白水美佳さんの最終奨学生レポート

2005年度奨学生の白水美佳さんからレポートが届きました!!

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JICの皆様、ご無沙汰しております。大変遅ればせながら、最終のレポートをお届けしようと思います。年次総会にご出席の皆様には、稚拙なビデオレターで 失礼してご挨拶させていただいたとおり、私は8月に入った今も、まだイリノイに滞在しています。5月、UIUCの学期を終了して即始めたインターンシップ も残りあと1ヶ月未満。Color Change Corporationという会社で、毎日、その名のとおり温度によって色が変わるインクの研究開発をして働いています。

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<近況報告>
せっかくこうしてまだアメリカにいるので、まずはキャンパスを離れてのインターン生活について触れてみたいと思います。現在住んでい るのはSchaumburgという市で、住環境のよさではシカゴ郊外地域の中でも有名なのだそうです。前回のレポートでご紹介したように、私はそこでホー ムステイのような形で、普通のご家庭に一部屋を借りて暮らしています。3人の子供たちもすぐにすっかりなじんでくれて、家にいる間はとにかく ’Mika,Mika,Mika,Mika!!!’ 始終遊び相手に借り出されてしまいます。

休日には、ダウンタウンシカゴにもよく行く ようになりました。シャンペーンからだと、近いといいつつ3時間のドライブ、まして車のない私は前もってシャトルバスを予約して、と、やはりいくとなれば 一仕事という感じでした。それが今では電車で40分。往復5ドルもそれなりにリーズナブルです。東京で同じくらいの時間をかけて毎日大学に通っていた経験 のある私は、これくらいなら近いと感じてしまいます。やはりシカゴは大都市だけあって面白いイベントも多く、あるいはUIUCにはシカゴ郊外出身の学生も 多かったため、何人かとは会ったりもできました。

この一年、私には「アメリカにいるのだからアメリカらしく暮らしたい」という思いが何と はなくありました。イリノイ大学でも、常に「留学生」ではなくあくまで「UIUCの一学生」としてありたいと思っていました。典型的学部寮生活を満喫し、 更にアメリカ人の育つ典型的環境ともいえる郊外住宅地域での暮らしにもすっかりとけ込んで、それは十分達成できたように思います。

Host mother(?)のRobiさん自身、大学卒業後日本(静岡市役所)で数年間働いていた際、関根さんという方のところにホームステイしていたのだそうで す。それから10年近くになる今も、その家族の方々が折につけ訪ねてきたり、誕生日にはカードを交換したりなどしているそうで、子供たちも関根さんを「お ばあちゃん」と呼んでいるのがほほえましく思えます。その逆の立場で、今度は私とRobiさん家族が、この縁をこの先も長く続けていけそうなことを、本当 に幸運だと思います。実際一年半後のお正月に一家が東京の私と静岡の関根さんを訪ねに日本に来る、というプランがもう出来上がっています。育ち盛りの 1,3,5歳の子供のこと、どれだけ大きくなっているかみるのが今から楽しみです。

先々月、Glenさん(Host father?)方の親戚一同が集まってパーティがあるというので、一家に同行してミネソタまで週末旅行をしてきました。一日がかりのドライブの末 Glenさんのお姉さんのお宅にようやく到着。その時、用意された客室で眠りに落ちながら、ふと不思議な感慨を覚えたものです。いろいろな「縁」が重なら なければ、イリノイから更に離れたミネソタで、私はちなみにミネソタまで足を伸ばしたのはそれが初めてでした、車のドアを開けた途端に(つまり名乗ったり もする前に)’Hi,Mika!!’と迎えてくれる人があるなんていうことが、どうしてあったでしょうか。この森と湖に囲まれたミネソタの、この suburb areaの、このご家庭を訪れて、その一室で眠るというようなことが、私の一生でどうしてあったでしょうか。多くのめぐり合わせに支えられて今私がここに いるのだと、漠然と思ったことでした。

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<インターンシップ>
インターンシップを通して思ったこと:
1. 化学者は化学だけしているのではない
2. 仕事はそううまくいかない
3. それでもやはり私は研究職につきたい

