田中千絵さんの最終奨学生レポート

JIC会員各位

2002年度奨学生の田中千絵さんの最終レポートを送付致します。

なお、田中さんからは9月25日にレポートを受け取っていたところ私の方の都合で、みなさまに転送するのがこれほど遅くなってしまったことを深くお詫び致します。

LAS(’00-’01)奨学生
小瀬垣 彩子

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JIC 最終レポート 2002年度奨学生 田中千絵

遅ればせながら無事留学修了の報告と共にこの一年間の総括をお届けしたい
と思います。 今旅行を終えて再びイリノイの友人の元を訪れ、キャンパス内
でこれをまとめていますが、学生たちをながめながら去年の夏を思い返すと本
当に感慨深い思いにとらわれます。

文字通り右も左もわからないながら、美しいキャンパスと寮での友達との生
活にとにかく毎日わくわくしていた最初の数ヶ月。体験したことのないような
寒さの中でも自転車をこぐ日々を過ごしながら日本でのことを含めていろいろ
なことをじっくりと考え、留学という貴重な経験の中で、変わっていく自分を
見つめていた冬。そして帰りたくないという思いを日に日につのらせながら、
日々が驚くほどの早さであっという間に過ぎ去ってしまった春。最後にはたく
さんの友達との別れにさんざん泣いた後がらんとしたシャンペーンでまた美し
さを取り戻した街並みを惜しみ、そして自分の旅立ちで再び涙した夏でした。

イリノイでの一年間の私の経験を一言で表すならば、五感を全開にしていた一
年間、と言えそうな気がします。こんなに素直に沢山泣くことも笑うことも、
そして周りの風景から人の機嫌までを敏感に日々感じとること、一日一日を貴
重に思えたこともこれまでにない経験だったと思います。これは日本人の傾向
に比べるとやたら感情表現がストレートで大げさなアメリカ人に多少影響され
たのもあるでしょうが、何よりも、そういう自分であることを許してくれるよ
うな、またはそういう自分でありたくなるような、多くの大切な友人に恵まれ
たからだと思います。日本にももちろんいい友人はいますが、いつもその人た
ちを大切に思っていると伝えること、また実際に大切にするのは意外に難しい
ものだと思います。けれども毎日友人と顔をつきあわせ、様々な局面で助け合
わなければならない様な環境の中では、日々、そういうことをきちんと伝えあっ
ていくことが大事になってきます。ささいなことで傷つけあうこともあれば、
小さな会話の積み重ねが家族のような絆にいつのまにか変わっていたりします。
この年齢になってきて友達と本気でけんかをしたり話し合ったりすることも日
本での生活を思えば非常に貴重な経験だったと思うのです。

また、これほど自分が人との支えあいの中で生きていることを日々実感す
るということも珍しいと思います。あまりに毎日が「人、人、人」との濃い関
わりで動いていくので、時には「今日はもう人に会いたくない!」と思うこと
などもあるほどでしたが、今ではやはり、夜中にでもすぐにノックして友達に
あいにいくことのできたあの寮での生活を本当に懐かしく恋しく思います。

留学後、帰国してから、自国での再適応に苦しむ人は意外に多いと聞きます。
私もその一人といえばそうかもしれませんし、連絡をとりつづけている留学中
できた友達はみなイリノイでの生活を恋しがっています。友人の一人が一年間
の留学生活という体験は“too intense”だといったのがとても印象に残って
います。それは“too intense to forget that and come back to real life”
などと続くのかもしれませんが、イリノイを故郷のように常に恋しく懐かしく
思いながら、自分の目標に向かって突き進み、その中で、イリノイで得た経験
を余すところなく生かしていく、ということがこれからできるのであればこれ
ほど素晴らしいことはないと思います。そして恋しいイリノイでの生活のよう
に、日々、自然の中で生きる感覚、人とともにある感覚、人を大事にする感覚
を忘れないで、少しでもそのような感覚を再現できるような場をどこにいても
作り出せるような自分でありたいと強く思います。

