中川貴史さんの帰国後奨学生レポート

JICの皆様、いかがお過ごしでしょうか。2009年奨学生の中川です。6月に帰国して早4か月、就職活動・期末試験・引っ越し・ベンチャー事業立ち上げ等々と慌しい日々を送ってきました。ちょうど素敵な夢から醒め突如現実に引き戻されたかのような感覚で、ゆっくりと勉強や友達付き合いに集中できたイリノイでの生活が益々懐かしく感じられます。来年3月に卒業を控え、イリノイでの経験を経てどことなく成長した自分自身と共に、「日本での自分の人生に新たなスタートを切るんだ」、そういう期待感やプレッシャーを日々感じつつ毎日充実した生活を送っています。
頻繁にイリノイの友人とスカイプ上で話をするのですが、今年の奨学生の皆さんがイリノイで楽しく留学生活を送っている様子を聞くにつけ、大変嬉しく思うと同時に、ワクワクしてイリノイで学生生活を始めた頃の自分自身を思い出し懐かしい気持ちになります。振り返ってみると、イリノイでの一年間は、日々驚き・学び・成長に溢れ、数えきれない程沢山の楽しい思い出に彩られ、沢山の大切な仲間達との出会いがあった一年間でした。こんなにも素敵な経験をする機会を頂けたことへの感謝の気持ちと共に、ここにイリノイでの最後の1月程と留学生活の総括をご報告させて頂きます。

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*ファイナル
4月の後半に入るといよいよファイナルの時期が近づき、大量のレポートと差し迫ってくる期末試験に慌しい日々を送ることになりました。総計30頁以上にもなるレポート群を仕上げた後は、安堵する暇もなく期末試験対策に追われました。law and communicationのクラスでは、自らの不勉強が原因で溜りに溜まった未読判例が、試験前日の時点で1000頁を超えるという大ピンチを招き、30時間不眠不休で勉強するという強硬策で何とか試験を乗り越えることになりました。
思い起こしてみると、英語の文章やウェブサイトを見ると身構えてしまっていた一年前からは信じられない程、今では自然に英語を書き・話していることに気付きます。こう思うと大量のレポートをこなし、大量の教科書・判例を読み通したことも、最終的には自分の力になっているのだと実感します。もちろん言語として英語を捉えるとき、英語はそういう意味においてはコミュニケーションの媒体でしかないのですが、さらに一歩進んで、英語で意思疎通を試みることからは、より深い学びがあったように思います。というのは、自分の拙い英語で相手を説得し心を動かすには、第一に究極的な意味で相手が何を言いたいのか理解し相手の気持ちを汲み取ることが必要で、第二に自分の言いたいことを論理的に構成し相手が納得するような形でうまく伝える必要があります。こうして日本語では何となく誤魔化していたものに真っ直ぐ向き合うことで、本当の意味でのコミュニケーション能力や論理的思考力を培うことができたように思えます。
大ピンチの期末試験を何とか終えると、すぐに大事な仲間達との別れが待っていました。その後のニューヨーク行きの予定を調整して4日程シャンペーンで時間を取り、時間を惜しんで友人達とシャンペーン最後のひと時を過ごしました。いつものように友人と会うと、今から帰国するのだという事実が信じられず、そしてまた、また来学期からも同じようなシャンペーンの生活が待っているような気がしてなりませんでした。
多くの掛け替えのない友人に助けられ、楽しみ、鼓舞し合い、切磋琢磨できた私の留学生活は本当に幸せなものでした。思い起こしてみると、JICの奨学制度の面接の際、「人との出会いは人の人生を変える、お互いに影響し合い切磋琢磨する関係を築きたい」と語った記憶があります。今は、シャンペーンで沢山のものをくれた友人達に感謝の気持ちでいっぱいです。願わくは、私自身も彼らの中に何か重要なものを残すことができていたら本当に素敵なことだと思います。
夏にはイリノイから多くの友人が日本へと遊びに来てくれ、今月には台湾・香港で多くの友人に温かく迎えられ、イリノイでの築いた友好関係は私にとって掛け替えのない財産となっています。

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(写真2)

