内倉悠さんの2017年1月分奨学生レポート

JICの皆様、ご無沙汰しております。41期奨学生の内倉悠です。留学生活も後半に差し掛かり、流れる時間の早さを実感しています。二月に入り冬の寒さも少し和らいだことで、キャンパス近辺を歩く機会も増えてきました。こちらに来た当初は気付かなかったシャンペーンのさりげない日常の風景を目に焼き付けながら、残されたイリノイでの生活を楽しんでおります。今回の奨学生レポートでは①冬期休暇、②今期履修中の授業の二点に関してご報告させていただきたいとおもいます。少々冗長になってしまいましたが、目を通していただけると幸いです。

(写真1)夕暮れ時、真っ赤に染まったシャンペーン

冬季休暇

約一ヶ月の冬季休暇を利用し、中高同期の友人と共に、かねてよりぜひ訪れてみたかったメキシコに行って参りました。首都メキシコシティ、町全体が世界遺産の地方都市グアナファト、そして言わずと知れた中米屈指のリゾート地カンクンの3都市を約2週間かけて周りました。

首都メキシコシティに着くやいなや、予想以上に英語が通じないことに動揺しつつも、Uberで中心部に借りたアパートへ。40分ほどの距離もわずか$5と物価の安さにも動揺が隠しきれません。次の日から早速市街地散策へ繰り出します。メキシコシティは観光地というよりlocalな居住地、商業地という印象が強く、食事も朝は朝市のタコスを、昼は屋台のタコスを、夜はレストランのタコスをとMexiconizeに余念がありません。もはやここまでくると英語を喋る方が恥ずかしくなり、スペイン語風のスペイン語(?)でウェイターをまくし立てるところまでやれば、気分はもうメキシコ人です。

居住区内は家々が所狭しと密集しており、自身のテリトリーを主張するかのように灰色に薄汚れたコンクリート塀が張り巡らされています。無機質なモダン建築が立ち並ぶ中、スペイン植民地時代の影響か色鮮やかに彩られた家も散見されました。

メキシコは建築史的に見ても独特な変遷を遂げた国と言えます。20世紀になりModernismの波が到来すると、それまでのコロニアル様式とモダニズムを融合させたような色鮮やかな独自のモダニズム建築が開花します。それと前後するようにメキシコ革命、またそれに伴ったメキシコ壁画運動が興りました。その結果、モダニズムのinternational styleの中にもメキシコ人としての土着の文化が色濃く見られる建築が生まれたのです。

 世界遺産の街、グアナファトではスペイン植民地時代の影響が色濃く残る町並みを堪能することができます。Luis Barragan(建築家)やDiego Rivera(壁画アーティスト)といったメキシコを代表する芸術家の多くは、この都市を訪れインスパイアを受けたと言われています。かつて銀山の採掘場として栄えたこの都市には、無数の地下道が張り巡らされており、カラフルに彩られた家々と共に、ヒューマンスケールで温かみのある街並みを形成しています。「陸のベニス」といったところでしょうか。もし機会がありましたら、ぜひ訪れていただきたい都市のひとつです。

 その後飛行機にてカンクンへ。メキシコ国内では高速バスが発達しているほか、LCC競合各社による熾烈な価格競争のおかげで、格安航空券を見つけることができます。ユカタン半島の先端に位置するカンクンは、はるか昔にはマヤ文明が繁栄し、ここ数十年で急激に観光地化が進んだリゾート地です。溶岩の基盤の上に形成された砂州が主要ホテルエリアとなっており、現在も多くのホテルが軒を争うように建設されていました。ホテルエリアから少し離れたダウンタウン周辺にアパートを借り滞在していると、観光業がいかにlocalの人々の生活を支え、しかし一方で隅に追いやり影を落としているか身を持って感じることができます。中心地からバスに3時間ほど揺られ、マヤ文明を象徴するチチェンイツァ遺跡を訪れました。ここもテーマパークのような観光地化が進んでおり、遺跡敷地内は観光客で溢れていました。一歩外に出ると、何の変哲もなく地元の人々の生活が営まれているのに。入り口付近で物憂げそうに手作りの木製面を売る若者の何ともいえない目付きが今でも忘れられません。この観光地化は果たして本当に”正しい”のだろうか。

