鈴木博達さんの2010年4月分奨学生レポート

JICの皆様、ご無沙汰しております。こちらはイリノイの厳冬も終わり、毎日清清しい天気の中、残りほとんどないキャンパスでの日々をすごしております。前回のレポートよりかなり時間がたってしまいましたが、その間の出来事を中心にご報告させていただきます。

【春学期の授業】
春学期の授業は、Globalization and Workers, Personal Finance, Intermediate Spanish, Intro to Japanese Cultureと4つの授業を履修しました。

最初の2つの授業は、専門である経済に関連した授業ということで受講を決めました。
Globalization and Workersはグローバル化が進む中での多国籍企業と労働者の関係の変化を
中心に扱うもので、教授は中国とイギリスを行き来しているので授業自体はオンラインで行われました。オンラインで行われるディスカッションのレベルはかなり高く、各々の学生と教授が、様々な観点からGlobalizationの影響を論じていました。内容もさることながら、自分の意見を論理的かつ端的にまとめるという点においても、大変勉強になりました。

College of Business で開講される授業は、通常は交換留学生は受講できないのですが、Personal Financeだけは留学生にも受講が許可されていたので、この授業を受講することに決めました。Personal Financeは個人の合理的な経済活動をテーマにしており、具体的には税金の管理や、401(k)を使った投資活動など、かなり実践的な内容を学習しました。課税体系や現在割引価値の算出について日本でも少しは学んでいましたが、米国の課税体系は個人が確定申告を行うことを前提にしている点で多少異なり、両者の比較が興味深かったと感じています。

Introduction to Japanese Cultureでは、日本の近代史と現状について主に文化的な側面から学習しました。アメリカから見た日本、ということで、日本で通常習う内容とは異なった観点からそれらを学習できました。例えば女性の権利の進展についてより重きが置かれており、戦後女性が参政権を得る前に、大正時代にもそれに向けた動きがあり、実際に衆議院ではその法案が可決していたことなどを新たに習いました。

union.jpg

春の気候の中のIllini Union

【2月週末と春休み】
留学も後半ということで、2月の週末と春休みを使って、メキシコシティやラスベガス、シカゴを訪問しました。春休みにはシカゴで初のDeep Plate Pizzaを体験し、楽しいリラックスした時間を過ごすことができました。

chicago.jpg
シカゴスタイル・Deep Plate Pizza

【Japan House】
4月にオープンハウスがあったため、日本館にも再度お伺いすることができました。小山八郎氏が送られたという枝垂桜がちょうど花咲いており、アメリカに滞在していることが信じられないくらい日本を感じられる雰囲気でした。オープンハウス前日の前祝いでは、Personal Financeを担当されている教授の方にもお目にかかりました。そのほかにも様々な日本館を支援してくださってる方にお会いしました。将来自分も何らかの形で日本館やイリノイ大学に貢献できることを願っております。

japanhouse.jpg
花咲く枝垂桜と記念碑

【Vernon氏のご家庭訪問】
また今学期には、小山八郎氏の記念文集の原稿を執筆する関係でお世話になった、Alice Vernon氏のご家庭を訪問する機会をいただきました。Alice Vernon氏はとても気さくな方で、ご家庭でも大変親切にさまざまな話を聞かせてくださり、夕食までご馳走になりました。ご主人のEd. Vernon氏には、ボートで家に面した湖を見せていただき、大変楽しい時間を過ごさせていただきました。

msvernon.jpg
Vernon氏のご家庭訪問時の様子

【留学生活の最後】
そんなイベントがたくさんあり、今学期は先学期にも増してあっという間に時が過ぎたような気がしています。イベントが一通り終わると、休む間もなく期末試験開始となりました。荷物を詰めている自分が信じられない気分でいます。そのような充実した時を過ごさせていただいたイリノイの大学関係者と友人、そしてJICの皆様には改めて感謝しております。