*NY&帰国後
シャンペーンを離れてからは、以前の私の大学で交換留学生であった友人とニューヨークで待ち合わせ、楽しいひと時を過ごしました。ニューヨークは、シカゴとやや趣を異にし、またドラマでみるような高層ビル街というイメージとも違って、汚い雑居ビルと荘厳な高層ビルが入り乱れる、まさにアメリカという国を貫いてきた主義・価値観を体現する場所のように感じられました。
1週間ほどニューヨークで過ごした後、日本に帰国し、アメリカでは先送りしてきた進路の選択という大きな決断を迫られることになりました。弁護士資格を取得するか、就職を選ぶか、さらには起業で生きていくか…、どれを選んでも上手くいく保証などなく、何が自分の将来にとって最善の選択かを判断することは不可能で、文字通り苦渋の決断となりました。起業家として「社会を大きく変える存在になる」という自分の夢に真っ直ぐに向き合おう、そう思い切って決断を下した結果、特別に配慮を頂いて大手外資系コンサルティング会社から合格を頂き、現在は自分の本来の目的だったベンチャー事業立ち上げに集中できています。日米の優秀なチームを統率し、スピーディに決断を下しながらビジネス展開させていくのは、決して他では味わえないエキサイティングなものです。

*一年間を振り返って
「逆カルチャーショックはあったか?」とか「イリノイで学んだものは何か?」などとよく聞かれることがあります。もちろん、「多様なバックグラウンドを持った友人との付き合いから自分の視野や価値観を広げられた」とか、「リベラルな考えに触れることで日本的な既成概念を客観的に眺められるようになった」とか、それなりに語ることはできますが、そう語ってしまうとイリノイでの経験が急に陳腐なものに成り下がってしまう気がします。イリノイ留学を決断した最大の理由は、「自分自身を人間的にひと回り成長させたい」ということでした。帰国して、突然世界が違う色で見えるということはありませんが、イリノイでの日々の経験を通して、少しばかりではあっても確実に人間的に成長できたという感触があります。詩的な表現を逃れませんが、イリノイでの経験は私の一部となって、言語化し得ない学び・成長になったように思えます。
この一年間は、毎日楽しくて仕方がなく、活気に満ち、充実した日々で、驚き・学びの連続でした。この一年間は私の今後の人生を形創る上で、間違いなく掛け替えのない経験になりました。この本当に貴重な機会を頂けたことに誠に感謝しております。また、私達奨学生の留学を色んな方面から支え・助けて頂いたJICの皆様には本当に感謝の意を表し切れません。本当にありがとうございました。
微力ではありますが、私にできますことがありましたら、JICのさらなる発展のため少しでもお手伝いできたらと思っております。また今後ともJICの皆様にご支援頂くこともあるかと存じますので、今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

写真1.日本での友人との再会
写真2.台湾にて友人との再会

2009年奨学生中川貴史

中川貴史さんの2010年4月分奨学生レポート

 JICの皆様、いかがお過ごしでしょうか。2009年 度奨学生の中川貴史です。こちらシャンペーンでは極寒の冬も遂に明け、暖かい心地よい陽気の日が続いています。クワッドでは多くの生徒が芝生の上で寝転が り日光浴をする姿が見受けられます。早いもので帰国まで1月余り、時の経過の早さに驚かされます。期待と不安に満ち溢れてこちらに到着した時がつい昨日の ように感じられ、飛行機のチケットを目の前にしながら1月後には日本にいるということが未だに実感を持てずにいます。これまでの日々を振り返ると、沢山の 掛替えのない思い出が次々と浮かんできます。その中でも、今学期の初めから今に至るまでの3か月程の出来事の幾つかをご報告させて頂きたいと思います。

*授業について
今学期は法律系の授業及び、先学期学習して興味深かった日本に関する授業を軸に授業計画を組み立てることとしました。先学期に比較すると、300番台400番台の授業の数が増えやや負担が多いものの、その分学ぶことも多い充実した授業計画となりました。

JOUR411 Law and Communication
EALC227 Modern Japanese History
EALC306 Japanese Literature Translation Ⅱ
ATMS100 Introduction to Meteorology