交換留学生という立場は、何を選んでもいいかわりに、特にどこに属してい
るわけでもなく、何をする特権も特に与えられていないという立場だと思いま
す。そういう立場だからこそ、授業にしろ、それ以外の活動にしろ、なにを選
んでその場でどれだけ自分の存在をきちんと認められるかはすべて自分の行動
にかかっているということをよく実感したものでした。その中で、いろいろな
ものに首をつっこみ、受け入れられたり拒絶されたりしながら、私は自分が何
を本当に必要としているか、強く強く受け入れてもらえるまで主張したいほど
に自分が本当にしたいものは何なのか、ということがだいぶ見えてきた気がし
ます。渡米前、あれもこれもできそうだけれども何が本当にしたいのか、でき
るのか本当には見えてこない、という時期にあった私にとってこういう思考に
至ることは、この留学のひとつの大きな目標でありましたし、それをある意味
達成できたことは私の人生にとって大きな意義をもつものだったと思います。

留学の一年間というのは誰にも説明しがたく濃い、濃いものだという話は、
JICの留学先輩の方々からもさんざん話には聞いていましたが、これほどまで
だとは本当に思ってもいませんでした。想像をはるかに超えて、濃く、強烈で、
そしてものすごい速さで過ぎ去った一年間だったとしみじみ思います。その経
験は何も知らない誰かに聞かれたら、やはり、行ってみないとわからない、と
答えてしまいかねない、私の人生、人生観を変えるような、言葉にできないも
のです。けれども、それを多く語らなくてもいつまでも深くわかりあえるのが、
この一年を共有してきた、ほかの3人の奨学生であり、JICのみなさまであり、
そのことの偉大さを、今、周りの人々に自分の経験を問われ、語ろうとするた
びに思い知ります。特に、同期の奨学生は、一年を通して、それぞれ生活の仕
方や勉強のフィールドは違っても、がんばっている様子をみて自分が励まされ
るような相手であり、まさに同志というような感じで、イリノイでできた多く
の友人の中でも、どこか特別な意味をもつ仲間だったような気がします。また、
最初にイリノイに行ったころに室賀先生に、そして帰国が近づいたころに郡司
先生にゆっくりとお会いすることができましたが、このように、JICを通じて
つながりがあるということでイリノイをよく知る方にお会いしに行き、そして
そこでイリノイについて語れるということもJICの皆様にお世話になっている
が故の貴重な機会だと思いました。また自分が単なる一回きりの留学生ではな
く同じ経験を共有する人々の縦の糸の中に編みこまれていく一人なのだという
ことを実感することができそれを光栄に思うことができました。

このレポートをもって私がこの一年間で抱えきれないぐらい多くのものを得
たことが伝われば幸いですが、ともかく、このような機会を与えてくださり、
そしておそらく私と同じようにイリノイでのご自身の留学経験を大切に思い続
け、その想いでもってJICを支えてきてくださっている皆様に心から感謝の気
持ちを送りたいと思います。そしてこれからもその一員であり続けられること
を光栄に思います。 ありがとうございました。

東京大学大学院教育学研究科総合教育科学
比較教育社会学コース修士課程 田中 千絵

田中千絵さんの2003年3月分レポート

JICの皆様
奨学生・田中千絵さんのレポートをお届けします。

今回の奨学生のみなさんのレポートも残すところ五月のみ、
となりました。
最後のレポート、楽しみにしています!

それでは。

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2003年 3月分レポート
田中 千絵
東京大学大学院教育学研究科
総合教育科学専攻
比較教育社会学コース 修士課程
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JICの皆様、こんにちは。
イリノイ大学に奨学生として留学させていただいている田中千絵です。

こちらではようやく長い冬を抜け、キャンパス中が一気に息を吹き返したかの
ような様相をみせています。二週間ほど前に突然20度近くになった日には、
春どころか、みんな夏を迎えたかのような薄着になって、MainQuadはここぞと
ばかりにスポーツや読書、昼寝など思い思いにあたたかさを満喫する人々でいっ
ぱいになりました。私もそれに加わってぼんやりとここに来たばかりのころの
夏の強い日差しのことを思い出したりしつつ、それにしてもなんと時間の経つ
のが早いことだろうと、これから来る素晴らしい季節を一日一日大切に過ごさ
なければとしみじみ思いました。