柳潤子さんの2010年4月分奨学生レポート

JICの皆様、いかがお過ごしでしょうか。2009年度JIC生の柳 潤子です。イリノイでは少しずつ暖かくなり、日によってはTシャツでも大丈夫なほどです。昨年の8月からイリノイ大学に留学させていただきましたが、早いもので、あと少しで春学期が終わろうとしています。今回は春学期の始まりからスプリング・ブレイク、授業のまとめまで書かせていただきたいと思います。たくさん書くことになってしまいましたが、楽しんで読んでいただければ幸いです。

1.    授業について
今学期は
PS 322 Law and Public Policy
PS 357 Ethnic Conflict
PSYC 238 Abnormal Psychology
GLBL 296 Ethics & The Debate Over Immigration Reform
CHIN 409 Social Science Readings Chinese
SPAN 103 Intermediate Spanish
の6つの授業を受講しております。2つのPolitical Scienceのクラスが非常に課題も多く内容も難しく大変ですが、今までとったことのなかったPsychologyのクラスやGlobal Studyの移民問題についてのディベートのクラスもありとても充実しております。

*PS 322 Law and Public Policy
アメリカの法律にかかわる授業をとりたいという思いからこちらの授業を受講しました。毎回非常に充実したReading Assignmentsに、Reading Assignments を基としたエッセイを3つ、Term Paper としてこれまでの授業で学んだアメリカのLegal Systemの知識を応用して実際の判例について分析するという課題と期末テストで構成された授業でした。大変良くない学生の例の如く、毎回の授業に課されるReading Assignmentsをきちんとやらずに、エッセイを書くときになって大慌てでReading Assignmentsを読み始めるということを3回繰り返しました。課題が多い分、得られるものも多い授業にもかかわらず、課題について行くことが必至で最低限度のことしかこなせなかったことが残念でした。この授業を受講するまではアメリカのPublic Policyがアメリカに住む人々の意見や要望をかなえるようなイメージを抱いており、それに関わる弁護士の仕事に対しても大きな憧れを持っていました。実際に学んでみると、当然ながらその問題点を学ぶことになり、訴訟社会と呼ばれるアメリカの今までは、知らなかった面を知ることになったことがこの授業での大きな収穫だったように思います。

*PS 357 Ethnic Conflict
冬休みにさせていただいたイスラエル留学の影響から、民族や宗教の問題を学んでみたいと思い授業しました。中間テストと期末テストの2つのテストに、3つのエッセイと計4回オンライン上で出されたディスカッションと、教授の情熱を感じる授業でした。授業では、まず、学生が教授の選んだ民族紛争の可能性のある世界の国名リストの中から他の学生とかぶらないように1つの国を選びます。授業の中でethnic identityはどのように作られるのか?どのようなconflictsがあるのか?どういった解決策があるのか?などについて学び、その知識を応用する形で自分の選んだ国をリサーチしてエッセイを書きあげていくというものです。教授の選んだ国名リストはアフリカや旧社会主義国、ラテンアメリカなどが中心で私にとってはほとんど馴染みがなく、アウン・サー・スー・チーさんを知っているというそれだけの理由でミャンマー(Burma)を選びました。ミャンマー(Burma)についての基礎となるような知識を持っていなかったために、テーマに沿ったことを1から英語の文献を当たってリサーチするのには非常に手間がかかりました。この授業が大変であった理由として分析してみると1.Political Science の授業そのものの基礎を受けたことがなかったため、エッセイやディスカッションで求められるようなPoliticizeするという視点がなかなか理解できず、鋭い分析や意見を言うことが難しかったこと。2.英語力の問題として、リサーチを行う際に筆者の明白には述べられてはいないが暗示しているような意見を拾い読むことが難しく、また自分自身も説得力のあるような論理的な文章を書くことができず、結果としてエッセイの課題を通して学習を深めることができなかったこと。3.これまで民族問題を身近に感じたこともなく、普通にアメリカに住んでいれば、当然に感じたり、知っているような民族・宗教問題の知識がなかったこと。があげられるような気がします。しかし、授業で学んだことは自分にとっては非常に興味深く、これからこの分野に関わることを広げていけたらいいと思うようになりました。

