古川愛季子さんの2005年最終レポート

JICの皆様こんにちは。先月の後半に無事帰国いたしました。今ではようやく留学気分も抜け、心は次の目標に向かっています。密度の濃い一年間をまとめる のは難しいので、前回のレポートで書き忘れたことと、今振り返って特に思い出すことについて書き、留学の総括とさせていただきます。

(ニューヨーク旅行と頬にslap)

前 回のレポートではお伝えしませんでしたが、春休みにはルームメイトと二人で演劇鑑賞(幸運なことに、Tennessee WilliamsのThe Glass MenagerieをChristian Slaterのメインキャストで観ることができました!)と観光を兼ねて、ニューヨークへ旅行に行きました。私もニューヨークから大変刺激をうけました が、イリノイ州内の本当に小さなカソリック町で生まれ育った私のルームメイトは感動と同時に大都市そのもの、またそのなかでUIUCのキャンパス内とはま た違ったかたちで顕著になる、多人種、他民族の在り様に大きなショックを受けたようです。

そこからの帰り、バスの中で話題は卒業後の進路 になりました。私にとってはこの留学の最大の目標の一つである卒業後の進路を決めること。秋学期に楽しみながらも苦しんで専門分野の勉強を頑張った後か ら、大学院よりは社会に出て働きたいと漠然とは思っていたものの、はっきりとしたビジョンはありませんでした。まだフレッシュマンのルームメイトは「卒業 したら1年程度peace cropで働きたい」と言いました。なぜか、と私が訊ねると、彼女は「I need a slap on my cheek before I start what I wanna do. Everybody needs a slap, I think.」 と言います。彼女は根っからのartyなタイプで普通の職業に就く気など更々無く、元々「卒業したら詩をつくりながら世界中を旅したい」と、私から見れば 夢のようなことばかり言っていました。そんな彼女から出た意外な発言であったため、この「頬にslap」という言葉自体がいまだに心に残っています。それ 以前の私自身は、卒業後の進路を常に考えつつも、大学という心地よい場所で自分の好きな勉強をただ純粋に楽しんでいる状態でしたが、この春休みの旅行以 降、自分が望む将来へのプロセスとそれに対する心構えのようなものが少し変わった気がします。留学で得たものは沢山ありますが、一つ分かったことは、「私 は留学を通して頬にslapを受ける準備ができた」ということです。だからこれから約一年半残された学生生活では、いままでのように大学生として純粋に勉 強を楽しむと同時に、社会に出て頬にslapを受ける準備期間ということを肝に銘じて、今までとは違う意味で、又、違う方法を取りながら貪欲な過ごし方を しなければと思う次第です。

(老人ホームでのボランティア活動とお別れ)

2回目のレポートで少しお伝えしたと思うのです が、私はUrbanaにある老人ホームへ週一回ビンゴゲーム大会を開きに訪問していました。これはVolunteer Illini Project、通称VIPと呼ばれるUIUC最大のボランティアサークルを通し、形式上は「ボランティア」として行っていました。しかし私はこの週一回 の訪問を本当に楽しんで、これ自体が一年間を通して自分の支えにもなっていました。残り2回という状態でVIP senior citizenのコーディネーターから「Akiko, I have something to you.」と言われました。そこには額縁に入った二つの賞状が。見ると「Best Volunteer Person of the Year」と「Millian Hutch Award」という二つのタイトルの下に「Akiko Furukawa」と書いてあります。私は本当に楽しんでいただけだし、他のVIPで活躍する人々に比べたら遊んでいたようなものだったので「I don’t think I deserve it」と一度断ったのですが、彼女は「Yes you DO!」の一点張りです。そして額には入っていたものの、その額がマイヤーのスーパー袋(笑:アメリカを感じました)から出てきたこともあり、そんなに大 それた賞ではないと思い受け取ることにしました。心外な部分はあったものの、自分が一年間続けたことが認められたことは大変嬉しかったです。その後気付い たのですが、一年の終わりにはVIPに限らずUIUCのキャンパス中が「best○○of the year」という表彰だらけであったということです。Unionに行けば「best employee of the year」が壁に掲げられ、寮では「best RA of the year」が、というふうに何処へ行っても表彰を目にしました。ボランティアを通して、コミュニティーと協力しあう大学を感じると共に、頑張った人に対す る自治的な評価体系があらゆる場所に存在することも新鮮に感じました。