1. これは会社に入ってすぐに実感したことでした。役職が’Research Chemist’ だったので、毎日白衣を着て実験、というようなものを想像していたのですが、実際はその段階に行き着く前にしなければいけないことが山 ほどあるのでした。考えてみれば当然なのですが、一つ試験実験をしようと思えば、まずプランをたて、必要な試薬は取り扱っている化学会社を探して、価格や パッケージサイズをききに電話をかけることから始めなければいけません。ガラス器具一つにしても、普段のプロダクションに使わないものは裏にしまってある ので、積まれた箱の中からまるで宝探しのように探し出さなくてはならないのです(数十Lの反応フラスコや奇妙な蒸留装置など、面白いものが次々出てくるの は確かに楽しかったのですが。)試薬が整然と棚に並び、器具も設備もそこにある、という今までの大学の環境が、むしろ特別に恵まれた環境なのだと、初めて しみじみと思いました。
2. 実際仕事を始めてみると、frustratingなことが本当に多いのです。実験してみて思うような結果が得られない、というようなら「それがなぜか」と 考えることはむしろ面白いのですが、慣れていないために最初は稚拙なプランしかたてられなくて「話にならない」とつき返されたり、プロバイダにコンタクト を取ろうとすれば「調べてから返事をします」といっておいてそのまま連絡が途絶え、それが私の仕事能率の低さになってしまったり。よく言われるように「能 力社会のアメリカ」だからかどうかは、日本での経験はないのでわかりませんが、働いて稼ぐということがいかにシビアなものか、身をもって感じました。最初 他に二人いたUIUC化学工学科のサマーインターンはわずか2週間程度で’poor work’といって解雇されてしまいましたし、私も仕事のquality とquantityによってサラリーが加減されるのです。例えば大学の試験で多 少成績が振るわなかったからといって、多少落ち込むとしても「まあ仕方ない、次は頑張ろう」という気がしますが、給料が少しでも下がったら、働いているの も自活しているのも一時的なもので、まだ「学生」という特権的な(と思います)身分を持ち合わせている自分でさえ、言い難いショックを覚えます。それがも し自分が家族を養っていたりしたら、と考えたりします。自分の能力をこうもダイレクトに評価されることは、経験してみなければわからなかったと思います。
3. そんなことがいろいろありつつも、私はやはりR&D、研究職、に就きたい、ということがこのインターンを通じて確認できました。自分はもとからそれを志望 していましたが、現場で他のいろいろな職種を見、人手の足りないときは手伝ったりもして、なおかつ研究職がいいと思うのだから、向いているのだろうと思う のです。一つのプロジェクトを任されると、そこに論理的な筋道を自分で立てることが出来て、目標に向かって前進している実感がわきやすいからというのもあ ります。そして何より、前述のような長いプロセスを経て、実際の試験をしている時、データをまとめている時、そしてそこから何かの発見があった時、純粋に 楽しいと思えるのです。オファーを取るの自体も難しかった状況の中、希望する職種のインターンをすることが出来て、本当に幸運だったと思います。

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<留学生活の総括>
キャンパスにいたのは5月まで、「随分前のことに思える」だけでなく実際随分前になってしまいました。「いい経験でした」とまとめるのは簡単ですが、具体的に何をどう学べたのか、自分なりに留学した意義を再確認する意味でも、振り返ってみたいと思います。

1. Career Decision
私 がまず挙げたいのは、この一年で、自分が将来キャリアとして何をしたいのか、確信を持って方向性をつかむことが出来たということです。私にとって、JIC プログラムの最大の魅力は、自由に学ぶ科目を選べたことでした。私は東京大学で理学部化学科を選びましたが、それは主に学ぶ分に化学が好きだったからで、 職として化学者になりたいのかどうか、見定められずに迷っていました。それで、いろいろな分野を見聞きして、その上で本当に興味のある分野を決めたいと 思ったのです。そうして、実際様々な科目に手を出したイリノイでの9ヶ月。特に食品科学には興味をひかれて、重点をおいて勉強してみました。
そし て、結論として。自分は別に「食品」にこだわるわけではなく、単に応用的・実用的な化学の研究がしたいのだというところに行き着きました。具体的には、廃 食油をディーゼル燃料に利用するなどの研究にひかれたことから発端して、もともと人口増加に伴う食料危機・エネルギー危機がテクニカルに何とかしなければ ならない問題だと思っていたこともあって、いわゆる「循環型社会」に必要な技術を開発できれば、と思ったりしています。あまりエンジニアには向いていない ような気がするので化学工学とも少し違うのですが。当初言っていた食品科学者とは違うじゃないか、と、はたから見ればそうなのですが、リサーチアシスタン トや大学院セミナーや学部の授業を通してかじってみなければ、いまだに迷っていたかもしれないのですから、それらの経験の意義はいずれにせよ大きかったと 思っています。
こうして探していた進路が見えて、次の目標が見えた今の私は、またそこに向かって走り出したい気持ちです。道筋としてはもちろん、 何よりまず化学科に戻ったら化学を本気で勉強して、学ぶべきことを学んで学部を卒業することだと思うので、インターンで手がけているプロジェクトにめどを つけたいのが先ではありますが、そろそろ’Now, it’s time to go back’という気がしてきています。得たかったものが大方得られたら、それ以上一所にとどまっていたいとは思わない性質なのかもしれません。その後はお そらく大学院に進むと思いますが、どこに行くかについては慎重に調べる必要がありそうです。アメリカの学生の本当に熱心に勉強する姿にも意識の高さにもタ フさにも刺激を受けた今なら、何にせよこれまで以上に頑張れる気がします。