*PSYC 238 Abnormal Psychology
私の在籍する日本の大学には教育学部がないために、心理学の授業があまり多くは開講されていません。日本では学べない、新しい分野の勉強を始めてみるのも面白いだろうと思い受講をすることにしました。Eating disorderやPersonality Disorderなどもともと知識として知っているものも多く、楽しく授業を受けることができました。新しいacademic term(病気の名前など)を覚えるのもやはりネイティブの人たちと比べると不利な部分があることや、テストでの英文をきちんと読みとって答える部分が苦手であること、エッセイの課題にしても、文章力を他のネイティブの人たちと同じ水準で評価されることから、課題やテストについては思ったようにスコアをとることができず、悔しい思いもしました。ただし、JIC生の特典のようなものでGPAが将来にわたって自分の成績に影響を与えないということから、興味の赴くままに授業に参加させていただきました。MajorとしてPsychologyの授業に挑んでいる学生の気迫や情熱にかなわないと思う一方で、高いGPAを維持するために中間テスト後に多くの学生が授業をとることをやめてしまう姿をみると私のような交換留学生にはわからないアメリカの大学生の苦労もあるのだと感じました。

*GLBL 296 Ethics & The Debate Over Immigration Reform
もともとアメリカの移民問題に興味があったため、知識を広げられたらという思いで受講したのですが、いかに自分の意見を論理的に組み立て、ディベートを行うかということがメインになり、その議論のトピックとしてアメリカではhotな話題であるImmigration Reformが使われているという印象の受ける授業でした。私の所属している団体(La Colectiva)ではDream Actというundocumentedの学生にU.S.citizenshipを認めるための法律の制定のために活動する団体のため、当然Immigration Reformについては移民側に立った考えを基に活動をしています。私自身も日本でも移民の子どもにかかわる活動をし、アメリカでもラテンアメリカ系の学生が中心の政治団体に所属していることから当然にそうなっていましたが、授業では様々なバックグラウンドを持つ人がいるため、自分の考えとは対立する意見や考え方を知るとてもいいきっかけとなりました。

*CHIN 409 Social Science Readings Chinese
先学期に引き続き中国語の授業を受講しました。他の授業の課題が割と大変だったため、週5回(言語の授業は毎日行われるものが多いです)ではなく週2回のものを選びました。私を含めて4人の学生でクラスが構成されたため、中国語を話す機会は増えたように思いますが、やはり自分の意見を自由に発言できるようになるのは、なかなか難しい課題のようです。これまでの中国語の授業では中国語の学習用のテキストを使っていたのですが、この授業では中国の清代の探偵小説や中国政府文書を利用した授業であったため、中国語を使用して、中国の法社会の在り方について学ぶという新鮮なものでした。毎週中国語で、それぞれの学生がNewsを発表するという課題も出され、日常的とまではいかないまでも定期的に生の中国語に触れる習慣ができたように思います。私以外の3人の学生は家族の中では中国語を話して育ってきた人たちであったため、レベルの差もあり、先生には別の課題を出してもらって補う部分もありましたが、新しい興味が広がった授業でした。中国語はまだまだ学習を深めていきたいと思っています。

*SPAN 103 Intermediate Spanish
スペイン語は先学期に引き続き受講しました。先学期はどちらかというと新しいボキャブラリーが多く単語の面で苦労する部分があったのですが、今学期は新しいボキャブラリーに加えて文法事項が増え、授業についていけてないと感じるときも多くありました。インストラクターが楽しく授業を進める方で、先学期と同様オンラインでの課題も非常に良いものだっただけに十分に言語習得に向けて時間やエネルギーを割いたとは言えないのが残念でした。テキストの内容は大変良いものなので、日本に持ち帰って復習をしたいと思っています。

先学期とは比べものにならないほど授業で忙しく、課題に追われる毎日だったのですが、自分の興味のあることが思う存分に勉強できました。インストラクターには丁寧にご指導いただいて最後まで授業を続けることもでき満足しております。ただ、それぞれの授業の課題が非常に多いため、じっくりと与えられたものに挑み、授業で求められるレベルに達したかという面は非常に怪しい気がします。英語力が足りないために悔しい思いをすることも多かったのですが、そのことも含めて、新しい興味や自分にとっての課題を見つけることのできた学期になったと思っています。