そして最後の訪問日、老人ホームでは沢山の「buddies」が私 達の到着を待ち構えていました。このような、複数の人々を対象とする活動において、自分のfavoriteを決めることはふさわしくないかもしれません。 しかし私にはfavoriteがいました。50代前半で全盲の彼女は週一回のビンゴゲームを「生きがい」と言うくらい楽しみにし、毎回興奮のあまり叫び、 他のお年寄りに迷惑をかけ、時には退場宣告を受ける程(笑)のビンゴファン、そしてAkikoファンでした。最終日には私をみつけるなり「Akiko, I know you were coming, cuz I cried and prayed all night.」としがみつき、泣き叫びます。元々涙もろい私は絶対に泣いてしまうな、と予想していたのですが、彼女の強烈な慟哭に圧倒され、感慨は深かっ たものの冷静に過ごしました。いざ帰る時となり、沢山の「God bless you.」とハグが交わされる中、私のfavoriteは「God bless you.」と泣き叫びながら緑色のmountain dew(coke よりもカフェイン含有量の多い炭酸飲料)の缶をくれました。先学期、テスト前日での訪問日に「カフェインたっぷりだから勉強するのに起きていられるよ」と 言ってくれたのを私が大変喜んだ事を覚えていたらしく、「I know that you like it!」と今度はシュガーフリーのmountain dew(血糖値が上がり、砂糖入り飲料を医師から禁止されたと文句を言っていました)をくれたのです。「I know you’re going back for good, but please think about me sometimes.」とまた泣き叫びながら杖を頼りに自分の部屋へ戻っていく姿にはほろりとさせられました。とにかく楽しくて仕方なかったこの老人ホー ム訪問はイリノイでの一番の思い出のうちの一つです。

(最後の数日間)

私の今学期のファイナルは、そのほとんどがファイ ナルウィークの前に終わっていました。しかし最終日にスピーチがあったことと、black chorusのメンバーとしてcommencementに参加することに決めていたので寮の退出を最終日まで延長し本当に最後の一人になるまで寮に残るこ とになりました。いままでお伝えしてきたように、私はインターナショナルドームの、更にインターナショナルフロアに住んでいたため他にも何人かは残ってお り、最後にみんなで寮中treasure huntingをしてsomesoniteのスーツケースを手に入れたり(!)と楽しかったのですが、それでも置いていかれる立場でのお別れは大変辛いも のでした。

ファイナルスピーチまでほぼ丸一週間空いていたので、沢山の友達の引越し作業を手伝いつつ、一緒に写真を撮ったりして過ごしま した。私はまた別れの度に「あ、泣きそうだ」と思っていました。しかし予想に反したことに、普段はクールなルームメイトを含め、お別れのハグをする度に相 手のほうに先に泣かれてしまうことが多く、私はどちらかというと冷静でした。私は普段からちょっと辛いことがある度に友達に愚痴りながら泣いていました。 私は慰めされつつも、「アキコ、他人に涙を見せることは、自分は弱い人間だと言っている様なものだから気をつけろ」と注意されたりしていたので、そんな友 達に先に泣かれ、老人ホームの時同様「なんだかなぁ」と複雑な気持ちにもなりました。しかしcommencementの前日、最後まで一緒に寮に残ると 言っていたイリノイでの一番の友達が突然旅立たなくてはならなくなりました。彼女の緊急なmoving outを大忙しで手伝い、全ての荷物を運び終えた 時、私の携帯電話が鳴りました。なんと、イリノイで最も仲良しで毎週末一緒にパーティーしていた男の子達2人も同時に旅立つといいます。最後には車二台が PARの前に並び、イリノイでの親友3人が同時に私を置いて旅立つという状況になり、その時ばかりは息ができなくなるくらい泣いてしまいました。

こ のような体験を踏まえて、イリノイでの一年間は「自分が沢山の人から愛されている」ということを、日本にいるときよりもより分かりやすい形で再確認したも のでした。沢山の「God bless you.」や「Good luck.」が飛び交うお別れの場面一つ一つで、私はこんなに沢山の人々から大切にされているのだから、それに報いる生き方をしなくてはならない、と、襟 を正すような気持ちにさせられました。

(イリノイでの一年間)

留学で得たものを数え上げると、大切な友達、語学力、自分 なりのアメリカ観、他人に向けた自分のre-presentationの仕方に対する意識、貪欲になること、などなどきりがありません。勉強の面では、 LASという学部の名前そのものの、最高のリベラルアーツができたし、その他の生活でも学部寮での、常に友達と一緒の生活や、black chorus、老人ホームでのビンゴ大会など密度の濃いイリノイ生活、しいてはアメリカ生活ができたと思います。留学気分はもう抜けたものの、来月にはイ リノイでできた友達の何人かが日本に来るのでその観光案内をすることが近いうちのお楽しみです。せっかくできた友達なので、これからも大切にしていきたい と思います。

