乾 弘哲さんの最終レポート

皆様、お久しぶりです。2012年度奨学生の乾弘哲です。早いものでもう留学が終わって2か月近くが過ぎました。帰国後はすぐに就職活動に突入して留学をじっくり振り返る余裕がなかったのですが、このレポートを機にこの9か月について考えてみたいと思います。

 まず、留学をして学んだことのうち、勉学に関することを一言でまとめるならcritical thinkingだと思います。具体的に言えば、何かの見解に対して、それをそのまま鵜呑みにせず、その見解の持つメリット・デメリットを常に考える癖が身に付きました。イリノイでの授業は、与えられた課題のリーディングに対して批判を加えることが頻繁に求められました。その結果、discussionは揚げ足取りになりがちな部分も否めないのですが、これを繰り返し叩き込まれることで、日々接する情報に対してもその妥当性を常に問うような思考方法が身についたと思います。
また、それに関連することですが、こうした訓練に加えて、異国で生活したことで自分の考え方や価値観も、批判的に再検討するようになりました。自分が大事だと思うこと、考え方は果たして日本を離れても受け入れられるものか、受け入れられないとすればそれはどういう前提を共有しないといけないのかということを、頻繁に考えるようになったのです。日本に暮らしていると、ある程度同じような前提で話が通じるために見落としがちですが、最近よく耳にする「国際化」、「国際人」といった概念を支えているのは、こうした考え方の違いに敏感になることなのではないでしょうか。

日本館の桜と池。日本を思い出させる風景でした。

これまでのレポートでは触れてこなかったのですが、この留学を振り返るにあたって、1年を通してルームメイトだったDwayneについてお話しします。彼はシカゴの郊外出身のfreshmanで、engineerを目指して勉強していました。彼との出会いは、私の住んでいたintersections LLCのオリエンテーションの席で、会って早々の挨拶がハグだったのが驚いた記憶があります。
渡米前からすでにFacebookを通じてメッセージのやり取りはしていたのですが、実際に会ってみるとかなりやんちゃなところもある若者でした。最初のうちはおとなしくしていた彼ですが、やがて大学1年生らしくさまざまな遊びに手をだし、毎晩深夜遅くに帰ってきては、朝の早い私に起こされてかろうじて次の日の授業に出るといった時期もありました。ちなみに、春学期には時間割上私が起きる時間のほうが遅くなり、彼が遅刻する回数が増えていたように思います。
そんな具合で、まるで私が保護者のような関係でしたが、一方で、この太平洋を越えてきた留学生を彼なりに相当気遣ってくれていたのでしょう。一番印象に残っているのが、夜、唐突に彼が話しかけてきて、日本やアメリカの文化、宗教、さらにはお互いの人生観など数時間にわたって話し続けたことです。今から思えば、私の英語の拙さとそれに加えてそもそも知識不足もあり、私の言ったことが彼にどれほど伝わったかは疑問ではありますが、そんな私の言うことに真剣に耳を傾けてくれた彼の姿勢は、感謝するほかありません。さらに、ともすれば課題の忙しさから部屋に引きこもりがちだった私を外に引っ張り出し、友達に紹介してくれたのもいい思い出です。

春学期が終わる直前、フロアメイトとのお別れパーティ。中華のバイキングに連れて行ってくれたのですが、それまで食べたアメリカの食事のなかで一番の味でした。

学期が終わり、私がアーバナ・シャンペーンを発つ前日に、彼も実家へ帰っていきましたが、その帰りの車の中から、最後の長文の別れのメッセージを送ってくれました。さらに、その後のFacebookのやり取りでは、きっと日本に行くよ!とも言ってくれました。こうしたつながりが、イリノイで得た一番の財産として残っていくのでしょう。

 

 

 

5月上旬に期末試験が終わり、京都での就活説明会に参加すべく、その2日後にはあわただしくオヘア空港から旅立ち、長いようで短かったアメリカ暮らしは幕を閉じました。帰国が一週間ほどに迫った期末試験の最中から、これまで見慣れていた、そして何とも感じなかったアーバナ・シャンペーンの風景のすべてが、懐かしく、名残惜しく感じるようになりました。帰国が近づいて、もっとこんなこともしておけばよかったという後悔が山のように押し寄せてきて、1日1日を本当に貴重なものとして過ごしたように思います。

冬休みにも一度帰国はしていましたが、改めて日本に住み始めると、これまで常識と思っていたことがそうでもないのではないかと感じることがしばしばあります。たとえば、これは帰国してからつくづくと感じたことですが、日本におけるサービスの品質は素晴らしいものがあると実感しました。例えば日本で外食に行ったとすると、1000円未満で驚くほどの高品質の食事が出され、またサービスもチップも払っていないのに笑顔で迎えてくれます。こういったもてなしの心というのは世界に誇るべきと思う一方、少なくともアメリカと比べてサービスを供給する側の負担で支えられている部分が大きいように思われます。
このレポートを書いていて思うのですが、日本に帰国してからというもの、日々の生活の中のふとした瞬間に、自分の中の変化に気づくことがしばしばあります。この留学が自分にもたらしてくれたものというのは、率直に言ってまだ把握しきれていない気がするのですが、既に自覚している変化だけでも相当な数に上っています。
留学はどうだったかと人にきかれれば、楽しかったと答える前に、辛いことも多かったという答えが自分にはしっくりくると思います。語学の面では、やはり最後までネイティブスピーカーの言うことは聞き取れないこともままありましたし、文化というか、考え方、生活の仕方の違いに慣れたかと言われればなじめきれないところもありました。しかし、言ってよかったかと聞かれれば、確実に素晴らしかった、多くのことを学んだと答えますし、また機会があればまたチャレンジしたいことはたくさんあります。この、楽しいことばかりではなかったという自覚が、ある意味ではこれからの自分を駆り立てる力になっていくのでしょう。
もし、留学に悩んでいる人がいたら、もし少しでも行きたいという気があるならぜひ行くべきだというと思います。もちろん、実際にネガティブなことはたくさん起こりますし、留学の途中で心が折れそうになることも多々あるでしょう。だからその意味で、日本人の友達や、日本の友達とのつながりなどセーフティーネットを維持することは絶対に重要です。しかし、折れそうになる心を建て直し、留学を終えてみると、確実に一回り大きくなった自分を再発見するのだと思います。

最後になりますが、このような数えきれない経験を積むきっかけをいただいたすべての方、何かにつけてお世話になったJICの皆様、現地の日本人会の皆様、そしてさまざまな面で支えてくれた同期の奨学生の皆にこの場を借りてお礼を申し上げたいと思います。
ありがとうございました。

ユニオン近くの植え込み。シャンペーんの美しさを思い出す一枚です。

 

 

 

 

2013年7月12日
京都大学法学部4年生
乾 弘哲

佐藤香織さんの最終レポート

皆さま、ご無沙汰しております。2012年度奨学生の佐藤香織です。留学を終えて日本に帰国してから早1カ月が経ち、帰国当初は久しぶりの日本での生活に違和感を感じていましたが、今ではまた、もとの日本での生活に落ち着いています。
今回のレポートでは、前回のレポートに引き続き、①春学期の期末試験、②ボランティア旅行・シカゴ観光について最初に触れてから、最後にこの1年の留学を振り返りたいと思います。

(1)期末期間
前回のレポートを書いてからおよそ1週間後の5月1日に、春学期最後の授業がありました。周りの正規の学生たちは、期末テストが近づいていることを嘆いたり、また、その後に待っている夏休みを楽しみにしていました。しかし、私にとってはイリノイ生活最後の授業であり、終わった後は、「ここでもう授業を受けることはないのか」、と思って無性に寂しさがこみ上げてきたほどでした。夏が近づくのを感じさせる、からっと晴れた日だったので、賑やかなQuadの周りを歩きながら、渡米当初にSpeechの授業や小テスト等に悪戦苦闘していたときの出来事を思い出して懐かしくなりました。また、今ではこうしてイリノイの学生として学業や課外活動等に自然に溶け込めている自分を見て、この一年で少しは成長できたのかな、と感じたりもしました。

友人の卒業式に出席

期末期間の課題・試験としては、期末試験が3つ、期末レポートが3つありました。期末試験は、定期的な中間試験と同じような内容であったため、文献を読み、Review sessionに参加することで対応しました。一方で苦戦したのが期末レポートでした。ひとつあたり10ページ程度のレポートが課され、ライティングの授業で教わった論文テーマのリサーチをしたり、決まった書き方を細かく実践するのにとても時間・労力がかかり、どれも締め切り間際の提出となってしまいました。しかし、どれも様々な文献を参照できたこと、構成の整った、首尾一貫した論理展開ができたことなど、様々な点でライティング能力の向上がみられ、満足しています。特に、ライティングのクラスで書いた「学生の妊娠問題」について扱ったエッセイは、クラスの優秀作品として、来期以降の授業で模範エッセイとして参照されることになり、嬉しく感じています。

授業最終日のQuadの様子

(2)ボランティア旅行
5月10日にすべての試験を終えた後は、急いでパッキングを済ませ、12日から1週間、Alternative Spring Breakと呼ばれる学生ボランティア団体の主催するボランティア旅行に参加しました。旅行先がいくつかあった中で、私はワシントン州オリンピアに行き、“GRuB”という現地のボランティア団体の活動(農業を通じたコミュニティ支援、貧しい学生の支援)に加わる旅行に参加することにしました。

Alternative Spring Breakのボランティア旅行

Alternative Spring Breakのボランティア旅行のユニークな点は、旅行先まで車でドライブして行き、現地では、シェアハウスや借り家で生活し、グループメンバーで分担して自炊をすることです。私の行ったワシントン州は数あるAlternative Spring Breakの旅行先の中でも最も遠い場所のひとつで、片道2199マイル(3500km以上)の道のりを車で約40時間かけて向かいました。正直、現地でのボランティア作業よりも、行き帰りのドライブの方が体力的に辛かったです。(笑)
現地では、先ほど説明したGRuBという団体のもとで、花壇の種まきや簡単な花壇づくり、畑のメンテナンス等を、現地の低所得の家庭の学生たちと一緒に行いました。彼らは夏休みを利用して、このようなGRuBの主催する農業プログラムに参加し、学校で取得できなかった代わりの単位取得を目指しています。どの学生もとても意欲的で、花壇づくりなどについて何も分からない私たちに親切にやり方を教えてくれたり、一緒にゲームをしながら作業をするなかで、様々な交流ができました。
また、Kitchen Garden Projectと呼ばれるGRuBが主催する、地元の家庭を訪れて、庭に花壇をつくる手伝いをする作業があり、私は2日間、別々の家庭を訪問し、そこでの花壇づくりに参加しました。その中でとても印象的だったのは、「周りの貧しい家庭に自宅の花壇で栽培した野菜やフルーツを無料で配るために、今回花壇を作ることを決心した」、というご主人のお話です。オリンピアは、イリノイに比べて人口も少ない小さなコミュニティの分、コミュニティ内の交流や助け合いが盛んで、このようなお話をはじめ、ボランティア活動やシェアハウスで知り合った様々な人から心温まるお話をたくさん聞くことができました。
この1週間のボランティア旅行はあっという間でしたが、ボランティアの経験だけでなく、40時間のドライブ、メンバーとの自炊生活、オリンピア観光やハイキング等、本当にたくさんの貴重な経験を帰国前に体験することができて、とても有意義な時間が送ることができたと感じています。

(3)シカゴ観光

シカゴ名物のジャズバー

ボランティアからシャンペーンに戻った後は、数日シャンペーンでのんびりした後、すぐにシカゴに移り4日間観光しました。実はこれまで、サンクスギビング休暇時にシカゴでショッピングした以外に、あまりシカゴをじっくり観光する機会がありませんでした。今回は、じっくりシカゴを満喫したいと思い、まるまる4日間を観光に費やしました。シカゴ美術館、近代美術館をはじめとした有名な美術館で芸術を鑑賞したり、ミシガン湖のビーチを訪れたり、ルームメートやイリノイ大学の友人と会って最後に一緒に遊んだりすることができ、とても良い思い出になりました。また、日本の友人向けに大量にお土産を買うため、アメリカらしいお菓子や、ギャレットポップコーンと呼ばれる、日本にも昨年原宿に1号店がオープンし、反響を呼んでいるシカゴ名物のポップコーンを買いました。ギャレットポップコーンはChicago Mixと呼ばれるキャラメル味とチーズ味のポップコーンがミックスされたメニューが一番人気らしく、私もお土産に1ガロンも購入したのですが、キャラメルもチーズもとても濃厚な味がしておいしかったです。
シカゴでの4日間もあっという間でしたが、帰国前最後にこうしてゆっくり観光することができて良かったと思っていますし、また、機会があれば是非戻ってきたいと思っています。

ルームメートと最後にシカゴ観光したときです!