<行動力、実行力、計画性>
一年の留学生活で、全般的 に、「行動力」と「実行力」が磨かれたと思います。行動力というのは、何かやってみよう、挑戦してみよう、と積極的に思うこと。例えば冬休みのメキシコへ の留学も、いろいろな場所への旅行も、自分から興味を持ってしたことです。実行力というのは、それを実現するためにどんなステップが必要か、自分で調べて 着実に処理すること。旅行の例なら情報収集に始まって飛行機やホテルを予約したり、一緒に行く友人と打ち合わせしたり。当然のことのように今なら思えるそ れも、留学前にはそう簡単に出来ていなかったことも事実です。外国を数週間一人旅してきたという友人が、「大変なことを一人でやっている」というように思 えていました。
そして、自分のこれからの課題は「計画性」を身につけることだと思っています。上記二つとも関連して、積極的なのはよいのですが、 私はとかくやりたいことが見えて大方の道筋が見えると、すぐに行動したくなってしまうのです。いわゆる「やらないで後悔するよりやって後悔したほうがい い」というものに近いかもしれません。やってみて、どうにもうまくいかなかったらその時点でまた立ち止まって修正すればいい、というようなところがありま した。それがうまくいくときもありますが、それだけではだめだ、と、これは主にインターンシップを通して学んだことです。やってみて修正するというので は、ビジネスになりません。何をするにもコストがかかっているのですから、自分の知りえる範囲で「これならうまくいくはず」という確信の持てるプランでな いと、実行に移してはならないのです。行動力、実行力は、そうしたプラン(方向性)がなければ、逆に大きな危険因子になってしまいます。一方で機を逃さず に行動するのも大切なので、まとめると、あらゆる可能性を事前に考え、ベストなプランを短時間に提案する計画能力が必要なのだと思います。今後様々な面で 心がけ、それを伸ばしていきたいと思っています。

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思 うことをつづっているうちに例を見ない程長いレポートになってしまいました。しかし実際、一年を振り返るとまだまだ思い出されることはたくさんあり、本当 にユニークな経験をしてきたことだと思います。帰国後、またの機会にぜひ皆様にお会いし、改めて感謝とご報告を出来ますことを楽しみにしております。
それでは、あと三週間、イリノイで頑張ってきますので、日本もすっかり暑いことと思いますが、おかわりなくお過ごしください。

一年間支えてくださった全ての方々に感謝して、

2006年8月6日
2005年度JIC奨学生 東京大学理学部化学科
白水 美佳

<写真>
1. インターンシップ
2&3.UIUC大学院生の友人と数週間前にグランドキャニオンとラスベガスに旅行してきた時の写真です。
4. Independence Dayに、Taste of ChicagoというイベントにUIUCのドームメイトとでかけ、毎年恒例という花火を見てきました。

白水美佳さんの奨学生レポート

現在イリノイ大学に留学中の白水美佳さんからレポートが届きました!!

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JICの皆様:

おかわりありませんでしょうか?第三回目の奨学生レポートを遅ればせながらお届けします。3月末から4月になってからの気 候の変化はあっという間で、写真の風景も今では花の時期が過ぎて新緑の季節というところです。こちらではさすがに梅桜というわけではありませんが、違った 形で春の訪れが感じられるのもなかなかよいものでした。Quadの芝生が日に日に緑濃くなっていく様子、名前がわからないのですがピンクや白の花が咲く植 木、またタンポポの黄色と白が芝生によく映えるのも、そこにリスや(たまにはウサギも)みかけるのもかわいらしく思えました。しかし私のお気に入りは実は 早朝です。8時のクラスにいくときの空気が「春のにおい」がするのです―、この頃はそれも「夏のにおい」にかわってきました。