イリノイでの素晴らしい一年間のなかで辛いこともありました。その時にイリノイでできた友達に助けられたことはもちろん、 JICの奨学金システムでアメリカに来てよかったなと思うことが度々ありました。悩んだ時は一緒に来た3人に相談したり、過去の先輩方のレポートを見て参 考にしたり、更に私の書くレポートへのお返事のメールにも本当に励まされました。それを踏まえて私が思うJIC奨学金制度の、他の奨学金制度には無い強み は、この手厚いサポート体制と、更に、留学目的が応募条件として限定されていないので、将来の選択肢を狭めることなく奨学生それぞれの目標に向かって一年 間自由にイリノイで勉強、生活できるということにあると思います。

“From the bottom of my heart, I really want to say, I have to say thank you.”これは私がblack chorusで教わったGratefulというゴスペル曲の歌詞の最後です。ここでは “you”はイリノイで私と関わった全ての人、そして何より、このような素晴らしい機会を与えてくださったJICの皆様を指します。言葉で言い表すのは難 しいですが、本当に感謝しています。ありがとうございました。総会でお会いできるのを楽しみにしています。

古川愛季子さんの2005年4月分レポート

こんにちは。ここUIUCは三月後半から突然夏のように暖かくなったと思ったら、ま
た冷え込むということを未だに繰り返し、ようやく春(というかいきなり夏)が訪れ
た感じです。前回のレポートから3ヶ月余りの様子についてお伝えします。とはいい
ましても、もうファイナルウィークに入ってしまい、自分の気持ちはもう留学の総括
に向かっていますが、それとは別に、この特定の期間にもいろいろなことを経験した
ので、思い出しつつレポートに取り組んでいる次第です。具体的には、授業のこと
と、それ以外のことに分けてお伝えします。

(授業のこと)

私はコーラスを含め5つの授業をとりましたが、興味の中心は学期を通して前回お
伝えしたものと変わりありませんでした。よって、同じ二つについて、その後どう
なったかをレポートします。

RHET233:Critically Queer
始めたころは、いきなりESLのライティングから200番台のアメリカ人向けのレト
リックに変えて大丈夫か不安でしたが、結果、この留学を通じて一番とって良かった
と思える授業のひとつになりました。基本テーマはsex, sexualityなのですが、特に
queer politicsの考え方を中心に、Michel FoucaultのHistory of Sexualityから、
現在メディアや私たちの日常で起こっている出来事までを、criticalに、そして
academicに考える、というとても斬新で刺激的な授業でした。よって授業に上る話題
はFoucault哲学から、sex education, 宗教、人種問題、テレビドラマのWill and
Grace、ひいてはアイドル歌手Jessica Simpson (!) に至るまで本当に多種多様でし
た。イリノイ大学で最も前衛的(?)な授業のうちの1つに入るのではないかと思い
ます。日本では、口に出すことすら禁忌であるような(この中西部の白人、クリス
チャン中心のミュニティーであるUIUCでももちろん)こと、でももっと語られる必要
があることを敢えて、先生自身、人種、sexualityのダブルマイノリティーの立場で
行う、ということ自体大変意味深い授業でした。わたしがこの授業で一番、技術的に
学んだと思うことは、文章でも、口頭でも常にcritical なargumentをすることの大
切さと、(まだまだできませんが)その仕方の基礎知識だと思います。それから、
「マイノリティーの視点」という、生活面では抑圧された不利な立場でも、批評理論
上は強い武器になる(と私は思う)「ものの見方」に生まれて初めて触れたことも重
要です。更に、人文系にありがちな(と言われることの多い)陥穽として、自分の学
問以外のこと(特に今現在世の中で起こっていること)に疎くなってしまうところが
自分にはあったので、(もちろん学問を追及する人はそれでいいと思うのですが)こ
の授業での、学問的な理論と日常、特にメディアを結びつけるという作業はリベラル
アーツとしての勉強をする私には、これから社会に出る上でとても必要だったと思う
し、その作業自体エキサイティングなものでした。