(4)最後に…振り返り
現在、帰国して1カ月が経ち、これまでのイリノイ大学の留学生活を振り返ってみると、本当に色々な面で成長できたと感じますし、また、今後どのようなことに取り組んでゆけばいいのか、という指針を知る大きなきっかけになったと感じています。
もともと留学といった、海外に出ることに対する憧れ、興味はあったものの、ろくに外人と話したこともない私にとってアメリカでの生活は未知でした。そのため、留学前も明確な目標や理想像を思い描けず、とりあえず外国での生活に慣れて、大学の授業についてゆく、ということしか正直最初は頭にありませんでした。それでも、今振り返ると、日本では想像もできなかったような体験をたくさん得ることができたと思っています。実際のアメリカの学生たちが会話をするスピードに驚き焦る一方で、日本で学んできた英語がちゃんと通じるんだなぁ、としみじみ嬉しく思ったり、また、授業でアメリカ人がジョークを交えたスピーチを言っても自分にはよく分からずショックを受ける一方で、それでもしっかり宿題をこなすことで満足のゆく成績を取れて達成感を味わう、というような何とも言えない相反する感情が共存する感覚はとても新鮮でした。きっと、日本にいたままでは、英語がネイティブのように話せない悔しさや屈辱感も、また反対にそんな環境でもしっかり成果を出せたことへの達成感や充実感もこれほど大きく味わうことは出来なかったと思います。そのような点で、本当にこの留学は私にとってかけがえのない貴重な経験でしたし、上で述べた、留学中に感じた悔しさは今後のモチベーションに、そして達成感は今後の自信に繋がってゆく、自分を大きく変えてゆくものとなりました。

最後になってしまいましたが、このような満足のゆく留学は、本当にたくさんの方々の応援、支えがあったからこそのものだと強く思っています。留学前から帰国まで様々な面で支えていただいたJICの方々、日本から連絡をくれたり、休暇中に遊びに来てくれた友人、そして留学中にお互い支えあい、刺激し合えたJICの同期メンバーには本当に感謝でいっぱいです。ありがとうございました。

第37期奨学生
佐藤 香織

奥谷聡子さんの最終レポート

日本は梅雨も明け、紫陽花が大輪の花を咲かせる季節となりました。
5月21日に無事、約一年間の留学生活を終え、 シャンペーンから日本に帰国して参りました。

帰国直後は、まるで竜宮城から戻った浦島太郎になったかのような不思議な感覚で、この一年は本当に起きたのかと自分を疑ってしまうほどでした。確かめるかのように、ふと下を見るとイリノイ大学で打ち込んだアイスホッケー部のスウェットに背番号の8番が刻まれているのを見て、少し安心感と切なさを覚えたのは今でも忘れません。あれから数週間が経った今、ようやくこうして最終回となる奨学生レポートに正面から向き合う心の準備ができました。

帰国日のウィラード空港。はじめてAlmaMaterに会えました。笑

長年親しみのあった東横線渋谷駅も、新たな首相への政権交代も、留学中は好都合だった円高経済も、卒業して4月から社会人となった同期も、帰国してみたら多くのことが変化していました。その一方で見慣れた環境や集団の中に戻ってみても、なんだか腑に落ちず 、その理由をじっくり考えたら、この一年で変わったのは周囲の環境だけでなく、自分自身だからだと気付きました。
最終レポートでは、出発前、留学中、帰国を通して感じてきた偏見や疑問に自分なりの考えをまとめ、帰国間際の数週間について、自由に書き散らしたいと思います。

⒈.留学の3つのウソ
2.期末試験と引っ越し
3.困難と挑戦

1.留学 〜3つのウソ〜
其の一【留学をすれば英語が自然と上手くなる】
海外へ行き、異国の地に身を置けば、語学力は自然と身に付くとのことをしばし耳にしますが、その考えは誤りだと思います。海外へ行っても、日本人同士で常に固まっていたら英語力は上達しませんし、極端な話、最低限の英語だけで生活していくことは容易にできます。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校は全米大学では2位、州立大学では1位の留学生数を誇り、国際的なキャンパスとして有名ですが、私が目にした実態は想像と少し異なり、この矛盾に悩むことが多々ありました。確かに、学生の20%は留学生で、中でもアジアからの留学生は多く、人種構成も多様です。しかし、キャンパスは人種のるつぼというより、綺麗に詰められたお弁当箱のような感じで、現地の学生と留学生、人種間には見えない壁がありました。 例えば、アジア人はアジア人同士で固まり、白人は白人同士、黒人は黒人同士、ヒスパニック同士などとそれぞれの集団間の混ざり合いや交流を見かけることは残念ながら少なかったです。キャンパスは世界中の学生が融合された縮図というよりも、人種がグループを成して分散していました。 同じアメリカ人同士であっても白人と黒人がそれぞれのコミュニティと文化があるように、同じ国籍や人種の空間を心地よく感じるのはごく自然なことだと思います。だからこそ、敢えて居心地の良い領域から一歩踏み出し、自ら外部へ働きかける行動力がなければ内部のコミュニティに入って行くことは難しく感じました。そういう意味で、体育会アイスホッケー部に入部し、 敢えて自らを現地の学生と協力しなければならない環境に置いたことが、その見えない壁を乗り越えるための最善の決断だったと思います。

:Illini Women’s Hockey Farewell Banquet 卒業生に素敵なプレゼントが贈呈されました

其の二【海外の学生は優秀である】
出発前は一般的に聞いていた噂から、海外の学生はレベルが高く、優秀であるとのイメージを漠然と抱いていました。ですが、実際には学生や教育内容のレベルという意味では、日本と変わらない、むしろ日本の方が高度だと感じることもしばしありました。しかし、決定的に違うのは大学の教育システムと卒業後の進路システムです。確かに海外の学生は日本の大学生と比べて圧倒的に勉強量が多いです。College Life Triangleとはアメリカの大学生活を表す三角形で、そのうち二つしか頂点を選ぶことができないのが実によくその様子を物語っています。イリノイ大での ドロップアウト率は50%と卒業までの道のりは険しく、競争も激しいです。しかし、なぜアメリカの大学生はこれほど勉強するのかと言えば、第一に卒業後の就職や進学にはGPAが重要視されているということ、第二に大学教育の密度が高く、職員や教授が学生の指導に熱心であるということが挙げられます。こうしたシステムが教育を変え、大学を変え、そして学生の意欲を高めているのだと思います。競争の激しい環境の中で一年間学び、日本の大学教育との密度の格差に危機感を覚えられずにはいられませんでした。

其の三【外国人は日本に関心がある】
留学生の数が全米2位に入るイリノイ大学へ行き、驚いたのがキャンパスでの日本人の存在感の薄さでした。大学が公表している2013年春統計によるところ、留学生の数では1位が中国(3,693名)、2位韓国(1,303名)、三位インド(874名)。。。下ること15位に日本がわずか61名でした。世界第三位の経済大国とはいえ、今や世界の関心は中国、文化面では特に韓国へ移り、キャンパスにいる留学生の数の上でも日本の存在感は非常に薄かったです。特に、中国や韓国からはエンジニアとして将来アメリカで働くチャンスを求めて留学する学生が増える一方で、日本人留学生は大幅に減少傾向にあり、グローバル化と叫ばれる反面、就職システムが学生の考え方を内向的にさせ、世界の波から日本は遠ざかっているように感じました。逆に、アメリカ人学生は外向的なのかと言えば、そうでもなく、むしろ世界中の人がアメリカに流入してくるので、彼らは海外へ行く必要性をあまり感じていませんでした。内陸部の大学だから尚更、イリノイ大のStudy Abroad Officeは内向的な国内の学生の目を海外へ向けることに苦労しているようでした。しかし、日本のアニメや文化が好きで、日本に興味を持ってくれる学生もいました。中でも中国人や韓国人などアジア人に多かったです。日本国内にいた時は、あくまでも私のアイデンティティは日本人でしたが、海外では私はアジア人であり、その中の日本人として見られることが多く、いつの間にかそんな二重アイデンティティが自分の中で芽生えていました。だからこそ、とりわけ日本の文化や日本の歴史に興味を持ってもらえるということは有り難く、この一年間、日本にもともと関心を持っている学生とそうで無かった学生に対しても自ら働きかけることに努めてきました。寮の日本語教室でカルタ大会をやったり、アイスホッケーの友人と日本館のティーセレモニーに行ったり、ポットラックパーティーで特訓した巻き寿司を振る舞って盛り上がったり。ちっぽけな一学生ではありますが、私の日本の伝え方や行動一つで日本に対する印象は大きく変わりますし、この一年で私が出会った周囲の人たちの印象を少しでも変えられたなら幸いです。

寮の日本語教室の模様

2.期末試験と引っ越し
今学期は期末ペーパーが3つと期末試験が3つ有り、試験期間初日から最終日までと嫌らしいスケジュールでした。なぜ嫌らしいかと言えば、期末期間終盤までには大多数の学生は試験を終え、続々と引っ越して出て行き、残された学生は打ち上げパーティーに行くか、ガラーンとしたキャンパスでひたむきに試験勉強に取り組み続けなければならないためです。(笑;)最終日の期末試験は2時間半の長丁場で、試験を終え、鉛筆を下に置いたときには拳の裏が真っ黒でした。試験をようやく終えた夕方4時には、嬉しいと感じるどころか、急いで寮に戻って夕方6時までに引っ越す準備を始めねばなりませんでした。少しずつパッキングはしていたものの、期末期間中はほとんどできず、寮での最後の二時間は忘れもしないパッキング作業との激闘でした。引っ越し間際まで試験勉強やパッキングに忙殺され、一年間お世話になった友人一人一人、特にルームメイトとじっくりお別れもする時間がない状況に悲しくなり、パッキングを必死にしながら涙が出てきました。すると、ルームメイトをはじめ、残った寮のフロアメイトたちが全員私の部屋まで集まってくれて、「私も手伝うよ!」と総動員でパッキング作業を開始しました。どこの引っ越し業者かと思うような光景でしたが(笑)、友人たちが手伝ってくれたおかげで、お世話になった友人たち一人一人と涙の別れを惜しむことができました。ルームメイトのアレックスをはじめ、寮の友人はこの一年間で私の家族となり、最後まで本当に彼らに助けられました。ありがとう。