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今回まずご報告したいことは、イリノイ大学での学期はもうすぐ(5/12)で終わるものの、その後3ヶ月あまり更にアメリカでインターンシップをすること が決まったことです。シカゴ郊外にあるColor Change Corporationという化学会社で、Synthesis Chemistとしてのポジションで、ラボスケールでの有機合成を主にすることになります。日本では大学の夏休み期間がアメリカより短いこともあり、また 制度の導入自体が比較的近年であることもあって、本格的なインターンシップで実社会での経験をつむ機会はなかなかないのが現状です。なので、夏にインター ンを、というのは留学当初からの希望でした。ほぼ一年間を通じてポジション探しをしたのですが、日本での就職活動すら全く経験のない私にとって、 competitiveなアメリカでのインターン探しはスムーズなものでは決してありませんでした。まして中にはUS市民権・永住権を(公式にあるいは非 公式に)要求する企業も多数あり、それは本当にもどかしいものでした。魅力的な仕事に相当の時間を費やして応募しても結局何度となく不採用。レジュメやカ バーレターの書き方からインタビュー、キャリアフェアでの対話、しかし試行錯誤しながら少しずつ身につけていったと自分でも思います。前回のレポートでも 紹介させていただいたように私は食品科学などに興味があるので、第一希望は食品分野での研究開発などではあったのですが、そのような職自体が少ないことも あって、これは見つけることが出来ませんでした。しかしながら、結果として専攻である化学の分野で、直接今までのスキルを活かして働ける道を切り開けたこ とには満足しています。また化学会社といっても食品添加物などを扱うプロジェクトもあるということなので、できればそれらにも携われるよう、今希望を出し ているところです。

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このインターンシップに伴って私の帰国は他の皆さんより遅く8月末になります。その頃はもう今年度の奨学生の方がイリノイにこられるのでしょうか。「夏休 みにインターンシップをする」というと「少し遅れて帰ってくるんだね」という感じがしますが、もともと9ヶ月間だった滞在期間が12ヶ月に延びたと思う と、あるいは1学期が4ヶ月ほどだったことを考えると、まだ今まで過ごしてきた分の1/3もある―、まだまだいろいろなことができるような気がします。ま して同じイリノイとはいえキャンパスとは違う新しい市で、また会社という全く別のコミュニティで、自分のプロジェクトに責任をもつという今までしたことの ないタスクを負い、はじめて(一時的ですが)自活する。新しい環境で、どこまで新しいことが吸収できるか。不安がないわけではありませんが楽しみです。

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インターンをするにあたって、唯一ネックだったのはリロケーションでした。キャンパスから一歩外に出るとアメリカは車社会、特に郊外地域などはどこに行く にも車で行くのが当たり前のように作られています。加えて郊外には普通家族向けの家が多いため、キャンパスのようにそうそう条件のいいアパートがあるかも 疑問でした。実際的にどこに住み、どうやって会社まで行くのか。-これが問題なく解決したのですが、そのストーリーが自身興味深く思えるので、少しご紹介 したいと思います。

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上記のようなことを相談したところ、Color Change Corporationの、私の採用を担当してくれたTimさんの妹さん(Robiさん)家族がたまたま会社の近く(自転車でいける距離)に住んでいて、 そしてRobiさんはたまたま日本にかなり興味があるということで、私に是非一緒に住まないかと言ってくれたのです。(ホストファミリーのような形)聞い てみると、RobiさんはIllinois State Universityで日本語を専攻し、卒業後はアメリカの会社の静岡にある日本支社で2年間ほど働いていたそうです。1,3,5歳になる子供さんたちに はバイリンガル・ジャパニーズを教えているということでもありました。普通のアパート探しが難しそうだった上、一般のアメリカの家庭に3ヶ月間も入れても らえるということはむしろ願ってもないよい経験だと思い、すぐにお願いすることにしました。

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この件を通じて思ったことは、本当に日本に興味を持っている人は多いのだということです。私の寮の友達にも、日本語を勉強している人などはたくさんいます し、アニメや音楽などのポピュラーカルチャーのレベルで日本が好き、という人は更に多いと思います。先日(4/8)には日本館のオープンハウスに参加させ ていただいたのですが、アメリカの学生やコミュニティの人たちによる活花の展示、デモンストレーション、お茶会。当日一緒に行った友達たちも、何らかのク ラスをそこでとったことがあるという人が半数でした。これらは「典型的」な日本文化で、現在の日本の文化がそれだけではないとは思いますが、そこにある精 神を学ぶことには意義がある―、とは日本館館長郡司先生の談で、なるほどと思いました。