MUS 261:Black Chorus
前回は始まったばかりで、たしか “It’s just amazing!”と表現したはずです。
今、commencementでのパフォーマンス一回のみを残した状態で思うことは、本当に素
晴らしい経験になったということです。しかし、この素晴らしいクラスが、大きな悩
みの種の一つとなっていたのも事実です。コースカタログには、「black music全
般」を取り扱うと記述されていましたが、実際はspiritual, gospelと言われるジャ
ンルのものが9割以上という状態でした。ということで、もちろん歌詞の内容は全て
Jesus Christに関するものです。更に、おしえ方も、先生が “Feel Jesus”,
“You have to mean what you mean!” というようなことを熱心に言われることが多
く、非キリスト教徒の私には歌詞で歌っていることと、自分自身の矛盾に苦しみまし
た。今振り返ってみると、この授業をとる前の段階では、“Choir”という簡単な単
語の本質的意味さえも分かっていなかったのだと唖然とします。しかし、悩みつつ
も、半年間やめずに続けて本当によかったと今では思っています。全ての曲(数え切
れないほどの曲数を学びました)は素晴らしいとしか言いようが無いし、更に二回の
Krannertでのコンサート(二度目はsold outでした!)や、地元Champaignの教会で
のコンサート、更にシカゴでの会議に招かれて、皆で旅(?)をして歌った経験など
全ていい思い出です。指揮者、そして現役のソプラノ歌手であり、さらにAfrican
Americanの女性として現在の地位を自らの努力で達成した、“self made”という言
葉にぴったりのDr. Davis自身の存在も大変inspiringだし、自らその成功を、特にま
だまだ苦境にあるAfrican Americanの生徒らに示すという点においても意味深い授業
でした。来年は “black music defines MUSIC of Illinois”という大きな目標のも
とに、更にblack chorus自体躍進していく予定です。去るのは悲しいけど、これから
は遠くから応援したいと思います。

(その他生活について)
上記のような経験を経て、ここイリノイで、自分はマイノリティーだと痛感するこ
とがしばしばでした。さらに他のクラスで勉強したことも含めて、アメリカにおける
構造的な(?)差別に気付き、ショックを受けることもよくありました。元々、私の
無知が原因なのですが、更に私はGlobal Crossroadという学部寮のインターナショナ
ルで、全ての人種が混ざり合って住むという、理想上のアメリカを体現したような場
所に住んでいるため、外とのギャップに苦しんだわけです。例えば、フレッシュマン
で日本人の友人は「レトリックの101、102には白人が一人もいない」という状
況に出くわしました。Diversityを謳う学校における、黒人系とアジア系だけのレト
リックのクラス。いままでの私ならそこで、「へぇ~」としか思わなかったのです
が、更に聞くと、それはそのセクションだけではなく、全体的に言えることだそう
で、そのクラスの先生が「あなたたちがここにいるのは、他の人たちより劣っている
わけではなく、“コミュニティーによる学校のresourceの格差”がある社会のあらわ
れなのです」と、初回の授業で言われたといいます。だから、UIUCのマジョリティー
である、suburbの良いハイスクールを出た白人は初歩クラスに一人もいないという事
態が起こるわけです。更に仲良しのblackのフロアメイトは、「他にもそんなことは
いっぱいある。私は高校で化学を三年間取ったけど、実験が一度もなかった。私たち
の学校(south side Chicagoのblack communityにある高校)は1つの薬品も買うこと
ができなかったんだ」と言います。それでも、ここ中西部はまだ他に比べて、最悪で
はないはずです。そんな状況を「機会の平等」と言ってしまえるアメリカってなんな
んだろう。。。と考え込むことがよくありました。英語の語彙が増えたせいで、その
ような議論をできるようになったのはいいのですが、あまりに悲しい現実です。しか
しそんななかでたくましく生きるマイノリティーと呼ばれる人々に敬意を払わずには
いられません。Black chorusでよくDr.Davisが生徒に「絶対に諦めるな」と励ましの
スピーチを毎回練習後に長い時には30分以上されることがあり、「早くかえりたい
なぁ」と思ったこともありましたが、そうせずにはいられない状況がある、というこ
とを知りました。