今学期は以上のような12単位を履修しています。教授に頼み込み履修制限を外してなんとか履修することができたLaw and Communication のクラスでは、アメリカ憲法修正1条 の言論の自由に関する判例研究を行っています。毎回の授業で二・三の判例を扱い、事前抑制の禁止やプライバシー権との関わりなど一定のテーマについて判例 がどのような時代背景の中でどのような変遷をしてきたか比較研究しています。とりわけ興味深いのは、アメリカ憲法に拠るところが多い日本国憲法においては 判例・学説上もアメリカ判例と多くの共通点があることで、また逆に共通点が多いだけに差異がある点が際立つことです。例えば違憲審査基準という点では多く の共通点が見られ、日本でも学説上は違憲審査基準として確立されつつある「明白かつ現在の基準」についてアメリカ憲法判例の中でいかなる背景の下構築され てきたのか考察した授業は興味深いものがありました。また、メディアへの反論権に関する判例では、日米判例ともに言論の自由に対する間接的な抑止になると いう点を主な理由に挙げ反論権を否定しているものの、多様な学説・要素を考慮に入れながら違憲判決を下しているアメリカの判決文は印象的です。
Modern Japanese History の クラスでは、政治的な側面な側面のみならず、日本の歴史学習ではやや見逃されがちな衣食といった側面も当時の資料を読み解きながら学習しています。日本で は伝統的な学部の区分の中で法学部や文学部などに分かれ個別に研究されている歴史学ですが、歴史学部として独立した学問領域として確立されているこちらで は、学部レベルでも様々なアプローチから歴史研究がなされており興味深いものがあります。また、高校の授業や大学受験などでは鋭い視点から扱われることが 少ない第二次大戦後の歴史についても、アメリカとの関係性の中から日本の位置を捉え直すことで面白い視点を獲得することができました。Japanese Literature のクラスでは、江戸期から現代に至るまでの日本文学を検討・討論しています。生徒それぞれ異なった文化的背景を持っており、日本という文化を共有しない生徒達から出される意見は新鮮で、毎回の授業が楽しみとなっています。

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(写真1)エド&アリスさんのお宅にて

*日本館オープンハウスなど
先日は、郡司先生の方から日本館オープンハウス及び前日のレセプションパーティの方にお招き頂きました。レセプションパーティでは日本館の多くの支援者の方とお話しする機会に恵まれ、JICの 方々をはじめとして多くの人に支えられる日本館の貴重さについて再認識される機会となりました。また同じ週には、こちらで開かれている琴の授業のコンサー トがあり、こちらの学生が琴の演奏を楽しむ姿に心温まる思いがしました。加えて先日には、小野坂先生主催で日本語の授業を履修している学生をはじめとした 学期末のレセプションパーティがあり、今年から日本へと旅立つ大学院生や教授と会話を楽しみ、ぜひ日本で再会しようなどと盛り上がることができました。こ うしてこちらで築いた関係を今後も大切にしていければと思っています。
その後には、故小山先生がイリノイ大学にいらっしゃった頃から懇意にされていた方からディナーにお招き頂きました。美しい池の湖畔に佇むお家で10品 以上もあるフルコースのディナーを頂きながら、小山先生や日本での思い出を語って頂き、素敵なひと時を過ごすことができました。大変温かいおもてなしに言 葉で表せない程感激するとともに、小山先生のお人柄や寛大さを少しばかりか思いを馳せ、改めてこちらに留学生としていられることの貴重さを考えさせられま した。

*セントパトリックデイ&スプリングブレイク
3月 の上旬には毎年アンオフィシャルセントパトリックスデーという名目で学生達が飲みに行くという大規模イベントがあります。良い意味でも悪い意味でも、こち らの学生の勉強と遊びのメリハリにはいつも驚かされますが、アンオフィシャルデーはとりわけ大変面白い経験となりました。前日から24時 間寝ずに飲むぞと気合の入っている友達にお酒の買い出しに付き合わされ、当日のクラスではやや少ない出席者の中にやけに「楽しげ」な学生が混ざっていたり と印象的な光景を目撃することができました。日本では大学生全員が同じ格好をする機会などあり得ないので、学生達はみな緑のTシャツに身を包み、緑のビールを飲むという光景には圧倒されました。普段からイリノイのオレンジTシャ ツは人気がありますが、こういう形で愛校心ないし共同体意識が涵養されているのだと思うと興味深いものがあります。服装という点では日本の大学生は比較的 おしゃれな学生が多いという要因もあるため簡単に結論付けられないものの、日本の大学生よりもずっと誇らしげに自校のことを語る学生達の様子には、こちら の学生の愛校心の強さを感じさせられます。
春休みには、沢山のレポートを何とか仕上げるのとちょっとした休憩を兼ねてシカゴの友人宅にお世話になることとなりました。何度も訪れたことのあるシカゴですが、今回は初めて訪れたMuseum of Contemporary Artの作品の数々には心動かされました。紙や布、瓦礫などを使い創意を尽くして創られた作品はどれも日常性や時空といった深いテーマを表象しており、夢中になるあまり気が付くと丸一日を美術館の中で過ごしてしまいました。