さて、春学期ですが、今回とっている授業は、マーケティング、アカウンティ
ング、コンピューターサイエンス、イタリア語、そしてミュージックの5つで
す。 このような授業のとりかたをしていると専攻はいったい何なんだという
質問をよく受け、そのたびに回答に窮するのですが、実は私のもともとの専攻
は社会学なのでした。が、ここに来た一つの目的は、他の分野のやってみたかっ
た勉強をすることで視野を広げ、これからどのような道に進んでいくかについ
て選択肢を広げてじっくり考えてみたかったということなので、日本ではなか
なか困難な、専攻以外の勉強を一から始めるということがここでできて非常に
満足しています。また、日本とは違い社会学が非常にポピュラーなこの国で、
さまざまな学問が社会学の影響をうけている様をみるのもとても興味深いこと
です。

こちらの授業は非常に体系的で、教科書もよく構成されており、TAのサポート
などもしっかりしていますが、進度が恐ろしく速く、宿題やクイズも毎週のよ
うにこなさなければならないので、今までは一つのテーマを自分のペースでじっ
くり進めるという勉強の仕方になれていた私には、今学期の理論的で、かなり
自分にとって新しい勉強の山に新鮮さを覚えつつなかなか苦労しています。と
いっても二学期目なので、先学期よりはそれほど不安を覚えることなく、何か
あれば誰かに質問すればいいのだ、というスタンスで臨むことができているの
で、気分的には余裕をもって生活できているように思います。

一番気に入っているのは、依然少しだけかじったことのあるイタリア語の授業
で、週4時間、毎日なのですが、アメリカ人ばかりの授業なのに、英語を使う
ことが禁止されているため、全く同じ立場で授業を受ける、ということが非常
に新鮮で面白いです。ラテン系の先生もかなり大らかで楽しい先生なので、毎
日楽しい語学学校に通っている気分になれます。こちらは101番の授業であっ
ても語学はこのようにとにかく無理やりしゃべらせて会話中心に上達させてい
くというスタイルをとっているようで、全く知識なしに日本人が始めるには相
当ハードなようですが、日本での語学の授業を思いうかべるとずっと楽しいで
すし、会話レベルにもっていくという意味では非常に効率的な感じがします。
日本での授業の場合、文法をつめこみすぎてかえって間違えることを恐れるよ
うになったり、発音をきちんと習得しないままだったり、ということが起こり
がちであるように思うので、、。 最もハードかつためになりそうなのはCSの
授業で、これは主にノンメジャー用のビジネス専攻向けの授業なので、最初は
驚くほど初歩的なことから触れてくれるのですが、その後はあっという間にこ
んなことまでやらせるのかというほど高度な内容になってきます。何週か毎に
プログラミングの課題がでるのですが、一回ごとにかかる時間が倍になってい
くような感じで、面白くやりがいもありますが、とても苦労しています。

こちらでは成績が就職時などに非常に重視されるため、学生は成績をとるた
め、先生は、少しでも点をとらせるのに必死です。どの宿題にも課題にもみん
な必死になってとりくんでいちいち答え合わせをして満点に近づくようにしま
すし、テストの一点にものすごいこだわりを見せるので、リグレイディングの
要求もしょっちゅうです。先生のほうもこれをだしたら何点、遅刻したら何点、
などと細かく点数のつけ方を開示したりして、そこまでやるかなあと私はとき
どきのんびり思ってしまったりもします。学生の授業へのモチベーションを保
たせるという意味では非常に効果的で、かつあまり計画的に学習をすすめるの
が得意なほうではない私のような学生にとっては、とにかくついていけば気づ
いたら習得できている、というのはありがたい仕組みですが、こちらの学生の
成績への恐ろしいほどのこだわり様をみて、成績のとりやすい授業をとりたい
がために、本当に面白そうでとりたい授業をとることは難しいなどという話を
聞いたりすると、日本の学生は入ると勉強をしないと悪名高いとはいえ、どち
らがいいのか一概にはいえないのかもしれない、と思います。