更に二・三月にかけては、近隣アジア諸国の日本に対する批判が相次ぎました。そ
の中で、個人の意見は別として、やっぱり溝は深いんだなと悲しくなることがしばし
ばでした。更にここUIUCは少なくとも学部レベルでは日本人が少なく、そして日本を
批判している国の人たちがたくさんいます。そしてCNN headlineでも毎日報道がされ
ていました。その中で、本土から来たと見られる中国人の方々を見るたびになんだか
びくびくしている(これは返って失礼かもしれませんが)自分がいたり、特にデモの
事に関して話している人を見ると聞き耳を立てている自分がいたり、更にたくさん
の、そのような国から来た私の友達は、本当のところそう思っているのだろう、と、
辛い日々でした。そんな中で一緒に来た留学生や、同じ寮の数少ない日本人の友達と
は立場を分かち合い本当に助けられました。今2005年でもこの状況ですから、過去に
ここで学んでいかれた先輩方はどんなに大変だったか想像もつかず、尊敬せずにはい
られません。

(まとめ)
このように冬休み以降の三ヶ月間は、今までのように沢山の友達に励まされつつ
も、イリノイの冬空のように重苦しく悩むことがたくさんあり、辛い時期でした。こ
れまで二回のレポートでとても前向きなことをお伝えしてきたので、レポートを書く
のをためらったのも事実です。先学期とは違って、英語にも困らなくなり、いろいろ
なことが分かるようになったのはよかったのですが、そのせいで、「アメリカの知り
たくなかった部分」にも沢山気付きショックの連続の日々でした。でもそんな中、他
の奨学生や沢山の友達に励まされつつ、いままでここで勉強されてきた先輩もみんな
経験したのかな、と受け入れた感じです。いまとなっては、冷静に振り返って、「こ
れも良い経験だ、留学の醍醐味(?)かもしれない」と思えるので、心配しないでく
ださいね。全体的なことは近いうちに最終レポートでまとめたいと思います。最後に
なりましたが、この留学の機会を与えてくださり、感謝しています。ありがとうござ
います。あとほんとにわずかなので、楽しんで帰ってきます。

古川 愛季子
お茶の水女子大学 文教育学部
言語文化学科 英語圏言語文化コース 3年

古川愛季子さんのニューズレター用レポート

2004年度奨学生の古川愛季子です。日本ではお茶の水女子大学の文教育学部で米文学、批評理論を勉強しています。この留学では様々な経験させてもらい感謝の気持ちで一杯です。
まず勉強については、学部レベルの交換留学生という身分で、苦しみながらも勉強を思い切り楽しむことができました。自分の専攻分野、特に本場での批評理論 の授業はもちろん、スピーチの基礎の授業など、専攻以外の興味も深めることができ、学部生として最高のリベラルアーツができたと思います。
勉強以外の面では、一年間続けた老人ホーム訪問や半年所属したblack chorus (注1)など課外活動も欲張りなくらいに挑戦できました。更に私は学部寮のインターナショナルフロアに住んでいたこともあり、アメリカの diversityを肌で感じつつ、人種、国籍を超えた大切な友達を沢山つくることができました。私はそこで素晴らしい時間を過ごした、と自信を持って言 えます。しかしマイノリティーというカテゴリーに入れられる沢山の友達を持ち、自分もその一人として過ごす中で、アメリカの厳しい現実を知ったのも事実で す。
これらを踏まえた上で思うことは、UIUCは人種、宗教の差別など色々な問題を抱えつつも、多様性を抱え、いろんな人が生きるアメリカを経験するのにとて も良い場所だったのではないかということです。そして、その多様性のなかでは常に「自分は何者なのか」ということを突きつけられました。その意味では、こ の留学は自分を知るプロセス、更には知った上で「自分をどのようにre-presentするか」を切実な問題として学んだ気がします。一年間JICの奨学 生であるということ自体に大変励まされました。これらの経験は今後社会に出る上で必ず役立つだろうし、役立たせます。この素晴らしい機会を与えてくださっ たことに心から感謝いたします。

注1; UIUCに3つあるUniversity Choirの中でも最大規模の、black musicを広めるという目的を持ったchoir。

古川 愛季子
お茶の水女子大学 文教育学部
言語文化学科 英語圏言語文化コース 3年

古川愛季子さんの2005年1月分レポート

岡沢(LAS 02-03)です。
UIUCでは新学期が始まり、冬休みの静かさから一変し、にぎやかになりました。
今年は年明けから雪が多く、今もキャンパスは一面の雪景色です。

今年度奨学生の古川愛季子さんからのレポートが届きました。
友達の家で素敵な冬休みをすごされた体験や、授業にボランティア、旅行、
趣味のコーラスと、とても充実した生活のようすを伝えてくれています。
他の奨学生からのレポートも届き次第、送らせて頂きます。
それでは、お楽しみ下さい。

