JICの皆様、ご無沙汰しております。お元気でいらっしゃいますか。私は今、シェアマンホールの11階から見渡せるシャンペ―ン南一面の夜景を横目に最後 の報告書を書いているところです。夏季講習受講のため、すぐに移動してきたこの寮、特にこの部屋から見える夜景は涙がこぼれてきそうなほど、素晴らしいも のです。地平線の見えるのどかなこの風景をこうして見ることができるのも、あとわずかと思うと、去年の8月から今までの間の、数え切れないほどの経験や試 練、楽しかった思い出などで気持ちがこみあげてきます。慣れない外国での生活から、授業登録での苦労、授業への準備、徹夜で書きあげたレポート、英語での 初プレゼンテーション、テスト勉強、プロジェクト、経験したことのない厳しい寒さ、あんなに夢みていた留学がこんなに大変なものかと、いつ逃げて帰ろうか と何度考えたことでしょうか。でも、その反面、忘れられない貴重な経験も沢山できました。 思いがけないチェコスロバキア語の教授やクラスメートとの出会 い、様々な国からの学生との出会い、彼らといった旅行、ボランティア活動や教会で得た仲間達やその思い出、忙しい日本の生活ではできなかったであろうこれ らの貴重な経験は一生忘れられません。今は、もう帰国する時期が来てしまったのかという思いで、信じられない気持ちで一杯です。
さて、夏講座の様子の報告も含め、こちらイリノイ大学からの報告はこれで最後となります。(五月で授業が終わった時点ですぐに報告書を書こうと思っていたのですが、慌しく時が過ぎ、帰国が近くなってからの最後の報告となってしまったことをお許しください。)
春 学期終了後は、ほとんどの学生達が実家へと帰ってしまいました。親しくなった友人達との別れは辛かったのですが、夏は夏での出会い、また授業履修を通して の興味深い経験をしています。現在は、普段の授業とは一味変わった雰囲気の中で授業を受けています。(キャンパス内は学生が少なく、非常に静かです。) 一ヶ月の間に、半年分の授業を短縮してやり遂げるという、かなり大変な授業を受講中です。毎日午後、3時間をたっぷりと使い、もうスピードで授業が展開さ れます。私のクラスは、ファイナンスです。理論を学んだあとには計算問題を解かされ、解けるまで帰れないというスタイルです。また毎週木曜日にテストがあ り、もう気を抜いている暇はありません。インターナショナルスチューデントにとっては言葉の面でかなりきついとおもいます。この速さについていく自信がな く、落として帰ろうと思っていたのですが、クラスは小人数のためアットホームで講師とは親しくなることができ、問題学生の私にも協力的だったため、最後ま でがんばることにしました。講師自身が外国(アフリカ、コンゴ)出身なので、言葉の面での理解もあり、安心して授業を受けることができています。アメリカ へ来てすぐの失敗談やアフリカ文化の話しなど、面白い話しなどで授業を盛り上げてくれる講師で、授業へ行くのが非常に楽しみです。
またこ の間、授業と並行して、ドライビングスクールでレッスンを受け、自動車免許を取得することもできました。練習で、キャンパス内や周辺、隣町までドライブを しているうちに、この周辺の地理も全体的に把握できるようになり、また新たな発見も多くあり、始めから車があったら生活も随分違っていただろうなと感じま した。ハイウェイを70マイルで運転するという、初経験もすることができました。
今は、帰国を来週に控え、引越しセールをしたり、箱詰め をしたりと慌しく、帰国の準備をしています。引越しセールでは思っていた以上にすんなりと多くのものが売れました。時期的にもちょうど院生の学生達が入っ てくる時期で助かりました。日本人の持っているものだったら、長持ちするので安心なのだといって、多くの物を喜んで買っていったのには驚きましたが、非常 に嬉しかったです。
この一年を降り返ってみれば、本当に何もかもがあっという間に過ぎてしまったという感じがしてなりません。私の場合、 日本の大学は休学中、しかも帰国後もこちらの単位は移行されないため、渡米前からそして現在に至るまで、休学をする意義や将来への心配事は数えたら限があ りませんでした。しかし、別の意味で生涯忘れられない、充実した一年となりました。自分自身に自信がついたような気がします。渡米前の準備、こちらの生活 のスタート、大学の授業、ストレスのたまることもしばしばありましたが、さまざまな試練によって、精神的にかなり強くなれたような気がします。なぜここま でして、大変なことをしようと思ったのか、何度も自分の選択に疑問を持ったことがありましたが、渡米直後にJICのスタッフの方から頂いた励ましの言葉、 若いうちの苦労は買ってでもするべきだ、という趣旨の言葉をモットーに、何があってもこの一年は決心した以上、がんばるぞと思った瞬間がつい昨日のことの ように思えます。
こちらの大学の授業で学んだこと、教授やクラスメート達との出会いは、一生の宝ものです。また、こちらの生活を通して学 んだ英語は、これからも大切にし、ずっと勉強し続けていきたいと思います。ここでの経験はたった一年近くの経験でしかありませんが、言葉では言い表せない ほど、一年以上分の意義のあるものとなったと確信しています。自分を見つめ直すチャンスとなったとも思います。このような経験ができたのも、JICの奨学 生として選んでいただいたお陰です。また、それ以後の準備など、多くの皆様の協力やスタッフの皆様の影ながらの協力があったからこそできたものです。本当 に感謝の気持ちで一杯です。ありがとうございました。これらの経験を通し帰国後は、今後の、奨学生の方達のため協力し、またJICへ恩返しをしたいという 気持ちで今は一杯です。この一年間、本当にお世話になりました。そしてこれからもどうぞ宜しくお願い致します。
6月2日
武田 麻美(東京外国語大学3年)