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外国にいるほうが日本のことを発見することが多いのかもしれません。そして大学内でもまた社会でも、アメリカではいろいろな文化に特化した Organizationがあるのも(例えばIndian student association, Latino student association, Malaysian student association, 等々)最初は少し驚いたのですが、今ならわかる気がします。多文化社会だからこそ、それぞれのアイデンティティに関する意識が高く、失わないようにしよう としているのではないでしょうか。例えばインドの伝統的な曲をダンスと一緒に現代風にアレンジして披露するというあるキャンパス内のグループは、彼らは全 員「アメリカン」だけれども「ルーツはインド」なのだ、といっていました。また寮の友達がふとしたときに口にしたことも印象に残っています。彼は Jewishだけれども東アジアの文化などが素晴らしいと思って勉強している/武術などを習っている、という哲学科の人です。私が日本から来たというと、 ’you have really unique culture in your country. You MUST NOT SELL it’ ―というような内容のことを言われました。「売っちゃだめだ」―そういわれると、考えさせられます。「文化」とは何で「アイデンティティ」とは何なのか? それは複雑すぎてまだつかめませんが、とりあえず「外」から眺めてみるのはいいアイディアかもしれません。

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まだインターンシップはするものの、9ヶ月のオフィシャルな「留学」期間は終わろうとしています。近頃、大学で新年度が始まったのにあわせて、新しい学科 長の先生や実験担当の先生方に一応秋から戻ってくるということを連絡取らせて頂いたところ、事務的な手続きなど全て引継ぎ済みなので安心して戻ってきてく ださい、とのお返事を頂くことができました。今更ながら急に改めて、この留学がいろいろな人に支えられているのだなあと実感したものでした。ユニークなこ とばかり手をだし、ずっと飛び回っていたような9ヶ月間で、よく言えば活動的ですが悪く言えば半ば突飛な私をそれでも許してくださる周りの方々がいてこ そ、ここまでいろいろなことが出来てきたと思います。JICの皆様、東京大学関係者各位、家族と友人に再度感謝します―、そしてもうしばらくよろしくお願 いします。

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写真1,2,3: キャンパスの様子です。撮影日4/7で、今はもっと暖かくなっています。
4,5,6: 4/8 日本館オープンハウスでの様子です。
7: 一年間続けたKrannert Centerでのボランティアアッシャーも先週で最後となりました。
8,9,10: 三月に春休みが一週間あったので、ドイツとオーストリアに友達を訪ねて旅行してきたときの写真です。ヨーロッパはさすがに町並みが独特で美しいと思いました。

東京大学理学部化学科三年
白水 美佳

白水美佳さんの2006年1月レポート

こんにちは。そしてあけましておめでとうございます。
2003年度奨学生の篠原史温です。東京も寒いですが、さらに寒いイリノイの地から、奨学生の白水さんからレポートが届いたのでみなさまにお送りします。イリノイでの限られた時間をより有意義に、より有意義にすべく挑戦を続ける白水さんの前向きなレポートをお楽しみください。

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前回のレポートからおよそ3ヶ月半が過ぎました。皆様いかがお過ごしですか。そのころTシャツでも大丈夫だったのがうその様に突然寒くなり、突然雪が降り つもり、そうこうしているうちにもう1月。聞くところでは1月末から2月が一年で一番寒い時期ということで、もう一枚分厚いジャケットでも買おうかとして いる一方、それが過ぎれば春に向かうのかと思うと、本当に早いものです。

先学期のことでまずご報告したいのは、前回のレポート直後の10 月中旬から、Food ScienceのSensory Evaluationの研究室でUndergraduate Research Assistantをさせていただけたことです。私は日本(東京大学)では化学科の専攻なのですが、食品科学の分野に大いに興味があって、秋学期に Sensory Evaluation of Foods という授業を履修していました。大学院や進路のことなどでその授業の教官(Dr. Soo Yeun Lee) に相談をした際、もしスポットがあればResearch Assistant(RA)をさせていただけないかと折からお願いしていたのですが、ちょうどLee教授のラボのvisiting scholarであるPark教授が豆乳の風味感知について10月末に新しいSensory testをはじめようとしていたため、そこで機会を得ることが出来ました。(Park教授のテストの終了後11月末~12月には大学院生の Catherineさんのbreakfast cerealに関する同様の消費者テストをお手伝いさせていただきました。)