2.    La Colectivaの活動について
先学期に引き続き活動に加わっています。今学期はミーティングに参加する以外の活動にも参加するということが目標でしたが、YMCAでLa Colectivaを代表して2人のメンバーとともにDream Actというundocumentedの学生にU.S.citizenshipを認めるための法律についてプレゼンテーションをさせていただきました。先学期のPublic Speechの授業ではDream Actについて何度かSpeechをしたためそのときに作成したスライドも利用して発表しました。どうしても多くの人の前で話すと私の英語が通じにくいこともあるため自分がこの役を進んで引き受けることには抵抗があったのですが、ラテンアメリカ系の学生が中心となるこういった活動の中で、アジアから来た学生としてLa Colectivaに参加し、Dream Actに賛同していると主張することは重要なことだと感じて引き受けさせていただきました。ランチタイムにYMCAで行われたイベントだったのですが、同じLa Colectivaのメンバーも駆けつけてくれ、和やかなムードの中で温かく見守られながらプレゼンテーションを行うことができました。
そしてまた、La Colectivaの活動として、寄付と人を集めて、ワシントンで行われるImmigration Reformのナショナルラリーに参加しようというものがありました。通常、イリノイからワシントンまでのバスは100ドルなのですが、寄付を集めて少しでも費用を抑え多くの人を呼んで参加するというものでした。最初にミーティングで話が出たときには本当に実現できるのかと思ったのですが、Fundraising Partyを企画したり、教授やLatino Studyに関わる人たちからのdonationを集めたりで、実際には60人近くの人を集めて一人40ドルの予算でワシントンへのラリーに参加することができました。Women’s Resources Centerでの活動なども見ていて思うのですが、日本での活動に比べてアメリカでのイベントの企画は非常に大雑把でありながら新しいこと、ユニークなこと、大きなことをやろうという意思が強いように思います。また、イベントを楽しむ側としても小さな不手際には目をつむり、イベントをやっているそのこと自体を評価するようにも感じました。Fundraising Partyの場合には、食べ物以外に何を売ろうかという話になったときに、オークションをしたらいいのではないか、という話になりました。ところがオークションで売るようなものがたくさんは手に入らないという状況で、La Colectivaのメンバーの中で得意なこと、ダンスのレッスンやDJなどのパフォーマンス、さらには一日デートをオークションでかけようと話が出、実際にオークションにかけられました。うまくいくかを考えることを二の次にして一見冗談に見えことを、堂々とやってしまうところがラテンアメリカ系の団体の強さなのかなとも感じました。私はドームに住んでいるためFundraising Partyで売るための料理も作れず、恥ずかしがって自分のデートのオークションにも参加しなかったのですが、当日スタッフとして会場で少し働かせてもらいました。
実際のワシントンで行われたImmigration Reformのナショナルラリーにはラテンアメリカ系の人が中心にはなっているものの、韓国系の人やアフリカン系の人たちも参加し、今まで見たことがないくらい多くの人が集まって大変な盛り上がりでした。日本でラリーに参加するということはかなり、ハードルの高いことのように感じますが、アメリカでは、家族や友人と参加することもありえるような親しみのあるイベントのようでもありました。

01.JPG
写真1 Immigration Reformのナショナルラリー

3.    スプリング・ブレイクについて
スプリング・ブレイクの始まりはLa Colectivaでのワシントンでのラリーでした。その後、ワシントンに3日間滞在したのちにニューヨークへ行きました。もともとアメリカに来る前は東京で一人暮らしをしていたためか、ニューヨークの都会が心地よく感じました。ワシントンでもニューヨークでもホステルに泊まっての一人旅行だったため、観光というよりも自分の興味のある、美術館や博物館に行き、普段はできない買い物を楽しんで帰って来ました。ワシントンではUnited States Holocaust Memorial Museumへ行き、ニューヨークではThe Jewish Museum、Tenement Museum、The Metropolitan Museum of Artに行ってきました。それぞれのミュージアムにはそれぞれ個性があって非常に面白く、それぞれのミュージアムショップではガイド本まで買ってくるほど充実したものであったので、紹介を載せておきます。