旅の途中、まさかの食中毒にかかり、飛行場では飛行機を乗り過ごし、手荷物検査で全てのお土産を没収されるなど、少々ハプニングに見舞われたものの、なんとか無事生きて帰って参りました。共に二週間を過ごした同期は、中高時代の部活動で共に汗を流していた仲間。現在は日本、アメリカ、カナダとみなバラバラの地で、それぞれの専門科目を探求しています。旅行中、通算4回というかなりの口論を重ねながらも、お互いの現状を確認しあい、今後の目標も共有することができ、非常に有意義な時間となりました。隈研吾さんの言葉をお借りするならば、「他分野を追求する仲間に常にアンテナを張ること」。建築家になる上で重要な敏感さを刺激してくれる良き友たちです。

P.S. 春休みを利用し、メキシコで行われる建築ワークショップに参加する予定です。冬休みに引き続き再度メキシコへ。どうやらご縁があるようです。笑

(写真2)世界遺産の街グアナファト、コロニアル様式の街並みが特徴的

履修中の授業

ARCH374 Arch Design and the City (5 credit)

前期に引き続き、設計スタジオを履修しています。今学期は「都市の中における建築のあり方」がテーマとなっており(都市といってもDowntown Champaignですが。笑)、学期を通してDowntown Champaign内の敷地に、職住近接の建築をデザインするというものです。

設計スタジオの課題は前もって学校側が決めるものですが、東京大学とUIUCではその内容も大きく違っています。これは単に学校の方針の差だけではなく、大学の位置する場所、ひいては国の違いにも起因するものだと感じています。東京大学での設計スタジオでは、建築・空間の持つ意味について深く考えさせられるのに対し、こちらでは緻密なanalysisからニーズを特定し設計するという、よりpracticalな設計方法を教わっています。これは東京大学がアカデミアよりの建築の真理を追究する教育方針をとっている一方で、UIUCでは州立大学としてより実践的な教育方針をとっているゆえの違いなのかもしれません。

今期の課題では、初めの約一ヶ月ほどが敷地周辺のリサーチに費やされます。Scale, Material, Detailなどの建築的な要素はもちろん、周辺の土地利用、交通機関、人口(推移)・性別・年齢、主要産業、歴史的変化など、考えられる全ての変数要素をリサーチします。イメージとしては設計というより、もはやマーケティングに近いです。(笑)しかしこの緻密なリサーチが、後に生まれる自身の設計を論理的に説明し、それを必然たらしめることに繋がるように思えます。

ART310 Design Thinking (3 credit)

なぜデザインが生まれたのか、デザインの存在意義とは何なのかを学び、その上でデザインを自身の専門分野と融合させる方法を考える授業です。初回の授業で、教授に“Design is the tool to organize the information.“と言われ、衝撃を受けたのを覚えています。専門分野柄、これまで幾度となくデザインとアートの本質は何かと考えさせられることがありましたが、これほどまでにシンプルかつ明快にデザインを言い表すことができるとは思いもよりませんでした。

せっかくですので、この表現に対する自分なりの解釈を掲載させていただこうと思います。まずこの文を”Design is the tool”と”the tool to organize the information”の2節に分けて考えます。1節目の”Design is the tool”から、デザインは、ちょうどはさみなどの道具と同じように、何らかの需要に応じる形で生まれるものということが分かります、この点で、能動的な創作活動としてのアートとの違いがよく表されていると思います。次に2節目の”the tool to organize the information”では、肝となるデザインの意図が示されています。世界最古のデザインが人々の生活を記録するための壁画に施されたことを考えると、情報を効率的に伝達することがデザインの本質であるというのにも納得できます。また、デザインがinformationに追従する道具だということから、デザインはinformationの形態によって変化しうるものだとも言えます。つまり、informationが文字なのか、オブジェクトなのか、音なのか、、、それによってデザインのあり方も大きく変わってくるということを暗示しているように思えます。いずれにせよ、一句一句の選び方が絶妙で、何度聞いても鳥肌が立ちます。