さて、春休みですが、私は大学にどうしてもしなければならない用事があり、
10日間ほどの非常に短い期間ですが、日本に一時帰国していました。毎日用
事をこなし、人に会い、とばたばたしているうちにあっというまに終わってし
まいましたが。日本に帰ってきてみて、戦争について明らかにアメリカよりも
みんなが深刻に受け止めているという事実を強く感じました。戦争が始まった
から帰ってきたのか、という質問をうけてこちらが驚いたほどでした。アメリ
カでは周りの人々は関心をよせてはいるものの、どこか遠くの出来事のように
話すことが多く、関心の低さにあきれることもしばしばで、私の印象では、学
生のデモ運動も、どこかベトナム戦争の反戦スタイルをそのままスタイルだけ
真似たかのようだと思ってしまい、いったいどれだけこの人たちは心からこの
戦争の無意味さと残酷さを理解しているのだろうと考えたりもしていました。
けれども日本に帰ってきて、桁違いの深刻さでいろいろ考えている人々に出会
い、さらに友人の「できるものならあの人間の壁に加わりたかった」というまっ
すぐな言葉にも出会い、自分もまた、アメリカの、平和なキャンパス街にぬく
ぬくと住んで、自分の生活に必死になっているうちに、もっと大きな流れに無
関心になっていたのではないかということを考えさせられました。自分の学ん
でいることの一つ一つが、将来、何か少しでも社会に貢献できるものにつなが
ればと考えているのに、今は学んでいる期間だということを言い訳にして、ど
こにいてもきちんと広くまわりのものをまなざして、考えるということを忘れ
る、というのではいけないということを感じました。

ともかく、幸か、不幸かこのような時期にアメリカに滞在している、という
ことはアメリカの様々な面を見られる時でもあると思うので、じっくりいろい
ろな人を見て、話して、自分の考えを深めていけたらいいなと思っています。
私は春学期の後、夏学期も履修して、短期間ながら集中して、じっくりと本
家の社会学を学んで帰ろうかなと考えているところです。とはいってもこの時
間の流れの速さでは、帰国まではあっというまでしょう。一日一日大切に、友
達とともに過ごせる貴重な時間をめいっぱい楽しんで意味のあるものにして帰
りたいと思います。 シャンペーンでも桜がみられるとか。外国での花見はど
のような気分のするものか、たのしみにしているところです。

それではまた次回のレポートでお会いしましょう。
ありがとうございました。

田中千絵さんの2003年1月分レポート

JIC会員の皆様

一月レポートのラストを飾るのは、田中千絵さんです。
Shermanhallを見上げるときに安堵感…という表現にシャンペーンでの
生活の楽しさを窺うことができます。
確かに私もいつもDanielsに辿り着いてはホッとしていました…。

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2003年 1月分レポート
田中 千絵
東京大学大学院教育学研究科
総合教育科学専攻
比較教育社会学コース 修士課程
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JICの皆様 遅ればせながらあけましておめでとうございます。
本年もよろしくおねがいいたします。

日本から未の絵の入った年賀状が届いて、日本の時間の流れの感覚をふいに思
い出したような気がしました。前回レポートを書いてから3ヶ月以上が経ちま
したが、その間には1年間かけても起こりえないようなことを、楽しいことも
つらいことも非常に濃縮された形で経験してきたような気がします。

この学期中にもっとも思い出に残っていてここに書き記しておきたいのは、
11月末の私自身の誕生日のことです。誕生日を迎える夜中の12時、何人かの友
達が部屋を予告なしに訪れてくれ、surprise happy birthdayをしてくれたの
です。ドアを開けた瞬間に目の前に巨大な白いくまのぬいぐるみがあらわれ、
その背後から友達の笑顔、笑顔がみえたときには、あまりの驚きと感激にパニッ
クになり、どうしていいかわかりませんでした。もちろん本当に心からいいた
かったことは、“I love you, guys all!!” そして、その週末には20人近い
友人を招いて寮の地下のゲームルームでパーティーを開き、日本食をふるまい
ました。(親子丼、肉じゃが、カレー!)みんながそれだけ集まってくれただ
けでも感激ものでしたが、アメリカ人やinternationalの友達がみんな日本食
をたのしんでくれたことが非常に心に残りました。間違いなく生涯忘れられな
い誕生日で、パーティーであふれるほどとった写真を次々と見ていくたびに同
じ感動がじんとこみあげてくる気がします。