引っ越し〜寮の友人たちとの別れ〜 中央はルームメイト

 

 

Global Crossroads寮のお別れパーティーでの集合写真

3.困難と挑戦
この一年を振り返ると、様々なハプニングや危機に直面し、海外ではその都度自分で考え、自分でなんとかしなければならない場面が多々ありました。その一方で、時に人の優しさや親切に救われることもありました。

冬期南米ペルーの海外研修を終え、リマからアメリカに戻る時のことでした。アメリカ人の教授とクラスメイトたちはスムーズに入国審査を通過できたのですが、日本人の私は入国審査に2時間かかったため、クラスメイトとの団体飛行機に乗り遅れ、ただ一人フロリダに取り残されたことがありました。どうしたらいいのかも分からず、取り残されてしまったのでまずは航空会社のカウンターで事情を説明し、キャンセル待ちの振替便でようやく四時間後に飛行機に乗れました。あの時は、さすがに心細かったですが、まずは冷静に考え、自分でなんとかしなければとの気持ち一心でその危機を乗り越えることができました。

またある時は、ボストンからシャンペーンまでの飛行機が途中で急にキャンセルになり、シカゴで塞き止められてしまったことがありました。航空会社のカウンターで他の乗客と共に抗議をしましたが、天候が理由で振替便の手配も無く、残された手段はLEXバスという悪名高いバス会社だけでした。飛行機のキャンセルで流れてくる乗客をいいことに、普段より割高の値段でシャンペーンまでの席を販売していました。翌日は中間試験もあり、絶対に帰らなければならない状況でしたが、バス会社は現金しか受け付けないとのことで、中には私を含め、現金が手元に無い学生が多く、バスに乗れずに困っていました。「これだと中間試験までに帰れない」と途方にくれていたところ、その場にいた人たちが幸いにもとても親切で、「あなたたち現金が手元にないなら、私が立て替えるわよ!払うのは着いてからで良いから。」といって数人のおばさんたちと学生が力を合わせて助け合い、なんとか全員バスに乗れました。シャンペーンという中西部出身の人たちだからなのでしょうか、あの時は彼らの親切に救われました。

こうして直面した様々な困難も、留学中の素晴らしい経験も、日本イリノイ同窓会をはじめ、両親の支援があってこそ可能だったのであり、その多大なご支援と温かいサポートを常に実感しました。留学の閉幕が切なく感じるのは、留学先で出会った友人や教授が私を変えるかけがえのない一部となったからなのだと思います。JICへの応募がイリノイ大学への留学という新たな扉を開けてくれたように、今後はUIUCでの留学経験を新たな挑戦へのステップにしていきたいと思います。
留学を通して大変お世話になりました日本イリノイ同窓会の皆様と両親にこの場を借りて感謝申し上げ、最終レポートの報告とさせていただきます。

鹿山ゆかりさんの2013年4月分奨学生レポート

JICの皆様、またこの奨学生レポートを読んでくださっている皆様、ご無沙汰しております。ずっと寒かったシャンペーンは日に日にあたたかくなってきており、春の到来を感じています。
さて、今回はI.春学期の授業、II.春休み、III.競技ダンス、IV.その他、について書きたいと思います。

I.春学期の授業
現在履修しているものの中からいくつか紹介します。

★GLBL 392 International Diplomacy and Negotiation
前回も紹介した通り、外交と交渉について学ぶ授業です。イリノイ大学のAdvanced Composition Courseの一つに指定されており、授業の目的の一つがライティング能力を身に着けることだそうです。日々の課題に加え、学期末には30枚ほどのペーパーを提出することになっています。
前半期には、交渉や外交に関する基礎的な概念や用語を学びました。授業も後半期に差し掛かり、ついに先日、オンラインシュミレーションシステムを使って他大学の学生との模擬国際会議が始まりました。会議は日々のメールのやり取りと、指定された時間にパソコン上で行われるオンライン会議の2種類から成るものです。各国がそれぞれProposalを作成し、交渉を通してその採択を目指します。先日、私の担当国であるブラジルの目標や戦略が決まりました。チームの仲間と協力しながらこれから3週間、楽しみながら取り組んでいきたいと思います。

★HRE 199 Leadership in Global Engagement
前回紹介した、約15名という少人数で行われている授業です。テーマは文化、リーダーシップなど幅広いものとなっています。毎週20ページほどのリーディングが課され、毎回それに基づいてディスカッションが行われます。リード役はイリノイ大学の学生1名と澳門大学の学生1~2名のペアが毎回交代で務めます。

ディスカッションの様子。毎回メンバーが交代でお菓子を持ち寄ったりと、リラックスした雰囲気の授業です

私が澳門大学の学生と共にリード役を務めた時のディスカッションのテーマは ”文化による幸福に関する価値観の違い” でした。リーディングの中身をより深く理解してもらうため、また自身の幸福とは何かについて考えてもらうためにディスカッショントピックの他、ゲームやプレゼンテーションを用意しました。当日は思った以上に学生たちの積極的な発言・参加があり、やりがいを感じました。

 
★SOCW 199 Community-Based Service Learning
前回のレポートでも紹介した、シャンペーンの中学校Franklin Middle Schoolに行き、チューターとして学生の宿題や課題の手伝いをするという授業です。セッションに参加する学生は学力・バックグラウンドが多様であり、毎回柔軟な対応が求められます。
宿題を手伝うことが私たちチューターの主な仕事ですが、時にはずっと中学生の話を聞いているということも。ある生徒は自身が参加しているボーイスカウトの話を興奮気味に、また別の生徒は自分の大学進学についての話をしてくれました。彼らと関わることで、アメリカでの公教育がどのようなものか(もちろん、地域や学校によって違いはあると思いますが)を肌で感じることができ、とても嬉しく思います。
II.春休み
3月中旬に1週間ほどの春休みがありました。私は、前半はシャンペーンにて競技ダンスの練習をし、後半はインディアナで行われた大会に出場してきました。競技ダンスについてはIIIで詳しく述べたいと思いますので、ここではそれ以外のことについて述べたいと思います。

★ミュージカル、”Dreamgirls”
春休みの初日、友人と共にミュージカル”Dreamgirls”を観てきました。会場であるAssembly Hallはバスケットボール等の試合や大きなイベントが開かれるスタジアムでした。

Assembly Hallの様子。写真は大学のホームページより

キャストの方々はプロとしてデビューされたばかり方も多く(それを感じさせないほど素晴らしい技術を持った方々ばかりでしたが)、舞台上はフレッシュなエネルギーであふれていました。
面白かったのが、観客の反応です。会場全体の悪役に対する冷たい反応、また主役を応援する姿勢が拍手・歓声等にはっきりと表れていました。ミュージカルの内容、歌、ダンス、演技…どれも素晴らしく、あっという間の2時間半でした

 

★大雪、そして休講
春休みの最終日、朝起きて窓の外を見ると雪が降っていました!昼から夜にかけて雪はどんどん積もっていき、ついには(雪があまりにもひどいため)シカゴからシャンペーンまでの高速道路を通らないよう警察から勧告が出るほどに。友人からイリノイ大学は雪で休講と言うことはありえないと聞いていたのですが(シャンペーンでの雪への対応は素晴らしいです。雪が降った翌日通行・歩行に困ることはほとんどありません)、春休みの初日はまさかの休講となりました。
Quadや寮の庭では、雪合戦や雪だるま作りをしている学生達を多く見かけました。

窓から見た雪の様子。遠くが全く見えませんでした。

III.競技ダンス
この2月に始めた競技ダンスですが、思った以上に楽しく、その魅力にはまっています。現在は4月半ばにある最後の大会に向けて練習しているところです。

★競技ダンスとは
競技ダンスは社交ダンスの競技版、と言って差し支えないと思います。ダンスの種類は大きく分けてInternational Latin(サンバ、ジャイブ、チャチャ、ルンバなど)、International Standard(ワルツ、タンゴ、クイックステップなど)、American Smooth(International Standardのアメリカ版)、American Rhythm(International Latinのアメリカ版)、の4つがあります。また、競技はレベル別に行われるため(大学生向けの大会は大体下から順にNewcomer、Bronze、Silver、Gold、Novice)、初心者でも気軽に参加できます。私は現在、Newcomer(競技を始めて1年~1年半の人向けのカテゴリー)とBronzeというカテゴリーに参加しています。

★大会
私の所属しているチームは、日々の練習とコーチによるレッスンの他、中西部で行われる大会に参加しています。

*Arnold Youth Dancesport Classic (Columbus, OH)
3月上旬、オハイオ州コロンバスにて開かれた大会です。この大会はThe Arnold Sports Festivalの一部として行われており、会場では競技ダンスのほか、チアリーディング、卓球など45のスポーツの大会・博覧会が行われていました。The Arnold Sports Festivalはかなり大きな大会であるらしく、全体で毎年2万人近くの参加があるそうです。1989年にカルフォルニアの元州知事であるArnold Schwarzenegger氏とオハイオ州出身のJim Lorimer氏によって設立されたそうです。
競技にはプロや全米レベルの大会に出ているアマチュアのダンサーも参加しており、踊るのも見るのも楽しい大会でした。昼にはSchwarzenegger氏を招いてのエキシビションが開かれ、ダンサーの素晴らしい演技に観客たちは釘付けでした。

大きな大会なのでピリピリした雰囲気になるのかと思っていましたが、私の出たカテゴリーでは皆リラックスして大会を楽しんでいました。

ワルツ終了後の写真。審査員と観客にお辞儀を終えたところです。

*Irish Dancesport Gala (Norte Dame, IN)
春休みの終わりにインディアナのノートルダム大学にて開かれた大会です。大会前日のOpening Dance(参加者の練習セッション)から始まり、和気藹々とした雰囲気が印象的でした。私はNewcomerのInternational Latinのジャイブにて準決勝まで進むことができました。印象的だったのは、準決勝からフロアの雰囲気が一変したことです。ダンサーたちは皆ピリピリし始め、入場してからは場所の取り合いとなりました(ジャッジにアピールするため)。決勝に進めなかったのは残念でしたが、とても楽しい時間でした。
一番の目玉(!?)は大会後のFun Danceというセッションです。この時間はマンボやサルサ音楽が流れ、参加者は自由に踊ります。パートナーと真剣に踊る人、リラックスしながら踊りを楽しむ人、のんびりとダンスを観ている人、洋服を脱ぎ始める(!)人、コメディアンのような動きをする人…それぞれがセッションを心から楽しんでいる姿が印象的でした。アメリカらしいなぁと思ったのが、このセッションにもジャッジがいたことです!数分後、全体の中から(面白さと奇抜さで)目立ったカップル(チーム)が数組選ばれ、決勝が行われました。決勝戦は大変白熱し、音楽が笑い声で聞き取れないほどとなりました。