BADM395 Foundation of Business (3 credit)

College of Fine and Applied Artsの学生のみを対象に開講されているCollege of Businessの授業で、オムニバス形式で毎週ゲストスピーカーを呼び、自身の持つcreativityをどのようにしてビジネスと結び付けていくかを考える授業です。College of Fine and Applied ArtsとCollege of Businessの協働により昨年度から始まったばかりの新たな試みで、僕がこの留学で目標としていた“interdisciplinaryな学び“をまさに具現化したような授業です。(実際、まだ5回目ですが既にinterdisciplinaryというワードを10回以上は耳にしています。笑)

 ビジネスといっても、marketingからfinance、はたまた3D printingまで、様々な分野を専門とした教授が各々の分野のperspectiveを紹介し、学生のinterdisciplinary thoughtを刺激する授業です。毎授業後、講義のtopicを自身の分野に応用した場合の可能性に関するレポートが課され、毎度のように頭を捻りながら考えさせられることで、非常に良い刺激を受けております。今学期終了までに、今後の建築設計の指針となるような何らかのperspectiveを形成することができたらと思っています。

余談ですが、UIUCにはMakersLabというものが存在し、学生が利用することのできる3D printerが20台も設置されています。この規模のLabは全米の中でも特筆すべき施設で、日本ではまずありえないと思います。面白いのは、この施設、なぜかBIF(Business Instructional Facility)というCollege of Businessの所有する建物内に設置されているところ。3D printerを使って模型を作ろうとする建築学生はわざわざ寒い中BIFまで歩かなくてはなりません。同じスタジオの友人に「なんでBIFにあるの?!」と聞いてみても、誰もその理由が分からないとのこと。。。不思議に思っていたところ、この授業の第2回目でMakersLabの所長さんが登壇され、初めてその理由を知ることができました。

3D printerを革命的発明たらしめる所以は、それによって、全ての物理的なmassを持ったobjectがcodeによって書き換えられる点だとのこと。生産者はcodeさえ書くことができれば、特殊な加工技術など必要なく、あらゆるものをobject化することができます。これは生産効率を上げるだけでなく、prototypeの作成や修正効率をも大幅に引き上げます。また一方で消費者側の視点では、code dataさえ入手することができれば3D printerを使うことで、どこでもobjectを入手することが可能です。これによってモノの移動に関する物理的な障壁は一切取り払われます。これらの結果、今までのモノを扱ってきたビジネスの在り方が大きく変わる、という視点から3D printerはビジネスと密接に関連するものとして捉えられ、ゆえにBIF内にMakersLabが設置されているそうです。

ちょうど、Industrial RevolutionによりBusinessが大きく変化した時と同様に、3D printerを含めた近年のDigital Revolutionによって、今後Businessの様相がさらに大きく変化するのはもう確実とのこと。MakrersLab、非常に価値のあるリソースだと思うので、UIUCを訪れる機会がありましたら、ぜひお立ち寄りください。

(写真3)3D printer越しに未来の話をする教授と生徒

SOC364 Impacts of Globalization (3 credit)

名前の通り、Globalizationの影響とその反響としてのLocalizationを考え、さらにその先にあるAlter-Globalizationを自身の専門分野で定義することを目的とした授業です。トランプ政権が誕生し、イギリスのEU離脱が決まったこのタイミングで、Globalizationをリードしてきたここアメリカの地で、この授業を履修できたことは非常に貴重な経験になると思っています。もっぱら建築だけを専門としてきた人間だったので、Globalizationに関しての知識はニュースで耳にすること以外、全くの無知でした。それゆえ毎週、おそらく日本語で書かれていても分からないであろう英論文の解読に追われていますが、毎週新たなトピックに関する新たな知識が得られ、自分の視野が確実に広がりつつあるのを感じています。

現在、授業と平行して、シリアからドイツ国内に移動してきた難民のためのMarketをデザインするコンペティションに参加していることもあり、Globalizationは自身の中でも非常にhotなテーマとなっています。