*United States Holocaust Memorial Museum
http://www.ushmm.org/
イリノイ大学の留学制度を利用して、冬休みに行かせていただいたイスラエルでホロコーストミュージアムに行ったのですが、時間が十分になくもう少し見たかったため、ワシントンのホロコーストミュージアムに行ってみようと思いました。当然と言えば当然なのですが、イスラエルのホロコーストミュージアムが、ユダヤ人側の迫害の歴史を中心に展示がしてあるのに比べ、アメリカのホロコーストミュージアムはアメリカの外交政策と織り交ぜて展示がしてあるのが印象的でした。さらにナチスがいかにユダヤ人迫害をかきたてるようなプロパガンダを行ってきたか、ナチスの迫害からアメリカに亡命してきたユダヤ人の話などもありました。ワシントンにホロコーストミュージアムを設立するときには本当にアメリカにとってこのミュージアムが必要であるのか議論があったようですが、実際には学生も含めて、とても多くの人が訪れ、アメリカ外交の反省点などにも言及してあることから、アメリカにとって非常に意義のあるミュージアムのように思われました。

*The Jewish Museum
http://www.thejewishmuseum.org/
こちらのミュージアムに行こうと思ったのも、冬休みに行ったイスラエルの影響が非常に大きいと思います。世界の様々な地域に移住することになったユダヤ人がいかに自分たちのアイデンティティを保ちながら、それぞれの国で生きてきたか、差別やホロコーストなどの出来事をいかに乗り越えてきたのかについて語られていました。ミュージアム内の短いツアーにも参加したのですが、ガイドの方が “We”を使いながら説明をしていくなど非常にユダヤ人の結束の強さを感じたミュージアムでもありました。働いていらっしゃる何人かの方にはユダヤ人でない人もいたのですが、来館者の中でユダヤ人でない人はほぼおらず、子ども連れで来てのんびりと時間を過ごしているのを見ると、アメリカに住むユダヤ人にとってのコミュニティのような場所でもあるように思いました。

*Tenement Museum
http://www.tenement.org/
こちらのミュージアムはインターネットでたまたま見つけたのですが、非常にユニークで私の興味とも重なり非常に楽しく過ごすことができました。ミュージアムそのものの建物があるのではなく、ツアー・チケットを買い、Manhattan’s Lower East Sideに1863年に建てられたアパートメントの1室を見学しながら、実際にそこに住んでいた移民の家族の話を、ガイドの方から聞くというものです。Lower East Side は1840年代から政治や経済の理由からドイツやアイルランドから多くの人々が移民し、労働者として過ごしてきた場所です。当時はガスや水道がアパートの部屋まで通っておらず、水を手に入れるために一日に何回も女性が一番下の階までの往復を繰り返しながら家事をしていたことや、衛生状態が非常に悪かったこと、また質の悪いミルクで子どもが死んでしまったことなどが語られました。アイルランドからの移民に対しては宗教的な差別もあり、非常に苦労しながら懸命に家族で助け合いながら生活していた様子が目に浮かびました。

02.JPG
写真2 Lower East Side

*The Metropolitan Museum of Art
http://www.metmuseum.org/
メトロポリタンミュージアムは非常に大きなミュージアムでニューヨークに旅行を決めたときから非常に楽しみにしていました。期待通りに非常に大きなミュージアムで、普段、日本ではあまり見る機会のなかった、アフリカやオーストラリアの原住民のアートや、中国の絵画、現代アートなども楽しむことができました。なるべく今まで見たことのないような展示品を中心に回っていたのですが、どうしても時間がなく、次にニューヨークに行く機会があったときにはまた行ってみたいと思いました。