★ダンスチームについて
競技ダンスを始めて良かったと思うことはたくさんありますが、一番嬉しいのは素晴らしい仲間に出会えたことです。右も左も分からなかった私に丁寧にステップを教えてくれたり、一緒にダンスシューズを買いに行ってくれたり、大会前に親切にアドバイスをしてくれたり…。競技ダンスの楽しさを教えてくれたのは、そして競技ダンスを私にとってより特別なものにしてくれたのは、チームのメンバーたちです。彼らの多くは大学院生であり、忙しい勉強の合間をぬって練習や大会に参加しています。彼らからはダンスについて、またそれ以外のことについて多くを学びました。
現在、今学期最後の大会に向けて練習しています。仲間と共に最高の演技ができたら、と思っています。

IV.その他
留学生活も残すところあと1か月となり、時の経つ早さに驚いています。来たばかりの頃は毎日が驚きや発見の連続でしたが、今、それらは(良い意味で)私にとって当たり前の日常となっています。きっとシャンペーンは私にとって第二の故郷のような場所となるのだろうな、と感じています。
留学生活が終わるのは信じがたいことですが、残り少ない留学期間、毎日を思う存分楽しみ、多くのことを学んで帰国したいと思います。

佐藤香織さんの2013年4月分奨学生レポート

JICの皆さま、いかがお過ごしでしょうか。第37期奨学生の佐藤香織です。先月の春休みまで、大雪等とても寒い天候が続いていたシャンペーンにもようやく春が訪れ、街が賑やかになってきているのを感じる毎日です。イリノイでの生活も残すところ、あと1カ月を切り、今までのこちらでの生活を振り返る機会が増え、もうすぐここを発つことを考えると、寂しさや焦りといった複雑な感情がこみあげてきます。
今回のレポートでは、①春学期の授業紹介、②春休みでのボランティア活動、③その他の活動、の3点について詳しく触れていきたいと思います。

(1)    Spring Semester
今学期履修している科目は以下の7つです。
SOCW410 Social Welfare Policies and Services
SOC364 Impacts of Globalization
MACS351 Social Aspects of Media
RST330 Leisure and Consumerism
KIN101 Dance Activities
ESL110 English Pronunciation for Academic Purposes
ESL115 Academic Writing
このうち、最後のpronunciationのクラスは、授業時間は他と変わりませんが、単位には含まれないため、今学期は計16単位を履修しています。また、前回のレポートではACES270 Consumer Economicsを履修予定と記載しましたが、似たような授業で、Group projectやReaction paper等の課題があり、シラバスもよく組んである、RST330により関心を持ち、履修科目を変更しました。

①    SOCW410: Social Welfare Policies and Services
アメリカでの様々な社会問題について、ドキュメンタリーやケーススタディを扱いながら学習しています。クラスはわずか10人程度のため、ディスカッションをする機会も多く、また、専攻である社会学と関連した分野(格差問題や医療制度等)が中心であり、とても興味深い授業です。先月には、各々Social Workに関わる団体をひとつ選び、活動内容を吟味(Strength, weakness, opportunity, threat)し、どのように改善し、どれほどの資金が必要かについてリサーチする課題がありました。また、来週にはふたりひと組で25分のプレゼンテーションがあり、その準備で忙しくしています。

 
②    RST330: Leisure and Consumerism
Recreation, sports and tourismと呼ばれる、日本ではなかなか受けられない学科の授業です。授業では、レジャーやスポーツがどのように現代の我々の生活に浸透してきたか、また、現代の消費社会は我々にどのような影響を与えているのかについて学習しています。シラバスが良く練られていて、授業以外に、リアクションペーパーやリーディングサマリーなど小さな課題が多く出されています。グループプロジェクトでは、Hines Wardという韓国系アメリカ人のフットボール選手が、数年前のスーパーボールでMVPに選ばれたことを通じて、韓国におけるアイデンティティの概念がどのように変化したかについて話し合い、発表しました。

発音の授業でもらった個別のフィードバック

③    ESL110: English Pronunciation for Academic Purposes
本来なら秋学期に履修しておくべきだったのかもしれませんが、1学期間アメリカで学習し、発音をもう少し基礎から学んでおいた方がよいと感じ、またこの機会を逃したらなかなか発音から見直す機会がないのではないか、と考えたことから、履修することにしました。当初は、単位認定もされず、本当に履修しようか迷いましたが、実際授業を受けてみると、とてもしっかりしたカリキュラムで満足しています。毎回の授業では、ひとつひとつの発音を学ぶだけでなく、フレーズの中でどこにアクセントをつけて話すか、また単語のどの母音にアクセントがつくかを予測する訓練など、なかなか学ぶことのできない内容が盛り込まれています。毎回必ず宿題があり、1学期間にわたって行われる12回のレコーディング課題や、月1回ある講師との面談、チューター制度等、とても充実しています。

④    ESL115: Academic Writing
この授業も、発音とともに、ライティングの基礎を学ぶコースになっています。アメリカではAPAスタイルと呼ばれる論文の書き方が一般的で、日本の論文に比べて、引用や参考文献等の決まりが厳しく決まっていて、成績にも関係します。アメリカ人の学生も高校から習い始め、大学でもライティングのクラスが必修であるほどライティング能力を重要視しているので、私も基礎の授業を受講しようと思いました。授業ではAPAスタイルの方法や、どのようにふさわしい参考文献を見つけ、使用するか等ひとつずつ細かく説明され、他の授業でのライティング課題の参考にもなり、とても役立っています。また、学期末には、集大成として8ページのリサーチペーパーを提出することになっています。

(2)    春休み
3月の中旬にある1週間の春休みの間は、シャンペーンにとどまり、ボランティア活動に参加しました。Allerton Parkと呼ばれる、キャンパスから車で30~40分のところにある、私立庭園にて、春に向けての木植えや、花壇の土換え、古くなった物置き小屋の解体、ビニールハウスの植物の水やり等、様々な仕事を行いました。このボランティアに参加しようと思ったのは、たまたま寮の掲示板に貼ってある募集ポスターを見て、特に予定が決まってなかった私は、ちょうど良いチャンスだと思い、応募したことがきっかけでした。正直、この庭園がどのようなものか知らずにボランティアに行った訳ですが、初日のオリエンテーションでは、1500エイカー以上もの敷地内にある、古い建物や庭園、世界各国から集められた銅像、ハイキングコースを案内してもらい、Allerton Parkの広大さを実感しました。スタッフのみなさんも、とても親切に仕事を教えてくださり、他の5人のボランティアメンバーとも毎日一緒に仕事をするにつれ、結束が生まれていったように感じます。気候は氷点下前後と、とても寒かったですが、とても充実した春休みを過ごせました。

Allerton Parkでのボランティア

(3)    その他
①    ズンバダンス・ヨガ
今学期が始まってから、ARCと呼ばれるジムで行われているズンバダンスとヨガのクラスにほぼ毎日通っています。ダンスの授業で知り合った友人に進められたのがきっかけで、通いはじめました。もとはブラジルで始まったズンバダンスをアメリカ人好みにエアロビクス風にアレンジされたダンスは、運動不足の私には良い運動です。同じくダンスの授業でヨガを習って以降、関心を持ち、早速ヨガマットを購入し、ヨガやピラティスのクラスにも通っています。その他にも、ARCには屋内プールがあり、夕方から夜10時まで利用でき、脇にはサウナが設置されており、とても施設が充実しています。4月末には、屋外プールも開園するため、帰国前に一度訪れたいと思っています。

ARCで行われているZumbaダンス教室

②    5月のボランティアトリップ
学期末後、5月の中旬から2週間弱、ワシントン州オリンピアへボランティア旅行に参加しようと考えています。Alternative Spring Breakと呼ばれるボランティア団体が企画した活動で、現地では貧しい子どもたちとともにLocal Food Systemについて学び、Garden Kitchenを建てる等の活動をする予定です。旅行前の活動として、現在毎週のグループミーティングやキャンパス内でFund Raising活動に取り組んでいます。

③    日本館
ひなまつりの日に日本館で行われたイベントの見学に行ってきました。イベントでは、郡司先生ほかインターンシップをしている学生も皆きれいな着物をきて、お茶の披露をし、手づくりの和菓子をごちそうしてもらいました。

日本館でのひなまつりイベント

イリノイでの生活も残りほんのわずかとなりましたが、最後まで色々なことにチャレンジし続けていきたいと思っています。また、今回の留学を支えてくださっている皆さまに感謝し、7月のリユニオンパーティで良い報告ができるよう、最後の期末期間やその後の課外活動にも積極的に取り組んでいきたいと思います。

バスケットボールの試合 vs Indiana State University

 

 

 

 

 

第37期JIC奨学生
佐藤 香織

奥谷聡子さんの2013年4月分奨学生レポート

シャンペーンは木々が芽吹き始め、うららかな春の日差しが心地よく感じられる季節になりました。 1週間前とは一変して、キャンパスはTシャツ姿で道ゆく学生で溢れています。友人に、”Satoko, there are only two seasons in Illinois. Summer, and Winter” と言われ、なるほどねと笑ってしまいました。 留学生活も残すところ、4週間となったところで4月分のレポートをお送りさせていただきます。 今レポートは、Ⅰ授業、Ⅱ課外活動、Ⅲ寮生活の3点についてご報告いたします。

日本館の桜も芽吹きはじめました。

Ⅰ授業 PS283 International Security [Professor. Steve Miller]  この授業では、国際政治における安全保障とアメリカの外交政策について学んでいます。 講義の他に、国務省の現役外交官によるスペシャルレクチャーなどもあり、大使館での勤務経験や、9.11直後のホワイトハウスと国務省、防衛省の舞台裏について生の声を聞くことができました。毎週金曜日のディスカッションセクションでは、授業で学んだ理論をもとに、中国の安全保障ジレンマ、イランの核開発、テロリズム、人道的介入などについて議論しています。  最近、印象に残ったディスカッションでは、核外交と原爆投下の正当性について議論しました。TA[Teaching Assistant]が「あなたたちが仮に大統領だったら、広島、長崎に原爆を投下しますか?」とクラスに問いかけたところ、多数のアメリカ人学生たちが是と答えました。その理由としては、原爆は地上戦がもたらしていたであろう犠牲者を救い、戦争を早期終結させるための必要悪であったとの見方がアメリカでは一般的だからです。他方で、私は 当時の日本の悲惨な経済状況や軍の劣勢という観点から原爆投下は戦争の結果に影響はなかったと主張しました。感情論だけで話しても相手には伝わらないと感じたので、できるだけ論理的に伝えようと努めた一方で、原爆に対する議論が論理一筋で、そのドライな空気に違和感をも隠せませんでした。アメリカで 原爆の非人道性は誰が伝えるのでしょうか。「安全保障とモラルはそもそも相容れないものなのだ」と力説する米軍幹部候補生を見て、正直、アメリカの、そして世界の将来に懸念を覚えました。

