Japan Illinois Clubの皆様、ご無沙汰しております。42期奨学生の福田健太と申します。イリノイ大学では、Liberal Arts and Sciences学部の、Economics Departmentに所属し、経済の勉強を中心にしています。9月に入り授業が始まってから、目の前の授業や課題に追われるうちに、あっという間に1か月が過ぎてしまいました。先日大半のMidtermが終了し、ひと段落したところで、この一ヶ月を振り返ってみようと思います。
大きく分けて、オリエンテーション期間、授業、授業外の生活について書こうと思います。
オリエンテーション期間
8月下旬にイリノイ大学へ到着してから、9月に入り授業が始まるまでの一週間ほどは、オリエンテーション期間であり、新しく入学する学生同士の交流イベントや、学生生活に必要な情報に関する講義に参加しました。
この時期に、キャンパスからバスに乗って20分ほどのところにある、アーバナダウンタウンで行われたUrbana Sweetcorn Festival (いわゆるトウモロコシ祭り) に友達と参加しました。
イリノイ州はコーンベルトという、アメリカ有数のコーン産地の一部であり、シカゴからバスでキャンパスへ向かう道の両側に延々とコーン畑が地平線まで続くような場所であり、美味しいトウモロコシが安く食べれたら良いなと思って遊びに行ったのですが、予想していたより楽しいものでした。
アーバナダウンタウンの一部に、多くの出店が出店されており、日本のお祭りと似たような雰囲気のものでしたが、チームで取り組む謎解きゲームのようなものがあり、お祭り会場にのあちこちに仕掛けられた様々な問題に答えることで得られるキーワードを伝えると景品がもらえるというので、ルームメイトたちと参加することにしました。
この謎解きゲームが意外と難易度が高く、お祭り会場を早足で回りながら、問題の前で解き方をみんなで議論し、なんとか終了時間ギリギリで全ての問題を解き終えると「君たちで最後だよ!」滑り込みで景品をもらうことができました。景品は小さなトロフィーとオリジナルTシャツとそんなに豪華なものではありませんが、思い出の品となりました。
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全ての問題を解き終えてルームメイトたちととった記念写真。(トウモロコシを食べているのが筆者)
また、授業が始まる前にJapan Houceが主催するMATSURIがあり、JICの学生4人で運営のお手伝いを行いました。私は浴衣をきて、お客さんに折り紙を教える役割につきました。まだ英語にも慣れない中、鶴などの折り方を英語で説明するのは大変でしたが、5時間ほどの間なんども繰り返し折り方を説明するうちに、最後の方は注意すべきポイントに重点を置いて説明するなど、成長を実感することができました。
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MATSURIで折り紙の折り方を確認しているところ
授業について
こちらで受ける授業は、総じて「教育」を強く意識した設計がなされていることを感じます。日本では、講義形式で知識を伝えられる授業が多いのに比べ、イリノイ大学では、講義に加えてディスカッションや、エッセイ、クイズなど様々な方法を組み合わせて行われる授業が多いように思います。
特に面白いと感じたのが、大学内のBookstoreで購入できる、i Clickerというリモコンのようなものを使い、授業中にリアルタイムでクイズや投票などを行うものです。これにより大教室の授業でも、教授と学生がインタラクティブなやりとりを行うことができます。何人がどの選択肢に投票したのかがわかるため、自分以外の学生がどのようなことを考えているか知ることができます。
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授業で使うi Clicker。オンラインで番号を登録し、授業中にスライドに表示される選択肢に対応したA~Eのボタンを押す。
また授業前のオリエンテーションでも念を押され、多くの教授も行っていたことが、ただ教室にきて黙って座っているだけでは高い参加点を得ることは難しい、というものでした。アメリカの大学といえば、授業内で盛んにディスカッションが行われるようなイメージを抱いていたので、もとより覚悟はしていたつもりでしたが、この点に関して最初の数週間は本当に苦労しました。
みんな次々と発言していき、それを元に次のディスカッションが行われることもよくあるため、一度聞き取れないとその後の流れが全くわからず、今何を話しているかわからないためもっと発言する自信がなくなる、という繰り返しでしたが、1ヶ月授業を受けているうちに少し慣れてきて、だんだんと発言できる機会も増えてきました。
1学期間に10科目ほど取れる日本の大学とは異なり、こちらでは1学期に最大でも6科目ほどしか履修できません。また一つの授業が週に2~3コマあり、課題や予習の量も膨大なため、はじめは5科目履修しようとしていましたが、一つ一つの授業を中途半端にしないよう途中から一つ削り、計4科目の授業を履修しています。
私は日本では法学部に在籍しているものの、経済学に興味があったため、今回の留学を利用して経済学を勉強しようと考えています。そのため、今学期に履修している4つの授業のうち、半分は経済学に関する授業であり、残りの半分は、関心のある社会政策に関係する別分野の授業をとっています。
またせっかくの留学なので、よりアメリカらしい授業を受けたいと思い、ほぼ全ての科目が、授業内でディスカッションを行うものとなっています。
以下に、それぞれの授業の概要を記していこうと思います。
◆ECON303 Intermediate Macroeconomics
こちらは、学部生向けの中級マクロ経済学の授業です。どうやら日本の標準的な学部レベルの授業と大学院レベルの授業の中間くらいのテーマを扱っているらしく、経済成長やビジネスサイクルについて、代表的なマクロ経済の理論を学んでいきます。授業で学んだことに関する毎週のオンラインクイズと、計算問題をとくHomework、一つの分野が終わるごとに実施される計3回のMidterm ExamとFinal Examで成績が評価されます。