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2005年 1月分レポート
古川 愛季子
お茶の水女子大学 文教育学部 言語文化学科 3年
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こんにちは。早いものでもう二回目のレポートとなりました。話に聞いた時点では不可能と思われたー20度の気候にも適応し、元気にやっています。今回は冬休みのこと、学校のこと、日常生活のことをお伝えしたいとおもいます。

冬休みは日本には帰りませんでした(Thanks givingは寮の留学生友達とシカゴ旅行
~ルームメイトのお宅にお邪魔して、とっても伝統的なThanks givingを体験しまし
た)。というのは、メキシコ人の寮のフロアメイトが秋学期の初めの頃から「アキコ
はクリスマスメキシコで過ごすの♪」と言って誘ってくれていたからです。結局メキ
シコ~シカゴ(また、寮の隣の部屋の子が、「うちにおいで」と誘ってくれました。
友達ほどありがたいものはありません。その他にもルームメイトを始め、沢山の人が
うちにおいでと誘ってくださりとても嬉しかったです。感謝、そしてGC¹万
歳!)と一週間ずつ居候させてもらい、それから香港出身の友達とロサンゼルスに旅
行にいきました。メキシコでの親戚一同が揃う、伝統的なカトリックのクリスマスは
忘れられません。デコレーションもアメリカに比べると俄然派手で、街全体が全力で
クリスマスをお祝いしている感じです。Monterreyという北部の山に囲まれた美しい
街で、驚くほど近代化が進んでおり、私のメキシコのイメージとは全く違うものでし
た。ご飯も何を食べても美味しくて、寮のゴハンを食べている私は何かを食べる度に
いちいち感動していました。それから、スペイン語が全く話せない私が何一つ不自由
なく過ごせたのは友達、そして暖かいご家族のおかげです。本当に感謝しています。
その後、シカゴでは「地元っ子のシカゴ」を体験し、ロサンゼルスでは100%観光
客をしてきました。どれもほんとに楽しく、忘れがたいです。日本に帰らなくて良
かった、と思えるのは友達のおかげです。

そして始まった新学期。忘れがたい、と思っていた冬休みも忘れそうになる毎日が
また始まりました。そういえば、あれだけ大変だった先学期の成績は予想に反して満
足するものでした。特に一番面白いけど、一番苦労した批評理論のクラス(小説10
冊プラスMarx, Freud, Foucaultなどなどからポストモダンに至るまでの批評理論を
文学に応用したり、このような偉い批評家の理論自体を分析、批評したり)でよい成
績がいただけた事は本当に励みになりました。このクラスの教授は有名で、更に生徒
からの人気も高く、常に忙しい方なのですが、Freudの理論を批判するペーパーで、
どうしても行き詰まり、もうだめだと思いながらオフィスアワーをたずねたところ、
「I know you can do it」と励ましていただきました。結果第一主義のイメージが強
かったアメリカの大学ですが(勿論その通りとは思いますが)、頑張れば認めてもら
えることもあるんだなぁと思いました。

今学期は、Survey of American Literature Ⅱ, Rhetoric 233(先学期、あまりにひ
どいESLの授業に辟易したので、English DepartmentのAcademic Adviserに相談して
こちらを取る事になりました), Public Speaking (多くの先輩方が懐かしく思い出さ
れることと思います), Introduction to World Music, そしてUniversity Choir
(Black Chorus)をとっています。今学期は、難しくて成績としての結果が多少下
がっても、「やりたいことを全部やって、できるだけ見えやすいカタチで力がつくも
の」を目標に選びました。

特にRhetoricは、スケジュールの関係で現在のセクションになったのですが、
topic; “Critically Queer”がついており、普通のcompositionだけでなく、
gender, sexuality関係についてもかなり深く勉強する感じです。文章については、
短い(二枚程度の)文章で最大限conciseなものをつくる、ということが目標で、5~
7枚程度の “classical English paper”に慣れている私にとっては難しいですが、
頑張った分力になりそうです。更に、先学期批評理論の授業で私を悩ませたFoucault
を、今回は本ごと読まなければいけなかったりして概念的に難しいですが、今のとこ
ろ面白いです。