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RAといっても各仕事自体は地道なものです。例えば、Park教授はどの味覚成分が豆乳の味を左右しているのかなどについてテストしていたので、カップの ラベリングからベースとなる味覚の溶液(甘味成分のベースはスクロース溶液など)作り、パネリスト一人一人のトレーに順番をランダマイズしたカップをセッ トすること、それから実際のテストでパネリストに手順の説明・サービング・後片付け、等々。しかし実際にやってみて初めて気をつけなければならないことが わかることも多く、また授業で学んでいる知識を実際のパネルに対していかす事も出来ました。(e.g. どうやったら最も効率的にラベリングできるか、パネリストの心理的なレスポンスバイアスを抑える工夫、など)1日2~3時間 / ほぼ毎日働いていたため時間的にかなりスケジュールがタイトになったのは事実ですが、Lee教授はこのラボワークをFood Science individual studyとして三単位分のクレジットを認めてくれたため、記録として残せたこともうれしいことでした。また、こうしたRAの制度はアメリカではポピュ ラーなようで、どこの研究室も数人程度学部生のRAを持っていたのですが、James Scholar(イリノイ大学独自の奨学金制度)などのhonored students、特別なプログラムの学生、あるいは少なくとも大学院進学を考えている学生などモチベーションとポテンシャルの高い学生が多く、それもよ い刺激となりました。普通では見られない”生の”研究現場で過ごせたこと、教授と直接知り合えいろいろな話が聞けたことなども含め、このような経験が出来 て本当によかったと思っています。

11月末のThanksgivingの一週間の休暇(私はUIUCの友達と大勢で東海岸を旅行して楽し んできました)があけると大学は一気にfinal(期末試験)モードに包まれました。普段からこちらの学生は一般的に言ってよく勉強するのですが、特にこ のシーズンはみんなとにかくストレスフルな様子でした。図書館などに行くと深夜までどのテーブルも満席、ダイニングホールでも教科書を片手に食事する姿が ちらほら。日本の学生も見習わなければなあと思います。私も自分なりにベストをつくし、宿題や中間試験でナビゲートしてくれる授業形態と、またわかりやす い教官にも恵まれたおかげで、GPA 4.0の好成績で秋学期を終えることが出来ました。

そして迎えた冬休み。といっても私は授業に出て いました。…というのは、UIUCの短期留学プログラムで他11人のUIUCの学生とともにメキシコ(Moreliaという中央高原北西部の街に基本的に 滞在していました)に3週間ほど行ってきたからです。これはLAS提供の三単位分のれっきとしたクラス(LAS 199 Winter Course Abroad : Global Studies)という扱いで、主にはGlobalizationとメキシコのmigrationの関係について学んできました。はじめStudy Abroad Officeのウェブサイトでプログラムを概観したときは、正直なところ、もともと旅行が好きで一ヶ月もある冬休みならばどこかに旅行しようと思っていた こともあり、ただの観光客でいるよりはもっと何か経験できる旅がしたいという漠然とした好奇心が大きかったのですが、いざ応募が選考に受かって研修が始 まってみると、午前中クラス→on-site task→午後はreading assignment, journalの提出、on-site taskについてのレポート、afternoon activity(美術館や歴史的建造物の見学など)、スペイン語の会話レッスン、 と予想よりずっとハードな毎日。しかしだからこそ、歴史的にどう globalizationがメキシコの社会に影響を及ぼしてきたか、様々な観点から深く学ぶことが出来ました。化学専攻の理系の学生として、今まで触れ る機会の少なかったこうしたトピックについて考える機会がもててよかったと思います。実際他の学生も工学部などから参加している人も少なくなく、専攻を問 わずこうした世界的問題についてしっかりした独自の見解を持っていることは必要なのだと感じています。

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クラス以外にも週末にはField Tripが計画されており、Morelia近郊の町や島の観光地(タラスコ文明の遺跡Las Yacatas、カナダからの渡り蝶の保護区Monarcaなど)を訪ね、また日曜日はday-offだったので長距離バスでメキシコシティに足を伸ば し、そこの大学生であるメキシコ人の友達らに会うこともでき、あるいは平日フリータイムを見つけては他の11人の学生と市場を散策したりカフェでくつろい だり、時には夜中にパーティをしたりと楽しんだことも、全て忘れられない思い出です。滞在は12月26日から1月13日までだったので、新年もメキシコで 迎えることとなりました。まして1月1日は日曜日、day-offを利用してこの日はメンバー全員でMoreliaから車で2時間ほどの小さな小さな村々 を訪ねていました。果てしないほど広がる草原と山と湖をバンの窓から望みつつ、真っ赤な1月1日の夕焼けを見たのがやけに記憶に残っています。昨年の今頃 には、まだこのJIC奨学制度への選考まちの段階でした。初詣でひいたおみくじが大吉で、「大きな転機が訪れるでしょう」とあって、もしかしたらこの留学 にいけることではないだろうかと冗談めかしてしかし期待を抱いて、友達に言ったのを覚えています。一年後に、メキシコの村で新年を迎えていようとは、さす がにそのとき思ってはいませんでした。今までで一番印象的な元日だったと思います。