4.    最後に
アメリカで過ごした留学生活は、日本での今までの生活を離れ、たくさんの人たちに恵まれ、また充実した授業を受けることができ、これからの自分自身の人生にとってかけがえのないものとなりました。その分、驚くことや考えもつかなかった出来事にも遭遇した期間でもあり、うまくいかなかったり悩んだりしたことも多く、アメリカでの生活はカウンセリングの通いながらのものでもありました。日本を発つときにはこういったことを想像しなかったため、カウンセリングに通っていること自体に対して不安になることや、辛いこともあったのですが、最後までうまくいくようにと努力し続けたことが、アメリカで頑張ったことの1つなのだと今は感じています。信頼のおけるカウンセリングの先生に出会えたことも、その先生との信頼関係をきちんと築くことができたこと、たくさんのアメリカでの出来事をカウンセリングでもシャアすることができたこともアメリカで得たものだと感じています。日本で離れて暮らしている家族や友人たちには大変心配をかけ、アメリカで出会った友人たちにも随分とお世話になりましたが、振り返ってみると、そのときには乗り越えることができるとは思えなかった1つ1つの出来事をちゃんと乗り越えて、素敵な留学生活が送れ、本当にアメリカに来てよかったという気持ちです。

03.JPG
写真3 カウンセラーの先生と

JICの皆様にも大変お世話になり、感謝の気持ちでいっぱいです。あと少しの帰国までの時間を大切に過ごす毎日ですが、この留学は今までの人生の中で一番充実し、一番成長した期間だと思っております。

中川貴史さんの2010年4月分奨学生レポート

 JICの皆様、いかがお過ごしでしょうか。2009年 度奨学生の中川貴史です。こちらシャンペーンでは極寒の冬も遂に明け、暖かい心地よい陽気の日が続いています。クワッドでは多くの生徒が芝生の上で寝転が り日光浴をする姿が見受けられます。早いもので帰国まで1月余り、時の経過の早さに驚かされます。期待と不安に満ち溢れてこちらに到着した時がつい昨日の ように感じられ、飛行機のチケットを目の前にしながら1月後には日本にいるということが未だに実感を持てずにいます。これまでの日々を振り返ると、沢山の 掛替えのない思い出が次々と浮かんできます。その中でも、今学期の初めから今に至るまでの3か月程の出来事の幾つかをご報告させて頂きたいと思います。

*授業について
今学期は法律系の授業及び、先学期学習して興味深かった日本に関する授業を軸に授業計画を組み立てることとしました。先学期に比較すると、300番台400番台の授業の数が増えやや負担が多いものの、その分学ぶことも多い充実した授業計画となりました。

JOUR411 Law and Communication
EALC227 Modern Japanese History
EALC306 Japanese Literature Translation Ⅱ
ATMS100 Introduction to Meteorology

今学期は以上のような12単位を履修しています。教授に頼み込み履修制限を外してなんとか履修することができたLaw and Communication のクラスでは、アメリカ憲法修正1条 の言論の自由に関する判例研究を行っています。毎回の授業で二・三の判例を扱い、事前抑制の禁止やプライバシー権との関わりなど一定のテーマについて判例 がどのような時代背景の中でどのような変遷をしてきたか比較研究しています。とりわけ興味深いのは、アメリカ憲法に拠るところが多い日本国憲法においては 判例・学説上もアメリカ判例と多くの共通点があることで、また逆に共通点が多いだけに差異がある点が際立つことです。例えば違憲審査基準という点では多く の共通点が見られ、日本でも学説上は違憲審査基準として確立されつつある「明白かつ現在の基準」についてアメリカ憲法判例の中でいかなる背景の下構築され てきたのか考察した授業は興味深いものがありました。また、メディアへの反論権に関する判例では、日米判例ともに言論の自由に対する間接的な抑止になると いう点を主な理由に挙げ反論権を否定しているものの、多様な学説・要素を考慮に入れながら違憲判決を下しているアメリカの判決文は印象的です。
Modern Japanese History の クラスでは、政治的な側面な側面のみならず、日本の歴史学習ではやや見逃されがちな衣食といった側面も当時の資料を読み解きながら学習しています。日本で は伝統的な学部の区分の中で法学部や文学部などに分かれ個別に研究されている歴史学ですが、歴史学部として独立した学問領域として確立されているこちらで は、学部レベルでも様々なアプローチから歴史研究がなされており興味深いものがあります。また、高校の授業や大学受験などでは鋭い視点から扱われることが 少ない第二次大戦後の歴史についても、アメリカとの関係性の中から日本の位置を捉え直すことで面白い視点を獲得することができました。Japanese Literature のクラスでは、江戸期から現代に至るまでの日本文学を検討・討論しています。生徒それぞれ異なった文化的背景を持っており、日本という文化を共有しない生徒達から出される意見は新鮮で、毎回の授業が楽しみとなっています。