それから、今学期一番の目玉がBlack Chorusです!!もともとblack musicが大好き
で、以前からゴスペルもやってみたいと思っていたので、上手く歌えるか不安でした
が、思い切って参加することにしました。いまのところの感想は“It’s just
AMAZING!!!”という感じです。Black Chorusは3つあるUniversity Choirの中でも最
大規模、そしてクオリティーも最高とされるもので、なんと2月13日、始まってか
ら一月もたたないうちにもう、Krannert Centerの舞台に立ちます! パフォーマン
スは決まっているだけで既に8回、二月末にはシカゴまで行って歌います。
Non-creditの上、週五時間というかなりみっちりの練習ですが、楽しくて仕方ありま
せん。どの曲も素晴らしいのですが、成り立ちの経緯にはBlack People(私の知って
いる限り、彼らは敢えて 、実情と離れてpolitically correctな
“african-american”を使いたがらない傾向があります)の抑圧された歴史があるこ
と、このChoir自体、african-americanプロモーション団体のワークショップとして
始まったことなど、音楽の他にも学ぶことが多いクラスです。

さて、普段の生活ですが、初めは不便に思われたChampaignでの生活も、慣れた
せいか至って快適です。ウィークデイはお勉強、週末は思いっきり遊ぶといった感じで
す。特に学部寮に住んでいることもあり、週末は空気が一変します。週末は主に、寮
の友達とパーティーに出掛けたり、たまには皆でのんびりビデオを過ごしたり、と大
概友達と一緒に過ごしています。ここUIUCはパーティーではタイトル通り全米1だと
思います。毎週毎週必ずどこかでパーティーがあり、そして社交的な友達に恵まれた
ので、娯楽面では全く不自由していません。毎週末、フレッシュマンの友達の携帯電
話を駆使したパーティー探し術には脱帽しています(笑)。こちらに来てから、アメ
リカにいる人は楽しむことがとても上手だなと羨ましく思っていました。そして今で
はルームメイトに「アキコの性格にタイトルを付けるなら“fun-loving”だね」と言
われるようにまでなりました。「どうすれば楽しくなるのか、そして楽しむためには
普段からどのような人間関係を築いておかなくてはならないのか」がちょっと分かっ
た気がします。

日常生活でもう1つ是非お伝えしたいのが、先学期から始めた週一回のボランティア
です。毎週木曜日にUrbanaにある老人ホームに出掛けて、ビンゴゲーム大会を開いて
います。たかがビンゴゲームと言って侮ってはいけません。彼らは賞品を狙って「真
剣」そのものなのです。だから、“Are you good at playing bingo?”と聞かれた
ら、嘘でも “yes”と答えなければなりません(笑)。ボランティア、といってもこ
れはただ、100%自分が好きだからやっているという感じです。もともとお年寄り
好きな性格と、こちらに来てからいろんな人に助けられたので何かのカタチで還元し
たいと思っていた私には最適のものでした。始めは英語も流暢に喋れないのに大丈夫
かなぁと不安でしたが、そんな心配は全く不要でした。今では、毎週「アキコは私と
ビンゴをするの!」とお年寄りの人気者です。先学期の後半では、私のことを
“best friend”とまで呼んでくださる方までいました。今学期はまだ始まっていま
せんが、再開が待ち遠しいです。

ということで、私の最近の様子が伝わったでしょうか?極寒のなかでも、楽しく、
そして毎日がいまだに新鮮に感じられる様子が伝われば幸いです。もう半分終わって
しまったと考えるだけで寂しいですが、まだ半分、思いっきり楽しみ、そして学んで
帰りたいと思います。最後に、この機会を与えてくださったJICの皆様に感謝いたし
ます。

注1 GC;Global Crossroadという、私が住んでいる学部寮のliving-learning
community.

古川愛季子さんの2004年9月分レポート

2004-09-furukawa.jpg

JICの皆様

岡沢(02-03,LAS)です。

今年度奨学生の古川愛季子さんから、第一回目のレポートが届きました。他の 奨学生からのレポートも、順次お届け致します。 奨学生の皆さんは出来次第、私宛にお送り下さい。

古 川さんは文学のクラスを取っているそうです。文学のクラスはリーディングがとても多いことで有名です。勉強を必死でがん ばりながらも、寮の友達とイリノイ大学での生活を楽しんでいるのが伝わって きます。熱が出てしまったそうですが、無理をしすぎず、どうぞ健康に過ごして下さいね。

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2004年 9月分レポート
古川 愛季子
お茶の水女子大学 文教育学部
言語文化学科 英語圏言語文化コース 3年
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こんにちは。2004年度奨学生の古川愛季子です。近日ここChampaignは急激 に寒くなって、秋を感じています。ここに来てからもう1月以上、沢山のこと が起こりすぎて、自分でもまだ整理がしきれない状態ですが、このレポートを きっかけにすこしずつ消化できたらいいなとおもいながら書いています。