全く、留学は人をアクティブにしてくれる。―-それが 私の思ったことです。もし私がもともとUIUCの学生だったら、あるいは全く同じようなRAのシステムや短期留学のプログラムが東京大学にあったとした ら。それらがあることにも気づかず、あるいは知っていても応募のプロセスを面倒がったりして、参加していないかもしれません。一年間という限られた時間し かない中で、そこにあるresourceを吸収できるだけ吸収したい。その思いが、私にいろいろな経験をもたらしてくれました。そして、何かしたいと思い 行動を起こせば、実現する道が開けるのがアメリカという国の気風のいいところだ、とも思います。日本で「なせばなる」というと何か精神論的な意味合いが感 じられて好きではないのですが、”When there’s a will, there’s a way”というとき、その”will”には、”自分から動くこと、実現に向けて努力すること”-言い換えればアクティブであること、という意味が含まれて いるのではないかと思います。

昨日アメリカに帰国して今はシカゴの友達の家にお世話になっており、明日にはシャンペーンに戻り、そして明 々後日からは再び大学生活が始まります。今のところの履修予定では300-400番台のクラスが主になる上履修単位自体も多く、気持ちを新たに引き締めて いるところです。また春学期はSensory EvaluationではなくFood Chemistryのラボで、引き続きUndergraduate RAをさせていただくことになりました(そのほうが、やはりFood Scienceのフィールドの中でも化学の知識が最大限に活かせるかと思ったためです。)健康には注意し、課外活動も社交関係も楽しみながら、残り半分の 留学生活を充実させていきたいと思います。

こんな素晴らしい機会を与えられていることを感謝しつつ。2006年が皆様にとりましてよき年となりますよう、お祈りいたします。
謹賀新年

白水美佳さんの2005年9月レポート

JICのみなさま、

こんにちは。2003年度奨学生の篠原史温です。
今回は、白水美佳さんのレポートをお送りします。
彼女は既にアメリカ生活をしたことがあるためか、若干の余裕が感じられるレポートとなっています。それでも、日々世界が広がっていく感じをおぼえているようで、「自分もこうだったなー」と妙に納得してしまいました。それでは白水さんのレポートをお楽しみください.

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JICの皆様
シャンペーンに到着してから早くも一ヶ月半が過ぎてしまいました。皆様いかがお過ごしでしょうか。こちらは数週間前のあっけらかんと照 りつける太陽がうそのように日々涼しくなってきていて、朝晩には寒いときもありますが今がちょうどいい気候なように思います。授業の間に行きかう学生の服 もイリノイTシャツからイリノイトレーナーにかわりました。どちらにしてもオレンジ色ですが。

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<シャンペーンでの生活> 私はkcsaという学生組織に入っており、クラナートセンターという大学のカルチャーセンター(ホールなどがありコンサートや演劇、展示などが行われてい ます)でusheringのボランティアをしながら同時にショーを楽しんだりもしています。大学の一施設ながらパフォーマーのレベルが高いのには驚かされ ます。例えば4月にはあのyo-yo 6週間といっても、すっかりこちらになじんでしまって、むしろ8月まで日本にいたことのほうが信じられない気がします。私は、2年前の春休みに別の研修旅 行で短期間ながら米国カリフォルニア州のスタンフォード大学に滞在していたり、今年7月にはコロンビア大学(ニューヨーク)を一週間ほど訪れていたことも あり、来る前にも特に不安などは抱えていなかったため、こちらの生活はある意味「予想通り」で、「うん、こんなものかな!」というのが正直な感想です。 maも来るということです! 何人かのjicの方からはシャンペーンが(良くも悪くも?)田舎だ、と聞いていましたが、個人的には、ずっと便利ですみやすい街じゃないかと思っていま す。キャンパス内に住んでいるため外―トウモロコシ畑?に出ることがあまりないからでしょうが、マーケットプレイス(デパート)やスーパーマーケットにも バス(しかも無料の!)で15分くらいで行けますし、近くの24時間営業のドラッグストアやレストランで大抵事足りるので、全く不自由はしていません。週 末には宿題をこなすか、毎週何かしらイベントやパーティーがあるので友達と参加するか、いい意味で忙しい毎日を過ごしています。>