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(写真2)友人宅にて

レポートと期末試験が迫り勉強に追われる日々ですが、残り少ないこちらでの時間を噛み締めながら過ごしていきたいと思っています。
中川貴史

中川貴史さんの2010年1月分の奨学生レポート

JICの皆様、ご無沙汰しております。ここシャンペーンでは肌寒い日々が続き、摂氏-20℃以下となる日も決して珍しくありません。趣味がスキーというだけに寒さには強いと自負していた私ですが、シャンペーンの未経験の寒さには圧倒されるばかりです。寒さのあまり毎朝ベッドから体を起こすのが億劫で、午前中の授業が大変なハードルに感じられて仕方ありません。とはいえ、忙しく授業へと足を運ぶ生徒達を横目にふと立ち止まってみて、美しい雪化粧をしたキャンパスを眺める瞬間には言葉で表現し切れない感動があります。大雪の後に時折現れる真っ青の空をバックに、真っ白のクワッドが足下に広がり、目の前には荘厳なユニオンがそびえています。凍えるような真冬の澄み切った空気を吸い込む度に、何とも言い表せない爽快感が感じられます。

こちらに到着してから早いものですでに6ヶ月、時間経過の早さに驚きと共に焦りを感じつつ、今回の報告を書きつづる次第です。期待と不安に満ち溢れつつ意気揚々と新たな生活へと飛び込んでいった最初の3ヶ月とは異なり、生活や授業、人間関係にも順応して過ごした次の3ヶ月はやや印象の違ったものとなりました。その幾らかをご報告させて頂けたらと思います。

・ハロウィーン
日本ではこれと言った印象の無いハロウィーンですが、こちらでは思いがけなく非常に印象的なハロウィーンを過ごすこととなりました。数週間前からハロウィーンの衣装で話題が持ち切りになり、いかに個性的で面白い衣装を発掘できるか創意を凝らす姿勢には度々呆れさせられる程でした。ハロウィーンの当日には皆が思い思いのコスチューム姿で道を歩き回り、夜のグリーンストリートには大勢のゾンビが出現するという摩訶不思議な情景が見受けられました。
ハロウィーンの前日には、友人の誕生日も兼ねつつ親友宅でパーティを催したのですが、滑って誕生日ケーキを落としてしまうというハプニングもあり忘れられない思い出となりました。結果として60人以上の人が集まる活気溢れるパーティとなり、参加者それぞれが互いに新たな人と出会い、人と人の輪が広がっていくのを見るのが何よりも嬉しく感じられました。こちらに来てから人との出会いの大切さを痛感させられる中で、このような貴重な機会を提供できたことを大変喜ばしく思っています。

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・サンクスギビング
サンクスギビング休暇に参加したボストンキャリアフォーラムでは、停滞する景気の中で参加企業は半分以下に減少し、落胆の様相で帰路につく学生達が多く見受けられました。とはいえ、陸の僻地と言ってもよいシャンペーンで半年間を過ごした私とっては、企業との面接や企業・市場分析を通して絶え間なく変化する世界の改めて身近に感じられたことは大きな意義があったように思えます。残りの半年間のアメリカでの生活をいかに過ごし、今後社会に出るに際して有用な能力をどれだけ磨けるか、この留学に対する思いを新たにすることができました。また久しぶりに大勢の日本人を一度に目にする機会となった今回のフォーラムでは、日本にワープしたかのような感覚に陥り、懐かしさと共に日本独特の文化、とりわけ企業文化に気づかされる良い機会となったように思います。
フォーラム後には空いた時間を利用しボストン観光を楽しみ、アメリカ独立以前から長い歴史を持つボストンには歴史ある建築が立ち並び、風情溢れる街並みは私のお気に入りでした。