まず、一番にみなさんにお伝えしたいのは、わたしはいま沢山 の良い友達に 囲まれて、幸せな毎日を送っているということです。わたしは学部寮のPAR、 Saundersの2,3階に位置するGlobal Crossroadというliving- learning communityに住んでいるのですが、ここでは皆が、いろんな国、back groundの 人と関わりたいという意志があり、初めて寮に移ってきた日から人種、国籍の 多様さ、そしてfriendlyな空気がとても心地よくすっかりなじんでしまいまし た。ルームメイトにも大変恵まれました。彼女はfreshman で、地元イリノイ 出身なのですが、とても良い子です(写真:Web上に掲載予定)。他人と一部 屋を共有するなんて絶対無理だと思っていたのですが、予想に反してとても快
適な毎日です。写真は私たちの部屋で、背景に移っているのは artistic postcards(!) で埋め尽くされた壁です。部屋の全ての白いスペースをアート で埋め尽くすことが今の私たちの目標です(笑)。私の特に仲の良い友達も白 人からラティーノ、African American、African、アジア系と本当にvarietyに 富んでいます。みんなが「hey, Akiko~!」と声をかけてくれるので、東京でか なりのホームシックだったわたしも、今のところその気配すらありません。

彼ら は本当に親切で、実は私は一昨日から今朝まで39.5度の高熱が出て大変 だったのですが、(もう治ったので心配しないでくださいね。)みんな学校の 保健センターに連絡を入れてくれたり、車で連れて行ってくれたり、様子をみ に部屋まできてくれたり、食堂から果物を盗んできてくれたり(笑)、本当に ありがたくて涙がでました。東京で一人暮らしをしていたときは一人で苦しん でいたのに、アメリカにきて人種も国籍もちがう友達にこんなに助けられるな んて、思いもしませんでした。ここに来て、日本にいたときには忘れていた 「互いに助け合う」という昔祖母から聞かされたような基本的で大切なことを 思い出さされました。

ということで、dorm lifeの面では大変充実した日々を送っています。さて、 勉強についてです。ESL以外には、映画研究の初歩クラス、アメリカの現代小 説のクラス、文学批評理論のクラスをとっています。全てENGLISHです。授業 はたしかにどれも中身がつまっており、充実しています。いまのところまだ、 必死でしがみついている感じです。ただ、私はどうやら内容的に欲張りすぎて しまった感があります。というのも私の日本での専攻はアメリカ文学なのです が、こちらで同じjunior levelのEnglishを取るのはどうやら無謀だったよう で、nativeの友達にも「生まれて初めて英語圏に住んで、いきなりnativeでも 大変なEnglishのクラスを取るなんて、アキコはcrazyだ」と言われています。 一クラスにつきtext10冊プラスreserveからのreading。Midterm前だというの にもう既に専門だけで13ページ位essayも書きました。更に恐ろしいのはgroup discussionです。白人5人に囲まれ、Hemingwayの作品についてのスラングだらけの超スピード会話についていけず泣きそうになった り・・・と、まだなか なか慣れません。African Americanの友達がそんな私のために「slung講座」 を開いてくれています(笑)。しかし自分がminorityになって、しかも困難な 状況に置かれるという経験も日本にいては絶対にできません。経験だと思って これも楽しむしかないと思っています。

American college is killing me, seriously…というのが今の正直な気持 ちですが、このように感じているのは私だけでなく、nativeの人すらそう感じ ています。しかし、そんなことを愚痴りながら、毎日深夜2時に一緒に図書館 から帰る友達がいるのも幸せなことです。今更クラスを変えることもできない し、何よりこれがやりたくてここに来たのだし、内容自体は本当におもしろい ので、何とか今学期乗り切れるよう頑張りたいです。そして来学期はご褒美と して、ENGLISHのクラスを減らし、他の語学や音楽などお楽しみコースをたく さん取ろうと思います。次回のレポートでは、もっと勉強についての明るい見 通しが書けるようにがんばりますね。

最後に、この機会 を与えてくださった皆様に感謝の気持ちを伝えたいです。 とにかくこのレポートを通じて、いろんな面で、わたしがとてもここ Champaignでの生活に満たされていることが伝われば幸いです。これから9ヶ月 余り、全力で頑張って、そして楽しもうとおもうので、見守っていてください。 改めて、この機会を与えてくださったことに感謝します。ありがとうございま す。