PS199 Undergraduate Open Seminar: U.S. State and Local Politics [Megan Remmel] この授業では アメリカの連邦政府と州政府の憲法や法律、権限の違いについて学んでおり、今学期最も興味深い授業です。なぜかというと、アメリカの政治文化や宗教、人種の多様性は連邦制という政治システムに鍵が隠されているということをこの授業が現実の出来事と繋ぎ合わせてくれたためです。授業では、現在まさに話題沸騰中の銃規制、同性結婚、麻薬の合法化、妊娠中絶などを巡る問題について扱っています。州の政治文化はこれら全ての議題と深く関連しています。例えばイリノイ州は、リンカーン大統領の地として有名である一方で州政府の汚職スキャンダルが全米ランキング11位、C評価と悪名高くもあります。イリノイの政治文化は古くから個人主義的であり、政治はあくまでも功利的観点からプロに委任すればいいと多くの人が考えています。 同性結婚や妊娠中絶に関しても、イリノイは比較的リベラルなのに対して、州を一歩外に出たインディアナ州では対照的な政策が推進されていたりします。アメリカと一言で言えども、カリフォルニアとユタ州は全く異なり、土着の政治文化が地域特有のアイデンティティと価値観を形成しています。本来なら連邦法で違法なことが、州レベルでは合法であったり、ある州で違法なことでも他州に移動すれば合法であるなど、連邦政府と州政府間だけでなく、州政府同士の対立が複雑な問題を生み出しています。 ファイナルペーパーでは、イリノイ州とユタ州の妊娠中絶政策について現在リサーチを進めています。

GLBL250 International Development [Prof. James Kilgore] この授業では、国際開発について学んでおり、教授はジンバブエに20年間滞在経験があるアフリカ開発分野のプロです。授業スタイルも少人数制ディスカッションで、教授に学生一人一人の顔と名前を覚えてもらえる親密な形式になっています。毎週リーディング課題とグループプレゼンテーションをしなければならないので、準備が大変な授業ですが、「グローバリゼーションと開発の矛盾」について執筆した中間ペーパーが、優秀論文に選ばれたのはとても嬉しかったです。現在はファイナルプロジェクトとして、開発に関するドキュメンタリーの制作にパートナーとともに取りかかっています。最後の授業日に教授のご自宅でポットラックをしながら、プロジェクトの最終発表をするのを 今から楽しみにしています。

PS282 Governing Globalization [Prof. Konstantinos Kourtikakis] このコースでは、グローバル化が各国の外交政策や環境保護政策、人権、貿易、国家主権に与える影響について学んでいます。人、モノの国境移動が盛んになるにつれて、世界経済の融合と国家間の連携深化が増々進んでいます。多国籍企業が世界のあらゆる地域に拡大する一方で、インドネシアのNike Sweatshopsでは労働者の人権侵害が、ナイジェリアではShell Oilによる環境破壊が今なお行われています。世界的な富裕層が増大していく一方で、未成熟な発展途上国の経済はグローバル化の波についていけず、先進国でも中流階級が没落し、貧困化する現象が起きています。世界は豊かになっているはずなのに、海の向こう側の市民の人権侵害や環境破壊の犠牲の上で成り立っているという矛盾をこの授業で映像やディスカッションを通して分析しています。Joseph StiglitzやThomas Friedman、Saskia Sassen など大変興味深い文献を授業では取り扱っています。

 

Ⅱ課外活動

St.Louis Blues チームのロゴ

NHL プロアリーナで試合 2月23日にミズーリ州にあるプロNHLチーム、St. Louis Bluesのホームアリーナで(Scottrade Center http://www.scottradecenter.com/ ) アイスホッケー部の遠征試合を行いました。ホッケー選手の誰もが夢見るNHLのプロアリーナで、米国留学一年目の私が、幸運にも人生でおそらく最初で最後にその氷上を滑ってきました。それだけでなく、公式レフェリーのロッカールームを使用させてもらえ、カナダのアイスホッケー連盟本部に直通する有名な赤い電話機にも直に触ってきました。試合は残念ながら負けてしまいましたが、そんなことは気にもせず、人生に一度の経験をさせてもらえただけでチームメイトは皆大満足でシャンペーンに帰ってきました。笑

St.Louis Blues のホーム、Scottrade Centerのリンクでチーム集合写真

決勝プレイオフ 3月8日から10日にかけてRomeoville, ILのCanlan Ice ArenaでWomen’s Central Hockey Leagueの決勝プレイオフが開催されました。この日に至るまでに、毎週2日間の深夜練習を7ヶ月重ね、週末はチームメイトと長時間ドライブをして試合へ遠征し、シーズン計14試合を経て、ようやく決勝プレイオフへの切符を手に入れました。1試合目から私たちは強豪チームにぶつかり、第2ピリオドの終盤でゴールキーパーとの一騎打ちになり、私がゴールを決めました。激戦の末、試合結果は3試合とも同点引き分けになり、僅差で決勝戦には進めませんでした。でも、Illini Women’s Hockey B Teamチーム史上最高の成績をプレイオフで残し、私もその歴史に足跡を刻んできました。最終試合直後のロッカールームは、悔し涙を流すチームメイトたちでしばらく静まり返っていましたが、私の中では悲しいという気持ち以上にチームへの感謝の気持ちが溢れて涙が止まりませんでした。普段は厳しいコーチのAdamが最後に私のところへ来て、「チームに加わってくれて本当にありがとう。君はこのチームに欠かせない一員だった。」と目を真っすぐに見て言ってくれました。イリノイ大学での留学生活を振り返ると、アイスホッケー部に入部して本当に良かったと心から思います。ホッケー部のおかげでたくさんの友人に恵まれ、チームワークの真の意味を学びました。 チームワークとは、仲間意識ではなく、異文化から来た人たちの集まりでも、多様性を活かして同じ目標に向かって連携することなのだと思います。チームに所属しているからといって、チームの一員になれるわけではなく、自分にできることを考え、行動に移して、はじめて周囲のリスペクトを得られるのだと学びました。たくさんの思い出を与えてくれたチームへの感謝の気持ちを込めて、プレイオフ直前にムービーを作成して贈ったら皆涙を流して喜んでくれました。以下のリンクからムービーをご覧になることができます。 http://www.youtube.com/watch?v=ShFf9vVDBI8

プレー中の写真

青春のシーズンは3月10日を以て幕を閉じましたが、隣町のBloomingtonのコミュニティリーグに友人たちとチームを組んで、帰国までの4週間、アイスホッケーを続けることになりました。今月末に学年末のTeam Banquetが企画されているので、次回の最終レポートでご報告できればと思います。

Final Game前の円

Ⅲ寮生活                                                       Global Crossroads Chicago Trip 4月6日から寮(Global Crossroads)企画で1泊2日のシカゴ旅行に出掛けてきました。Global Crossroadsの学生限定でバスを貸し切り、Shedd AquariumやNavy Pierへ行き、ミシガン湖の湖畔を自転車でサイクリングをしました。夜は、Second City Comedy Clubでコメディーショーを楽しみ、シカゴのナイトライフを満喫してきました。Living Learning CommunityはLLC限定の旅行企画やイベントも盛りだくさんあり、特にGCは皆仲が良く、疲れた日も寮に帰ると暖かい仲間に囲まれ、今や皆私の家族です。

Navy Pierにて友人たちとジャンプショット

刻々と近づく4週間後の別れのことを考えると、正直切なさが込み上げてきますが、尊敬できる大切な友人に出会えた奇跡や その人たちとの思い出はこの先消えること無く、 一生私の人生のかけがえのないかけらであり続けるのだと思います。

私の座右の銘に「一期一会」という言葉があります。 千利休の茶道の心得ですが、「誰かと出逢っているこの時間は二度と巡っては来ないたった一度きりのものである。だから、この一瞬を大切に思い、二度とは会えないかもしれないという覚悟で人に接しなさい。」という意味が込められています。

残すところ4週間の留学生活、この言葉を心に留めて過ごしていきたいと思います。 最後になりましたが、いつもご支援いただいている日本イリノイ同窓会の皆様と両親にこの場をお借りして感謝申し上げ、第3回のレポートとさせていただきたいと思います。

乾弘哲さんの2013年4月分奨学生レポート

皆様、お久しぶりです。2012年度奨学生の乾弘哲です。春休み直後に大雪に見舞われたアーバナシャンペーンでしたが、その後は順調に気候も穏やかになってきており、最近では、Tシャツ一枚で登校する学生も多く見かけるようになりました。  今回はあとわずか1カ月となってしまった留学生活についてお知らせします。

I. 授業

II. 春休み ~オーストラリアで模擬国連~                                                                        III. その他課外活動 ~宗教と映画~                                                                              IV. 英語の発信能力

美しい青空とスポーツ施設のCRCE(Campus Recreation Center East)。

I. 授業 前回のレポートで報告しましたように今学期はACDIS(Arms Control, Disarmament, and International Security)科目で時間割を作成したため、文系・理系科目を半分ずつ取ることになっています。

GELG118 Natural Disasters (Prof. S. Altaner)  3・11の大震災を始め、さまざまな自然災害を受ける運命にある日本を、英語の講義を通して振り返ってみたいと思い受講しました。基本的にFreshmen向けGeneral Studiesの授業なので、最初のうちは地震や台風など、日本の中学校の地学で習うような初歩的なことでしたが、講義は豊富な写真とビデオとともに進んでいくので印象深いものです。このヴィジュアルの力は強烈で、普段はそこまで意欲のない学生たちも、例えば東日本大震災で船が2階建ての建物の屋上に打ち上げられた写真がスライドに写されたときは学生たちも「Oh…」と絶句していました。その他にも、インドネシアやトルコの地震、カリフォルニアの地滑り、イタリアの火山噴火など、災害が世界各地で起こっていることを実感する内容です。

PS283 Introduction to International Security (Prof. S. Miller)  先学期に国際政治を勉強して興味を持った、アメリカという国における安全保障概念について知りたいと思ったのが履修のきっかけです。戦争や安全保障を語る上で、日本では第二次大戦という出来事のインパクトが大きい気がしますが、アメリカでは「冷戦」という出来事が予想以上に強い影響を持っていると実感します。先学期の授業で、9/11後のアメリカのテロリストへの対応は、共産主義に代わる新たな敵を見いだし冷戦時代と同じように対処しようとした結果であると言った話を聞きましたが、こうした授業を通して、色々な視点から物事を見られるようになっている気がします。  また、1月から2月にかけて、この授業では「Article Summary」なる課題が課され、文字通り1篇の論文を読んで要約するとともにクラスで扱われた題材とのかかわりを論じるというエッセイを書くことになりました。その論文の正確な理解が問われる分、普段のReading Assignmentよりもずっと時間がかかり、自分の読解力の至らなさを自覚できるいい機会だったと思います。

PHYS280 Nuclear Weapons & Arms Control (Prof. M. Perdekamp)  物理学科が提供している核兵器についての授業です。この授業はPhysics DepartmentのAcademic Advisorに会い、自分が留学生で、日本では4年生であることを伝えたら履修することが出来ました。とはいえ、物理学、しかもFreshmenは履修できないクラスということで内容的についていけるのか少し不安でしたが、physicsやtechnologyについてはそこまで専門的に深めることはせず、どちらかというと一般教養のような話が多くを占めていました。  この授業で面白かったのは、Discussionのクラスにいたクラスメイトの中には国務省や国防省・軍で働きたいといった学生が多く見られたことです。中には海兵隊出身という学生もいて、彼は現代のアメリカ軍の軍事技術について詳しい知識を持っているために授業中も存在感を放っていました。一方、核兵器の根絶を目指す「グローバルゼロ」というNPOに所属する学生も講義に来ており、核をめぐるさまざまな問題を考える機会になっています。