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・ファイナル
サンクスギビング休暇から帰宅してからは、レポートに期末試験にと勉強に追われる日々となりました。こちらの授業は日頃からの出席に加え複数回レポート・テストがある為か、期末試験に合否が大きく依存する日本の大学の試験に比べ、期末試験前の負担は少ないように感じられました。また充実した施設に助けられ集中して勉強に取り込むことができたことも、その要因のように思えます。こちらに来て日本の24時間営業のコンビニの存在がいかに便利か痛感させられたものですが、24時間利用可能な図書館の存在にはそれ以上に助けられることになりました。新たに建設されたスポーツ施設ARCではバトミントンや水泳を楽しみ、勉強で蓄積したストレスを解消することができました。
勉強に追われ慌ただしく過ぎ去っていった期末試験の時期ですが、この時期は同時に「別れの時」ともなりました。半年間のプログラムで参加していた留学生の仲間達、卒業して別の町へと旅立つ仲間達との別れは、非常に考え深いものとなりました。異なる国の異なる環境で生まれ育ちここシャンペーンで偶然にも出会い、ともに過ごした時間はお互いにとって掛け替えのない貴重な経験となったように思います。Facebookといった文明利器があるとはいえ、数千キロの距離と国境に隔てられ再び会うことができないかもしれないと思いつつ別れの言葉を言うのは辛いものでした。一期一会という言葉がありますが、今回の友人との別れによって、出会いの大切さを再認識しつつ、出会いと別れを繰り返しながら生活をしていく私たちの生き方そのものについて再考させられることとなりました。

・冬休み
待ちに待った冬休みには、夏に訪れたバンクーバーに再び戻り休暇を満喫することができました。バンクーバーはアジア人の町と呼ばれる程アジア系移民が多く、日本人の多さに改めて驚かされることとなりました。ここシャンペーンでは日本人はごく少数で日本語を聞けばまず間違いなく友達である程なので、バスや電車で日本語を聞く度に違和感を覚えざるを得ません。バンクーバーはシカゴと比較すると小規模で、日本でいう中規模の地方都市といった感じでしょうか、自然に囲まれアットホームな住みやすい町という印象があります。オリンピックを控え活気に満ちた町では、新たなマンションの建設や交通機関の整備などオリンピックムード一色といった様子でした。

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当初はカリフォルニアに旅行に行く予定だったのですが、あまりの居心地の良さに結局日本人の奥さんを持つメキシコ人の友人宅に1カ月ほども居候させて貰うこととなってしまいました。現地の大学や語学学校に通う日本人をはじめ、日本語を習う大学生や留学生まで友達の輪が広がっていき、多くの友達に囲まれ毎日充実した日々を送ることができました。

・最後に
新たな学期が始まり早ひと月が経過し、こちらでの生活も残すところ3ヶ月程となってしまいました。意識しない限り時は矢の如く過ぎ去ってしまいます。JICの皆様にこうやって与えて頂いた貴重な時間を最大限に活かせるよう残りの期間を有意義なものにしていきたいと思います。

東京大学法学部4年 中川貴史

写真1:ハロウィーンパーティ 落としてしまったケーキ
写真2:ボストン ハーバード大学構内
写真3:バンクーバー 私のフェアウェルパーティー

中川貴史さんの2009年10月分の奨学生レポート

  JICの皆様、いかがお過ごしでしょうか。2009年奨学生の中川貴史です。シャンペーンでは木々も色づき、暖かかった気候もすっかりと冷え込んで、コートが手放せない季節となってきました。この時期は日本で言う梅雨の時期に当たるのか雨の日が多く、天気の良い日が余計に嬉しく感じられます。

こちらに来て早いもので2ヶ月、沢山の人との出会いがあり日々充実した生活を送っています。この機会をお借りして、少しばかりこちらでの素敵な経験をお話しさせて頂きたいと思います。

