JICの皆様、こんにちは。2010年度奨学生の近藤千鈴です。日本に帰国し、総会で留学のご報告をしてから、早三か月が経とうとしています。一年ぶりの授業に馴染めるだろうか、と多少不安を覚えながら、先月大学にも復学いたしました。
奨学生レポートも今回で最後になりますので、留学を終えてからの振り返りを書きたいと思います。
Final Week前~学期後
徐々に期末試験に向けて授業が大詰めを迎えた4月は、AAS258 Muslims in Americaの最終課題であるresearch paperの準備に、多くの時間を費やしていました。この課題は大学でのインタビュー調査が前提になっているのですが、私は短い準備期間の中とにかくデータを集めたかったので、ムスリムの学生が、どのように大学で宗教的な食生活(教義上食べることを許されている食事)を保っているのか、また実践の度合い、宗教的な解釈の個人差はどのように生まれるのか、という比較的シンプルなテーマを設定しました。調査期間中は、とにかく毎日色々な所に出向き、参加者を募ってはインタビューを行う、の繰り返しでした。ラッキーだったことは、インタビューと称して国籍もバックグラウンドも様々なムスリムの学生と話す機会が持てたことです。図らずとも、この授業のテーマである「アメリカのムスリム」の多義性を肌で感じることができました。インタビュー調査についても、予想以上に面白いデータがとれ、教授やクラスメートからも非常に好意的な評価をもらうことができました。
5月に入ると、いよいよ学期末試験に向けて忙しくなりました。案の定いくつかのレポートは提出期限ぎりぎりに書き始めることになってしまい、ファイナルを終えた友人が実家に帰った後も、ひたすら一人コンピューター室で課題に取り組み、別れの感傷に浸る暇もありませんでした。時間的に余裕をもって終わらせた課題については、LibraryでのWriter’s Workshopという添削のアドバイスを受けることができたのですが、そうではない課題は一気に書き上げたため、出来上がったペーパーを見てもどこか違和感のある箇所がありました。イリノイにいた9か月間で、今までにない量のwritingをこなしたとは言え、やはり適切な語彙を使い、英語話者の視点で無理のないロジカルな文章を書けるようになるには、まだまだ練習が必要だと感じています。
学期後は残りの海外生活を惜しむように、1か月ほどヨーロッパを旅しました。まともな旅行鞄もなかった私は、リュックと2つの肩掛けバックを持って移動する、という極めて不細工な恰好ではありましたが、大きなトラブルもなく一人旅を満喫しました。ドイツで新型の食中毒が流行っているときに、何も知らず前の晩の残り物を食べてしまい、その後は懲りて、文字通りパンとソーセージのみで過ごしたのもいい思い出です。
旅先では、アメリカ人に出会うこともしばしばあったのですが、彼らとシカゴやイリノイの話を過去形で話していることに、ああ、もう自分の留学も終わったのだな、と強く感じたことを覚えています。思えば、道中でも何かと日本に帰るのだ、ということを意識させられ、日本の生活に戻る心の準備をしているような旅でした。
留学を振り返って
もともと留学への興味はありましたが、私がイリノイ大学への留学を強く希望したのは、日本で所属する大学の講義や、「あれもこれも」といった広く浅く型のカリキュラムの内容に不満を覚えていたことが大きかったと思います。そのため、留学先では自分の大学で学びきれない分野、具体的には文化人類学を一から勉強してみたい、と考えていました。そういった意味で、私は自分の専門分野における知識や経験の蓄積が、他の留学生と比べて少ないところからのスタートだったと思います。イリノイで学生と議論する中でも、彼らと十分に張り合うには自分に絶対的な強みがないということを痛感することが多く、苦い思いをしました。ただ、それで萎縮してしまうのではなく、切り替えて目の前の課題に取り組み続けたことは、私の自信につながっています。
振り返ると、向こうで新たな興味の対象を見つけ、深めることができたことは大きな収穫でした。もちろん、まだまだ学ぶべきことはありますが、大まかな導入を学び、多くのケーススタディを経たことで、日本で勉強を続けていくだけの土台はできたように思います。
それに加え私が留学の目標として考えていたものには、アカデミックな英語に慣れ、学部で通用する程度まで上達させること、単純に海外経験を積むことで、異文化の中でのストレスに対処して生活していけるだけの基礎体力のようなものを身につけたい、ということでした。英語に関しては9か月の留学の間に慣れはしましたが、多くの奨学生が言うように、学期中は目の前の課題をこなすことに時間を追われ、あまり集中的に英語の勉強ができませんでした。帰国後こそ、地道な勉強を続けなければと実感しています。
最後になりましたが、JICの皆様、先輩方には、一年を通してたくさんの励ましを頂きました。出発前から留学を終えるまでの節目には、JICの方からの支えがあったことを思い返します。今後は自分にできることで、JICに恩返しができればと考えています。ありがとうございました。