GLBL 397 International Diplomacy and Negotiation (Dr. T. Wedig)  さすがに300番台の授業というだけあって学生もよく勉強していると感じます。担当教授が心理学や教育学などにも造詣のある方で、一般的なPolitical Scienceとは異なったアプローチで過去の国際問題に迫っていきます。  また、この授業の後半ではDiscussionのクラスごとに一国を代表して、オンライン上で他大学のチームと模擬交渉をしており、どのような提案を行うかについてペーパーを核といったグループワークもあります。ところが、この交渉の評価が最終成績にそれほど影響しないこともあって、皆この課題への取り組み方はのんきなものでした。私自身は従来の心配性な性格もあって、各課題の締め切りの1週間前くらいにはそわそわし始め、3日前くらいにはどうやってペーパー書く?とチームメイトにメールを出し始めるのですが、それに皆が返信をして作業に取りかかるのが締め切り前日の夜、ということも珍しくありません。最近では他の授業の課題が一段落したためもあってか、チームメイトも積極的に作業に参加していますが、この経験はどうやってチームで何かを成し遂げるかというリーダーシップに関する関心を深めるきっかけとなりました。

II. 春休み ~オーストラリアでの模擬国連~

Melbourne市内の名物(?)である壁の落書き。

春休みは、日本の大学の友人に誘われてはるばるオーストラリアに飛び、そこで模擬国連の世界大会に参加してみました。これは、世界各国から集まった同世代の学生200人ほどと1週間かけて国際問題について会議を行い、最終日には成果文書を採択するという大会です。複数の会議が同時に開催されるので、合わせると数千人規模の学生が集まることになります。この会議の事前準備の手引きでは、必要な能力としてpublic speakingやresearch、leadershipなど、まさに留学してから学んだような内容の項目が並び、また実際の会議でもこれらのスキルを以下にうまく発揮して会議をリードできるかが問われる場でした。  他の学生が、自分の代表する国の立場を表明するスピーチをするときも「あ、これはCMN101で出てきたAttention Getter(聴衆の注意をひくような言葉やパフォーマンス)だな。なるほど、これはうまい」と思わされる時が何度もありましたし、また自国の立場を成果文書に入れるべく皆が各々主張をし合っているときに、それら適度にコントロールし、すり合わせて形にしていくリーダーシップのスタイルも色々と学ぶことが出来ました。  目標としては、この模擬国連の場で留学の経験を活かそうと思っていたのですが、スピーチにせよリーダーシップにせよ、まだまだ他国の学生を引っ張るだけのものは提示できませんでした。議論の最初のうちは、自分の考えを大勢の前で発表するということもできたのですが、会議が進み、テーマが詳細になっていくと細かい表現やニュアンスまできちんと把握していないと議論についていけず、従って発言も減っていくという状態でした。それでも、これだけの学生を前に英語で発表できたのもそれなりの進歩ですので、道のりは長いながら着実に前進はしていると前向きに考えるようにしています。  また、連日の会議のあとの夕方にはSocial Eventとして飲み会やダンスパーティーがぎっしり詰まっており、留学してから学んだ「楽しむときは全力で楽しむ」という精神を発揮して積極的に参加しました。ちょうど春休み直前は中間テストに加えて各種Paperの締め切りが怒涛のように続いていたので、とてもいい気分転換になりました。  ちなみに、帰りは国際便が遅れ、またシャンペーンに大雪が降ったため飛行機がオヘア空港でストップし、一晩ホテルに閉じ込められることになりました。他の奨学生からこういうときの話を聞いていたこともあり、思わぬ予定変更への対処や航空会社との交渉といったこともそれほど焦らずに済ますことが出来ましたが、この度胸も、米国に来て身に着いたことの一つだと思います。III. その他課外活動  今期はこちらでの生活や英語にも少し慣れてきたこともあって、積極的に各種Eventにも参加してみました。以下ではその中のいくつかをピックアップして取り上げたいと思います。

キリスト教グループのWorship。一見しただけではまるでコンサートのよう。

Campus Worship  まず、今学期に入ってから数回、ルームメイトとその友人たちのグループに誘われて、彼らの Worshipに参加してみました。アメリカに来た目的の一つに、この国の宗教観を知りたいというものがあったのですが、一言でいえばこのWorshipは極めてカジュアル化された宗教経験と言える気がします。初めて参加したときは大学の講堂で開催されたのですが、ステージ上にはバンドのセットが置かれ、最初は全員で現代的なムードの讃美歌を歌い(例えば”Forever Reign”とyoutubeで検索してみてください)、その後ゲストスピーカーによる宗教体験が語られます。キリスト教と言うと、映画などで見る教会をイメージしていたのですが、まるで人気バンドのコンサートか何かのような雰囲気でした。  その後、一通りこれらの式次第がすみ、最後にお祈りをした後は、会場に集まった学生たちが自由におしゃべりを楽しみます。参加している学生の人数は、初回は数百人規模で、中には壮年、高齢の方もちらほら混じっていました。

Film Festival  このキャンパスではあちこちに特定の学問分野を研究する研究センターがあります。先学期は知らなかったのですが、調べてみるとこれらの社会問題や地域研究に取り組んでいるセンターがかなり頻繁にいろいろなイベントを開いていることが分かりました。最近はCenter for South Asian & Middle East Studiesが開催しているMiddle East Film Festivalで「Cairo 678」という映画を鑑賞してきました。この映画は、エジプトでのセクシュアルハラスメントと女性への偏見をテーマにした作品です。エジプトという国やイスラムという宗教の伝統、女性の人権などを絡めた問題を提示しており、考えさせられる内容でした。これらのセンターは他にも講演会などを企画しており、これまで知らなかったことを知る貴重な機会になっています。

「Cairo 678」のポスター。https://en.wikipedia.org/wiki/678_%28film%29より。

IV. 英語の発信能力  最後に、今期の目標に掲げた英語での発信という課題について簡単に触れます。前回のレポートでも申し上げたように、今期はひたすら書くことを課題にしてAdvanced Compositionの単位が認定されるクラスを二つ履修しました。後で何人かの友人にはクレイジーだと言われましたが、たしかに、PS283のArticle Summaryも相まって、2月頃はルームメイトに「お前いつ見てもずっとエッセイ書いてるな」と言われる日々を送ることになりました。  その辛い時期を乗り越えたおかげで、目標としていたライティング能力はある程度向上したと思います。特にPHYS280では、一度提出したエッセイを1週間後にコメント付きで返却され、誤りを修正してその週のうちに再提出するというスタイルで課題が進むため、基本的な作文の条件のようなものはある程度理解することができました。一方、この間は課題に追われて一つ一つの言い回しや文法などがおろそかになっていたので、少し余裕のできた最近は時間を見つけて文法書を読み返すなど、いわゆる日本人の得意分野を補強するよう努めています。とにかく数をこなすことが上達への道であることは間違いないのですが、あまり量を増やし過ぎると個々を振り返る機会が取れずあまり学習効果が得られないのでバランスが大切だと感じます。  このように、自分なりには頑張ったものの、まだネイティブスピーカーに英文を見てもらうとほんの短い文章でも誤りを数か所指摘される状態なので、実際はまだまだ修行が足りないようです。これも、上記で挙げたスピーキングと同様に日々の地道な努力が必要なのだと実感します。

先学期と比べてみると、勉強以外にもいろいろと活動範囲を広げてみた春学期でしたが、それもあと1カ月で終わってしまうかと思うと複雑な気分です。帰国後はすぐに大学に復学しようと思っているため最近は日本とのやり取りが増え、ホームシックではないですが懐かしさを覚えます。ただ同時に、帰国2か月前ほどになってようやく「こちらでの生活にも慣れてきたよ」と自信を持って言える心境になったため、ここにいられるのもあとわずかなのだと思うとさびしい気持ちになります。とはいえ、どれだけさびしがってみてもあと1カ月、その間思う存分こちらでの生活を満喫したいと思っています。

2013年4月15日 京都大学法学部5年  乾 弘哲

鹿山ゆかりさんの2013年2月分奨学生レポート

JICの皆様、そしてこのレポートを読んでくださっている皆様、ご無沙汰しております。第37期奨学生の鹿山ゆかりです。
シャンペーンの冬は予想通りとても寒く(友人曰くこれでも暖冬だそうですが)、膝までの長いコートとブーツ、イヤーマフラーは必須です。とはいえ最近はあたたかくなってきており、リスをたくさん見かけるようになりました。春が近づいていることを実感しています。

リスもびっくりの寒さ!

今回のレポートではI. 期末試験、II. 今学期の授業について、III. その他について書きたいと思います。

I.期末試験
12月に入ると、キャンパスの雰囲気は期末試験モードになり、図書館や寮のラウンジ、キャンパス内のカフェなど大学のあらゆるところで勉強している学生を見かけるようになりました。サークルが勉強会を開催していたり、寮では試験期間にマッサージサービスがあったり、Writers Workshop(留学生向けにレポートの文法等の添削をしてくれたり、レポートの資料探しの相談に乗ってくれるところです)が夜の10時から2時までwalk-inでの添削を受け付けていたりと、試験のサポートに関する情報も多く見られる(聞く)ようになりました。
私は実技試験の他にレポートやプレゼンテーション、Book Review等が課されたため、期末試験期間は他の学生と同じく図書館と寮を往復する毎日を送っていました。

II.今学期の授業について
今学期履修する授業の中からいくつかを紹介したいと思います。

★GLBL 392 International Diplomacy and Negotiation
タイトル通り、外交と交渉について学ぶ授業です。通常の授業に加えて週1回のディスカッションがあり、毎回とても楽しみにしています。学期途中からオンラインのシュミレーションシステムを使って他大学の学生と外交の交渉を行うようです。私のクラスはブラジルを担当することになりました。

★HRE 199 Leadership in Global Engagement
様々なゲストスピーカーを呼んで文化やリーダーシップついて学ぶ授業です。毎回リーディングが課され、授業ではそれについてのディスカッションが中心です。また、この授業をとっている学生の半数が澳門大学から来ているため、彼らからマカオについて様々な話を聞くことができます。
授業外では澳門大学の学生とイリノイ大学の学生がペアを組んでテーマを決めて研究を行います。結果は4月にあるUndergraduate Research Symposiumにて発表の予定です。