イリノイに来てもう既に6ヶ月弱が経とうとしています。課題に追われる傍ら、留学修了後のことについて考える機会も多くなってきました。この経験をどのような形で次に繋げるべきか、幸せだなぁと思いつつ悩んでおります。ここでの生活も残り三ヶ月。やり残すことのないよう、精進して参りたいと思います。

(写真4)雪の後の日本館にて

2017. 2. 7

第41期小山八郎記念奨学生   内倉 悠

深見真優さんの2017年1月分奨学生レポート

皆様、ご無沙汰しております。第41期小山八郎記念奨学生深見真優(ふかみまゆ)と申します。日本もだんだんと寒さが厳しくなってきているようですが、いかがお過ごしでしょうか。イリノイも身も縮むような寒さが、、、と言いたいところですが、なんと今のところとても過ごしやすい陽気が続いており、このまま春が訪れるのではないかと期待してしまいます。しかしそれは甘すぎるようです。来週からはまた冷え込むようですので、日本の優秀なカイロに期待を託します。現在、暖かくすごしやすい、とはいえ、気温をふと見ると1度程ですので、私もだんだんとイリノイナイズされてきたのだな、とひしひしと感じております。現在は学校が始まり、シラバスウィークと称される最初のイントロダクションの週が終わり、段々と普段の学校生活に心も体も戻ってきたところです。先学期の始まりと大きく違うのは、イリノイ大学での学校生活が自分の中で日常という感覚になってきたことだと感じております。今回の報告レポートでは、

  1. ボストン就職戦争
  2. Is it too late not to study?
  3. 旅行記(サンクスギビングと冬休み)
  4. 今年のこっそりとした野望

の4本立てでお送りしたいと思いますので、ご一読頂けると幸いです。

 

1ボストン就職戦争

全米、全世界から就活生が集うボストンキャリアフォーラムに参加してまいりました。人生ではじめての就職活動、心も体もガチガチで挑みました。お恥ずかしながら内定を頂くことはできませんでした、残念、、、。帰国後、就職活動に励みますので温かいご支援、よろしくお願い申し上げます。と、結果はさておき、、、ボストンキャリアフォーラムでの肌感覚をお話します。私がしみじみと感じたことは二つ。一つは自分の人生は一つ一つの決断で出来上がってきているということ、二つ目はそしてオンリーワンの難しさ、でした。一つ目について。事前申し込みを行ったり、当日インタビューを行う中で、自分の人生の中での選択についての、沢山のナゼにぶつかりました。中高一貫校に通い、第一志望に受からずとも明治大学に進学し、現在は小山八郎奨学生としてイリノイ大学に留学している。その人生の選択は私の選択の積み重ねでできていることに改めて気づかされました。残りの半セメスターをこちらで過ごす上でまた大小関わらず選択をすることがあると思います。そのときに、将来その選択がどのような結果に転じるかは別として、決断を下す瞬間は自分の中で十分納得して決断を下していきたい思いました。二つ目について。今までの人生やイリノイ大学やボストンキャリアフォーラムで星の数ほど優秀な方々にお会いしてきました。だいぶ弱気な発言かも知れませんが、私は何かのフィールドにおいて誰にも負けないナンバーワンは持っていないと感じました。しかし、小さな頃からSMAPの曲と共にのびのびと育ってきた私には、改めて、「ナンバーワンにならなくてもいい、元々特別なオンリーワン」という歌詞が自然に流れてきました。上にも記したとおり、ひとつひとつの選択で出来上がっている私の中に、決してイチバンではなくても、きっと私にしかないオンリーワンをひとつでも見つけるイリノイ大学後期にしたいと思いました。と、大口をたたきましたが、今年の就職活動が不安でなりません、、、しかし、悩むのは性に合わないのは十分承知しているので、明るく前向きに一つ一つのことに向き合っていこうと思いました。そしてやはり、準備期間も当日も友人に支えられ乗り越えられたと強く感じます。特に、こちらで出会ったジウォンが居たから、中間試験、ペーパー、事前申し込みを抱えながらも食事や日々の些細な会話を通して幾度となく救われました。学生時代が終わればなんとなく日本でずっと暮らすのかな、、、と考えていた私に、“Make a difference while you are young”の視点をくれたのも彼女でした。いかに自分が周囲の方々に支えられているのかを再認識しました。

(写真1、第40期奨学生である、もゆこちゃんとの久々の再会)

 

Is it too late not to study for finals?

