に花壇をつくる手伝いをする作業があり、私は2日間、別々の家庭を訪問し、そこでの花壇づくりに参加しました。その中でとても印象的だったのは、「周りの貧しい家庭に自宅の花壇で栽培した野菜やフルーツを無料で配るために、今回花壇を作ることを決心した」、というご主人のお話です。オリンピアは、イリノイに比べて人口も少ない小さなコミュニティの分、コミュニティ内の交流や助け合いが盛んで、このようなお話をはじめ、ボランティア活動やシェアハウスで知り合った様々な人から心温まるお話をたくさん聞くことができました。
この1週間のボランティア旅行はあっという間でしたが、ボランティアの経験だけでなく、40時間のドライブ、メンバーとの自炊生活、オリンピア観光やハイキング等、本当にたくさんの貴重な経験を帰国前に体験することができて、とても有意義な時間が送ることができたと感じています。
(3)シカゴ観光

ボランティアからシャンペーンに戻った後は、数日シャンペーンでのんびりした後、すぐにシカゴに移り4日間観光しました。実はこれまで、サンクスギビング休暇時にシカゴでショッピングした以外に、あまりシカゴをじっくり観光する機会がありませんでした。今回は、じっくりシカゴを満喫したいと思い、まるまる4日間を観光に費やしました。シカゴ美術館、近代美術館をはじめとした有名な美術館で芸術を鑑賞したり、ミシガン湖のビーチを訪れたり、ルームメートやイリノイ大学の友人と会って最後に一緒に遊んだりすることができ、とても良い思い出になりました。また、日本の友人向けに大量にお土産を買うため、アメリカらしいお菓子や、ギャレットポップコーンと呼ばれる、日本にも昨年原宿に1号店がオープンし、反響を呼んでいるシカゴ名物のポップコーンを買いました。ギャレットポップコーンはChicago Mixと呼ばれるキャラメル味とチーズ味のポップコーンがミックスされたメニューが一番人気らしく、私もお土産に1ガロンも購入したのですが、キャラメルもチーズもとても濃厚な味がしておいしかったです。
シカゴでの4日間もあっという間でしたが、帰国前最後にこうしてゆっくり観光することができて良かったと思っていますし、また、機会があれば是非戻ってきたいと思っています。

(4)最後に…振り返り
現在、帰国して1カ月が経ち、これまでのイリノイ大学の留学生活を振り返ってみると、本当に色々な面で成長できたと感じますし、また、今後どのようなことに取り組んでゆけばいいのか、という指針を知る大きなきっかけになったと感じています。
もともと留学といった、海外に出ることに対する憧れ、興味はあったものの、ろくに外人と話したこともない私にとってアメリカでの生活は未知でした。そのため、留学前も明確な目標や理想像を思い描けず、とりあえず外国での生活に慣れて、大学の授業についてゆく、ということしか正直最初は頭にありませんでした。それでも、今振り返ると、日本では想像もできなかったような体験をたくさん得ることができたと思っています。実際のアメリカの学生たちが会話をするスピードに驚き焦る一方で、日本で学んできた英語がちゃんと通じるんだなぁ、としみじみ嬉しく思ったり、また、授業でアメリカ人がジョークを交えたスピーチを言っても自分にはよく分からずショックを受ける一方で、それでもしっかり宿題をこなすことで満足のゆく成績を取れて達成感を味わう、というような何とも言えない相反する感情が共存する感覚はとても新鮮でした。きっと、日本にいたままでは、英語がネイティブのように話せない悔しさや屈辱感も、また反対にそんな環境でもしっかり成果を出せたことへの達成感や充実感もこれほど大きく味わうことは出来なかったと思います。そのような点で、本当にこの留学は私にとってかけがえのない貴重な経験でしたし、上で述べた、留学中に感じた悔しさは今後のモチベーションに、そして達成感は今後の自信に繋がってゆく、自分を大きく変えてゆくものとなりました。
最後になってしまいましたが、このような満足のゆく留学は、本当にたくさんの方々の応援、支えがあったからこそのものだと強く思っています。留学前から帰国まで様々な面で支えていただいたJICの方々、日本から連絡をくれたり、休暇中に遊びに来てくれた友人、そして留学中にお互い支えあい、刺激し合えたJICの同期メンバーには本当に感謝でいっぱいです。ありがとうございました。
第37期奨学生
佐藤 香織