さて、楽しい11月も終わり、12月、ファイナルの時期にはさんざん楽しい思
いをしたつけか、テストにレポートに非常に追い詰められ、一人で図書館で夜
を明かしたり(朝6時に図書館でうたたねからめざめるという経験はなんとも
いえないものです)、かと思うと、寮の友達とみんなで一緒に階下で勉強した
り(あるいは邪魔しあったり夜食を食べたり!)と、とにもかくにも友達に囲
まれつつ、忙しさと楽しさとつらさがそれぞれ濃くまじりあった、この一学期
間を象徴するような時間をすごしたように思います。

ファイナルの周辺には、知らない間に積み重なった疲労からか、冬休みには
日本に帰ろうかとだいぶ迷ったこともありましたが、結果はともかく(!)ファ
イナルやらmusicのクラスのconcert@klannert!やらを終えて、そのまま勢い
よく気の合う友達とクリスマスをN.Y、年越しをChicagoですごし、楽しく、
リラックスした時間をもつことができ、今はもう10日ほどあとに控えた春セメ
スターに向けてかなり充電ができたような気がします。しかし、White
Christmas @ N.Y も、ジャズと花火にいろどられたChicago でのHappy new
year も素敵でしたが、やはり旅行を終えてChampaignに戻り、Shermanhallを
みあげる度に感じる安堵感はなんともいえず、幸福なものです。今は友達とひ
たすらごはんを作って食べたり、IMPEでひたすら泳いだり、ここぞとばかり映
画をみたりとのんびりとすごしています。

すっかり慣れ親しんだChampaignの街、Shermanhall、一緒に暮らしているか
のように毎日会っていろいろな話をする友人達、そんなものたちと過ごす時間
がもう半分近くも過ぎてしまったかと思うとあせりと寂しさを今から感じてし
まいそうになりますが、次のセメスターも後悔のないよう、精一杯、目いっぱ
いの経験をしたいと思います。ではではまた次回のレポートでお会いしたいと
思います。 ありがとうございました。
田中 千絵

田中千絵さんの2002年9月分レポート

jicmlメンバ各位,

古市 (’92-94 MS in Computer Science)です.

秋学期からJIC奨学生としてUIUCへ留学中の田中千絵さんからのレポー
トが届きましたので,皆さんにフォワードします.田中さんはMusicの
授業を履修し,最終テスト(?)はKlannertでの演奏会参加との事(!).
羨ましいなぁ.当日現地にいらっしゃる方は,是非とも演奏会を聴きに
行きましょう.

田中さんからのレポートで,今年度の奨学生の方4名の9月分レポートを
全てをjicmlへ発信しました.奨学生の皆さん全員,それぞれの個性を
生かした留学生活を送っていらっしゃるようで,読んでいてとても楽し
く,またためになります.皆さんからのレポートを読んで,現地で自分
が留学生活を送っているかのような疑似体験をされている方も沢山いらっ
しゃると思います.次のレポートをまた楽しみにしています!

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2002年 9月分レポート
田中 千絵
東京大学大学院教育学研究科
総合教育科学専攻
比較教育社会学コース 修士課程
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JICの皆様こんにちは。

このレポートを書いている現在こちらは9月最後の日ですが、皆様にこの
レポートをお届けできるときにはもう10月に入っているかもしれません。
第一弾から遅くなってしまって非常にあせっておりますが、ここの空気
を少しでも皆様に楽しくお伝えできればと思います。