I hate myselfという単語が口をつけばでる期末試験期間。ボスキャリと後述する夢のようなサンクスギビングが終わってからは、あっという間にファイナルが近づいてきました。サンクスギビング休暇からシカゴに戻り、薄暗いぺオリアチャーターに揺られながらシャンペーンに戻るときの監獄にでも戻るかのような感覚は未だに鮮明に思い出せます、、、とは言え、私は密かに、留学先での試験期間をどこかで楽しんでいたように感じます。冬休みのあれこれを話しながら、1セメスターで帰国するクラスメートとの最後の授業最後のランチにしみじみしながら、12月で卒業する友人とUGLで2時間半喋り続け夜中に若干の後悔をしながら、皆でわいわい頑張るこの感じが、私はすごく好きでした。人生で初めてのルームメートがスウェーデンに帰るのをユニオンまで見送りに行った時もあまりにいつも通りでまたね、と笑顔で送り出しましたが、部屋に帰ると私の荷物しかない二人部屋が急に寂しくなりました。試験期間は今までの勉強の成果と向き合う時期でもあり、冬休みに思いをはせる時期でもあり、友人とのしばしの別れを感じる時期でもあり、本当に沢山の感情がゴタゴタに混じったあっという間の期間でした。どの授業をとっても、新鮮ではありましたが、一番私の印象に残っているのはmedical sociology (医療社会学)の授業でした。この授業で私は、health issue とidentityの両方からoverweightについてのエッセーを書きました。日本でも、オーバーサイズ専門のファッションブランドが立ち上がったり、そのブランドにあったモデルが起用されたりと、メディアと肥満問題の繋がりにも興味があったため、アメリカ人がどのように肥満と向き合っているのかを知るいい機会になりました。この授業に関わらず、健康問題に関して考える上で必ず出てくるトピックが、人種でした。日本にいると感じることのない人種間での差がどの健康問題をとっても如実に関係していました。今学期は、授業や、それ以外にも、何かしらの形で、私にはまだ未知の世界である人種について考えていきたいと思いました。何はともあれ、無事に金曜日に試験を終え、友人らと少し遠出して食べたテキサスステーキの美味しかったこと。そのあとはyou’ll enjoy it, let’s go !の声に乗せられ今まで観たことのなかったスターウォーズの新作を映画館に見に行き、試験の疲れもあり案の定爆睡してしまいました。寝かせて、、、と思いながらも何度も横からたたき起こして来る友人に文句を言いながらも、彼が卒業してしまう前の楽しい思い出となりました。日本の大学では中々味わうことの無い、段違いの試験後の解放感でした。

(写真2、身長差30センチのルームメートのお見送り)

 

3旅行記

<サンクスギビング>

ボスキャリの荒波に揉まれた3日間でしたが、その後はこちらに交換留学生として来ている日本人の留学生とボスキャリからそのまま、イギリス領ターコスカイコス諸島へ向かいました。因みにニューヨークからは直行便が飛んでいます。私のイメージだと、生まれ故郷である奄美大島を高級リゾート化したようなイメージです。着いた瞬間コートを脱ぎ捨て一日の半分以上は水着で過ごしました。青い海と空に真っ白な砂が映える素敵な島でしたが、物価が驚くほど高く、イリノイでボリボリ食べていたチップスは1袋6ドル、明治大学の近くのお気に入りの980円パスタとそっくりなパスタは37ドル、という具合だったので、大学生らしく、節約のためにホットドッグをパクパクと食べて過ごしていました。夕方、ホテルからは続々と老夫婦や家族連れが夕日の見えるレストランへ繰り出していきます。ボスキャリのこともあり、どんな仕事に就きたいか、と闇雲に考えていた私でしたが、どんな人生にしたいか、というのも今のうちに少し考えてみるのも楽しいな、と思いました。白いパンツに紺色のシャツをサラッと着こなす夫の横に真っ白なワンピースをまとった妻がスッと付き添い、横には可愛らしいお子さんが2人並んで海辺を歩いていきます。おお、まさに人生の覇者のよう、、、。それを眺めながら、ここまで贅沢な遠出ではなくとも、毎年一度は、家族で、仕事も何もかも忘れて、のんびりとビーチで過ごせるようになりたいな、、、と、ふと、自分の将来に思いを馳せた時間でした。そんな風に黄昏れたのは一瞬で、あとは小学生にでも戻ったように真っ黒になりながら遊びまわり、シャンペーンに戻った際には、どこに行っても、真冬にそんなに焼けてどこに行ってたの、、、という会話から始まりました。こちらに来てから初めての遠出、日本からはなかなかたどり着けないのでとてもいい思い出になりました。