p1010180.JPG

(写真1)エド&アリスさんのお宅にて

*日本館オープンハウスなど
先日は、郡司先生の方から日本館オープンハウス及び前日のレセプションパーティの方にお招き頂きました。レセプションパーティでは日本館の多くの支援者の方とお話しする機会に恵まれ、JICの 方々をはじめとして多くの人に支えられる日本館の貴重さについて再認識される機会となりました。また同じ週には、こちらで開かれている琴の授業のコンサー トがあり、こちらの学生が琴の演奏を楽しむ姿に心温まる思いがしました。加えて先日には、小野坂先生主催で日本語の授業を履修している学生をはじめとした 学期末のレセプションパーティがあり、今年から日本へと旅立つ大学院生や教授と会話を楽しみ、ぜひ日本で再会しようなどと盛り上がることができました。こ うしてこちらで築いた関係を今後も大切にしていければと思っています。
その後には、故小山先生がイリノイ大学にいらっしゃった頃から懇意にされていた方からディナーにお招き頂きました。美しい池の湖畔に佇むお家で10品 以上もあるフルコースのディナーを頂きながら、小山先生や日本での思い出を語って頂き、素敵なひと時を過ごすことができました。大変温かいおもてなしに言 葉で表せない程感激するとともに、小山先生のお人柄や寛大さを少しばかりか思いを馳せ、改めてこちらに留学生としていられることの貴重さを考えさせられま した。

*セントパトリックデイ&スプリングブレイク
3月 の上旬には毎年アンオフィシャルセントパトリックスデーという名目で学生達が飲みに行くという大規模イベントがあります。良い意味でも悪い意味でも、こち らの学生の勉強と遊びのメリハリにはいつも驚かされますが、アンオフィシャルデーはとりわけ大変面白い経験となりました。前日から24時 間寝ずに飲むぞと気合の入っている友達にお酒の買い出しに付き合わされ、当日のクラスではやや少ない出席者の中にやけに「楽しげ」な学生が混ざっていたり と印象的な光景を目撃することができました。日本では大学生全員が同じ格好をする機会などあり得ないので、学生達はみな緑のTシャツに身を包み、緑のビールを飲むという光景には圧倒されました。普段からイリノイのオレンジTシャ ツは人気がありますが、こういう形で愛校心ないし共同体意識が涵養されているのだと思うと興味深いものがあります。服装という点では日本の大学生は比較的 おしゃれな学生が多いという要因もあるため簡単に結論付けられないものの、日本の大学生よりもずっと誇らしげに自校のことを語る学生達の様子には、こちら の学生の愛校心の強さを感じさせられます。
春休みには、沢山のレポートを何とか仕上げるのとちょっとした休憩を兼ねてシカゴの友人宅にお世話になることとなりました。何度も訪れたことのあるシカゴですが、今回は初めて訪れたMuseum of Contemporary Artの作品の数々には心動かされました。紙や布、瓦礫などを使い創意を尽くして創られた作品はどれも日常性や時空といった深いテーマを表象しており、夢中になるあまり気が付くと丸一日を美術館の中で過ごしてしまいました。

untitled.jpg

(写真2)友人宅にて

レポートと期末試験が迫り勉強に追われる日々ですが、残り少ないこちらでの時間を噛み締めながら過ごしていきたいと思っています。
中川貴史