今日は、インターナショナルのソーシャルプログラムの一環で、初めて
ここイリノイからちょっと足を延ばして別の州、インディアナにピクニッ
クにいってきました。素晴らしい自然の中でちょっとスリリングなハイ
キングやら草サッカーやらを楽しんできました。暑い盛りの8月にこのシャ
ンペーンに初めて降立ってからもうひと月以上が過ぎて、ピクニックを
楽しめるのももう今のうちだけ、という感じになってきましたが、この
一ヶ月はあまりにも早く夢のように過ぎていってしまった、というのが
一番の印象です。

というのも、ここはあまりにも私に合っているらしく毎日が楽しくてしょ
うがないのです。東京で生まれ育ったにも拘らず、その独特の冷たさが
苦手だった私には、ここでの生活をとても居心地よく感じます。街の人々
は(現地の人だけではなくここで生活している誰もが)みんな親切での
んびりしていて、求めさえすればいつでも助けてくれます。私は、外国
での生活はもちろんのこと一人暮らしも全く初めて(私は今Shermanhall
のsingleroomに住んでいます。)で、出発前は、これからは何でもしっ
かり自分でやらなきゃいけないんだな、とそれなりに決意を固めてきた
わけですが、来てみてすぐに、どこへいっても求めれば助けてくれる人
はいて、それに誰の助けも借りずにやっていくことなど不可能で、また
そんな必要もないんだ、と痛感しました。

ここにきて最初のトラブルは、何をどうしても私のPCだけ寮の部屋で
インターネットにつなぐことができなかった、というもので、解決しな
いままの状態が2週間以上続いたのですが、その間にともかくパソコンに
ちょっとでも詳しそうな人には片っ端から声をかけていくということを
したら、誰もが親身になって助けようとしてくれて、しかもその過程で
いろいろな人と友達になることができました。結局つながらなかったの
は、ずっとパソコンのせいだと思っていたら、実は大学のネットワーク
側の問題でそれと知らず、最後の手段として大学に問い合わせていたら
ある日突然「問題は解決したからつないでみろ」と電話がかかってきて
やってみたらつながった、という不思議な(コンピューターに疎い私に
とっては全く理解のできない)結末をむかえたのですが、そんな些細な
ことでも、もしも助けてくれる人が誰もいなかったら、ただでさえアメ
リカにきたばっかりなのに心細くてしょうがなかっただろうと思います。
今振り返ると人とのつながりの重要性をまず感じさせてくれるエピソー
ドでした。

本当に毎日毎日、人との出会いの大切さと友達をつくる楽しさとをか
みしめています。ソーシャルや授業、はたまたトラブルなどでどんどん
人と知り合うのはもちろん、最初の同じ奨学生のサークルから始まって、
奨学生同士とても仲がいいこともあってか、できた友達を紹介しあうう
ちに芋づる式にどんどん友達が増えていくのです。いろんなバックグラ
ウンドをもった多くの人たちと友達になるのはここでしかできない経験
で、反対に「こんなところで!」というぐらい日本で近いところで暮ら
していたり信じられない共通点をもった人と出会ったりもして、世界の
狭さと広さを同時に感じています。そして勿論みんながキャンパス内も
しくは近くに住んでいるので、すぐに会えて仲良くなるスピードがとて
も早い、というのも新鮮な体験です。全くもってホームシックを感じな
いのは、ひとえにこの多くの友達のパワーだと思います。少しぐらいし
んどいことがあっても友達と話しているうちに忘れてしまいます。特に
私は一人部屋にいるわけですが、この狭い部屋にしょっちゅう友達を呼
んで(最大で6人ぐらい?!)もてなすことに楽しみを覚えています。

さてここで授業のことを少し(!)書いておきましょう。日本では教
育社会学を専門に勉強していたのですが、ここに来た目的のひとつは、
社会学とは少し異なった観点からの勉強、もしくは違う分野の勉強をし
てみたい、というもので、授業を取る際に全く新しいことを始めるかど
うか悩んだのですが、結局今学期は日本で勉強してきたテーマをアメリ
カの場合をとって勉強できるコース(今まではほぼ日本の現象だけを扱
う研究をしてきたので。)、そして少し新しいコースをとってみること
にしました。Educational policy study、social aspects of mass
communication、micro economics、ESL、それからmusicの5つです。