(写真3、砂浜に埋まって少しだけ考えた将来の自分ps一番手前は41期奨学生の内倉君です、写真4、予想の20分の1位だったイグアナとのセルフィー)

 

<冬休み>

出かけすぎました。試験の終わった次の日から、シカゴ、ロサンゼルス、アリゾナ周辺の国立公園、ラスベガス、ハワイ、ニューヨーク、トロントとせわしなく動き回りました。人生で一番濃厚で楽しかった冬休みでした。シカゴでは、先学期セメスターの最初からお世話になった友人がシカゴを連れまわしてくれました。ロサンゼルス、ハワイ、ニューヨーク、トロントでは、以前、明治大学で交換留学生として留学していた友人たちと久しぶりの再会を果たしました。ハワイには両親も私に会いにはるばる飛んできてくれました。ラスベガスと国立公園周遊には、中高から10年来の友人である2人が訪ねてきてくれました。訪れるのが2度目の場所もあれば、初めての場所もありましたが、違う時期に違う人と訪れると感覚も全く変わるものだ、と感じました。この旅で気づいたことは、私は一人旅が苦手であるということです。この長い旅行の中で、たった数時間ですが一人で観光する時間がありましたが、その数時間でさえなんとも消化不良でした。こう思う、これは何?これが綺麗、あれが美味しい、色んな感情を友人と共有することが私の旅の醍醐味であって、感じたことを自分だけで咀嚼して取り入れるまでには至っていない、まだまだおこちゃまだな、と思いました。いつも旅の終わりは友人との別れであり、すごく気分が落ち込んでしまうのですが、今回は明るい気持ちでまたね、と言えたのがとてもすっきりしました。友人の一人が私にかけてくれた、「まゆ、これが最後、と別れを惜しむ相手とは、それが最後にはならないと思う。」素敵な言葉であると感動するとともに、国内外ともに、何度でも別れを惜しむことができる友人に出会えた私がいかに幸せであるかを感じ続けた旅でした。そして、なによりも私に会うのを指折り数えてくれた両親との再会は嬉しいものでした。中学受験を決めた小学校4年生から、何事もすべて私に決めさせてくれた両親。両親からしたら口を出したくなるような選択をして何度も肝を冷やす思いをさせてしまったような気がします。しかし私のイリノイでの生活に関する目まぐるしいマシンガントークに時差ボケで居眠りしながらも耳を傾け、旅の最後に、「楽しそうで安心した、そのままでいいよー」とだけ言い残して帰国した両親には頭が上がりません。家族にも、友人にも、いかに私が支えられ生きてこられたか、生きているか、ひしひしと感じる感謝いっぱいの旅行となりました。サンクスギビングの帰りとは大きく違う点が一つ。シャンペーンに帰るぺオリアチャーターでは、絶望は一切なく、むしろ早く帰りたいな、という思いが強くあり、旅行に行く前とはまた別の高揚感がありました。新しい友人との出会いへの期待そして、友人に早く会いたい、という思いが1カ月離れ離れの生活でさらに強まりました。キャンパスにすでに帰ってきていた友人とのチャットを楽しみながら、どのお土産を誰に渡すかあれやこれやと考えながらの帰りのバスでのわくわくを感じた時、あ、シャンペーンが少しずつ自分の中で帰りたい場所になってきたんだな、気づき、とてもうれしくなりました。