1.はじめに
こ ちらに到着してまず実感したのが、「人の温かさ」でした。到着したオヘア空港は複雑で巨大な為迷子になってしまい、親切な通行人に案内をして貰いながらよ うやくシャンペーン行きのバスに飛び乗るというハプニングからこの留学が幕を開けることとなりました。またシャンペーンに到着してからも、私が到着した時 期が早かったこともあり閑散とした真っ暗のキャンパスで強大なスーツケースを2つ抱え、迷子になり途方に暮れていたところを、またしても親切な通行人に助 けて貰うこととなりました。文化も言語も違う初めての場所で、多くの親切な人に助けられ、日本では感じることのできなかった人の温かさの大切さを痛感し、 ひとつ新たな気づきを得るアメリカ到着となりました。

またこちらで生活を始め最も 驚かされたのは文化の多様性で、様々な背景を持った人が混在する環境は大変興味深いものがあります。バスやスーパーでは、英語だけでなく中国語・韓国語・ スペイン語やポルトガル語が飛び交い、それぞれが自分の文化を維持しながら上手くアメリカに適合している姿には驚かされました。このような多様な文化が混 在する環境の中で、授業や友達付き合いを通して考え方・感じ方の違いを実感し、また同時に文化の壁を超えた共通点を見つけ、人間的に成長する良い機会と なっています。

2.キャンパスについて
ここシャンペーンは、コーン 畑の中心にあると聞いていたのでスキー場があるような日本の田舎町をイメージしていたのですが、想像と違い、緑豊かで安全な住みやすい素敵な街でした。海 外での生活経験がなく東京育ちの私にとっては、こちらでの生活はすべてが新しく、大変貴重な経験となっています。

少 し歩けば無数のコンビニやレストランがあり何でも手に入る東京とは違い、こちらでは最低限必要なものがコンパクトに纏まっている印象があります。私の滞在 しているシャーマンホールには食堂がない為、夕食の時間には友人と誘いあって、グリーンストーリート沿いにあるレストランで、中華料理や韓国料理、インド 料理などを楽しむのが日課となっています。また、週末には20分程自転車を走らせて、巨大なショッピングモールまで足を運び、買い物を楽しんでいます。

また、広大で美しいキャンパスは特にお気に入りです。近代的な高層ビルが立ち並び、生徒が密集している日本のキャンパスとは違い、端から端まで歩くとすると1時 間はかかる巨大なキャンパスには、巨大なスタジアムやジム、図書館、数々の公園や庭園が点在しています。授業の合間にはキャンパスの中心にあるクワッドで 芝生の上に寝転がりながら本を読んだり、ジムでバトミントンを楽しんだりと、美しいキャンパスと充実した施設を満喫しています。

大学生活に関して、とりわけ日本の大学生活との違いを実感する点は、生徒が寮やアパートといったキャンパス上に住んでいる点です。もちろん教室まで近いので 便利ということもありますが、それ以上に、これが日本には無いような密な人間関係や特殊なキャンパススタイルを生んでいる印象があります。みなが近くに住 んで居るため、友人のアパートで主催されるパーティーに足を運んだり、また一緒に誘いあって図書館に出かけたりと濃厚な人間関係が築かれています。また日 本でいうクラブやサークルも当然あるのですが、こちらではその存在感は薄く、フラタニティやソロリティといったコミュニティが人間関係の中核を担っている ようです。特殊な試験を受けなければ入ることができず、それぞれの伝統・規則・歌や踊りを持ち、時には生活を共にするフラタニティやソロリティは、自由で ありながら時に保守的なアメリカの文化をよく表現する興味深い存在だと思います。

3.授業について
授業に関しては、様々な手段 を試みたものの法律系科目の聴講が許可されなかったり中国語の授業が取れなかったりと、自分の興味のある授業を十分には取ることができず、やや心残りな授 業計画となってしまいました。とはいえ、私の専門分野である法律から少し離れ多様な授業を取ることで、別の視点から物事を眺めることができ、思わぬ発見や 学びがあり、結果的には大変充実した授業計画となっています。
EALC 250 Introduction to Japanese Culture
PSYC 245 Industrial Organizational Psychologies
LAW 301  Introduction to Law
CMN 101  Public Speaking