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<授業に関して>

私 は幸運にも渡米前にオンラインでシラバスをみて希望していた授業全てに何の問題もなく履修登録することができ、計画通りの時間割で今学期をスタートしまし た。しかし始まってみると実は少し易しめの授業が多く、課題の量自体は少なくないながら内容的には今のところ日本で勉強したことがある題材の復習とその発 展のようになってしまいました。そのおかげで全般的に生活に余裕は持てていますが、他の奨学生や友達が真摯に課題に取り組んだり勉強したりしているのをみ ると、もう少しチャレンジしてもよかったなと思います。理系の科目は本質的に学んでいることが特に英語でも日本語でもあまり変わらないので、(特にプログ ラミングの授業などは、当然ながら…)それも一因です。また、教授が皆本当にクリアな発音でわかりやすく授業をしてくれるうえ、オンラインでの教材の提供 など、日本に比べてサポート体制が万全というか、本当に学生に親切だなあと思います。

私が今学期一番とってよかったと思っているのはpublic speaking(スピーチコミュ
ニケーション)の授業です。これは前年度の奨学生の方などから進められて取ったの
ですが、今までスピーチなどしたことがなかった私にとっては、こんなに体系化した
手法があることが新鮮でした。これは他のいろいろなライティングにも大いに役立っ
ています。少人数のクラスで授業内グループワークもあるため友達もでき、来学期に
も別のスピーチコミュニケーションの授業をぜひまた何かとってみようと思っていま
す。

<暮らしてみてかわってきたこと>

一ヵ月半が過ぎて感じるようになったことは、日本とアメリカの「隔たり」が私の中
でどんどんなくなっているということです。それは不安でもなく期待でもなく、「距
離感」のようなものです。JICの皆様にいろいろな情報を前もって教えていただいて
いたこともあってこちらでの暮らしに特に不安はなかったとはいえ、やはり来る前に
は「ああ、一年間アメリカに行くんだ」と気張る気持ちがありました。しかしこちら
で実際に毎日をすごしていると、アメリカも日本もそんなに本質的には変わらない、
という気がしてきています。

もちろん新しい人に出会い、新しい文化経験ができ、新しいことを日々学んでいます
が、それも含めて、違いはあるけれど「ひと」であることにはかわりないし、「ひ
と」の暮らしている日々の生活であることにかわりはない、と思います。私は出身は
福岡で、高校卒業までずっと実家で同じ街で過ごしていました。大学に入学するに当
たって初めて上京し、しばらくたったときの気持ちと、今似たものを感じます。秋風
が心地よく、見上げれば月があって、それはどこから見ても同じなんだと思ったりし
ます。平たく言えば自分の中で活動範囲が広がったということなのでしょうか。帰り
たければポンと帰れる、行きたければポンと行ける。(まあ航空機代はかかります
が。)そういう範囲にアメリカがある気がします。子供のころは隣の市に行くのがす
ごい遠出のようだったのに大きくなるとちょっとそこまで、という感じになるのと同
じです。この調子で世界中が「ちょっとそこまで」になればおもしろいな、と思いま
す。

報告したいことはあげればきりがないのですが、次回のレポートをまた楽しみにして
いただければと思います。最後になりましたが、ここでの全ての経験を支えてくだ
さっているJICの皆様、UIUCと東京大学の関係各位、アメリカと日本の友人達、そし
て両親と家族にこの場を借りて心から感謝します。

Best Wishes for Everyone,
Mika Shiramizu
Oct. 2nd, 2005

2005年度奨学生 白水美佳さんの自己紹介

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ICの皆様,はじめまして! 2005年度小山八郎記念奨学金留学生に採用していただきました,白水美佳と申します.私は現在東京大学理学部化学科の三年 生で,毎日午前中は講義,午後は実験と,化学漬けの日々を送っております.研究室の配属は三年の冬に決まるため,化学の中での専攻分野はまだ決まっていな いのですが,今のところは物理有機化学の研究をしようかと考えています.

私のモットーは「何にでも一生懸命に」.興味の幅は広げておきた いという思いがあり,このプログラムの受け入れ先が教養学部で様々な分野の授業が取れるというのは,応募に際し私にとって大きな魅力のひとつでした.これ を機会として,通常の化学科の授業では学べないようなことを勉強したいと思っています.具体的には,化学工学,生物化学,fundamental skillとしてのプログラミングの基礎等です.またインターンシッププログラムにもぜひ参加したいと思っています.

渡航の日が一日一日 と近づいてきていますが,他の三人の今年度奨学生や様々な情報提供等励ましてくださるJICの先輩の方々,「人」に恵まれて不安よりも期待でわくわくして います.このような形で留学できることを,本当に幸せだと思っています.一年間,一言で言うなら「楽しみつくして」帰ってきたい! これが私の抱負です.