最初の2つの授業はreadingの量がともかく多くかなりハードですが、
日本でアメリカ式授業を実践していた何人かの教授を思い浮かべて、きっ
とあの先生たちも、この非常に体系的かつ計算しつくされたreading
assignmentに衝撃を受けたのだろうな,とその起源に直にふれてしみじ
み思いました。「これだけよめばこのテーマについてはいっぱしの口が
きけるようになる」というのが特に日本の私の担当教授の口癖でしたが、
その言葉をはげみに、またアメリカで学んできた多くの人を思いながら
なんとか読みきろうと思っています。 musicは日本で長くやっていた
吹奏楽団(私はクラリネットを吹いています)のクラスです。何か芸術
系かスポーツ系のクラスをとろうと決めていて迷ったのですが、このコー
スをとると、世界一の音響を誇るともいわれるKlannert で演奏会がで
きるよ、という一声にころっと落ち、荷造りの時ずいぶん迷ったすえに
日本においてきてしまった楽器を至急送ってもらって、なんとかオーディ
ションに間に合わせて、無事入ることができ、週3回クラブ活動のごと
く非常に楽しい時間をすごしています。演奏会が今からとっても楽しみ
です。音楽もスポーツも(スポーツはとくに観戦が)大好きな私にとっ
てはここではアクティビティにこと欠きません。ミュージカルやリサイ
タルのチケットは日本と比べると信じられないぐらい安いですし、スポー
ツ観戦といえば今年はシカゴベアーズがここシャンペーンでホームの試
合を行うという非常にラッキーな年で、私は幸運にもそのチケットを手
にすることができました。先週は大学のホッケーの試合やらアメフト
(天敵ミシガンに残念ながら敗北しました)の試合やらをみにいったり
もして、愛校心をちょっと深めてみたりしました。

と、授業の話が再びアクティビティにそれていってしましいましたが
(笑)最後に最近起きた一連の事件、この一年のうちで間違いなく忘れ
られないエピソードのひとつになるに違いない出来事について書いてお
きたいと思います。それはずばり自転車にまつわる話です。

そもそもの始まりは私と同じ奨学生の岡沢さんが自転車を1ドルで獲得
したことでした。そう、1ドルです!!9月の初め、私たちは、警察主催
のbicycle auction(撤去した自転車などをオークションにかけて処分す
るという趣旨らしいです)にでかけていき、それはまさにauctionそのも
ので、日本のせりのイメージそのままに早口で独特の言葉で値段がコー
ルされていき、聞き取れるはずもないのですが、せっかくきたのだから
と二人とも適当に手をあげてゲットし(おかしなことに誰も競争してこ
ないのです。もしかしてこっちの人もよくわかっていないのでは、、。)
10ドルぐらいかと思っていたらなんと1ドル!勿論かなりぼろく、岡沢
さんの自転車は20ドルほどかけて修理が必要だったのですが、私の方は
なにもなしで大丈夫でした。このauctionは相当町外れで、しかも土曜の
早朝に行われていることもあってか、あまり知られていないようで、こ
の話をしたら電化製品などが異常に安いこの街に暮らす人々も誰もが驚
き、うらやましがっていました。こうして激安で機動力を増すことので
きた私たちは、かなり鼻高々で、毎日自転車を気持ちよく乗り回してい
て、夜少し暗くなってからもよく自転車ででかけるようになり快適な日々
を送るようになったのでした。