授業は週に2回の講義と1回のTA Sessionから成ります。理論の説明を行う講義は100人以上が参加し、日本の大学の授業と似たような雰囲気で進められます。対してTA Sessionは、授業で扱った理論を元にした、問題の解き方をPh.Dに在籍するTAから
経済学を初めて勉強する私にとっては、授業の進むペースも早くついていくのが少し大変ですが、数学の問題と実社会の動きが結びつくことがとても楽しく、今学期もっとも力を入れて取り組んでいる授業です。来学期には、マクロ経済に関するさらに発展した授業を履修したいので、この授業はAの評価をもらえるように頑張っていきたいと思います。
◆ECON490 History of Modern Economic Thought
こちらも経済学部が開講している授業ですが、数学を使う代表的な経済学の授業とは異なり、過去の経済学者が記した古典を読み、現在当たり前のように使われている考え方や概念の成り立ちを学び、理解を深めることを目的とした授業です。そのため、毎週の授業で課される予習課題が膨大で、今学期もっとも苦労している授業です。
授業は週2回の講義とディスカッションを合わせたようなコマから成り、一つの授業につき50~100ページほどの古典を読んで望みます。重商主義、アダムスミス、ケインズなど、社会科学を勉強したことのある人ならば誰しも一度は耳にしたことのある思想家・経済学者の作品を扱うのですが、なんとなく名前を知っている彼らが、実際にどんな問題意識に基づき、どんなことを主張しているのかを自分が知らなかったことに気付かされます。
◆PHIL106 Ethics and Social Policy
この授業は、哲学科により開講されている授業で、実社会で起きている様々な問題を倫理学的に分析するというものです。これまでに、表現の自由からみる大学でのヘイトスピーチ規制や、アファーマティブアクションの是非などをテーマとして扱いました。
特定のテーマに関する、代表的な倫理学者の主張がリーディング課題として課され、授業では、それらの主張を全員で確認した後に、著者への反論をディスカッションします。授業が始まってすぐの頃は特に、教授の話す内容は聞き取れても、ディスカッションで他の学生が話す内容を聞き取ることが難しく、今何について話しているのかわからなくなってしまうこともあり、とても苦労しました。今でも抽象的な哲学の理論について議論することは苦労することも多いですが、なるべく自分で一番最初に発言をして議論の流れを作るなど、授業が追えなくならないような工夫をしながら、少しづつ積極的に参加できるようになってきています。
◆PS270 Introduction to Political Theory
一時期日本でも話題になったマイケル・サンデル教授の「ハーバード白熱教室」のような、政治哲学をテーマとした授業です。「あなたが運転手をしているトロッコのブレーキが壊れ、このままだと線路で作業をしてる5人を轢き殺してしまうが、車線を変更すると5人は助かる代わりに別の1人の作業員を殺してしまうことになる」という状況で、どう行動することが正解か?という、有名なトロッコ問題についてのディスカッションも行いました。授業では、政治学の古典を読みながら、「自由」や「平等」、「正義」と行った抽象的な概念について自分なりの考えを作り上げるというものです。
この授業は、教授が特に教育熱心であり、毎授業後のオンラインクイズ、毎週のエッセイ、隔週毎に課される課題と、とにかく取り組むことが多く大変な授業なのですが、アウトプットの機会が多く、自分の考えをまとめることができるため、ただ単に知識を習得するだけではなく、自分なりにそれを消化することのできる良い授業だと感じています。
先日の課題では、「自由」と「平等」の定義と、両者の関係についてワンセンテンスで自分の考えを書く、というもので、たった3行の文章を書くだけの課題にもかかわらず、一週間近くずっと考え続けることになり、とても苦労しました。友達と議論をしたり、提出時間の直前まで粘って考え続けた結果、自分なりに満足のいくものが書けたので、教授からのフィードバックがとても楽しみです。
授業外の生活
留学開始前は、何かしらのクラブに参加し、有意義な生活を送ろう!と意気込み、Quad Day (全クラブ・サークルが大学のメイン広場にブースを出店し新歓活動を行う日)では色々な団体の話を聞いたのですが、いざ授業が始まってみると、想像以上に余裕がなく、恒常的に顔を出している団体が特にない状態となってしまいました。
しかし、都合の合う日は、毎週木曜日にJapan Houceで行われる茶道のクラスに参加しています。留学前は、まさかアメリカに行って茶道をやるとは思ってもいなかったのですが、初回のクラスにご招待いただいて参加してみると、出身国の文化であるにも関わらず何も茶道について知識がないため、もっとよく知りたいと思うようになり、参加することに決めました。取ろうと決めた時には想定していませんでしたが、茶道の時間はとても静かで、ゆっくりと過ぎるため、慌ただしい日々の合間に一息ついて自分と向き合う良い機会となっています。
所感
留学開始直後の1~2週間は全てが新しく、毎日が刺激に満ちており、毎日がめまぐるしく変化してあっという間に時間が経ってしまうように感じていました。しかしだんだんと日々のサイクルに慣れていく中で、授業で思うように発言できないもどかしさや、膨大なリーディングが上手くこなせずに夜遅くまで眠れない日が続くなど、辛さを感じることもありました。寝不足が続き、日々の気温差で風邪を引いたりもしましたが、先日どうにかこうにか1度目のMidtermラッシュを終えて、どうにか生活のリズムを掴みつつあります。
毎日に少しづつ余裕が生まれてきて、その時間を何に使っていこうか、と考えています。
今までコツコツ地道に勉強する、ということを苦手としていて、また時間が出来次第新たなことに手を伸ばしては色々なことが中途半端になる、ということが多かったため、ひとまずは新しいことを始めるよりも、日々の課題や予習の質を上げていこうと思っています。