今学期は以上のような12単位を履修しています。とりわけIntro to Japanese Cultureで は、日本の文化・歴史を客観的に眺めることで自国の文化、さらには自分自身をより深く知る貴重な機会となっています。またアメリカの視点から再構成された 日本の文化・歴史を概観し、アメリカの生徒の日本についての意見を聞くことで、アメリカと日本の関係性といった大変興味深い気づきが得られています。日本 の文化に関して特に嬉しい驚きとなったのは、アメリカの生徒達が非常に日本の文化に興味を持っているということです。日本文化に関するこの授業も大変人気 ですし、先日のスタディアブロード説明会では数え切れない程の学生が日本への留学に興味を持ち、目を輝かせながら説明を聞いていました。
また先日には郡司先生にご招待 頂き日本館でのお茶会に出席させて頂きました。恥ずかしながらこれまでお茶を正式に頂いたことがなく、この機会に初めてそれもアメリカでお茶を頂くという かけがえのない経験させて頂くことができました。毎週のお茶会には大勢の生徒が日本館を訪れるということで、その当日も多くの生徒がお茶を楽しむ様子を見 学することができました。アメリカ人にとって日本の文化というと侍・すし・アニメといったイメージが強いようですが、そういった日本の文化の一部分だけで なく、本当の意味で日本とはどういう国なのか興味を持って貰う手助けが自分にできたらと思っています。

またIndustrial Organizational Psychologiesでは、経営学の視点とは少し異なった視点から、ビジネスの現場でのパフォーマンスやモチベーションの向上などに着目し非常に興味深い授業となっています。Public Speakingでは、複数のプレゼンテーションを通して英語力の向上だけでなく、いかに聴衆を引き付け効果的な話をするか効率的に学ぶことができています。

こちらでは、生徒達が日本よ りもずっと真剣に授業に取り組んでいることに気づかされます。第一には良い成績が就職活動・大学院進学に不可欠であるため、就職を真剣に考える学生はみな 必死で勉強に励んでいるようです。しかしより本質的には、授業の質自体が非常に高い点にも気づかされます。クラスは日本に比べ少人数な場合が多く、グルー プを作ってのディスカッションや先生との対話形式でのやり取り等、生徒と教授の双方向のコミュニケーションが行われる工夫がなされており、生徒にとって授 業がより面白いものとなっています。またシラバスや評価基準が明確で、概して授業自体が非常によく組み立てられている印象があります。授業の内容自体が難 解なものでも、ユーモアに溢れた教授の授業は非常に興味深く、生徒が主体的に授業に参加する工夫がなされています。

4.こちらの生活と今後について
こちらの生活を一言で表すと すれば、「よく遊びよく学ぶ」ということに尽きると思います。先日は、友人宅でたこ焼きパーティーやお好み焼きパーティーを主催し、久しぶりの日本の味に 舌鼓を打つと同時に、日本の味を多文化の人に伝える良い機会となりました。どちらも好評で嬉しく思っています。週末には友人とともに、バーに出かけ団欒を 楽しんだり、ビリヤードやボーリングを楽しんだり、フットボールやホッケーの試合を観戦しに行ったりと忙しい日々を送っています。また、こちらではテニス のクラブに入り週に3、4日 テニスを楽しんでいます。クラブでは、運動そのものだけでなく、普段では接点のない多くの人と知り合い、スポーツを通して仲良くなる素敵な機会となってい ます。沢山の人との交流を大切にすることで、日本では決して体験できない文化の違いや共通点を実感し、自分自身の視野を広げ人間的に成長できればと考えて います。

他方、勉学に関しては、前述 の通りとても充実したものとなっています。英語に関してはもちろん、勉強に時間が余計に掛かること等苦労する点はありますが、勉強に際して英語という障壁 を強く意識することはなくなってきました。中間試験前には図書館で朝まで籠りっきりで勉強するなど集中的に勉強し、メリハリの付いた生活を送ることができ ています。

こうして頂いたイリノイでの留学という貴重な機会を最大限に生かして、勉学と遊びを両立しながら、これからの6か月間をより充実した生活にしていきたいと思っています。

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<写真1> アイスホッケーの試合にて
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<写真2> 郡司先生と共に日本館で
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<写真3> お好み焼きパーティーにて

2009年奨学生 東京大学法学部
中川貴史