(写真5、圧巻のホースシューベント、写真6、カメラに全く慣れない両親との記念撮影)

 

4今年の密かな野望

お雑煮を食べることも紅白を見ることも初詣をすることもなく、ベガスのベラッジオホテルの前で花火の爆音とともに友人と大熱狂で迎えた2017年。キャンパスに帰ってきてから少しづつ、今年はどんな一年にしたいかな、と考えました。大学生活の最後の山場である就職活動の後のことは、なんとなく実感がわかないので、せめてシャンペーンにいる間は何をしたいかな、と考えました。またポツポツと出てくる気もしますが、授業や課外活動、日常生活など総合して、ぼんやりとした目標が浮かびました。

1、ジムに通って友人と卒業記念にイリノイマラソンに出る!(モチベーションを上げるために次の期日までには申し込みます)

2、忙殺されずにジムに行く(友人と刺激しあうべくAre you goig to CRCE tonight ? のメッセージを怠らない)

3、tea evening class の他に自分の興味のある分野で課外活動を行ってみる

4、ギリギリでいつも生きない

5、現在の友人を大切に。もしかしたら一生の付き合いになるかもしれない将来の友人も大切に。一人一人と丁寧な交友関係を築く。

次回のレポートで詳しくは触れますが、今学期の楽しみな授業の一つにFoundations of Health Behaviors という授業があります。自分自身を実験台にして、一つの習慣の変化が健康にどれだけの影響を及ぼすかを1学期かけて観察する授業です。この授業の目的は、目標を達成することではなく、どれだけ習慣に変化を及ぼすのが大変かを身をもって体験することです。将来、何らかの形で健康促進に携わりたいと考えているため、自分自身がまず困難を味わう経験が必要であると思うので、あえて結果を公表しなければならない形式で挑戦します。そのためにジムでの健康管理は目標の一つにしたいと思います。課外活動に関しては、先学期、茶道のイブニングクラスでの出会いを通じ、日本文化を外から学ぶ楽しさに触れ、多文化に興味を寄せる学生の好奇心の旺盛さに刺激を受けました。せっかく日本人として生まれたのだから、もっと日本文化に触れたい、と不覚にも遠く離れたイリノイで気づくことになりました。授業も友人もおいしいお茶もお菓子も全てがすきなイブニングクラスは取り続けることにしました。それとは別で、新しい課外活動をはじめたいとぼんやり考えています。私は周囲の人との関りを通して立ち止まったり考えたりすることが多いので、そのためにも新しいことを始めてみたいな、と密かに考えています。4つ目は、日本の友人が着々と卒業に向け社会人としての準備をする中、私も自分の悪い癖を直したいという思いです。procrastinatorという私の代名詞のような単語を多用してきましたが、心にも時間にも余裕を持てるように少しづつ歩みたいと思います。最後に。これは、これからもずっと大切にしていきたいと思います。パーティースクールトップ10の名に恥じず、毎週のように大小問わず様々なパーティーが主催されます。せっかく沢山の人に会えるからこそ、全員は難しくとも、出会った人、一人一人と関りを持ち丁寧な交友関係を築いていきたいと思いました。もちろん新しい出会いに加え、今までの友人にも今一度感謝の気持ちを伝えられるセメスターにしたいと思います。

(写真7、昨年のtea ceremony classでの一枚)

 

長くなりましたが、私の報告レポートをここで締めさせていただきます。乱筆にも関わらず、最後までお読み頂きありがとうございました。現在、2月中旬の日本間でのイベントに向けて着々と準備を行っているところでございます。もう少し細かな奨学生の日常を写真とともにご紹介していく予定ですので、ぜひカウントダウンページにもお立ち寄り頂き、ご支援していただければと存じます。これから日本も寒さがグンと増すと思いますので、どうか皆さま、お体ご自愛くださいませ。今年もよろしくお願い申し上げます。

 

第41期小山八郎記念奨学生

深見真優