★SOCW 199 Community-Based Service Learning
イリノイ大学とTap in Leadership Academyが提携して行われる授業です。学生がシャンペーン市内の中学校(Franklin Middle School)と高校(Centennial High School)に行き、放課後数時間、チューターとして生徒の相談に乗ったり勉強を教えたりするというものです。
このプログラムは中高生に学外で刺激となる場を作ることを目的としてできたそうです。研修では、このセッションに参加するのは学校の勉強だけでは物足りない学生から授業について行けない学生まで様々であること、学校の授業ではないので生徒とたくさん話をしてほしいこと、また英語が母国語でないために勉強について行けない・勉強への意欲がわかない学生がいるので彼らのフラストレーションを取り除いてほしいというリクエストなどを聞きました。
先日、中学校に行ってきました。学生たちの課題をいくつか見て、アメリカの教育は(少なくともFranklin Middle Schoolでは)アウトプットを重視している印象を受けました。プレゼンテーション等、クラスでの発表の機会が非常に多いのです。また、授業内でパソコンを使うことが奨励されており、課題が知識の習得だけでなく情報リテラシーを高めるためのものとなっていました。例えば、私が担当した生徒のBlack Historyの課題は設問と共に調べ方のヒントが書かれていましたし、理科の授業ではプリントの最後に「これら答えを得るにはどのように調べるのが良いか」という設問がありました。

tutoringの様子。一対一、もしくは一対二で教えています。

III.その他
イリノイ大学では毎日どこかでイベントや講演会、交流会などが開かれています。行ったものの中から印象深かったものを紹介したいと思います。

★セサミ・ストリートの声優、Caroll Spinneyさんの講演会
11月の終わりにUnionにてCaroll Spinneyさんの講演会がありました。彼はアメリカで(もちろん日本でも)大人気のテレビ番組“セサミ・ストリート(Sesame Street)”のビッグバード(Big Bird)役とオスカー(Oscar the Grouch)役を務めていらっしゃる方です。会場には学生のみならず子供からお年寄りまで多くの人が集まっており、セサミ・ストリートの人気の高さを改めて実感しました。
Spinneyさんは自分の生い立ち、セサミ・ストリートの仕事について、役者としての喜びについて、涙やユーモアを交えて語って下さいました。オスカーのパペットを持って「オスカーとして」挨拶してくださりました。パペットを持ってオスカーになりきる時の彼の表情の変化は言葉に表せないほど迫力がありました。講演後、Spinneyさんとお話しする機会があったのですが、「日本からはたくさんのファンレターを貰っているんだ。いつも勇気づけられているよ」と笑顔で話してくださいました。
セサミ・ストリートは私がおそらく人生で一番最初に触れたアメリカの文化であり、彼の講演を聴くことで自分と英語の関わりの原点のようなものを思い出しました。

★Philippine Student Associationのイベント
友人が入っているというフィリピン学生協会(通称PSA)のイベントに行ってきました。イリノイ大学には様々な国の学生組織(学生協会)があります。様々な国について学んだり、そこに住む友人を作ったりするには最高の環境であると思います。
このイベントは公演とディナーの二部で構成されており、公演ではフィリピンの民族舞踊、PSAの学生によるダンスや国歌斉唱など、内容盛りだくさんでした。このイベントはフィリピンについて伝えるだけでなく、チャリティを目的としているようです。収益金の寄付先、フィリピンのストリートチルドレンについてもしっかりと紹介しており、大変内容の濃いものでした。
PSAのような学生協会は学生間の交流だけでなく、学生達が自分のルーツを確かめるのに役に立っているようです。私の友人が「アメリカで普通に生活していると自分のルーツについて知る機会はほとんどない。PSAに入って良かったと思う」と言っていたのが印象的でした。

こちらはTIA(Taiwan Intercultural Associationの旧正月のイベント。

★競技ダンス
数日前に社交ダンスの体験講座に行き、とても楽しかったので今学期は競技に出ることに決めました。競技ダンスの大会はレベル別に部門が用意されており、どのような人でも参加することができるそうです。今は3月の頭にある大会に向けて練習をしています。
競技と言っても練習の雰囲気は和気藹々としており、それぞれが自分の好きな(必要な)メニューをこなしているという感じです。

雪が降った翌日のQuadの様子。とても綺麗でした。

留学生活も残り3か月となり、時の経つ早さに驚いています。多くの方からのサポートに感謝しながら、多くのことを学んで帰国したいと思います。

奥谷聡子さんの2013年2月分奨学生レポート

JICの皆様、ブログを読んでくださっている皆様、お久しぶりです。
Spring Semesterが始まり、留学生活も折り返し地点をすぎたところで第二回のレポートをお送り致します。

渡米前に先輩方から忠告されたイリノイの冬を逃避すべく、冬休みは南米ペルーに行ったはずなのですが、シャンペーンは先週、外気温13℃の日が続き、1月にTシャツでキャンパスを歩き回るほどでした。今週に入ってからは寒い日が続き、少し雪も積もりましたが、こんな絵がFacebookで出回るほどでした。

さて、今回のレポートではⅠFall Semesterの総括、ⅡWinter Break、ⅢSpring Semester授業内容 、Ⅳ. 課外活動の4項目についてご報告いたします。

Ⅰ.Fall Semester 総括

•    Homecoming Game
10月27日はイリノイ大学vsインディアナ大学のHomecoming  Gameでした。Homecoming Gameとは大学のアラムナイたちを年に1度母校に迎え、アメフトの試合を学生と一丸となり 応援する伝統的、且つ秋学期最大のイベントです。日本でいう、早慶戦のようなイメージでしょうか。試合前のスタジアム周辺はTailgateといって、バーベキューやお酒、Cornhole(輪投げのようなもの)などのゲームを楽しむ大勢の人で賑わい、試合開始までには6万人のスタジアムが満面オレンジ一色に染まりました。 神宮球場の2倍の大きさのメモリアルスタジアム内はアラムナイと学生一同、大学のプライドと声援で溢れ、もの凄い迫力でした。

Fighting Illini vs Indiana、メモリアルスタジアムにて。

•    期末試験
秋学期の期末試験は筆記試験が1つ、プレゼンテーションが2つ、そしてペーパーが2つありました。期末試験の1週間前からGrainger Libraryに引き籠ってはひたすら試験勉強をしました。期末期間中は朝一に図書館に行かないと満席で座れないほど混みます。”No judgment during finals”とは学生たちがよく口にする言葉ですが、試験前になると窶れた顔とスウェットやパジャマ姿でキャンパスを道行く学生が激増します 。(笑)

期末期間中のGrainger Library内の様子。中央のテーブルに座る筆者。

睡眠不足の学生で陰鬱な雰囲気がキャンパスを漂う中、大学の学長からは学生たちに向けて応援のビデオメッセージが送られたり、FacebookではAlma Materが勉強に勤しむ学生の写真をフィードで流したり、University Housingにより全ての寮とIllini Unionで無料のコーヒーとクッキーが24時間支給されるなどしました。大規模な大学でも、 こうした大学の学生に対する小さな思いやりやサポートに感激しました。前回のレポートでも触れましたが、アメリカの大学では日々の課題や中間試験が多いため、期末試験一つにかかるウエイトとプレッシャーは日本より少なく感じました。

Ⅱ. Winter Break
今年の冬休みは絶え間なく旅をして回りました。
期末直後はリンカーンの地として縁あるSpringfieldに住むクラスメイトの家を訪ね、リンカーン博物館や数フィートの厚さの棺とコンクリートに囲まれたリンカーンの地下墓所なども巡りました。クリスマスにはニューヨークへ友人と行き、27日にオヘア空港へ戻った翌朝からは南米ペルーへ向けて出発しました。以下にペルーの海外研修について詳しく報告します。

•    GLBL298 International Development and Role of NGOs [Urubamba, Peru Prof. Laura Hastings]
12月28日から約2週間、南米ペルーへGlobal Studiesの授業で海外研修へ行ってきました。滞在したのは、Urubambaという標高2870メートル、人口2700とイリノイ大学の14分の1しかない大きさの町でした。ガイドブックの片隅にある日常会話ほどのスペイン語しか話せない私でしたが、現地に到着してから早速スペイン語しか話せないホストファミリーとの2週間の生活が始まりました。
この授業は国際開発と発展におけるNGOの役割を学ぶことが目的であり、2週間ProPeruという国際NGOでボランティアをしました。ペルーでは衛生的な水道が発達しておらず、飲料水も歯を磨く水も購入するか、家でお湯を沸かして使うしかありませんでした。衛生的な水にアクセスがないので、多くの子どもはInka Kolaというソーダばかり毎日飲み、歯が溶けてなくなっていました。また、衛生的なストーブが家庭にないため、呼吸障害や盲目に苦しむ女性と子どもも多くいました。初めて発展途上国へ行き、こうした現実に直面したことは もの凄い衝撃でした。
私たちのクラスはProPeruと共に毎朝山奥にあるTambbococchaという村へ登り、衛生的なストーブや水道フィルター、棚などを造りました。セメントや高度な機械はないので、レンガと泥(Barro)に全身まみれながら建築作業に励みました。

ストーブ完成後の作業チームとの写真

朝8時から夕方5時の仕事が終わった後は、Urubambaへ戻り、ホストファミリーと時間を過ごし、夜の7時からは授業です。作業に取り組む傍らで、私たちのプロジェクトの意義について自分自身の中で葛藤もありました。現地の人たちは開発や経済発展に対して受け身姿勢で、我々のプロジェクトは持続的なのか、西洋の価値観を押し付けているだけなのではないかとも度々悩みました。
この他に、生活面、文化面でも困難が多く待ち受けていました。到着して早々、高山病にかかり、2日ほどフラフラになりながら山を登っては仕事に行き、ようやく体が標高に調節してきたところで今度は水が原因で下痢に見舞われました。(笑)健康面では散々な目に遭いましたが、だからこそ発展途上国が抱える深刻な問題を身を以て実感しました。
ホストファミリーの家では、私の部屋は屋外の小さな小屋にあり、シャワーもトイレも屋外にありました。しかし、お湯が出ないので2週間凍える寒さのシャワーを浴びていました。携帯やインターネットもないため、最初は不便でしたが、次第に時間の流れがゆっくり感じられ、気付けば日本やアメリカにいたときより遥かに多くの時間を誰かと共に過ごし、会話を楽しむようになっていました。ペルーの家庭で昼食を食べるとなると最低2時間は必要だというのはよく言われることなのですが、お昼になると、父親も職場からわざわざ家に戻り、家族団欒食事をするのが文化的習慣です。当初は全くスペイン語が話せない私でしたが、身振り手振りで言いたいことが伝わったときは家族全員テーブルを囲んで「オー!!!」との歓声で大盛り上がりでした。
インターネットも、熱いシャワーも、洗濯機もない生活かもしれないけれど、私のホストファミリーは皆幸せで、ペルーは人を大切にする文化の国だと感じました。彼らとの生活を通して、開発や発展について自身の定義を見直すようになりました。研修最後は涙を流しながら家族と抱き合い、別れを惜しみました。

最終日、ホストファミリーと家族写真

Ⅲ.Spring Semester 授業
さて、今学期は以下の授業を履修しています。
PS343 Government & Politics of China
PS283 International Security
PS282 Governing Globalization
GLBL250 International Development
PS199 Undergraduate Open Seminar: US State & Local Politics

今学期は専攻分野を中心に、ディズカッションやプレゼンテーションが多い少人数制の授業を履修しています。特に、PS199のState and Local Politics は興味深く、昨年12月にコネチカット州で起きた銃乱射事件を機に再燃している銃規制や、麻薬(マリワナ)の合法化などを巡って、連邦政府と州政府の法律の違いや権限や役割について学んでいます。詳しい科目内容については、試験等と併せて、次回の奨学生レポートにて報告させていただきます。

Ⅳ.課外活動
•    Habitat For Humanity
Habitat For Humanityとは、貧しい家庭や被災した家族の住まいを再建する活動をしているNGOです。私はイリノイ大学の学生チャプターのボランティアとして週末に活動しています。2年前にニューオーリンズでハリケーンカトリーナの復興ボランティアに携わったのが参加のきっかけになりました。このボランティアを通して、アメリカ国内の至る所にも人種格差や貧困問題が存在することを再認識させられました。釘とトンカチを両手に週末は地域の人と協力しながら建築作業に励んでいます。