しかし。ある日二人にそれぞれ事件がおきたのです。最初は私です。あ
る夜、busey evansのlatenight-coffeehourで素晴らしいsweetsを味わっ
た私は気分よく、しかし遅い時間だったので、がらがらのキャンパスを
自分の寮に向かって自転車を猛スピードで走らせていました。Quadまで
たどりついたところで、Foellinger buildingのすぐ後ろを駆け抜けよう
とまわりこんだのですが、ここはある程度の高さの丘のような設計になっ
ていて、私はまず右サイドからスロープをかけのぼりました。このサイ
ドには二箇所ほど上るところがあるのですがその二つともがスロープで
した。なので逆サイドに見えている下りる二箇所も当然スロープだと判
断し、暗かったのと丘になっているのとで下がみえなかったのですが、
ともかくそのままのスピードでつっきっていきました。ところが手前に
きてみて心臓がとまりそうになりました。そこはスロープではなく6、
7段の階段だったのです!しかし自転車は猛スピードで止まれるはずも
なく、しかもこちらの自転車は軽いので何かにぶつかれば簡単にふっと
ぶような代物です。ああ間違いなく大変なことになる、と一瞬のうちに
覚悟しました。ところが。次の瞬間自転車は階段に2段ほどひっかかった
あとなんと無事に地面に着地したのです!自転車が横にそれたときに足
をちょっと打ったのと、あとはチェーンがはずれただけですんだのです。
これはかなり奇跡的なことの気がします。後で何人か友達が事故現場(!)
を検証してくれたのですが、よく無事だったねえと驚かれました。ちな
みにチェーンも簡単に治りました。

しかし奇跡はひとつだけではありません。岡沢さんの事件はもっと大
事件でした。(本当は彼女が書いたほうがより伝わるはずですが、事件
は彼女がレポートを書いたすぐ後に起こり、あまりにも重要なエピソー
ドなので書かずにはいられません。詳しくは彼女のホームページでどう
ぞ。)彼女はなんと車にぶつかったのです!car accidentです!

例のごとく彼女も夕方、友達の家のパーティーに参加するため自転車を
走らせていました。交差点を渡ろうとしたところ車がきたので、一時停
止したのですが、車のほうも一時停止したので、自分のために止まって
くれたのだと思い、彼女は渡ろうとしました。ところが車の運転手は彼
女と反対のサイドを確認しただけで彼女の動向については見ていなかっ
たようなのです。車は発進し、彼女の自転車とぶつかったのです! こ
こまで読んで非常に驚いた方心配された方もいらっしゃいましょうが、
そうです、奇跡は再び起こり彼女は無事だったのです。お互いスピード
をだしていなかったのが幸運だったのでしょう。彼女はかなり痛そうな
あざを作っていましたが、今日一緒にピクニックに参加できるほど元気
なようで、私も非常に安心しました。警察だの病院だのいろいろ手続き
は大変だったようですが、面白かったのは、自転車が壊れたので、直し
てもらえるか新しいものを買ってもらえることになった、というところ
です。彼女はぼろ自転車の獲得に私よりも20ドルばかり高くついたわけ
ですが、ついには完璧な自転車を手にいれることになったのですから!

奇跡に助けられた私たちですが、これにこりて、せめて自転車にランプ
はちゃんとつけることにしようと少し反省しあいました。この街で自転
車をもつのは何をするにも非常に便利なものですしauctionへの参加もぜ
ひお勧めしますが(くれぐれも誤解しないでいただきたいのは、私たち
が事故にあったのは私たちの自転車が1ドルだから、ではありません!きっ
と!)、これから手にいれる皆さんにはくれぐれも気をつけていただき
たいものです。それにしてもきて1ヶ月で奨学生のうち3人も事故にあう
とはなんということでしょう!、、といいつつ全て完全に笑い話になっ
てしまっているのですが、残る前田君には何も起こらないよう祈りたい
ものです!

さてさて、お伝えしたいことが尽きず、なんだかとっても長くなって
しまいましたが、ここでの生活の様子、私がいかにここでの生活を楽し
んでいるかをお伝えできていれば非常に幸いです。このような経験をす
る機会を私に与えてくださった皆様には本当にいいようのない感謝の気
持ちでいっぱいです。初めてJICの方々にお会いした時に感じた、このプ
ログラムでならば必ず素晴らしい経験ができるはず、という予感は間違っ
ていなかったと改めて実感しています。これからまだまだ、楽しいだけ
でなく辛いこともたくさん経験するのだろうと思いますが、全て自分に
とって意味のある経験として受け止めて充実した日々を送っていきたい
と思っています。またお伝えできる日を楽しみに。この拙い文章を読ん
でいただいた皆様、ありがとうございました。