•    Illini Women’s Ice Hockey
春学期も毎週月木の二日間、夜11時から深夜1時までキャンパスのアイスアリーナでアイスホッケーの練習に励んでいます。練習は厳しく、 コーチに何度も怒られたり、チームメイトとのコミュニケーションに思い悩むことも度々ありましたが、昨年最後のホーム試合で嬉しい出来事がありました。最終ピリオドで私が初ゴールを決め、試合終了後にロッカールームに戻ったらチームメイトたちが勢揃いし、コーチが全員のサイン入りのホッケーパックを私に贈呈してくれました。あの時の気持ちとホッケーパックは一生忘れられない宝物です。私たちのチームは秋学期のリーグを4位で勝ち抜いたため、春学期の決勝プレイオフに進めることがつい先日決まりました。残すところわずかな部活動、悔いのないよう全力で突き進みたいと思います。

シカゴの遠征試合でチーム集合写真

イリノイ大学での留学生活も残すところ3か月半になってしまいましたが、 勉強に運動に遊びに悔いのないよう、全力で臨みたいと思っています。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

佐藤香織さんの2013年2月分奨学生レポート

いつもお世話になっております。第37期奨学生の佐藤香織です。2月に入り、日本でも寒い日が続いているかと思いますが、みなさまお元気にお過ごしでしょうか。こちらシャンペーンでは、12月まではそれほど感じなかった冬の寒さも、年明け以降、最高気温が氷点下ほどの日が多く、毎日イリノイの冬の寒さを感じながら過ごしています。
今回は、第1回のレポートに引き続き、①先学期の授業の総括、②サンクスギビングウィーク・冬休み、③春学期の履修計画、④その他の活動 について報告させていただきたいと思います。

(1)    先学期の授業の総括
秋学期では、専攻の社会学に関係した授業に限らず、色々な分野に渡って興味の持ったクラスを受講しました。前回のレポートでも少し触れましたが、今回は期末試験や授業が終わったあとの全体の印象を述べたいと思います。

・SOC160 Global Inequality and Social Change
コース名の通り、世界的な格差問題について様々な文献やビデオを通して学習しました。前半期は、格差問題がどのように形成されてきたか、という過程について、植民地時代から1980年代にかけてのレクチャーが中心でしたが、後半期には現代の格差問題やそれに抵抗する様々な動きについて中心に学び、より現代社会の問題と関係するテーマが多く議論に出てきていて、興味深かったです。特に、世界全体の格差問題だけでなく、リーマンショック以降のアメリカ内における格差問題や、消費大国アメリカの消費社会への言及についてなど、アメリカの社会問題についても取り上げられていて、日本ではなかなか聞けない講義であったと思われます。
また、成績は3回の試験、グループワーク、オンラインで毎週提出するディスカッション、及び期末レポートで評価され、毎回の授業を週ごと、試験ごとにフィードバックできるような形になっていました。

・EPSY203 Social Issues Group Dialogue
週に1回、2時間、少人数でのディスカッションが中心の授業です。毎回のトピックは前もって決められていて、そのトピックに関する文献や動画を見て、ディスカッションします。トピックは慈善支援の是非や、移民問題、グローバル化によるアイデンティティ形成の困難化について等多種多様です。また、前回のレポートにも書きましたが、違ったバックグラウンドを持つ生徒たちによってアットホームな雰囲気の中で行われるディスカッションでは、それぞれの経験談を聞くことができる貴重な機会でした。特に私が関心を持ったのは、KONY2012と呼ばれるNPO団体によって、現在行われている運動についてです。KONY2012とは、ウガンダを中心に貧しい子供たちを少年兵として誘拐し、ゲリラ活動にさせる反政府勢力の指導者、ジョセフ・コーニーを逮捕することを目的とした世界規模の運動です。KONY2012の活動を学ぶだけでなく、一体それは実現可能であるのか、どのような点が障壁や欠点であり、今後どのように変えてゆく必要があるか、などについて意見を交換することができました。
成績は、毎回の授業参加、事前の小レポート(2~3枚)、期末レポートによって評価されました。

・GLBL298 Global Studies Seminar Abroad
この授業は、以前紹介しましたが、秋学期後期8回2時間のレクチャーと冬休み中2週間にわたるペルーのstudy abroad tripで構成されたクラスです。授業内容は、観光都市として発展したペルーの現状と今後の展望・課題について学びます。授業では、ユネスコによる世界遺産の採択に関する文献や、観光都市としての繁栄における宣伝・広告等メディア活動の影響についての文献など、幅広く扱いました。また、出発前の個々のプレゼンテーションでは、各々実際にペルーの観光ツアーやガイドブックを用いて、実際の研修で訪れる地域や建造物がどのように観光者に向けてアピールされているか、また、観光都市クスコやマチュピチュにおいて現地の人々はどのような役割を果たしているのか、について発表し、実際の研修に備えました。
成績評価は、出席、現地でのフィールドワーク、出発前・後のレポート、プレゼンによって評価されます。実際のペルーでの体験については、このあとの休暇での体験の欄で触れます。

上に書いた授業のほか、Public SpeakingやSocial Psychologyの授業も受講し、各々のク
ラスで小テスト、試験、ディスカッションを通して、アメリカらしい授業スタイルを体験
できたことを満足しています。

(2)サンクスギビング・冬休み
①サンクスギビングウィーク
11月下旬にある1週間のサンクスギビング休暇では、寮の友人等とシカゴを観光しました。最初の数日間は、シカゴからは少し離れた町に住む寮の友人のお宅にお邪魔し、その後はシカゴ市内にあるルームメイト宅にお邪魔しました。実は、それまで一度もシカゴに行ったことがなかったため、大学町シャンペーンとは違う大都市シカゴに行って、友人と観光するのをとても楽しみにしていました。この一週間は、私が想像していたよりも遥かに充実したものでした。一緒に旅行した寮の友人たちとシカゴピザと呼ばれるシカゴならではの分厚いパン生地を用いたピザを食べ、また12月にGlobal Crossroadsのみんなで主催したprom partyのためのドレス等のショッピングに行き、その他美術館やミレニアムパークなどを観光したりと、毎日があっという間に過ぎていったように思います。また、サンクスギビングデーは、ルームメイトの親戚の集まりや、同じフロアの友人のおうち、また、ルームメイトのお母さんが務める消防署でのディナーにも連れて行ってもらい、ターキーをはじめおいしいご飯をいただき、とても素敵な時間を過ごさせてもらいました。サンクスギビング翌日はBlack Fridayと呼ばれる全国的特大セール日ということで、Woodfield Mallと呼ばれるシカゴ郊外にある巨大ショッピングモールに行ってきました。人の多さに圧倒され、結局大したものは買えませんでしたが(笑)、消費大国アメリカの雰囲気を味わえたのではないか、と思います。

フロアメートのおうちでのディナー

②冬休み
冬休みの前半、クリスマスシーズンにはロサンゼルスとニューヨークへ観光に行き、年末はシャンペーンで過ごし、元旦から12日間ペルーに海外研修に行ってきました。
この冬休みだけでなんと計10回も飛行機に乗り、あれほど日本出国時に恐れていた海
外のフライトにも慣れることができました。(笑)
☆ロサンゼルス・ニューヨーク
アメリカにいるうちに、アメリカ2大都市ニューヨークとロサンゼルスには足を運びたいと思    い、今回欲張ってどちらも旅行してきました。ちょうど12月24日の夜遅くにロスを発ち、25日早朝にニューヨークに到着するという、とても寂しいクリスマスを過ごすことになってしまいましたが(笑)、2つの大都市の全く異なる雰囲気を味わうことができました。

ロサンゼルス サンタモニカの様子

☆ペルー
まず、行きのフライトでは、当初予定していたシカゴからマイアミまでのフライトが急遽キャンセルされ、17人のメンバーは3つに分かれて別のフライトでマイアミに向かう、というハプニングが起こりました。私はひとり空港内のカフェでフライトを待っていたのですが、たまたまそこを通りがかったクラスメートが私を見つけてくれたおかげで、彼らと一緒に無事マイアミに着くことができ、助かりました。
ペルーでは、クスコ、リマ、マチュピチュ等に滞在し、歴史的建造物や遺産を周り、また、都市の様子や、旅行者と現地の人との関係についてフィールド調査し、ディスカッションに加わりました。
とりわけ観光都市として発展したクスコの中心広場には、マクドナルドやケンタッキーフライドチキン、スターバックス等、海外チェーン店や高級土産店が集まり、その周辺には高級ホテルが立地していて、観光者に焦点を当てた典型的な観光都市としての様相を呈していました。また、最後に滞在したペルーの首都リマは、観光都市のクスコやマチュピチュとは異なり、行政・産業の中心都市として人口や交通量も多く、少し東京に似ているように感じました。ペルーは観光都市と聞いて、アジア人では中国人が多いだろう、と勝手に予想していたのですが、実は日本からの観光客がとても多く、いたるところで、日本人の観光ツアーの集団を目にしました。そのほかには、アメリカやメキシコから来た旅行客が多かったように思います。
これまでの旅行とは違った南アメリカの都市の雰囲気やインカ帝国の遺産を観光できたこと、また17人のクラスメートと一緒に約2週間共にフィールドワークやディスカッションを通し絆を深めたこと等、とても貴重な経験をすることができました。

マチュピチュでのジャンピング写真

(3)春学期の履修
今学期は以下の授業を履修しようと考えています。
・SOCW410 Social Welfare Policy and Services
・SOC 364 Impacts of Globalization
・SOC351 Social Aspects of Media
・ACE270 Consumer Economics
・KIN101 Dance Activities
前回とは違い、専攻の社会学に関係した授業を多めに受講してみようと考えています。Impacts of Globalizationは一昨年の奨学生の後藤さんにも勧めていただいたクラスです。また、Consumer Economicsは先学期の様々な授業で消費社会という点に関心を持ち、受講しました。また、ダンスのクラスでは日々の運動不足解消を目的に受講しました。
次回のレポートで詳しく紹介したいと思います。

(4)その他の活動
先ほども少し触れましたが、12月はじめにGlobal Crossroadsという私の住む寮のコミュニティのみんなでprom partyと呼ばれるアメリカならではのパーティを開きました。Prom partyは通常アメリカの高校の卒業学年が男女ペアでダンスするという伝統行事なのですが、とりあえずこれといって誘い合う相手もいなかったので、衣装は前日にForever21で調達したドレスというなんとも安上がりな格好でしたが、女の子はみんな素敵なドレスを着て、みんなでダンスをして楽しむことができました。
また、以前参加していたテニスサークルは冬季期間活動がないため、今期から代わりにラケットボールのクラブに参加しようと考えています。週2回ARCと呼ばれる大学の屋内運動施設で練習が行われ、そこでの友人との交流や運動に努めたいと思います。

以上で第2回目のレポートを終わりとしたいと思います。
留学生活も残すところあと3ヶ月となりました。最後までいろいろなことに挑戦し、充実
した毎日を送りたいと思います。今後とも、よろしくお願いいたします。

Global Crossroadsのprom party

 

第37期 JIC奨学生
佐藤 香織